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2006年06月29日

新・オトナの学校 仕事常識

【著者】安部健太郎・石川淳一ら【発行】日本経済新聞社
【発行年月】2004年03月16日 【本体価格】1,200円
【ページ数】252p 【ISBN】4-532-31130-6

中国式宴会 「隣国だから」の油断は失敗を招く
よろしかったでしょうか。 これが「バイト語」になります
上司の仲人 「脱・会社」が進む結婚式
出張でためたマイル 仕事で得た「財産」は誰のもの?

本書 目次 より抜粋

組織内の人材流動が激しい時代になった。コア世代も変われば、その常識も変わる。これまで当たり前と思われてきたビジネスマナーや仕事の技術も、今やローカルルールにより様々なカタチを見せはじめてきた。

本書は「NIKKEIプラス1」で連載されている「仕事常識」をまとめたもので、“今さら人に聞けない”ビジネスマナーや仕事の技術を幅広く網羅している。新人から中堅層まで、気づかぬうちに自分の印象を悪くしている行動、言動を本書で確認してみよう。

例えば「茶髪の限界点」。染髪など御法度だった常識が、今は緩和されているようだ。女性にとってはおしゃれの一環だが、男性は「取引先に若々しく見られたい」「清潔感をだすため」など仕事上の効果も考える人が多いという。化粧品メーカーも「社会人向け」ヘアカラーを売り込んでいるほどだ。

しかし、接客業などは状況が全く異なる。厳格にルールを定めているホテルオークラはこうだ。まず、男性は染髪禁止。女性は認めているが、全職場に髪の色の“ものさし”があり許容範囲を越えていないかチェックをしているという。

ものさしは日本ヘアカラー協会が作っており、最も黒い1から、ほとんど白い20まで数字で髪の色の明るさを示すらしい。ちなみにオークラの基準は7以下という。日本人の標準的な黒髪(3から4程度)に比べ多少茶色く見える程度のものものらしい。

これだけでも、ルールとして規定されている、ない、がハッキリわかる。組織内でも営業マンと技術者は仕事内容が違うから髪も服装も異なっていて当然かもしれない。だが、これも使い分けが必要だろう。技術者だからといってクライアントと接する機会にラフな格好で出かけるのも考えものだ。

この他にも本書には「中国人に招かれたときの宴会作法」や「出張でためたマイルは誰のものか」「話すだけではもったいないケータイ活用術」など、今この時代だからこそトラブルになりかねない事例や、デキるビジネスマンが利用する便利ツール活用法など、“お役立ち情報”が満載だ。

環境問題や社会全般の動きなどが変えてきたビジネス作法。大学でもマナー講座でもなかなか学べないであろう、人間同士の付き合いを踏まえた実用ベースの仕事術。すべての社会人が「基本」を見直すために、一読しておくことをお勧めしておきたい。

店はこうして生まれ変わった!

【著者】笹幸恵【発行】ダイヤモンド社
【発行年月】2004年03月11日 【本体価格】1,700円
【ページ数】276p 【ISBN】4-478-560-8

業績の低迷した小売ベンチャーがある日、社長の決断で「店舗改善委員会」を発足。やる気に満ちた若手社員を選抜し、不振店舗の改革に乗り出した。

本書 腰帯 より抜粋

デフレ不況の中、業績に伸び悩む企業が喘いでいる。社員のモチベーションも下がる一方。そんな中で、見事に業績改善を果たした企業があった。本書は、業績不振に陥った組織を再生に導くノンフィクションストーリーだ。

あるコンタクトレンズメーカーに務めていた社員が、「安全で快適なコンタクトレンズ」を「安く」お客様に提供したい、という思いから独立を決意。後に、(株)日本オプティカル代表の長村隆司氏として世に名を馳せることになる。

長村氏は創業から13年で150店舗(2002年9月時点)を全国に展開させ、会社をジャスダックに上場させた敏腕経営者である。経営は順風満帆と思われていた矢先、顧客からの相次ぐクレーム、それに比例し売上の下落が目立ち始めていた。そこで長村氏は業を煮やし、再編に向け動き始めた。

日本オプティカルは、それまでエリア内の知名度を高めるドミナント出店を基本としてきた。これを、個店ベースでの販促を重視する方向へ転換。全国各エリアから選抜された若手社員を中心に「店舗改善委員会」を発足する。

この委員会は、2年間という期限付きで、業績不振店舗を高収益店舗として生まれ変わらせることがミッション。1店舗につき約2ヶ月で全国各地の店舗をまわり、結果を残さなければならない。しかも業績不振店舗なだけあって、行く先々で問題は山積していた。

競合対策や広告戦略を怠っていたり、もっと内的な要因、例えば店長の指導力・統率力不足、スタッフの専門知識や販売技術の不足、販売意欲の欠如など、長村氏の目の届かないところでは、散々な有り様だったことがわかる。

委員会が各店舗を立ち直らせるストーリーが大半だが、この過程は面白い。競合がひしめく商圏における販促・広報活動や、指導すればすぐに泣き出してしまう店長、委員会と店舗の確執、委員会と本社の軋轢など、当然だが全てがリアルなのだ。組織のトップと末端の実情が如実に描かれている。

特筆すべきは、委員会のメンバーがほとんど20代の若者だったことだ。会社の将来を左右する壮大なプロジェクトを、若手に託す企業のスタンスに惹きつけられる。小売業の視点に徹して業績改善をテーマにした本書ではあるが、役に立ち学べることも多い。ぜひ多くの方に読んでいただきたい。

休むために働くドイツ人、働くために休む日本人

【著者】福田直子【発行】PHP研究所
【発行年月】2004年03月05日 【本体価格】1,200円
【ページ数】191p 【ISBN】4-569-63367-6

ドイツは先進国の中で、最も労働者の時間当たりの賃金が高く、有給休暇が多い一方、労働時間が少なく、税金や社会保障費が高い国となった。

本書 P184 より抜粋

まず、大変興味深いタイトルだ。ともに敗戦から立ち上がり、世界で最も裕福な国の一つとして立ち直った両国の働き方は似ていると思われていた。しかし、これまでの既成概念として“勤勉”とされるドイツ人と日本人の働き方は、我々のイメージと全く異なるようだ。

著者は「日本人とドイツ人の働き方は全く違う」という。ドイツでは、週の労働時間を削減し、有給休暇は年に6週間もあるという。「過労死するくらいなら太りすぎで死にたい!」というドイツ人。限られた時間内で猛烈に働き、休む。つまり、自分や家族との時間を得るために一生懸命働くらしい。

一方、日本人の働き方はどうか。日本人は仕事を一つのアイデンティティと位置づけ、“自己実現のために”とまで言い切ってしまう。オンとオフを使い分けず、キャリアアップをめざしている。人生のほとんどを仕事に費やしまさに「働くために、休日で身体を休める」というスタンスになっている。

両国の仕事に対する考え方の違いは、シンプルに“文化・性格の違い”という理由だけでは済まされそうもない。例えば、ドイツの社会保障制度は日本のそれとは全然違うという。

ドイツには現在、人口8200万人中、失業者が400万人ほど。労働時間は法律で厳格に限られていて、役人は朝7時から働くと、3時頃には家に帰ったりする。カトリック休暇や超過勤務による代休はきっちり取らなければいけない。体調不良は数日間休む、など仕事ができない条件が山ほどある。

会社にいる人間は、人がいない分働かなければ、と思うと、5時か6時くらいには帰宅しているというから驚く。ドイツには従業員の過労を防ぐ「閉店法」があるため、日々の必需品を買うには早く帰らないといけないらしい。

こんな働き方で十分な生活ができるくらいの収入はあるのだろうかと疑いたくもなる。しかしドイツでは、ずっと失業していても十分暮らせるだけの生活を保障してしまっているのだという。福祉国家ドイツでは失業者も手厚く保護されていて、食べていけるだけの保障を政府がしてくれるのだという。

保護され過ぎているドイツ、保護が足りない日本。しかし根本は、それぞれの生活を意識した働き方なのである。経済大国の中でも、日本と対照的なビジネス社会。その実情を知ることで、“当たり前”になっている働き方を、もう一度見直す機会を与えてくれる一冊である。読むことをお勧めしたい。

なぜ「ただの水」が売れるのか

【著者】高田公理
【発行】PHP研究所 【発行年月】2004年01月05日
【本体価格】1400円 【ページ数】300p 【ISBN】4-569-63358-7

「お米」は「嗜好品」か?
「水」が「嗜好品」になる時代
女子大生の大半は「タバコぎらい」?
茶系飲料ーブランド選択性の大きい感性製品
若い女性の「かわいい」表現の謎

本書 各見出し より抜粋

今や水を買うことも当たり前の時代になった。普段購入するミネラルウォーターと水道水の価格を比較してみると驚くことだろう。東京都の場合、水道水の価格は20平方メートルで2331円。これを500ミリリットルの価格に換算してみると、なんと5銭8厘なのだそうだ。

つまり、ミネラルウォーターの価格は水道水の約1700倍弱あるということになる。現代の日本人はミネラルウォーターに相当の金額を支払っているということだ。水を買うことの理由としては「水道水はまずい」「有害物質の不安がある」など様々だろう。

しかし、日本の水道水は今も飲料水としての十分な品質を維持している。にもかかわらず、ミネラルウォーターの消費は著しい増加の傾向をたどっているようだ。だとしたら、改めてその要因を追究するにも意味があるのではないか、というのが本書の根本的なテーマなのだ。

そして本書では、こうした問題に応えていくために、現代にとっては死語に近い「嗜好品」という側面からアプローチしていく。その上で21世紀という時代にふさわしい日本人の生活イメージとそれに応える商品やサービスのありようを模索していく、という構成になっている。

「嗜好品」という言葉が死語に近いと前述したが、これはモノが飽和した現代が象徴している。衣食住が充分でなかった戦後と比較してみると明白だろう。「生活必需品」という概念が時代とともに変わってきて、最低限の生活を保つための買い物、という意識が希薄になってきたものと思われる。

つまり、モノを買うときには「より楽しく」「よりおいしく」といった具合に、全てが嗜好品レベルでの購買意識に変わっているということなのだ。本書では、「嗜好品」というキーワードを徹底的に調査し、追究している。各年代、地域、性別ごとに座談会方式で生活者の意識を語ってもらっている。

この座談会が本書の大半を占めるが、この内容が実に興味深く面白い。彼らの嗜好品に対する意識や定義がほとんど一致しない。特定の商品について語ってもらってもその思いはバラバラだ。現代のモノに対する必須条件や購買意識は、その生活者のライフスタイルよって全く異なるということだ。

現代の生活必需品とは、もはやその枠を超えて、その上にさらにプラスαが期待される。商品寿命の短命化も顕著だ。こうした事実を踏まえても、本書は2004年のサービスを考える上で貴重な一冊だろう。単なるマーケティングにとどまらない嗜好品の文化論を、ぜひ一度読んでいただきたい。

3びきのこぶたと学ぶ やさしい会計

【著者】松井浩一
【発行】総合法令出版 【発行年月】2003年12月09日
【本体価格】1,200円 【ページ数】175p 【ISBN】4-89346-820-0

・会計って何なの?
・仕訳ってどういうものなの?
・決算でやるべきことは何なの?
・貸借対照表や損益計算書は何のためにつくるの?
・経営分析ってどんなふうにやるの?

本書 腰帯 より抜粋

書店では、「会計」に関する書籍が多く並ぶ。貸借対照表や損益計算書を読みとることで、会社の経営状態を理解するためにと、そのニーズは次第に高まってきた。しかし問題は「難しい」ことだ。多くの専門用語や計算方式、簿記の知識や数字に弱い読者は、頭を悩ましてきたことだろう。

本書は、会計本の入門中の入門“楽しく読める会計の絵本”なのだ。ページ数も少なく、この上なく平易な文章。これまで会計のことで理解に苦しんだり、もう一度最初から勉強したい人には、ピッタリの書籍だろう。

内容は、3匹のこぶたが会社を設立し、経営していく中で直面する困難に立ち向かっていくというもの。起業から経営していく中で常につきまとう「会計」。本書は絵本を読む感覚で、会計の基本的な知識を自然に勉強できてしまう代物なのだ。しかし、中身は終始リアルで実践的な構成だ。

長男のこぶたが社長、次男のこぶたが営業部長、末っ子の「トロン」は経理部長という肩書き。彼らは初めて会社を立ち上げるので、設立の手続きやお金の流れ、決算のことなど知る由もない。そこで経理部長のトロンは何かトラブルや疑問を持つと、公認会計士(キツネ)のもとへ足を運ぶのだ。

キツネは実に親切で、3匹のこぶたたちに会計の“イロハ”を丁寧に教えてくれる。会計の基本「複式簿記」とは何なのか、「借方・貸方」の考え方や覚え方など、読んでいて頬が緩むくらい優しく解説してくれる。

3匹のこぶたは、クルマが好きだということで、自動車販売の会社を設立することに。そして後半には童話でお馴染みのオオカミ(ライバル会社社長)も登場する。オオカミは彼らよりも安価で、大量にクルマを売りさばいていく。顧客を失った彼らは、ライバル会社の調査を始めることに。

物語を読み進めていくと、“古い態勢で経営が困難な、実存する会社”を如実に映し出しているようで面白い。肩書きだけはしっかりしているが、社長と営業部長は実質働きが悪かったり、保身に奔走したりする。設立から、経営、販売まですべて現場の役者が抑えていることからも頷ける。

本書は、可愛らしいイラストとともに、楽しく理解していける会計の良書といえる。勤めている会社の経営状態や体力を把握するためや、これから起業を考えている人など、「会計」を知るべき必要を感じている人は、本書を一読することから始めるのもいいだろう。

日本の優秀企業研究

【著者】新原浩朗
【発行】日本経済新聞社 【発行年月】2003年09月25日
【本体価格】1,800円 【ページ数】319p 【ISBN】4-532-31086-5

うまくいっていない企業の場合は、コンサルタントなどの他人の意見の無批判な導入や同業者のまねが多く、良いところのみ取ろうとして、かえって継ぎはぎになってしまう。

本書 P99 より抜粋

企業の「原点回帰」。これが本書の根幹にある。

今の日本を背負う多くの大企業の創業者は、これまでに、事業推進の中で企業の「本質」を経験的に学習してきたという。そして、その学んだことを時代環境に合わせて、具体的な経営の「形」を作り上げてきたのであると。逆に現在、あまり成果のでない企業はどうなのだろうか。

それらの企業は、長期不況の中、生き残りをかけて「米国式」と呼ばれるいろいろな新しい「形」を導入し始めている。カンパニー制や執行役員制、成果主義に基づいた従業員評価制度など。確かに「形」の上では変革を遂げたように見えるかも知れない。が、肝心の中身「本質」は変わっただろうか。

本書で著者は、財務データによる企業のサンプルを抽出し、中長期にわたり構造的に競争力のある「優秀企業」と、うまくいっていない企業との相違を明らかにする。内容は、仮説に対する証明という論法ではなく、あくまでデータに基づく結論を述べるというスタイルなので読んでいて理解しやすい。

優秀企業に共通的に観察できる特徴で、そうでない企業とを区分する条件は6つあるという。第一の条件は「わからないことは、わけること」。企業の経営者が自分でわかっていない事業を、自分の責任範囲の事業として手がけてはいけないのだという。

調査の結果、社長がわかったふりをして経営しているケースが最も成果が悪かったのだそうだ。合併や統合というボヤけた繋がりを持たず、事業売却を含めて完全にわける。優秀企業はあるコンセプトの塊になっていて、その経営者は自企業について、そのコンセプトを明確に説明できるのだという。

そう、だからこそ企業のトップ経営者には現場感覚が非常に重要なのだ。優秀企業の経営者は、自企業が取り組む事業の範囲を明確に認識し、わからない事業には手を出さない。そのためには企業組織のヒエラルキーが重層ではなく、従業員との関係を保つフラットな構造であるべきなのだろう。

このように本書では、優秀企業に見られる特徴を、該当する企業約30社を紹介しケーススタディを交えながら丁寧に解説していく。他の5つの条件においても、我々が忘れかけていた本来の企業の在り方を掘り起こしてくれている。

優良な成果につながる「経営者の普段着の現場感覚」、「修羅場経験による後継の育成」、「自発性のガバナンス」とは何なのか。企業の持続的な競争優位性を獲得するために、本書の示唆する内容を愚直に吟味して頂きたい。「日本発の経営学」を、ぜひ一読することをオススメする。

ドキュメント知財攻防

【編者】日経産業新聞【発行】日本経済新聞社
【発行年月】2003年08月22日
【本体価格】1,500円 【ページ数】355p 【ISBN】4-532-31070-9

今、「攻防」が起きている。音楽、アニメ、書籍、ゲームなどコンテンツという知的財産の権利のコントロール(支配)を巡り、様々な対立が表面化している。

本書 P4 より抜粋

デジタル技術が台頭し、コンテンツに対する注目が高まってきた。コンテンツはメディアで流通するが、かつては書物くらいしかなかったメディアは、インターネットやDVDなど、様々な形態に多様化している。ネットもパソコンだけでなく、携帯電話や携帯情報端末へと細分化している。

これにより優れたコンテンツを生み出す者が、莫大な富を獲得できる時代が始まった。そして「知財」を、いかに生み出し、いかに活かし、いかに守るか。その「攻防」もまた、始まったのだ。コンテンツ優位の時代に企業戦略はどうあるべきなのだろうか。

本書は、2002年4月から日経産業新聞で連載してきた「知財攻防」をベースに担当記者が大幅に加筆・修正し、一部書き下ろしたものだ。本書によると、今はコンテンツ業界の支配権が揺らいでいるのだという。デジタル技術の登場でコンテンツの著作権がコントロールできなくなっているのだと。

確かに、音楽はパソコンで自由に複製されネット上を飛び交う。ブロードバンドの普及で映像もまた然りだ。また、アナログの世界でも新古書店の流行で、新刊本で出たばかりのコミックが安値で手に入る。その結果、レコード会社や映画会社、出版社の売れ行きが鈍化し、実入りに影響している。

それに対抗する動きも出ている。

音楽業界は、パソコンを使った音楽CDのデジタルコピーを防ぐ新技術を導入した。コピーCDを作ったり、インターネットで楽曲ファイルを交換する動きを、音源であるCDの元から断つ狙いだ。日本では2002年からエイベックスが導入した「コピーコントロールCD」なるものだ。

これを巡って業界が揺れ動く。日本レコード協会は、著作権保護のため、音質が劣化しないデジタル方式の音楽複製した場合、CDの売れ行き悪化の原因とし補償金を徴収すると主張。一方CD・ビデオレンタル業界は、売れ行き悪化の原因ではなく、レコード会社の販売手法に問題があると反論する。

本書ではさらに、アーティスト側の権利保護を考慮した新しい動き、映画館や喫茶店などで流れるBGMに関する問題点、ネットラジオ局と音楽ソフト業界の対立、急成長中の着メロ市場の動向まで記載し、様々な立場の見解を紹介する。

この他にも、書籍に関する著作権侵害、アニメやゲーム、アイドルの権利を巡って様々な論争を紹介している。著作権を巡って、果ては将来の文化創造を守ることを考慮すると、コンテンツ業界から目が離せなくなる。デジタル時代のビジネスモデルのあり方を、一層考えさせられる一冊だ。

ウケる技術

【著者】小林昌平・山本周嗣・水野敬也【発行】オーエス出版
【発行年月】2003年07月31日【本体価格】1,500円
【ページ数】215p【ISBN】4-7573-0178-2 C0033

自分の欠点をかばうのではなく、それすらも笑いのきっかけにできるというポジティブさ、これがウケる人のスタンスなのです。

本書 P113 より抜粋

まず最初に断っておこう。この本、ごく普通のビジネス書ではない。いや、ビジネス書という範疇に入れてしまってはいけないのかもしれない。しかしビジネスの現場で、役に立ちそうな一冊であるとも言えるのだ。まさに「書評者泣かせ」の一冊である。

面白い人の周りに人が集まってくるのはなぜか。それは言うまでもなく、楽しい時間を享受できるからだ。では、面白さとは何か。それは自分にとっての「意外さ、新鮮さ」から成るものなのだろう。言葉選び、声の大きさ、話し方、体の動きなどをTPOで使い分けているのだと思われる。

「ウケる人」は常に2、3歩先を(無意識かもしれないが)想定して会話を作り上げてくるのだ。場に即した「笑い」は人間関係を豊かにする。ことビジネスの現場でも、楽しく仕事がしたいと願う人は多いはずだ。顧客や上司と上手く付き合えない、と悩んでいるのではないだろうか。

コミュニケーションに関する書籍は数多く見かける。しかし、あらゆるコミュニケーション本を見回しても、これほど「笑い」という強力なツールに特化した書籍はないだろう。本書を読むと「ウケる人」のコツがわかる。

「ウケる人」になる為には、「ツッコミ」の本質的な理解から始める必要がある、と冒頭から生真面目に書かれていて、読んでいても思わず顔が緩んでしまう。しかし内容は真剣そのもの。普段テレビで見る「意味わかんねーよ!」などと乱暴に言うだけの、表面的なイメージではまだまだ甘いらしい。

例えば、上司が救いようのない“サムい”冗談を言っても、「あなたは今、面白いことを言った。そのことを私はよく理解していて賛同していますよ」というアピールが重要なのだという。

そして、「あなたは面白い」「あなたはこれこれという点で面白い」、さらに「あなたは気づいていないかも知れないけど、今こんなにも面白いことを言った」というように、表面上は攻撃的なトーンであっても、相手が「面白いことを言っている」部分を拾ってあげる気持ちが重要なのだと。

そう、「ツッコミ」とは「相手を立てる」サービス精神、曰く「ツッコミサービス」でなければいけないのだという。

本書はこのように、個人のセンスに依拠しがちな「笑い」という高いハードルを乗り越え、体系化している。「ロジカルシンキング、問題解決法、説得術」など、いわばハードなスキルに対しての「対人力、ヒューマンスキル、人間関係のスキル」というソフトなスキルがギッシリ詰まっているのだ。

本書には、様々なケーススタディ(会話内容)が載っているが、笑いの質は概して“今っぽい”。“シュール”な笑いを、分解してかなり丁寧に解説している。これで手強い上司やクライアントでも上手く立ち回れるのでは、と自信がつくかも知れない。一読をお勧めする。

顧客第2主義

【著者】ハル・ローゼンブルース、ダイアン・M・ピータース
【発行】翔泳社【発行年月】2003年08月08日
【本体価格】2,200円【ページ数】365p【ISBN】4-7981-0388-8

あらゆる企業は関心事の順位に基づき経営される。当社の場合、社員、サービス、利益の順である。会社は社員を重視する。そして社員は顧客へのサービスを重視する。利益は最終結果である。

本書 P35 より抜粋

ビジネスマンの、自分が勤める会社への忠誠心や仕事への意欲のなさをよく耳にする。退職や欠勤、無関心、無気力など、様々な弊害は企業の生産性を下げ、市場での競争力をそいでいるようにも見える。なぜ、仕事によって多くの人は、精神的に追いつめられてしまうのか。

本書には、明快にその答えが書かれている。原因は職場が幸福でないからだと。もっと多くの企業が、社内政治や社会的イメージ、利潤追求にかけるのと同じくらいの注意を社員に払えば、それは改善されるのだという。利潤は職場の幸福から自然に生まれる。だが、その逆はないのだと。

一日の大半の時間を過ごす会社。そこでストレスを溜めて家路につく。家族とも上手くコミュニケートできない。それも相まって憂鬱な精神状態のまま出勤する。これでは仕事がはかどるわけがない。だったら、会社が楽しければ良いではないか、ということだ。

企業は顧客に対し、最高のサービスを追究する。当然ながら、顧客があってこその利益だ。しかし、著者が育てた旅行代理店ローゼンブルス社は、彼らの顧客を「二番目」と位置づける。そう、ローゼンブルス社は、自社で働く社員を第一に優先する環境を作り上げているのだ。

理由は簡単だ。顧客にサービスを提供するのは社員で、最高レベルのサービスは心から生まれる。だから、社員の心をつかむ会社が最高のサービスを提供する、ということなのだ。本書には、ローゼンブルス社の社員に対する様々な「職場の幸福」システムが記載されている。

まず、採用は人柄の良い人材しか採らない。人柄は成果に比例すると。そして入社すると、「ランチタイム学習」など様々な研修が用意されている。そこには必ず「楽しさ」が存在する。変化という刺激を常に与え、社員に飽きさせない毎日を確立しているのだ。

しかし、仕事には必ず顧客が存在する。「ウチにはウチの事情があるし…」と悲観してしまうかもしれない。ビジネスには様々なしがらみが存在し、一人の力だけではどうにもならないことが多い。しかし、それは改善できる。その術を知った人が立ち上がればいいだけのことだ。

本書は単なるローゼンブルス社の成功物語ではない。一企業に成功をもたらした要因と、自分のビジネスに様々な形で応用できるアイディアをまとめた参考マニュアルなのだ。従属的な働きでは将来必ず「余分な社員」になってしまう。だからこそ本書を読んで決起して欲しいのだ。お勧めの一冊。

なぜ企業はシェアで失敗するのか!

【著者】リチャード・ミニター 【発行】日本経済新聞社
【発行年月】2003年08月08日 【本体価格】1,600円
【ページ数】237p 【ISBN】4-532-31069-5

利益リーダーが市場リーダーになる例はそれなりに見かけるが、市場リーダーが利益リーダーになることはめったにない。

本書 P138 より抜粋

経済が低迷する中、企業は勝ち組を目指し奔走している。買収や合併を繰り返し、規模の拡大で何とか顧客を増やそうと試みる。生き残るためには何が重要か。当然利益を上げることではないか。無論、誰もが理解していることだ。しかし正確には、理解している“つもり”だったのかもしれない。

企業を成長させるためには「市場シェアを築くこと」だと主張する経営者は実に多い。市場シェアの伸びは、長期的な利益成長につながる。その分野で最大手になれば、莫大なサービス収入が得られるようになるという思い込みがある。これこそ間違った常識なのだと、著者は看破する。

先に言っておくが、これは未来の話ではない。今までも、この常識に囚われた企業の多くは成長を鈍化させ、業界から撤退するなど悲惨な結果を残しているそうだ。少なくとも企業の経営者は、自分たちがシェア追求戦略を選ぶ理由、あるいは、選ばない理由を知っておくべきなのだ。

本書では、市場シェア追求の理論がほとんどの業界で全く役に立たないことを示す。これまで市場シェアを追求してきた企業の実例を列挙し、市場シェアの大きさがもたらす「優位」、この無意味さを証明していくのだ。生き残りをかけ、どうすれば利益リーダーシップ企業となれるのかを紹介する。

まず、シェア追求戦略の実際はどうなのか。「アマゾン・ドット・コム」の売上高は、世界のどの書店よりも多いだろう。言うまでもなく、アメリカ国内最大のオンライン書店だ。ただ、市場シェアは7年間伸び続けているのにも関わらず、2002年1月まで一度も利益を計上しなかったそうだ。

実は、このようなケースは山ほどあるのだという。大手企業が、市場シェアや他社を上回る規模を活かして、非常に大きな利益を稼ぎ出している実例を探すと、それとは正反対の結果が出てきたのだという。

本書には、驚くべきデータが載っていた。「70%以上のトップ企業は、収益性では首位ではない」というのだ。市場シェアと利益に関する従来の常識をこっぱみじんに打ち砕くものだ。他の約30%の企業は、「利益を追求した結果、市場シェアでもトップになった」ということだった。

いかがだろうか。少なくとも業界のトップシェア企業が、必ずしも安定した利益を計上しているという固定概念は消え失せるだろう。どういう方法で業界のリーダーシップを握るか、その全貌を本書でご覧いただきたい。少なくとも企業マネージャーは、その論拠を知っているべきなのだ。

数学で身につける柔らかい思考力

【著者】ロブ・イースタウェイ ジェレミー・ウィンダム
【発行】ダイヤモンド社
【発行年月】2003年06月05日 【本体価格】1,500円
【ページ数】206p 【ISBN】4-478-82008-2

なぜ月曜日はすぐにやってくるのか?
うわさ話と伝染病はどこまで広がるのか?
なぜ天気予報は当たらないのか?
画像データはなぜ圧縮できるのか?

本書 見返し より抜粋

「論理的…」、「図で…」など、思考力を身につける書籍は最近多く見かける。しかし、今回紹介するのは「数学」を意識した思考力本だ。

学生時代、苦手だった数学に対して「将来、絶対必要のない学問」と、自分に言い聞かせていたことを思い出す。「円の面積、関数、確率」など、考えただけで、頭痛がする人も多いことだろう。それは当時の数学の授業が「成績表のための数学、テストのための公式」だったからだ。

現在は、少しずつその点は改善されてきているようだ。数学を抽象的な理論からではなく、日常生活に関わる現実的な例から始めなければいけない、ということが、周知のこととなってきている。数学の抽象的な概念は、馴染み深い場面に当てはめてみないと、多くの人は理解も納得もできないのだ。

本書の内容は、「どうすれば理想の結婚相手を選べるか」「絶対にヒットする曲を作る方法」「なぜ月曜日はすぐにやってくるのか」などの16の疑問を、数学的アプローチで掘り下げる。ここでは、「理想の結婚相手」を選ぶ数学的方法を紹介しよう。

例えば、年間10回のデートが出来るお見合いクラブがあったとする。そしてこちらがプロポーズしさえすれば、必ずその人と結婚できる設定とする。10人のうち1人が最高の相手で、1人が最悪の相手となる。最高の相手と結ばれる確率は10分の1だ。一度断ったら後戻りはできないものとする。

だが10人に会う順番は分からない。ここでは、最初にあった人に決めてしまう方法は賢くない。当然他の人と比べたいところだ。1つの方法として、最初の相手をまず断る。残りの9人から、最初の人より良い相手を選べばいい。これで10分の9の確率で最初の相手より良い人と結婚できるだろう。

だが、最初の相手が最高の相手だったらこの作戦は失敗だ。それなら、基準にする人を増やせばいいという。初めの3人とまずデートをする。その後、その3人の誰よりも高得点だった最初の人にプロポーズをするという方法が数学的に最適な方法だというのだ(詳しくは本書を参照して欲しい)。

いかがだろうか。数学の授業が盛り上がることは間違いないだろう。本書の内容は単に、これらの疑問を解決するためだけのものではない。本書で数学的意識を高めていくことで、普段の生活に、ひいてはビジネスに応用できることを期待しているのだ。読み物としてもかなり面白い。オススメの一冊!

経済学思考が身につく100の法則

【著者】西村和雄【発行】ダイヤモンド社
【発行年月】2003年05月29日【本体価格】1,800円
【ページ数】170p【ISBN】4-478-21043-8

本書で養う経済学的思考は、社会問題のみならず、人生のあらゆる問題の解決方法を考えることにも適用できるのである。

本書「はじめに」より抜粋

景気の悪さに不満を漏らす我々だが、実際、その打開策として何をすればよいか。政策に何を求めればよいのか、経済の断片的な知識だけでは想像できない。結局、無関心のまま“お上”に任せてしまう。何となく生活できている「豊かさ」に危機感を感じることができないのかもしれない。

本書では、経済学は、社会と経済の問題を解決するために必要な思考力を養うのに、有効な学問と位置づける。身の回りで起こっている事象を、敏感に感じ取ってもらいたいというのがテーマだ。

一例として、日本の経済の現状を紹介する。

バブル崩壊後、不況が続く。税収が減少する一方で景気対策として公共投資を行うために、政府は国債を発行してきた。現在国債の発行残高が360兆円に達し、国と地方の債務を合わせると600兆円を超えているという。

その中で、必要性の低い高速道路などの建設に使われる、従来型の公共事業に対する批判も高くなってきた。不必要な公共投資の需要拡大効果は、その年限りに終わってしまう。そう、もっと波及効果の高い、将来の生産性を向上させ、新産業を産む公共投資に変えていくべきだ、ということなのだ。

デフレでは、物価が下がっても借金の価値は下がらないから、負債のある企業の負担が重くなる。賃金は下がりにくいので、企業はリストラで社員の数を減らし、失業者が増える。現在の日本が陥っている状況だ。

さらに、これを放っておけば、国内全体の需要は落ち込み、物価がまた下落する。企業の収益が悪化し、不良債権が増加する、リストラで失業者が増える、需要が減る、物価がさらに下がるという、デフレ・スパイラルに落ち込んでいく、といった具合に、総体的な流れもやさしく解説する。

本書はタイトル通り「経済学思考を身につける」本。さまざまな経済理論を「100の法則」として紹介することで、我々の学習意欲を喚起する。平易な文章でまとめてくれていて、練習問題までついている丁重さだ。

本書を読むことで、我々は日々の経済のニュースの背景には、どんな本質が隠されているのかが見えてくるだろう。ビジネスマンにとって必須の経済用語、公式、定理を厳選し紹介している。

本書の中身を知っておくことで、直接的な仕事に役立つことはないかもしれない。が、社会の流れを知ることは、やはり仕事にとって、とても必要なことなのだ。その大切さを知る人も、実は、とても少ないのだ。

デフレ生活革命

【著者】榊原英資【発行】中央公論新社
【発行年月】2003年06月25日【本体価格】1,400円
【ページ数】241p【ISBN】4-12-003413-5 C0033

大切なのは、私達の直面する問題が、構造的・制度的だと認識することによって、私達の行動様式や企業の戦略、政府の政策を変えていくことなのです

本書 P74 より抜粋

21世紀に入って、いよいよデフレ(継続的物価の下落)に歯止めが利かなくなってきた。多くの政治家やアナリストは、デフレを政策によって逆転することができるはずだ、と論じているが、本当に可能なことなのだろうか。

そもそも、国際的秩序、国や企業のあり方、個人生活のすべてが激変する可能性のある大改革を4、5年で完成できる訳がない。何か歴史的な大改革でもしなければ、日本経済は回復へと向かうことは難しいのではないか、というのが、本書の問題提起だ。

ただ単に指をくわえて「バブルよ再び」といったインフレ待望論では、問題は決して解決しないだろう。本書では、世界の経済情勢や宗教観などを把握しながら、日本の経済や生活体系の今後を推論する。

まず、資産価格が下降続きの現状で我々は何をすべきか、著者は提言する。「資産は出来るだけ持たない方がいい」と。多くのアナリストたちが底値だと、買いを勧めてきたが、投資家たちは裏切られてきた。90年代の企業経営や経済政策の最大の失敗は、資産価格の見通しを誤ったこと、だという。

構造的インフレ後、構造的デフレの時代に転じた現在、資産価格は下降する傾向があるとの認識を持つべきと進言する。そう、素人の投資家が大した企業情報もなく、ただ証券会社の勧誘に従って株で儲けるなどという時代は終わったというのだ。また著者は、無駄な資産を整理することも勧めている。

例えば、別荘を持つことが一時ブームになった。十分な所得がある人には問題ないが、普通のサラリーマンが無理をして買っても大変なだけで、しかもそれが銀行ローンでということになると厄介だと。当面地価が底を打つ気配を見せない現状では、所有すること自体危険なことなのだと看破する。

借金をして住宅等の有形資産を持つことは、少なくとも今後、経済的には極めて不利になる可能性が高くなってくるということなのだ。確かに、我々はこれまでその時代に見合った生活を送ってきたが、一時富を掴んでしまったことによって、後戻りできない生活体系になってしまったのかも知れない。

さらに本書では、これからの会社のあり方、賃金体制の問題、労働の意義や自然・環境の限界説にまで踏み込んで、我々に「新しい生活のススメ」を指南する。経済の将来を世界的規模で、論理的に考察する本書は、いま読むべき一冊なのかもしれない。

野球と銀行

【著者】木村剛/二宮清純【発行】東洋経済新報社
【発行年月】2003年07月14日【本体価格】1,600円
【ページ数】260p【ISBN】4-492-39404-4

金融行政にしろ、野球にしろ、それが存在しているのは、いったい誰のためのものなのかという点をまずは考えなければなりません。

本書 P58 より抜粋

大手銀行における資本不足が明らかとなり、公的資金注入の対象になったという衝撃が走ったのは、つい最近のことだ。「ルールを勝手に変えるな」という批判も続出。だが、本書の著者木村は「そもそも銀行側は、ルール通りにプレーをしているのか」と、疑問を投げかけることから、本題は始まる。

そこで、他方の著者二宮も近年失敗続きの「プロ野球」にも共通するところがあるという。「一見何の関係もない2つのジャンルの共通点を探っていくことで、日本が失敗してきた理由が掴めるかもしれない。そして今後の方策を模索できる可能性もある」という、2人の対談の記録が、本書である。

両者とも「銀行」と「プロ野球」は、このままでは弱体化していくことは目に見えているという。原因は、裁量権を持つトップ陣営がフェアプレーをしないからだと。そこで挙げられるのが「ルールの定義」だ。ルールとは誰の為のものなのか。まずはそこから議論していくことになる。

アメリカのメジャーリーグは、細かいルールをよく変えるという。例えばストライクゾーンも昨シーズンから時間短縮のために、高い球も取るようにした。理由の1つは「アメリカのベスボールはファミリースポーツで、長時間の試合は、帰宅時間が遅くなるのでファンに嫌われる」からだと。

これで打撃戦が少なくなり、平均試合時間が20分短くなった。それをマネして日本もルールを変更した。しかしここからが問題だ。「それでは打者が不利になるではないか」という反対論しか出てこなかったのだ。そう、日本には“野球といえども興行”という認識をもてないのが危険なのだという。

利用者の視点に立てないのは銀行も同じらしい。2001年末に石川銀行が破綻した。その少し前にその銀行は第三者融資を行った。自分達の赤字を誤魔化すためにだ。何も知らない高齢者や債務者に自分達の株を売りまくり、その後、その株はただの紙切れになってしまったことは言うまでもない。

詐欺のようなものだと、木村は続ける。金融庁は事実を知りながら何もしなかったと。被害者が出ても「ルール上問題ない」で終わりだった。他の手段についても「ルールにない、前例もない」としか言わなかったそうだ…。

そう、日本にはルールを“信仰”し“利用”する思想がないのだ、と二宮は言及する。国民の視点でルールを作らず、自分達の視界でしか物事を考えられないようでは、今後の発展は期待できないものだと改めて気付かされる。

本書は、スポーツと金融という異なるジャンルのプロが「日本という病」の核心に迫り、提言する。2人の鋭い視点は、読者をグイグイ引き込んでいくだろう。とにかく、面白い一冊なのだ。

「クビ!」論。

【著者】梅森浩一【発行】朝日新聞社
【発行年月】2003年06月30日【本体価格】1,200円
【ページ数】221p【ISBN】4-02-257849-1

外資系企業では、クビは日常茶飯事。長く勤めていれば、誰もが経験していることです。だから、クビはクビでも、一般的に日本人が思い浮かべるイメージとは、いささか趣が異なります。
本書 172P より抜粋

バブル崩壊後、相次ぐ大企業の倒産劇が続いている。自己資本ではどうにもならなくなった企業は、合併や買収で何とか生き残ろうと必死だ。そこで企業経営の第一の負担となる人件費の削減に目を向けられることとなった。もはやリストラの“波”は他人事ではなくなってしまった。

本書の著者はまさに“クビ切り”の請負人であった。外資系企業の人事部長として通算1000人という社員を退職に追いやった張本人である。クビを切られる方は当然難事ではあるが、切る側も相当のストレスと葛藤に見舞われ、ポリシーをもって臨まなければなし得なかっただろう。

本書は単純に“クビ切り自慢”などという「つまらない内容」ではない。ここから学べること、それは「経営者として、社員として、プロフェッショナルであれ」という色彩が強く感じられる内容だ。それは本書で紹介している外資系企業と日本の企業を比較することで、明解となる。

そもそも終身雇用制度や年功序列型賃金などは外資系企業では考えられないことだ。完全なる実力主義。業績の上がらない社員は即解雇。当然ながら雇用側は雇われる人間を一人のプロとして扱い、雇われる側も“クビ”というリスクを覚悟して入社してくるという。

そう、外資系企業ではクビ切りは日常茶飯事のことなのだ。外資系企業で働くビジネスマンは個々人が自分の専門分野を伸ばし、どこででも通用する市場価値を持っているため、どこの会社でもやっていけるのだと。そして、自分に仕事が回ってこなくなった時点で、会社員としての引退なのだという。

一方、日本企業で働くビジネスマンは言うまでもなく組織的だ。新卒として入社後、いろいろな部署を経験させられ、一種のゼネラリストとして育成させられる。つまり、その企業内での特殊的なスキルしか身につかない。クビになり、他の企業に転職できてもまたゼロからのスタートなのだ。

日本企業はリストラをしても不思議なことに業績が上がらない。それはリストラに失敗しているからなのだと。著者は、日本企業の「整理解雇」にも疑問を投げかける。目先の業績をばかりに関心をもってクビを切っていては、いちばん大切な「持続する改革」に至らないのだということだ。

本書では、このように外資系企業と日本企業の体質の相違点を列挙し、我々に警告を投げかける。逆に「クビにならないためには」、「自分の存在価値を誇示するための方法」など、ビジネスマンとしてのミッションも同時に提示してくれる。ぜひ、一読することをオススメする。

ビジネス・セラピー

【著者】青木仁志 【発行】PHP研究所
【発行年月】2003年06月23日 【本体価格】1,600円
【ページ数】265p 【ISBN】4-569-62911-3

人間は、周囲の状況を完全にコントロールすることはできない。だから、どんなに成功をつかもうと努力しても、困難な問題に直面することがある。しかし成功のプログラムができていれば、必ず道を切り開いていくことはできる。
本書 3P より抜粋

トップセールスマンを育ててきた著者の経験をもとに、本書は、どんな職業の人にも成功を約束するノウハウを結集したものだ。この講座を経て成功したビジネスマンは、決して人一倍才能があったわけではない。だから誰でも成功できることを確信した内容なのだ。

仕事を楽しみながら成功を収めるということは、単に大金持ちになるということではないはずだ。何億稼ごうが、本人の意思と反するものであれば何の意味もなさない。本人がいちばんよくわかっているはずだ。「自分はどうありたいか」ここから本書の“セラピー”は始まっていく。

熱い情熱や思いを、あなたの原理原則にのっとった思考によって「質化」させる。成功を収める為にはこの作業が不可欠なのだという。質化とは「願望を明確にする」「目標を設定する」「プランを立てる」ことだ。大切なことが見えてくれば、そうでないものも判別できる。

どうでもいいことを排除していくと、本当に大切なことに突き当たる。ここが肝なのだと。「思いの種をまき、行動を刈り取り、行動の種をまき、習慣を刈り取り、習慣の種をまいて、成功を刈り取る」といった流れだ。

そこで、どんな仕事にも共通する原理原則とは「人の役に立つ」ことだ。役に立たなかったら代価をもらえるわけがない。その原理原則をおさえたら次は積極思考だと。しかし誤った解釈で突き進んではいけない。

例えば、新規事業をやるには3つのポイントがある。統計、調査、計画だ。問題は計画にある。事実は一つだが、解釈は多数あることだ。勝手な思い込みで計画を立ててはいけないのだという。間違いを認めずに最後まで行ってしまうと積極思考はかえって仇になるということなのだ。

さらに本書のウリは約100頁にも及ぶ成功へのプログラムにあるだろう。「なぜ、あなたは成功しなければならないのか」。ここで思い浮かべることは「人生で大切なこと、誰が喜ぶか、誰を守れるか、成功するのがあなたでなければ行けない理由」などだ。成功するための障害を明確にすることだ。

このように、本書にはここでは紹介しきれない程の成功へのエッセンスに、著者自信の経験、成功をつかんだ数々の人たちのインタビュー事例がギッシリ詰まっているのだ。“成功と幸福をつかむために”本書を一度手に取ってみてはいかがだろうか。

インナーワーク

【著者】ティモシー・ガルウェイ 【発行】日刊スポーツ出版社
【発行年月】2003年06月02日 【本体価格】1,500円
【ページ数】398p 【ISBN】4-8172-0224-6

もっと明るくとか、プラス思考で、などと強引なやり方で気分を変えようとする前に、まず自分の知覚力(意識)に、感じ取るチャンスを与えてはどうだろうか。感じ取ること自体に、実は自然治癒力(自修作用)が含まれていることに驚くはずだ。
本書 184P より抜粋

様々な「ビジネスのハウツー本」的な書籍が流布しているが、本書に出会えたことはある意味ラッキーだったかも知れない。ビジネスマンにおける仕事への考え方を見事に覆し、これまでの「常識」を完全に裏切ることになる。

本書は「集中力の秘密」を分りやすく解説し、世界のスポーツ心理学の応用分野で高い評価を得た「インナーゲーム」理論を、ビジネスの分野に移植したものだ。マニュアル通りのプラクティスではプレイヤーは往々にして成果を挙げられない。それは、人間の本能に起因しているのだという。

例えば人間にとって「売買」は古くからの普遍的な行為だ。上手に売る方法としては数多くの本や研修コースが作られてきたはずだ。しかし著者はここで意外にも、まず5歳児の例を挙げて解説する。

「5歳児はモノを売るのが上手い。両親に欲しいものをなんでも買わせてしまう。買い手と親しい関係を作り上げ、反対されても、相手の弱味を知っていたり、もう一方の買い手にアプローチするなど実に創造的だ。」そう、彼らは「あきらめ」を知らない。

なぜ、彼らはこの技術を会得できたのだろうか。

子供は、セールスのやり方を身につける為に、当然だが「仕事」とか「お勉強」はしていない。欲しいものを手に入れる方法を自然なプロセスの中で体験的に学び取っていく。明確な目的意識をもった5歳児は、自分への自信と希望に満ちそこへ注意を集中し、言動をとっているのだというのだ。

簡単な例を挙げたが、要は「輝かしい結果を得る為には、注意力を一つに集中すること」に重要性があるようだ。

人間が内側にもっている能力は、妨害因子さえゼロならそのまま100%発揮されるのだという。裏を返せばわずかな自信のなさ、誤った推測、ミスを恐れる不安感などがパフォーマンスを大きく妨げているのだと改めて著者は主張する。

このように、本書では具体的な実験や実例を挙げながら、セールスの現場や顧客対応、組織改革の問題点とその対処例を具体的に提示する。さらに人材開発や従業員の意識改革に試行錯誤する企業経営者や管理職にとっては、格好の手引書となるだろう。

副業生活のすすめ

【著者】川村亮 【発行】かんき出版
【発行年月】2003年04月21日 【本体価格】1,400円
【ページ数】219p 【ISBN】4-7612-6087-4

副業は、本業では得られなかった世界を見せてくれるものであり、本業ではできなかったことを実現させてくれるものでもあります。副業で得た体験や知識は、あなたの人生を豊かにしてくれます。
本書 4P より抜粋

あなたは、自分の会社がこの先ずっと安泰だと信じてはいないだろう。なぜなら、この先、何が起こるか想像ができないからだ。ちょっとした大企業でさえ、吸収や合併を交え、生き残りに必死なのだ。減量経営で、いつ自分の身に降り掛かるやもしれない「リストラ」の文字・・・。

そんな状況だからこそ、本書で紹介する「副業」という概念を頭に入れておくとよいかも知れない。本業がうまくいかなくなった時、副業が順調ならその分不安も少なくなる。何より好きなことをできるのが、副業の醍醐味だろう。失敗しても副業は副業。本業を軸にして働けばいいのだという。

著者が主張する副業のポイントは、働き過ぎないこと、収入をあてにし過ぎないこと、会社にバレないこと。そして、安易にサラリーマンを辞めようとしないことだ。本書では各ポイントの詳細を解説しているが、サラリーマンであることの特権を、堅く保持することを強く推薦している。

サラリーマンのメリットとは、給料という定収があること。金銭面で長期的な計画を立てられる。しかし、副業は成功した分収入は増えるが、万が一病気などで入院でもしたら、事態は急変する。つまり、定収や休職手当、労災など特権を享受できるサラリーマンを辞める必要はないということだ。

ゲーム感覚で、好きな仕事を楽しむ副業と、核となる本業を上手く使い分ける。このバランスを守り、建設的で豊かな社会生活を送ろう、というのが本書の幹なのだ。

しかし、本書の“ツボ”は意外なところにあった・・・。

副業生活の「内緒話し」的な要素も実に充実していたのだ。会社にバレないための副業パートナーの選び方や、住民税の納付方法、取引先の選定、顧客の管理方法など、著者の実体験に基づいて、リアルに解説してくれている。

特に、副業を始めるサラリーマンの多くが悩む「確定申告」については、丁寧にポイントを押さえてくれている。副業所得のあった通知が、会社に届かないようにする方法や、夫婦で事業を展開する時、配偶者特別控除を意識した入金方法の分け方など、かなり突っ込んだ内容も網羅している。

本書を機会に、1ヶ月分の飲み代やタバコ代を稼ぐ程度の、軽い“ノリ”で副業を考えてみてはいかがだろうか。社内にいては経験できない出会いや、知見を広めることができるだろう。本書は「人生をより豊かなものにする」方法として、副業を提案する。オススメの一冊だ。

スイス銀行体験記

【著者】野地秩嘉 【発行】ダイヤモンド社
【発行年月】2003年02月27日 【本体価格】1,500円
【ページ数】216p 【ISBN】4-478-62056-3

□実際に1500万円でスイス銀行に口座を作った著者のリアルな体験記
□超一流プライベート・バンクの運用と相談の具体的な中身が初めて明かされる!
本書 腰帯 より抜粋

2002年、民間の格付け機関ムーディーズ・イノベーターズ・サービスが日本政府の円建て債務格付けをAa3からA2へと2段階引き下げた。これは解釈のしようによっては、海外の人たちは「日本政府の借金返済能力の行く末を心配」しているとも考えられる。しかし、それに対して財務省は「ムーディーズは許せん」と拳を振り上げた。

彼らは、歴史上、こんなに借金を増やした国はない、と忠告してくれているのにである。今後日本は、非常時の経済対策を採用するしかない、我々は非常時を想定し自分の資産を守り、運用していかなくてはならないと、本書の著者は強く説く。

そして、筆者は思いもよらない話を始める。日本の資産家たちはすでに、自分の資産を、海外の、それも「プライベート・バンク」という、小説や劇画の世界にしかなかったような場所に、移転し始めているというのだ。日本のコマーシャルバンク(商業銀行)では危ないと…。

本書で紹介する「プライベート・バンク」は、個人客だけを相手にした銀行のことである。ある企業が100億を持ち込んで「取り引きしたい」と言っても、彼らは断る。欧米では銀行の役割が明確になっているのだ。そう、まだ日本には純粋なプライベート・バンクは存在しないということだ。

プライベート・バンクの大きな特徴は5つ。

1.あくまで個人資産家の財産を長期的な管理・運用に特化する。
2.いくつもの国に支店を置き、国がなくなるリスクまで想定している。
3.系列金融機関の金融商品の押し売りはしない。
4.簡単に取り引きできるわけではない。客の身元を厳しくチェックする。
5.客の秘密を守る。それが国の法律で縛られている。

本書は、著者自身と客が体験したプライベート・バンクのリアルな姿が載っている。著者は今回の取材を通して、お金持ちではない人がお金持ちになる種を見つけることができたという。だから現在お金持ちでない人が読んでも本書は役に立つだろう…。

資産・金融関連の書籍の多くは、専門家が書いているため難解な専門用語や読解するのに苦労するものばかりだ。本書は平易な文章で読みやすく、ドキュメンタリー形式で構成され、読むものを飽きさせない。

近い将来、外見ではわからない、プライベート・バンクに口座を開き、マネー・コンシェルジュを使いこなす人が、微笑する姿が目に浮かぶと、著者はいう。プライベート・バンクが、ある意味で「究極のブランド」になる日はそう遠くないだろう。オススメの新刊。

消費の正解

【著者】松原隆一郎/辰巳渚【発行】光文社
【発行年月】2002年12月20日【本体価格】1,300円
【ページ数】307p【ISBN】4-334-97370-1

ブランド財布に5万円と温泉旅行に3万円…成熟した消費はどっち?ランキングに入ったものをつい買ってしまうのは悪い習慣?トイレットペーパーに花柄がついているとお得?新商品・新発売に惹かれてしまうのはどうして?
本書 見返し より抜粋

最近良く思うことがある。私たち「消費者」は、なんだかバカにされているんじゃないかと。店頭には「流行りモノ」ばかり並び、それを「買わされている」感じがして仕方ないのだ。例を挙げればペットショップ。今並んでいるのは「チワワ」ばかりという有様…。

そもそも「消費」とは何なのだろう?「消費者」とは一体誰なのか?という疑問に迫っていくのが、本書の狙いだ。多くの著書を残す、社会経済学者の松原隆一郎氏と、著書『「捨てる!」技術』で有名なマーケティングプランナー辰巳渚氏との対話形式で、本書は構成されている。

最初のテーマは、「エルメスで買い物をする人が、100円ショップでも買い物をするのはどう理解すればいいか」について語る。確かに、高級ブランドのバッグを片手に、100円のハンガーを大量に購入しているのを見かける。不思議といえば不思議な光景かもしれない。

そういう人たちは、エルメスで買い物をする時、「一生モノなんだし、60万円でも高くない」と言い、100円ショップでは「安いし、モノだっていい」と語る。筋が通っているようでいて、何か変だ。

そのような「消費者」を理解する場合、商品の「コストパフォーマンス」を考えると、話が良くわかるようだ。

「高くていいもの=ブランド品」「安くてもいいもの=100円ショップ」と、きちんと評価できる感覚を、最近の消費者は自然と身につけているのだという。「価格だけが価値じゃない」という考え方を、コストに対するパフォーマンスを、様々な軸で判断し、使い分けることで、自身が満足すると。

このように本書では、12回分のゼミナールとして、身近で素朴な消費の疑問を究明していく。その様子をライブ感覚で参加できるのも、読むものに飽きさせないつくりだ。各回、章末に「わかったこと」「読者への問題提起」として、まとめを確認することで、さらに理解も深められるのも有り難い。

本書を読み終えると、自分の「消費」に対する認識が変わるだろう。例えばコンビニでサラダを買う時に、ドレッシングが別売になっていることや、レジで「箸をお付けしますか」と聞かれることに対して、「生産者の」の意図が見えてきて、消費することに「クリエイティブ」を感じられるからだ。

最終章は、それまでの議題を踏まえてのテーマ『消費者は「バカ」なのか』という、派手なタイトルで読者を挑発する。豊富な知識と情報を併せもつ二人のディスカッションから、消費の深くを学ぶことができる。オススメ。

60分間・企業ダントツ化プロジェクト

著者】神田昌典【発行】ダイヤモンド社
【発行年月】2002年12月05日【本体価格】1,600円
【ページ数】354p【ISBN】4-478-37421-X

全国3800社を超えるクライアントの経験をもとに、成功する企業家の発想法・思考プロセスを伝授する。
本書 腰巻 より抜粋

新商品を売るために、会議室でダラダラと意見交換をする。皆の意見がバラバラで、結局権力のある人が勝ってしまう、という無鉄砲な戦略・無駄な時間を費やす会社が多いのでは…と、本書を読み終えた直後にそう思った。もはや「広告を出す」だけでは、モノは売れないのだ。

顧客の視点で戦略を考えろ、聞き飽きたフレーズだが、どうすれば「顧客の視点」で考えられるのかを、今まで誰も教えてはくれなかった。なぜか?それは誰も知らないからだ。

本書では、そんな疑問に「顧客を魅了することに焦点を絞る」ことで、革新的なアイディアが自然と見えてくるのだという。

本書は、「6つのステップと、それの関連する20のチャート」によって構成されている。圧倒的な競争力を実現するための戦略、それを作り出すためのノウハウがギッシリと詰まっているのだ。

例えば、2つの商品ラインがあり、どちらを販売しようか、というケース。「コンピュータ初心者用自習教材/コンピュータ中級者用自習教材」この2つを「ニーズ(必要性)・ウォンツ(欲求)分析チャート」にあてはめる。

まず、コンピュータ初心者は、自習教材のニーズは高い。同僚にゼロから教えてもらうのは迷惑をかけてしまうからだ。

さらに「学びたい」というウォンツもそこそこ高い。一方中級者は、ニーズはやや低い。人に聞くこともできるし、オンラインヘルプで解決できるからだ。ウォンツも初心者よりは強くはない。

以上をビジュアル化し、それぞれの位置付けを確認すると明らかに初心者用自習教材の方が販売しやすいことがわかる。確かに、各レベルにあった商品を大量に裁きたいところだが、売れ残るのはどちらであるか明白なのだ。

なるほど、これだけ見ても顧客を意識した商品戦略であることが伝わってくる。このような顧客視点のリアルな戦略が、本書のウリだろう。本書の視座視点を、普段から意識していれば、モノが売れていくしくみがわかり、ちょっとした感動すら味わえるかもしれない。

本来、著者はこの内容を高額の受講料を受け取り、セミナーで商売人に向け講義をしている。それがこの一冊に集約され、なにより本代だけで勉強できるのが嬉しい。著者もそれは陳謝している。数々の著書をのこす実践マーケッターの最新の自信作。一読の価値は十分にある。

会社に行きたくない人悩み相談室

【著者】ジェレミー・ブルモア【訳者】長島水際【出版社】朝日新聞社
【発刊年月】2002年10月05日
【本体価格】1,200円【ページ数】174p【ISBN】4-02-257790-8

上司がアルコール依存症になっているため、近ごろは彼をかばわなければならない機会がますます増えてきました。彼を裏切るようなまねはしたくないのですが、苦しい立場に追いこまれており、上司のためにつきつづけている嘘が、なんらかのかたちでわたし自身に跳ねかえってくるのではないかと心配しています。
本文 85p より抜粋

一切の悩みを持たないで、日々楽しく会社に通っている人は、一体どのくらいいるというのだろう。もちろん、全くいないわけではないだろうが、その数はとても少ないことは、容易に想像がつく。では、その悩みの原因となっているものは、職場における「何もの」なのだろうか。

筆者は、仕事に行きたくないと悩む人たちにとっての、唯一最大の問題は、仕事の本質ではなく、人間性の本質にあると説く。つまり、仕事上の問題の大半は、人間関係の問題なのだと。そして、その問題となる人間関係の悩みを「あら?」という視点から、解決に導いてくれるのが、本書なのだ。

同僚のひとりに、どうしようもなく癇にさわる男がいる…との相談が舞い込む。彼の意見は確かに悪くない。でも、声や態度が鼻につく。しかも、残念なことに、社長は彼のことを気に入っている様子。この同僚に対する偏見を無くすには、どうしたらよいのでしょうと。

筆者の回答は明快だ。あなたがいらだっているのは、彼の声や態度のせいではないはずだ。彼がいい意見を述べ、そして、社長に気に入られているからだと、まず喝破してしまう。その上で、相談者が、その「彼」にそんな態度を取らないでいられる方法を伝授している。

また、ランチタイムになると、銀行に行かなかったからなどと理由をつけては、小銭を借用する上司について悩む部下がいる(どこの国にもこんな人がいるもんだと笑ってしまった)。それに対して、筆者は、かけあって返金してもらうのが筋だけども、と前置きしてから面白いことをいう。

小銭をせびる欠点を補う取り柄、例えば、あなたをみっちり教育し、指導し援助してくれるなら、まあ、それは、授業料みたいなもんだと思えばよいじゃないかと。「気は持ちよう」ということが言いたいのだろうが、いやはやなんとも牧歌的な回答で、ビジネス書らしからぬところが面白い。

そのほかにも、オーナーが経費でジャガーを買ったんだが、どうさせればよいか?や、同僚が鼻が曲がるほど臭いので、その対処法を伝授して欲しい、はたまた、上司の娘が部下になったのだが、給料は高いは仕事は出来ないわで往生しているなど、様々な難問に、筆者は真摯に答えている。

本書は、突拍子もない質問が並び、割とラフな回答が並んでいるように見える。しかし、職場の難しい人間関係を解決するための糸口を、的確に示していることは、読めばわかる。そういえばあの人はこんな感じだなぁと、不思議と読み進めるうちに、浮かび上がってきたりするのだ。オススメ!

インターネット的

【著者】糸井重里【出版社】PHP研究所
【発刊年月】2001年07月27日
【本体価格】660円【ページ数】236p【ISBN】4-569-61614-3

「IT時代のビジネスモデル」を狙う前に、幸せ観、歴史観、世界観を宣言 しなかったら、ものをつくることも売ることもはじまらない。ネットを通じ て「個」と「個」がつながる時代だからこそ、「お客様は神様」原則を乗り 越えなければクリエイティブな市場は育たない。
見返しより抜粋

この本を紹介するかどうか、ギリギリまで迷った。出版直後にレビューしようと思ったが、あまりにも「素晴らしい」内容だったので、人に教えるのが惜しかったのだ。1年たって再び読み返してみて、この本がまったく古びていないことに驚き、本欄で紹介することにした。遅くなってすみません。

糸井重里は言わずと知れた広告業界のスーパースターである。コピーライターという仕事を世に知らしめた人物であり、釣りやモノポリー、ビデオゲームといった異分野にも才能を発揮していたことは、周知のことだろう。その人がインターネットに足場を移して、今も活躍している。

筆者はインターネットそのものよりも「インターネット的」なものに可能性を見出し、魅力を感じている。このインターネット的というのを説明するのはとても難しいのだが(なにしろ筆者はその説明のためにこの一冊を費やしているのだから)、そこには「パソコンさえなくてよい」らしい。

インターネット的について、筆者は「リンク・フラット・シェア」という、インターネット利用者にとっては、ごく当たり前の言葉を提示している。しかし、そのありふれた言葉も筆者の手にかかれば、ピカピカのキーワードとして、本質がむき出しになる。

例えばリンク。一見不要な情報からのつながりに可能性を見せること、それがリンクという考え方である、と筆者は言う。しかし、実はそれは、インターネットが存在する前からあることなんだと、看破する。

今までだって、自身が様々な情報を発信することで、その情報に共鳴し、人と人とが繋がることがあったじゃないかと。それがインターネット的なんだと。なるほど確かに「インターネット的」である。

本書を読み進めていくと、インターネット的という言葉には、インターネットを利用していない人と、既に利用している人とを「結ぶ」役割がある、そのことが良くわかるのだ。

「正直は最大の戦略である」「あの人たちの会社だから、いいよなぁ」という見方をされて好感をもたれることが、経営そのものの重要な要素になってくる時代が、本当にくるような気がする、と筆者は繰り返し述べている。そして、今事実、そんな時代が来ていることは、誰もが気づいているはずだ。

インターネットを利用してビジネスを、と考えているすべての人は、最新技術の話や、マーケティングセオリーが紹介された本を読む前に、まずこの一冊に目を通すべきだろう。ここには、さらに裾野が広がるだろうインターネットの、ごく近い未来が描かれているからだ。

社長!それは「法律」問題です

【著者】中島茂+秋山進【出版社】日本経済新聞社
【発刊年月】2002年06月25日
【本体価格】1,500円【ページ数】326p【ISBN】4-532-14985-1

日本の取締役制度だって、株主代表訴訟制度のおかげで、随分背骨が入り始めているわけですね。公認会計士・監査法人だって、訴えられる時代になったら、変わったでしょう。長い目でみれば、訴えられることはいいことなのです。
本文 180p より 抜粋

とても売れている本で、今さら取り上げるのもどうかと思ったが、やはりかなり面白い一冊であるので、紹介することにした。あのベストセラー「経済ってそういうことだったのか会議」の法律版のような本である。ただし、会議を行っているメンバーは違うけれども。

まず「法人」について語っている。法人ってどんな人なんだろう、法律の世界では「法人実在説」と「法人擬制説」があるのだと、非常に興味深いところから話が始まっている。企業買収や内部造反の生々しい話が、ビジネスの中での「法律」のリアルさを伝えている。

しかも、法律に関する話をしているはずなのに、日本の経営者が役員になって何が嬉しいかとたずねられたら「秘書と車と個室」と答えていて、役員になって何をやる、という話は出ないというエピソードに脱線したりする。話がフラフラと色んなところに行くが、それもまた楽しいのだ。

また、リスクマネジメントの項では、素朴に人を信じすぎる日本人として、リスクマネジメントに真剣に取り組まない日本の会社を「国民性」と絡めて危機への警鐘を鳴らす。日本の経営者はいくら言っても「いや、わが社は大丈夫ですよ」と言ってしまうらしい。

さらに、今注目のキーワードである「コンプライアンス」に関しても、本書は言及している。社会通念上の常識や論理に照らして企業が正しい経営を行うこととして、単なる「法律遵守」だけではないことを、事例を交えて紹介されていて、その「芯」の部分を掴むことが出来る。

そのほかにも「知的財産」「独禁法」「ディスクロージャー」「企業再編」など、興味深いワードが満載なのだ。それぞれにわかりやすい「実例」、ビジネスパーソンとしての素朴な「突っ込み」、法律家としての明快かつ納得な「回答」、それぞれがかみ合って、スラスラと読めてしまう。

また、さらに本筋から離れた話をコラムとして罫線でくくり、紹介しているのだが、特許に目をつけ始めているのは「特許マフィア」と呼ばれる、かなり危ない人たちであること、法律学者というのはいったい何をやっているのか?など、読み物としても「面白く」仕上げられている。

ビジネスパーソンにとって「法律」が無縁ではないことは、昨今のニュース報道を見ていてもあきらかだろう。その場での、対処対応を間違ってしまえば、会社自体が消滅してしまうのだ。知らないではすまないビジネスのルールをこの本で確認してみると良いだろう。お勧めの一冊である。

事業企画書の作り方

【著者】野口吉昭+HRインスティテュート
【出版社】ダイヤモンド社【発刊年月】2001年09月28日
【本体価格】1,800円【ページ数】314p【ISBN】4-478-37380-9

将来のビジョンを共有するには、数字だけではとっつきにくい。いったいどうなっているのか、が見えてこない。イメージが沸かない。という人もいるはずだ。そこで、わかりやすくイメージを共有するために、定性目標を設定する。
本文 136p より 抜粋

仕事上の、何か新しいアイデア(=少なくとも自分自身では画期的なものだと思っている)を思いついたとする。どう考えてもビジネスとして成立しそうだ…社内ベンチャーに応募する、あるいは起業して一山当てようとして、あなたはそのアイデアを形にするためのノウハウを持っているだろうか?

本書はそんな「やりたいことを実現する」ための必修スキルを、企画立案からリスクマネジメントにいたるまで、そのプロセスにしたがって、細かいステップを踏みながら紹介している。効率的にビジネスプランをまとめる方法がギッシリと詰まっているのだ。

まず、ビジネステーマを考える技法として、インターネットの徹底活用を紹介することから始まる(本書はできる限りのことをインターネット利用によって片付けることをテーマとしている=ただし1年前の本なので若干古い記述も見られる)。これはとても嬉しい着眼点である。

潤沢な予算が与えられ、数々のリソースにあたりながら、大規模に作業が出来る環境があればよいが、ほとんどのビジネスパーソンは、自身がそのような立場にはないだろう。自分で思いついたプランをカタチにするための、その手弁当的な作業プロセスにおいて、インターネットを使いこなすことは、とても大きな「鍵」になってくるからだ。

以下、テーマ決めが済んだら、ネットでの市場調査の方法、ビジネスミッションやビジョンの決定技法、ビジネスモデル構築や資金調達の方法、さらには事業収支シミュレーションまで、48のステップに細分化され、それぞれノウハウが紹介されている。

また本書は、視点を変えれば、読み物としても面白い。例えば、考えたアイデアをビジネスモデル特許にするためのプロセスが紹介されている。ネット上で特許検索をし、特許申請のプロセスを紹介するとともに、見ておくべきインターネットのサイトも紹介している。パラパラと興味深いワードを拾って読むだけでも、なんとなくビジネス体力がつく、そんな感じなのだ。

自分は事業企画や起業に縁遠いから…と思われている方も、本書にはぜひ目を通しておくべきだ。ここに書かれている情報の収集から加工までのテクニックは、ビジネスパーソンとして、ぜひとも身に付けておきたいことばかりだからだ。引用にあるように文章はやわらかく、内容も噛み砕かれてわかりやすくなっている。まずは書店で手にとって見ることをお勧めする。

これが週刊こどもニュースだ

【著者】池上彰【出版社】集英社文庫
【発刊年月】2000年09月25日【本体価格】533円
【ページ数】278p【ISBN】4-08-747244-2

国にお金が足りなければ、もっとお札を印刷すればいいんじゃないですか?
──いい質問ですね。私たち大人は、そんなことをすればインフレになって しまうことを知っています。でも、その理屈をこどもたちにわかるように説 明できるでしょうか。
本文 20p より 抜粋

週刊こどもニュースをご存知だろうか?NHKで土曜日の夕方に放送されている「子供向け」のニュース番組なのだが、ご覧になったことある方も多いだろう。子供向けだといって侮ってはいけない。この番組、実は各方面で常に注目されている、とても興味深い番組なのだ。

この番組は、子供に向けてニュースを発信しているが、その中身は「子供向け」だというわけではない。政治、金融、世界情勢などの、込み入った(それは大人にもわかりにくい)話題を取り上げる。「普通のニュース」を、子供にも充分わかるように、知恵を出し、工夫をしている。

本書は、番組のキャスターが、ニュース選びのポイントから、子供たちに伝えることが出来るまでにニュースを噛み砕くノウハウを、楽しい裏話とともに公開した1冊だ。子供たちは持ち合わせている「語彙」と「常識」は大人が考えるよりもずっと少ない。だから苦労は並大抵でなく、ゆえに面白い。

引用部分でいうと、経済学の教科書や専門書を片っ端からチェックしても、「インフレにはコストプッシュ・インフレと、デマンドプル・インフレがある」と書いてあるだけで、なぜ国が勝手にお札をするとインフレになるのかという常識の説明が無いことに愕然とする。

さらには、カラ出張をしていた部下を持つ県知事が、番組の子供レポーターにそれを説明するが、「公金支出の不適切な処理」と言っても当然通じず、いろいろ説明した挙句に「要するに、ウソついちゃったんだよ」と思わず言ってしまったところなど、思わず笑ってしまった。

本書は2つの示唆を与えてくれている。1つは、人に何かを伝達するときには、その伝達すべき内容を完全に理解する必要があること。そして、もう1つは理解した内容を伝えるためには、あらゆる工夫を施す必要があるということだ。当たり前のことだが、おそらく実行できている人は少ないだろう。

仕事における指示やレクチャーに置き換えると、その作業の重要性がわかるだろう。こちらはなんとなくわかったことを、あいまいに伝達し、子供ほど素直ではない受け手は、疑問を呈することなく、いくつか情報が欠落した状態で仕事をすすめる…。これではいけない。

伝えるべき内容を自分のものにするための方法、そして、相手に伝達するためのテクニックが本書には満載である。部下に指示が上手く出来ない、上司に上手く報告が出来ない、そんなお悩みを持つ向きは、一度本書を紐解くことをお勧めしよう。なるほどと膝を打つこと請け合いである。

一橋大学ビジネススクール 知的武装講座

【著者】伊丹敬之/伊藤邦雄/沼上幹/小川英治
【出版社】プレジデント社
【発刊年月】2002年04月27日【本体価格】1,600円
【ページ数】355p【ISBN】4-8334-1747-2

「あの会社は官僚的だから」─。いまや官僚的であることはタブー視されている。しかし、相次いで起こる企業不祥事は、組織とはどうあらねばならないかを教えている。日本企業は自社の組織が真の官僚制組織かどうかを、チェックし再評価する必要がある。なぜなら、創造性や戦略の原点は組織にあるからだ。
本文 180p より 抜粋

本書は、「日本企業の経営課題」「企業価値を創造する経営戦略」「人と組織を活性化させるための戦略的課題」「複雑化する金融・為替を理解する」と4つの講座構成になっている。各講座は、表題にもある一橋大学の経営学修士コースの教育担当者が、分担して執筆している。

トップマネジメントから為替まで、日本企業が抱える問題点を幅広く扱い、しかも私たち(=著者たち)なりに、そうした問題をどう掘り下げるのか、その切り口を深く提供するのが本書執筆の目的だと、はしがきにある。なるほど興味深いコンテンツがギッシリと詰まっている。

最初の講座は「日本企業の経営課題」。最初の課題として、執行役員制度の流行をケーススタディとして、めまぐるしく変化するビジネスの世界を読み解くためのバックボーンを提示する。以下、経営改革が進まない原因を「ロワートップ」に求めたり、トップと現場の遊離を「社長ごっこ」にあると喝破したりと、面白く読み進めていくことができる。

次に「企業価値を創造する経営戦略」講座では、「企業価値」「株主価値」「コーポレートブランド」「流行の経営」「CBバリュエーター」「ビジネスモデル特許」「EVA」など、気になるワードが目白押しだ。

「人と組織を活性化させるための戦略的課題」講座では、組織設計の基本原理を考えるとして、官僚制組織ははたして害悪なのか?と投げかけ、また、会社組織を疲労させる原因として、「人前で大人げなくすごんだり、大騒ぎすることができる、育ちの悪さを基盤とする人」をその1つとしてあげてみたりと、興味が尽きない内容になっている。

最後の「複雑化する金融・為替を理解する」講座では、やはり「為替介入」「ハネムーン効果」「ロンバート型貸し出し」「ドル圏拡大」などの、ちょっと気になるのキーワードが、わかりやすいケーススタディによって、そのアウトラインが解説されている。

この1冊で世の中の経済・経営を読み解けるとは思わない。しかし、ここに提示されている40のキーコンセプトは、ビジネスパーソンとして、最低限知っておくべき「基礎」であるような気がする。新聞を読んで、わかった気になっている「知識」を定着するために、お勧めの本である。

サラリーマンサクセスストーリー

【著者】西村克己【出版社】日本実業出版社
【発刊年月】2002年05月10日【本体価格】1,200円
【ページ数】126p【ISBN】4-534-03399-0

稟議とは提案者が稟議書を作成し、部長から役員、社長にまで回覧させる。 この回覧に時間がかかるのだ。出張や会議で、役員も稟議書に目を通す時間 が少ない。机の上で2~3日放置されることもある。
本文 58p より 抜粋

近頃、若いビジネスパーソンに向けた書籍に変化が現れている。今までも社会の仕組みや今なすべきことを「やさしく」書いてあるモノは少なくなかったのだが、最近はやさしさから一歩進み「食べやすいよう噛み砕いてある」モノが増えてきた。

今回ご紹介する1冊は、その代表格といえるのではないだろうか。腰帯にはこうある。「会社組織の成り立ちから、仕事のノウハウまで、絵本のスタイルでやさしくわかる」と。そう、ついにビジネスパーソンに向けて、仕事の仕組みをレクチャーする「絵本」が登場したのだ。

ストーリーは単純。大手電機メーカーへの就職が決まった主人公が、新製品を社内公募で提案。見事採用になり、新製品開発プロジェクトのメンバーになる。さまざまな苦難(?)を経て、その新製品は大ヒットを飛ばす、というものだ。話自体は、取り立てて面白いものではない。

ストーリーの間には、「社会人のマナー」「企画ってこんなもの」「会社でのものの決まり方」「製品設計全体の流れ」といった、物語りに登場したキーワードを中心にしたコラムが挟まれている。その記述は「これでもか!」というくらい噛み砕かれていて、とてもわかりやすくなっている。

本書を読むうちに、「企画」「プレゼン」「マーケティング」「物流」「広告」「販売」など、必要なビジネス知識がどんどん身についていく。と本書の見返しには謳われている…が、それほど大げさなものではなく、ビジネスパーソンがごく常識的に知っておくべき事柄が整理されているに過ぎない。

こう書いていくと、新社会人以外には本書を薦める理由がないように思えるが…。実は新社会人を教育する立場にあるだろう、先輩ビジネスパーソンにぜひとも読んでほしい一冊なのだ。理由は2つ。

まず最初の理由は「仕事をわかりやすく説明するテクニックが学べる」というところだ。本書はビジネス社会でのさまざまなキーワードを、たとえ話、図解、イラストなどを使って、わかりやすくレクチャーしている。この技術を知らない手はないだろう。

もう1つは「ベンチマーク」だ。自分の新社会人時代とは違う、この程度のことも理解していない、自分のビジネス常識は世間とずれていないか、などを、本書をベンチマークにして確認することができる。

本そのものデザインもとても良く出来ている。バカにしないで、まずは書店で手にとって見るとよい。ナルホドのツボが、たくさんある1冊だ。

ペンギンの国のクジャク

【著者】BJギャラガー/ウォレン・H・シュミット
【訳者】田中一江【出版社】扶桑社
【発刊年月】2002年02月28日【本体価格】933円
【ページ数】167p【ISBN】4-594-03408-X

これは、快適で安全で、規則を守ってさえいれば先が読めることをよしとする世界で、ユニークかつ創造的であろうとすることの危険性と可能性を語る物語だ。
本文 5pより 抜粋

組織の海に浮かぶペンギンの国。そこに所属するのは成功の証だけれど、ペンギンらしくふるまわなければ成功することはできない。ある日、1羽のクジャクがこの国にやって来た。本書は、ビジネス社会における組織と個人のかかわりを見直すためのヒントが満載のビジネス寓話である。

先のクジャクは、組織の活性化を図りたいとするペンギンからスカウトされてペンギンの国にやってくる。クジャクは努力をし業績を上げるが、ペンギンというスタイルに馴染まないことによって、評価されずにジレンマに陥ってしまう。自分のスタイルを変えて、組織に馴染むべきか否か。

本書は、世界のどんな組織でも起きている「守旧派vs改革派」のもたらす問題点をわかりやすく提示している。守旧派の流儀防衛の手口、また改革派の守旧派に対しての歩み寄りテクニック、そして失望、さらには守旧派なりの焦り。物語は意外な方向へと向かっていくのだが…。

話を結末まで書いてしまうのは野暮なので止そう。われわれは多様性を求める、と言いつつ、ペンギンスーツを用意し、ペンギン歩きを強要し、組織の中に埋没させようとする官僚的な組織の人たちのことを「ペンギン」に例えたセンスが、言いえて妙で笑えてしまう。確かにペンギン…そう見える。

巻末には、ペンギンの国の中でクジャクやそのほかの鳥として生きていくヒント、そしてペンギンを飛ばせるためのアイデアがまとめられている。本書の肝はこの部分にあると言っても過言ではない。ビジネス社会における組織に蔓延する、さまざまなジレンマを解決する糸口がそこにはある。

例をいくつか挙げておこう。例えば、他所に行きたくないクジャクのためには、サバイバルテクニックとして、仕事の実績がウリになるのだから、何より仕事を頑張ろうとし、いざとなったらペンギン・スーツを着ることも厭わない「柔軟性」を持とうと提案。さらに、嫌なら辞めちゃえばとも言う。

また、ペンギン振りを指摘する方法として、ペンギンたちがいかにも言いそうなフレーズを列挙している。「ここでは、そういうやり方はしない」「社長が承知しない」「ここは無難にいこう」「だまって、わたしのいうとおりにすればいいんだ」身に覚えのある言葉が並んでいて、驚いてしまう。

本書は、組織に馴染めない個性派社員にも、組織を活性化しようとする管理職にも一読をお勧めしたい。組織とはなんなのか、活性化とはどういうものなのか、何となくわかった気でいたことが、ここではっきり言語化できるはずだから。何より、すっと読めるのが嬉しい。

ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本

【著者】向山淳子+向山貴彦【出版社】幻冬舎
【発刊年月】2001年12月20日【本体価格】1,300円
【ページ数】171p【ISBN】4-344-00140-0

今回、この本を書くにあたって、英語に触れてきた半世紀の経験から、日本 国内でもっとも有効と思われる英語の勉強法を整理してみました。(中略) 本書が一冊で英語のすべてがわかるといった本ではなく、英語の世界に足を 踏み入れ、実践の中で英語を学んでいくことを前提とした「準備の書」だからです。
本書 はじめに より抜粋

今書店を賑わせている注目の一冊である。ちょっとかわいらしい「猫」とともに、キュートな表紙をご覧になった方もあるだろう。あの本のことだ。昨年末に発売された同時に話題となり、今売れに売れている。現在、書評担当者の私の手元にある本は、2002年1月5日発行のもので第4刷となっているのだ。これは凄い勢いである!

山口県下関市の梅光学院という小ぢんまりとした大学で教鞭をとる筆者は、自らの若い時の体験と(詳しくは書きませんがなかなかドラマチックなようです)述べ千人以上の学生をアメリカに正規の留学生として送り出してきた試行錯誤の中から、地道ではあるけれども、初心者から中級者を対象にした「日本国内でもっとも有効と思われる英語の勉強法」を生み出した。

その内容は至ってシンプル。英語は「簡単な言語」であると認識すること。英語は人間の「思考の順番と同じく言葉が並べられる」こと。英語は英語であって「英会話やヒアリングといったジャンルは存在しないという」こと。唯一の上達法は「たくさん英語を読む」こと。それだけのことで、日本人が苦手としている「英語」が上達するのだという。

英語で書かれた文章をそれこそ「浴びるほど」読むことによって、覚えたという記憶すらない「無意識の記憶」をまずは作り出す。その土台を作らない限り、言葉は身に付かないのだと筆者は言う。意識して思い出さなければならない記憶なんて、人間の思考スピードやしゃべる速度についていけないハズだからと、日本語なら至極当然と思えることが、本書には書かれている。

考えれば実にその通りだ。日本人の子供は流暢に日本語を話すが、話している内容はたわいもない。ビジネスに必要な内容が話せるわけがないのだ。ビジネスパーソンは、日ごろから様々な情報に「接し続けている」からこそ、そのような「仕事に必要な会話」が出来るようになるのだから。脳の固まった「大人」なら、なおのこと「論理的」に学ぶことが、必要と思われる。

本文中にたくさん添えられた、英語の構造を示すための図版類がとても素晴らしいほか、難しい文法用語は一切排除してあるなど、この本には、紹介し切れなかった素晴らしい点がある。少しでも英語に不安を持っている人は、ぜひ手にとって見ることをお勧めする。これならわかる、ぜひ英語を勉強しよう!と思うこと請け合いである。イチオシ!

世界がもし100人の村だったら

【再話】池田香代子【対訳】C.ダグラス・スミス
【出版社】マガジンハウス
【発刊年月】2001年12月11日【本体価格】838円
【ページ数】64p【ISBN】4-8387-1361-4

「 20人は栄養がじゅうぶんでなく1人は死にそうなほどですでも15人は太り過ぎです。
本書 本文 より抜粋

中学校に通う長女の担任は生徒たちに、毎日メールで学級通信を送ってくださるとてもすてきな先生です。そのなかに、とても感動したメールがあったのでみなさんにも送ります。少し長くてごめんなさい。-このなんとも言えない手触りのやさしい文章から始まるメールを、あなたも多分受け取ったことがあるだろう。あの-世界がもし100人の村だったら-が本になった。

世界に住む、63億の人たちを100人の村になぞらえたこのメール。そのうちの52人が男性で、48人が女性。30人がこどもで70人が大人。そのうちの7人がお年寄りであると続く。さらに、異性愛者と同性愛者、有色人種か否か、どの地域に住む人なのか、どんな宗教を信じている人たちがいるのか、どんな言葉を喋る人がいるのか…。世界をスケール化していく。

さらにメールはその村に住む人がどのような暮らしをしているのか、ということもスケール化していく。栄養状態、持てる富、使用するエネルギーの割合、きれいな水が飲めているのか、預金、車の所有、教育、コンピュータ、識字率…。100人という単位で、世界の人たちの暮らしぶりをみると、いかに格差があるか、ということがまざまざと浮かび上がってくる。

そして、メールは世界に住む人たちがおかれている状態に言及する。迫害されているか否か、死の恐怖に直面しているかどうか、この村では1年に1人が死に、2人が生まれている。自分たちが想像している以上に、世界の人には自由はなく、そして、安全に暮らせていないことも、このメールは教えてくれる。そして、今の自分の状態が素晴らしいということも同時にだ。

このメールは、インターネット上で流布することによって、様々な文章の改良や追加、削除が繰り返されて、そして、今もまるで「ボトル・メール」のように流され続けている。本書では、このメールの素性から、改編の経緯などが詳しく解説され興味深い。著者は、このメールを「インターネット・フォークロア」と呼び、グローバル時代の「民話」であるとしている。

ビジネス・パーソンである本誌読者は、本書をどのように捉えれば良いのだろうか。書評担当者である私はこう考える。「座標軸」だと。ある人は「コンピュータの普及率」を見て、市場の可能性を見出すだろう。また別の人は「英語よりも普及している言葉」として、中国語に着目するのも良いかもしれない。そう、自分の知らないスケールには、思わぬ発見がある。

そんな難いことは抜きにして、一年に一度くらいは仕事ではなく、例えば、世界の色々なことに思いを馳せてもよいのではないだろうか。本年度最後のブックレビューだからこそのチョイスである。すべての人にラブ&ピース…ている…様な気がする。まずは書店で手にとって見て欲しい。買いたくなるはずだから。

シーマン語録-現代人への185の賢言

【言】シーマン【編者】斉藤由多加【出版社】ダイヤモンド社
【発刊年月】2001年11月08日【本体価格】1,000円
【ページ数】224p【ISBN】4-47870237-3

「ボーナス」が必ず出ると思われてるこの国の文化が幸せすぎるんだよな。
(今年はボーナスに不満がある、と答えたサラリーマンに対して)
本書 9p より抜粋

シーマン?という方でも、顔は人間でカラダは魚と言う、妙に小生意気(とつい思ってしまう)な毒舌を吐く、不思議な生き物をモチーフにしたテレビゲームのコマーシャルは目にしたことがあるだろう。あれである。シーマンとは、古代エジプトの時代から伝説として語り継がれてきた生き物(と本書ではなっている)こと(らしい)。

もともと「シーマン」というゲームは、画面の向こうにいるシーマンと、プレーヤーが会話できるところに「ミソ」がある。本書は、その会話(?)の中で生まれた、その妙な生き物からの名言集・・・?みたいなものだ(上手く説明できない…)たぶん。

なんだゲームか!と侮らない方が良い。この本、只モノではないのだ。シーマンからの言葉の贈り物は、仕事/職場編に始まって、事業/経営編、出会い/恋愛編、人間関係編、水商売/ホステス編と多岐に渡る。腰帯に「人生に迷ったときに開く本-現代人を覚醒させるヒントがある」と銘打つだけあって、目からうろこの言葉が満載なのだ。

例えば、今の会社を辞めようと考えている…とシーマンに告白した中年サラリーマンは、「多くの人が、転職することで自分自身の価値を確認したいって、思っているみたい。」と返されてしまう。あっ、読者の皆さんは、今ドキッとしなかっただろうか?

また、キャリアウーマンを目指すとシーマンに宣言したOLに対して、「人生の勝者っていうものは、なんだと思う?俺は、楽しんだもん勝ちだと思うね。」と本質を突き、時間にルーズなことについて「時間どおりじゃなくても、早く来るヤツは、ルーズって言わないもんな。」と驚愕の定義を導き出してしまう。ウーンと思わす唸ってしまう。

さらに、嫌な仕事をしないと言った社会人には、「そもそも人がしたくないようなことだから仕事って呼ぶんだ。だれもがしたいことは快楽っていうんだ。」と喝破する。一ページに一言。サクサクと、しかしつい、かみ締めながら読んでしまう。何故だろう。

ここに収録されている言葉は、一読して「わかっているヨ!そんなこと!」というものが多い。しかし、よく読み返してみればわかる。本当にわかっていたことなのか?いつもそう思っているのか?自分に今足りなかった視座視点は何か、シーマンは警告してくれている…様な気がする。まずは書店で手にとって見て欲しい。買いたくなるはずだから。

2003年の「痛み」

【著者】水木楊【出版社】PHP研究所
【発刊年月】2001年09月28日【本体価格】1,100円
【ページ数】157p【ISBN】4-569-61871-5

(前略)高齢社長の中には、総会でのキツイ質問をおそれるあまり、失禁をする者すらいる。そんな連中はみなオムツをして総会に臨んでいるのを知る者は少ない。
本書 39p より抜粋

激動する国際情勢の影響によって、首相がやると宣言していた「痛みを伴う構造改革」が見えにくくなってきている。マスメディアの報道をつぶさに点検しても、よくわからない、というのが実際のところだろう。今日紹介する本は、この「改革」が実施された場合、起き得るかもしれない「近未来」をシミュレーションしたものだ。

話は2001年12月2日から始まる。主人公は赤司光二、47歳。つい1カ月前までは中堅広告代理店の部付部長だったが、その子会社に転籍になっている。専業主婦の妻、就職を断念してフリーターを気取る長男、私立高校生の長女という家族。浜田山のマンション暮らしだ。これらの家族の2003年9月までの物語なのだ。

主人公の会社は倒産してしまう。同窓生はホームレスになって、デモに加わり首相官邸に突入していく。妻はリサイクルショップで働き、様々な節約生活術(=風呂水は一週間に一度しか取り替えない、ストッキングに玉ねぎを入れて保存する…など)で家計を支える。娘は公立高校に変わる…景気が悪化するとともに、登場人物たちの暮らしぶりは、変化していく。

さらに、ショッキングなのは、高校卒業後の娘が大学進学を断念して東南アジアの工場に集団就職していくシーンだ。真っ暗闇の最悪シナリオを描けば描くほど、みなさんは、そうならないためにはどうしたらいいかを真剣になって考えるはずである、と本書腰帯にあるが、まさにその通り。どうすれば良いのか、評者である私は、読後に考え込んでしまった。

小説部分に随所に出てくるキーワードは、新聞にも良く出ている言葉でもある。丁寧に解説が施してある。また、この小説のブリーフィングと題して、今回の構造改革を推し進めると、何故最悪シナリオが起動してしまうのか、を解説してくれている。これもわかりやすい。今のニュースを読み解くための知識のある程度は、この本で得られてしまう。掻い摘んで知っておくためにも、お勧めである。

本書はリアリティをセールスポイントにしながら、ディテールに荒唐無稽な部分があり、予測ではないシミュレーションであっても、首を傾げざる終えない部分もある。しかし、それを補って余りあるほど、突きつける課題は大きく、そして深い。今、すべてのビジネスパーソンが考えるべきテーマを、この本は熱く提示している。すぐに読むべきだろう。

知のミネラルウォーター

【【編者】ネイチャー・ジャパン【出版社】徳間書店
【発刊年月】2001年09月30日【本体価格】1,000円
【ページ数】189p【ISBN】4-19-861414-8

現代農業は、多くの人に原始的で非能率的だとみられている伝統的農法から、きつい反撃パンチをくらった。コメの品種を混ぜて栽培すると、単一栽培よりも病気に強いだけでなく、収穫量も増えることが最大規模の実験で示された。
本書 165P より抜粋

テレビを見ていると、宮崎アニメの魅力の秘密!というようなものが流れていた。その内容も興味深いものだったが、それ以上に心惹かれたのは、そこに登場した学者の研究内容についてだった。

蝶などの生物と、風船などの無生物の動きを、赤いポイントにして、その移動をアニメーション化して…どちらが生物的な動きか?ということを実験しているのだという。無生物の動きは、そのままでは生物的に見えないが、逆再生すると見えるという話だった。なるほど。そこで1つの不思議がある。そんな研究をして、それがどのように世の中的に生かされるのだろうか…。

まあ、何か用途はあるのだろう。しかし、素人目にはまったく不明である。長々と前ふりしたが、今回紹介する本は、そんな興味深く面白く、そして不思議な、学者先生たちの研究をコンパクトにまとめた、コラムがいっぱい詰まった本である。

例えば、スチュワーデス。この仕事には危険がいっぱいだという。休息時間なしの長距離飛行を続けると、脳内の思考と学習を行う部位である皮質と海馬の一部が萎んでしまうのだとか。要は、時差ぼけによって、脳が痩せちゃうというのだ!事実、長時間の飛行を繰り返すスチュワーデスたちの中に、記憶力減退に苦しんでいる人もいるらしい。

さらに、野菜嫌いは遺伝するのだという研究を続けている学者もいる。遺伝的に苦味を感じやすい人がいるそうで、その人たちは、芽キャベツやホウレンソウなどの果物や野菜は食べたがらないそうだ。その数は約25パーセント。男性よりも女性に多いそうだ。なるほど。

他にも、・良い成績を取るためにはまずは睡眠からだ・酒を飲むことは悪いことばかりではないこと・ヒヒの尻はどうして大きいのかということ・テレビ映像に感動するチンパンジーの話・牛のゲップが原因で地球が温暖化してしまう…など、とにかく盛りだくさんなのである。楽し過ぎる。

ビジネスパーソンに本書をお勧めする理由は1つ。それは、本書の腰帯にもあるが「脳への栄養」である。科学者たちはこんな面白い研究をしているのかというある種の「感動」や、知的好奇心を「満足」させる内容に、読むだけで脳が活性化する…そんな感じがするのだ。

そして、なにより手軽で、記述は実にわかりやすい。書店で手に取れば、この本の良さはきっとわかる。お勧めしておきたい。

サラリーマン社会小事典

【編著者】松野弘【出版社】講談社(現代新書)
【発刊年月】2001年08月20日【本体価格】840円
【ページ数】381p【ISBN】4-06-149564-X

マトリックス組織、コア・コンピタンス経営、フレックスタイム制、転籍、出向、ワーキング・ランチ、社内恋愛……サラリーマン必須の基礎用語184項目!
本書 腰帯 より抜粋

さて、自分が今居るサラリーマン社会について、あなたはどの程度のことを知っているだろうか。会社の中のことくらいは判っているだろうが、大きな視座に立ってみると、理解していないことが多いだろう。そんなサラリーマン社会を知るための網羅的で、ユニークな用語集が出た。それが本書である。

初めに、サラリーマンとサラリーマン社会の形成と変遷が語られている。かつてサラリーマンはエリートであった。高等教育機関から作り出された、企業の経営幹部を守る立場の人であったのだ。その後サラリーマンは大衆化、フツーの人の代名詞になるのだ。今や労働人口の八割を占める。

続いて、サラリーマン社会で働くことの意味がよくわかる用語…が解説されている。役職定年制、早期退職優遇制度、メンタルヘルス対策、過労死、オープンエントリー制、アウトプレースメント、社内FA制、労災など、人事や労務について、重要で新規性の高い、実に気になるワードが並ぶ。

さらに、サラリーマン社会で企業経営のことがよくわかる用語…として、企業フィランソロピーや、機能別組織と事業部制組織など、21世紀の会社がどの方向に進みたいのかがわかるワードが並べられている。それを知ることで、自分が企業社会の中で何をすべきなのかがわかるようになっている。

また、サラリーマン社会で企業の人材開発のことがよくわかる用語…の項では、社内公募、自己実現、メンター制度など、企業が人を作るための今後の方向性が解るキーワードが書かれている。自分が受ける教育の持つ意味を網羅的に知っておくべきだということは、言うまでもない。

本書は、産業社会論を大学にて教える教授と、その人が主催する、若手から定年間際のサラリーマンで構成された「サラリーマン社会研究会」が執筆に協力している。サラリーマンの社会の中で、実際に経験した事柄を元に書かれている分、リアリティを感じる内容になっている。

一つ一つのキーワードをそれほど深く言及しているわけではないが、その言葉の意味を確実に理解することは出来るようになっている。さらに、執筆者たちは、用語批評という社会現象の分析を通じて「サラリーマン社会論」的なモノを展開しようと試みている。そこがなかなか面白い。

メインコンテンツの間に挟まれる「コラム」もなかなか味があり(=ラッシュアワー時の到着駅のトイレがどうして混雑しているのかに言及したりしている…)、通勤途中の電車の中などで、パラパラと読むには最適の一冊といえるだろう。おすすめ。

業界用語辞典

【編者】米川明彦【出版社】東京堂出版
【発刊年月】2001年09月10日【本体価格】2,800円
【ページ数】393p【ISBN】4-490-10572-X

ごごいち[午後一]<広告>午後一番。◇言語92.2「午後一番の略。広告業界では二時頃を指すことが多い。ちなみに、今日中は、翌朝には、ということ。朝一は十時から十一時の間というのが定説」
本書 244p より抜粋

普段仕事をしている時に使っている何気ない言葉の中にも、実は自分の職場でしか、また、自分が仕事している業界内でしか通用しないモノがあるはずだ。社会に出て、その「符牒」らしきものを、さりげなく使いこなせた時、何となくその集団の一員になれた気がしなかっただろうか?そう、業界用語と言うのは、その集団に属している人のロイヤリティも向上させる。

今日紹介する本は、日本で初めての本格的な隠語・業界用語辞典である「集団語辞典」から、86業界で毎日使われている4800語を収めた画期的な辞典である。といっても、本欄で紹介するんだから、実用として使って欲しい、と言うわけではなく、読み物として紹介している。この辞典…とても面白いのだ。

例えば、百貨店業界(ホントはそんな業界はないけど…)には「トイレ」の別称があることは、よく知られていることだろう。しかし、「いちご摘む」「いの字」「遠方」「奥」「三三」「十番」「神閣」「仁久」「三軒屋(すけんや)」「スタジオ」「二の字」…ほか、14通り以上もあるなんて、知ってましたか?しかも、音を聴いても理解できない言葉ばかり…。

さらに、本書によると、「遠方」は三越の店員の間での隠語であり(今も使っているのかしら?三越の方、いらっしゃいましたらメールにてご教授ください!)、シンカクは松坂屋、サンサンは大丸、すけんやは東急や西武、二の字は松屋の、それぞれ隠語となっている。トイレ1つで、どうしてこれほどまでに違うのか、しかし東急と西武は同じなのかなど、興味は尽きない。

本書は感心するくらい、実に幅広い業界を網羅している。収録されている業界は、銀行・証券・保険などの金融関係をはじめとして、デパート・病院・航空、果ては、魚河岸・相撲・芸者、さらには、警察や官庁まで。一語一語に、小説や雑誌などから拾った使い方の用例があげてあるので、言葉の意味が確実に理解できる。言葉は生き物である、ということがわかる。

実は本書、読んですぐに役に立つと言う人は、ほとんどいないと思われる。業界用語を知ったからといって、半可通になっても仕方がないはずだ。しかし社会人たるもの、引き出しは多く持っていた方が良い。自分が関係する業界の「不思議な」言葉を覚えておいて、話のキッカケにするものお勧めだ。仕事とはコミュニケーションだ、ということがわかるはずだ。一読を!

実学入門・なにが小売業をダメにした

【著者】石原靖曠【出版社】日本経済新聞社
【発刊年月】2001年04月05日【本体価格】1,600円
【ページ数】239p【ISBN】4-532-14905-

日本のチェーンストアは、(中略)みなが同じ教科書を持って、同じビジネスモデルを追及してきたことで、企業間の差異がほとんどないという店の同質化が進みました。
本書 8p より抜粋

日本の小売業が未曾有図の事態を迎えていることを認識していないビジネスパーソンはいないだろう。なぜ、ここまで日本の小売業がダメになってしまったのか。本書では、小売業の不振の原因を徹底解明。その原因を「顧客満足をはき違えたこと」として、復活のヒントを提示している。

本書で筆者は、日本の小売業における危機的状況を作った要因の多くは「貧しい大衆のために、とにかく安い商品を提供したい」という想いが強すぎ、「安さのためには、自分たちのやり方に従ってもらう」という、本末転倒の発想に陥ってしまった結果だとしている。心当たりがないわけでもない。

大型スーパーなどは、ここのところ人員を大幅に削減してきていた。その結果、売り場に店員の影が無くなってしまっていた。説明がほしい商品を購入しようと思っても、店員を探し出すのに四苦八苦である。これでは、お客の側が商品を理解しているという「前提」で買い物をしなくてはならない。

また、買い物カートを利用するために100円玉が必要(まあ、一定の場所に返却すればお金は戻ってくるんですが…)といった施策に至っては、お客に店のオペレーションを負担させているに他ならない。それでいて、それほどには値段を安くできないというジレンマに陥っている。中途半端なのだ。

本書では、流通小売業態の「まるで博覧会」のようなアメリカの豊富な事例を引いて、これら日本の小売業が抱える問題点を解決するための糸口を提示している。そして買い物の場を「夢を楽しむ」「近くて便利な」「ワンランクアップ」と3つのステージに見立て、そこに存在する「顧客利益」を考えることを提案している。なかなか興味深い。

少子高齢化時代を迎えて、価格志向は通用しなくなる、と言う論に対して、「じゃあユニクロは?」という声も聞かれる。ユニクロは確かに低価格路線ではあるが、それ以上に「カジュアル・ファッション」をトータルに提案することで、今まで「何を普段着たらよいかわからなかった」人たちを、顧客として掘り起こした。つまり、新しい顧客利益を生み出していたのだ。

腰帯にもあるが、この本は専門用語はできるだけ排除し、語り口調で書かれてある。この分野に精通していない人間にとって、これほど有難いことはないはずだ。流通業の不振構造(=顧客主義のはき違え)は、実は他の業界にも起きうるだろう。間違わないためのヒントが満載されている本書に、ザッと目を通しておくことをお勧めしたい。

ハイテクハイタッチ

【著者】ジョン・ネズビッツ
【訳者】久保恵美子【出版社】ダイアモンド社
【発刊年月】2001年06月07日【本体価格】1,800円
【ページ数】305p【ISBN】4-478-19040-2

ささやかな変化を感じ取るこうした能力は、時計、誰かとの約束、仕事の締め切り、お気に入りの夜7時のテレビ番組などが生活に入り込んだ現代では、すっかり衰えてしまった。
本書 50p より抜粋

あとがきによると、本書の著者の1人であるジョン・ネズビッツは、世界的な視野に立った社会現象分析の書を数多く著している未来予測学者であるとのこと。ベストセラー「メガ・トレンド」で名前を知っている、という方も多いだろう。本書は、テクノロジーに支配されている社会の中で「人間らしさって何」という問題を投げかけている。コレがなかなかに面白い。

面白いコラムの例を1つあげれば、テクノロジーが進化することによって、便利になるどころか「ストレス」が発生してしまう。そこでストレスから逃れるために「ハイテク」から逃れるわけだが、結果的に、テクノロジーの存在しない「シンプルライフ」は、とても複雑なものである、ことを紹介している。求めたシンプルは複雑だった…どういうことだろう。

ビル・ゲイツの自宅のように、すべてがコンピューターで制御された暮らしは、ボタン1つで快適な生活環境が手に入れられる。しかし、ガスも電気も水道もないシンプル・ライフでは、通常レベルの生活環境を手に入れるだけで、薪を割り、火を起こし、水を汲む、と様々な「タスク」を要求し、実現するための「スキル」を求められる。よっぽど複雑ではないか!

しかし現実的には、テクノロジーに囲まれて快適な暮らしをしている人は、その暮らしから逃れるために「旅」に出て不便を享受する。一方で、普段から不便な暮らしをしている人は、旅に出たいとも思っていない。2つの暮らしの間に横たわるキーワードは「人間らしさ」と言うことになるのだろう。テクノロジーは、人間らしさを満足させるまでには進化していないのだと。

本書では、ハイテク社会がもたらす「息苦しさ」を解消するためには、人間らしさという視座視点を忘れてはならないということを、アメリカでの様々な実例とともに教えてくれている。これからのビジネスパーソンが備えておくべき見識の1つだろうと考える。

本書は2部構成になっていて、第2部では「宗教」「芸術」をキーワードにして、遺伝子テクノロジーを詳しく検証している。遺伝子操作による生命のコントロールを止めるには、人の倫理観しかない。欧米では宗教がその拠りどころになるが、宗教観の希薄な日本ではどうなんだろうと、いろいろ考えさせられる内容になっている。読み応えある「お買い得」な本。お勧め。

リーディング・ザ・レボリューション

【著者】ゲイリー・ハメル【訳者】鈴木主税・福嶋俊造
【出版社】日本経済新聞社【発刊年月】2001年01月25日
【本体価格】2,200円【ページ数】423p【ISBN】4-532-14881-2

慣れ親しんでいるが機能しないビジネス・モデルと、斬新ではあるが試されていないビジネス・コンセプトの狭間にいる個人は、次のような不安を感じている。長年培ってきた技術と人間関係は、新しい枠組みの中でも通用するのだろうか。どの程度まで過去を断ち切らなければならないのか。新しい世界に適応していくためには、どれほどの努力が必要なのか。
本書 330p より抜粋

変革が叫ばれだして久しい。今、変わるということがまるでブームのようである。しかし、引用部分を読めばわかるが、今までのことを、さあ変える、と言っても、それはとても難しいことである。変化を促すためのモチベーションとなるもの…本書には、新しい世界へと飛び出すための、価値ある理想が詰め込まれている。

本書では「企業革命家」になることを勧めている。自分の会社を変えたい、変えないと未来がない、と考えているビジネスパーソンであれば、誰もがこの本を読むべきなのだと。

ビジネス社会では、手放しでの進歩が終わったと同時に、イノベーションの時代が登場し、そのスピードが、今までの企業の現状維持に必要な「囲い」をなぎ倒してしまっている。そんな時代に必要な人材は、企業革命家なのだと、その実践すべきノウハウが書かれているのだ。

とは言っても、取り立てて難しいことが書いてあるわけではない。現状をよく分析し、理解をした上で、先を見通し、クリエイティビティの高い施策を実施しなさい、ということだけである。シンプルではあるが、なかなか実行できないことでもある。自分自身の変革のテクニックはもちろん、他人や会社までを、上手く巻き込むためのノウハウも、書き込まれている。

類書との決定的な違いは、ビジネスの現場から得た豊富な事例をもとに、セオリーを紹介しているところだろう。実務家としての視点で書かれたものであるから、リアルで実用に耐えうる内容になっている。また、具体的に何をすれば良いのか、が、きちんと書かれている。これなら、新入社員から中間管理職まで、誰が読んでも役に立つことは、間違いないだろう。

なお、この本、ビジネス書にしては異例の「デザインを意識」した紙面になっている。従来のビジネス本は、単に文字の羅列と、無味乾燥なデータを割付ただけにすぎなかったが、本書は、印象的なビジュアルを随所に盛り込んでいる。このあたりも、なかなか今までにはなかった本、と付け加えておきたい。少し前の本ですが、ぜひご一読を。

日本を知る105章

著者】コロナブックス【出版社】平凡社
【発刊年月】2001年05月25日【本体価格】2,000円【ページ数】326p
【ISBN】4-582-63390-0

Among the numerous variety of human relationships,
the duty of justice to be pursued as a human being is called giri.
There is no other word quite so typically Japanese.
Besides, there is no exact equivalent to the word in English.
本書 254p より抜粋

新しい上司はフランス人♪…とは、今流行るあの歌のワンフレーズだ。インターネットの普及を始めとして、ビジネスパーソンの交流範囲もかなりインターナショナルになったことを感じている方は多いだろう。さて、自らの周辺は国際化した、しかし、自らの足元である「日本」のことを、周りの人たちにきちんと説明できるだろうか。今回は趣の違うこの1冊を。

本書は「いき」から「演歌」まで、知っているようで意外と知らない(=きちんと説明できない)日本のいろいろを105のキーワードとしてピックアップし、日本を代表する作家・文化人たちが解説をおこなっている。キーワードにピッタリな写真とともに、全文英訳が付いている。この解説、なかなかの含蓄で、おもわず「なるほど…」と唸ってしまうモノになっている。

取上げられている105のキーワード。その守備範囲は意外と広い。生け花や武士道、禅、茶道といった、オーソドックスなもの。富士山、松、ひらがな、といったもの。パチンコや漫画、ファミコンなどの新しい文化。また、変わったところでは、愛想笑いや受験戦争、満員電車などといった、いわゆる日本らしいトピックスが並んでいる。かなり楽しく読み進められる。

例えば…義理。対人関係のなかで、人として踏みおこなわねばならぬ道や、道理のことを<義理>という。が、この言葉、代表的な日本的フレーズであって、英語に相当する言葉はないらしい。そして、外国人にとってこれほど厄介で始末におえない言葉ないに違いない、としている。日本人の対人関係の基本を、あなたなら外国人に対して、どのように説明するだろうか?

異なる文化に育った人に対して、自らの文化を適切に説明することはかなり困難である。しかし、話題として求められることは意外に多い。ちょっとしたコミュニケーションツールとして、今時のビジネスパーソンなら、本書に載っていることくらいは、最低限身に付けておいたほうが良いだろう。

わかりやすい(直訳にかなり近いが…)英訳も案外ためになる。難しい解説を、実にシンプルな英語で表現してある。日本語と併せて読めば、意外なスキルアップも期待できるだろう。まずは書店で手にとって欲しい。本欄としては変化球だが、お勧めである。

ニュースをみるとバカになる10の理由

【著者】ジョン・サマービル
【訳者】林岳彦/立木勝【出版社】PHP研究所
【発刊年月】2001年05月10日【本体価格】1,500円【ページ数】233p
【ISBN】4-569-61582-1

(前略)見逃されている重大なことがある。この本はその問題点を指摘するという意味で他書とは一線を画している。「その問題点」とは、ニュースの「定時性(デイリネス)」、つまり日々欠かさずにニュースが流れているということである。
本書 12p より抜粋

あるタウン誌のライターに聞いた話である。その地方に大きな水族館が出来た。入場者一番乗りは県内でも有名な「一番乗り専門(世の中にはこういう人もいるのだ)」の男性であった。しかし、翌日の新聞には最初の入場者として、県外から来た中学生2人組が紙面を飾っていた。何故こういうことが起きるのだろうか。本書を読めば、その理由がわかるはずだ。

新聞は毎日決まった時間に一定の量が届けられている。テレビやラジオといった放送メディアのニュースも、定時に流されている。当たり前のことなのだが…ここに落とし穴があるというのだ。世の中で起きている「ニュース」と呼ばれる出来事は、日々一定量起きているわけでは、当然ない。

また、それぞれのメディアが、世の中で起きているすべての「ニュース」を伝えているわけでもない(物理的にも出来るわけがない)。しかし、時間がくれば新聞は発行しなければならないし、テレビ番組はオンエアーしなくてはならない。まず、その定時性が「ニュース」というコンテンツの信頼感を損ねているというのだ。

さらに、ニュースは「広告を売るための道具である」というジャーナリストの言葉を引いて、稼ぐためのニュース作りについて言及している。読者を惹きつけるための見出しやレイアウト、ショッキングな写真、すべてを知らせずに小出しにする内容など。当たり前のことではなく、当たり前でないことを伝えるのが「ニュース」の役割であるとしている。考えてみればそうだ。

また、速報性の名の元に、ニュースが取上げる内容は、そのトピックスのごく一部に過ぎないことを指摘。あるトピックスに対して議論を深めるほどの情報量を、新聞やテレビが提供できているとは思えないとしている。ニュースは、半可通ばかりを生み出しているのではないのか、そう考えると、新聞やテレビは見ないほうが健全なのではないのか…と思えてくるのだ。

本書に書かれていることは、ある意味で一方的で得心いかない部分もある。実際、自分で収集できる情報など多寡が知れているわけで、ニュースの良い部分は計り知れないのだから。一方、本書が指摘するようなことを忘れて、発信されている情報をすべて信じて(そして頼りにしても)も、またいけないのであろう。情報社会に住む私たちが、必ず持っていたい視点を得るために、目を通しておくことを薦めておきたい。

これまでのビジネスのやり方は終わりだ

【著者】リック・レイバン クリストファー・ロック
ドク・サールズ デビッド・ワインバーガー
【訳者】倉骨 彰【出版社】日本経済新聞社
【発刊年月】2001年03月23日【本体価格】1,600円【ページ数】301p
【ISBN】4-532-14902-9

ネットで成功するための、クルートレインの12ステップ
1 リラックスする 2 ユーモアを持つ 3 自分の肉声を見つけそれを使う4 真実を語る 5 パニックに陥らない 6 楽しみながら働く 7 大胆に行う 8 好奇心を忘れずに 9 遊び心を持って 10 夢を持って 11 人の話に耳を傾ける 12 お喋りをつづける

インターネットを利用してビジネスをするものにとっての最大の悩みは、事業として成り立つのかが判断しにくい、と言うことだ。正確に言うと、自分たちが今まで培ってきた、判断のためのスケールが、まるで通用しない、となるのかもしれない。本日紹介する「これまでのビジネスのやり方は終わりだ」は、そんな悩みを解決する糸口が見つかるかもしれない一冊だ。

まず冒頭に「95のテーゼ」題して、ビジネスの要素=市場・企業・顧客・コミュニケーション・ワークマネジメントが、インターネットの出現によって劇的に変わったことをまとめている。このテーゼの中で貫かれていることは、一方的なものは古びた、これからは双方向なのだ、という点である。

せっかく、企業と顧客が、上司と部下が、ダイレクトに結ばれたんだ、もっと話そうよ、ということである。そして、その押し付けではない、インタラクティブなコミュニケーションが実現したとき、顧客は満足し、社員は画期的な仕事をし、社会は笑いの絶えないものになるのではないかと、本書では述べられている。なるほど、素晴らしい。

ということは、今までのビジネスマネジメント(=一方的な管理や命令)や顧客とのコミュニケーション(=プッシュタイプの広告や両者間のコミュニケーションチャネルが細くリアルタイムでないこと)が、まるで通用しない世界である、ということになる。新しいメジャー(=コミュニケーション)を持って、ビジネスを構築していかなくてはならない、そんな時代であることを教えてくれているのだ。

サブカルチャー的なフレーバーのする本書は、翻訳もそのテイストに習っている。したがって、サクサクっと読めるという感じではない。また、その多くのパラグラフは、インターネットの最先端を行く人(=マニアではない)のマインドであって、マスな意見ではないだろう、とも思える。

しかし本書に記されている「人間同士の会話がビジネスを作り出していく」というポリシーは、これからの時代のビジネスを考えるうえで、必要不可欠なモノとなるだろう。それに触れるために一読をお勧めしておきたい。ビジネスとは人の声なり、という実に当たり前の結論が、インターネットビジネスにも、求められていることが、わかるはずだから。

チーズはどこへ消えた?

【著者】スペンサー・ジョンソン【出版社】扶桑社
【発刊年月】2000年11月30日【本体価格】838円【ページ数】94p
【ISBN】4-594-03019-X

物事を簡潔に捉え、柔軟な態度で、すばやく動くこと。問題を複雑にしすぎないこと。恐ろしいことばかり考えて我を失ってはいけない。小さな変化に気づくこと。そうすれば、やがて訪れる大きな変化にうまく備えることができる。変化に早く適応すること。遅れれば、適応できなくなるかもしれない。最大の障害は自分自身の中にある。自分が変わらなければ好転しない。
本書 65p より

言わずと知れた大ベストセラーである。2月現在で99万部、まだまだ売れつづけている。この、100ページに満たない小冊子が、何故そんなにヒトの心を惹きつけているのだろうか?粗筋は以下のとおりである。

ある国に、2匹のねずみと2人の小人が住んでいる。迷路があり、そこでチーズを探す。探していたチーズが見つかり、安住を決め込むのだが、ある日突然そのチーズはなくなる。

単純なねずみたちは、次のチーズを見つけるためにさっさと行動に移るのだが、知恵のある小人たちは、チーズが消えたことの検証ばかりして、なかなか新しいチーズ探しに行こうとしない。しかし、小人のうちの1人が、勇気を出して迷路を探し回り、ついに新しいチーズを見つけるのだった。

チーズとは、私たちが人生に求めているもの。例えば、仕事や家族、財産や安定などを指している。迷路とは、会社や地域社会、家庭など、チーズを追い求める場所のことである。書かれてあることをまとめれば…世の中は変化している、そのことに早く気が付くこと、そして自分も変わること、それが肝心だ…ということだけだ。

それ以上でもそれ以下でもない。現状を何とかしなくては、そう思っている人たちの琴線に触れた、ということになるのだろう。究極のポジティブ・シンキングと言えるこの本。その内容に特段の新しさはない。しかし、この本には意外な活用方法がある。

変化を恐れるなと、ヒトに説くことは難しいけれども、この本を薦めることはそれほど難しいことではない。そう、自らがいる組織のなかで、変化を必要とする人間に対し、そっと気が付かせるために、この本は最適なのかもしれない。企業が一括購入し、社員に配布するケースが多いのもうなづける。

ダイナミックな変化が求められる今のビジネス社会。わかっていても身をすくめてしまいそうになる。そんな時、この本を手にとって見ると良い。ゆっくりとではあるが、確実に背中を押してくれるはずだから。

日本の論点2001

【編者】文藝春秋
【出版社】株式会社文藝春秋
【発刊年月】2000年11月10日【本体価格】2,667円【ページ数】828p
【ISBN】4-16-503000-7

二十一世紀初頭の日本社会を考えるうえで選択肢となるであろうホットな論議を、さまざまな分野から抽出し、当該分野の第一人者、または論争の当事者に持論を展開していただいたものです。本書に収録した各論文は問題点を俯瞰しやすいように、とりわけ価値観の衝突が大きく、議論の分かれることの多い二三分野に分類しました。
本書の読み方 より

毎日、新聞は読んでいる、インターネットのニュースサイトもチェックしている、帰宅すれば、テレビのニュース番組も見ている。多忙な中でも、これだけの情報収集を行っているビジネスマンは、決して少なくないだろう。しかし、そこで流れているニュース一つ一つの、本質的な課題や出てくるキーワードを確実に理解できているヒトは、どれだけいるだろうか。

そんなヒトにお勧めしておきたいのが本書である。本書は、今の日本社会において考えなければならない、様々なトピックスを、その分野の(異論はあるにせよ)第一人者と呼ばれるヒトが、論文を展開、さらに必要なキーワードを抽出し、コンパクトに解説してくれている。一渡り読んでおくことで、世の中の流れを格段に深く理解することが出来るはずだ。

例えば「リストラ」という、耳に馴染んだキーワードにおいても、雇用を維持するべきなのか、雇用を創出するべきなのか、長期的視野に立った将来の労働力不足を見通せているのか……など、知っておくべき視点が多くある。カンタンに知っておいて損はない。また本書は、それぞれの筆者が論を展開した後に、基本図書として関連図書を紹介している。これも有難い。

ビジネスマンは、日々の忙しさから、往々にして「自分のテリトリー」のことだけしか知らない、ということになりがちだ。自分の国が今置かれている立場や情勢、社会での様々な問題を、広い視野を持って見通す力に関して、意識して持たないと身につかない。この広い視野、意外と今の業務にも役立つことがあるはず。ビジネスは社会を相手にしているということから、それは自明だ。ビジネスマンとしての基礎的素養をビルドアップするために、ご一読を。

市場「淘汰」されるサービス業 顧客「選択」されるサービス業

【著者】村上世彰【出版社】ダイヤモンド社
【発刊年月】1999年02月18日【本体価格】1,800円【ページ数】231p
【ISBN】4-478-50163-7

「我々銀行を、小売業と一緒にされては困りますね」あるとき、某大手都市銀行の役員はこのように発言した。しかし、実は「一緒」なのである。銀行をはじめとする金融業も、百貨店やスーパーマーケットといった小売業も、等しく「サービス・プロバイダー」(サービスの提供者)なのだ。
本文 019p より

プロバイダーと聞いて何を思い浮かべるだろうか?たいていはISP(インターネット・サービス・プロバイダー)を、真っ先にイメージするだろう。最近話題のASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)を頭に浮かべる人もいるかもしれない。本書では、サービスを提供する産業を広く「サービス・プロバイダー」と呼んでいる。

いささか旧聞に属する本ではあるが、サービス・プロバイダーを語るに、最も的を得て、しかも、コンパクトにまとまっている本ということで、ぜひ紹介しておきたい。著者は、通商産業省サービス産業企画官という肩書きを持つ「お役人」である。サービス産業の現状とあるべき姿について、わかり易く紹介されている。

内容だが、まず、サービス・プロバイダーについて述べている。サービス産業全体における「プロハイダー」としての視点の欠如を指摘。さらに、優れたサービス・プロバイダーとしての要件、サービス・プロバイダーの巨大化、寡占化について言及している。グローバル・スタンダードを踏襲していけば、結果的に、それに対応するために、統合が進み、サービス産業は寡占状態になる、というくだりは、ぜひとも知っておくべき流れであることは、言うまでもない。

さらに、サービス・プロバイダーを進化させる要素として、評価システムについても、そのあらましをまとめている。サービスの質を低下させている原因は、提供者と受給者の情報格差(サービスについて提供を受ける側が何も知らなさ過ぎる)であるとし、サービスを公正に評価するシステムの必要性を説く。さらには、評価システム事業のケーススタディを取りあげて、「プロバイダーを評価すること」についての、具体的な理解を促している。

今後のビジネス社会において、サービスに関する原理原則を理解していないビジネスマンに、多くは望めないだろう。あらゆるビジネスマンは、実は、一人一人が「サービス・プロバイダー」なのだから。自らが提供すべきサービスのための指針と、その評価軸が詰まっているこの本、目を通しておくべきだろう。

新聞広告で企業戦略を読む

【編者】日本経済新聞社広告局【出版社】日本経済新聞社
【発刊年月】2000年08月02日【本体価格】1,600円【ページ数】239p
【ISBN】4-532-14848-0

新たな世紀に向かって、広告の出し手も受け手も根底から価値観の再検討を問われている。そのなかで、ひとつひとつの広告に出し手の考え抜かれた英知が集中されている限り、新聞広告は広告主と読者のインタラクティブな関係、交流の契機と場面になり得るということである。インタラクティブという効用がネットの専売特許であるかのような世上の常識は見直されなければならないのではないか。
本文 16p より

ビジネスマンにとってのベーシックな情報源とは何だろう。インターネットが席巻しているこの時代においても、未だそれは新聞であることに間違いはない。本書は、日経新聞に出稿された「広告」を事例とし、そのメッセージから時代の潮流をつかむ、という内容である。シリーズとしては3冊目になるこの本、なかなかに面白い。

例えば第1章では「金融」と「e-ビジネス」を取り上げて、その広告メッセージから「グローバルスタンダード」「新しいイメージの確立」「ヒューマンアクセス」と言うキーワードを抽出。その言葉の元に、それぞれの企業が、何を言わんとしているのかが、詳細に解説されている。広告によって発信されているメッセージが、時代を映す鏡であることがわかる。さらには、「企業メッセージの新戦略」「提案型アプローチ」「ニュースとの相乗効果を狙う」と、イメージ的な広告が影を潜め、メッセージ性の強い新聞広告が増えている、今の新聞広告の姿を解説している。

情報源としての、新聞と他のメディアとの違いを考えてみると「広告の違い」にあるのではないだろうか。ウェブ上でのバナー広告や、テレビなどのコマーシャルは、どちらかと言うと「一瞬のメッセージ」だ。しかし、他のメディアとは比較にならない情報量を提供出来る新聞広告は、「理解しやすいメッセージ」を発信していると言える。ビジネスマンとして、その重要性を再認識させられる1冊である。

また、新聞広告はビジネスドキュメントの作成時にも、大きいに参考になるはずだ。データの効果的な見せ方、ポリシーを伝えるための表現の工夫、わかりやすく陳腐ではない説得の言葉、など、表現のプロたちが、あらゆるテクニックを駆使している。本書は、広告表現における留意点も、かなり解説している。精読すれば、今までとは、一味違った書類作りのために役立つ、という本でもありそうだ。

組織の経済学

【著者】ポール・ミルグロム/ジョン・ロバーツ
【出版社】NTT出版社
【発刊年月】1997年11月10日【本体価格】5,500円【ページ数】702p
【ISBN】4-87188-536-4

本書でわれわれは、次のような疑問に答えようとする。(中略)「雇用、給与、昇進の仕組みは、従業員や役員の生産性にどのような影響を与えるのか」、「利益を生む資産を誰が所有するのかという問題は、どのような要因によって決定されるのか」、「企業の資金調達や所有構造は、企業の業績や経済システムのパフォーマンスにどのような影響を与えるのか」などである。
本文 腰帯 より

ビジネスマンとして日々忙しい毎日を送っていたとしても、自らが属している組織について考えを至らせているヒトは、意外に少ないのではないだろうか。キャリアを積み重ねていくと、避けては通れない「企業組織」について、系統立てて理解しておくことは、ぜひとも必要なことだろう。

腰帯には、アメリカのMBA、比較制度分析、企業理論の標準的な教科書であるとされている本書は、企業組織とそれを取り巻く制度について、数多い事例を挙げて、詳細に分析、システムとして考察している。経済組織としての企業の基本的な問題から始まって、組織における取引や効率性の問題、組織と市場との関係、組織における契約、インセンティブ、さらには、雇用、資金について、組織デザインと…企業組織に関する実に幅広い範囲の経済理論をカバーしている。それぞれの項が詳細で、拾い読みをするだけでも、実に楽しい。

例えば、報酬と動機付けという章では、さまざまな給与形態について整理した後に、報酬政策の目的として、給与を支払う意義について詳細に解説している。さらに、動機付けとしてのインセンティブ、出来高払い、業績評価と、トピックスは広がりを見せる。組織における経済学的視点でのレクチャーなのだが、本書に書かれてあることを理解しておくことにより、自らのビジネスマンとしての行動の裏打ちができることは間違いない。キャリアを積まれて、管理職になる方には、必読の1冊と言えるだろう。

ここでお断り。取り上げることをためらったくらいの大著である。この本を紹介しようと思ってから、通読するまでにずいぶん時間がかかってしまった。ボリュームもさることながら、内容はなかなかに歯ごたえがある。まとまった時間が取れるこの時期だからこそ、と言うよりも、この時期にしか紹介できない1冊である。高価なので、まず書店で(少し大きな書店ならあるようです)手に取られて、目次をじっくり見て欲しい。自らの興味のあるトピックスがひとつでもあれば、買いです。名著。

こんな経営手法はいらない

【著者】日経ビジネス 【出版社】日経BP社
【発刊年月】2000年06月25日 【本体価格】1,400円 【ページ数】 254P
【ISBN】4-8222-4187-4

サプライチェーン・マネジメント、IT、e組織、賃金革命、ISO、新人事制度、ERP……
流行りの経営手法をあなたの会社、ホントに活用できていますか?
本書 腰巻 より

あるシステムエンジニアに仕事の苦労を尋ねると、日本のほとんどの企業は「リプレイス」だけを求めるところが面倒だ、と話してくれた。コンピュータを使っての会計システムを導入する際にも、現状の処理方法の問題点を洗いなおして、解決のためのシステムを提案したとしても、必ず、例外処理として、今までの慣習(=往々にして大きな問題点であることが多いらしい)を残そうとする。結局煩雑な作業が必要なシステムになってしまって、今までのほうが仕事がしやすかったと、言われるのだそう。

本書のまえがきにも、同じことが書いてある。革新的な経営手法を導入したけれども、「日本の企業体質」に合わない、とブームは去っていく。現状否定をすることからは始めなくてはいけないのに、それができないところに問題があるはずと…。

本書では、経営手法を安易に導入すると、どんな痛い目に企業が遭うのかということを、浮き彫りにしている。紹介されている経営手法は「サプライチェーン」「ISO」「採用手段」「賃金体系」「新人事評価」「e組織」

「アフターサービス」と多岐にわたっている。それぞれに、最先端の経営手法を取り入れたことによって起きた「混乱」と問題点を具体的に提示。さらに、関連する「成功事例」を紹介する、という構成が、とてもわかりやすい。

自らの会社が行おうとしている、さまざまな「改革」の問題点が、とてもリアルに理解できることは、間違いない。自らの足元がなぜだめなのか。これがわかるだけでも、大きなスキルアップであることは、間違いないだろう。

雑誌(=日経ビジネス)に掲載された記事を再編集・加筆していることから、多少雑然とした感の書籍ではある。しかし、それを補って余りある示唆が、ここには詰まっている。書店で手にとって見ることを、まずはお勧めする。

エクスペリエンス・エコノミー 経験経済

【著者】B・J・パイソンII+J・H・ギルモア
【出版社】流通科学大学出版
【発刊年月】2000年02月26日 【本体価格】1,770円 【ページ数】 317P
【ISBN】4-947746-02-5

本書の著者パイソンとギルモアは、サービス経済を中心とする経済システムの行き詰まりを打開し、新たな成長と雇用の拡大を実現するキーになるのは「経験」という価値の提供(オファー)にあると主張します。単なる商品「機能」の提供ではなく、また、「利便」的サービスの提供でもない、さらに上位の価値として商品サービスに「経験」という価値を組み込むことで、サービス経済社会を超えた次の経済的発展段階へ移行することができる、というのが著者たちの主張です。
本文「訳註に代えて」より

本書は二つの重要なキーワードを述べている。商品サービスが「コモディティ化(=差別化がなされていないもの)」しないためには、「経験」の価値を体現化した商品サービスを提供すること。そして「経験」を商品サービスに付加するためには、顧客を観客にみたてた「演劇」というモデル化で実現しようとしていること。この二つは、それほど新しい考えとはいえないが、この本は類書にない丁寧な解説で、具体的にどう考えれば良いかを、明確に示している。

まず、ここでいう経験とは「過去の体験」という意味ではなく、「その場で、心や身体が受ける、精神的、肉体的な感動」のことを指している。例えば、今人気のスターバックスコーヒーは「コーヒー・エクスペリエンス」という言葉で、自社の提供する価値を表現している。商品やインテリア、サービスなどではない。スターバックスでコーヒーを飲む行為そのものに、対価を支払わせる。このように、五感を包み込むような商品サービスを、今後は提供しなくてはならないと、本書は説く。

また、「エクスペリエンス」を最も商品サービス化した典型として、ディズニーランドを引き合いに出している。ここでは、消費者を「ゲスト」と呼び、従業員を「キャスト」としている。乗り物に乗ると言うサービスを提供するのではなく、キャストが作り出す、五感に訴えるステージングから、ゲストは、固有の経験を与えられるのだ。そのためには、仕事にかかわる全ての人たちは、役者であり、その与えられた役を、演じることが必要なのだとしている。働く側からみれば、仕事とは、与えられた役回りなのである。だれもが、あるシーンの役者なのだ。

内容ぎっしりの本書の全てを、この欄で伝えることは難しい。この本の面白さを読んで「経験」して欲しい。さあ、書店へ急げ!

閑休自在 悠々自滴 異口同飲

【著者】西村佳也/長谷川好男【出版社】美術出版社
【発刊年月】1999年11月11日 【本体価格】1,500円 【ページ数】 160P
【ISBN】4-568-22109-9

ここに収められた一三四篇の文章は、すべて「あみだクジ」のごとき形式になっている。その時どきの歳時記的テーマをまず選び、そのテーマとなった事柄に関する思い入れ、こだわり、知識、教養、薀蓄、含蓄、洒落、諧謔、ノスタルジアなどをへめぐったあげく、最後に「ウイスキー」を愛飲する愉しさのところへ文章を落とし込む。見事な芸の連鎖である。
贅沢なたくらみ 村松友視 同書 腰帯推薦文 より

現代のビジネスマンに求められている教養とはなんだろうか。社会や経済問題に明るく、流行りモノに強く、そして、電子機器が操れるって感じだろうか。求められているリテラシーが、例えそこにあったとしても、(恐らく必要とされているだろう)スキルだけを磨くだけで良いのだろうか。さりとて、じゃあ、ビジネスマンの教養ってなんだ、と考えたときに、ひょっとしたら、指針になるのでは、という本を見つけた。

本書は、サントリー山崎の新聞広告をまとめただけの本である。広告コピーなれど、宣伝くさくなく、(架空の)私が登場し、ちょっとした雑感を書いている。ただそれだけ。しかし、その内容たるや、上記の推薦文のごとくである。たった三百文字で、悠々と遊ぶ。その馥郁たる世界は、なんとなく、オトナの教養をイメージさせる。別段、役に立つことが書かれているわけではない。しかし、オトナのビジネスマンとして、こんなことを知っていれば、カッコイイってことが、ここにはたくさん詰まっている。

例えば、紅葉を肴にウイスキーを楽しむために、もみじの葉に砂糖水を塗ったりする。文章を書いていて、テンの位置に迷ったことから、尾崎紅葉や二葉亭四迷に思いをはせる。上手な歩き方を忘れてしまったと嘆いてしまったり。サンタクロースの正しい住所を知っていたりする。さらには、深夜に卵焼きが食べたくなって焼いたりする(笑)。

こういう、取るに足らない、知っておいて、得にならないことを学ぶ機会を、私たちは失っているような気がする。こういうことを知っているヒトは、一目置きたくなるし、その余裕が羨ましくなる。キャリアアップに努力する一方で、たまの休みにでも、この本を開いてリラックスしてみてはどうだろうか。小さなエピソードだが、もっと知りたい、と思うきっかけづくりに向いているコラムも多い。どこから読んでも、誰が読んでも、楽しいという、いまどき珍しい本でもある。ぜひ書店でお探しください。

経済ってそういうことだったのか会議

【著者】佐藤雅彦/竹中平蔵【出版社】日本経済新聞社
【発刊年月】2000年04月03日 【本体価格】1,500円 【ページ数】 357P 【ISBN】4-532-14824-3

竹中□それを経済学の用語で表すと、「補完材と代替材」という考え方になります。「補完材」というのは、「コーヒーが売れれば、クリープが売れる」という関係です。これに対して、代替材というのは、新幹線に乗れば飛行機には乗らない-。つまり、新幹線か飛行機か、という関係です。さっきのゲームは両方の面があるのかもしれません。佐藤□ああそうですね。「放送の代替」と「テレビの補完」ですね。
同書 293p より

書店に行くと経済学の入門書が並んでいる。今現在の業務に直接係わらなくとも、ビジネスマンのリテラシーとして、経済がわかること、という風潮があるのだろう。本のサイズを大判にしたり、カバーに江口寿史を使ってみたり、図版を多用したり…。どれも取っ付き易さに配慮しているが、今回取り上げるこの本は、その中でも、わかりやすさでは、ずば抜けている。著者は「だんご3兄弟」でも知られる稀代のヒットメーカーと、気鋭の経済学者。そんな二人が、がっぷり四つに組み、経済学について語り合った対談集である。

佐藤氏の興味深く、極めて本質を突いた質問に対し、経済学者竹中氏は、簡潔にして的を得た経済学的回答で応える。貨幣と信用、株の話、税金の話、アメリカ経済、円・ドル・ユーロ、アジア経済の裏側、投資と消費、起業とビジネス、労働と失業、競争か共存か…。目次に並んだその会議の内容は、新聞でビジネス誌で、日々報じられている記事をすっきりと理解するために必要な知識を作るのに、十分な内容になっている。

例えば、貨幣に関する章では、小学校のときに集めたビン牛乳のふたが価値を持ち得たエピソードから、外国の紙幣はなぜおもちゃに見えてしまうのか、偽札を作ると誰が損をするのか、と言う話まで、様々な話題が展開される。その話の流れの中で、貨幣経済におけるいくつかの命題を解説したり、コンフィデンシャル・クライシスについて触れたり、と飽きさせることがない。知的な(しかし居丈高ではない)オモシロさに溢れている。

対談集にありがちな読み難さも全くなく、必要なところに繰り返し入れられる用語解説、きちんと意味がわかっているからこそ入るちょっとした挿絵(佐藤氏のイラストが可愛いのだ)や図版と、読み手に対して、たくさんの配慮がなされている。経済に興味がある人は、まずはこの本を手にとって欲しい。一押し。

新教養主義宣言

【著者】山形浩生【出版社】晶文社
【発刊年月】99年12月05日 【本体価格】1,800円 【ページ数】 293P
【ISBN】4-7949-6415-3

教養というのは、本来はずっとずっと実用的なものだ。さっきも言ったように、教養って価値判断のベースになるものなんだもの。そして世の中の「商売」と呼ばれているもの、ビジネスと称するものはすべて、この価値判断のかたまりじゃあございませんか。それをきちんと教えなくてはならない。
同書 28p より

口惜しいから書きたくはないが、世の中に溢れているビジネス書の書評の中で、山形浩生のそれは、実に信頼できる。まず駄目なものは駄目と、きちんと言いきってしまうところ。そして、その駄目さ加減が理解できることで、世の中の本質的な課題が見とおせてしまうところが素晴らしい。著者の文章はとてもわかりやすく(砕けたモノ言いともとれる)その分、不愉快な印象を読み手に与える場合もある。この著者の書籍を紹介している文を読むと、筋のとおった罵詈雑言、などと括ってあるものが多い。しかし、罵詈雑言と揶揄してしまっては、本質を見逃してしまうことになる。

著者は日本人の教養レベルが落ちていることを嘆く。教養とはリテラシーなはずなのに、ベースがない状態では、文化的にはもちろん、経済的にも世界に伍していくことは不可能だろうと。知的インラフとしての教養主義を唱えている。教育と啓蒙こそが、シンプレックスから、マルチプレックスへの掛け橋になるのだと。教養が衰えている、だから、日本社会が混迷をしているのではないかとも言う。

しかしここで疑問なのだが、教養ってなんだろう。筆者は、所謂「日本的」な教養は、もはや用を成さないと否定している。じゃあ「教科書」なのかと揶揄している。筆者の考える教養とは、このエピローグを読んでも茫洋としている。はっきりわかりにくい。

その答えは、実は、エピローグに続く本文にちりばめられている。情報化社会、ネットワークと経済、文化、社会システムなど、収められている文章の守備範囲はかなり広い。そして、読み勧めるうちに、自分の「新教養」のレベルがどの程度なのか、自覚できるだろう。知らないうちに。

巻頭からの50ページ分の文章は圧巻である。-心ときめくミームたちを求めて-というプロローグを読むためだけにお金を払っても惜しくない。

なんでんかんでんの作り方

【著者】川原ひろし【出版社】日経BP社
【発刊年月】99年12月01日 【本体価格】1,300円 【ページ数】 276P
【ISBN】4-8222-4136-X

「なんでんかんでん」には毎日少なくとも八百人のお客様が訪れる。仮に、毎日お客様の一割にあたる八十人の方が「まずい」と言えば、二ヶ月でその数はのべ五千人ほどになる。さして、さきほどの「一人のクレーム客の裏に五人の物言わぬクレーム客」という法則に従えば、のべ二万五千人の方が「まずい」と思っていることになる。それだけの数のお客様が黙って来なくなってしまったら……と考えただけでも、足ががたがた震える思いだ。
同書 173p より

「なんでんかんでん」とは東京で人気のあるラーメン店のこと。年商三億のこの店ができるまでのサクセスストーリーを、オーナーが自らでまとめたものだ。成功者の一代記を読むことは楽しい。何故ならそこには、成功者としての自信と自負が、存分に書き込まれているからだ。ヒトの(ある種の)自慢話は、自らのビジネスへの参考になるかというと疑問だが、やる気を喚起するには、よい素材だと思う。それこそ、「なんでんかんでん」の名物・博多ラーメンではないけれども、濃厚な方がより良い。

歌手を目指したが駄目だった著者は、一念発起しラーメン店を始める。実業家の一族に生まれた著者は、開業時、本人が書いているほどには苦労せず、店をヒットさせてしまう。開業時からとってきたさまざまな戦略は実に巧みで(後からまとめているからだろうけど)、中々に読ませる。

例えば、開店当初はメニューの数を増やし、居酒屋のような店にした。そうすることで、お客の店内滞留時間は増え、結果的に繁盛店を演出できる。ある程度お客がついたら、今度はメニューをラーメンに絞り込むことによって、掛かるコストをギュッと圧縮し、さらに、お客の回転率を上げた。この戦略、なかなか鋭い。要は、今店にとって、どのような戦略が必要なのか、ということを的確につかんでないと、考え付かないからだ。読み進めると、一つ一つがはっきりとした「目的」をもって実行されていることがわかる。できそうでできないことだと、心当たりあるでしょ?

平易な文章と、かなり濃厚な自慢話は、ぐんぐん読み進めることができる。通り一遍読んだだけでは、その良さがわかりにくい本だろう。ひとつひとつのエピソードを、自分のビジネスライフに置き換えてみると、参になることが多いかもしれない。味見を勧めておきたい。

怪読力

【著者】鵜飼正樹【出版社】メディアワークス【発刊年月】99年10月20日
【本体価格】1,300円 【ページ数】 263P 【ISBN】4-8402-1311-9

お勉強好きサラリーマンが買う本
圧巻! 時間のスキマ埋めつくす情熱
人生の成功するための法則は幾つあるの?
同書 見出し より

この本は、朝日新聞に連載されていた書評コラムがまとめられたものである。この書き出しと、上の引用見出しでピンと来たアナタ、センスありますよ。そうこの本、タダの書評ではない。世の中に出回る多くの、ちょっと変な、少しおかしい、そんな本(おもにビジネスマンに向けられたモノ)にイチャモンをつける書評なのだ。そしてこの書評、かなり面白い。そして実は、ビジネスマンのスキルアップにもつながる(ことがあるかもしれない)。

この本は、腰帯にあるように、怪しげな光を放つ435冊の本!を紹介しているわけだが、ここでの多く本は、そのものは普通の本であることが多い。書店で横並びに見ると、いろいろとまとめてみると、違った視点で捉えてみると、たちまち怪しげなオーラを発してしまうのだ。例えば、人生に成功するための法則は、店頭にたくさん並んでいる。これらの法則の数を加算していくと、なんと1211にもなる、と述べる。類似本が多いということを揶揄しているのだが、店頭に出かけても、このツボに気がつくヒトはいない。ましては足し算するヒトはまずないだろう。

この例のみならず、本書には、このようなある種の視野の広さが感じられる。このあたりの能力は、一朝一夕に身につくものではない。本書を読めば、それはどう言うことなのか、ということが垣間見ることが出来る。

また、二番煎じ本の露骨さや、大真面目で書かれているが、類似本をまとめてみるとナニかがずれているコトへの指摘など、ビジネスマンに洪水のように向けられているビジネス本は、ちょっと変である、という真っ当な批判が、本書のベースには流れている。

生涯学習といいながら、いつまでたっても学校的な勉強以外が考えられない発想を嘆き、5分や10分の活用方法に血道をあげる、余裕のなさをたしなめる。読んでいて、本欄担当者としては耳が痛い。しかし面白い。自戒の念をこめて、まずはお勧めする1冊である。

流行人類学クロニクル

【著者】武田徹 【出版社】日経BP社 【発刊年月】1999年07月30日
【本体価格】3,500円 【ページ数】 862P 【ISBN】4-8222-4147-5

本書に記されているのは、紛れもなく僕達が生きた時代である。
同書 862p より

10年にわたって、雑誌・日経トレンディに連載されていた「新流行人類学」をまとめたもの。先週に続き大冊である。本当は来週紹介しようと思っていた。なぜなら、そのページ数から、締め切りまでにすべてに目を通すことは出来ないと踏んでいたからだ。果たして、スーッと読めてしまった。興味深い内容と読み易い文章、本書には、この二つが揃っている。

二十世紀末のニッポンの流行を省みることが、どうしてビジネススキルのアップに繋がるのだろうか。ビジネススキル向上のためには、実務的なノウハウを求めることも大切だが、それ以上に、パースペクティヴな視点が持てるかどうかが、様々な予測を持って行動しなくてはいけない、ビジネス社会において、今後は重要になると思われる。

流行という一過性の現象を、丁寧な取材と軽妙な筆致によって、文字に定着させた本書を読むことで、視点のありようを見つけ出すことが出来るだろう。流行の本質を炙り出す、といった大層なものではなく、流行の表層からでも、視点次第で多くのことが学べることがわかる。 また、過去に流行したものから、未来の流行を導き出すことは出来ないが、過去に失敗したケースからは、さまざまなことを学べるはずだ。

本書にはそれこそ、時代のあだ花のような事例が山とある。カバーしているテーマも、学生専用カードから始まって、丸の内ヤンエグ交流会、ソムリエ、ダブルワークウーマン、電磁波、和製ロック、仏教界と、実に幅広い。コラム一つ一つを解きほぐすように読み進めれば、過ぎてしまった流行だから分かる、答えを知っているから理解できる、様々な間違いに気がつくはずだ。そして、過去の様々な失敗例は、最良の教訓であることに気がつくだろう。

書店で手にとって、目次の中から興味あるコラムに、その場で目を通してみることをお勧めする。腰帯に-20世紀ニッポン流行供養の書-とあるこの本が、あなたの座右の書になるかもしれない。

ぼくはこんな本を読んできた

【著者】立花隆 【出版社】文藝春秋 【発刊年月】1995年12月20日
【本体価格】1456円 【ページ数】 311P 【ISBN】4-16-351080-X

金を惜しまず本を買え。本が高くなったといわれるが、基本的に本は安い。一冊の本に含まれている情報を他の手段で入手しようと思ったら、その何十倍、何百倍のコストがかかる。
同書「実戦」に役立つ十四ヵ条 より

仕事を進める上で、正確に資料を読むことが出来る、と自信を持って言えますか。「もちろん」といえる人は、少ないのではないだろうか。それ以上に、読むという行為の難しさを、認識している人は少ないのでは?資料や書籍を読むことが難しいのは、得た情報を活用する、という最終目的地までのプロセスが、理解できていないためだ。今回は、活用するための知識を身につけるための読書法を会得したい、そんな人向けの書籍を。

著者はジャーナリストで学者や研究者ではない。得意な分野はあるが、その道のプロとは違うのだ。しかし、専門家も目を見張るその仕事の秘密は、読書法にある。著者の仕事の進め方とは、ある分野について、膨大な読書によって学習、予備知識を持って、専門家に会い知識を深め、得たものを著作として発表している。

まずは読書。それがすべてのベースになっている。これは、仕事に必要な情報を、書籍やウェブなどから入手、さらに周辺から情報収集した上で、業務に活かすという、スキルの高いビジネスマンの情報活用法と、よく似ている。著者の読書法-知っておいて損はないノウハウだろう。

著者の読書法とは、1.まず金を使う-大金を使うことで、情報を一度に集めてしまうと同時に、投資したという気持ちを持つことで、そのテーマを投げ出さないようにする、という具体例からスタートする。以下、大型書店をはしごする、古典的入門書から名著へ読み進める、など。実に使えるノウハウが、「体験的独学の方法」という、わずか16ページのコラムに書かれている。これに、引用した「実戦」に役立つ十四ヵ条(わずか3ページ)の二つを読むために、この書籍を求めても損はない。

『読み書きの技法』(小河原誠著/ちくま新書/660円+税)が面白い。良い文章を書くための、正確な読み方というノウハウをまとめている。具体的な例が豊富で、役立つ。併せてぜひどうぞ。

一人勝ちの経済学

【著者】大前研一 【出版社】光文社 【発刊年月】1999年 8月30日
【本体価格】1600円 【ページ数】 323P 【ISBN】4-334-97228-4

つまり、自分がどういう人生を生きたいのかという「答え」によって、時間のかけ方もお金のかけ方も決ってくる。自分が何を手に入れるべきかも決ってくる。逆に言えば、どういう人生を生きたいのかが決っていない人には、自分が何を手に入れるべきかが分からないということである。
同書 P310から引用

ここ近年、今まででは考えられなかったメガヒットが乱立している。音楽や、映画というエンターテイメントの世界では宇多田ヒカル、B’z、GLAY、

『タイタニック』、そしてポケットモンスター。出版の世界では、『五体不満足』に『日本語練習帳』。『買ってはいけない』の大ヒットも記憶に新しい。

これらの大ヒットの裏側に、「人は選択肢が増えると、かえって選択ということをしなくなるのではないか」という疑問を感じたことから、この『一人勝ちの経済学』ははじまる。

近年日本で進行しているのは、様々な場所で言われる、「多様化」なのではなく、一極化という全く逆の方向性なのではないだろうか。そんな問題提起によって書かれた本書は、近年のメガヒット乱立の状況分析から、日本の経済・金融・産業に関して、そして日本とアメリカの関係、世界の経済に関して、と様々な問題に対して鋭い分析を加えている。

冒頭の引用は、こんな時代において私達に必要なことはなんなのか、という問いに対し、筆者である大前氏がみずから答えた言葉だ。同書は、単に一人勝ちというメカニズムを分析しているのではなく、急転落しがちな危うさもつ、一人勝ちという現象をいかに持続させていくか、という方法論へのヒントが解説されている。

最近の人事をめぐる動向は、私達ビジネスマンにとりャリアをいかに構築していくのか、という点において、間違いなく多様化の途を辿っている。この状況において、私達が思考停止に陥らず、みずからの望む道を選択し、成功を手にするための様々なヒントがちりばめられた同書。この1冊を、是非とも多くの方に手にとっていただきたい。

日本のおかま第一号 あなたは仕事に誇りをもっていますか?

【著者】野地秩嘉 【出版社】 メディアファクトリー
【発刊年月】1999年3月【本体価格】1500円 【ページ数】205P
【ISBN】4-88991-803-5

本当に人生は一度きりだと思うんです。僕は妻が死んだ時、人生はたった一度だから、後悔しないよう楽しもうと思いました。あのとき、自分の使命はふたりの子供を育て上げることだから、精一杯頑張るしかないと。しかし、無理して過労死するわけにはいかない。ですから休日はスキューバダイビングをやって、ストレスを発散し、人生を楽しみながら暮らしています。
同書 P143から引用

今週は、『日本のおかま第一号』という奇妙な題名の1冊を紹介したい。

この本は、筆者である野地氏が、下火となりつつある「正統派」キャバレーのNo.1ホステスの紅さん(玉音放送を聞いた現役ホステスに収録)や、サントリーでチーフブレンダーをつとめる興水さん(チーフブレンダーの技と素顔に収録)の仕事に対する姿勢、そして誇りに関して実施したインタビューをまとめた1冊だ。

仕事をテーマとしたインタビュー集や、ルポタージュは数多くある。(転職情報誌や、キャリアアップをテーマとする雑誌を開けば、毎週何人ものインタビューが組まれている)しかし、今週紹介するこの1冊が、他のインタビューと一線を画しているのは、その人にとって仕事とは何なのか、そして、仕事に対する考え方を通し人生といったものをどう考えているのかまでが、登場人物の答えから垣間見ることが出来るという点である。

冒頭で引用した言葉は、ロールスロイス、フェラーリといった高級車の総代理店でナンバーワン営業マンの飯島氏の言葉である。安いもので、2200万円、高いものとなると4300万円もするというロールスロイスを年間20台も販売する飯島氏のインタビューからは、どういった姿勢がお客さんを引き付けるのかという点だけでなく、私達が仕事をしていく上で必要なのはなんなのか、という考え方まで十分に伝わってくるものだ。

仕事をすることは、私達の人生において大きな比重を占める。それゆえに、この1冊のような、仕事をテーマとした秀逸なルポタージュは私達に様々なことを教えてくれる。この本に登場する9人が語る仕事への誇りや、筆者である野地氏の彼らへの愛情溢れる視線は、キャリアや仕事を考える際に忘れてなならない仕事に対する誇りを描き出してくれている。

同書を読み終え、副題になっている「あなたは仕事に誇りを持っていますか?」という問いかけをしたときに、日々の中で見過ごしてしまっているかもしれない「何か」を見つけることが出来るのではないか思う。そんな深い味わいを持つ本書を是非多くの方に手にとっていただきたい。

人間通になる読書術・実践編

【著者】谷沢永一【出版社】PHP研究所
【発刊年月】1999年9月3日
【本体価格】657円【ページ数】262P 【ISBN】4-569-60489-7

人を読書に向かわせる知的好奇心は、自分自身を成長させる原動力である
同書 扉より

読書の秋だ。夜の訪れが早くなってくるこの季節。ビジネス書や、仕事に関係する書籍だけでなく読書自体を楽しみたくなる。そんな折、読者の皆様はどのような読書生活をしているだろうか?是非今年の秋を充実した読書の季節にしていただきたいと思う。

と言っても、なかなか本を読む時間がないとか、お薦めの本がわからないのでどんな本を読めばよいのかわからないという人も多いのではないだろうか。そんな時に是非お勧めしたいのが、今週紹介する『人間通になる読書術・実践編』だ。

筆者である谷沢氏は、ベストセラーにもなった『人間通』の著者として有名な方。理解しやすい言葉で、人生の知恵を説いた『人間通』は、多くの人に手に取られた1冊だった。今回紹介する『人間通になる読書術・実践編』は、その名が示すとおり、谷沢氏による読書の実践編であり、氏が愛してやまない44冊の読書案内からなる第1部と読書の技術と題された第2部から編まれている。

「読者が直接に読まずとも、その書籍の精髄が理解できるように務めた」という筆者の言葉にもあるように、紹介される44冊の要約と、箴言集の言葉から多くのことを学べるように構成されている。

『井深大語録』や『ファーブル昆虫記』、そして『男はつらいよ 寅さんの人生語録』まで。同書で幅広く紹介された書籍の中から「これは」と思う書籍は是非手にとっていただきたい。読書という行為は、実生活や仕事の体験や経験をより深めるための智恵を与えてくれるのだから。

経営参謀が明かす 論理思考と発想の技術

【著者】後 正武【出版社】プレジデント社 【発刊年月】1998年12月25日
【本体価格】 1500円【ページ数】288P 【ISBN】4-8334-1664-6

論理は手段であって、目的ではないから、論理や発想の方法論を学びそれ を使う訓練をすることが、ただちにみなさまの仕事や社会活動のお役に立 つとは言えないだろう。しかし論理的な思考・発想の技術は、長い目で見 ると必ず「アタマをよくする」ために、そして「正しい判断」を行うため 有用であると思う。
同書 はしがきから引用

「戦略的思考が身につく」 と謳った書籍は数多くある。しかし、そういった書籍を1冊読んだくらいで戦略的思考は簡単に身につくわけではない。そんな容易に戦略的思考が身についたとしても、言ってみれば他の人も同様に戦略的になっているわけだ。つまり、そこではさらに高度な戦略的思考が必要とされ、無限連鎖を繰り返すように私達の戦略は高度なものが必要となってしまう。しかし、幸いなことに(?)私達は多くの場合、非戦略的な思考をしていることが多い。

さて、今週紹介する「論理思考と発想の技術」と題された1冊は、戦略的思考の基盤となる「論理」に関する1冊である。正直言って、この1冊を読んだ時、私の思考がいかにクリアになったかをこのスペースで伝えることに困難を覚えているほど、様々なノウハウが納めらた珠玉の1冊である。「正しい思考法で、最適な結論導き出す」考える筋道、論理の組み立て方、表現方法等を、演習問題と合わせて紹介してくれている同書は、論理という武器の使い方を読者にあますところなく伝授してくれる。

さて、本書と同様の成果を与えてくれる書籍には、[en] BOOK REVIEW No.39号で紹介した『考える技術・書く技術』がある。この2冊を合わせて読んでいただくと、この両書が持つ力をより強く実感することが出来るはずだ。

筆者である、後 正武氏は、ハーバード大学にてMBAを取得し、マッキンゼー・アンド・カンパニーにてプリンシパル・パートナー。ベイン・アンド・カンパニーにて取締役副社長、日本支社長を経られた方。戦略的思考を武器とするコンサルタントのノウハウを、今後の仕事と判断のための基盤に是非とも十分にお役立ていただきたい。

三年後に笑う会社

【著者】江坂 彰 【出版社】光文社 【発刊年月】 1999年 3月30日
【本体価格】848円 【ページ数】262P

時代が大きく変われば、競争の方法、ルールも変わる。
同書 P5から引用

今回紹介するのは『三年後に笑う会社』という1冊だ。書名の通り、3年後に笑っていられる会社を判断する基準を提示してくれている一冊だ。しかし同時に、この書籍に書かれた「笑う会社」の基準は、そのまま「3年後に笑うビジネスマン」になるための指標に一致する。私達ビジネスマンにとって笑う会社にいることも重要ではあるが、笑っていられるビジネスマンになっていることの方が実は重要なのではないだろうか。

例えば、「負ける会社-こんな会社は波間に沈む」と題された第2章は、“人まねばかりをする会社”“「和」、「協調」、「一致団結」から抜け出 せない”などの項目がある。この「会社」という言葉を「ビジネスマン」 におき替えてみれば、そこに書かれているのは、「3年後に笑うビジネス マン」になるためのヒントである。

また、「賢い兎は三つの穴を掘る」という中国の諺を紹介し、「三十代後 半から四十代前半は、三つの穴を堀りはじめる年代である。一つは家庭、 一つは会社、そしてもう一つは自分流の生き方とでも言おうか。」という 風に、本書には同時にこれからの生き方を示唆する多くの言葉が詰まって いる。

「経営者もミドルも、そして明日のエグゼクティブなベンチャーを目指す若 者の人も、本書を私からの逆説的応援歌と受け取ってくだされば幸いであ る」という筆者からの言葉にもあるように、この激変する時代、様々な世 代の方に手にとっていただき、多くの人に笑いっていただきたい。

会社はなぜ変われないのか

【著者】柴田昌治 【出版社】日本経済新聞社 【発刊年月】1998/1/23
【本体価格】 1,600円 【ページ数】350P

問題は、みんな文句をいうばかり、愚痴を言うばかりで「だからどうする」という姿勢がないことです。評論家ばかりで当事者がいないのです。
同書 P20から引用

今週とりあげるのは、1998年にビジネス書でベストセラーとなった『会社はなぜ変われないのか』だ。最近、続編が出版され、こちらも非常に売れている。そこで、再度読み直してみたのだが、非常に面白く、役立つ1冊だと痛感させられた。

No.48号で取り上げた「社長失格」と同様に、この1冊は小説の形式をとっている。最近、こういったストーリー性のあるビジネス書が人気を博しているようだが、これは、「読みやすい」というのが理由だけではないと私は考えている。今私達ビジネスマンが置かれている現実が、小説という形式をとった方が表現しやすい状況にあるからだと考えているのだ。使い旧された言葉ではあるが、激変するビジネス環境、見えない先行き。。。昨今ではそんな状況が当たり前になっている。

そんなこともあり、この1冊は、従来のビジネス書のように、要約を読めばエッセンスが分かるという種類のものではない。映画や、小説はその作品にふれることでエッセンスが初めて理解できるように、この1冊も、登場する人物達とともに考え、試行錯誤をしていただきたい。

この本がベストセラーになったことからも、「会社」というのは簡単に変えることの出来ないものだ、という認識を多くの人が持っているのだと思う。しかし、本当に会社は変われないのだろうか?

この本を読み終えた後であれば、「そんなことはない」と多くの方が思うに違いない。そして、事実、そう思う人がいれば、会社という組織は変えることができるはずなのだ。会社の「何か」を変えたいと思っている人だけでなく、変えることなど出来ないと思っている人に、一読を是非お勧めしたい。

社長失格

【著者】板倉雄治郎 【出版社】日経BP社 【発刊年月】1998年11月30日
【本体価格】1600円 【ページ数】371P

インターネット・ブームや金融機関の一連の改革は、そもそもどこから生まれてきたものなのか。そう、いうまでもなく米国だ。となると、これらのムーブメントは、現在グローバル・スタンダードとみなが呼ぶ米国主導型の国際市場の枠組みに対応するための壮大なる試行錯誤だったようにも思える。

そしてその米国における行動原則は、たとえ大組織であろうと最終的には個人が責任を持つ。すくなくともぼくはそう思っている。と考えると、この一連の流れはいったい何を意味するのか。
同書 P369から引用

「経営者意識を持つこと」がこれからのビジネスマンには必要だと言われる。しかし、この経営者意識、どのようなことを意識していけばよいのだろう。キャッシュフローの意識?ビジョンの策定能力?etc。。。

ビジネス書をひもとけば、必要とされる能力が簡潔にリストアップされている。しかし、それらは本当に「経営者意識」といわれるものなのだろうか?

さて、今回取り上げるのは、題名の通り、みずからに経営者失格の烙印をおした一人の男の物語だ。彼は、1997年にニュービジネス大賞を受賞し、インターネットブームとベンチャーブームの中で流星のごとく現れたベンチャー企業、ハイパーネット創業者、板倉雄一郎氏が同社の発足から倒産までを物語った一冊だ。

裁判所で、自己破産手続きをとる筆者の回想から始まるこの物語は、経営者という一人の人間の判断が会社に及ぼす影響、金融機関取引先とのかけひき、そして経営をするという苦悩、喜び。経営をするという「自己責任」を強烈なリアリティーと共に語りあげている。

経営者意識という昨今手垢のつきがちな言葉ではくくりきれない痛みを伝える当書。経営者のみならず、主体性をもちビジネス社会を生きようとしているすべての方に是非手にとっていただきたい一冊だ。そして倒産という出来事を経営者という視点から眺めてみて欲しい。雇用される側からは見えなかった何かがそこには開けるはずだ。

日本を創った12人

【著者】堺屋 太一 【出版社】PHP研究所 【発刊年月】 1996/11
【本体価格】前編 660円 後編 657円 【ページ数】前編 204P 後編 224P

本書では、今日の日本にまで深く影響を残している象徴的な十二人の「人物」を取り上げた。

それらの人々が歴史のどの段階で、どう行動し、それが今、われわれの心の中にどう生きているのか、われわれの発想、われわれの社会をどう規制しているのか。そしてそれが、これから世界と付き合っていく時に、どういう影響を与えるのだろうか。本書では、そんなことに視点を置いて「人物」を論じることにしたい。
同書 P13~14を引用

若かりし織田信長が、「おおうつけもの」と呼ばれていたことは有名な話だ。いくつもの城をもつ大名の子でありながら、裾野の短い着物で腰に巻いた縄に水入りの瓢箪をぶら下げ、馬で野原を駆けめぐる信長のイメージは、多くの人が共有しているものだろう。しかし、その姿を、「社長の息子が髪を茶色に染め、オートバイを乗り回しているようなものだ」といわれると信長が、急に身近な存在に思えてくる。たしかに、信長は、魅力的なバカ息子だったのだろう。

作家としても経済評論家としても著名な堺屋 太一氏の語り口は、そんな風に歴史上の人物を、いきいきと「今ここ」によみがえらせる。

聖徳太子、光源氏、源頼朝、織田信長、石田三成、徳川家康、石田梅岩、大久保利通、渋沢栄一、マッカーサー、池田勇人、そして松下幸之助。

彼等が歴史の中で達成した大プロジェクトの数々。その雄大さや、歴史的役割の大きさは、現代に生きる私達ビジネスマンの志を必ず奮い立たせるはずだ。

偉人の業績を読み、彼らの生きた時代の空気を吸うこと。そして視点を広げるということはそれだけで、楽しいことだ。それに、先がなかなか見えにくい昨今。歴史に学びことはあまりにも多い。

歴史上の人物は、書物の中に存在しているわけではない。彼らが生きた時代に呼吸し、考え、企画を練り、それを力の限り実現してきたのだから。そう、今ここに生きる私達と全く同じように。

日本語の作文技術

【著者】本多勝一 【出版社】朝日文庫 【発刊年月】1999年06月01日30刷
【本体価格】540円 【ページ数】 342P 【ISBN】4-02-260808-0

その意味での「事実的」あるいは「実用的」な文章のための作文技術を考えるにさいして、目的はただひとつ、読む側にとってわかりやすい文章を書くこと、これだけである。
同書 なぜ作文の「技術」なのか より

ビジネス環境に電子化の波が飲み込まれたとしても、仕事に必要な基本的な技術とは、今でも「読み・書き・算盤」ではないのだろうか。大量のデータを処理する、様々なドキュメントを作成する、さらに、電子計算機を自在に操ることも要求されている。これから3回にわたり、現代の「読み・書き・算盤」の技術を向上させる書籍を紹介したい。第1回は「書く技術をアップする」書籍を。

文章を書くことは「読む側にとってわかりやすい文章を書くこと」という1点に絞り、書くという行為を、技術としてまとめている。読者の中には、文章作成が苦手な人も多いだろう。しかし、書く技術を身につけることは、確実にキャリアアップにつながるはずだ。仕事上で、わかりやすい 文章を書く能力が、有利な武器であることは、想像に難くない。

句読点の打ち方、助詞の使い方、段落や文章のリズム。どれも学校で習った記憶はあるが、忘れてしまっている「技術」だ。それらを、例を挙げながら、丁寧に解説している。タイトルに技術と謳うだけあり、実に機能的な構成になっている書籍だ。著者は、文章があまり上手くなかったらしい。だからこそ、どうすれば良い文章が書けるかということを検証し、スキルに昇華させることが出来たのだろう。

本書の上手な利用法。まず、文章を書く際の、技術的なことをおさらいし、そのあと、文章のトーンや、リズムなど、文章の「旨味」を身につける、という順序で学習すると良い。見違えるほど、自らが書く文章がわかりやすくなるはずだ。その効果を期待して、読んでみて欲しい。

仕事文の書き方(高橋昭男著/岩波新書/630円+税)は、新書で珍しい横書き。レポートなどの「仕事文」に、いかに説得力を持たせるかという視点で書かれている。論文の書き方(清水幾太郎著/岩波新書/640円+

税)は古典的名著。論文執筆の心得がまとめられている。併せてぜひ!

「ひとり勝ち社会」を生きぬく勉強法

【著者】中山 治【出版社】 洋泉社
【発刊年月】 1999年9月8日
【本体価格】1500円【ページ数】227P【ISBN】4-89691-406-6

このような「ひとり勝ち社会」が世界のトレンドとしてわが国にも押し寄せているのです。では、「ひとり勝ち社会」を生き抜いてゆくためにはどうしたらよいのでしょうか。それには、一人一人がかしこくなるほか道はありません。かしこさだけが「ひとり勝ち社会」を生き抜く大きな力となるのです。
同書 P17から引用

優秀と評される経営者の方にお会いすると、大抵「この人凄い勉強家だな」と感じる。本棚に並ぶ書籍の数や、幅広い知識と相手を楽しませる会話。そういったものは、一朝一夕で身につくものではないからだ。恐らく、経営を成り立たせるという責任、貪欲な情報欲と、それに伴う勉強癖が、彼らの人格を創っているのだと思う。

ところで、経営者だけでなく、ビジネスマンも自己責任や、実力が常に問われている昨今。私達ビジネスマンも同様に勉強をすることが必要とされている。が、自己啓発という言葉で語られることが多かったからだろうか、「勉強」という言葉は私達ビジネスマンにとって意外となじみのない言葉のように思う。しかし、今まで以上に求められるビジネス社会において、自己啓発よりも、より目的性を明確にした「ビジネスマンのための勉強」が重要になってくるのではないだろうか。

さて、今回紹介する1冊は、そんなビジネスマンのための勉強法に関した1冊である。このテーマを扱ったものには、「隙間時間を利用しよう」といったノウハウ的な書籍が多いなか、『「ひとり勝ち社会」を生きぬく勉強法』は、思考力・発想力や、表現力、そしてヒューマンスキルを高めるための方法を解説してくれる。ビジネスマンに必要とされるベーシックなスキルを高めるための方法の全体像が学べるのでお勧めだ。

「地頭の良さ」や「かしこさ」が必要とされる昨今。「勉強って言うけれど、何をどうしたらよいのか?」と思っている方だけでなく、「自分なりの勉強法は既に確立済みだよ」という方にも役立つに違いない。同書を手にとり、あなたにとっての最良の勉強法を確立していただきたい。

アイデア×アイデア

【著者】百式管理人 田口元【発行】英知出版
【発行年月】2004年02月13日 【本体価格】1,400円
【ページ数】223p 【ISBN】4-901234-35-8 C0030

走って逃げる以外の道
通報を自動化する
移行をスムーズに
増え続けるデータの関連性

本書 目次 より抜粋

新商品の寿命が短くなったといわれる。新商品がドンドン出てくる時代に、新しい発想というのは一つのカギになっている。人と違うことを考えたり、既存のアイデアを組み合わせたりして、また新しい価値を創り出す時代。生産者にとっては面白い状況であるし、また厳しい状況でもあるだろう。

アイデアは、意外なキッカケから生まれることが多い。人との会話から…、動物の行動を見ているうちに…、という具合に。だがそれに気づける人とは常に頭の上にアンテナを立てている人なのだ。何も意識せずに生活していても決して新しい発想は出てこない。本書を読むと、そう思えて仕方がない。

面白いウェブブサイトがある。ユニークな海外のビジネスアイデアを紹介する「百式」というサイトだ。奇抜なアイデアから、思わず膝を打つようなアイデアまでいろいろ紹介されていてかなり楽しい。この人気サイトの管理人である著者が厳選した100例を、本書では掲載している。

実際、冒頭から度肝を抜く内容だ。アイデア001『不審な人につかまれると電流が流れるジャケット』。タイトルだけ見てもかなり魅力的。これは女性が自衛のために着るものであるらしいが、ただのジャケットではなく、人につかまれると軽い電流を流してくれる機能がついているようだ。

微弱な電流を流すことで、相手が驚いているスキに逃げられるというのだ。これを着て道を歩けるかどうかというファッション的な問題は甚だ疑問だがこの発想は素晴らしい。危険を回避するために、単純に走って逃げる体力勝負以外の選択肢を与えてくれた。実際に販売予定だというから面白い。

どうだろう、1つ目のアイデアだけみても、次のアイデアが気になりドンドン読みたくなるではないか。『銃声を感知して瞬時に位置を割り出し、通報してくれるシステム』『おならの音と臭いを吸収してくれるマット』『カプセル型の使い捨て胃カメラ』など次から次へと新しい発想が紹介される。

写真付きで面白く解説してくれるので読んでいて飽きない。さらに、紹介される製品やサービスを提供する会社のアドレスが載っているため、気になるモノがあったら直接調べられるのが嬉しい。

大事なのは、紹介されるオモシロ製品やサービスそのものではなく、この発想を何かに生かせないか、どうにか展開できないかと自身に問うことだ。世界中のアイデアを見て、広い視野で“発想する”トレーニングをしてみてはいかがだろうか。

一瞬でキャッシュを生む!価格戦略プロジェクト

【著者】主藤孝司【発行】ダイヤモンド社
【発行年月】2004年02月13日 【本体価格】1,600円
【ページ数】250p 【ISBN】4-478-50221-8

他の増収策とは違い、値上げ戦略にはほとんど投資がいらない。新商品開発も不要。新たな人事の募集も店舗調達もいらない。それでいて一気にキャッシュを倍増させることが可能だ。

本書 P26 より抜粋

“GDPの実質成長率が何%上昇”と煽り立てられても、懐の実際はいかがなものか。モノがいくつ売れようが、単価が下がっていては「利益」は生まれない。会社という単位で考えてみても、価格を下げてシェアを奪うという「戦略」論が意味をなさなくなってきたようだ。

勝ち負けの二極化が進む現在、特に中小企業が喘いでいる。体力のない組織はどうしても“安く、早く”でしか太刀打ちできないと苦しんでいる。この“負の呪縛”から解き放たれるためには「価格」について再度考慮する必要があるのではないだろうか、というのが本書の問題提起なのだ。

天才起業家と呼ばれる著者は、20代の頃から、家庭教師派遣、プリクラ端末販売等をはじめとして、いくつもの事業を立ち上げ成功させてきた。特筆すべきは、NTTのISDN回線の販売事業に携わった際、わずか2年で社員2名で、大手企業を抑え日本全国トップの代理店になったことだ。

つまり、規模の大小は関係ない。小さい規模なら小さい規模なりの価格戦略を持って利益を上げていこうということなのだ。そして、本書でオススメする価格戦略はシンプルに「値上げ」だ。戦略に裏付けされた値上げをすれば当然利益も上昇していくことになる。

デフレ経済の最中、世間の常識は「安くなければ売れない」低価格競争の時代。だが、実際に高価格戦略で成功した身近な例があるのは確かだ。

今、コンビニエンスストアは「コンビニ不況」と呼ばれるくらい売上が落ち込んでいる。その中でも大きく売上げを伸ばし、コンビニを支えている商品があるという。それは「高価格のおにぎり」だ。

普通のおにぎりの値段は100円から130円。だが今売れているのは160円から200円の価格帯のおにぎりなのだという。これは単に高いだけでなくご飯に新潟産のコシヒカリを使ったり、具材に北海道産のイクラを使ったり、価格に見合うだけの商品を提供しているのが売れている理由だと。

ポイントは、コンビニ商品に飽きた人へ、質の高いサービスや品質を提供しているところだ。高価格で売るためには、必然的に戦略的な考え方、それなりの「仕組み発想」が必要なのだという。

本書を読めば、小さな組織でも通常の何倍もの価格で売り、成功しているいくつもの例を目の当たりにできるだろう。内容は、単なるケース紹介だけではなく、消費者の感情に訴える実際の価格設定方法など“目からウロコ”の情報ばかりだ。日常のビジネスライフのヒントになることも多いだろう。

もっと早く、もっと楽しく仕事の成果を上げる方法

【著者】古谷昇【発行】PHP研究所
【発行年月】2004年02月06日 【本体価格】1,300円
【ページ数】207p 【ISBN】4-569-63359-5

テクニックや手法のようにお勉強形式で身につけるものではなくて、気づきによって学んでいく、わかっていくのがコツというものなのである。賂

本書 P40 より抜粋

あなたは、小学生に初めて跳び箱を飛ばせるにはどう教えるだろうか。恐らく「助走スピードを上げなさい」とか「踏み切る位置はここだ」という具合に必要なポイントを一つ一つ挙げるだろう。そして何度も練習させ、飛べるまで待つのではないだろうか。これが本書の導入部分だ。

しかし、これこそ「ダメ」な教え方なのだという。これは、飛べるようになるまで練習し、身体で覚えさせるという古い方法だと。確かに、運動音痴な子がそのうち嫌気がさすことは目に見えている。本当は飛べる能力があるかもしれないのに、だ。

跳び箱を上手く跳べるようになるのには「コツ」がある。それはまず両腕で体重を支える感覚を覚えさせる、ということだった。床に座らせ、両足の間に両手をつかせて、両腕で身体を少し浮かせる練習をさせる。そうするとみんな面白いように跳び箱を飛べるようになるらしい。

そう、物事には「コツ」がある。人のあらゆる活動には「1,意気込みでやる」「2,テクニック&知識でやる」「3,コツでやる」という3つのレベルがある。1は、多くの人が嫌い実用性も薄い。2は“お勉強”形式で時間もかかる。しかし3で覚えたノウハウは汎用性があり、決して忘れない。

これは仕事の上でも使えそうだ。例えば“プレゼン上達法”。プレゼンテーションは自分の売り込み方でもあって、どんな業界でも、あらゆるビジネスマンの必須科目にもなっている。

内容の良し悪しは「構成」と「スライドの書き方」。話法は「スライドの説明方法」「話のつなぎ方」。スライドの説明は「その場でアンダーラインを入れる」「項目数を先に宣言する」などがある。と、羅列したが、これらのテクニックを全て覚えたところで“ムダ”だというのだ。

プレゼンのコツは意外なところにあった。

「声を大きく」「スライドを見ない」「テンポを変える」。これだけだという。下手にテクニックだけに頼ると、(よくある)思いもしない展開になったとき対処できないからだ。つまり、この3つのコツだけ意識するだけで、経験を積めば上達していくということなのだ。

本書では、上司や先輩との付き合い方や、経営戦略の考え方、会議の進め方など、仕事で直面するさまざまなケースを想定し、それを上手く乗り越える「コツ」を伝授する。いち早く“できるビジネスマン”になるためにはコツがいる。それを本書でマスターしてみてはいかがだろうか。

正しいこと

【著者】ジェフリー・L・セグリン【発行】ダイヤモンド社
【発行年月】2004年02月05日 【本体価格】1,600円
【ページ数】213p 【ISBN】4-478-73275-2

受け取ってもよいビジネス・ギフトの上限
元社員に関して問い合わせがあったとき
社員の監視。監視者を監視するのは誰か?
賄賂と訳されない賄賂

本書 目次 より抜粋

職場内での恋愛関係、お歳暮やお中元、上司と部下間での貸し借りなどについて、普段あまり気にせず過ごしている。しかし、ここから発生するトラブルや事件が実に多いことも事実だ。だが、これには明確なルールを決めることが難しく、個人の裁量に委ねるしかないのが現状だろう。

また、職場内での宗教問題、時間外での仕事の依頼、ネットやメールの監視(プライバシーの問題)など、よくよく考えてみればトラブルとなりうるネタは山ほどある。ビジネス社会に生きていくためには何を「正」とし、判断し行動すればいいのだろうか。

「今の私の行動は正しいことか」という問いに対する難しさ、葛藤やジレンマは今も昔も変わらず普遍的なものだ。本書は、このような難しい疑問に対し、どう立ち向かえばいいのかを解りやすく教えてくれるビジネスエッセイ集である。

1998年から現在まで続いている『ニューヨークタイムズ』の人気コラム“正しいこと”から過去4年間分をまとめ、本にしたものである。コラムの一話一話が独立したテーマで成り立っており、誰もが直面する可能性のある事例ばかりが掲載されている。

コラム「受け取ってもよいビジネス・ギフトの上限」の内容はこうだ。

ニューヨークにあるテレコンプ社のCEOが、クリスマス休暇が近づいた頃に、お世話になった顧客のためにグリーティングカードと一緒に、アメリカン・エキスプレスの50ドルギフト券を贈ることにした。

郵送2,3日後、そのうちの2人からギフト券が送り返されてきた。送り返してきた2人の会社には「25ドル以上のギフトを受け取ってはいけないというギフト・ポリシー」があったのだ。

この事例だけでも、多くのことを考えさせられる。まず、ギフト自体に潜む“ビジネスにおける見返り”への期待。ギフトを受け取る制限の規定。ギフトを送り返すことの倫理観など。そう、ここには贈る側と、贈られる側のさまざまな気持ちが錯綜しているのだ。

本書は、考えても答えが出し切れない倫理やモラルの世界を、深く多角的に考察する。形式張った文化や規定について、我々は今一度考える必要があるように思える。自分が起こす行動は、どのような倫理的意味をもつのか。より広い視点で考える機会を与えてくれる良書だ。

企画の道具箱

【著者】細野晴義【発行】実業之日本社
【発行年月】2004年01月15日 【本体価格】1,400円
【ページ数】222p 【ISBN】4-408-10573-2

「この物語は、会社を辞めて起業し、株式公開したいと思っているあなたのための疑似体験ストーリーである」

本書 P162 より抜粋

「企画書が書けない」「企画書をどうかけばいいのかわからない」と思ったことはないだろうか。頭の中には何となくイメージできているのだが、紙面にするには難しいと。本書を読めばわかるが、実は、頭の中にあるものを紙面に落とすまでには、やらなければいけないことがあるようだ。

「企画書はドラマだ!」。ビジネスには決まった型は存在しない、人と人とが織りなすドラマがあるのだと、本書は冒頭から掲げている。つまり、そのドラマを企画するのだから、企画書作成にマニュアルがあること自体がおかしいということなのだ。

では、どうすれば書けるか。それは、書き始める前段階「インプット」の作業が肝心なのだと。「インプット」しないと「アウトプット」はできない。例えば、医者なら最新の情報や技術を学び、治療にあたる。コピーライターでも、一言を書くのに莫大な資料に目を通す、といった具合だ。

そこで、企画書を作るには表や図式化を考えるよりもまず「言葉をしっかり作る」ことを、本書では勧めている。そのために大切なのは「メモを取ること」だと。メモを作れば、表や図にするのにも簡単。呼応関係や言葉遣いを統一させることで、不足部分が見えてくるし、アイデアも出てくるという。

本書では、競合文具メーカー2社のケーススタディを交えながら、課題克服のための企画書作成をしていく。ブレーンストーミングから生まれたキーワードたちをうまく仲間分けして、問題点や課題解決方法を明確化していくことで、魅力的な企画を一気につくりあげていく、といった内容だ。

本書を読みながら驚いた。「人を魅了させるための企画書本」だけあって、いつのまにか「書けそうだ」と思わせるような巧みな構成になっていることに。平易な文章で読みやすいし、理解に一切苦しまない。何よりそこにドラマがあると感じられるのだ。

これまでの企画書解説の多くは、見せ方に重点を置き、テンプレートに当てはめていく、というタイプのものが多かった。分かりやすい図説も重要なことかも知れないが、企画書を書く人それぞれの立場が変われば、ドラマの展開も変わるはずだ。

我々は普段「顧客のために」などと頭では理解しているものの、実際に行動に移す時には自分の視点で物事を考えがちだ。それはやはり本質的な部分で顧客や問題点を理解していないことなのだ。本書を一読されれば、その方法を身につけられることだろう。

連戦不敗のプレゼンテーション

【著者】村山涼一 【発行】PHP研究所
【発行年月】2003年11月05日 【本体価格】1,200円
【ページ数】204p 【ISBN】4-569-63150-9

非言語コミュニケーションや心理、クロージングや戦略といった側面から定義した方が、仕事を成功させるという意味では効果的だと思う。

本書 P19 より抜粋

企画は素晴らしいのに、プレゼンテーターが十分に説明、説得ができないでダメになってしまうケースがある。一方、企画はそれほど大したことないのに、プレゼンテーターの力量で決まってしまうプレゼンは多い。これは企画のデキを超える、プレゼンテーションの役割の重要性を意味している。

書店に並ぶ“プレゼン本”は、「話し方や企画書の作り方、プレゼンの達人が語る体験談」などが多い。しかし本書には、それだけでプレゼンを定義するのは「違和感がある」と記されている。本書で最も主張する、交渉現場での奥義とは、これまでの常識を覆す「非言語プレゼンテーション」なのだ。

非言語コミュニケーションの研究者によると、二者間の対話において、言葉によって伝えられるメッセージは全体の35%に過ぎないのだという。残りの65%は、話しぶり、動作、ジェスチャー、相手との間の取り方など言葉以外の手段なのだという。

つまり、説得的コミュニケーションにおいて、「話し手が何を言うか」よりも「どう言うか」の方が、聞き手は影響されやすいということなのだ。ここでは、実際のプレゼンにおいて、複雑な事柄でも瞬時に理解させるために、言葉をより効果的にする「ジェスチャー」の使い方を紹介する。

最も簡単な例としては、時間の変化を表現すること。過去から現在、現在から未来。これは言葉で伝えてもわからないことはないだろうが、手のひらを左前方に差し出して、同じ位置を右までずらしながら「過去から現在に至るまで」と言った方がイメージできるし、時間の経過が意識しやすいのだと。

「こんなことは、プレゼンツール(パワーポイントなど)でやれる」とお思いだろう。しかし、プレゼンの内容はそれだけではないはずだ。売り上げの変化から、ターゲットの絞り込み、(広告がテーマなら)認知行動のイメージや(店頭での)購買行動などもイメージさせなくてないけない。

本書には、プレゼンにおける様々なシーンで、場に即した身体の動きがイラスト付きで丁寧に解説されている。言葉だけでは相手には伝わりにくい。イメージを相手に委ねるよりも、プレゼンターがイメージを提示することで、聞き手は理解する手間が省けて、印象に残りやすいことがわかるだろう。

仕事のデキは、人とのコミュニケーションで左右されることが多い。プレゼンに限らず、仕事を部下に頼むときや、説明するときなど、分かりやすく印象に残りやすい表現方法を身につけておきたい。プレゼンターを含む全てのビジネスマンの読んでいただきたい一冊だ。

技術者が営業をきわめる本

【著者】寺松輝彦 【発行】PHP研究所
【発行年月】2003年05月21日 【本体価格】1,450円
【ページ数】220p 【ISBN】4-569-62877-X

技術者営業は、営業マンより専門知識を活かして、お客様を納得できるように話せる有利な立場にいることを自覚しましょう。
本書 123P より抜粋

「技術革新」という言葉を、我々は日々浴び続けている。パソコン1つとっても、購入したばかりなのに、もう陳腐化してしまい、倍以上の性能のマシンが、安く手に入る。技術革新を身近に感じる瞬間だ。これは、IT関連に限らず、バイオ関連、医療、環境などの分野でも、顕著なのだ。

新技術と思っていても、導入が遅れれば、さらにそれを上回る新製品が市場に出回る。いわゆるロングヒットが生まれにくい状況だ。また、自社の市場を他社に奪われたり、技術開発のコストを回収する前に、その技術が古くなってしまうという状況も、日常茶飯事的になっているようだ。

もう、悠長なことは言っていられない。どこよりも先に、どこよりも早く新製品を市場に出し、そのコストを回収することが最低限のミッションになりつつある。そこで、自社製品を商品化する最後の関門、営業マンに求められる「資質」が注目されるようになったのである。

今までは、専任の営業マンと必要に応じて関係する技術者が補足説明に出かけるパターンが多かったが、これでは時代の速さについて行けなくなっているのだという。そこで考え出されたのが「技術者営業」という概念だ。

本書ではまず、技術者営業の利点として、商談の場において「専門知識に長けている為、説得力のある発言ができる」、「強引な売り込みをされないであろうという安心感がある」こと、などが挙げられるようだ。つまり、その場で顧客の課題にフレキシブルに対応できる技術者の役割を実証している。

さらに「技術者だからこそ、顧客の“真のニーズ”をつかめる」のだと著者は主張する。消費者のニーズをふまえ、顧客の開発方向と技術担当者の能力を把握し、アドバイスや助力ができるというのだ。しかし、職人気質の人に顧客と親交を密にすること自体、そもそも難題では、と疑問が残るだろう。

本書は、そんな技術者に向けた“超”レクチャーブックである。技術者であるメリットを活かしながら、顧客との会話の仕方や提案、プレゼンの方法など、システマチックな展開で構成されている。特に「オサカナトウキ」という話の聞き方のコツなど、即実践できる宝刀も用意されている。

本書にはこのように、技術者が営業を始めるときに必要な“心構え”がギッシリ詰まっている。しかもかなり丁寧に綴られているので、技術系ではない「営業マン」が読んでも、参考になる箇所は多いだろう。スピード社会の現在、読んでおいて損はない一冊として、オススメする。

10年かかるところを2年でできる 昇給昇進のための21の心構え

【著者】ブライアン・トレーシー 【発行】きこ書房
【発行年月】2003年04月22日 【本体価格】1,100円
【ページ数】166p 【ISBN】4-87771-095-7

これからご紹介する「21の心構え」を日常の仕事で使ってもらえれば、同じ収入、同じ成功を手にするために必要な、何年にもわたるハードワークを省略できるはずだ。
本書 腰帯 より抜粋

本書は、ベストセラー「カエルを食べてしまえ!」の著者ブライアン・トレーシーの最新刊だ。この本を読むと、どうやら、我々はキャリアというものに対して神経質になりすぎていた節があると感じてしまう。

様々な情報が錯綜する環境で、焦点が定まらなかったと言っても良いかもしれない。「まず、目の前の仕事を成し遂げよう」要は、到達点ばかりに視点を合わせて、足元がボヤけている……そんな時、ふと我に返ることも重要だと気付かされる一冊なのだ。

何の努力もしないで、昇給昇進を勝ち取ることは、まずない。我々はそれを目指し、様々な知識や技術を身につけようとするだろう。本書は、キャリアアップという概念を「昇給昇進」という形で表現した、新感覚のビジネス書といえるだろう。

しかし、自分のステータスを上げるために、ただ合理的にミッションを消化する、それで理想の未来を勝ち取るには相当の時間がかかる。そう、自己中心的思考は昇給昇進の邪魔をするというのだ。

本書で紹介する「21の心構え」は、実に単純で明快。「昇給昇進を手にするためには、在籍期間が重要な要素ではない。要はやり方だ」ということだけだ。読み進めていくと、仕事に対して、自然とポジティブに考えられるようになるだろう。

21個の項目の中から、興味深いものを一つ紹介しよう。「外見」についてだ。本書では、あなたがいる業界、会社において相応しい外見でいること、が必要なのだという。

人間は外見に弱いもので、あなたが他人を判断する時同様、他人もあなたを外見で判断していると。そして、自分の外見に無関心・無頓着なために、昇進が遅れている人は実に多いという。

さらに、コミュニケーションの専門家によると、人は最初の4秒間で相手に点数をつけ、次の30秒間で印象をまとめあげている、という驚くべき人間心理も披露される。そして、当然、対処のためのの処方箋も提示される。

このように本書には、昇給昇進のための秘訣がギッシリ詰まっている。これまでの仕事に対する姿勢や態度を見直すために、何より「短期間で“出世”したい!」人は本書を一読すると良いだろう。

実学入門 なぜ売れないのか 営業力は「仮説力」で決まる

【著者】稲垣佳伸 【発行】日本経済新聞社
【発行年月】2003年02月20日 【本体価格】1,600円
【ページ数】204p 【ISBN】4-532-31030-X

次のようなら要注意!
POSデータで売れ行きを判断している。
営業報告は営業マンの意見が中心。
会議の意見の大半が否定的なもの。
消費者や取引先の言葉をうのみにしている
本書 腰帯 より抜粋

POSデータシステムは非常に便利である。オフィスにいながら、いつ、どこで、何が、いくつ売れたかが手に取るようにわかるのだ。しかし、それには大きな落とし穴があるという。明日の売れ筋がわからないのだ。わかるのは、今日、あるいは昨日までに、いくつ売れたかということだけ。

そう、売れた結果のみしかわからない…。だからこそ、大切なのは現場感覚なのだという。数字に頼り過ぎると実体が見えなくなるのだと。

あるドラッグストア・チェーンでの話。担当者がベビーフード関連の売り場分析をしたところ、特定の二人の購入額が毎月ダントツに高かった。さまざまな角度から分析しても理解できず、仕方なく店頭のパートの女性に聞いてみると、答えは簡単だった。双児がいる家庭だったのだという。納得…。

そこで本書は、今注目されている「定性情報」の重要性を後押しする。データに頼る「定量情報」とは、販売数量や仕入金額、市場シェアなどを表し、「定性情報」とは、意見やクレームといった言葉や文字、画像など数値化できないものだ。マーケッターには馴染みの言葉であろう。

意思決定や判断をするための情報が定量情報で、観察や機会発見をするための情報が定性情報ということか。営業マンは現場での観察力を磨き、仮説を立てることで新しい市場機会を発見していくのだと著者は主張する。「モノを売ること」ではなく「モノが売れる機会を見つけてくること」なのだと。

本書を読み進めていくと、会社として成績を残すための仕事ぶりがよくわかるだろう。現場から「(情報ではなく)事実」を持ち帰り社内で共有する。そのための営業日報の効果的な使用方法などから、「事実+仮説=意見」の公式を用いて、マーケティングの極意を伝授する。

他にも、インターネットを介したダイレクト・マーケティングの意外な活用方法を紹介している。今まで無駄に使用していたインターネットの将来性、メーカーにとって、流通にとってホントの顧客とじっくり話すことの重要性なども盛り込んでいる。

顧客の声の大切さや仮説力の重要性は、あちこちの本で紹介されているが、その本質を伝えることが本書の狙いだ。24年間にわたって、数万本の定性情報を活用したプロジェクトから得た著者の経験を、店頭開発のマーケッターである営業マンたちに向けて発信している、そんな一冊なのだ。

あなたを危機から救う 一分間謝罪法

【著者】ケン・ブランチャード&マーグレット・マクブライド
【著者】松本剛史【発行所】扶桑社【発行年月】2003年01月30日
【本体価格】933円【ページ数】142p【ISBN】4-594-03852-2

若者は、「一分間謝罪法」を学ぶ。それは単に謝るだけではない。悪化したあらゆる状況を好転させ、あなたを危機から救う、すばらしい知恵が秘められていた!
本書 見返し より抜粋

物語は、ある「若者」が勤務する会社の取締役会から始まる。そこで社長が思わぬ失態を演じる。重役たちから経営について詰問を浴びせられ、社長が逆上してしまうという最悪のケース。

翌週の火曜日までに重役たちの信頼を回復するように、社長は議長から言い渡される。社長のアシスタントである「若者」は、会社の危機を感じ、解決法を探索すべく週末旅に出ることを決心する。<一分間マネジャー>に会うために…。なかなかドラマチックなオープニングである。

事の次第を知った<一分間マネジャー>は、自らの編み出したメソッド「一分間謝罪法」を若者に伝授する。その謝罪法とは、とてもシンプルなものだった。「降伏し、誠実になる」ことだという。自分のミスを素直に受け止めて、償い、今後の決意を示し、行動することだと、実例を挙げて教える。

本書を読み進めると、そもそも「降伏し、誠実になる」などという言葉そのものを理解していたつもりでも、多くの人は実践できていないのでは!?と気付くことになるだろう。中途半端なプライドや保身が邪魔をし、100%正直に問題に取り組むことが、難しいことだと再認識することになる。

自分が正直であることを示すことで「降伏」し、誠実であることは、“有言実行”で証明する。つまり<一分間謝罪法>は申し訳ないという気持ちを込めた単なる「謝罪」ではなく、素早く実践に移す「行動」を伴うことが必須条件になるのだという。

そう「スミマセン」は単なる形式的な挨拶にすぎない。ミスを犯した状況を好転させるには対人心理を考慮し、論理的整合性で解決できるという。

従来のトップダウン型の組織形態は古びてきた。上からの命令で動かすというよりも、若手社員に仕事を「依頼」する、という形態にシフトしている。上司と部下との関係をより良いものにするには、ミスした上司が謝ることも必要なことだと納得できる。自己中心的リーダーでは部下はついてこない。

物語の最後は、<一分間謝罪法>を身につけた「若者」が会社に戻り、社長に効果的な解決手段を伝授する。そして再び取締役会が始まる…。

本書で紹介する<一分間謝罪法>は、多くのリーダーが活用すべきだが、部下もこれを活用することで、よりよい結果を享受できる、としている。「謝るのが苦手」な人には、かなりオススメの一冊だろう。

朝10時までに仕事は片づける

【著者】高井伸夫【発行所】かんき出版
【発行年月】2002年12月02日【本体価格】1400円【ページ数】219p
【ISBN】4-7612-6056-4

夜は一日の労働で疲れているし、ストレスも感じているから効率が悪いでしょう。となれば朝、それも早朝しかないことになります。朝の時間が、早起きが、ますます必要になってきているのです。
本書 98P より抜粋

本書は、充実した一日を過ごすために、56項目からなる「仕事と人生の時間整理術」を伝授している。核となるのが「朝の過ごし方」。現代社会が夜型思考のため、自然と夜の時間は楽しみのひとつになってしまったが、それはあなたのキャリアアップの妨げになるのだという。

時代は「足腰」を使う農業社会に始まり、「手先」を使う工業化社会、商業・サービス業社会では「口先」になった。そしてソフト化社会の現代は「頭脳」が個人レベルの指標というわけだ。これが意味するところは、個人の能力の差は、時代の変貌につれて、劇的に開いたということだ、という。

上から与えられた仕事だけ「こなす」だけでは、この競争社会では生きていけなくなる。自ら戦略を立て、提案し、自主的に仕事を創りだし、結果を残していかなくてはならない。そのためには相当の準備時間を要する。そこでようやく本書は提案する。「今より2時間早く起きること」の実践だ。

たまたま早朝に目が覚めて、誰よりも早く出社した経験は有るだろう。そんな時は決まって、なぜか体の調子も良く、仕事の運びがうまくいった気がする。仕事が実にスムーズだったのではないだろうか。時間を上手く活用できて、充実していることを体感する。しかし、それは3日として続かない…。

本書では、「とりあえず3連勝」の勝ち癖を勧める。どんなに辛くても早起き3日間を義務として、達成できたら1勝。そして次の3日間は何か実のあることをプラスしレベルアップ。そうやって徐々に体を慣らすことで、晴れて3連勝後には、体は確実に早起きメカニズムを記憶しているというのだ。

当の著者は、朝4時に起床するという。目覚めてすぐに思いついたことをメモ。6時には職場に到着し、当日の予定をテープに録音。新聞に目を通し、気になった記事はコピーを社内に配付。その他、前夜に食事をした取引先に礼状を書き、部下との早朝のひざ詰め面談などをこなす(詳細は本書で)。

驚くかも知れないが、これは著者の午前10時までの日課の一部なのだ。

朝の時間帯は、頭を使う仕事に向いているという。特に、朝は右脳が働く、だから経営者や企画者が事業戦略などを考えるのに向いているのだと、本書は説く。

なるほど、確かに健康面だけでなく仕事上のメリットも多く、仕事ができれば人も集まる。「プラスのスパイラル」にハマると運もつかめるということか。「できる社員」になるためには、まず今よりも、2時間早起きすることから始める。そのための手引きになる1冊なのだ。

会議革命

【著者】齋藤孝【発行】PHP研究所
【発行年月】2002年10月29日【本体価格】1,200円
【ページ数】191p【ISBN】4-569-62479-0

本当の会議はすがすがしい。
本書 腰巻 より抜粋

ある友人の外国人ビジネスパーソンが、こうつぶやいた「日本の会議はあまりに不思議なことばかりだ」と。彼が言うには、1.議題が当日に発表されることが多い。2.議題のための資料も当日渡される。3.十分な討議が出来ないままになんとなく結論が出される。のが日本の会議だと言う。

極端な話だとは思う反面、まあ、当たらずとも遠からずだな、という気になるだろう。会議といえば「会社員の義務」みたいなものであり、そこは「苦痛を伴う場所」だ、そんな認識は、日本の会社に勤務するほとんどのビジネスパーソンが共通に持っているだろう。

さて今回紹介する「会議革命」は、そんな辛いことでしかない会議の場を、「すがすがしい」ものにするのだと言う。腰帯には「時間半減。気分爽快。成果倍増。」とある。そして著者はと言うと、あのベストセラー「声に出して読みたい日本語」で、名高い人でもある。期待感も増す。

まずは「会議はアイデアを出す場所である」と定義する。アイデアを出すために、様々な努力を払うべきだと、筆者は主張するのだ。会議は戦う場所ではない。みんなで困難を乗り切るための「アイデア」を出す場所なんだと。そして「ゴール」を生み出したかどうかを、成果と考える。

さらに「レジュメ」の作り方にも言及する。報告が長すぎる会議が苦痛の原因を生み出すのだとし、司会者の「如才なさ(=つまりは何も生み出さない議事進行)」にも、大きな罪があると。そして、会議をサッカーに例えて、司令塔的な役割の人物を用意しようと提案する。

会議に必要なことは「事前の段取り」「会議中の討議のしやすさ」「出しやすい結果を設定する」ことに尽きるようだ。そのためのノウハウを、本書は事細かに紹介している。その細かさに驚くとともに、即、真似をしてみたいそんな魅力的なテクニックも多い。

著者のスペシャル技ともいえる「三色ボールペン活用術」をはじめ、「セクシャルパワーの利用」「他人の脳みその使い方」「ホワイトボードの上手な活用方法」など、会議に悩んでいる人なら(=おそらくほとんどのビジネスパーソンがそうだろう)読んでみたいに違いない。

会議とは「チーム・コミュニケーション」なんだということを、本書では繰り返し教えてくれる。今までのような「御前会議」スタイルでは、激動のビジネス社会を乗り切れないだろう。すがすがしい気分になれるかは保証しないが「良い会議」をやってみたい!と考える人は一読すると良いだろう。

ブランド力

【著者】山田敦郎+グラムコブランドマーク研究班
【発行所】中央公論新社【発行年月】2002年09月25日
【本体価格】2,000円【ページ数】429p【ISBN】4-12-003310-4

資生堂/モンブラン/エルメス/ロールス・ロイス/ジャガー/スタジオジブリ/久保田/関さば・関あじ/P&G/ネスレ/GAP/エゴイスト/浜崎あゆみ/中谷彰宏/ウールマーク…。
本書に紹介されているブランドの抜粋

またしても時代はブランドブームである。「ヒト・モノ・カネ・情報・ブランド、これが新時代の五大経営資源」といわれる中で、21世紀に求められる資産は「ブランド」であるといわれている。そんな中での本書の登場だ。なかなかの大冊、読むのに骨が折れそうな気がする。

しかし、この本はきわめて面白い。「ブランド力」というタイトルと、腰帯の「パワーブランドになるための条件とは何か」によって、ずいぶん損をしているのではと思う。ブランドを軸にした、とても興味深いビジネスストーリーが、ここにはたくさん描かれているからだ。

まず、最初に「資生堂」が紹介される。資生堂と言えば「化粧品」、その資生堂の商品に変化がおきているのだという。パッケージラベルに、資生堂の文字が消え始めているのだ。本書は、本来なら押し出すべきものが消えていくところを着眼点として、資生堂のブランド戦略に迫っていく。

資生堂のマークである「花椿」は、写真家でもあった初代社長が自ら絵筆を取り、デザインしたものであること。創業の土地である「銀座」にこだわり続ける理由。そして、掲げるスローガンの大切さに触れる。その周辺のエピソードを読むだけで、すでに楽しい。

そして、話はグローバル化する企業としてのブランド戦略へと広がっていくのだ。ローカルブランドの育成、新カテゴリー市場での戦略、さらには世界的なポジションの確立まで、話題が広がっていく。バックヤードにある「芸術的」な部分を視座に据えることで、その戦略が鮮明になっていく。

そう、本書を読むことによって、その企業の「持ち味」を、様々な角度から知ることになる。裏を返せば、ブランド力を持つ企業は、読むものをひきつける強烈な「個性」が存在するということでもあるのだろう。当然、綿密な取材による、事実が積み上げられた文章に、よるところも大きい。

企業のメッセージが消費者に届きにくくなった、だから、ブランドを持っている企業だけが、1人勝ちできる時代になっている…という声を、よく耳にする。しかし、本書を読めば、本末転倒な話であることがわかる。ブランドとは信頼の証、ブランド企業はそれを守るべく大変な努力をしているのだ。

自身に関係のない分野の話だと思わず、一度本書を手にとって見てほしい。専門用語も少なく、平易な文章とともに、企業が消費者にコミットする際、欠かしてはならない矜持のようなものが、本書にはギュッと詰まっているからだ。オススメの一冊である。

図で考える人は仕事ができる

【著者】久垣啓一【発行所】日本経済新聞社
【発行年月】2002年05月20日
【本体価格】1,500円【ページ数】220p【ISBN】4-532-16418-4

図には、いろいろな情報を関連づけて一目でわかってしまう、そんな力があるのです。
本書 13p より抜粋

様々な場所でのカンファレンスでの発表スタイルが変わってきたのは、ここ最近のことだろう。しばらく前は、プレゼンテーションソフトを利用していても、箇条書きの文字が順番に出てくるだけだった。今は違う。多種多様な「図」が登場し、伝達される内容への理解を助けるようになった。

本書の著者は、図解コミュニケーションの第一人者であり、その著作も多いのだが、今回は、図解の技術を紹介するのではなく「図で考える」という視点での1冊となっている。まずは、図で考えるとなぜ良いのか?道順を説明するという困難さ、という、割と想像しやすいシーンから、本書は始まる。

まず、注目したいのは「図読」という言葉だ。

物事は、何かにつけ「立体的」に捉えるほうが、理解は早いのだが、文章では、その思考の流れなどを、立体的に書き記すことは、とても難しい。図なら、矢印などの装飾、文字の配置による関係の説明など、一目瞭然で伝えることが出来る。そこに着目して「図読」なのである。

文章を読むときに、紙(A4サイズを著者は推奨している)とペン、そして蛍光マーカーを用意する。そして、文章を読みすすめ、ポイントと思える箇所に印をつけながら、一読する。マーキングしたキーワードを、紙に写してから、それぞれのキーワードの相関関係などを、図解していく。

難しいことではないようだ。線で結んだり、マルで囲んだりして、書き手の考えを「繋がりが一目できるよう」デッサンしていく。出来たら、もう一度文章に戻る。作成した図を見ながら、最初に気がつかなかったポイントを、図の中に書き込んでいく。頭の中が、ドンドン整理されていくはすだ。

そうすることで、読んでいる文章の書き手自身が気がつかなかった(=つまり書かれていないこと)事柄を発見できることもあるという。要するに、文章を立体視することによって、次元が増えて、新しい「見えていなかったところ」が見えたのだろう。感動を覚えることもあると、筆者は述べている。

情報が氾濫する社会だけに、その押し寄せる情報を、正確にキャッチするとともに、自らの「伝えたいこと」も、誤りなく伝える技術が、ますます重要視されてくるだろう。「図解」と「図読」は、覚えておいて損のないスキルのひとつだろう。

1日を26時間にする、最強の時間活用術

【著者】ヴィンス・パネラ【訳者】楡井浩一【発行所】PHP研究所
【発刊年月】2002年10月21日
【本体価格】1,400円【ページ数】275p【ISBN】4-569-62452-9

この5分間の使い方で、仕事と成績が飛び抜ける。自分をコントロールできれば、時間をコントロールできる。
本書 腰帯 より抜粋

世の中のすべての人にとって、もっとも平等なものは「1日の時間は24時間であること」だと、よく言われる。しかし、本書のタイトルはどうだ!1日の時間が2時間も増やせるとは…。日ごろから時間に追われているビジネスパーソンにとって、こんな嬉しいことは、ないはずだ。

まず最初にこんな例を挙げる。30分のテレビ番組では、10分間はCM。あなたはその時間をどのように使うか、ツボなのはそこだと。将来の目標を達成するために、時間の使い方で困っている人はかなり多いと。本書は、簡単かつ誰にでも利用できる手法で、時間を有効に使う技術を伝授する。

本書では、終始、5分間の大切さを強調している。毎日無駄に過している時間があったら、自分の目標に向かって、24時間のうち5分間だけそのための努力にあてれば、将来は全く異なる成果を生み出せる、というのだ。なるほど、それは最もな話。しかし、実際に5分くらいで何が変わるのか?

5分だからこそ、努力することなく長く続けられ、長く続けられるからこそまとまった成果を出すことが出来る、と本書は説く。語学の勉強、楽器演奏の習得、新しい興味ある分野の勉強…5分で出来ることは計り知れない。当然、日常業務の改善だって、ある程度は可能なのだ。

毎日の5分によって、0.5%しか改善できないとしても、1年では300%、2年で1000%以上の改善となると、筆者は力説する。数字のレトリックに過ぎないのだが、なんとなく「力」が沸いてくる感じがする。ああ、今日からでも、その「5分」を大切にして頑張ろうと。

さらに、本書では、普段の仕事における「時間をむだにする要素」を13項目上げ、それを回避することを提唱している。集中力を乱され、時間を浪費する要素、例えば、同僚に話し掛けられる、仕事を振られる、電話、電子メールなど…。自分の時間を増やすには、これらを縮小すべきだという。

自分は今、何をすべきか。常に問いかける。これを心がけるだけで、仕事の段取り、効率がぐんと上がる。目標を明確化することにより、無駄を省けるし、短時間でミッションを終えることができるという。

その「容易そう」だけど「意外と難しい」ことを、実行するためのノウハウが、本書には詰まっている。呼吸法や睡眠の大切さを説明する項目もあり、読んでいて、いろんな意味で楽しい1冊だ。

「時間がない」と言い訳するのは簡単だけれども、本書を読み進めると、時間を「浪費している」という事実を、改めて認識できる。そして、目標を達成するためには、やはり「意欲」が根幹にあるのだ、と、深く考えさせられるはずだ。時間について悩んでいるなら、必読だろう。

デスクトップの技術

【著者】中野不二男【出版社】新潮社(新潮選書)
【発刊年月】2002年09月15日
【本体価格】1,100円【ページ数】237p【ISBN】4-10-603516-2

本当に役に立つ情報は、システム化された「机上空間」から生まれる
本書 カバー より抜粋

デスクトップという言葉を目にして、思い浮かべるモノは何だろう。机の上を想像する人は、実はそれほど多くなく、パソコンの初期画面を、それとした人が、結構いたのではないだろうか?本書は、机上空間についての「テクニック集」だが、パソコンについて、読むべきところが多い。

筆者は、パソコンの使い方として「中級機種・複数併用型」という、一風変わったスタイルを提案している。購入してから時間が経過パソコンでも、機能を絞れば、まだまだ活用が可能で「元が」取れると。さらに、バックアップを丸ごと取ってしまうために便利なことなど、その効能を説く。

さらに、ノートパソコンを譜面台のような器具にセットして、かなり変わった利用法をしていることを開陳するのだが、なにより、その方法に至った結論を、これこれこういう風にしようと、最初は考えたが、上手くいかずに…と、実に細かく書いてあるのが面白い。

また、メモの取り方の紹介では、あまり活用されているのを、耳にしたことがない「オーガナイザー系アプリケーション」のメモ機能を、上手に利用する方法が書かれている。「メモの技術」なるベストセラーを出した筆者ならではの、実践的なテクニックなので、参考になりそうだ。

刮目すべきは、ハードディスクの整理の仕方に言及している項である。自身のパソコンの具合が悪くなって、いろいろと調べたがよくわからない。その筋に詳しい知人に診断してもらうと、スワップの問題だと指摘され、ハードディスクを整理するように言われてしまう。

ハードディスクをパーティション設定して、使うことを勧められ、それを実施する。また、パソコンの専門家から、ウィルスなどからパソコンを守るための手段として、ハードディスクを「半年に1回フォーマット」することを教えられ、目からウロコを落とす。

ハードディスクを3つに分割することは、どこかで読んだことがある、が、なぜ、そうしなければならないのか、その理由が書かれている本は、とても少ない、ましてや、ハードディスクを定期的に初期化してしまう、なんてテクニックは、一般的には全く知られていないと。

情報整理術という視点を軸に、パソコン、情報携帯端末、文房具、PDFファイルの活用技術まで(=これも素晴らしい)まで、利用者の立場から、テクニックを紹介している、実に「楽しい」本だ。万人に役立つかというと、難しいところだが、一読の価値はあるはず。オススメ。

気がつくと机がぐちゃぐちゃになっているあなたへ

【著者】リズ・ダベンポート【訳者】平石律子【出版社】草思社
【発刊年月】2002年09月12日
【本体価格】1,300円【ページ数】222p【ISBN】4-7942-1146-5

平均的なビジネスマンは探し物をするためだけに1年間に150時間を浪費 している。ということは、探し物をせずにすめば、毎年ほぼ1カ月分の時間 が浮く計算になる。そうなったら、いまよりどれほど多くの休暇が取れるか 考えてみて欲しい。
本文腰帯より抜粋

突然だが、あなたの机の上は、きれいに整理整頓された状態だろうか?自信を持って「yes」と答えることの出来る人は、とても少ないはすだ。そう、たいていのビジネスパーソンのデスクトップは、程度の差こそあれ、とんでもない惨状であることは間違いない。

本書には、開けるのも恐ろしいような引き出し、モニターや電話機に貼られたいつの要件かわからないポスト・イットの短冊、崩壊寸前の紙類でできた地層を、机の上から一掃し、働くために最適なスペースを作り出すためのノウハウを、事細かに提供している。

まず本書では、コックピット・デスクを作ることを勧めている。最も頻繁に使う道具を手元において、書類の置き場所も、その役割に応じてきちんと定めておくものだ。見ないでも、必要だと思えば自然と手が動いて取ることが出来る、そんなスペース作りを目指すというのだ。

そのためにはまず、整理をするための「空きスペース」を作ることを指示される。私たちが整理できない原因を「(何か強力なきっかけがない限り)ファイルや引き出しや本棚の中身を一切捨てようとしない」からだと、看破する。いきなり耳が痛い方も多いだろう。そう、まず捨てるのである。

「6カ月以上保存しているものの95パーセントは、じつはゴミだ」という視点で、今まで溜め込んでいたものをドンドンと整理していく。と同時に、使いやすいように書類を分類整理していくのだが、書類の山にうんざりしないようにと警告されている。しかし、うんざりなんてとんでもない!

本題に入る前の序章を読み進めているに過ぎないのに、既に書類を捨てることによる「爽快感」を目の当たりにしているような気がする。準備ステップの段階で、軽やかなデスクを作りたい!という衝動に駆られてしまう(事実私は机をスッキリと整理してしまった)。

先ほど述べた「コックピット・デスク」のほか、要件の出入りを整理するための「管制塔」を作ること、さらには、行動計画の優先順位のつけ方、片付けるタイミングなど、本書は実に細部にまでノウハウを張り巡らせている。ぜひ、手にとって、その「お役立ち感」を確認してみて欲しい。

「机の周辺を徹底的に使いやすいように整理する」本書にはそれ以外のことは書かれていない。しかし、そのことに関してはまさに決定版だ。机の上が「きたない」と感じでいるあなたには、福音の一冊だろう。

心理学博士が書いたコンサルティング・セールスの成功法則

【著者】鈴木丈織【出版社】PHP研究所
【発刊年月】2002年08月15日
【本体価格】1,500円【ページ数】248p【ISBN】4-569-62350-6

納得のメカニズムは、自分のバラバラになっている考え方を筋道を立てて体系化させることです。また、漠然として曖昧なものがきちんと明確に整理されたり、判明することです。お客様のなかの混沌とした欲求や欲望が具体的に見えてきたときに、「やっぱりそうか!」と意識できる満足感なのです。
本文 92p より 抜粋

なんとなく、なぜ上手くいくかわかっているんだけど、明快な言葉で説明出来ない…そんなノウハウを皆さんもお持ちだろう。その「なんとなく」の部分をスッキリと説明されたときの「気持ちよさ」は、そうなんだ!と文字通り膝を打ちたくなる、そんな感じではないだろうか。

本書は、まさにその「膝打ち本(=勝手に命名)」の一冊である。セールスを行うときの、ターゲットの心の変化、それを読み取ってこちらが繰り出すテクニック、それらを心理学的な裏打ちとともに、系統立てて紹介してくれている。まさに「スッキリ!」の内容盛りだくさんなのだ。

まずは「ファースト・コンタクトを成功させる7つの法則」と題して、顧客の信頼感を醸成するためのテクニックを紹介している。好印象を与える、同調する、欲望と恐怖を抱かせる、褒める、支える、電話を使いこなす、言葉を駆使する。並べてみると、まあ、当たり前の言葉が並んでいるが…。

例えば「支える」の項を見てみる。顧客はあなたに役に立ってもらおうなんて最初は思っていない、あなたの役立ちへの自信もうぬぼれだ、要は「支える」という意識を持つ、と言うところからスタートせよ、と本書は述べる。

そして、顧客の感性(=正確でも合理的でも論理的でもない攻めどころ)を揺さぶることで、支えられている演出をせよ、と具体的な方法を、以下の5つ紹介している。

1.焦らずゆっくりとした口調。2.顧客の言葉を丁寧に復唱する。3.語尾は曖昧にしない。4.話題の「見出し」を早く話すこと。5.話の内容を途中でポイントごとに整理すること。たったこれだけのことだ。

しかし、この5つを自身が顧客になってセールスマンから行われている姿を想像して見るとわかる。確かにこれらの行為によって、信頼感が醸成され、相談の1つでもしてみようか、そんな気がするだろう。と同時に、日常、自身が行っているアクションも、断片的だが、似たようなことをしているな、と気づくはずなのである。言われてみれば…というやつだ。

理解をして行動するのと、闇雲に動くのでは、その成果に大きな違いが出ることは言うまでもない。セールスマン向けに書かれた本だが、すべてのビジネスパーソンが、その人間関係を築くときのノウハウを整理するために最適の一冊だろう。部下への同様のテクニックを教えるための「タネ本」としてもお勧めしておこう。

仕事は早くて雑でいい

【監修】神谷健司/小松俊明/町田秀樹
【出版社】アスペクト【発刊年月】2002年07月09日
【本体価格】1,400円【ページ数】203p【ISBN】4-7572-0926-6

しかし、企業の現場の本音は違う。最初にリストラするのは「やる気も能力も高い人」だ。(中略)「やる気も能力も高い」人がなぜ最初にリストラされるのか。それは、上司が使いこなせないからである。
本文 64p より 抜粋

タイトルが素晴らしい。仕事はきちんと丁寧にするのが当たり前のはずなのに、それを雑で良いなんて!キャッチーな題名で引きつける本書は、組織戦略・人事戦略・ヘッドハンティングのプロが、会社が手放さない人材になる秘訣を明かしている。

まず、成長著しいベンチャー企業の現場で採用・育成に携わる神谷氏が、組織を活性化し続けるために、必要な人材と、その育成方法を開陳する。言われた仕事は期日に関係なく「今すぐ」やれと。そのためには、雑でも良い。雑で直しが入っても、そこで上司とのコミュニケーションが生まれる、それが良いんだと。なるほど!の着眼点である。

さらに、価値を持つ人材で居続けるためには、仕事の価値観を整理するとともに、つねに自身の業務改善を行うべきだと指摘する。業務改善のポイントは「早く・安く・正しく・楽しく」の4つ。自身が求められる役割を、4つの視点から改善し続けることができる、その人が求められる人材なのだと。

次に、外資系企業の幹部社員のヘッドハンティングに携わる小松氏が、ヘッドハンターの視点から、市場が求める人材像と、転職市場に関するさまざまな知っておきたいことを、具体例を交えてわかりやすく紹介している。

リストラされやすい部門、リストラされるだろうサイン、転職の適齢期は入社何年なのか…など、興味深いトピックスが満載なのだ。例えば、リストラサインとして、会社のサイトから、自身の部署の商品がなくなったとき、自分たちはリストラ候補に上がっていることは間違いないという。冗談のような話だが、実際にあったケースなのだという。

最後に、企業の組織戦略と人事戦略づくりに携わる町田氏が、企業がリストラを進める背景と、具体的なリストラの進め方を、企業の立場から紹介している。リストラに関しては、社会現象としてのネガティブな側面からのニュースしか流れていなかったので、この情報はとてもありがたい。

過去の成功体験はもう必要とされていない現状、企業は組織改革を進める中で、人材フローマネジメント(=組織の新陳代謝を促す仕組み)を重要視し始めていること、企業がリストラ対象者を抽出する方法など、あー、そういうことなのかぁと、読みすすめながら、思わず口から漏れそうな内容だ。

読後一番の感想は「やられたなぁ…」正直な気持ちである。今までの関連本にはなかった切り口(言えなかったというのが正直なところだと思うが)や知りたかった企業の本音(やや偏っている印象もあるが)が、本書には盛りだくさんなのである。ぜひとも読むべき一冊だろう。

なぜこの人ばかりが出世するのか

著者】ローラ・バーマン・フォートガング【訳者】西村美由起
【出版社】KKベストセラーズ
【発刊年月】2002年05月15日【本体価格】1,300円
【ページ数】271p【ISBN】4-584-18671-5

あなたがトップをめざすことを妨げているものは何でしょう。私はこれまでのクライアントから判断するかぎり、仕事と人生で克服しなければならないハードルは九つあります。
本文 25p より 抜粋

自分とそれほど能力に差があるとは思えないのに、なぜか周囲の評価が高い同期が、あなたの周りにはいないだろうか。また日ごろから、自分にはもっと力があるはずなのに、それが発揮できていない、また、力を発揮する場所が与えられていないと悩んではいないだろうか。

本書は自分自身の仕事(とそれに関するすべてのこと)の現実を見つめなおして、考える理想に近づくことが出来ない理由を探ることで、なりたい自分になる方法をレクチャーしてくれている。自分を変えて、潜在能力を解き放つのが、本書の目的なのだ。

まず、自分の理想像がわかっているか?という投げかけで、自分の価値観を見つけ出すことの大切さと、自身の(さまざまな意味での)実現を妨げているなにか(それはいろいろと提示されている)をクリアするアクションを呼びかける。

面白いのは、アメリカの本には珍しく、本書で提示しているさまざまな目標ををやり遂げるためには、根性が必要なんだ!と言い切っている点かもしれない。弱音を吐かず歯を食いしばって(正しいベクトルに向かって)頑張ることこそが、成功の道なんだと力説している。

「人生これからなのに前に進む道が見えない」「コマネズミのように働いて燃え尽きそう」「他にやりたいことがあるのにできない」「どうすれば殻を突き破って頭角を現せるのか」「独立・起業して成功したい」「目先の売り上げばかりに振り回されている」「実力はあるのに発揮する場所がない」…

目次から拾い上げた本書の内容である。見ればわかるが、仕事に就いたばかりの新入社員、悩みが多すぎる中間管理職、独立を意識しだしたアントレプレナーまで、幅広い(そして一見相反する立場の)人たちに対して役に立つようになっている。

メールの返事を早く処理する、仕事をすべて書き出して優先順位をつける、自分に期待して、そして投資して、グレードを上げるなど…。ここに書かれていることは、本当に「当たり前」のことが多い。しかし、正直言って、その当たり前のことができないのが、また私たちでもある。

本書は噛んで含めるように繰り返し大切なことを教えてくれている。それこそ、挫けそうになる私たちを叱咤激励するコーチのように。なりたい自分に近づいている、そんな手ごたえがない人にとって、本書は役立つ一冊になるに違いない。

仕事ができる人の実戦ビジネス読書術

【著者】桜井直行【出版社】KKベストセラーズ
【発刊年月】2002年06月01日【本体価格】680円
【ページ数】230p【ISBN】4-584-12043-9

読んでいただければお分かりになると思うが、ここ10年の重要なビジネス書をきちんと読んでいれば、多くの出来事が予測できた。将来を展望して、どんなチャンスとリスクがあるかを知ることが、ビジネス書を読む大きな意義なのだ。そのことも実感していただきたい。たとえば、中国の将来がどうなるかというホットなトピックスも、すでに出ている中国関連のビジネス書に答えがあるはずだ。
本文 5p より 抜粋

ビジネスに関する新書に今、勢いがあるようだ。オフィス街の書店などをのぞいてみると良くわかるが、様々なビジネステーマで、いろんな出版社から新書が出されている。即役に立ちそうな良書も多いので、注意しておくことをお勧めしたい。

今回はそんな「役に立ちそうなビジネス系新書」の中からの一冊。筆者は実際にビジネス書の編集に携わると同時に、ビジネス書批評のスタンダードを目指して批評活動をしているという御仁だそうだ。ビジネス書のかなりの部分を知り尽くした、その人が、仕事の力になる101冊を厳選している。

この本は、ここ10年くらいのビジネス書における「(売れた売れないにかかわらず)重要なもの」を書評し、その本が読むべき本になった事情を鑑みた上で、その本自体が「よい本かどうか」を採点している。これによって、ビジネス書に向かい合う「姿勢」を学ぶことができるのだ。

取り上げている分野は「マネジメント」「自己啓発」「株式投資入門」「金融スキャンダル」「世界の中の日本」「構造改革論」の6つ。筆者の考える「ビジネス書の売れ筋」を分類したとある。なるほど、ビジネスにおける大きな流れなら、この6つの分類で、ある程度は追えそうである。

ユニークなのは本を採点する基準。1.切り口/2.コンテンツ力/3.満足感という3つの軸を出している。そのいずれもが、ビジネス書編集者としての筆者による「ビジネス書の作り手」サイドからの、プロの考えであるところが、とても面白い。

例えば2番目のコンテンツ力は、内容の面白さや説得力を評価の基準にしていない。原稿の分量を重要視しているのだ。雑誌の論文程度で済むものを、無理やり大著に仕上げることもある出版業界。その分量に見合ったしかるべき内容が盛り込まれてあるか?そこが評価のポイントになるのだそうだ。

本書で勧められている本の中で、自ら興味深いものを選んでコツコツ読むことも良いだろう。しかし、本書はやはり「ビジネス書選びの視座視点」を身に付けるために利用することを推奨したい。それさえ身に付けば、ビジネス書売り場の「混沌」で、迷うことは少なくなる(でも迷うときもある)。

短く書く仕事文の技術

【著者】高橋昭男【出版社】講談社
【発刊年月】2001年12月20日【本体価格】740円
【ページ数】199p【ISBN】4-06-272110-4

3年ほど前、ある企業経営者から、こんな話を伺ったことがある。(中略)「こちらが指定したキーワードを充足する内容でA4判1枚程度にまとめてくれる有能なアシスタントが絶対に必要な世の中になってきた。そのようなスペシャリストを養成する教育機関が必要だね」
本文 14p より 抜粋

仕事文を語らせれば右に出るものはない筆者が、新しい仕事文の本を出していた。サブタイトルに「削り方・磨き方・仕上げ方」とある。今度は「短く書く」技術について言及した一冊だ。無駄がなくわかり易く、そして説得力のある仕事文を書くためのコツが満載されている。

まずは「簡潔な文章のすすめ」として、『100文字レシピ』という本を紹介している。カンタンかつ本格的で美味しい家庭料理を、たった100文字で説明しているその本を見て、情報の伝達は簡潔に、特に仕事文は出来るだけ簡潔に、膨大な文章は仕事には「不要」だと、読者に勧める。

続いて「削って磨く技術」として、ただでさえ短い文章の代表である朝日新聞のコラム「天声人語」を半分に削る練習法を紹介している。文章の結論を見つけ出し、構造やキーワードを把握してから、結論以外の情報を優先順位をつけて並べ替え、削っていく…。書くと簡単だが、大変な作業である。

この「削って磨く」という大変な作業をすることで、書き手が伝えたいことを、どのような方法を用いて表現しているのかが、手にとるようにわかるようになる。その知識は、当然自分が文章を書く立場になったとき、相手に自分の意図を伝えるためのノウハウになることは、言うまでもないだろう。

さらに「論理で説得力をもたせる」として、演繹的・帰納的、それぞれとそれぞれの組み合わせによる文章作成技術を紹介している。仕事文には説得力が必要だ!といわれることが多い。文章における説得力とは何か、この短い章を読むだけで、その答えを得ることが出来るのである。

また「文章のパワーアップ術」として、どこまでやさしく噛み砕いた文章を作るべきなのか、読み手に論点をアピールするために考えなくてはならないこと、さらには、能動態・受動態、カタカナ語の必要性まで、仕事文を磨き上げるための話題が、多岐にわたって触れられている。

恐ろしいほどに忙しいこの時代…長ったらしい報告書や企画書は誰も望んでいないはずだ。簡潔で明瞭な仕事文を書くことが出来る、それはビジネスパーソンの必須能力になるに違いない。そのために必要なテクニックは、大体のところ本書に詰まっている、といっても過言ではない。一押しです。

時間を他人より2倍うまく使う技術

【著者】小石雄一【出版社】実業之日本社
【発刊年月】2002年01月18日【本体価格】1,300円
【ページ数】190p【ISBN】4-408-10488-4

経営者は金持ちを、ビジネスマンは時間持ちを目指せ!
表紙 より 抜粋

本書の冒頭にはこう書かれている-ちょっとしたヒントで誰もが時間を有効に使うことができます。日常生活を思い出していただきたい。無駄の時間、もったいない時間がどれほどあるでしょうか。-と。その時間の無駄遣いを解消し、自身のスキルアップのために利用するためのコツとツボが詰め込まれているのがこの本のすべてだ。それよりも上手い説明はない。

筆者は、惰性で会社の同僚と一緒に行動をとるビジネスパーソンを揶揄し、戒める。他人と一緒に行動することを好む日本人だが、他人よりも有効に時間活用がしたければ、それではいけないと。しかし、まったく付き合わず自分勝手に行動していても、協調性がないということでリストラの標的にされてしまう…それでもまたいけないと。

本書は、1日の時間を1.朝、2.昼休み、3.アフターファイブ、4.週末、5.移動時間の5つに分けて、「仕事以外の時間を有効に使うためのヒント」を提示している。その1つ1つは「朝少し早く起きよう」や「アフターファイブは会社以外の人とも交流をもとう」など、単純で即実行できそうなものばかり。目次で気になるところから拾い読みをお勧めしたい。

ノウハウ本のノウハウを開陳してしまっても仕方ないので、本書の視座視点に触れておきたいと思う。ポイントは2点。「自分の時間を編集する能力を持てるかどうか?」「一人を恐れることはないか?」たったこれだけのことである。しかし、自らを振り返ってみれば、この2つはなかなか出来ないことである。至難と言っても良い。

例えば、自分の時間を編集すると言っても、中長期、短期、いずれに時間軸に対しても、自分のするべきことが明確に整理されていないと、それは出来ない。自身が何をしなければいけないのか、「(締切まで設定された)リスト」が作れて、「隙間の時間を編集活用できる」ハズだからだ。自分のやるべきことが精度高く整理できていると胸を張れる人は多くないだろう。

一人を恐れないことは、さらに難しい。本書の筆者も述べているが、付き合いが悪いと、会社などでは間違いなく浮いた存在になるだろう。同僚や上司と同じ場所に出張に行くときも、列車の座席は別で良い、と書いてあるが、果たしてそれが出来るのか…孤独感や疎外感以上の「触れ合わないことによっておきる摩擦」を覚悟しなくてはならない。

それらを差し引いても本書にはなかなか興味深いヒントが満載である。日々なんとなく仕事をして、今後にも漠然とした不安をもつビジネスパーソンたちは、ぜひ読むべきだろう。自分の出来ることが、見直せる時間の無駄が、そこには書かれているはずだから。まずは書店にてパラパラとめくってみてください。

伝わる・揺さぶる!文章を書く

【著者】山田ズーニー【出版社】PHP研究所
【発刊年月】2001年11月29日【本体価格】660円
【ページ数】236p【ISBN】4-569-61736-0

就職活動の自己推薦状の場合、いい文章を書くとは、「文章が評価されて、企業に採用されること」以外にないと私は思う。どんなに文章がうまいと褒められても、結果、採用されなかったら、いい文章を書いたと言えない。あなたの書く文章は、状況に応じて、よく働いてくれるだろうか?望む結果を出しているだろうか?
本文 27p より抜粋

文章を書くのは得意だ!と胸を張って言えるビジネスパーソンは、それほど多くはいないだろう。しかし、日常の仕事を振り返ってみれば、伝言メモ、稟議書、企画書、日報・・・など、私たちは実にたくさんの文章を書いている。書くという行為について、無関心ではいられないはずだ。

しかし、よく考えてみると、社会に出てから、文章を書くことについて特別な訓練を受けた記憶はない。見よう見まねで、なんとなく文章を書いてきたはずだ。まあ、個人的に「文章読本」の類の本を購入して、「上手な文章」を作る努力をしている人も、いるかもしれないが。

今回紹介する新書は、名文を作成するための本ではない。著者は「文章が状況の中できちんと機能する」という表現をしているが、自ら書く文章が、書くための使命を全うするためにはどうすれば良いのか、という視点で、指南されているのである。これが、なかなか素晴らしい。

きちんと機能する文章を書くための手順として、著者は7つの思考方法を提案している。まずは、自分が一番言いたいこと=意見を見つけ出す。次に、何のために書くのか=望む結果を整理する。そう、文章を書くということはこういうことなのだ、とまず気づかされる。

そして、望む結果を実現するための文章作りとして、自身の問題意識がどこに向かっているのか=論点を整理することや、その文章によって心を動かす必要がある人=読み手、は誰なのか、読み手にとって、自分はどんな人間なのか?を検証する。ここで、文章を書くことはコミュニケーションなのだと、改めて考えさせられるはずだ。

最後に、自分の考えは「独りよがり」ではないという「論拠」を提示し、読み手の共感を誘い、納得を導き出せと教える。そう、文章を作成すると言うことは、実に知的な「ゲーム」であることを、本書はわからせてくれる。このプロセスは、相当に面白いこと請け合いだ。

受験生のための「小論文」教育に長く携わった著者なだけに、ノウハウを伝授すると言うことにかけては、天下一品である。本書でも、基本的な考え方をまず教え、それをさらにブラッシュアップ、という「誰でもグングン力がつく」ような構成も嬉しい。間違いなく「必読」の一冊である。

ヒット力

【著者】長田美穂【出版社】日経BP社
【発刊年月】2002年01月28日【本体価格】1,600円
【ページ数】342p【ISBN】4-8222-4266-8

世の中の潮流としては、健康志向で減塩、薄味のものが好まれています。でもお母さんは、濃い味のものであっても子供がそれでごはんを食べると、喜ぶんです。「子供がごはんを食べる」という部分を、素直に訴える商品にしよう、と決めました
本書 「味の素・ごはんがススムくん」の項より抜粋

モノが売れない時代と言われて久しい。その理由としては、魅力的な商品がないからだ、不況、生活に必要なモノはすべて行き渡ったからだなど、さまざま挙げられているが、実際のところはわからない。また、ヒットした商品やベストセラー商品がないわけでもない。

本書では、そんな難しい時代にもかかわらず売れた、その商品の背景を、膨大かつ緻密な取材を通して描き出している力作である。取り上げている商品は、「アイボ」から始まって、「宇多田ヒカル」「動物占い」「甘栗むいちゃいました」、さらには「牛角」までと幅広い。

筆者は、かつての商品開発トレンドのキーワードであった「技術」「安さ」「マーケティング」を踏まえて、2000年代の商品開発は、商品開発者が「経営者」になっていることを、仮説としてあげている。一社員がそこまでの意気込みがなければ、ヒット商品が作れない時代が来たとしているのだ。

アイデアが優れていても、デフレ傾向にある市場に耐えられる安さと品質を持つ商品を作り出し、全国の消費者に行き渡らせる「ヒット商品」に仕立てるためには、設備投資、材料など一切の価格交渉、流通ルートの確保など、全方位展開で「企業の存続」をかけた勝負に出ないと無理だと説く。と、難しいことを書いたが、そんな堅苦しいことを抜きにして、本書は読み物としてとても面白い。ヒット商品(本書に取り上げられている商品はどれも「大ホームラン商品」だが…)が生まれる背景にあるサクセスストーリーが、同じビジネスパーソンとして、ワクワクするものばかりだからだ。

また、意外な発見も提示してくれる。その1つとして、キリンビバレッジ・聞茶の項では、商品コンセプトの中心となった「茶芸(=細長い茶碗に茶を注ぎ、飲む器に移して、最初の茶碗の香を楽しむという作法)」は、実は歴史の浅い「遊び」であることを、本書は紹介している。興味深い。

本書は、ヒット商品と、その商品にかかわるさまざまな情報を通じて、今の世の中(=正確には少し前の)が持つ「時代性」を描き出している。読後、何故モノは売れなくなったのかは分からないが、何故売れるものがあったのか、ということは分かる。面白い本であった。

情報整理がうまくいく小さな27のヒント

【著者】新津隆夫【出版社】ダイヤモンド社
【発刊年月】2001年11月08日【本体価格】1,400円
【ページ数】218p【ISBN】4-478-74026-7

新聞の切り抜きを始めたのは、ひとつのテーマを決めて取材活動をするようになってからだ。テーマが決まると、必然的にその分野、その業界、その世界は、今どうなっているのかを知らなくてはならない。それに付随して周辺のことも知りたくなる。ひとつの情報を得れば、それがどういう位置にあるのかを確認するために、さらに情報を得たくなるものだ。これは、ビジネスシーンでも同じはずだ。
本書 20p より抜粋

気が付けば世の中は「整理ブーム」である。多くのビジネスパーソンはご存じないかもしれないが、ウイークデーの昼間の主婦向けテレビ番組では、どうすれば「キッチンが片付く」のか、いかに「リビングの小物をオシャレに収納」するか、そんな話題が目白押しだ。

そして、ビジネスパーソンの間では「情報整理術」は身に付けたいノウハウの王道を行っている。とにかく情報が何故必要なのか、どんな情報が自身には不可欠なのか、ということを考える前に、ひたすら情報収集のテクニックと、その整理法を学んでしまうわけだが・・・。

本書は「情報整理」にポイントを絞りながら、情報の収集、そして情報活用のために必要な視点と、具体的で実践的なノウハウが、一読して理解できる「易しい語り口」で紹介されている。ごく一般的なビジネスパーソンが、情報を取り扱う際に必要なテクニックは網羅されている、お勧めの一冊だ。

本書の一番素晴らしいところは、デジタル情報とアナログ情報の混在する現状を認識し、その上での「棲み分け」を提案しているところだろう。たいていの「情報整理本」は、どちらかに「偏って」しまって、現実的でない提案をしているものが多い。本書はその点、バランスがとてもよい。

また、ジャーナリストでもある筆者の「取材術」が開陳されている点も、魅力だろう。ネタの拾い方、インタビューの仕方、メモの取り方など。これらは、ビジネスパーソンにも必須テクのはずだが、人から教わることもなく、また、系統立てて学ぶことも難しい。この際、ぜひ身に付けてしまおう。

さらに、なるほどと呟いてしまう「小ネタ」も満載である。例えば、テレビを見るときは、ビデオデッキに新品のテープをセットして、ビデオのチューナーを通してコンテンツを見よう、とある。これを読んで、ハタと気づいた読者も少なくないはず。あっ、ビデオ録ろう、と慌てることも、もう無い。

インターネットで見るべきページを情報収集という視点からチョイス、雑誌などのメディア情報も、これさえ読んでおけば「時代の流れはだいたいわかる」とセレクトしてくれているところも、忙しいビジネスパーソンにとってはありがたい。サクッと読んで、即実行したい一冊だ。

ザ・ブランド

【著者】ナンシー・ケーン【訳者】樫村志保【出版社】翔泳社
【発刊年月】2001年11月13日【本体価格】2,500円
【ページ数】510p【ISBN】4-7981-0145-1

(前略)そして数日に一度は、たとえ客の顔ぶれが同じでも、これらの品を全部入れ替えてディスプレイを一新する。そうすればご婦人方は友達を連れて来店するようになるだろう。ビジネスと娯楽が手を取り合ったときの効果について、君に多くを話す必要はないと思う。
本書 50p「ウエッジウッドがベントリーにあてた手紙」 より抜粋

2002年もブランドの年だろう。100円均一ショップが隆盛を極め、価格破壊とも思える流通業者が幅を利かせていたじゃないか、という声が聞こえてきそうだが…。東京・銀座や大阪・心斎橋の高級ブランドショップで、入場制限をしている様を見ていると、そう思わずにはいられない。

消費者というものは「保守的」である。なかなか買い物をしたがらない。自身の購買行動を振り返ってみればわかるだろう。事前に情報を入手する、実際に手にとって比較する、さまざまな意見を人に求める…。それほどまでに悩んでも、購入する際には「ブランド」が大きな要因を占める。

商品購入時にいくつかの選択肢があって、最終的には「ブランド」によって決めた経験を読者の皆さんもお持ちだろう。そう、ブランドには、一般的に言われがちなステータス性はもとより、品質やサービスに対する「裏打ち」という要素が、想像以上に大きいのだ。

本書は、「スターバックス」「デルコンピュータ」「ウェッジウッド」「ハインツ」「エスティ・ローダー」「マーシャル・フィールズ」など、世界に名だたるブランドの、世紀を超えたブランド戦略について、実に丁寧に言及したものである。大冊なので読むのに骨が折れるが、なかなか面白い。

本書ではまずブランドのことを「起業家が、自らの自信と誇り、商品・サービスの優位性を消費者に知らしめるべく活用したマーケティングツール」であると定義付けている。そして、そのツール(=ブランド)をどのように育て、活用してきたかを、時間軸に沿って紹介している。

例えば、英国陶器の代表的なブラント「ウェッジウッド」の項では、1700年代後半には、経営者たちはすでに「製造と同じくらいマーケティングが重要」であるということを認識し、手紙にしたためている。当時の戦略は、ロシア王朝を始めとした上流社会に認められることだと考えていたそうだ。

そう、マーケティングなどという言葉がない、そんなことを考える人はいなかった時代にもかかわらず、食器をセットして用意(=ブランドの構築)、顧客ロイヤリティを向上させる。上流階級が好むものは、中流階級もこぞって求めるはず。そしてこの中流階級こそがボリュームゾーンであると認識、販売戦略を展開していった。よく見れば、今と全く同じじゃないか!

ここで紹介されている6つの有名ブランドは、異なる業界、そして時代背景を持っている。本書は、新市場を創出した、これらのブランドの「起業家」たちのビジネス史になっていると言ってもよいだろう。マーケティングなどには縁がない、という読者にでも、興味深く読むことが出来るだろう。

慮(おもんばか)る力

【著者】岡本呻也【出版社】ダイヤモンド社
【出版社】フォレスト出版
【発刊年月】2001年10月18日【本体価格】1,800円
【ページ数】494p【ISBN】4-478-71046-5

○葬儀で涙は流さない、機械になったつもりで遺族のために仕事をする
○答えはお客さんのことを考えながら自分で運転してみて発見できる
○オペレーターは困っているお客様の気持ちになれなければならない
本書 各扉 より抜粋

本書は「良い仕事というのは一体どのようなものなのか」という原点に立ち返って各業界の達人たちに話を聞き、彼らがいかにお客さんや相手をこまやかに気遣っているかを、インタビューの手法を使って導き出したものだ。さて、今なぜ「慮る力」に注目する必要があったのだろうか。

著者は、デフレの原因である「仕事に付加価値が付けられない理由」は「本当に相手のことを考えて仕事をする態度」が、心の中から抜け落ちてしまっているからではないか?と説く。そんな自己中心的な振る舞いは、個人だけではなく、リストラなどの企業の生き残り策にも現れているのだと言う。

この厳しい経済状況の中を生き残っていくためには、消費者ニーズを満たす新しい付加価値を付け加えていくこと=「相手のことをよく考えて、相手のためになる仕事をする」こと=慮る力を発揮すること、が不可欠である、という視点で、プロの仕事上の心構えにアプローチしていく。

相手が何を望んでいるのか、それをどのように察知すればよいのか、達人たちはどのような「慮る力」を発揮しているのか、その力をどのように仕事に活かしているのか、丁寧なインタビューによって、著者は詳細に聞き出している。そのプロフェッショナルの「言葉」がとても魅力的だ。

本書に登場するプロフェッショナル達は、自身の仕事の目的や役割をきちんと押さえ、厳しい訓練と長い経験を積んで、その「慮る力」を磨きこんでいる。その努力のモチベーションとなっているのが「なぜ自分はこの仕事をするのか?」という動機と原体験にある。

高級ホテルに働く人、パソコンのカスタマーサポート、カーナビの開発担当者、再就職支援会社のコーディネーター、医師、葬儀社のスタッフなど…幅広い「慮る力」の達人たちの発言は、実に示唆に富んでいる。当たり前だけれども、見落としていた「気づき」に溢れていると言って良いだろう。

それ以上に羨ましいのが、インタビューに答えている達人たちの「自信」と「幸せ具合」である。仕事に対する誇りと、そのオモシロさを、実に幸福そうに語っているのだ。同じ仕事をしているビジネスパーソンとして、これほど「ジェラシー」を感じることはないかもしれない。

前書きには「自分の意識を知ることが、すなわち客の望みを知ることに直結しているはずだからです。相手を慮るということは、自らを省みることに他ならないのです」とある。望まれることをする、相手に喜んでいただける、自分も幸せ。仕事はそれに尽きるのでは…そんな思いにさせる一冊である。

あなたもいままでの10倍速く本が読める

【著者】ポール・R・シーリィ【監訳者】神田昌典
【出版社】フォレスト出版
【発刊年月】2001年09月26日【本体価格】1,300円
【ページ数】260p【ISBN】4-89451-119-3

二十五分で、この本を読んでみよう!
本書 扉 より抜粋

ブックレビューを担当しているくらいなので、読書量はかなりあります。と言いつつ最近では読むペースが落ちて(忙しいのもあるんですが…)1年に300冊程度。それでも追いつかずに「積読」の本も大量にあったりして。そんな私の悩みを解消するべく、探し出したのが、今週紹介するこの本。

本書は、アメリカの大手企業の研修でも使用されていると言われる「フォトリーディング」というメソッドの解説書。このノウハウを身に付けることによって、1日1冊、らくらく本が読め、仕事場のデスクに山積みの文書がどんどん片付くのだという(本書腰帯より)。

まずは従来の「読書法」からの脱却で、本書の内容は始まる。本を読むのではない、内容を脳に写し取るのだと。そうでもしないと、物理的に1分間で60ページ(!)も読むことは出来ないと解く。読むのではなくて「見る」のだ。しかし、ぼんやり眺めても、その内容が理解できるわけではない。

このノウハウには5つのステップが用意されている。ハウツー本のレビューという性格上、詳しくは書けないが、なかなか興味深い内容で、普通に読書をする人たちにとっても、目からうろこが落ちるといったものでいっぱいなのだ。ここでちょっとだけ紹介してみよう。

まず「読書目的を明確にする」ことが肝心だと説く。これは意外と出来ていないことではないだろうか?読書をする前に、設計図を作ってしまうのだ。この本を読むことで、どんな情報を、どの程度の精度で、いつ必要か…。これらを整理して読書するだけで、スピードと理解度が格段に違うと言う。

さらに「スーパーの棚を見るような感じ」で、読書することを本書は教えている。なるほどと思うだろう。あの広いスーパーの商品の中から目的のものを見つけ出す時に、一つ一つじっくりと商品を見て見つけ出す人は1人もいないはず。読書にその行動を応用しようと言うのだ。

しかし、スーパーは目的の棚がわかるじゃないか、との声も聞こえてきそうだが・・・本にもどこにどんな情報が載っているか、ちゃんと「棚の案内」に相当する機能はある。目次や見出しがそれに当たるのだ。引き比べてみれば、ああ、と膝を打ってみたくなるはずだ。

文章を速く読むことが出来る…そのノウハウを身に付けると同時に、そのノウハウを活かすツボまで、本書では細かくわかりやすく書かれている。まずは書店で「フォトリーディング」することをお勧めしよう。

イノベーティブ・シンキング

【著者】コンラッド・ヘロウド【出版社】ダイヤモンド社
【発刊年月】2001年10月04日【本体価格】1,200円
【ページ数】100p【ISBN】4-478-49031-7

私が求めていたのは、アイデアを生み出す際の基礎となるような考え方を教えてくれるテクニック、いったん身につければイノベーティブ・シンカーが生み出すのと同じたぐいのアイデアを、同じ数だけ生み出せるようになるテクニックでした。そうしたテクニックが見つからなかったので(中略)明らかにしようと私は決心しました。
本書 8p より抜粋

多くのビジネスパーソンと接していて感じることの1つに、アイデアを持たない人が多いことがあげられる。アイデアは単なるひらめきであって、自分にはその能力がないと思っている人ばかりである、と言ったほうが、正しいのかもしれない。そして、考えることを放棄している(風に見える)。

アイデアは、本当にひらめきなのだろうか。考えればわかることだが、アイデアは単純にひらめきだけでは生まれない。ひらめくための「準備」を用意周到に行う必要があるのだ。なにも知らないことについて、考えても、なにも浮かばない。当たり前のことである。

本書はアイデアを生み出すための「方法」が、実に簡単明瞭に説明されている。本書で紹介されている、システマティックにアイデアを創成するテクニックは、「情報把握」「アイデアを考える」「アイデアを改良する」「アイデアを試す」と、大きく分けて4つに分類されている。

まず、アイデアを生み出すために必要なのは「情報を収集し把握する」ことである。本書では「インフォメーション・シンキング」と題して、慣れてしまって見過ごしてしまいそうなことも、アイデアを作り出すためには見逃してはならないと説く。さらに、情報把握のコツをまとめてくれている。

次に、アイデアを考える方法として、本書は5つのノウハウを提供してくれている。その1つが「チャレンジ・シンキング」だ。今までの慣行や制約に疑問を持ち、それにチャレンジすることを「アイデア」としてまとめる手法である。その簡単な例として「ボディ・ショップ」や「アマゾン・ドット・コム」を上げ、ポイントを判りやすく解説している。

さらに、せっかく考えたアイデアを没にしないために、アイデアを改良し、実現できる形にブラッシュアップする必要がある。本書では「モディファイド・シンキング」として、アイデアのプラス面・マイナス面をハッキリし、改良することをあげている。

この本に書かれてあることは、取り立てて新しいことではない。そして、何より難しいこと、実行できないことは、一つも書かれていない。しかし「アイデアが豊富だ」と思われている人は、意識しないで、本書に書かれていることを、無意識に行っている気がする。そのくらい「即戦力」になる一冊である。読まないでいると、必ず損をする、そんな本だ。

めざせ!レインメーカー

【著者】ジェフリー・J・フォックス
【監修】金井壽宏【訳者】馬場先澄子【出版社】万来舎
【発刊年月】2001年07月17日【本体価格】1,300円
【ページ数】166p【ISBN】4-901221-05-1

コラム24「聞くことを恥じない」……営業員のやり方を顧客に批判させてごらんなさい。「大事なことはちっとも質問してくれない」というのが、もっもと多い意見でしょう。(中略)ろくろく質問しない営業員がなぜそんなにも多いのでしょう。
本書 83p より抜粋

最近噛んで含めるように易しく、しかもそんなところまで!というところまで、懇切丁寧にかかれたビジネスハウツー書が増えている。何人かに訪ねてみると、「仕事に関する適切なアドバイスをしてくれる上司や先輩がいなくなっている」という、ビジネス現場の変化に影響を受けているのではないか?と言うことだった。

世の中の流れの速さに、管理職クラスの今まで培ってきたビジネスノウハウが通用しない、また、適切なアドバイスが出来そうな先輩たちは、自らの業務が忙しく、とても後進を育てている余裕はない。そんな中、今回ご紹介するような類の本が、求められているのだろう。そう、本書は「よく出来る(でもちょっと小うるさい)先輩」のような本である。

レインメーカーとは、本来は「雨を降らす呪術師」のこと。実りの雨をもたらす彼らは、集団の中で高い地位を与えられていました。転じて、現代では「所属する組織に一定の利益をもたらす人」のことを、そう呼ぶようになっている。顧客が落とす金=雨…ということなのだ。そのレインメーカーになるためのテクニックが、前述のとおり「懇切丁寧」に書かれている。

書かれている内容にそれほど目新しいことはない。顧客へのサービスを充実させるテクニック、顧客を購買行動にいざなうためのコツとツボ、ビジネスリスクを最大限に回避するために注意しなければいけないことなどが、あらゆる角度から紹介されている。「わかっているよ!そんなことは!」というモノも決して少なくない。

例えば、「口にものを入れたまましゃべらない」というコラムがある。要は「礼儀を知らなければ客は逃げてしまいますよ」と言うことなのだが…当たり前だろうと思わず失笑してしまう。さらに、「営業先ではコーヒーを飲むな」というコラムに至っては、コーヒーを何時こぼしてしまうかもわからない、そのときにトラブルが起きるかもしれない、ということなのだが…。

では、何故本書をお勧めするのか。実は、「当たり前」のことですら出来ていないビジネスパーソンが、意外に多いからだ。自分は大丈夫と思っていても、レインメーカーになりそこなっているケースは良くある。例えば、商談中にかかってきた携帯電話に出る貴方!その行動は、顧客の心を離しているんですよ!心当たりのあるヒトは、ぜひ書店で手にとって見て欲しい。

英語でヒット商品! Hit products

【著者】イーオン語学教育研究所+株樹孝佳【出版社】増進会出版社
【発刊年月】2001年05月10日【本体価格】1,000円
【ページ数】126p+CD-ROM【ISBN】4-939149-41-2

At that time, McDonald's had about 2,000 franchises, mostly in the United States and Canada. An item on the menu --"Smile...0 yen"--became the talk of the town.
本書 9p より抜粋

さて、そろそろ休みに入る方もチラホラと居られるだろう。夏休みには勉強しようということで、今やビジネスマンの三種の神器の1つである「英語」を磨くためのこの1冊をご紹介。

Mobile English と銘打たれた本シリーズですが、その名のとおり「持ち運びやすい」サイズである。これは、どこへでも携帯するための配慮だ。隙間時間を上手く利用する、社会人の学習のための基本である。

次に1冊につきワンテーマである。興味のあるテーマなら、嫌な勉強もスムーズに行えるだろう、という工夫である。今回ご紹介するのは、たまたまビジネスパーソンに向いた「商品企画」だが、他に「恋愛」「ダイエット」「サッカー」「ビール」など…そのテーマは豊富である。

Morning Lesson としてちょっとしたコラム、EveningLessonとして朝のコラムを受けての簡単な会話の2部構成となっている。日本語でコラムを読み、英語で確認することで、英語独特の表現を理解をする。さらに、会話の中で言い回しを学ぶ。なかなか憎らしいシステムになっている。しかも朝晩…要は通勤時間にお勉強できるわけだ。

例えばコラムだが、1つ目は今話題の「マクドナルド」。1971年にオープン、当初はスマイル0円などが話題を呼んだ。単なる子供のおやつとしか見られていなかったが、朝食メニューをセットすることで、忙しいサラリーマンの支持を得た。さらには、独立店舗からインショップタイプに戦略転換を図った、など、意外と読み応えがある。

続く会話だが、スマイル頼んでみなよってキッカケから、インドのマックでは牛肉の代わりにヒツジの肉を使う話、そんなにマックに詳しいアメリカ人は、実は学生時代にマックでアルバイトをしていた、けども、コロッケバーガーなんてアメリカにはなかったよ、ってオチまでついている。そのトホホ感も良い。

書かれている英語のレベルは大したことはない。サクサクっと進む程度のものだ。自分の英語をちょっと磨きなおすために、自分のテーマ興味あるテーマをチョイスして、チャレンジしてみると良いだろう。かなりお勧め。

ものづくりのヒント

【著者】岸田能和【出版社】かんき出版
【発刊年月】2001年06月25日
【本体価格】1,400円【ページ数】223p【ISBN】4-7612-5940-X

女性向けの商品を企画するときに(中略)まず考えなくてはいけないことは「その女性たちが何をしたいか」のはずだ。そこを飛び越し、女性だから、小さくて、軽くて、簡単にすれば事足りると(中略)あげくの果てに色や形をかわいらしくすれば「女性仕様」ができあがる、といった安易な発想でつくられた商品が多いような気がする。
本書 47p より抜粋

例えば、今このメールマガジンを読んでいるパソコンも、実は人の手によって作られたものである。当たり前のようだが、意外と忘れがちだ。入力しているキーボードのサイズも、勝手に出来上がったわけではなく、誰かが決めて作ったわけである。そんな「モノ」づくりのプロが書いた、考えるためのヒントが詰め込まれているのが、本書である。

とは言っても、堅苦しいものではなく、見開き単位の本当に軽いエッセー。しかし、その内容はなかなか骨太である。商品開発を進めるときに、もっとも大切な…使うヒトの置かれた状況に思いを馳せて「気づく」こと…その、わかっているようで、なかなか出来ないことを実行するための、なるほど!という視点がわかるエピソードが満載である。

例えば、障害を持つ人たちのためのトイレの設備を見て、バリアフリーであると設備を整えた側は自慢するが、健常者は「手すりがウゼー」となってしまう。障害者や高齢者の立場を配慮した商品開発は当然だが、健常者や若い人の立場にも立ってみてはどうだろう、と筆者は提案する。これはなかなか思い切った視点である。

しかし、考えてみると、機能とファッションを両立させるために大切な発想である、とも言える。若い人や健常者がカッコいいと言ってくれないようなものは、障害者や高齢者にとってもカッコいいわけがない、という発想も必要なのではないか、と筆者は書いている。思いを馳せる視野をより広く、というヒントである。この話は、実にわかりやすい。

また、エアコンが軽量化されることは、実はコスト削減に大きく貢献していること(どうしてだろうって思いません?)や、今時ネクタイを鉢巻にして酔っ払っている人はいない話(でも酔っ払いといえばそんな感じですよね)から思い込みが考えを縛っていないかといったヒントまで、読んでいて

「あっ!」と思うエピソードが多数ある。

読んでいて「頭が柔らかくなっていく」と言えば良いだろうか。いろんなことを「多方面」から見てみよう、そんな気になる本である。モノづくりに携わっていない人にでも、本書をお勧めしておきたい。考えるためのささやかなヒントが必ずあるはずだから。

eラーニング-実践的スキルの習得方法

【著者】山崎将志【出版社】ダイヤモンド社
【発刊年月】2001年01月12日【本体価格】1,800円【ページ数】203p
【ISBN】4-478-37347-7

プロフェッショナルの育成を、ITを活用して効率よく実現するのが「eラーニング」だ。高度なスキルを今までになくスピーディに習得させることが、企業の競争優位の必須条件になる。
本書 腰帯 より

IT活用といえば、業務の効率化や高付加価値化への利用を思い浮かべがちだが、高度なスキルを素早く習得させる手段としてのIT活用が注目を集めはじめている。それが、eラーニングだ。

本書では、これからのビジネスパーソンに求められる能力を「高度で実践的なスキル」であるとし、スキルを身につける方法の整理、マルチメディア・ネットワークの特徴を確認した上で、eラーニングの成功事例や導入のためのステップなどを紹介、その魅力を説いている。

実際にeラーニングが実施されない環境にいる読者にも、本書に注目してもらいたい理由は、eラーニングについて整理していく過程で、学習とは何かがきわめて明快に解き明かされていることにある。そう、この本はキャリアアップをするための学ぶという行動について、(eを使わなくても)最短距離を歩く基礎知識が書かれているのだ。

学習のプロセスとしては、観察学習=自分がなりたいモデル人物を設定し模倣を通じて自分なりの行動を確立すること、ピア・ディスカッション=同僚などに自分の行動や判断を示すことでその人たちから得られる反応で正誤を確認すること、二重ループ学習=計画を立て実行しそれを評価する、出来なかった場合は目標に立ち戻って見直すこと、の三つを上げている。

これらの学習プロセスによって得られるものは、スキルである(ちなみに本書ではスキルや知識についてもクリアな説明がなされている)。実践的なスキルを身につけさせるためには、従来型の研修やOJTなどでは様々な限界があり、スピードを上げるためにはeラーニングが最適であるとしている。

肝心のeラーニングの実像だが、本書を手にとって確認してみて欲しい。飛行機のフライトシュミレーターのようなもの、と言ったら語弊があるだろうか。今までの研修などでのレクチャー主体のモノではなく、PCの中で、自分のペースで、納得がいくまで、限定されたケースのシュミレーションが行える、掻い摘んで言うとこんな感じだ。

書店のビジネス書のコーナーでも、同類の書が多数出ている。言葉としても注目を集め始めている「eラーニング」。とりあえずは一読して、その概略を知っておいて、損はないだろう。お勧めの一冊だ。

仕事を楽しむための101の方法

【著者】ステファニー・ゴダード・デイヴィドソン
【出版社】ディスカバー21
【発刊年月】1999年04月26日【本体価格】1,200円【ページ数】157p
【ISBN】4-88759-092-X

50・この本を読もう-どうもやる気が出ないと感じたときは、この本をどのページでもいいから開いてみよう。今まさにあなたが必要としていることが書かれているだろう。
本書 85p より

一生懸命仕事をしていても、進捗状態が果々しくない。会社に向かう足取りが、どうにも重たい。仕事をしていても、何故か手ごたえを感じない。人間関係などの巧拙から、ストレスが激しい。今日もまた、職場で嫌な一日を過ごしている。そんな人は多いのではないだろうか。

長きにわたって、仕事を楽しめないでいる社員や管理職、経営者に対して、カウンセリング研修をおこなってきた筆者が、現状を少し変えるための、ごくカンタンなヒントを示したのが本書である。その数は101。どれも、ささやかなことだけれども、日々を何となく変えてくれそうな気がする。ヒントの幾つかの例をあげてみよう。

仕事の喜びリストをつくろう-今の仕事に配属された当時、どんなところにやりがいを感じていましたか。初心に返るために、今の仕事の「喜び」をリスト化しようというものである。

できないことではなく、できることに目を向けよう-出来ないことを見つけることは簡単だけど、出来ることを見つけることは難しい。自分に出来ることに目を向けよう、そして、それについて何かしてみよう。

リストアップされた方法を分類すると、「視点を変えてみる」「一息つく」「成果を目に見えるようにする」「ポジティブシンキング」「モチベーション維持」など…ごく当たり前のことしか書かれていない。しかし、短い言葉で、ちょっとずつ書かれていると、消化しやすい。何より心にぐっと響く。

どれも難しいことではない。しかし実は、日ごろ気が付いているというポイントでも、ない。言われてハッとする、灯台下暗し的な事柄ばかりである。そして、すぐに実行できることばかりだ。

素晴らしいビジネスパーソンライフをおくるために。実践しなければならないことは、全く難しいことではない、ということをこの本は教えてくれる。とても短い101の方法は、一通り読んで、気にいったノウハウを試すのも良いし、毎日一つずつ読んでトライしてみるのも面白いだろう。ビジネス社会の荒波を乗り切るための常備薬として、ぜひ一冊。

思考の用語辞典

【著者】中山元【出版社】筑摩書房
【発刊年月】2000年05月10日【本体価格】2,400円【ページ数】430p
【ISBN】4-480-84253-5

因果関係…なにかが起きる。するとみんなが思う。なぜ? どうして?ものごとの原因について問うことは、哲学よりも古い問いだ。因果関係を考えるのは、きっと人間の根本的な能力のひとつなのだろう。原始の呪術も、独自の論理でちゃんと因果関係を想定している。あのひとが死んだのはなぜ? 悪い霊のしわざ。雨が降らないのはなぜ? 雨乞いをしないから。それぞれにいきさつが考えられてるんだ。
本文 048p より

今回は、いろいろな概念=哲学素を100個集めた本を紹介する。腰帯には「考えるための読むための書くための」道具箱とある。なるほど、概念の役割を端的に言い表している。集められた哲学素の一つ一つは単語であり、(哲学的な)言葉の本義的な意味を知ることが出来る。

 概念、現象、啓蒙、経験、規範、システム、構造、因果関係、消費…。ビジネスサマリーを作成するために、これらの言葉の意味を使わないというヒトはいないだろう。振り返ってみて、用途に応じて、正しく言葉を使っているとは思うが、これらの言葉のもつ、哲学的な概念を知ることは、とても面白いことだ。ちなみに、先にあげた言葉たちは、この本の中で、哲学素として紹介されている。

 言葉としての源流、思考の道具足りえる原義、そしてそれは、様々な問題解決のためのきっかけに応用できる、という楽しさ。哲学とビジネスは遠いようだが、こと「考える」という点においては、当然類似性が高く、ビジネス社会には、哲学用語は溢れている。論理的に思考することが必要とされている社会であることを、何より証明してはいないか。

 概念をきちんと理解しておくことは、ビジネスサマリーを作成するときに役立つことはもちろん、ビジネスマンとしての「視座・視点」を持つためには、ぜひとも身に付けておきたい「基礎体力」の一つだと考える。ハウツーも必要だが、ここらで一つ、秋の夜長を利用して、知的冒険をすることをお勧めしたい。一つの哲学素が四ページと、決まっているところも、嬉しい。「なるほどー」と感心しながら読み進めたいところだ。

 哲学に関係した本だからと言って、難解なところは一切ない。どちらかというと「砕けた」調子で書かれていて、読みやすい本になっている。まずは手にとって安心してみてください。言葉は、その存在があまりに日常過ぎるからだろうか、どうも軽んじてしまう。この本は、自らの持っている言葉に対する「理解」を深めることで、思考力のブラッシュアップが図れる一冊である。興味のある方は、ご一読を。

思考のレッスン

【著者】丸谷才一
【出版社】文藝春秋
【発刊年月】1999年09月30日 【本体価格】1,238円 【ページ数】 282P
【ISBN】4-16-355610-9

レッスン5 考えるコツ 「謎」を育てよう/定説に遠慮するな/慌てて本を読むべからず/比較と分析で行こう/仮設は大胆不敵に/考えることには詩がある/大局観が大事
本書目次

丸谷才一といえば、独特の発想が魅力的な才人である。特に「文章読本」は名著との評価は揺るぎ無いだろう。その著者が、考え方のコツ、究極の読書法、文章の極意を、「語りおろし」のスタイルで伝授してくれるのが本書だ。ビジネススキルを直接高めるハウツーではないが、大きな意味での「考え方」を学ぶのには、大変役に立つ考え方が詰まっている。

本書は大きく二つのパートで構成されている。著者自身の思考スタイルが形成されていったプロセスを中心に語った、考えるための下地作りの部分と、その下地の上に立つ、具体的なノウハウの部分である。[en] Career Newsの読者にとっては、後半部分が読みどころとなる。

例えば、考えるコツとして著者は「謎を育てよ」としている。良い問は良い答に勝る。つまり、疑問としたところの着眼点がすばらしければ、そのアイデアは非常に良いものであると。さらに、常になぜだろうと考えつづけて、より良い問いに孵化させる必要があるとしている。これも、裏を返せば、良い疑問でなければ、長く思考するだけの強度がないわけで、すべてが繋がってくるわけだ。学問を志すものにとっては、至極当たり前のことだが、ビジネスにも十分生かせる考え方であることは、言うまでもないだろう。こう言ったノウハウが、わかりやすい口語調の文章で、たくさん書かれている。

インターネットがこれだけ普及し、情報の入手が容易になった時代だからこそ、ビジネスの上でのアイデアにも、オリジナリティが要求される。ところが、情報入手の容易さが、かえって資料のカットアンドペーストだけでも、アイデアを作り出せた、という錯覚に陥らせている。情報収集や加工の技術を伝える書籍は多いが、その奥にある本質の部分を教えてくれる本は、意外に少ない。少なくともビジネス書のコーナーにはない。たまには、思考のための基礎体力をつけるための読書をお勧めしておきたい。

仕事の快適整理術

【著者】ドン・アスレット+キャロル・カーティノ
【出版社】ジャパンタイムズ
【発刊年月】2000年05月20日 【本体価格】1,400円 【ページ数】 233P
【ISBN】4-7890-1009-0

人間関係の力学や礼儀作法、仕事の本質とは遠いところで起きる「目配せ」やいやがらせをことごとく取り除くことができれば、ごくふつうの人でも並はずれた実績をあげられることをわたしは知っている。あなたにもそれはできる。それもいますぐ。「仕事をシンプルなものにする」ことができさえすれば。
本文 229p より

オフィスワーカーは大変である。筆者たちは長年の観察の結果、人は、仕事そのものを毛嫌いしているわけではないことに、気がついた。人が「仕事」を遠ざけたくしているものとは、設備の問題、競争、権謀術数、たばこの煙、騒音などの、仕事とは関係のない別の要因なのである、と。本書では、仕事を行っている日常の「余計なもの」を剥ぎ取り、仕事をシンプルにすすめるための「コツとツボ」を紹介している。至極当たり前のことが書かれている本書を、本欄では別の読み方をしてみると面白いのではとお勧めしたい。

読者の皆様も既にお気づきだろうが、組織の中で快適に仕事をしていくことは、非常に難しい。本書に書かれているように、シンプルに仕事をすすめようとしても、多くのかかわる人たちが、同じ意識で仕事に取り組んでくれるかどうかは怪しい。快適に仕事ができる周辺環境を整えることに、まずは時間を割かなくては、と言う方がとても多いはずだ。そこで本書の登場である。本書にある仕事を快適にすすめるための「コツとツボ」を、何食わぬ顔をして受け売りしてみる。職場全体の改善を、さりげなく、そして効果的に行ってしまうためのツールとして、本書は活用できるのだ。

「仕事の優先順位や処理の手順」「時間管理の方法」「職場環境の整備」「整理や収納術」「コンピュータとの付き合い方」「電話や手紙のテクニック」「人間関係」「出張術」「ホームオフィス」など、網羅されているスキルは、別段目新しいものはない。いたってシンプルで、割合わかりきったものである。簡潔に書かれてある文章が、適切な訳と相俟って、理解しやすいものになっている。人を上手に動かすためには、コレくらい簡潔で端的なほうが良いと、読めばピンと来るだろう。

自分の仕事の進め方に関するスキルをチェックする意味でも、一度ざっと目を通しておくことを、強く勧めておきたい。

「超」発想法

【著者】野口悠紀雄【出版社】講談社
【発刊年月】2000年03月16日 【本体価格】1,600円 【ページ数】 270P
【ISBN】4-06-209991-8

ビジネスマンに必要なのは、「指導力」「判断力」「交渉力」「協調性」などだと思われていたのである。こうした能力や資質が今でも必要とされるのは、間違いない。しかし、それだけではいかんともしがたい時代になったのだ。人間関係だけに神経をすり減らすジェネラリストでは、競争に落伍する。二十一世紀は、「発想における競争の時代」なのである。
同書 22p より

「超」シリーズでおなじみの筆者の新刊である。筆者や同様の人気を誇る鷲田小彌太が書く本の素晴らしい点は、類書を読まずにすむ、というところに尽きる。両者とも、実に巧みな情報整理と編集加工作業で、他の書籍のエッセンスを抽出し、まとめあげている。忙しいビジネスマンにとっては、とてもありがたい存在と言える。

本書のテーマは「発想」。引用部分でも述べているが、今後のビジネスマンにとって、最も必要とされるスキルのひとつであることには間違いないだろう。その方法論を、実に明快に示している。中でも、基本五原則と題されたこの本の肝の部分は、必読だろう。

第一原則「発想は、既存のアイデアの組み換えで生じる。模倣なくして創造なし。」第二原則「アイデアの組み換えは、頭の中で行なわれる」第三原則「データを頭に詰め込む作業(勉強)がまず必要」第四原則「環境が発想を左右する」第五原則「強いモチベーションが必要」いずれも、従来からある発想法などを、筆者ならではの視点で練り直している。これらの原則を運用する際の問題点なども、きちんと明記してあるところが、嬉しい。

さらには、既存の発想法への厳しい批判(間違った発想法とまで切り捨てている)、発想を支援する環境整備の話や、パソコンをアイデア製造機として位置付け、その使い方と効能を記したパートも、従来の(ある意味本格派)発想法の本にはなかったものだ。役に立つだろう。

この本を購入すると、筆者が提供しているインターネットホームページに用意されている「発想ソフト・Denken」へのアクセス・ナンバーが、付録として付いてくる。インターネットを発想に活用するための、充実したリンク集だ。この心配りも憎い。書店で見かけたら、即購入だ!

英語できますか?-究極の学習法-

【著者】井上一馬 【出版社】新潮社 【発刊年月】1998年08月20日
【本体価格】1,000円 【ページ数】 199P 【ISBN】4-10-600543-3

いずれにしても、英語を話すことはそれほどむずかしいことではありません。基本構文を覚えて単語を覚えれば、それで話せるようになる。それくらい単純に考えた方がいいと思います。
同書 12p より

もう十五年近くも前のことだ。ある情報系の会社の営業マンが解雇された。理由は営業成績の不振。彼は英語とフランス語が堪能で、ドキュメント作成能力に優れていた。しかし、営業マンとしての「押し」みたいなものが弱く、与えられたノルマはほとんど達成できずにいた。解雇後の再就職は、大変だったと聞く。もし今の時代なら、彼はとても重宝されるに違いない。それほど、今の世の中は、どこででも、語学を必要としている。

今回の書籍の腰帯にはこうある。-今度は習得できるかもしれない-そう英語をモノにしたい、と思うヒトは多い。しかし、モノになっているヒトはひどく少ない。結果的に、合理的無知(=必要を感じないのだから知らなくても良い)の境地に達してしまう。だが、インターネット時代。英語へのニーズは、飛躍的に高まって、無視して通れる存在では無くなってしまった。本書は、コラムニスト・翻訳家としても名高い筆者が、実に読みやすい文章で、英語の学習法を教授してくれる。

外国語を学ぶためにもっもと重要なことは、リスニングであり、習得するための近道であると、本書は説く。そのために、やりなおしの第一歩として、英語の基本文型が一通り収められている初級の英会話のテキストとテープを、買ってくるところから始まる。そのテキストを全くゼロから始めるとして、約300時間かけ、徹底的に反復することをすすめている。といったように、段階を追って、そのステップで何をすれば良いのか、事細かに記してある。また、なぜその学習をおこなうのか、と言う理由づけもなされているので、無味乾燥な学習にならずにすむ。これなら頑張れそうだ。英語が必要なヒトに、まずは一読をお勧めする。

人生を変える 80対 20の法則

【著者】リチャード・コッチ
【訳】仁平 和夫【出版社】TBSブリタニカ 【発刊年月】1998年6月1日
【本体価格】1600円 【ページ数】280P

好きなことをやろう。好きなことを自分の仕事にしよう。 自分の仕事を 楽しいものにしよう。金持ちになった人はほとんど例外なく、 好きなこ とをさんざんやって大いに楽しんだうえに、 笑いが止まらないほど儲けている。

これもまた、80対20の法則の一例である。
同書 P182から引用

80対20の法則とは、インプットの 20%がアウトプットの 80%を占めるというパレートの法則で有名だ。今週御紹介するのは、このパレートの法則を仕事やキャリアプランに適応するとどのようになるかを解説した一冊である。

「最小限の努力で最大限の効果が上がる」。 この本の腰巻きにあるこのフレーズを逆にとらえれば、「努力」とは、 80%のアウトプットを生み出している 20%のインプットを知らなければ、十分なかたちで身を結ぶことはない、ということだ。これは、20%の顧客が 80%の利益を生み出しているという言葉を言い直したものだが、企業のみならず個人のキャリアプランにも同じことが言える。

全ての時間、全ての選択肢に対し同じように力をそそぐことは不可能だ。そうであるならば、価値の優先順位付けを明確にし、それに対し、20%の力を注ぐようにする。この不均衡を理解しているか否かが成功と不成功をわけるのだ。

自分が望む仕事をし、求めている報酬、望んでいる評価を得られるようにするためには、 80%のアウトプットを生み出している 20%のインプットは何なのかを知らなければならない。そのためには、なにをアウトプットしようとしているのかを貴方が十分に理解していなくてはならない。先週御紹介した「TQ」とあわせて読めば、この1冊が貴方のキャリアプランに対しはかり知れない価値と知恵を生み出してくれはずである。

TQ 心のやすらぎを発見する時間管理の探求

【著者】ハイラム・W・スミス 【訳者】黄木 信 ジェームス・スキナー
【出版社】キングベアー出版 【発刊年月】 1999年 2月 5日
【本体価格】1,715円円 【ページ数】417P

多くの人が次のように言う。「長期目標を決めました。私は今、ここに います。毎日毎日目標に近づいています」

時間管理に関する書籍はあまりにも多く、それらを通読すること自体に、多時間を費やしてしまうことがある。それらの多くは、細切れの時間を有効に活用し、時間を生み出すノウハウや、早朝の時間を有効に利用することで、生産性を高める方法などを伝授してくれるが、それらを実際に実践することは、非常に難しいことだったりする。その理由は時間をコントロールする、というよりも、時間を生み出さなくてはならない、というどこか脅迫観念めいたものがその背後にあるからなのではないだろうか。

さて、今週とりあげた『TQ 心のやすらぎを発見する時間管理の探求』は、単なる時間管理方法でなく、時間を管理するとは、どういうことなのだろうかという根本的な問題設定から、時間管理に関して語られている一冊だ。私達の時間が限られたものである以上、その中で実行することもやはり限られている。この状況の中で、私達が望む人生を作り上げるためには、みずからの価値観を明確にし、それに基づいた優先順位付けをしていくことが重要だ。

時間管理を価値観に基づいた出来事管理としてとらえることで、「心の安らぎ」を得られるとする同書。あわただしい毎日をおくるビジネスマンにとって、「心の安らぎ」は魅力的な言葉であることだろう。しかし、同書で詳細に説明されているのだが、「やすらぎ」とは、私達自身が、最も価値を置くものを認識していなければ得ることの出来ないものだ。

同書で紹介されている「生産性のピラミッド」、「リアリティー・モデル」などの考え方は、同時に、自分の価値観を認識、あるいは発見することにも役立つのだが、これは非常に価値のあることだ。優先順位の高いものには、なにがあるかを考え、その中で最も価値を置くものはどれなのかを考える。これは、キャリアプランという長期的なプランを立てる際にも、最も重要なことではないだろうか。

人と違うことをやれ!

【著者】堀 紘一【出版社】三笠書房 【発刊年月】1999年4月30日
【本体価格】1429円 【ページ数】278P

近代日本は今、三つ目の大きな曲り角にきている。一回目は明治維新。 つまり封建社会から”国家”が確立していった時代。2回目は戦後。国家 より民間、すなわち”企業”が確立していった時代。そして今、三回目。 企業から個人が独立して確立していく時代である。
同書 P5から引用

随分前のことだが、タレントの木村拓也が「サラリーマンは顔が見えない」というようなことをコメントしていた。その時私は、自分自身のことを反省すると同時に、「魅力的な人間に職業は関係ないよな」と感じたことを覚えている。私の知人のサラリーマンには魅力溢れる人物が沢山いる。

ところで、こういった魅力を感じる人物を思い浮かべてみると、誰もが全く異なる性格や能力ではあるのだが、共通しているのは、「その人にしかない何か」を感じさせることだ。「人と違うなにかを持っている」と感じさせる人とも言えるだろう。

さて、今週取り上げた「人と違うことをやれ!」と題された当書。「戦略的生き方のすすめ」という副題がつけられた当書は「戦略」と、「考える力」と「信頼」の重要性を説いた誰が読んでも「なるほど」と納得するはずの内容だ。挑戦的な題名にも関わらず、ユニークながらも王道を行く内容に仕上がっている。

独自の戦略と頭の使い方で、成功をおさめた人物のエピソードが数多くおさめられている当書。そのエピソードから戦略的な思考のノウハウを学べることはもちろんなのだが、彼等がかもし出す魅力を感じることで、魅力ある人物になる方法論としても読むこともできる。「企業から個人が独立して確立していく時代」は、その人だけの生き方を確立していく最大のチャンスでもあるのだ。魅力あるオリジナルな生き方の知恵を満載した本書を是非とも多くの人に手に取っていただきたい。

1日に24時間もあるじゃないか

【著者】中谷 彰宏 【出版社】ダイヤモンド社
【発刊年月】 1999年 7月 8日
【本体価格】1400円 【ページ数】170P

忙しい時に、人間はもっとも充実した時間を生きている。
本書 腰巻きから引用

今週とりあげるのは、『1日に24時間もあるじゃないか』という1冊だ。「時間を味方にする50のヒント」が詰まった本書は、時間管理の方法論の体裁をとってはいるが、そのヒントの背景にあるのは、なりたい自分になるためにはどうしたら良いのか、というテーマにある。本書に書かれているのは自己実現のための時間管理法と言ってもよいだろう。

[en] Career Newsのテーマになっている「キャリアプニング」。これは長期的に見れば、どのように生きていくか、ということだ。しかし、そのプランに基づいて今日一日をどう生きるか、ということも同時に非常に重要なことだ。人の数だけ様々なキャリアや生き方があるが、あらゆる人に公平に与えられていた一日という24時間をどう過ごしていくのかが、1年後、3年後、10年後を作り上げていくのだからだ。

さて、この『1日に24時間もあるじゃないか』。「会議に遅れる人も、飛行機には遅れない」「先延ばしは、時間の借金」などといった言葉が、あなたにとっての有意義な時間の使い方だけでなく、他人の時間をいかに価値のあるものにするのか、というテーマにも言及されている。私にとって時間が重要であると同様に、上司、同僚、そして部下のあの人にとっての時間も重要なのだという当たり前のことを気がつかせてくれる優しいアフォリズム集となっている。

小難しい時間管理方法でなく、「そうなんだよな」という納得とともに、貴方に有効な時間管理のノウハウをプレゼントしてくれる当書。当書を通読するわずかな時間は、必ずや、貴方に何十倍もの時間を生み出してくれるはずだ。日頃「忙しい、忙しい」といっている人に、特にお勧めの 1冊だ。

創造力の掟 ~情報空間の編集力学~

【著者】角田健司 【出版社】 勁草書房 【発刊年月】 1996年10月15日
【本体価格】2472円 【ページ数】246P

「オリジナリティーの確立と品質の維持、この二つをあわせ持った時、人はプロフェッショナルになる」
同書腰巻きより

情報をいかに収集し、加工し、価値あるものにしていくか。ビジネスにおいて最重要とも言えるこのスキルの重要性は、インターネットの急激な広がりに伴い、今までにないほど高くなっている。

ところで、情報を活用することを扱った書籍を何冊も手にとっているのだが、なかなか「これ」といった本に出会うことがない。「超整理法」という大ベストセラーが記憶に新しいのだが、他にこれという一冊がなかなか見当たらない。

さて、今回取り上げるのは、インターネットが一般化するはるか以前に出版された情報と創造をテーマに編まれた一冊だ。勁草書房という哲学などの出版に強い出版社から出された1冊だ。(80年代に売れた、「構造と力」を出した出版社といえば、ご存知の方も多いかもしれない。)

当書では、(0)プロローグからはじまり、(1)収集力の掟、(2)分析力の掟と7つの掟を紹介。それぞれのパートで項目毎に分類されたTOPICSを紹介。(7)管理力の掟というパートに加えられた「日本型創造力の盲点」というパートは抽象的な内容ながらも、情報と創造というテーマを締めくくるにふさわしい知的な興奮を与えてくれる。

冒頭に取り上げたという腰巻きのコピーにあるように、情報社会において、プロフェッショナルを追求するビジネスマンの方に是非一度手にとって頂きたい1冊だ。あまりにも早い速度で進むこの時代の流れにも古びることのない骨太な内容は、何かを貴方の中に残してくれるであろう。

アイデアの作り方

【著者】ジェームス・W・ヤング
【訳】今井茂雄 【解説】竹内均 【出版社】TBSブリタニカ
【発刊年月】 1988年4月8日 【本体価格】777円 【ページ数】102P

アイデアの作成はフォード車の製造と同じように一定の明確な過程であるということ、その作成に当たって私達の心理は、修得したり制御できる操作技術によってはたらくものであること、そして、なんであれ道具を効果的に使う場合と同じように、この技術を修得することがこれを有効に使いこなす秘訣である、ということである。
同書 P18から引用

産業構造がハードからソフトへと大きく移行するにつれアイデアの重要性はさらに高まった。企画マンのみならず、営業でも、経理でも、様々な職種で問題解決のための発想力が必要とされている。

しかし、このアイデア。「どこからそんな発想を。。。」という質と量のアイデアを出してくる人がいる一方で、「全く何も思い付かない。。。」という状況に陥ってしまう人もいる。非常にやっかいなものである。

さて、「60分で読めるけれど、一生あなたを離さない本」というコピーのこの『アイデアの作り方』。コピーばかりな羊頭狗肉のビジネス書が多いなか、解説を除けば、 30分で読めるコピーに恥じない実力派の書籍である。

著者のジェームス・W・ヤング氏は、アメリカの広告代理店・トンプソン社の常任最高顧問、アメリカ広告代理業協会の会長を務めた方。閃きとアイデアが勝負ともいえる世界で最先端を走っていた人のアドバイスはアイデアを求められている全てのビジネスマンに必ずヒントを与えてくれることだろう。アイデアを出す技術を、効率よくしかもわかりやすく修得させてくれる書籍は、なかなかない。

また、解説を書いている著名な物理学者である竹内均さんの文章もすこぶる面白い。今日購入すれば、明後日からはこの技術を実践できる。そんな即効性も嬉しいお勧め本です。

考える技術・書く技術

【著者】バーバラ・ミント 【監修】株式会社グロービス
【訳】山崎康司 【出版社】ダイヤモンド社 【発刊年月】 1995/4
【本体価格】2330円 【ページ数】212P

本来文章を作成するということは、自分の考えを読み手に伝える以前に、「自分の考えを練り上げる」ことを要求するものである。しかし、この書き手の義務を認識し、それを果たしている人間は極めて少ない
同書 P209から引用

人は常にコミュニケーションをしている。インターネット、電話、手紙、口頭、あらゆる場面で。ビジネスも突き詰めれば、コミュニケーションの一つ。だからこそ、ビジネスにおいてコミュニケーション能力は、最も必要な能力の一つにあげられる。

さて、今回紹介させていただく書籍は、コミュニケーションの一つの形である「書く」という技術に関する本。「“てにをは”を正しく」や「イントロを魅力的に」といったノウハウ的な内容の書籍が多いなか、この『考える技術・書く技術』は、「書くとは、考えることだ」という主張に基づき、「書く」ことだけでなく「どのように考えればよいか」ということまでも解説してくれる。

「書くべきことがまとまっていない状況で書き始めても文章を書けるわけがない。」そんな誰でもが知っていることを、論理的かつ、科学的に説明している本書。単に文章を書くということのみならず、プレゼンテーション、企画立案などビジネス全般に必ず役立つ。「考える」ことと「伝える」ことは、常に表裏一体だからだ。

本書を読んだ結果、私が文章がうまくなったか否かは分からないが「考える」という技術を学ぶことができた。「書くことは考えることである」このことを実感できるだけで、何かが変わるはず。全ての人にオススメできるすばらしい本だ。

「査定!」論。

【著者】梅森浩一【発行】PHP研究所
【発行年月】2004年03月31日 【本体価格】1,300円
【ページ数】221p 【ISBN】4-569-63519-9

日本の経営者は、自分たちが平社員の時にどういう視線で物事を、なによりも「上司」を見ていたのかということを、いま一度思い起こすべきでしょう

本書 P97 より抜粋

「1人の給料が上がれば、その分、必ず、誰かの給料が下がるシステム」。この「人の失敗を喜ぶような成果主義」を日本企業に適用してまかり通るのか、という疑問に『「クビ!」論』で話題を呼んだ著者が、外資で鍛え上げられたプロの人事担当者の立場から「査定制度」について書いた本である。

近年「成果主義」と叫ばれ、さまざまな業種の会社が導入を試みている。だが、話題になるのは成功例よりむしろ、失敗例の方が多いのではないだろうか。社員の実力により業績評価をするというシンプルなものであるのに、ここ日本ではどうしてうまくいかないのだろう。

「終身雇用」「年功序列制度」に慣れ親しんできた日本の労働者。だが、時代は変わり、恒常的に利益を生み出せない状況や、自分の業績に見合わない評価に、我慢できなくなってきた若い人材からの押し上げも重なり、経営者は「成果主義」を意識せざるを得なくなった。

そこで日本の企業の多くが、外資系の見よう見真似で導入してみたものの、結局はうまくいかない。理由はいろいろあるが、一つは「フェア」でないところのようだ。例えば「年功序列制度」を残したまま「成果主義」を導入しても、全く機能するはずがない、と著者は看破する。

査定システムで最も重要なのは、「何のために査定するのか」「査定結果がいったい何に結びつくのか」という点が、明確であることなのだという。本来、真っ先になくすべき「年功序列制度」が残っている以上、誰も本気になれないだろうと。

確かに、せっかくできた査定結果も「はじめに結果ありき」ではそもそもうまくいくわけがない。つまり、「成果主義」と「年功序列制度」は両立しないことがわかる。この年功序列の廃止は、年齢や入社年次、性差別や国籍などを含めた「一切の差別を認めない」ことを意味するのだ。

また、著者は日本の「終身雇用制度」についても見解を述べている。「守るべきは終身雇用、なくすべきは年功序列」として「公正な実力主義に基づく終身雇用制度」のあり方も述べている。

このように、本書には「ゼロサム・ゲーム」のような、間違った見解のまま「成果主義」を導入する企業に疑問を投げかけ、「人の幸せをも喜べるような成果主義」とはどういうものなのか、について様々な角度から意見を述べている。優秀な社員を失う前に、ぜひ読んでおきたい一冊だ。

稼ぐチームのレシピ

【著者】キャメル・ヤマモト【発行】日本経済新聞社
【発行年月】2004年01月13日 【本体価格】1,400円
【ページ数】316p 【ISBN】4-532-31116-0

素材を生かした絶品料理をつくるには秘伝の「レシピ」が必要なように、レシピ次第で、人材は生きたり死んだりする。

本書 見返し より抜粋

会社という組織には目標やビジョン、ミッションがあり、それに向けて活動をしている。そして、会社の中には実に多くのチームが存在する。課や部は当然ながら1つのチームであるし、タスクフォースやプロジェクトチームも同様だ。

チーム内にはいろんなタイプのスタッフがいる。スタッフにはそれぞれの価値観や仕事観がある。個人においてそうであるように、チーム単位においてもそれぞれの慣習や文化がある。だから、社内で他のチームと意見が合わなかったり、仕事に対する意識でぶつかることがあっても当然のことなのだ。

実は、チームには色んなタイプがあるようだ。あなたが働いている職場は、本書で紹介するいずれかのチームに近いはず。または、いずれかになり損ねているのではないだろうか。摩擦を引き起こす他のチームは別のタイプのチームに近いはずだ。

本書で紹介するチームタイプは大きく分けて4つ。何よりも“和”を大切にする「仲間チーム」、仕組みと規律を重視する「軍隊チーム」、専門性の高い人材が集まる「開発チーム」、創造性と意外性で勝負する「アメーバチーム」があるのだという。

「じゃあ、どのチームがいちばん稼ぐわけ?」というと、それは適材適所であり、どれも理想的なチームなのだそうだ。タイトルに「レシピ」とついているが、人材を集めてつくるチームは食材を集めてつくる料理と似ている、ということのようだ。

高級食材だけで料理がおいしくなるとは限らないように、「稼ぐ人」だけを集めたチームが「稼ぐチーム」になるとは限らない。他方、ありふれた食材でも組み合わせや味付けを変えればおいしい料理ができる。「安い人」中心でも目的に合わせた仕組みや動機づけを行えば良いチームができると。

本書では、理想的なチーム作りに役立つ工夫を、4つのタイプ別に詳しく解説している。異なるタイプのチーム同士が、お互いをどう評価しているか、ということも深く読み込めばわかってくるので面白いし、お互いの意見調整などにもきっと役立つことだろう。

他にも、タイプ別チーム内におけるリーダーの役割、採用や人材の育て方など、“おすすめレシピ”が満載だ。4つのチームタイプと、チームを動かす人材起用をマスターする「秘伝ツール」は、稼ぐ理想的なチームづくりの福音の書になるはずだ。

リーダーは、ピーターパンの心を持って!

【著者】アレッサンドロ・ケーロ【発行】ダイヤモンド社
【発行年月】2004年01月29日 【本体価格】1,400円
【ページ数】131p 【ISBN】4-478-72024-X

個人のリーダーシップは、その人の権力や、職業上の地位、社内や社会での地位、他人よりも抜きんでる能力にあるのではなく夢見る力や、その夢を信じ、夢を実行に移す力にある。

本書 P18 より抜粋

我々にとって「ピーターパン」はディズニーのアニメでお馴染みだ。大人になることを憂うウエンディの手を取って、子供がいつまでも子供でいられるという国、ネバーランドへと旅立つピーターパンの冒険。多くの人々の心をつかんだ物語である。

そのピーターパンがいまの時代に実在したとしたら、どんな仕事に就いていただろうか。また、実業家や企業の一員であったなら、同僚や部下に対してどんな発想を持ち込んだか、というのが本書誕生のきっかけだ。

しかし本書には、おとぎ話のピーターパンは登場しない。会社を経営しながらも、役員に経営の権利を譲ることにし、自分はボランティア活動のためにアフリカへと旅立ってしまう、冒険心旺盛な「ピーター」と呼ばれる男が主人公。

この主人公ピーターを、現代社会のリーダーの象徴と位置づけて、上司や部下の本心から慕われるリーダーの心構えを紹介しているのだ。また、各章には、論文、挿話、小説、詩などが随所で引用され、メリハリの効いた構成で読みやすい。

各章で綴られるリーダーの心構え、つまりピーターのエピソードは実に面白い。各エピソードを読み終えると、一旦読み進めるのを休止し自分の立場に置き換えて考えさせられてしまうくらいだ。

ロマンティックで空想家、不可能な物語を描くのが好きなピーターの活動計画の立て方はこうだ。本文中では、ある教授がアメリカの有力企業の管理者たちを前に、<有効な時間のプランニング>と題し、講義をする話。

教授は大きなガラス容器を出し、大きな石ころを容器いっぱいに詰めた。しかし教授は「これではいっぱいではない」と。次に砂利を容器の中に流し込む。そして次に砂を同様に流し込む。講義の中で行われた実験はこれだけだが、ここから重要なことが学びとれる。

自分の人生において、いちばん大きな石は何なのか。健康、家族、友達…。自分という容器の中に一番大事なものを最初に入れないと、貴重な時間を充実させることはできない、ということなのだ。砂、つまり自分にとって些細な事を優先させると、容器はいっぱいにならないのだから。

これはリーダーにおける時間の使い方の一部だが、もはや本書は管理職向けというよりも、誰もが学んで欲しい内容である。ページ数も少なく読みやすい構成なので、ぜひ手にとってほしい一冊だ。

脱コンピテンシーのリーダーシップ

【著者】デイブ・ウルリッチ/ジャック・ゼンガー/ノームスモールウッド
【発行】ダイヤモンド社 【発行年月】2003年10月09日
【本体価格】2,400円 【ページ数】297p 【ISBN】4-478-37442-2

称賛されるリーダーとは、どのように行動するかを学ぶだけでなく確実に成果を上げるように行動をとる、ということだ。

本書 P5 より抜粋

書店に並ぶリーダーシップに関する書籍は、感動的なストーリーを語ったものや、リーダーが成功に対する信念を描いたものなどさまざまだ。しかしそれらの共通点は、リーダーに必要な「望ましい特性リスト」で締めくくっているというところ。そして、それらの書籍はある重要な要素を軽視している。

効果的なリーダーシップとは何か。本書では、これを「特性×成果」と表現している。注目すべき点は、2つの要素が足し算ではなく掛け算となっていることだ。つまり特性、成果のいずれかの点数が低い場合はリーダーシップの有効性は低くなるということだ。

本書はリーダーシップの「成果」について厳しいまでに固執している。読み進めていくと確かに「成果を出すために…を行う」といった表現が多いことからも頷ける。望ましい成果とは何か、どのように望ましい成果は定義され測定されるのかをかみ砕き、具体的に提示している。

リーダーが「望ましい成果に集中している」かどうか、という評価には基準があるという。「バランス・戦略的・継続・無私」の点だ。これらの基準により、望ましい成果をどの程度達成できるかが決まるというのだ。

「バランス」に関して本書では、社員の成果(人的資本)、組織の成果(学習、イノベーション)、顧客の成果(ターゲット顧客を楽しませる)、投資家の成果(キャッシュフロー)という、さらにつの分野に焦点を当てている。リーダーはこのつの分野に成果をバランスさせなければいけないと。

例えば、リーダーがつの成果(分野)に対して合計で100ポイントの注意とエネルギーを配分するとしたら、60ポイント以上のものと10ポイント以下のものはつくってはいけないという。これが実際に偏っている場合、つの成果を、まずバランスさせることから始めなければいけないのだと。

なるほど、この作業を行えば次にとるべき行動と達成すべき成果が明確になる。顧客第一主義で一時の成功をもたらした企業でも、社員に対する成果を怠れば、優秀な社員はその企業に定着しない、といった具合か。つの成果を均等に目指していくことが、チームや企業の成功に帰因するのだろう。

このように本書では、リーダーにとっていかに「成果」が重要なものか、また適切な特性を、どう成果に結びつけるかを、かなり丁寧に解説している。本書には、成果重視の新しいリーダーになるための提言がギッシリ詰まっているのだ。全く新しい発想、かつ理論的で実践可能な内容構成。オススメ。

会社を変える社員はどこにいるか

【著者】川上真史【発行】ダイヤモンド社
【発行年月】2003年08月28日【本体価格】1,500円
【ページ数】202p【ISBN】4-478-44046-8

企業がダメだから、人事制度がヘンだからなどと企業側にだけ責任を求めていては、何も進まない。今こそ企業も個人も変化を起こすべきときである。

本書 P198 より抜粋

最近、仕事の成果に従って評価される「成果主義」が浸透してきた。終身雇用が終焉を迎え「ウチの会社もそろそろ…」という流れが至るところに…というところだろうか。実はその成果主義を誤ったカタチで導入し、人材不況に陥る最悪のパターンを迎えてしまう会社が多いのだという。

成果主義を導入する目的は、個々の社員がセルフマネジメント的な動きを起こすようになり、競争力を持つ人材を生み出すことだ。そのためには「動機づけ」が必要となるという。また、高いパフォーマンスをあげる人材から辞めていくことがないように、継続的な動機づけも求められる。

本書では、「コンピテンシー」を人材不況脱出のための大きなキーワードとしている。一般的には「能力」と訳されるが、それでは少し視点が違う。個人の能力を見る場合、ほとんどの人は「優秀かどうか」という視点で見ているのではないだろうか。しかし、優秀かどうかは関係ないというのだ。

個人の持っている能力が成果につながるかどうか──がコンピテンシーの視点なのだという。なるほど、個人の知識や思考力、動機などの側面が充実していても、継続的に成果を出せなければ、競争力を持った人材とは言い難いということなのだろう。

著者は、能力をもっているのにも関わらず、成果が出ないのは、セルフマネジメントができていないからだと主張する。自分自身がどのような成果を生み出せるのかを証明できないと、誰も自分を選んでくれないのだから。

コンピテンシーのレベルは5段階に分かれていると本書にはある。この5段階が市場価値、投資価値を決める。価値を持ち、投資に値すると考えられる人材は、レベル4以上の力を発揮できるのだとか。例えば、レベル4以上は「状況変容行動」ができ、レベル3以下は「状況従属行動」しかできない。

ごく一般的な日本企業のビジネスパーソンを、5段階レベルで日頃の行動を見てみると、約9割以上がレベル2程度だという。これは、当たり前のことしかできないレベルだ。

世界的に求められている人材が、自らビジネスを創り出せる人であるこの状況で、これでは、世界を敵に回して「勝ち目がない」のは明白だろう。

本書には、世界的に競争力をもった人材を育てるためのノウハウがギッシリ詰まっている。キャリア創造、コーチング、部下の動機づけなど、本質的な会社のあり方から、具体的な人材育成法まで、これまで我々が抱いていたビジネスの常識を覆す。人材づくりに迷ったら、ぜひ読んでいただきたい。

これが答えだ!─部下の潜在力を引き出す12の質問─

【著者】カートコフマン&ゲイブリエル・ゴンザレス=モリーナ
【発行】日本経済新聞社
【発行年月】2003年07月25日【本体価格】1,800円
【ページ数】347p【ISBN】4-532-31062-8

最も熱意のある集団は、もっとも生産的だ。残りの集団は平凡か、凡庸、または紛れもなく破壊的である。

本書 P108 より抜粋

指導者が最近よく問われる「組織があっての人か、人があっての組織か」に対し、意見はしばしば分かれる。企業内で、社員が何の興味も適性もない知識を植え付けるために、研修に送り込まれる。そこで社員は劣っている点を強化するよう指示される。しかし、これは賢い時間の使い方ではない。

スポーツに例えるとわかり易い。野球チームで1番から9番まで長距離打者を並べても、チームとして機能しないことは明白だ。だから与えられた打順の役割を各選手に強要する。しかし、無差別に求めるスキルを身につけさせようとする、組織の指導法ではもはや成果を上げられない。

「最も強力で、活気があり、生産性が高く、利益をもたらす職場」と、そうでない職場にどのような環境の違いがあるのか…。

本書では、世界規模のネットワークをもつギャラップ社の調査により、その答えを発見し全貌を紹介する。まず、ギャラップ社は世界の66カ国で、何百万人もの社員に次の質問をした。「あなたは毎日職場でもっとも得意な仕事をする機会を与えられていますか」と。

その結果「与えられている」と答えたのは5人に1人だったという。つまり一企業の中で80%の社員が得意とする分野の仕事を与えられていないということだ。しかし、優れた企業は、社員の才能、得手不得手を調べ上げて、人材を適所に配置させているというのだ。この差はなんなのか?

ギャラップ社が行った調査により、生産性の高い組織を作るための2つの結論が導き出された。まず、全ての仕事の成果に影響を与える12の条件が確認されたこと。第二に、12の条件を満たす責任と、実際に実行出来るのは各職場のマネージャーと、一人ひとりの社員であることがわかったという。

意外な条件もあった。「職場の中に親友がいること」だというのだ。これまで企業は社員同士が仲良くなり、無駄な時間を過ごすのを奨励しなかった。しかし、これは大きな利益を生み出すというのだ。職場に親友がいることで社員の仕事に対する熱意は驚くほど上昇する“証拠”を挙げている。

50年以上にわたって、ギャラップ社は、顧客や社員に、仕事、職場、購買や消費に関わる決定について幅広く質問を行ってきた。主要な業界すべてに取材し、世界的な規模で調査を実施してきた膨大なデータが「答え」を裏付けている。データから見えた真実とは…一読することをお勧めしたい。

あなたのチームは、機能してますか

【著者】パトリック・レンシオーニ【発行】翔泳社
【発行年月】2003年06月17日【本体価格】1,600円
【ページ数】243p【ISBN】4-7981-0368-3

信頼のないチームのメンバーは…
互いに自分の弱みや間違いを隠す。
助けを求めたり、建設的な意見を出したりすることをためらう。
自分の担当外の仕事を手伝うことをためらう。

本書 215P より抜粋

多くの企業において、クオリティの高いチーム作りはなかなか実現しにくいものだ。組織が質の高いチームワークの実現に失敗するのは、危険な5つの落とし穴に気付かないうちに陥ってしまうからであるという。この落とし穴を、本書では「5つの機能不全」と呼んでいる。

本書は、この「5つの機能不全」がもたらす影響、チームワークの機能を回復するプロセスやノウハウを単に羅列するわけではなく、“フィクション”という形でストーリー化し、読者をグイグイ引き込んでいく構成に仕上げている。

舞台はシリコンバレーの新興ハイテク企業。そこへ今や伝統的な産業と言える自動車業界から女性CEOがやってくる。それまで一見波風も立てず、“質の高い個人の集合体”という概念でやってきた経営陣は、この新任CEOによって一気に混乱させられる。そう、この企業はチームとして全く機能していなかったのだ。

機能不全とは、「信頼の欠如、衝突への恐怖、責任感の不足、説明責任の回避、結果への無責任」の5つ。ここでは、この5つの中で最も土台となり基本的で重要な要素、「信頼」とはどんなものかを紹介する。

チームワークは信頼を築くことから始まる。信頼とは「チームのメンバーが互いに理解しあい、心を開けること。互いに遠慮せずに、非難を恐れず、自分の間違いや弱み、不安を認めること」なのだという。信頼を築くには、個人が「完全無欠でありたいという気持ちを克服すること」なのだと。

例えば、社内会議において、自分が最も正しいと思い続けている限り、メンバーの意見も耳に入らないし、議論も活発に起こらない。表面上の「信頼」ではなく、人としてメンバーの強みと弱みを共有することで、相手を理解できる。話し合いは、まずそこからなのだという。

本書で紹介する5つの機能不全は、全く異なる問題で個別に対処できるかのように誤解されるかも知れない。だが実際には、これらは相互に関係しており、1つでも脆い部分があれば、チームの成功は絶望的になる可能性もあるのだという。

これまでのチームとしての慣行を覆すことは容易ではないだろう。しかし、それから脱しない限り、新しいパワーを生み出すことは困難であるし、会社は変われない。本書を一読し、リーダーとして、メンバーとして、機能することから始めてみることをお勧めする。

リーダーが困ったときに読む本

【著者】ロス・ジェイ 【発行】ディスカバー21
【発行年月】2003年03月10日 【本体価格】1,400円
【ページ数】221p 【ISBN】4-88759-246-9

・部下のうちの誰かをリストラしなくてはならない
・優秀な部下が辞めたいと言い出した
・部下が仕事のストレスで苦しんでいる
本書 腰帯 より抜粋

組織における「リーダー」と呼ばれる人に求められる資質は、「問題解決能力」だといわれている。日頃から携わっている仕事においては、経験則で対処できることが多い。しかし、全く直面したことのない、社内でのトラブルもリーダーは想定し、準備をしておく必要がある。

本当に困った状況というのは、その問題が今まで経験したこともなく、マニュアルにも載っていない場合であるという。「部下にリストラを言い渡す」や「上司から仕事の失敗をなすりつけられる」「自分より年長者の上司になる」などが、それにあたるだろう。

無論、自分が経験したことのない問題でも、他の誰かが経験していることがあるはずだ。つまり、誰かが答えを知っているというわけ。本書には100件ものトラブル解決法が載っている。リアルな状況を想定しているので、そのままマニュアル本として活用できるだろう。

例えば、こんなケースがある。「本当は能力不足の部下が、自分ではかなり仕事ができると思い込んでいる」という、上司にとっては面倒な事態。「多少のミスはあったが、きちんとこなした」と息巻いている部下に対して、あなたならどのように接してあげられるだろうか。

あなたはイライラするかもしれないが、部下がどう思っているかは問題ではないと、著者は看破する。対処すべき点は、部下の能力不足ということに尽きる。つまり、能力不足を自覚させることではなく、本人の思っているような「有能さ」を発揮してもらうことに、上司は注力すべきなのだという。

有能や無能というレベルの不毛な議論ではなく、ひたすら部下の仕事振りに焦点をあてる。部下が同意するような目標と基準を明確に設定し、必要あらば文書化に。さらに、目標未達成とみなす基準も決めておくことで、本人が認めざるを得ないように、準備も万全にしておけばいいのだという。

なるほど、期限に間に合い、ミスのない仕事でなければ、目標を達成したことにならないのだと、最初にはっきりと説明しておくことで、自分の能力不足を誤魔化したり、強弁する余地を与えないで済むだろう。実際にその点がなくなれば、本人の能力上昇も期待出来る。

このように、本書には「部下に対して」困ったとき、さらに上司に対して、同僚に対して、顧客に対してなど、リアルなトラブル解決法がギッシリ詰まっている。本書を自分のデスクや、鞄の中に忍ばせておけば役に立つ時が必ずやってくるに違いない。オススメの一冊だ。

もしもウサギにコーチがいたら

【著者】伊藤守【発行】大和書房
【発行年月】2002年5月10日【本体価格】1,200円
【ページ数】213p【ISBN】4-479-76121-7

反省なんてさせない。ウサギには、次に何をやるかを聞く。アドバイスはしない。ウサギは自分で考え、自分で行動して欲しい。「知らない」ことを知らない。ウサギは何が問題かがわからない。
本書 腰帯 より抜粋

イソップ物語の「ウサギとカメ」の話を思い出して欲しい。ウサギは俊足という素晴らしい才能を持ちながらも、最終的にはカメとの競走に負けてしまう。ウサギの慢心が勝負の分かれ目になったと。

そう、我々はこの寓話から「油断大敵」を教訓として受け取っている。誰もが記憶している物語だ。カメは努力家で、ウサギは才能に埋もれて努力しないから…。しかし、ウサギの人生はそこで終わってはいない。まだ始まったばかりなのだ、と著者は言う。

あれ以来、カメと再び競走していないじゃないかと。本書は、そのウサギに貼られた悲しいレッテルに立ち向かう。今度はウサギにコーチをつけて。

なるほど、この話は、会社における上司と部下との関係に適用できる。上司をコーチ、優秀な部下をウサギと位置付け、ウサギはどんな性質をもっているか、コーチはウサギをいかに理解していくか、に迫っていくことで、よりよいコーチングができるといのが本書の狙いだと考える。

例えば、ウサギの耳は長いが、話の全てを聞いているわけではないという。聞きたいことを、聞きたいようにしか聞かない。音に反応しているように見えるが、実は最初から聞きたい音があるという。興味の範囲でスクリーニング(選別)し、自分の都合で聞いているわけだ。何ともわがままな…。

ウサギは耳で聞いているのではなく。脳で聞いている。だから聞いていても理解できない。それは「リセプター(知識の蓄積)」がない証拠なのだという。それがわかった時点で、リセプターのある領域の話をするか、意図的に創っていくことが賢明なのだと主張する。

さらに「最近、どう?」という質問をされると、ウサギは「イエス」か「ノー」でしか答えられない。質問自体に創造性がないからだ。「仕事を楽しむために、具体的にどんなことをしている?」これだとウサギは喜ぶし答えは無限だ。自由に連想させることが重要なのだと言う。

せっかく良い才能をもっている部下を、トップダウンの命令形式で仕事をさせていたら、才能を眠らせたままにしてしまう。それは部下にとって、上司にとって、何より会社にとって不幸であることは間違いない。多様な価値観をもつ若手社員と上手に付き合っていくためにコーチングの知識は必須だ。

本書は、このようなコーチングの手法を「視点を変える53の方法」として段階を踏みながら網羅している。部下とうまく付き合えない人にはかなりオススメの一冊、面白い!

モチベーション・マネジメント

【著者】小笹芳央【発行】PHP研究所
【発行年月】2002年12月16日【本体価格】1,300円
【ページ数】167p【ISBN】4-569-62442-1

同じ仕事を部下に与えるにしても、「石を積み上げてほしい」というより、「要塞を作るために、石を積み上げてほしい」というほうが、部下のモチベーションが高まることは言うまでもない。
本文 53p より抜粋

社会全体の働く意欲が低下している…この不景気で失業率も高い時代になにをバカな!という感じだろうか。しかしながら、ビジネスの現場にいる管理職なら、すでに肌で感じ取っているだろう、部下の仕事に対するモチベーションが、押しなべて低下してきていることを。

最強の組織を創り出す、戦略的「やる気」の高め方-というサブタイトルの付いた本書は、文字通り、あなたの部下とチームが、今すぐに活性化するための実践的なノウハウが、たくさん詰まった一冊である。そう、もはやモチベーションは、戦略的に高めなくてはならないのだ!

まず「深刻化するモチベーションクライシス」と題して、社会環境の変化などに伴って生じた、企業と個人との関係について、わかりやすく解説している。なるほど、どうしてモチベーションが低下してしまったのか、この項を読むことで、そのアウトラインがつかめる。

次に「最強の組織はモチベーションマネージャーが創る」とし、組織内での人の繋がり、その重要性を説く。モチベーションを高める管理職になるためには「影響力」と「信頼性」を持つことが大事と、キーワードに「こわい」「すごい」「すてき」「ありがたい」をあげるなど、なかなかユニークだ。

さらに「モチベーション・マネジメントの実践」の項では、ゴールセッティング効果、ラダー効果、リンク効果など、実践的で、それこそ、即効果を発揮しそうなノウハウが、20種類提供される。役割の認識や、成功へ導くための視座視点が、ギッシリ詰まっているのである。

文字通り、管理職、もしくは管理職になろうとしている人たちには、必読の書であることは言うまでもない。しかし、それ以外の、例えば、社会人1年生がこの本を読んでも、間違いなく役に立つだろう。それは、将来、マネージャーになったときに?いやいや、きっと今すぐに役に立つ。

目標を明確にする技術、意思決定の重要性、マイルストーンの立て方など…もうお解かりだろう。上司が部下に「モチベーションアップ」させるために指導するノウハウは、すなわち、自分自身の「仕事の改善」に役立つことは言うまでもない。

巻末には筆者の会社である(株)リンクアンドモチベーションで、モチベーション・マネジメントの実験として取り組んでいる事例が紹介されている。これもなかなかユニークで、一読の価値があるだろう。あらゆるビジネスパーソンに、オススメの一冊である。

コミュニティ・オブ・プラクティス

【著者】エティエンヌ・ウェンガー/リチャード・マクダーモット/ウィリアム・M・スナイダー
【監修】野村恭彦【解説】野中郁次郎【訳者】櫻井祐子
【発行】翔泳社
【発行年月】2002年12月17日【本体価格】2,800円
【ページ数】398p【ISBN】4-7981-0343-8

コミュニティ・オブ・プラクティス(実践コミュニティ)とは、あるテーマに関する関心や問題、熱意などを共有し、その分野の知識や技能を、持続的な相互交流を通じて深めていく人々の集団のことである。
本書見返しより抜粋

嫌な言葉だが「粛々」と仕事をこなしていくために適切である「従来型」の組織では「新しい」なにかが作り出せない…そんな声をよく耳にする。「ナレッジ社会の新たな知識形態の実践」と題した本書は、従来型の組織を超えた「知識を核にした社会的枠組み」からの改革を、提案している。

コミュニティ・オブ・プラクティスとは何か。その定義を一読すると、要は今流行の「組織横断型プロジェクト」と、変わりないような気がする。そして、多くのビジネスパーソンは、その類のプロジェクトは、成功を収めているケースが少ないことを知っているはずだ。それとはどう違うのだろう。

成功しない組織横断型プロジェクトの多くは「その運営方法がわからない」ままに、「指揮命令系統を超えることなく」推進されることが多く、結局参加しているメンバーも、今までの業務に「1つ厄介ごとが増えた」程度にしか認識していないことに、問題がある場合が多い。

まず、本書は「実践コミュニティ」は「どこにでもある」と述べる。太古の昔、焚き火を囲い、狩りを効率よく行うために、鏃の形を工夫する話し合いがなされた(たぶんその通りだろう)それと同じであると。そこは、知識を体系化し、使えるものにするために、有益な場所になるのだと。

詳細を書くほどの紙数はないので割愛するが、企業はこの「知識を生み出す集団」を、積極的にそして体系的に「育成する」必要があると、本書は論じている。企業は自身への求心力の変化(帰属意識と言い換えても良いかもしれない)と、コミュニティを認知し、ビジネス成果につなげるビジョンを持つべきだというのだ。

さらに、実践コミュニティの持つ意味、構成する要素、そして、運営の方法と、問題点などを、具体的な例とともに、きわめて精緻に論じている。この一冊を読めば、組織横断型プロジェクトの「真の有効性」が理解できることは、間違いないだろう。

面白い一冊ではあるが、ボリュームが多く、読むのに骨が折れる。しかも、同じコトを繰り返し述べている部分が多く(=だからわかりやすいという解釈も出来るのだが…)スルスルっとは読めない。しかし、苦労して読み終えた後、あなたのワークスタイルは変わる・・・かもしれない。
オススメ!

ロストプロセス・ジェネレーション

【編著者】サントリー不易流行研究所
【発行】神戸新聞総合出版センター
【発行年月】2002年12月21日【本体価格】1,500円
【ページ数】269p【ISBN】4-343-00196-2

希望すれば努力しなくても、手に入ると思っている位の気軽さで、「司法試験を受けるつもり」という若者には驚かされた。彼らと話していると根拠のない自信を感じることが多い。まだ、何もやっていないけれどやれば当然できるはずという自信がどこからくるのかはなぞのままである。
本書239pより抜粋

この本は「今どきの若者がわからない」「子供を理解したい」と、不安を抱く大人たちに向けて、昭和50年代生まれの若者たちの「マインド」について、詳細な取材を行い、浮き彫りにしたものである。一見すると、このメールマガジンの読者にとっては、関係がないようにも思えるが…。

この世代が育った家庭環境から、本書は始まる。「ちょっといい家族」と名づけられたその環境は、お父さんの存在が希薄で、家族が友達みたいで、子供たちのコントロールが効かなくて、でも、それでもやっぱり「我が家はいい家族だと思いますよ」と、いうような場所のことである。

さらに、携帯電話などのコミュニケーションツールの発達によって生じた、人間関係や恋愛の変化、さらには、都合の良い場所である「家族」を背景にした「自分探し」の名を借りた「就業感」まで、幅広く論じている。具体的な事例が豊富に紹介され、読んでいて臨場感がある。

タイトルの「ロストプロセス・ジェネレーション」とは、生まれたときからすべてがそろっているという「豊かさ」と、高度に発達した「情報化」社会の中で、何かを得るための「プロセス」を、この世代は失ってしまっているのでは…と、本書は示している。言われてみれば、そうかもしれない。

さて、冒頭の「関係ないのでは…」という、投げかけに戻る。

昭和50年代生まれの若者たちは、実はもう既に社会に出ている。あなたの後輩にも(もしかしたらあなた自身がそうかもしれない)きっといることだろう。そんな彼らの「マインド」が「わからない」と思ったことはないだろうか…。

この「ロストプロセス・ジェネレーション」を理解し、コントロールしていくことは、企業内で管理職になるものにとって、必須事項になるだろう。なぜなら、それは「親業的」なものなハズだが、実際の親は、すでにその役割を担えなくなっているからだ。

この本を読めば、新しい時代の管理職が持つべき視点が、わかる。

あらゆる意味で、大変な時代に突入していることを、改めて整理するためにも、本書を一読することをお勧めする。手に入りにくいかもしれないが、大型書店やネット書店を丹念に探せば、あるだろう。

優秀なオタク社員の上手な使い方

【著者】ジョン・M・イワンセビッチ/トーマス・N・デューニング
【訳者】村井裕美【発行所】ダイヤモンド社
【発行年月】2002年11月28日【本体価格】1,700円
【ページ数】238p【ISBN】4-478-36055-3

プログラマー、SE、WEBデザイナーなどのIT技術者に限らず、現代のすべての技術者は、デジタル世代のハイテク労働者であり、既存の会社理論とは異なったカルチャーを持つ。これまでの「古典的」人事管理はもはや通用しない。
本書 見返し裏 より抜粋

形振りはかまっていないと一目でわかるスタイル、独特の「身内」用語を連発し周囲を排除してしまう、そんなちょっと「個性的」な人を、我々は「オタク」と呼ぶ。彼らは、強いモチベーションを保ちながら、興味のある分野に強い関心を寄せる。そんな彼らが仕事に就く…。

そう、そんな時代がやってきたのだ。パソコンが各家庭に普及し、学生の頃から慣れ親しんだ若者が、実社会に進出してきた。そんな「オタク的」な彼らのことを、本書では「アインシュタイン」と呼ぶ。かの有名な物理学者の名を借りて、彼らの特徴と、その接する方法について掘り下げていく。

彼らは「豊かな技術的知識と知的好奇心を持ち、クールに働き、自発的行為にこだわる」特徴を有すると、本書にはある。端から見れば静かに淡々と仕事をこなしているとしか思えないが、彼らの実力は測り知れないものだ。まさに、アインシュタインという名がふさわしい、素晴らしい人材なのだと。

そんな彼らを育て、会社の利益を上げるための、管理職に与えられた役割はズバリ「彼らを応援すること!」だという。彼らの知識に追いつき、技術を磨こうとしても、それは無駄な努力。上司としての権威が無くなってしまうのだ。彼らが上司に求めるものは、働きやすい環境を整えてくれること。

仕事をしていく上で、難解な課題を解くこと、それがアインシュタインのモチベーションである。ゲームと同じスタイルと推測される。管理者としては難題を彼らに解かせればよいだけの話。それが会社の利益につながるのだから。そのゲームをストレスなくクリアさせるには、どうすればよいのか?

本書では「アインシュタイン」の管理方法を、上司の立場から、心理学的、科学的観点からアプローチし、多くの実践例を上げて解説する。彼らのモチベーションを高める方法、転職させない方法、アインシュタインのチームを作る、維持する方法など、実にリアルに、詳しく伝授していく。

「なぜ部下に対してそこまでしなければいけないのか!」と、疑問に思ったりもするだろう。しかし、本書を読み終えればきっとわかる。人にはそれぞれ役割があり、経験豊富な智恵と力で、部下の力を引き出すことで、会社の成功を導き出すことは、とても大切なことなのだと。

CDケースを思わせるサイズと装丁。そして、大切なことは繰り返される平易な文章。しかし、スラスラと読めるわけではない。なぜなら、いちいちかみ締めながら、うなづきながら読んでしまうからだ。そして、アインシュタインは、決して珍しいものではないことに気づく。そう、目の前にもいる。

コーチングから生まれた熱いビジネスチームをつくる4つのタイプ

【著者】鈴木善幸【発行所】ディスカバー21
【発行年月】2002年09月10日
【本体価格】1,300円【ページ数】173p【ISBN】4-88759-214-0

Controller 人をも場をも支配しようとするコントローラータイプ
Analyzer  冷静沈着慎重派のアナライザータイプ
Promoter  注目こそがやる気の源プロモータータイプ
Supporter  合意と承認が何より大事サポータータイプ
本書腰帯より抜粋

最初に、筆者が上手に導入してくれる。人と付き合いづらいことがある、ある人とは上手くいったのに、同じ方法論で別の人と接するとダメだ…なぜなんだろうと。「価値観が違うからだ!」という決まり文句に行き着くけれども、じゃあ「価値観」がなんなのかは、わからなかったんだと。

本書で紹介するCSI(Communication Style Inventory)による4つのタイプを知ることによって、価値観の違いから生じる「ストレス」から解放されたのだと、筆者は書いている。人付き合いの難しさを解消してくれる、そのタイプとは、いったいなんなんだろう?

コントローラー、プロモーター、サポーター、アナライザーという4つのタイプ分けが紹介される。各タイプごとに「同じことを言っても、受け止め方はそれぞれ異なる」のだという。つまり、4つのタイプの特徴を知り、ものの言い方を変えていく、それがコミュニケーションのツボだったのだ。

例えば、上司がプロモーターで、部下がアナライザーの場合。プロモーターの特徴は、「自分のアイディアを大切にし、活気のあることを好み、エネルギッシュで楽しさこそ人生で、飽きっぽい」。アナライザーの特徴は、「計画的、客観的でミスを嫌い、感情をあまり表に出さない」という。

プロモーターの上司はよく「最近どう?」と突然聞く傾向がある。アナライザーの部下は正しく答えたいので、「何がですか?」と聞いてしまう。プロモーターにとって「どう?」は単なる挨拶でそこに意味はない。上司はもう少し質問の幅を狭くしてあげると、うまくコミュニケートできるという。

タイプを診断できる簡易テストも用意されていて、自身がどのタイプなのかを理解してから本を読みすすめると、面白さは倍増する(その分、自身の失敗や、気づいていなかったコミュニケーションミスがわかってしまって、一瞬オロオロしてしまうのだが…)。

とても面白い一冊である。それは、読み進めていくと、数多くの人の顔が思い浮かぶからだろう。「ああ、あの人に言ったあの一言は、彼には逆効果だったんだなぁ」「そういえば、彼女とはシックリコミュニケーションが取れないと思ったら、なるほど!」と、しみじみ実感することになるのだ。

本書は、約3時間の研修を実施するという想定で書かれてある。したがって短時間で読むことが出来、さらに、平易な文章が、その理解を十分に助けてくれている。少しでも、対人関係に悩んでいるとしたならば、まずはこの本を読んでみるとよい。目からウロコが落ちるのは、間違いないだろう。

静かなリーダーシップ

【著者】ジョセフ・L・バダラッコ【監修】高木晴夫【解説】渡邊有貴
【訳者】夏里尚子【出版社】翔泳社
【発刊年月】2002年09月06日
【本体価格】2,200円【ページ数】232p【ISBN】4-7981-0261-X

困難で重要な人間の問題のほとんどは、社内、社外を問わずトップのだれかによる速やかで決定的な方策によって解決するわけではない。重要なのは、脚光とはほど遠い人々が行う、慎重で思慮深く実践的な小さな努力である。すなわち、世界を動かして変革するのは、静かなリーダーなのだ。
本書 見返し より抜粋

日本の経済が悪化していく中で、世間は、熱い思いをもった坂本竜馬のようなリーダーが出てくることがカンフル剤となると信じて止まない。しかし、本書によると、それはどうも違うらしい。アンチ・ヒーロー型のリーダーシップが、今ひそかに注目されているというのだ。

本書では、「静かなリーダーシップ」とは、どういう性質なのか、また、どういう要素をもっていなければいけないのか、仕事で起こる問題に、どう対処すべきなのかを、著者が、4年間かけて研究した実例をあげて、詳しく説明している。

静かなリーダーとは、「忍耐強く、慎重で、段階を経て行動でき、犠牲を出さずに、自分の組織、周りの人々、自分自身にとって正しいと思われることを、目立たずに実践している」という。「ヒーロー型リーダー」が、我が身を顧みずに周囲を助けるというそれとは、実に対照的であるらしい。

例として、あるミッションを与えられた時、時間を費やすという行為は、自分のそれまでの経験のなさを露呈し、一見頼り無さそうにも見受けられれるが、そうではないとしている。混乱した今の世の中では、将来を予想することはとても難しく、即決は、それだけでリスクを背負うことになるという。

そこで「静かなリーダー」は感情的にはならず、何とか決断を遅らせ、周りの人間の知識や技術を取り入れることで、最善の策が見え始めるというのである。そう、費やすのではなく「稼ぐ」のである。まさに、即断即決がウリの、今までのリーダーとは、全く異なるイメージなのだ。

読み進めるうちに、不思議な感覚に襲われる。今まで素晴らしいとされていた「引っ張る」タイプのリーダーよりも、静かなリーダーの方が、良いのではと、思えてしまう。

混沌とした現在のビジネス社会だからこそ、日常生活やビジネスの意志決定を、慎重で、正確さを期し、みんなで幸せになれる環境や状況をつくり出してくれるだろう、静かなリーダーを、時代は求めているような気がする。

ネガティブな部下とどうつきあえばいいのか!

【著者】ゲーリー・S・トプチック【訳者】有賀裕子
【出版社】ダイヤモンド社【発刊年月】2002年02月28日
【本体価格】1,400円【ページ数】257p【ISBN】4-478-71048-1

<独裁者>の思うツボにはまってはいけない。こうした相手には、横暴な言動によっていかに業務を停滞させているか、あるいはまわりの者がどれほど気分を害しているかを諭し、正しいコミュニケーションの仕方を教える必要がある。こちらも強い態度に出ることだ。
本文 43p より 抜粋

仕事を一生懸命していてもバラ色の時代ではない今、前向きに頑張ろう!と思いつつも、どうしても「ネガティブ」な心持ちになってしまいがちだ。しかし、ネガティブはウィルスのように伝染するらしく、放置していると職場中に蔓延してしまう厄介なものらしい。

本書は、誰もがいつ襲われるかわからない恐怖のウィルス「ネガティブ」に対する様々な処方箋を用意している。ネガティブを治療することによって、明るく生産的な職場を作り出し、自分自身、同僚、そして顧客までもハッピーに、そして業績をアップする「好循環」を作り出そうというのだ。

まず最初に、個人やチームといった小さい単位でのマイナス思考に言及している。ネガティブ思考な人を14タイプに分類、それぞれを分析している。独裁者・完璧主義者・変化嫌い・つむじ曲がり・スピーカーなどと名づけられたそれぞれのタイプに、自分や周囲を当てはめると、かなり面白い。

次にネガティブ思考を克服するための簡単なヒントが30用意される。まだそれほど深刻ではないネガティブ思考に効果があるそうで、まずはネガティブの原因を見つけ出す、というところから、証拠写真を撮る、ムチ打ちの罰を与えるなどの興味深い(?)モノまで用意されている。

さらに本書は、会社全体などの「大きな組織単位」でのマイナス思考を撃退するための処方箋を用意する。組織全体がマイナス思考に陥る原因を「ある変化」「能力と裁量のアンバランス」「望ましくない組織のきまり」にあるとし、それらを改善するノウハウを提供している。

それぞれのノウハウが、ケーススタディにそって紹介されているので、非常に理解しやすい。読みすすめるうちに、自分自身に、また、同僚に、思い当たるケースがあり、思わず膝を打ってしまうことも。

アメリカでの例なので、日本の実際とは多少そぐわない場合もあるが、それは簡単にアレンジすることで対応できそうだ。とにかく「ネガティブ」が職場にもたらすマイナスを認識し、それに対処するためのノウハウ獲得に最適の一冊であることは間違いなさそうだ。

タイトルどおり「ネガティブな部下」を持つ上司は、職場にウィルスが蔓延しないうちに、すぐにでも手に取ることをお勧めする。また、自分自身がネガティブな思考をしがちなあなたも、一読すべきだろう。自分が感染源にならないためにも…。

なぜあなたのチームは力を出しきれないのか

【著者】パトリック・レンシオーニ【訳者】仁平和夫
【出版社】日経BP社
【発刊年月】2002年03月18日【本体価格】1,400円
【ページ数】202p【ISBN】4-8222-4268-4

現実をみると、ほとんどのリーダーは、組織をかしこくすることに時間とエ ネルギーの大半を費やし、組織をすこやかにすることにはあまり熱がこもっ ていない。ビジネス・スクールやビジネス誌が何を重視しているかを考えれ ば、無理もないことである。しかし、組織が健全であることの、しなやかで 強い特性を考えると、これは残念なことである。
本文 8pより 抜粋

自身がマネジメントを任されているチームは、最高のパフォーマンスを発揮している、と胸を張って言える管理職など、ほとんどいないだろう。なぜ自分のチームは力を出し切れていないのか、その疑問に答え、解決策を提示してくれるのが本書である。

同じ時期に、同業種の会社を設立した、自分とほぼ同等の能力を持つ(むしろ自分の方が勝っている)同級生が経営するライバル社は、すこぶる評判が良い。業績そのものに違いはないが、それ以外の部分は勝ち目がない。自分は相手の会社が気になるが、相手は自分の会社に関心すら示していない。

一方的にライバルと目されていた相手にも悩みはあった。忙しすぎたのだ。自らの時間を取ることが出来ず、会社を売却しようかとも考えたが、生きがいでもある会社、踏ん切りがつかなかった。そして、ほんとうに会社にためになることを1つだけやるとすれば、それは何か? それだけを考えた。

考えに考え抜いて黄色いリーガルペーパーに記したのはたった4つの指針。その指針に則って行動するようになり、会社は急速に素晴らしいものになっていく。そのイエロー・リストにはなにが書かれているのか。秘密にしていたわけではないが、本当に知る人はごく限られていた。謎めくリスト…。

そう、本書は読み物仕立てになっている。葛藤するライバル会社、よき組織を作った会社に現れる異分子、そしてその馴染まなかったものが取った次の行動、小説のようにワクワクする文章ではないけれど、これはこれでかなり面白い。先が気になりページを慌ただしくめくってしまう。

ネタバラしをすると、イエロー・リストに掲載されていたのは、次の4つの事柄だった。○経営チームの結束を強める。○組織の透明度を高める。○決まった事を周知徹底する。○人事で組織の透明度を支える。そう、リーダーが第一にするべき仕事とは、組織を健全にすること、それだけなのだ。

これはカンタンなようでいて、なかなか難しい。組織を健全化することは、組織のトップをおいて他には出来ないことである。が、小さな組織のトップ(=中間管理職)は、大きな組織の一員であり、すべてが自分で決められるわけではないからである。しかし、タメにならないということ、ではない。

組織を健全化するためのノウハウが、本書にはたくさん盛り込まれている。リーダーたるもの、可能な限りその命題に取り組んでみるべきだろう。不完全ながらも「強い」チームが出来上がった時、あなたはマネージャーとして次のステップを踏み出しているはずだから。管理職は必読です。

やればできるじゃないか、君。

【著者】大山弘子/瀬田かのこ【出版社】アスペクト
【発刊年月】2002年02月26日【本体価格】1,300円
【ページ数】197p【ISBN】4-7572-0916-9

──部下を笑わせるというのは、部下との人間関係をうまくやっていくうえ で、上司が身につけなければならないスキルだと思います。
──笑いがスキル、ですか?
──上司はタレントでなければならないんです。会社は楽しくなければダメ ですからね。景気悪いし、不安ばかりですから。
本文 194pより 抜粋

サブタイトルに「ダメ部下を大化けさせる64の秘訣」とある。また、腰帯には「ビジネスコーチングの基本から裏技まで徹底解説!」とある。なるほど内容的にはその通りではある。しかしこの本、そんな理屈は一切抜きにして、相当に面白い、お勧め二重丸の一冊なのだ。

ダメな部下について、中間管理職が専門家に相談する、というスタイルを取っている。また、さまざまな相談を、ほめる・さとす・ながす・てつだう・おもんぱかる、の5つの対処法に分けて、紹介している。それぞれにわりと細かく、その効果的な接し方を解説している。

また、回答を寄せる専門家は、心理学者やビジネス・コンサルタントなど5名。それぞれが、深層心理学的には、組織改革的には、人事戦略的にはと、さまざまな観点からアドバイスを行う。解決に向けての視点が1つではないことが実に有効であることが、本書を読めばわかる。

ダメ部下のダメっぷりもかなり笑える。クレームの電話が鳴らないように電話線そのものを抜いて居眠りする部下、お色気巨乳が自慢の部下、無断欠勤した理由を拉致監禁されていたと日焼けした顔でいう部下、メールでむかつく文章しか書けない部下…と、まさに、笑いの殿堂である。

それに対して、回答をする専門家の意見もかなりユニークだ。お色気巨乳部下の相談に対しては、自分はその上司がうらやましいから何もしない、とわけのわからないと言い、拉致監禁されていた部下には、自分もこの間アマゾンに行って…と同じスケールで嘘を言え、と推奨したりする。

当然まともな回答もある(というかむしろこちらの方が多いのだが)。部下が期待通りの動きをしないときの対処法が、実に明快に示されている。例えば、仕事について与えられた役割を明確にしてやること、本人の適性に配慮すること、自分の指導方針も疑ってみることなど、参考になることは多い。

正直に言おう。本書が本当に役に立つのかどうか、書評担当者の私にも太鼓判を押す自信は、ない。しかし「面白い」本であることは、間違いない。とんでもない部下を抱えて悩んでいる、という中間管理職には、必読の一冊だろう。世の中もっと凄いのがいる…と慰められるかもしれない(笑)。

誰でもわかる重職心得箇条

【著者】佐藤一斎【解説】中村安宏【出版社】平凡社
【発刊年月】2001年12月26日【本体価格】525円
【ページ数】61p【ISBN】4-582-61003-X

重職たるもの、勤向繁多と云う口上は恥ずべき事なり。仮令世話敷とも、世話敷と云わぬが能きなり。随分手のすき、心に有余あるに非れば、大事に心付かぬもの也。重職小事を自らし、諸役に任使する事能わざる故に、諸役自然ともたれる所ありて、重職事多になる勢あり(第八条)。
本書 44p より抜粋

著者・佐藤一斎は1772年生まれ。江戸後期の儒学研究者である。見返しの著者紹介によると、ゲーテなどと同時代の思想家であり、その思想は儒学をベースにしつつもモダンで実践的なものだったという。門下生に、渡辺崋山、佐久間象山、横井小楠がいるそうだ。

あるエピソードが本書をメジャーにした。わが国の迷える外務大臣が、吼える総理大臣より「読みなさい」と渡された(本書そのものではないと思われるが)とされており、永田町発の話題の書とされている。その内容とは、管理職に対してマネジメントの真髄を説く小冊子である。

本書に書かれている管理職の心得はたった17。見返しに「人を使う立場の人間の心得が、わずか十七条で書き尽くされている。これ以上のものは必要なし。」とされている。新書版に大きな活字で組んでたった10ページ。しかし読むとわかる、本書は実に素晴らしい。その一部をここで紹介しよう。

第二条・自分の好みでない部下こそ尊重して使う。第四条・前例や規則にとらわれてわいけない。第八条・忙しいといってはならない。第十条・目先のことにとらわれてはならない。第十三条・部下同士の調和に心を配れ。第十六条・公開すべき情報は公開せよ。読めば気づくことがある。今と同じだ!

冒頭で引用した第八条、管理職は忙しいと言ってはならない。忙しいと大事なことを見落としがちだ。忙しいのは部下にきちんと仕事を任せていない証拠で、仕事を任せてもらえない部下は一層仕事をしなくなり、管理職はますます忙しくなるよ、と戒めている。このような「当たり前だけれども(何故か)出来ていないことで、やるべきこと」が、本書には記されている。

今から二百年以上も前の学者の言葉が、今のビジネス社会に最も欠けているものだと、読めば読むほど気がつかされる。その言葉たちが色あせないのに驚かされるばかりか、二百年前も今も、管理職というものに求められるものは「同じ」なんだなぁと、妙な感心もしてしまうこと請け合いである。

本書、は原文とは別にわかりやすい「現代語訳」が掲載されている。サイズも手ごろ、ボリュームもちょうど良く、通勤の電車の中でも手軽に紐解ける一冊である。繰り返し何度も読んで、自分のものとされることを強くお勧めする。管理職のあなたにとっては、間違いなく座右の一冊になるだろう。

スモールビジネスマネジメント

【著者】デブラ・クーンツ・トラベルソ【訳者】阪本啓一
【出版社】翔泳社
【発刊年月】2001年03月15日【本体価格】1,600円【ページ数】421p
【ISBN】4-88135-867-7

次にいくステップとして、見栄えのする住所にオフィスの引越しをするか、メールボックス(訳注:私書箱。アメリカの大きな会社は持っている)を借りてみるとよい。そんなことをしては不誠実でうそつきになるのだろうか。いや、スマートなイメージ創りは、何より重要なのである。
本書 14p より抜粋

昨今、企業トップが社員に望む資質として「経営者的視点を持つこと」をあげるケースが増えてきた。しかし、少し考えてみればわかるが、それを身に付けることはとても難しい。そもそも、経営者的視点とは何なのか、漠然としすぎている。なにをどう身に付ければ良いのだろう。本日はそのヒントを少しだけ。

今回取上げる「スモールビジネスマネジメント」は、大企業なんかに負けないための超実践的ガイドブックと銘打たれた、スモール・ビジネス経営者のためのハウツー本である。賢明な読者諸氏はもうお分かりになっただろう。そう、小さな会社の経営者に必要なものを学ぶことで、経営者的視点について考えてみよう、というアプローチである。

インターネットが普及し、アイデア(とそれを実行する行動力)さえあればビックボーイ(=大企業)と互角に渡り合える時代にはなった。しかし、現実的には、小さい企業への世間の視線はまだまだ厳しく、顧客の信用を勝ち取るために、また、ビックなイメージを作り上げるために、スモール・ビジネスの経営者たちは、並々ならぬ苦労をしているようだ。

その苦労を解消するためのノウハウが、本書には詰まっている。例えば、社のイメージを向上させるためには「完璧な住所と社名」を選ぶことだとし、また、ゆるやかなアライアンスを組むことで「従業員を雇うことなく大きいというイメージを作る」としている。その努力は涙ぐましくもあり、また、かなり面白い読み物でもある。

さらに、電話の利用法やレターの活用術など、ルーティンワークを磨きこむことによって、会社としてのイメージ(=大企業なみの信用)を得るノウハウも提示している。小さな企業の経営者は、数字(=アカウント)以外に、企業そのものの実態を作り上げるために、小さな努力を積み重ねているのである。これは、経営者的視点以外の何物でもない。

ここまででお分かりかと思うが、これらのテクニックは、すべてのビジネスパーソンに応用できる。例えば、新規の得意先を開拓するために、そこからの信用を得るためのテクニックが、「スモールビジネスマネジメント」の中に詰まっているのだった。なーんだ!という感じだろうか? しかし、この視点が大切であることを、実は忘れてはいませんか? まずはご一読を。

強い組織をつくるための 小さなヒント

【著者】ドミニク・グロシュー【訳者】片桐克博
【出版社】KKベストセラーズ
【発刊年月】2001年04月10日【本体価格】1,100円【ページ数】173p
【ISBN】4-584-18601-4

85. もし、あなたがいつも夜遅くまで仕事をしているのなら、どうしてそんなに帰るのが遅くなるのか、理由を3つ考えましょう。86. そして、その問題の解決方法を考えて、すぐに帰りましょう。
本書 156のヒントより 抜粋

最近のビジネス書のトレンドとしてあげておきたいキーワードのひとつとして「チーム」があるだろう。組織をいかに上手く動かして、ビジネスとして成功に導くのか、そこに存在するメンバーとリーダーの役割を、コンパクトにまとめた本書を、今回は紹介したい。

あなたは、新しく編成されたプロジェクト・チームのリーダーで、チームを成功に導く義務をおっている。また、任された部下たちが思うようなパフォーマンスを見せないことに、苛立ちを感じています。そんなあなたに、必ずや有益なヒントを与えます。…本書の使い方というページには、そうある。そしてその通り、ハウツーではなく「きっかけ」が集められている。

冒頭にも抜粋したようなヒントが156用意されている。著者の国フランスでは、このような箴言集はよく出版されて読まれているらしい。なるほど、どれも短い文章ではあるが、そのささやかな言葉の中に、心に響くメッセージが用意されている。そのメッセージにはすべて「自らの組織がよりよい方向に活性化するために」どうすればよいかという視点が盛り込まれている。

まずにこやかに微笑みましょう、といった、ビジネス生活習慣的な要素も多数あるが、それらは、組織が強くなっていくために、リーダーやメンバーがしなくてはいけない「他人とかかわるための行動規範」のようなものになっている。それを個人主義の徹底したフランス人が書いている、ところも考えればなかなか面白いのだが…。

本書は、部下に自分の気持ちを伝えることを苦手としている若いリーダーに特にお勧めしておきたい。「部下が自分の思い通りに動いてくれなくて」ビジネスの現場で、リーダーから頻繁に耳にする泣き言である。しかし、部下に良く話を聞いてみると、上司の言っていることが理解できない、と嘆いているケースは多い。そう、あなたの言葉、ちゃんと伝わっていないことが、チームをスムーズに運営できない原因になっていることは多いのだ。

本書に用意された言葉は、不必要なことを削り、伝えたいことだけをエッセンス化したものである。しかも、直接的な物言いではなく、伝えた相手に「気づかせる余地」をも残している。まずはよく読んで、自分にリーダーとしてなにが不足していたか、確認するのも良いだろう。必読です。

部下を愛しますか?それとも失いますか?

【著者】ビバリー・カイエ&ジョーダン=エバンス
【訳者】大川修二【出版社】産業編集センター
【発刊年月】2001年02月20日【本体価格】1,500円【ページ数】359p
【ISBN】4-916199-25-1

推測は危険。「尋ねる」ことで部下の真意を理解しよう。

-あなたにとってスターというべき従業員を満足させ、会社にとどまってもらうにはどうすればよいか。その答えを推測するのは、やめるべきだ。(中略)いつ、どこで、どのような形で尋ねるかは大した問題ではない。とにかく尋ねること……それが肝心なのだ。
本書 27p より

このメールマガジンの読者の中で、部下をお持ちの方も多いだろう。あなたは部下にとって、よりよい上司であると胸を張って言うことができますか。自信のない上司であるあなたにお勧めしておきたいのが、今日ご紹介する-部下を愛しますか?それとも失いますか?-である。

本書は「有能な人材を他社に奪われないために管理職がしなくてはならないこと」という、きわめて明快な視点で書かれている。人材のスペシャリストである二人の女性が、二年間かけ、大小さまざまな企業へのインタビューを中心とした情報収集を行った結果、得られたアイデアをまとめ上げている。そこにあるのは「人材における管理職の役割」についてのすべてだ。

例えば、尋ねる-という章では「組織にとってかけがえのない人材を引き止めるためにはどうすればよいのか」という命題に、当然取るべき行動として「なぜ、この会社にとどまっているのか?」と部下に尋ねろとしている。部下の真意を推測することが最も恐ろしいことであり、理解を間違うと、すべてが勘違いに終わるからだ。

シンプルだけど危険極まりない「尋ねる」という行為に対して、本書では、質問のサンプルとバリエーション、想定される答え、その理由などが、事細かに明示されている。痒いところに手が届く内容である。

さて、上司であるあなたがするべきことは何か…。それは、人材に対して抱いた危機感を、本書によって解決することである。先に述べた、尋ねる…から始まり、キャリアに対する考え方、家族について、よき助言者になるためには、インセンティブ、部下の健康把握にいたるまで、部下に愛されるための処方箋は、ここに用意されている。

想像力を掻き立てるエピソード。筆者が担当したクライアントの事例。有機的に本書を読み解くために設けられた参照キーやリスト。すべてが読者の理解を十分に助けるありがたい構成になっている。目からウロコが落ちてしょうがない一冊。管理職は必読ですよ。

まずルールを破れ-すぐれたマネージャーはここが違う

【著者】マーカス・バッキンガム&カート・コフマン
【出版社】日本経済新聞社
【発刊年月】2000年10月20日【本体価格】1,600円【ページ数】397p
【ISBN】4-532-14867-7

「人を選ぶ、要求を設定する、動機づけをする、そして育てる」。これが「触媒的」役割のなかで核となる四つの行動だ。企業のマネージャーにこの役割をうまくこなす能力がなければ、そのシステムの完成度がどんなに高くても、またリーダーがどんなにすばらしくても、その企業は次第に崩壊へと向かうだろう。
本文 79p より

キャリアを積み上げていくと、何時かはマネージャーというポジションが目の前にやってくる。あなたをマネージャーに据えようとする会社は、その役割に必要なスキルを、研修などを中心として、様々な形で提供することだろう。しかしそれは、往々にして「組織の長(=単なる管理職)」にとって必要な知識を提供するに過ぎない場合がある。

本書では、あるセクションの長ではない、チームをまとめ上げて、最高の成果を目指す「マネージャー」になるための、明確な道しるべを用意してくれている。優れたマネージャーへの、いくつものアイデアは、ギャラップ社(アメリカの有名調査会社)に勤める著者たちが、100万人の従業員と、8万人のマネージャーへのインタビューがベースになっている。

その内容はわかっていることのようで、気が付いていないものが多い。仕事に取り組む際には、きちんとしたスケール(=判断材料や基準)を持つ必要があること。仕事に適した才能を選び出す必要があること。目標とする成果をきちんと指し示すこと。部下のモチベーションを維持する手段はインセンティブだけではないこと。尊敬の念を持つ職場の土壌づくりが必要なこと。どれもこれも、当たり前すぎるかもしれない。しかし、意外に見落としていることが多いことに気が付くだろう。

本書によると、経験や知識、やる気で部下を選んだり、部下が弱点を克服するように手助けしたり、正しい手順を定めた上で仕事をさせてはいけない、のだそうだ。腰帯にこうある。-どうすれば部下の才能を引き出せるか?-。そう、優れたマネージャーとは、部下の才能を自在に操ることが出来る人なのだ。カンタンなようで、これは結構難しい。

タイトルは何だか型破りであるけれども、内容は実にオーソドックスなものである。組織を活性化し、目的に向かって最短距離で走り抜けるためのノウハウが、ここには詰まっている。まだマネージャーでないあなたにも、自らが無駄のない動きをするために、一読を薦めたい。マネージャー的ポジションにいる方は、必読である。

なぜ日本企業では情報共有が進まないのか

【著者】田坂広志【出版社】東洋経済新報社
【発刊年月】1999年2月10日
【本体価格】1500円【ページ数】211P【ISBN】4-492-55340-1

これからの企業情報化の嵐のなかで生き残れないのは、「パソコンのできないマネージャー」ではなく、「豊かな知識や深い知恵を持たないマネージャー」であるということなのです。
同書 P 25から引用

「電子メール導入、フラット組織実現」 というお題目で、社内の情報化を推進し、「中間管理職不要論」が唱えられるようになって久しい。しかし、本当に、中間管理職は不要なのだろうか?

今回紹介する『なぜ日本企業では情報共有が進まないのか』では、この「中間管理職不要論」に対し、冒頭で引用したメッセージを投げかける。

IT化や、情報化が声高に叫ばれる昨今。情報化が実現するのは、より高次元なデータマネジメントであり、それは最終的には、ヒューマンマネジメントなのだ、という本書の言葉を私達は十分に考える必要がある。

では、そのような「ヒューマンナレッジ」を身につけるために私達はどうしたら良いのだろうか。筆者が説く7つの心得はそのための指針を与えてくれる。「情報機器の扱いではなく、情報の扱いに熟達する」「データ、ナレッジ、ノウハウを区別して扱う」「膨大なデータのなかから直感的に要点をつかみ取る」等は、「情報」に対する認識を根本から変革するものばかりだ。

「こころの生態系」 のマネジメントの価値を提案する本書。現在管理職についている人のみならず、経営者、そして情報化をクライアントに提案するエンジニアの方をはじめ全ての企業人の方に是非手にとっていただきたい。

チームの研究

【著者】竹内靖雄 【出版社】講談社 【発刊年月】 1999年 3月
【【本体価格】660円 【ページ数】p222

チームができる前に、まず個人がある。「はじめに個人ありき」で、一人の個人があるプロジェクトを遂行しようとする。しかし、自分一人ではそれが不可能、ないしは困難である場合には、自分とは異質の能力をもった個人を何人か見つけて分業と協力の関係を作ればうまくいくかもしれない。そこで個人が集まってチームが出来るのである。チームはあくまでも個人主義から出発し、個人主義を超えることを狙って作られる。
同書 P15から引用

私達が働く企業という場所は人の集まりだ。だから、人を上手に動かせる人が能力を発揮することが出来る。有名企業の社長によるマネジメント論などは数多くあるし、多くの人が実際に読んでいる。しかし、社長という立場での経験は誰にでも出来るものではない。

それに対し、チームの運営、マネジメントは多くの管理者やビジネスマンが経験し実践していることだ。管理者でなくとも、チームの一員としてプロジェクトを遂行していくことはほとんどのビジネスマンが実践している。チームがうまく機能するかどうかで、チームの構成人員のアウトプット量も作業効率も大きく変わるのだから、企業においてチームは非常に重要なものだ。

しかし、このチームという切り口で組織やプロジェクトを捕らえなおす試みは、あまりされてこなかったように思える。マネジメントの書を開けばチームマネジメントの方法論が解説されているのだが、「チームとはどういったものなのか」という部分は案外説明されていないようだ。それは、チームというものが個人に依存すると同時に個人を超えたものであり解説しづらいということに起因するのかもしれない。そんな中、今週取り上げる『チームの研究』という本書は、講談社現代新書から出ているためコンパクトな1冊ながらもチームに関して多くの示唆を与えてくれる好著だ。

「チームは個人からなる」「成功するチームの条件」「適切な目的がなければ成功もない」という「チームとは何か」という第1章。項羽、劉邦のチーム、ナポレオン、そして川上監督時代の巨人など、ユニークな切り口からチームを取り上げる第2章。そしてチームをいかに作り上げるかを解説した第3章(仲間がつくるチームや、特殊技能の持ち主を使うチームなどはユニーク)からなる本書はチームマネジメントに関わる人のみならず、チームメンバーとして働くすべての人に示唆を与えてくれる。

自分のチームメンバーとしての特性を知り、パフォーマンスをアップさせることも出来そうなこの1冊。是非手にとり、あなたの所属するチームを勝利に導くヒントを掴んでいただきたい。

アタマで話す技術

【著者】八幡紕芦史【発行】PHP研究所
【発行年月】2003年11月05日 【本体価格】1,300円
【ページ数】173p 【ISBN】4-569-63181-9

聴き手が眠るのは、聴き手の問題ではない。話し手であるあなたの責任だ。
あなたの話は寝るに値したわけだ。

本書 P33 より抜粋

ビジネスにおけるあらゆる場面で、人と人とのコミュニケーションは存在する。思考を言葉という“記号”に変換し、相手に伝える作業は時として誤解され、争いごとにさえ発展する。だからこそ新社会人は敬語を勉強するし、ビジネスマナーや電話応対の練習を徹底してさせられる。

自社の商品を売り込んだり、企画の主旨を説明し説得するケースに関してはさらに上のレベルが求められるだろう。単に適切な言葉を選択し伝えられたとしても、受け手側が身構えて売り込まれないようにしたり、そもそも話を聞くことに面倒くさがる聞き手は多いはずだ。

そこで本書を手にとっていただきたい。「お客様の前では頭の中がグチャグチャになってしまう」「上司に対しては言いたいことが言えない、反論の仕方がわからない」など、会話や説得の場面で必ず経験する悩みを解決してくれるだろう。

本書によると、前述した悩みをお持ちの方は「口で話す」癖や傾向があるらしい。「口で話す」というのは、どうやら“何の戦略も立てず、準備不足のまま会話をしてしまう”ことのようだ。アイデアを思いついたまま羅列してみたり、非論理的で理解に苦しむ会話の組み立て方をしているということ。

そこで会話を始める前段階として、意見の組み立て方や順序、反論や提案拒否をするときのルールが自分の中に備わっていれば、コミュニケーションに対する恐怖はなくなり、円滑に会話やプレゼンができるということなのだ。これを本書では、タイトル通り「アタマで話す技術」として紹介している。

口に出して話す前に、アタマで意見を組み立てる。例えば、プレゼンの時に「では、このソリューションの特徴を申し上げます。まず、1つ目は…、2つ目は…、3つ目は…、4つ目は…、5つ目は…」と続ける。これでは顧客が睡魔に襲われることは間違いない。いつまで続くのか想像もつかない。

そこで、話す内容を大きく3つに分けるのが“聴き手を引きつける”技なのだという。例えば話の冒頭で「理由は3つあります。1つ目は…」と始めることで話のロードマップができ、聴き手の期待を確実に高められるというのだ。これだけ見ても、会話の事前準備がいかに重要かが理解できるだろう。

本書にはこのように、“できるビジネスマン”になるためのコミュニケーションスキルがたくさん紹介されている。上司に反論する時の注意点や、部下をうまく叱る方法など、すぐに役立つ素材が並ぶ。「口で話すか、頭で話すか。あなたの評価はそれで決まる」。ぜひとも、役立てていただきたい。

喋るアメリカ人 聴く日本人

【著者】ハル・ヤマダ【発行】成甲書房
【発行年月】2003年09月25日【本体価格】1,600円
【ページ数】237p【ISBN】4-88086-153-7

コミュニケーションとは、同じ常識を前提にした者同士にとっては互いの絆を深める道具でありながら、違う前提の者同士の間では絆を分断してしまう諸刃の剣のようなものなのだ。

本書 P45 より抜粋

日本企業の海外進出、外資系企業の国内参入など、ビジネスにおけるグローバル化は拡大している。それに伴い、企業では英会話のできる人材が重宝されるようになった。そう、我々は世界中のビジネスマンと仕事をする時代に生きているのだ。

中でも、折衝の機会が多いのはアメリカだ。しかし、彼らと上手く意志疎通できないケースも多い。国の政策や、社運が左右される大事な話し合いで、意志の「すれ違い」によるダメージは大きい。共通の言語で会話をするも、相手を理解し、また理解されるのが困難なのはなぜか。

著者によると、日本人はいつも「相手の話を途中で引き継いで終わらせる」習慣があるという。そう、日本人は相手が何を話したいのか分かってしまうのだと。発言は話者だけでは完結せず「聞き手との相互補完」によって完成するということなのだ。

相手の言いたいことを先取りしてやるプロセスは「察し」と呼ばれ、互いに1を聴いて10を知ろうと努力する。この能力に長けた人は、「察しのいい人」と称賛される。ある案件について上司に意見を求めた時「それはちょっと…」と言われれば、日本人は「反対された」と思えてしまうと。

一方、アメリカでは「ハキハキ理路整然と話す人」が好まれ、口ベタな人は嫌われる。ビジネスやコミュニケーションに関する無数の自己啓発本にもそう書いてあるという。どの本もいかに話すべきかにページが割かれ、聞き手の役割については一切触れることはないらしい。

そう言われてみれば、日本の書店では「質問の仕方」や「聞く能力」的な書籍が多い。つまり、日本人の会話スタイルは「他人中心・受け身」的で、アメリカでのコミュニケーションの成否は、話し手次第(独立主義的)という傾向が強い、ということなのだ。

言語文化に関する書籍はたくさんあるが、ここまでリアルで踏み込んだ内容のものはなかなかない。読み進めていくと、「あの時、彼が変な顔をしたのは、これが原因だったのかも」といった具合に、思わず膝を打つ内容が書かれているのだ。日米の言語表現を、完全中立的な立場で紹介している。

本書では、アメリカ人を「講師型」、日本人を「聴衆型」と表現する。アメリカ人と日本人との、会話における礼儀や常識について、各々の文化的側面や言語に対する意識を踏まえながら、両者の違いを明らかにしていく。国際ビジネスマンには必携の一冊になるだろう。これは面白い。

最強の反論力

【著者】工藤浩司 【発行】実業之日本社
【発行年月】2003年08月20日 【本体価格】1,400円
【ページ数】238p 【ISBN】4-408-32195-8

反論の本質は、意見の対立による、新しい何かの創造であり、発見だ。対立するために反論するのではなく、真理を発見するために対立する。だからこそ新しい発見があり、何かが生まれるのだ。

本書 P146 より抜粋

上司から理不尽な発言を受けたとき、あなたは単に同僚にグチるだけでやり過ごしていないだろうか。それでは精神不衛生であるし、今後の競争社会の中で議論していく能力が身につかない。ある意味で、これをチャンスと思って、「反論」をするための練習を積んでみてはいかがだろうか。

本書は、言葉を用いた知的防御法を獲得してもらうために書かれたものである。著者の近著「最強の質問力」に対する「最強の反論力」。一見矛盾しているかのように思えるが、双方の“最強の”スキルを身につけることで、論理的にコミュニケーションが取れるようになるのだ。

仕事におけるコミュニケーションの中で、理不尽な発言とは付き物である。例えば、自分の人格、能力、経験、性別を攻撃してくる内容だ。「まだまだキミは甘い」や「だから女はダメなんだ」などという、全く議論にならず、こちらの思考を停止させる類のものだ。

あなたが社内会議で発言したとき、社長から「君は、まだこの業界のことがわかっていない」と言われたとしよう。この時、あなたの「最初の発言」に関しての、社長のコメントが一切なされなかったら、この社長の発言は間違っているのだという。今こそ反論の時であると。

こんな人格攻撃に対する反論の場合、あなたは「わかりました。社員は社長と真剣に議論できないということですね。残念です」と言い、社長がおかしな議論をしていることに気づいてもらうのがベストな方法なのだという。無論、あなたが客観的で現実味のあるデータを元に発言した場合のことだが。

多くの人は反論する力について「相手を言いくるめる」「定説を覆す」能力と誤解しているかもしれない。しかし著者は反論力は、相手を打ち負かし、説得するものだとは定義していない。そう、議論自体をスムーズに、話の骨子を失わずに、課題に立ち向かうためのパフォーマンスということなのだ。

最近、企業の社員採用基準として「指導力のある人」が挙げられているようだ。中小企業は無論、大企業でも徐々に議論ができる人間を求めるような社会に変わってきた。論理思考の研修を新入社員に徹底し、議論技術、特に質問やそれに対する反論の技術を育てることに、注力しているのだという。

会議などにおいて無言は暗に同意していることと同じだ。本書には、様々なケーススタディを挙げ、論理的な話し方について、詳細に解説している。何か発言しなければいけない時、その方法も列挙している。「言われっぱなしの自分を変える究極の知的防御法」を身につけることをオススメしたい。

1週間で「人が集まる人」になる

【著者】ジョン・ティンパーレー 【発行】PHP研究所
【発行年月】2003年05月02日 【本体価格】1,350円
【ページ数】239p 【ISBN】4-569-62820-6

少数の成功者達は知っているテクニックを身につければ、磁石のようにあなたのまわりに人が引き寄せられる。
本書 腰帯 より抜粋

自分のキャリアやビジネスを発展させていくために、必要な手段は「知識・技術の獲得や、目標達成のためのプロセスの設定」などと言われているが、本書では「人脈」を必要不可欠な要素として、最大限に注力することを勧めている。

つまり「重要なのは何を知っているかではない、誰を知っているかだ」ということだと。せっかくあなた個人のビジネススキルが発達していても、それを存分に発揮する環境が存在しなければ、何の意味もなさないからだ。

本書には、著者の長年の経験から確かめられた、様々なシチュエーションでのビジネス・ネットワーキングのノウハウが詰まっている。「あなたの望みをかなえてくれる人を知る」ことは、「ビジネスで最大の成果をもたらしてくれる」と著者は断言する。そのノウハウの一端をご紹介しよう。

「人を知る」ためには、(きちんと仕事をこなすことが前提になるが)人から好かれる技術が必要だ。そこで、体面でのコミュニケーションを取る時に重要視されているのが「アイコンタクト」。これは、社会学者の研究によっても明らかにされている対人スキルの手段だ。

強いアイコンタクトを保っていると、相手に「知的で抽象的思考に長けている」という印象を与えるのだという。先の社会学者の研究では、男女の雑談の中で、女性のまばたきの回数を数えるグループと、特別何もしないグループとに分けた場合、前者の方がより高い好感度と尊敬を集めたというのだ。

それは、女性の話している内容に大きな関心を抱いているように見えるからだという。男性が女性に向けた注意力とボディランゲージが好印象を残すということだ。さらに驚くことに、会話相手の目の周辺に視線を向けるのは、会話全体の80~90%程度の長さが望ましい、とされている。

確かに、そう考えると初対面の人と会話を始める時、会話を終了する時などは必ず相手の顔を見て「会話は有意義で楽しいものだった」と相手に強く印象づけることが次回の約束にも繋がるのかも知れない。

本書にはこのほかにも、相手があなたに関心をもつ話し方や質問の仕方、会議での効果的な座る位置など、コミュニケーションスキルを社会心理学的なアプローチで我々に伝授してくれる。自分のキャリアアップや転職を思いついた瞬間から本書を一読すると役に立つだろう。

質問力

【著者】飯久保廣嗣 【発行】日本経済新聞社
【発行年月】2003年02月20日 【本体価格】1,400円
【ページ数】238p 【ISBN】4-532-31033-4

質問力のない人
「問題ないな?」
「トラブルの責任は感じているのか?」
「できるのか、できないのか?」
「提案は1つに絞ってくれないか

本書 1P より抜粋

我々の会話の多くは、指示や命令など特定の場合を除き、「質問」から始まることが多い。ビジネスの場でも重要視されているコミュニケーション能力とは、実は本書で紹介する「質問力」であるといっても過言ではない。

日本では論理的な思考技術をベースとした、コミュニケーション方法の教育が不足してきた。そのために、日々の生活やビジネス、政治や外交の現場までトラブルだらけになってしまっているのだという。つまり、著者は日本人の質問力の不足が、会話のスタートから状況を混乱させているというのだ。

本書では、日常よく見かける「悪い質問」を観察し、どこが悪いのか、どうすれば良くなるのかを、いくつかの例を挙げて解説していく。例えば、ある消費材メーカーの営業マネージャーが顧客担当の一人を呼び出し、話をするケース。ここで疑問が湧かないようであれば、ぜひ本書を一読されたい。

「うちの売上実績がマズイのは、君たちのグループに原因がある、わかるよな?」「はい」「責任は感じているか?」「すみません」「年間予算を考えればこれから12月まで毎月3000万円売り上げてくれれば楽になる。できるか?」「達成できるように頑張ります」「よろしくたのむぞ」。

この会話においては、スタートから決定的に道筋を間違えているという。不振の原因を押し付けている点、イエスかノーでしか応えられない質問だ。これを本書では「二者択一思考」と呼んでいる。顧客担当も不振の事実は知っているのだから、結局は上司の自己満足に過ぎないのだ。

ここでの良質な質問とは「どんな問題が複数ありそうか、昨年は売れていた商品が、今年は低迷した原因は何か、店頭での並び方、競合商品の存在や価格、顧客属性の変化とか、考えられる限り指摘してくれないか」、というように、思いつきのレベルを脱して、あらゆる可能性を検討すべきなのだというのだ。何か問題が起こった場合、1つに起因することはないからだと。

確かに、最初の会話のように指摘されても何の解決にもならない。本人は頑張っているのだから(仕事の適性や、やる気がなければ部署からハズしているはず)、何の意味もなさないことが理解できる。

本書では、このようなケーススタディの多くを紹介し、「悪い質問」を段階的に排除していく。日常の会話やビジネスにおける課題を、「論理的に考える」トレーニングをさせてくれる一冊だ。

論理的に考える力を引き出す

【著者】三森ゆりか【出版社】一声社
【発刊年月】2002年01月11日【本体価格】1,500円
【ページ数】239p【ISBN】4-87077-169-1

言葉を使って他人に何らかの情報を与えようとするとき、あなたは相手がはっきりと理解できるように上手に話を組み立ててコミュニケーションすることができますか。
本文 6p より 抜粋

相手の述べていることを理解する、自分の意見を相手に正しく伝える、その違いを把握して接点を導き出す、お互いが満足するような結論を導き出す-このコミュニケーション・スキルの重要性を理解しない人はいないだろう。

最近のビジネス書コーナーを覗いてみると「論理的」「ロジカル」というワードが付けられた本が増えてきている。ビジネスの現場で、論理的な思考やコミュニケーションが強く求められている証拠でもある。

今回紹介する本は、コミュニケーション能力のベースを鍛えなおすために最適の一冊である。が、実はこの本、ビジネス書のコーナーにはない。本書は子育て中のお母さんに向けられたものだからだ。

コミュニケーション技術を学ぶことは、欧米においては(このフレーズは好きではないが)小さい時から行われているそうだ。一方、日本では、この類の教育はあまり行われておらず、社会に出てから、必要に迫られて学ばざるを得ない、というのが、現状のようだ。

日本人お得意の「以心伝心」では国際社会を渡ってはいけない、だから、小さいときからコミュニケーション・スキルを身に付けられるよう、親子で学びましょう、というのが、本書の趣旨なのだ。しかし、子供向けだからと言ってバカに出来ない、かなり骨太の内容である。

まず最初に「コミュニケーション・スキル」とは一体何なのか?16のスキルに分解して、そのアウトラインを説明している。多くのビジネス書は、このあたりのことは「理解しているだろう」という前提で書かれているので、基礎の基礎を叩きなおすには、ありがたいコンテンツだ。

次に子供に対する身近な言語環境を整えることを勧める。主語を大切にすること。自らの意思を伝えるために言葉を尽くすこと。子供の生活の中で、それらが身に付くための方法が紹介されている。読みすすめると、そのほとんどが、大人である自分自身が出来ていないことに気が付く。

さらに「問答ゲーム」というメソッドを使って、相手の問いに「素早くそしてわかりやすく答える」ための技術を学ぶ。回答の明確にする、ナンバーリング、それは印象なのか事実なのか、相手の意見を受け入れる・・・。子供向けの簡単な内容だが、なるほど!と膝を打つ場面は、決して少なくない。

刷数を重ねている本なので、それほど手に入れることは難しくないだろう。少し大きめの書店の子供の本コーナーの周辺に置かれているはずだ。だまされたと思って、手にとって欲しい。スーパー一押しの一冊である。

ロジカル・シンキング-論理的な思考と構成のスキル

【著者】照屋華子・岡田恵子【出版社】東洋経済新報社
【発刊年月】2001年05月08日【本体価格】2,200円
【ページ数】227p【ISBN】4-492-53112-2

ロジカル・コミュニケーションとは言葉は少々厳めしいが、要は「論理的なメッセージを伝えることによって、相手を説得して、自分の思うような反応を相手から引き出す」ことだ。
本書 2p より抜粋

ビジネスパーソンに求められる能力のうち、最も身に付けにくいものの1つに「論理的」であるためのチカラがある。単なるコミュニケーション能力を身に付けるだけでも一苦労なのに、ましてや論理的となると…そう思っている方も多いはず。そんなあなたにピッタリなのが、今週の1冊だ。

本書は、世界で最も有名なコンサルティンググループの1つである、マッキンゼーにて「エディター」というポジションに就く2人が書いたもの。この仕事、コンサルティングチームが、クライアントに提案するメッセージが、本当にわかりやすく、論理的に筋の通った説得力のある構成になっているか「検証」するのだそうだ。まあ、いわば「論理的」のプロである。

本書の構成自体は3部からなっている。まず、書いたり話したりする前の心構えが説明されている。伝えると言うことはどういうことなのか?また、説得力のないコミュニケーションに対しての共通点とはなにか?論理的なコミュニケーションのために欠かしてはならない確認ポイントを解説している。

次に、論理的にコミュニケーションを行うことについて、「論理的に思考を整理する技術」と「論理的に構成する技術」の2つの要素に分解している。その両方の技術をマスターすれば、シンプルかつ、実践的で論理的なコミュニケーションは、誰にでも身に付けられるとしている。論理的であること=生まれつきではないのだ(なんとなく思ってません?)。

まずは「論理的に思考を整理する技術」だが、話の重複・漏れ・ずれをなくす「MECE(ミッシー)」という技術と、話のとびをなくし自然と流れを作る「So What? / Why So?」という技術を紹介している。2つはコミュニケーションにおける「部品」を整備する技術である。

さらに「論理的に構成する技術」では、先ほど用意した部品を説得力あるコミュニケーションへと組み立てる「基本構造」の解説と、論理の組み立て方の「基本パターン」を解説している。ある課題に対する論理の組み立て方のパターンの適応まで紹介されていて、かなり実践的になっている。

説得力のある豊富な実例と、実際に独習を行うための問題もしっかりと完備されている。本当に懐かしの「受験参考書」のスタイルである。慣れ親しんでいる構成だけに、とっつきやすく理解も早い。この夏休み、宿題よろしくやってみてはどうだろうか。ぜひ。

アメリカ人に負けないコミュニケーション術

【著者】ジョー・コンドリル ベニー・バウ
【訳者】ディスカヴァー・トゥエンティワン編集部
【出版社】ディスカヴァー21
【発刊年月】2001年03月15日【本体価格】1,200円【ページ数】119p
【ISBN】4-88759-145-4

生産的な会議をしよう…会議には、その会議で自分は何を手に入れることができるかをよく考えて、臨むこと。あなたが議長なら、よく準備すること。(中略)会議の場では、(中略)「両者が勝ち」のテクニックを用いる。
本書 112p より抜粋

人前で話すことが得意である、人と上手くコミュニケーションが取れる、と胸を張って言える人がどれだけいるだろうか。こと、日本人にとって、スピーチやディスカッション、プレゼンテーションなどは、苦手な分野であるはず。本書はアメリカ人を対象に、それら「コミュニケーションのノウハウ」をまとめたものの訳書だが、日本人にとっても役立つツボが多数ある。

コミュニケーションに関して気を配らなくてはならないポイントが、実に簡潔な文章で100個並べられている。掲載項目を大別すると「コミュニケーションの取り方」「コミュニケーションコンテンツの作成技法」「コミュニケイターとしての気配り」となる。本稿ではいくつかを紹介してみたい。

まず「コミュニケーションの取り方」だが、人に伝えたいメッセージを確認するところから始まる。専門用語は避ける、エピソードを話の中に混ぜる、声の大きさや調子に気を配る、などの実践的なアドバイスが続く。伝えるためには聞くことであるという、気がつきにくいハウツーも押さえてあり、ここまでのコラム数38を読んだ段階で、既に自分のコミュニケーションスタイルの見直しを始めてしまうこと請け合い。

次に「コミュニケーションコンテンツの作成技法」は、メッセージを作成するための留意点が整理されている。今からスピーチする内容を「目的文」として、一文にまとめておくテクニックや、メッセージに数字や権威の裏づけをつけることで、相手の信頼感を得ること、書籍やインターネットの活用法にまでカンタンに触れている。自らのメッセージを練る時に必要なノウハウが、30のコラムに集約されている。

更に「コミュニケイターとしての気配り」には、自らのパーソナリティーをどのように演出するか、その簡単な技法…服装、笑顔、姿勢、相手に接する態度、などがまとめられている。プレゼンテーターとしての自分に不足しているものはないか、チェックするためにピッタリのコラムである。

以心伝心というコミュニケーションスタイルが崩壊しつつあると言われているが、その実、コミュニケーションのベースにある「相手のことを考える」能力が下がっているのではないのか…。本書を読んで気づくことである。自分のことを理解してもらうには、相手の立場になること。自らのコミュニケーション能力を再確認するためにも、一読を薦めておきたい。

ビジネス交渉と意思決定

【著者】印南一路【出版社】日本経済新聞社
【発刊年月】2001年03月09日【本体価格】1,700円【ページ数】237p
【ISBN】4-532-14876-6

交渉は意思決定の連続である。適確な戦略的意思決定を行うことができれば交渉に成功する。
本書 まえがき より

お決まりのフレーズだが「日本人は交渉事が下手である」と言われている。阿吽の呼吸、よく言えば控えめ、優柔不断など…国民性に関した理由はいくつかあるのだろう。実際は、交渉という教育が行われてこなかったために、相手と渡り合う術(すべ)を持っていない、ということに尽きるだろう。自身は交渉事が苦手である、そんな自覚のあるヒトに、この一冊がお勧めだ。

今までの「交渉に強くなる」と銘打った本の多くは、態度や服装といった見た目の話から、相手の心理状態を見るといった難しいものまで、交渉=駆け引きとしたものが多かった。本書と類書との決定的な違いは、交渉をメカニカルに捉えていることに尽きるだろう。「ビジネスは交渉である、交渉は意思決定の連続だ」という視点から、優れた意思決定の技法を提示している。

まず、交渉とは何か、基本的なメカニズムを解説している。交渉に関する誤解として、「駆け引きではない」「経験のみでは十分ではない」「術ではない」「普遍的な交渉戦略はない」「生まれつきはない」の5つを挙げる。いずれも、交渉とは「そういうものだ」と思っていたことだ。そして、交渉における押さえておくべき概念が、わかりやすい例を引いて紹介されている。

さらには、交渉の戦略と戦術、戦略的ビジネス交渉と、交渉の実際を細かく解説している。実際的な例が引かれてレクチャーされているというスタイルではなく、セオリーが明快なモデルとして提示されていることから、知的好奇心を充足させる内容に仕上がっている。また、きわどいテクニックと称して、合法だが倫理的な交渉術にも触れていて、ちょっとしたスリルもある。

本書を読んでいると、交渉に関しての知識を得ることは、個人のビジネススキルを向上させるというポイントだけではないようだ。以心伝心のビジネススタイルでは、どう考えても対応できないスピード感を、今のビジネス社会は必要としている。そのためには、不明瞭さを排除した「新しいコミュニケーションスタイルの確立」が、これからは必要であると教えてくれている。

ビジネスにおける「戦略的意思決定」のエッセンスが「交渉」というキーワードの元に、たっぷりと詰まった一冊である。全体的に固めのトーンが、読みにくい印象を与えるかもしれないが、さすがに論旨は明快で、シンプルな分だけわかりやすい本に仕上がっている。頭の整理のために一読を薦める。

なぜこの店で買ってしまうのか-ショッピングの科学

【著者】パコ・アンダーヒル【訳者】鈴木主税【出版社】早川書房
【発刊年月】2001年02月28日【本体価格】1,800円【ページ数】348p
【ISBN】4-15-208335-2

人間が何かを買う必要があるときだけ店に入るのだとしたら、そして店では必要なものしか買わないのだとしたら、経済は破綻するだろう。(中略)われわれの調査が証明したところによれば、買い物客は店にいる時間が長くなるほどたくさん買う。客が店内に滞留する時間は、その場がいかに快適で楽しいかによる。
本書 39ページ より

この本に書かれていることは、ショッピングに関するさまざまなセオリーである。それは、徹底したフィールドワークで見つけ出された、それこそ、消費者である私たち自身も気がついていなかった、私たちの「購買行動」を赤裸々に暴いているのだ。

例えば、狭い売り場でお客の「お尻が他の客にこすれた」だけで、こすられた側の客は、その売り場を立ち去ってしまう。また、お客が一番に目にするだろうと思っていた「入り口」に告知を施しても、通り過ぎるだけの場所なので、実は効果なし。本書には、こんな今まで知らなかった「ショッピングゾーン」の謎が、たくさん詰まっている。

とても面白い。読後のとても素直な感想である。マーケティングやセールスプロモーションの仕事についている方は、この本を読まなくてどうする!という感じの一冊である。しかし、そんな仕事に就いていない貴方にも、この本はぜひお勧めしておきたいのだ。

本書の目的は、それらの現象を整理することで、「商品化計画から商品の陳列・販売促進にいたる小売りの店づくり」と「見落としがちな顧客の行動と思考パターンへの対応」、「変化する顧客のニーズへの対応」を明らかにすることだ。しかしその過程で、あらゆるビジネスパーソンが見逃せない、キーワードがある。それは「科学的思考」である。

筆者は小売業界の問題点として、データを集めることは得意だが、活用することが苦手である、というポイントを指摘している。集めたデータを、まずはよく見ること、そして気づくこと、さらに想像力を働かせること。そして得られる「目からウロコ」の視点は、そのプロセスとともに、あらゆる仕事に役立つに違いない。

翻訳も、類書にまで目を行き届かせたであろう丁寧さで、とても読みやすいものになっている。専門的な言葉がわからなくても、一切心配はない。実にすらすらと楽しめる一冊に仕上がっている。肩肘張らずに、新鮮な驚きをたっぷり味わってほしい。膝を打つ場所が多いこと請け合い。

あなたの魅力を演出するちょっとしたヒント

【著者】鴻上尚史
【出版社】講談社
【発刊年月】2000年11月20日【本体価格】1,400円【ページ数】230p
【ISBN】4-06-210481-4

感情にも、教養があります。正確に言えば、感情に、教養のある人とない人がいるのです。教養の定義を感情に当てはめれば、「感情を知っていてそれを有効に創造的に使える」ということになります。そして、感情の教養がある人は感情に関して、魅力的で、豊かな表現ができる人なのです。
本文 25pより

ビジネスにおけるスキルアップ読本といえば、語学力であったり、経済や経営の知識力強化、マネジメントやプランニングのノウハウ習得といったところがポピュラーなところだろう。さらに、メンタル面でのトレーニングを促すものや、服装などの外見の演出をレクチャーするものもある。

有名演出家の手による本書は、そのいずれにも分類されない、「自分の肉体を演出する」という視点から書かれたユニークな一冊である。鍵になるのは「感情」「声」「体」「言葉」の四つ。顔や髪型、服装のように、この四つの鍵にも気を配れば、もっと自分が魅力的になれるというのだ。

プレゼンテーションの場で、いかに魅力的な商品であっても、その商品のよさを伝える人が、伝えるための技術を持っていなければ、その商品の魅力は半減してしまう。また、その技術とは、実は、自らの「体」を演出することなんだ、ということが本書では述べられている。着眼点はユニークだし、実際、これからのビジネスパーソンに必要なスキルであることは間違いない。

例えば「感情」について。本書では、感情も服装や髪型などと同じく、人に伝わるものである、という前提から、感情についても、きちんと演出するべきである、と説く。その上で、感情を「喜怒哀楽」の四つのスケールに分けて、自分の感情の持ちようを客観化することを促す。さらに、泣いたり笑ったりするための、演劇的な技法を紹介、感情をコントロールするためのスキルを教えている。

日ごろから、(演劇人にも、非演劇人にも)ワークショップというスタイルで、このようなレクチャーを重ねてきている筆者であるから、一つ一つのプログラムが実に練れている。共感を呼び起こす実例、頭で理解させる分析、そして容易に行えそうな実践、とそれぞれのパートが、平易な言葉で綴られている。わかりやすいことこの上ない。

タイトルだけを見ると、自己啓発本に近い印象を受ける。書店によってはビジネス書のコーナーにはないかもしれない。しかし、1度手にとりご覧になることをお勧めする。自分を変えられるのは自分自身だけだから。必読!

リクルートのナレッジマネジメント

【著者】リクルート・ナレッジ・マネジメントグループ
【出版社】日経BP社
【発刊年月】2000年11月17日【本体価格】1,500円【ページ数】295p
【ISBN】4-8222-4209-9

ビジネスの社会でいまもてはやされていて、こむずかしい理論が必要そうなナレッジマネジメントも、リクルートがやったらこうなりましたということを、これからご報告します。
まえがき より

元祖ベンチャーとも言えるリクルートは、ネットワーク関連を中心とした起業ブームの中、人材供給源として注目されている。本書では、たくさんのキーパーソンを生み出す、リクルートという組織の強さを、ナレッジマネジメントをキーワードにして、紹介している。

ナレッジマネジメントという概念、意外と手強い。所有しているノウハウの水平展開や、それを実現するためのシステムの話に目がいってしまうが、実際は、それだけでビジネス社会で生じた問題は解決できない。そのシステムを支えるための「知識創造」という活動が不可分である。リクルートという会社は、その二つを上手く融合させている。本書では、そのあたりの具体例が豊富に盛り込まれ、他のハウツー書と一線を画している。

営業が喜ぶためのサポートシステムを開発していったら、そこで必要とされていることはナレッジマネジメントであると気が付くくだりや、ナレッジマネジメントをカタチにしていく過程そのものがナレッジ化していき、それが結果的に最大に成果になるところなどは、走りながら考えていく企業の真骨頂を見せている。読んでいて、とてもワクワクして面白い。

また本書の主役は、20代30代のビジネスマンであることに着目したい。決して、トップダウンによって、経営者のリーダーシップによって、ことが成し遂げられていないところにも、他の本との違いを際立たせている。

自らのビジネス環境のために、仮説を立て、会社を説得し、予算を取って、周りを巻き込む。その自らの身の回りを整備する作業がジョイントすることで、会社全体が再構築されていく。リクルートという組織の強さの一端を表している、と同時に、すべてのビジネスマンが身に付けておきたい、環境整備のノウハウが、そこには隠されているハズだ。

まえがきの一文は、端的に本書の内容を言い表している。時系列で書かれた内容はつまみ読み出来ないが、その痛快さによって、するっと読めるハズ。若いマネージャーたちには、特に一読をお勧めしたい。

ブランド・リーダーシップ

【著者】デビッド.A.アーカー【訳者】阿久津聡
【出版社】ダイヤモンド社
【発刊年月】2000年10月05日【本体価格】2,800円【ページ数】443p
【ISBN】4-478-37315-9

ブランド・リーダーシップとは、戦略とビジョンを備えたブランド構築概念である。短期的な収益を目指したブランド戦術を志向するのではなく、長期にわたって絶対的な資産(エクイティ)となるブランドを目指し、複数の市場や製品を統合するブランドの体系化を図る。さらに複数のブランド間のシナジー効果とレバレッジ効果を最大化し、マーケティング戦略を超えた企業資産としてのブランド戦略である。

食品会社のカップ麺開発者が、嘆いているのを耳にしたことがある。「味だけなら、好みを別にして、後発の商品のほうが絶対に美味しいはず。でも、カップ麺の原型である、日清食品のカップヌードルを、超えることが出来ない」と。

新しい商品が並んでいる印象を与えるコンビニエンスストアでも、幅を利かせているのはカップヌードルだ。サイズや味のバリエーションも完備。売れない商品は排除されていくコンビニにおいて、無類の強さを発揮している。よく見ると、チョコレートやガムなどと言った商品も、昔からある定番モノが実に強い。なぜなんだろうか?

本書には、そんなブランドを「資産」として定義づけ、ブランド構築を投資として行うためのノウハウが、具体的かつ、豊富な事例を元にして、精緻に紹介されている。

まず、ブランド戦略のベースとしてのブランド・アイデンティティ。レコード会社が設立した新興の航空会社が、何故数多くの旅行者から支持を得るようになったのか。「ヴァージン・アトランティック航空」を、ブランド・アイデンティティ構築の好例として紹介している。

さらに、ブランド・エクイティ構築の例として、アディダスとナイキのブランド展開を時系列を追って紹介。かなり面白いエピソードが満載で、マーケティング担当の実務者でなくとも、読み物として十分に楽しいものになっている。

書かれている内容が、今すぐ直接的に役立つビジネスマンは、それほど多くないかもしれない。しかし、情報化が進んだこれから社会で、ますます重要視されるだろう「見えない資産=ブランド」を知っておくことに損はないはずだ。まずは書店で手にとって見て欲しい。定番商品の謎も…解けますよ!

「心理戦」で絶対に負けない本

【著者】伊東明/内藤誼人
【出版社】アスペクト
【発刊年月】2000年04月07日【本体価格】1,600円【ページ数】281p
【ISBN】4-7572-0710-7

人間は最初の依頼に対しては、自由である。(中略)しかしながら、いったん最初の依頼を受け入れたが最後、二番目の依頼からはもはやあなたの自由は奪われている。最初の依頼に拘束され始めるからである。(中略)あなたは二番目の依頼に対してある種の「逆らいがたい強制力」を感じ、その強制力に屈服することになる。その強制力は、実に巧妙にあなたの心に忍び込み、あなたの自由を奪うのである。
本文 42p より

ヒトの心がもう少しわかればなぁ…。ビジネスマンなら誰しも思うことだろう。さまざまな交渉折衝は言うまでもなく、上司や部下、友人などの人間関係においても、相手の気持ちが理解できれば、優位に立てるということは、間違いないからだ。ベストセラーになったこの本は、人間関係を制するための心理テクニックを紹介している。その内容だが(ある意味で)かなり怖い。

まず、説得の三大テクニックとして「断る自由を奪う」「相手の罪悪感を利用する」「得したように見せかける」を上げている。字面がすでに嫌な感じであるが、それぞれは、日常何気ないところで、すでに利用されているという。皆さんは気がついているだろうか?

例えば、ブティック等に出掛けると、しつこく試着を迫られたりするけれども、それは、断る自由を奪うという、最初のテクニックを利用しているそうだ。しつこく奨められれば、つい断れずに試着する。一度言うことを聞いてしまうと、人は次の依頼を断りにくいという心理を、巧みに利用しているのだとか。このように、さまざまな心理的トラップが、豊富でわかりやすい実例と、噛んで含めるような解説で紹介されている。セオリーとして、理路整然と言われてしまうと恐ろしくなるようなテクニックばかりだ。

さらに、武器としての説得術として、「恐怖で人を動かす」「レトリックで人を動かす」「おまけと希少価値で人を動かす」などのノウハウが紹介され、

「印象操作」「プロファイリングのテクニック」「詐欺やだましの心理メカニズム」と続く。どれも大変に興味深いコンテンツで、一気に読める面白さだ。

ビジネスマンがこの本を手にしたとして、そのまま活用できることはないかもしれない。ここに書かれていることズバリの例が、現実に起こるとは限らないからである。また気分的に、このようなテクニックを利用することをよしとしない人も多いだろう。しかし、人の心が動くメカニズムを知っておいて、損はないと考える。対人関係を優位に運ぶというよりも、転ばぬ先の杖的に、気持ちが動くしくみを、学んでおくのもよいだろう。

ミーティング・マネジメント

【著者】八幡紕芦史 【出版社】生産性出版 【発刊年月】1998年 6月30日
【本体価格】2500円 【ページ数】 268P 【ISBN】4-8201-1635-5

ベター・ミーティングは、ベター・ビジネスにつながる。効率的なミーティングは、仕事のクオリティを高め、効果的なミーティングは、より多くの仕事の実績となって表れる。ミーティングで、多くの異なった意見がぶつかり合い、オープンなディスカッションが表現されるなら、あなたは、より多くの創造的なビジネスを生み出すことができる。
同書 あとがきより

私達は、仕事のかなりの時間を会議に費やしている。しかし、この会議という時間を有効に活用している方は、意外に少ないのではないだろうか。だから会議への出席がめんどうでならない、という方。そして、出席者の気持ちを知っているだけに自分が司会進行を勤めることになると、「何をどうしたら良いのかわからない」という方も多いに違いない。しかし、私達は会議に多くの時間を費やさざるを得ない。

さて、今週とりあげる1冊は、そんな「会議と名のつくものに、少しでも、問題意識を持っている人」に是非お勧めしたい1冊だ。「効果的会議の効率的実践」という副題のつけられたこの『ミーティング・マネジメント』は、仕事を円滑に進めるための会議をいかに実践していくのか、という方法論を解説してくれている。

「ビジネスを成功に導くミーティングをいかに実践していくか」という視点から編まれたこの1冊は、ミーティングに参加する場合の準備の仕方、論理的な意見の組み立て方、主張の仕方、などのディスカッション技術。ミーティングを開催する場合の目標設定の方法、議論の組み立て方、参加者の意欲の高め方。そして、ミーティングのリードの仕方、目標達成のための技術までを学ぶことが出来る。

この『ミーティング・マネジメント』が扱っているのは、効率的で戦略的なビジネスの進め方、特にビジネスにおけるコミュニケーションに他ならない。経営コンサルタントでもある筆者の見事な手ほどきにより、読者のミーティングマネジメントの手腕はかならずや高まることだろう。そして、ミーティングのマネジメント能力のみならず、コミュニケーション能力、目標遂行能力をも高めることが出来るはずだ。そんな風に何冊分も美味しいこの1冊を是非手にとっていただきたい。

なぜあの人の話に納得してしまうのか

【著者】中谷 彰宏 【出版社】ダイヤモンド社 【発刊年月】1999/10/15
【本体価格】1400円 【ページ数】 180P 【ISBN】4-478-70190-3

地図は、3つの目印があれば、どこへでもたどりつける。
同書 P101から引用

中谷彰宏氏の本を読むと毎回驚くことがある。それは、取り上げているテーマや主張が、基本的に1冊につききちんと1つだけであるということだ。またそのテーマを様々な視点や、エピソードや切り口で取り上げ、料理されているため、1冊を読み終えた時、頭の中に中谷氏の主張がすんなりとインプットされていることである。

さて、「説得力のある人は説得するのではなく、納得するお手伝いをする。」というまえがきからはじまる本書。「なぜなら、人間にとって、納得することは快感だからです。“納得できない”というのは、不快なのです。納得するのは好きですが、説得されるのは嫌い」だからです。

「確かに!」という「なるほど感」が沢山詰まったビジネスマンのためのコミュニケーションの秀逸なノウハウ集となっている同書。中谷氏の著書には、このヒューマンスキルアップの方法論や、ノウハウが数多く詰まっている。キャリアアップやキャリアプラン実現のためには、ヒューマンスキルが重要だということをこのコーナーでは何度も取り上げてきたが、中谷氏の本は、学ぶべき点が多い。

冒頭で引用した言葉は、地図を書かせると、その人の説得力がよくわかる、という言葉に続けられた言葉だ。3つのポイントは、書く人がその場所に詳しく、本質をとらえていなければ書けない。説得力ということだけではなく、キャリアプランという構想に対してもこれと同様のことが言えると思う。貴方は、自分のキャリアプランを明確に描いているだろうか、そしてそのポイントが描けるだろうか?

読書のスピードが速い人では1時間、遅い人でも2時間で読破することが出来る同書を是非多くの人に手にとって欲しい。そして、説得力だけでなく、コミュニケーション能力を磨いていただきたい。

理解の秘密

【著者】リチャード・ワーマン【訳】松岡 正剛 【出版社】NTT出版 【発刊年月】1993年6月
【本体価格】2800円 【ページ数】321P

われわれの日々のコミュニケーションの大半を占めているのは、 相手に何かを伝えるための会話である。 そのまた大半はごく短い言葉ですまされている指示である。ところが、本書の随所に例示されているように、このちょっとした指示や伝達がうまくいかない。「わかったね?」 「ええわかりました」 というやりとりは必ずあるのだが、いっこうに理解してもらえなかったということが多い。 人間のコミュニケーションはディスコミュニケーションを前提にして発達したとしか思えなくなってくる。
同書 P314から引用

説明の上手な人がいる。話のうまい人がいる。たった1言2言で、周囲の人たちを説得させることの出来る人がいる。方や、言葉を尽くせば冗長になり、言葉を少なくすれば、言葉足らずの説明になってしまう人もいる。さて、こういった違いはどこからうまれるのだろうか?

冒頭で引用した文章にあるように、私達のコミュニケーションは、常にディスコミュニケーションの状態が付きまとう。今週紹介する1冊は、コミュニケーションの言動力ともいえる「インストラクション」の上手下手が、コミュニケーション能力を左右すると説明している本だ。指示、命令、依頼、伝達、説明という仕事上に欠かせないさまざまなアクションをいかに効率よく、的確に行えるか。この点は、ビジネスマンとしてキャリアを積んでいく時、非常に重要なことだ。そしてそのためのヒントを与えてくれるであろう書籍がこの『理解の秘密』だ。

「伝わらない人生-あなたは理解されていますか?」

という目次の言葉から始まる第1章、そしてコミュニケーション、パーソナリティー、言葉のマネジメント、コミュニケーションを破壊するものとしてのディストラクション、エンパワーメントと、様々なテーマをイントラクションという切り口から説明しているので、その人が抱えている問題に応じて、様々な面から回答を与えてくれるはずだ。

読むたびごとに新しい発見に触れることのできるこの書籍。そんな豊富な内容を持つこの『理解の秘密』を是非皆様に手にとって頂ききたい。部下を持つ全ての人、そして、指示下手の上司を持つ全てのビジネスマンにもオススメの1冊だ。

営業思考パワーアップ塾

【著者】佐々木宏【発行】ダイヤモンド社
【発行年月】2004年03月11日 【本体価格】1,400円
【ページ数】171p 【ISBN】4-478-54063-2

同じ世帯に住む世帯は、往々にして年収やライフスタイルが似通った人びとが集まる。個人営業にせよ法人営業にせよ、営業テリトリーというものがあり、各居住地区によって訪問戦略を練っているはずだ。場所と売り方のネジレがないか。今一度検証してみよう。

本書 P86 より抜粋

あなたは今、合コンをしています。会が始まって以来、対角線に座る「あいつ」が気になって仕方がありません。30分後、ようやく席替えです。ついに、気になる「あいつ」が、あなたの隣に座ることに。あなたはここで、どういうプロセスを経て「あいつ」をゲットすべく、話を展開しますか?

これが、本書の入塾問題だ。

いまは、食べきれない程の商品が売られている。慢性的に満腹の生活者が相手だ。つまりこれまでの営業のやり方では通用しない。これからは、体育会系で猪突猛進する「イノシシ型営業」ではなく、獲物を高いところから俯瞰しチャンスを勝ち取る「フクロウ型営業」こそが必要なのだという。

本書は「フクロウ型営業」になるべく、18の演習が用意されている。一つひとつ自分なりに考えながら読んでいくと、自分にはどんな視点が足りなかったかがわかるだろう。

最初にあげた入塾問題の答え方には、大きく分けて3つのタイプがあるという。1つ目はまず「お酒に誘う」「映画に誘う」といった解答だ。相手の好みは考えず、自分の趣味や自慢話に終始するタイプ。これぞ「イノシシ型」タイプなのだという。

2つ目は「最初に見たときから気になっている。携帯番号を教えてくれ!」という「大勘違いプレゼンテーション」といわれるタイプ。これは、1回でやめればユーモアかもしれないが、2回目でイノシシ、3回目でストーカーだ。こんな営業スタイルでは危なくて仕方がない。

3つ目のタイプ、「フクロウ型営業」はこうだ。質問し、相手が喜ぶスウィートスポットを発見し、そこをプッシュするタイプ。「相手の趣味を聞く」「好きな食べ物を聞く」といったことが頭に浮かんだ人は、すでに営業のセンスが備わっていると著者は言う。

では、「フクロウ型営業」になるためにはどうすればいいか。それは「分析力」「企画力」「プレゼンテーション力」を磨くことなのだという。本書の18の課題に答えながら読み進めることで、新しいタイプの営業思考が自然と身についていくのだ。

顧客の問題点を探り、同じ視点で考え、適切な場所で、適切なモノを売る。このプロセスは当たり前なことだが、実際は気づかないうちに「ネジレ」が生じていると著者はいう。本書を読み、いま一度モノが売れる仕組みと提案営業とは何をすべきかを確認し、仕事に生かしてみてはいかがだろうか。

一勝九敗

【著者】柳井正
【発行】新潮社 【発行年月】2003年11月15日
【本体価格】980円 【ページ数】236p 【ISBN】4-10-464201-0 C0034

危機につながるような致命的な失敗は絶対にしてはならないが、実行して失敗するのは、実行もせず、分析ばかりしてグズグズしているより、よほどよい。失敗の経験は身につく学習効果として財産になる。

本書 74P より抜粋

「ユニクロのフリース ¥1900」のキャッチコピーで一躍有名になった(株)ファーストリテイリング。その代表取締役会長兼CEOといえば、今や若者や幅広い層から絶大なる支持を受ける経営者、柳井正氏だ。その柳井氏がユニクロの立ち上げから経営方針までを書き下ろした。

タイトル「一勝九敗」は、ユニクロといえども10回新しいことをすれば9回は失敗する、経営の難しさを表現したものだ。「現実」はいつでも非常に厳しい。経営環境は目覚ましいスピードで変化する。経営を続け存続させるには、自己革新と成長を続けなければいけないのだと氏は語る。

ユニクロ一号店が広島市だったことはあまり知られていない事実だろう。店名も「ユニーク・クロージング・ウエアハウス」だったという。今でこそ都内でユニクロのロゴはよく見かけるが、氏によると関東進出はかなり大きな壁だったらしい。そう、関東では安価な服が受け入れられなかったのだ。

“安かろう悪かろう”の商品イメージを払拭するまでの過程は凄まじい努力を要したという。本書を一読すると、被服の素材や生産過程の見直し、クレーム募集、ブランド構築、関係会社の整理などに追われ、その大変さを理解できることだろう。

店舗展開においても様々な失敗を繰り返したという。ユニクロの服はスポーティなものが多いが、それではスポーツウエアに特化した店舗をと考え、スポーツシューズまで含めたスポーツカジュアル店「スポクロ」を開店。後に家族向けのファミリーカジュアル「ファミクロ」も開店した。

これは売り上げがサッパリだったため、1年も立たないうちに閉店したという。しかし、柳井氏が経営者として素晴らしいと思うところはここからだ。失敗の原因を追究し、きちんと次のステップへの足がかりにしている。計画・実行・回顧をこなすことで、更なる発展を必ず意識しているところだ。

本書の後半では、会社の在り方についても提言している。柳井氏の理想的な会社形態は「社長が言っていることがそのとおり行われない会社」だ。社員は社長の発言の本質を理解し、具体的に考え実行しなければいけないと。それができていない会社が今は多く、失敗しているのでは、と分析する。

よく、成功を収めるためには目標や計画を立てて行動しろと言われる。本書を読んで分かったことは、「実行」することへの躊躇だ。失敗を恐れていては何もできない。柳井氏が自身の失敗談を連ねることにより、我々に実行への勇気を与えてくれる。ぜひ一度手にとっていただきたい一冊だ。

コツコツ働いても年収300万好きなことだけして年収1000万シリコンバレーで学んだプロの仕事術

【著者】キャメル・ヤマモト 【発行】幻冬舎
【発行年月】2003年05月30日 【本体価格】1,200円
【ページ数】194p 【ISBN】4-344-00339-X C0030

シリコンバレーのプロフェッショナルは、自分がやりたいことを実現するために仕事をします。やりたいことにつながっているから、エネルギーが出ま す。エネルギーが出るから自然にがんばれます。がんばるから成功する確率も高まります。
本書 172P より抜粋

競争社会ということは、日本のビジネスパーソンも薄々気付き始めてはいるが、彼らは単に「まじめ」なだけだと、著者は看破する。年収1000万を超えるシリコンバレーのプロフェッショナルたちは、まじめさだけでなく、新しさを生み出していく「したたかさ」を備えているのだと、主張する。

そう、本書は稼ぐ秘密として「したたかさ」の実践を勧める本なのだ。内容は実に明解で読みやすい。62項目にわたる“稼ぐ為のコツ”の中身を少しだけ紹介しよう。創造、発想するためのコツを例に挙げる。

日本のサラリーマンは、オフィスという「箱」の中に入っている。そしてさらに思想さえも箱の中に閉じこもっているのだという。それに対しシリコンバレーのプロは、必要な時はその箱の中から出るのだそうだ。いつもと違う状況を自分で作って、箱を越えて考えることができるというのだ。

ある問題を考えていて行き詰まった時は、「何のためにこの問題を解く必要があるのか」といった質問を発してみる。これで、迷路に入る前の段階にさかのぼることができる。

また、一緒に考えている仲間の外に出ることも重要。自分の仕事に全く関係のない人に話すことで、思考をクリアにできるというのだ。

さらに著者は「仲間が一緒だと新しいことをやらなくなる。他人が見ていると失敗したくない気持ちが働いて、慣れ親しんだ方法に頼ってしまう」と人間心理をグサリと突いてくる。この“逃げ”の気持ちを起こさない為には、一日の中で、自分ひとりで考え抜く時間と状況を作り出せ、と主張する。

まじめな方はここで、それをそのまま実践するが、アイデアは何故か出てこない。ポイントはネットワークとの使い分けなのだという。ひとりの時間に「誰に聞けばいいか」を考えることも大切なのだと。テーマについて意見を聞いた後、自分でそれを絞り込み、そしてまた人に聞く、という具合だ。

毎日大量の仕事を抱え上司や部下に気を使う…。「なのになぜか金がない」と、酒の席で愚痴っている光景が目に浮かぶ。そんなビジネスパーソンにぜひ、本書をオススメしたい。毎日のストレスを解消する“うってつけ”の本だからだ。無論、これまでの仕事のやりかたを完全に覆す荒治療として…。

全部無料で宣伝してもらう対マスコミPR術

【著者】玉木剛 【発行】翔泳社
【発行年月】2002年09月13日 【本体価格】1,500円
【ページ数】213p 【ISBN】4-7981-0203-2

これまでの販促費を初期段階で大幅にコスト削減できるとともに、広告費が費用対効果に合わないというリスクも避けられる。つまりローリスク・ハイリターンの売れる仕組みを作り出すことができるのだ。
本書 38P より抜粋

十分な広告予算もなく、無理をして広告を出しても費用対効果に合わない。ならば「ウチは商品力で勝負だ!」となどと息巻いているだけで何の戦略も立てず、取り返しのつかない事態に陥ることは是非避けたい。そこで、本書の登場となるのだ。そう!タダで宣伝でしてもらおうと。

「プレスリリース」という言葉に馴染みはあるだろうか。これは企業などがマスコミ関係者に対して自社の新商品やサービスなどの情報を提供する報道資料のことを指す。その資料をマスコミに読んでもらい、記事(放送)として取り上げてもらう、という戦法だ。

プレスリリースによるパブリシティ(記事・放送)は、広告よりもはるかに費用対効果が高い。何しろ媒体費用がかからないうえに、一般的に広告の3倍の媒体価値があるといわれている、というのだ。

なるほど、企業が広告スペースを買い、自社商品・サービスのメリットを訴求する。消費者はその大量の広告に対して少なからず圧迫感を抱いており、自分の判断で商品を選択したいと願っている表れなのだろうか。

つまり、商品・サービスに対して「客観的」な評価を下すマスコミの記事や放送に対して、消費者の信頼が置かれるようになったと。話題性のある商品を記者たちが選択し、評価したものには信憑性がある、ということか。

通常、企業ではアンケートやインタビューなどの取材・調査を通じて、消費者の声に耳を傾け商品開発を行う。消費者のニーズを捉えたうえで、商品やサービスを開発する。だがこれからは消費者だけでなく、マスコミの記者たちにもヒアリングすることを著者は強く主張する。

本書では、著者が取材したメディアの現場に携わる人たちのコメントを掲載し、採用され易いプレスリリースの書き方、送り方などを紹介する。今までのプレスリリースの間違ったやり方を見直し、企業がマスコミに伝えたいことと、マスコミが読書や視聴者に伝えたい大きなミゾを埋めてくれる。

さて、このメールマガジンの読者が、本書を読むべき理由は何だろう。それは、テレビ・新聞・雑誌など、マスコミ各社の手の内を覗き見るため…。それと同時に、世間で流布する情報の「カラクリ」を知ることにもなる。シリーズで新刊も出ているが、まずはこの本からと、お勧めしておきたい。

考具

【著者】加藤昌治 【発行】ティビーエス・ブリタニカ
【発行年月】2003年04月04日 【本体価格】1,500円
【ページ数】239p 【ISBN】4-484-03205-8

考えるための道具、持っていますか?丸腰で仕事はできない。あなたのアタマとカラダを「アイデア工場」に変えるとっておきのシンキング・ツール、教えます。
本書 腰帯 より抜粋

新しい企画を考える時、どうしても発想できない。そもそも何から始めればよいのかがわからない、という人は多いのではないだろうか。それを「発想力がない」という風に判断しないで欲しい。恐らく我々は発想するための方法を知らないだけだったのだ…。これが、本書を読み終えた正直な感想だ。

アイデアとは、「既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」。著者はこの定義をくり返し主張する。「新しいアイデア」とは、全世界的に新しいものと勘違いしてしまいそうだが、この定義でかなり気が楽になる。

我々は、(今のところ)大発明家でも大科学者でもない。欲しいのは、自分の仕事や生活で役に立つ実践的なアイデアや企画なのだ。そこで本書で紹介する「考具」の活用をオススメする。難解な操作を必要としない、単に頭の働きをスムーズに、サポートするための便利な道具なのだという。

考具その1「カラーバス」。バスはBATH。色を浴びるということ。使い方は簡単で「今日のラッキーカラー」を決めるだけ。「今日は赤」という具合に。そしていつものように通勤してみる。するとなぜか「今日は赤い車が多いなぁ」と妙に赤いクルマが目につく。屋外看板も赤いのが目に入る。

これがカラーバス効果だ。「今日は赤」と意識しただけで、やたらとそれが目につく。そして、赤いものが何だったのかを見る。単に色の共通項で括るだけで、自分の想像をはるかに超えたアイテムが集まってくるのだ。「見える」から「見る」へ意識を変えることが非常に重要なことなのだという。

確かに、例えば靴下と回転寿司の看板なんて普段一緒に想像することはないはずだ。クルマなら、クルマ周りのことだけで考えてしまうパターンのように、アイデアを考えることに慣れていない場合、要素を探す範囲が狭くなってしまうことが多いのだそうだ。

いつもと違う視点視座で!と張り切ってみても、それはなかなか見つからない。そんなときに「カラーバス」は、必ずいつか役に立つ日がくるのだという。アイデアのヒントは至るところにある。我々が発見できるかどうかが大事なのだと。

ヒントを探しているか、見つけようとして、自身や周囲(の人やモノ)に問いかけているか、がポイントなのだと著者は言う。

本書は21個の「考具」で、我々にアイデアのメソッドを伝授してくれる。知識としての引き出し、仕事に使える手引書として、タイトル通り「考具」を道具として携帯することをオススメする。

商品企画のシナリオ発想術

【著者】田中央 【発行】岩波新書
【発行年月】2003年01月08日 【本体価格】700円
【ページ数】178p 【ISBN】4-00-700056-5

■冷蔵庫、食器棚、工事現場、健康法がこんなに変わる
■ハンズフリー 近未来の携帯電話を描く
■コンセプトマーケット 出会いを演出する
■さまざまなアイデアを20のシナリオで公開

本書 表紙裏 より抜粋

日本は戦後復興期からモノが豊かに出回り、モノづくりの競争は激化してきた。そして、いつからか次第に我々の生活は多様化し、個性派の時代になった。モノが飽和し、渾沌とした生活者は「生活の質的向上」をめざして模索しているのが現状だ。

そう、モノの作り手側としてのメーカーも、売れ筋商品ばかりを追い求めるわけにはいかなくなってきた。もっと積極的に、ユーザーが新しいライフスタイルを築けるようなものの提案が求められているのだ。

作り手はそれをイメージし、具体的な仮説を立てることによって創造しなくてはならない。そこで本書では、新しい商品開発のコンセプトワークに「シナリオライティングによる発想法」を紹介する。

著者はまず、「モノ」の前提には必ず「コト」が存在すると主張する。「コト」なしに「モノ」は創造できないと。つまり新商品を開発するためには、ユーザーが使用した時に「どんな気持ちになるか、どこに価値を置くか」などをイメージし、コンセプトを細かく設定する必要があると言及している。

我々は日頃の生活の中で、多かれ少なかれ満足や不満を抱く。創造性の発揮の前にはこのような動機と問題意識が不可欠なのだそうだ。不安から安心、不思議から納得も同様である。

著者は、この3つの「不」はネタづくりのタネそのものなのだと重ねて強調する。ニーズと欲求の両立というところか。

そして、話題は著者が富士写真フィルムに在籍中に、大ヒット商品「(使い切りカメラ)写ルンです」の商品コンセプトを確立させた経緯に移る。

「親近感」がキーワードだった「写ルンです」。この言葉を手がかりに新商品がどんなものであるかを的確に表すのに、発想の手続きとして「比喩」表現を実践。類義語や同義語に置き換えてみるのだという。

「身近な、しっくり、気安い」などに置き換えていくことで発想が成長していくのだという。驚くかもしれないが結局、最終的なメタファは「キャラメル」に決定した。

今度はキャラメルの観察だ。色に特化していえば、キャラメルの箱の色はお菓子メーカーのアイデンティティカラー。そうなるとカメラもフィルムパッケージのグリーンに落ち着くことになる。と、スマートに解決できていく。

本書に掲載されているシナリオの例を読み勧めていくと、我々の新しいライフスタイルとして、新しい商品がどんどん出てくるような気がしてくる。なぜか数年後の生活が楽しみになってしまう。この発想術はさまざまな場面で応用できるし、世の中を楽しくするための一冊になりそうだ。

なぜデルコンピュータはお客の心をつかむのか

【著者】宇井洋【出版社】ダイヤモンド社
【発刊年月】2002年07月11日
【本体価格】1,500円【ページ数】192p【ISBN】4-478-31201-X

「私は、事業を変化させようという会社の戦略を理解している」この問いに対して「そう思う」「まったくそう思う」と答えたデルの社員は約80%。デルのビジネスモデルを模倣する企業が本当に学ぶべきことはここに隠されているのかもしれない。
本文 192p より 抜粋

デルコンピュータと言えば、「直販系PCメーカー」だが、多くのビジネスパーソンは「顧客サポートNo.1」企業であることを知っているだろう。そんなデルコンピュータが、お客の心を掴むために行っていること、その秘密に迫ったのが、本書である。

デルコンピュータ成功の秘密は、業界標準の製品を直販でリーズナブルな価格で提供するとともに、「カスタマー・エクスペリエンス」という同社独自の顧客満足度をあらわすコンセプトの実現にある、とそのトップ自身が分析している。

デルコンピュータの言う「カスタマー・エクスペリエンス」とは、コンピュータの購入検討から問い合わせからアフターサポートまで、製品の購買および使用体験に関わるすべてのシーンにおいて、最良の満足体験をしてもらうことを指すのだが、言うはカンタン、実際に行うのは容易ではないはずだ。

例えば、デル製品には保証書が添付されていない。もちろんデルの製品は業界随一といっての過言ではない、手厚い保証がなされている。ないのは「保証書」なのである。デルは「自社でお客様の製品についての情報の一切を管理しているので、保証書は添付していない」というのだ。

これは目からウロコだった。保証書を持つことは「ユーザーがその権利や、製品に関する情報を、すべて自身の手によって管理する」ということを意味している。無くせば保証は受けられないし、保証期間なども当然わからなくなってしまう。しかし考えればわかるが、保証書の保管は結構大変だ。

特に大量にPCを導入する企業など、その管理に手を焼いているに違いないだろう(実際は納入した会社が引き受けているのかもしれないが)。デルコンピュータなら、製品に付けられている「サービスタグナンバー」によってすべてを管理している。保証に関する管理はデル任せだ。

筆者は、デルコンピュータの成功を「創業以来一貫して顧客志向に徹したモノ作りを指向し、なおかつそれを愚直なほどに地道に実践してきた結果」であるとまとめている。顧客志向のモノ作りなど、どの会社でも行っているはずだが、成功に結びつかないのは、その「愚直さ」の不足にあるのかも、そう思わせるほどの説得力あるシーンがいくつも紹介されている。

本書は「癒し系」である。なぜ成功した会社について紹介された本が「癒し系」なのか。当たり前のことを「愚直」に取り組んだことによって、すばらしい「結果」が得られた。そのプロセスに心奪われ、読後に「達成感」が得られる。そして、なんとなく癒される…。読めばわかるだろう。

発想する会社!

【著者】トム・ケリー/ジョナサン・リットマン
【訳者】鈴木主税/秀岡尚子【出版社】早川書房
【発刊年月】2002年07月31日
【本体価格】2,500円【ページ数】325p【ISBN】4-15-208426-X

現在、Tシャツのためにどれだけの予算がとってあるにせよ、それを倍増さ せよう。Tシャツのコストなどたかが知れているのに、チームの連帯感とい う大きな見返りがある。当然、デザインはチームに関連のあるものにする。IDEOのベテラン社員は誰でも、Tシャツを2、30枚もっている。
本文 110p より 抜粋

自他共に認める世界最高のデザイン・ファームであるIDEO。本書はそのクリエイティブあふれる会社が持つ、様々なイノベーション技法を、豊富かつ具体的な事例とともに紹介する一冊である。久々に、読後「紹介するのは止めようか」と思わせた、充実の内容である。

パーム(PDA)やプラダ、ペプシ、アップル、P&Gなど、多くの一流企業をクライアントに持つ、彼らの発想のテクニックはいたってシンプルである。「観察」→「ブレスト」→「プロトタイプづくり」と、たったそれだけのことだ。しかし、そこからイノベーションが生まれる。

まず彼らは、詳細なアンケートデータなどは信用しない。作るべきその商品を利用しているユーザーを徹底的に観察する。観察することによって、自分たちで見つけ出した、数々の「なぜ」を元に、商品を形作るソースとしていくのだ。マーケティングデータを過信しないところなど、とても興味深い。

その観察をもってして、彼らはブレーンストーミングを実施する。自分たちもブレストぐらいやっているよ!と言われそうだが、本書によると「ブレストに関する厄介な問題は、誰もが既に実行していると思い込んでいる」ところにあるらしい。要は上手くやれていないことを揶揄しているのだ。

このクリエイティブ集団が、そのアイデアを爆発させるのが、このブレストなのだと言う。本書にはそのスキルがポイントを抑えて紹介されている。秘訣は7つ。小見出しを拾ってみよう。焦点を明確にする。遊び心のあるルール。アイデアを数える。力を蓄積し、ジャンプする、などとなっている。

次に、とにかくプロトタイプを作ってみることを本書は奨めている。机上で幾ら考えても、実際に近いものを作ってみることで、見えなかったものが見えたり、その過程で意外な発見があったり、改良を重ねることの効能も余すところなく教えてくれている。なるほどな!と思わせる内容が多い。

それらのイノベーション技法が有効に活用するための「職場風土」が大切であると言うこともまた、本書は示してくれている。人が育ち頑張ることができる、ホットなメンバーと(なにかを育む)温室のような職場がベースになければ、良いものは作り出せない、と言うことなのだろう。

モノづくりに携わる人間は必読。それ以外でも、あなたが上司と呼ばれる存在であるならば、質の高い仕事を部下も含めた全員でおこなうためのスキルを本書で学ぶべきだろう。太鼓判の一冊である。

明和電機 魚コードのできるまで

【著者】土佐信道【出版社】NTT出版
【発刊年月】2002年03月25日【本体価格】2,300円
【ページ数】175p【ISBN】4-7571-5033-4

「なぜヒラメくの?」という質問には大変答えにくいのですが、「どこで、どんなときにヒラメくの?」には答えられます。一番多いのが「寝おきスパーク」です。
本文 166p より 抜粋

明和電機と聞いてピンと来る人がどのくらいいるのかは分からない。明和電機とは、本書の著者である土佐信道プロデュースによる「アートユニット」である。作品を「製品」、ライブを「製品デモンストレーション」と呼び、衣装は「青い作業服」と、「一昔前のありふれた日本の企業」スタイルで活動をしている。ああ!と思われた読者もいるだろう。

明和電機は不思議な形をした自作楽器を使い、ライブを繰り返す一方、面白い発想の「グッズ」を作って販売している。代表的な製品として「魚コード(なこーど)」がある。魚の骨をモチーフにした延長コードで、その奇妙なスタイルを目にしたことがある人もいるかもしれない。

本書は、そんなユニークな「製品」を生み出す著者の「発想のテクニック」を余すところなく紹介した一冊である。漢字にはすべてルビが振られ、カバーの背表紙には、年組名前を記す欄まである(苦笑)。腰帯には「小学生からビジネスマンまで」とちゃんと断り書きまである。しかしこの本、侮ってはいけない。企画力とは「こういうものだ」ということがわかる本なのだ。

彼らの製品の中に「パチモク」がある。これは、ノッカーなる電機仕掛けのバチを動かす装置で、指パッチンの動作で操作し、木魚を叩く、という奇天烈な楽器だ。この楽器を「100Vで動く装置」+「アコースティックな発音体」+「バカバカしい演奏方法」という公式を作り出し、以降、これに当てはまるシリーズ製品を生み出していく。

この「ある事柄の要素を分解して公式化し、他に展開する」という技術は、まさに「企画の基本」である。あまたの企画の本に書かれているが、小学生にもわかるレベルでの記述は、初めて目にした気がする。子をもつ親なら、この一言でピンときただろう。子供にもわかるように教えるのって、そのことが、本当にわかっていないと出来ないのだ。

巻末には「ヒラメキをカタチにする丸秘テクニック」と題して発想法を実にわかりやすく紹介している。その項目は6つ。1.モノを見たり、調べたりして、頭に栄養をあげる。2.突然、ヒラメく。3.ヒラメキをスケッチやメモにとる。4.それが本当に作れるかどうか確かめ、設計する。5.実際に工具や機械を使ってカタチにする。6.人に見せる。以上だ。

この本は不思議である。紹介されている彼らの製品は、とても「まともな」モノではないし、図版が多く使われ、結構な大人が読む体裁にもなっていない。ビジネス書とは謳っていないが、紛れもない「ビジネスパーソン」が読むべき本なのだ。迷うことなく買いの「一冊」だろう。ぜひ!

このマーケターに学べ!

【著者】マーシャ・ターナー【訳者】小高尚子
【出版社】ダイヤモンド社
【発刊年月】2002年03月14日【本体価格】1,600円
【ページ数】233p【ISBN】4-478-50202-1

いまの時代、マーケティングがものすごくもてはやされるのには理由がある。 考え抜かれたマーケティングの戦略や戦術は、企業がはるか宇宙まで届くよ うな売上をもたらすことができる。優秀なマーケターも、売上と一緒に自分 のキャリアを大きく宇宙に向けて上昇させる。
まえがき より 抜粋

日本を代表するメーカーの新製品のマーケティングを手がけたことがある。開発部門はとりあえず製品を作ってみて、宣伝部門はなんとなくコマーシャルを作成して、営業部門は他の部署とは一切連絡をとらず販促策を考えている…そんな光景を目の当たりにして、驚いてしまった。

さて、書店店頭を観察していると、マーケティング関連本がよく売れているようだ。簡単な用語などが理解できるものから、高度なセオリーを開陳したものまで、百花繚乱とはこのことを言うのだろう。今回紹介する本書は、その中でも最初に手をとるべき一冊とお勧めしたい、よく出来た本である。

本書に紹介されている「マーケター」は全部で12人。フィリップ・コトラーやセス・ゴーディンといったスーパースター級の学者・コンサルタント編と、マーサ・スチュワート、さらにはマドンナ(!)といった実務家編に分けて、そのリーダーたちの戦略が解説されている。

学者・コンサルタント編で紹介される人々は、すばらしいマーケティング関連の本を出版している。それらを読むのはとても骨が折れるが、本書はそれらのコンテンツのエッセンスを上手に抽出している。大元の本を読まずとも解った気になれるのも、ちょっとうれしい。

実務家編では、セオリーだけでない、実際に成功していくプロセスが、ダイナミックに示めされていて、読み物としても興味深い。日本では、スーパー主婦として知られているマーサ・スチュワートが、実は「猛烈なビジネスパーソン」であると紹介されていた。知ってました?

冒頭のエピソードを紹介したのには理由がある。マーケティングは決して限られた専門家が必要とする知識なのではなく、ビジネスに携わる人々すべての人は、マーケティング的視点を持っておくべきものだ、と知って欲しかったからだ。

生産から消費までのプロセスのそれぞれで、ちょっとしたマーケティングスキルがあれば、ひょっとしたら(=当然確約なんて出来ない)ビジネスとして成功を収めることが出来る、かもしれない。本書はそんな視点でも書かれている。だからこそ、あらゆる人に読んでみることをお勧めする。

クチコミはこうしてつくられる

【著者】エマニュエル・ローゼン【訳者】濱岡 豊
【出版社】日本経済新聞社
【発刊年月】2002年01月18日【本体価格】1,800円
【ページ数】359p【ISBN】4-532-14938-X

私たちは皆つながっている。新製品に興奮したとき、サービスのわるさに腹 が立ったとき、なにがよいか判断に迷ったとき、人と話さずにはいられない。
そう、私たちは皆「見えないネットワーク」で結ばれている。
本文 カバー見返しより 抜粋

マーケティングの現場で働いている人間にとって「クチコミ」は厄介な存在である。自分が担当する製品が優れていて、良いエピソードがクチコミに乗って流れると、その製品のヒットは約束される。しかし、セールスサイドでクチコミをコントロールしようと思っても、それは難しい。

本書は、厄介者でミステリアスな動きを見せる「クチコミ」について、そのメカニズムをわかりやすくまとめたものである。人はなぜ「つい話したくなる」のか、情報が人と人とのネットワークを通じて伝達(=伝染と言った方が適切か)していく様を、豊富な事例を挙げ解説している。

まず「バズ」という聞き慣れない言葉がまず登場する。本来の意味は、「低いブンブンうなるような音、ざわめき、騒音」、または「うわさ、風聞、風説」であるこの言葉を、本書では「ある時点における特定の企業や製品に対するコメントの合計」と定義している。

クチコミとは、ある人たちが形成した、製品やサービスなどについての「バズ」なのである、電話やメール、果ては夕食の話題などを通じて伝わるコメント、そのすべてのことを指している、と、述べられている。カンタンにまとめると難しくなってしまうが、詳しい事例で、容易に理解できる。

さらに、多くのマーケッターが、その重要性を無視している「クチコミ」をコントロールするために、人と人との「つながり」と、つい人に話したくなる「商品特徴」について、詳細に言及している。キーワードは「ネットワークのハブ」と「感染型製品」だ。

「ネットワークのハブ」とは、クチコミが広がる過程において、その製品やサービスのよさを「多くの人に伝える」存在のことを言う。従来のマーケティングでは「オピニオンリーダー」と呼ばれていた人だ。本書では、彼らに「クチコミの種」を埋め込むアイデアも提案されている。

「感染型製品」とは、人に伝えたくなる製品やサービスの持ついくつかの特性を紹介している。感情的な反応をかき立てる(=インパクトある車)・利用者が増えるほど便利になる(=ICQのようなサービス)など、なるほど人に言いたくなる製品やサービスがあると言うことがわかる。

本書は、マーケティング関連業種に就いていなくとも、十分に興味深い一冊である。自分たちの日常の中にも「情報を広めている、そして、情報を分析している」という、クチコミのすべてがあるハズだ。ネットワーク社会に生きる私たちが、持っておくべきリテラシーが、実はこの一冊の中にある。

プレゼンの成功法則

【著者】谷口正和【出版社】東洋経済新報社
【発刊年月】2002年02月07日【本体価格】1,200円
【ページ数】165p【ISBN】4-492-04164-8

現状のプレゼンは、顕在化されたデータとテクニックに頼りすぎるあまり、同質横並びの罠にはまり、ほとんど差異性を持たなくなってきている。選ぶ方も確信が持てないことにより、いくつものプレゼンを受けることによって、多彩さの中に答えを見出そうとしている。似たようなネクタイの中からお気に入りを探し出そうとしているようなものだ。
本書 324p より抜粋

想像力が疲弊した時代に向け、どのような新鮮な着眼、視点、発想により、次なるパラダイムを開くか・・・この一点に向けて本書は書かれた、と本文にある。しかし、本誌の読者に本書を紹介する理由は、そこにない。では推す理由は何か?プレゼンは、現代のビジネス社会での「必須力」だからだ。

一昔前、プレゼンなる言葉は業界用語だった(笑)。しかし、本書カバーにはこうある。プレゼン、それはすべてのビジネスコミュニケーションの基本だと。今や、プレゼン能力を身に付けていなければ、厳しいビジネス社会は渡っていけない、そんな調子だ。そして、それは実に正しい指摘でもある。

ビジネスの場において、交渉や提案、顧客へのアプローチなどを、ごく日常的に行っているはずだ。「根回し」や「あうん」といった「古いアプローチ手法」が通用しなくなりつつある今、相手に何かを伝えなくてはならない=相手を説得しなくてはならない時、プレゼン能力がきっとモノを言うはず。

本書は小冊子ではあるが、プレゼンを行うために必要なテクニックがぎっしり詰まっている。プレゼンを行うための「情報整理の手法」をはじめてとして、情報を「説得材料に変換するためのスケール」や、プレゼンテーション時の「アクションテクニック」まで、実に盛りだくさんなのだ。

例えば、情報は集められるが、そのハンドリングに悩むビジネスパーソンは多いと思う。本書では、たくさん集めた情報を、まずは100行にまとめ、それを10行→1行→一語に圧縮してしまう「コンセプト・キーワード化」の手法を提示している。やってみるとわかるが、便利なテクニックだ。

また、プレゼンプランを考えるために必要なスケール(=チェックリストのようなもの)も、わかりやすく提示されている。プレゼンする内容全体の構成を行うときは忘れてはならない項目を10のTとし、THEME、TITLEなど、それぞれを解説をしてくれている。

実は本書、プランニングを生業にしている人間にとっては、当たり前の内容が多い。しかし、その「プロのノウハウ」が、一般のビジネスパーソン向けに、これほど易しく噛み砕かれている本は、記憶にない。隅から隅まで精読すれば、人に「思い」を伝えるために、しなくてはならないことが、確実に見えてくるだろう。あらゆるビジネスパーソンに、一読をお勧めしたい。

編集者の学校

【編者】講談社Web現代【出版社】講談社
【発刊年月】2001年11月22日【本体価格】2,800円
【ページ数】461p【ISBN】4-06-210835-6

事件も現場も、テレビなどのメディア空間においてバーチャルなものとしてしか存在し得なくなっているんだ。たとえば事件が起きるとマスコミが大挙して押し寄せ、瞬く間に映像化して流す。すると初めて「事件の現場」ができるのです。
本書 324p より抜粋

大冊である。書店にて手にとって見ればわかる。軽装なので軽いが、厚みに圧倒されそうな本だ。南伸坊装丁の表紙の迫力にも、思わずたじろいでしまう。そして、腰帯にはこうある「マスコミで働く諸君!マスコミを志望する学生諸君!必読書です。」と。えっ!普通のビジネスパーソンには無縁?

本書の内容はというと、編集のイロハから取材のノウハウまでを、その業界ではカリスマと呼ばれている人たちが、少ない紙数ながら(なにせ登場する編集者やライターが総勢40名)初めて明かした、というふれこみである。さて勘の鋭い読者なら、何故この本を取り上げたのか、ピンと来ただろう。

まず読み物として本書は面白い。ここにノウハウを開陳しているカリスマたちのことは、読者も一度ならずとも目にしているはずである。その有名人たちの「楽屋落ち」を垣間見ることが出来るのだ。作家達が編集者に求めている資質、ライターたちが執筆する時の気概…サクッと楽しく読めてしまう。

例えば、天才アラーキーは、今の編集者たちは「礼節をなくしている」と嘆く。あの「破天荒」な人が、礼儀を説くなんて!(笑)。現場に行かないと事件はわからないと力説するジャーナリストが多い、一方で、現場百遍なんてもう古いと言い切るライターもいて、一冊の中での混在が笑えてしまう。さて、ビジネスパーソンに何故この本を読めと勧めるのか。理由は簡単。必ず役に立つからである。本書は一見すると「編集」というごく限られた「スキル」について紹介している本に見える。しかし、この本にちりばめられている「方法論」は、実のところビジネスの現場に役立つことばかりだ。

作家が編集者に求めること=クライアントや上司が自分に求めること…に酷似していることが、読み始めるとすぐにわかる。編集者に求められていることは、まとめてしまうと「熱意」なのだが、その「熱意のベクトル」をどこへ向ければ、気難しい人たちは納得するのか、本書は教えてくれる。

また、ライターたちの取材ノウハウ=情報収集のプロたちに、その方法を学ばない手はないだろう。書くことに関するツボ=伝わる文章を書くためのエッセンスを今のビジネスパーソンは身に付けておいて損は無いはずである。腕一本で食べている人たちの「方法」は見習うべき点だらけなのだ。

さらに本書は、情報発信者たちが「何を考えて情報を発信しているのか?」と言うことを知るための格好の材料といえるかもしれない。世の中に発信されている情報に対して、自分なりの視座視点を持つための「教科書」にもなるはずである。二重丸のお勧め本。ぜひ、手にとって見て欲しい。

IBMで学んだことアスキーで得たことセガで考えたこ

【著者】廣瀬禎彦【出版社】WAC
【発刊年月】2001年11月06日【本体価格】1,400円
【ページ数】214p【ISBN】4-89831-031-1

私が求めていたのは、アイデアを生み出す際の基礎となるような考え方を教えてくれるテクニック、いったん身につければイノベーティブ・シンカーが生み出すのと同じたぐいのアイデアを、同じ数だけ生み出せるようになるテクニックでした。そうしたテクニックが見つからなかったので(中略)明らかにしようと私は決心しました。
本書 腰帯 より抜粋

今週紹介する本の筆者のことは、派手かつユニークな経歴の持ち主であることから、ご存知の方も多いだろう。IBMで「アプティバ」を、セガで「ドリームキャストのネット接続」を、そして今、ケーブルテレビで「ブロードバンド普及」に取り組んでいる名物男が「自分のために仕事をする方法」を記している。本メルマガ読者なら気になるところだろう。

本書に書かれていることは、「IBM」「アスキー」「セガ」にて筆者が行った仕事についての「四方山話」をまとめてあるだけである。こう書いてしまうと、本書は魅力無いものに聞こえるが・・・これがとても面白いのだ。筆者のアクションの中に、ビジネスパーソンとして持っておきたい「視座・視点」のエッセンスが詰まっているのだ。

IBMという外資系の企業に在籍した筆者は、相当早い時期から「本場のリストラ」を目の当たりにしたそうだ。会社は定年まで勤めるところではないと実感し、「会社を辞める選択肢も持つ」と結論に至る。そこから、「会社に依存することなく、楽しいと思える仕事をする」という、行動原理を持つようになったという。その後の転職もその原理に基づいている。

また、パソコン業界から出版、ゲーム、そしてブロードバンドと、畑は似ているが異なる業種への転職については、過去の経験が生きない。だから成功体験に縛られることがない。筆者は業種を替えて転職することは、過去の経験のエッセンスだけを生かすということと認識せよ、と言っている。だから、自分の経験を出来る限り抽象化する必要があると説く。

さらに、転職をするということへの恐れの克服として「声をかけてくれた人は、その人なりに私の能力を値踏みして、勝算ありと映っているのだろう」と考えることにした、と言う。一緒に仕事をしませんか、と言う人にとっては、筆者は「1つのソリューション」なのである、仕事をする側は、させる側にとって「商品」なんだと、実にクリアな視点を紹介している。

筆者は日本企業のリストラは、この先も続くと言う。理由として、企業はいったんリストラの味をしめると元には戻らない、としている。不安な時代だが「ものは考えよう」だ、と読者を励ます。自分のキャリアの中からエッセンスを抽出すれば、生かすための次の仕事待っているはずだと。そう信じたい。信じるためになにをすれば良いのか、本書にその指針は書かれている。

プロジェクトXリーダーたちの言葉

【著者】今井彰【出版社】文藝春秋
【発刊年月】2001年08月10日【本体価格】1,238円
【ページ数】221p【ISBN】4-16-357670-3

●南極越冬隊長 西堀榮三郎の言葉
「とにかく、やってみなはれ。やる前から諦める奴は一番つまらん人間だ。」
本書 127p より抜粋

不可能を可能にした無名の日本人たちを紹介した、プロジェクトX-挑戦者たち…というNHKのテレビ番組がビジネスパーソンの間でひそかな人気を集めている。ことを成し遂げたプロジェクトリーダーたちに、視聴者が強く共感を寄せているというのだ。

この番組を見て感動のあまり涙する、そんな人が増えているらしい。元気のない今の日本、少しでも奮い立つような刺激を受けて、頑張りたいという現れだろうか。または、今の不況の風が吹きまくる逆境の中、挫けそうになる自分と、苦労していたプロジェクトを重ね合わせているのかもしれない。

本書は、その番組内で紹介したプロジェクトリーダー18人の言葉を厳選して紹介する内容になっている。「ゼロからの挑戦」を行っているリーダーたちが勝負どころで発した、飾り気も計算もないが言葉の数々。それらに説得力がないはずはない。一つ一つが実に重々しく、そして、輝いている。

例えば当時世界一のテレビ塔である東京タワーを建築したとび職の頭は、時には命を落とすかもしれない職場に、なぜ果敢に挑むことが出来るのか?という質問に対して、「愛でしょうね、仕事に対する。お金とか名誉とかってのは、あんまり考えないですよね、われわれは」とさりげなく言う。仕事に対する愛。無骨な男が発するその不似合いな言葉には、痺れてしまう。

また、ホテルニュージャパン火災の時に、炎の中飛び込み救出活動をした伝説の消防士の時々見る夢は「逃げ遅れた人が迫ってくるんです。一生懸命こっちに来ようとするんです。だけど、何かが邪魔して来れないんです。助けに行くぞとがんばるんです。どんなことをしても助けようと。だけど、たどり着けない」と悔しそうに語る。切ない夢で心を痛める人が…ここにいる。

前書きにこうある。リーダーの言葉が、明確で先鋭であれば、その集団はためらうことなく目標に向かって突進することが出来るのだと。資金にも組織にも恵まれないだろう新たなる挑戦を行うとき、リーダーの資質と存在感が何より大事になってくるのだと。

本メルマガの読者の皆さんの中にも、職場で家庭で、リーダーになっている方も多いはず。何の巡り合わせか、その集団が想像を超えるような逆風にさらされた時、リーダーとしての皆さんの行動が、その集団のすべての命運を背負うことになるはずだ。そんな時、この番組のリーダーたちが持った共通のポリシーを思い出すと良いだろう。「思いは、かなう。」一読を薦める。

究極のビジネスマン ゴルゴ13の仕事術

【著者】漆田公一&デューク東郷研究所【出版社】祥伝社
【発刊年月】2001年07月23日【本体価格】1,500円
【ページ数】242p【ISBN】4-396-61128-5

●ゴルゴは決して握手をしない。でも、バカはところかまわず握手を連発する。●ゴルゴは商談で無駄話はしない。でも凡人は相手にコビを売ってしまう。●ゴルゴは仕事の道具を自分流に改造する。一方、バカは使えもしない新商品に飛びつく。(後略)
本書 見返し より抜粋

ゴルゴ13…デューク・トウゴウ。狙撃成功率99.9%を誇る世界最高のスナイパーだ、って、漫画の話ですが…。現在120巻を超える刊行を誇る日本有数のこの漫画を知らないビジネスマンは少ないだろう。その彼の失敗しない仕事術を、いくつかの視点で分析したのが本書である。この本、一見冗談本に思えるのだが、これがなかなか面白い。

本書の前書きにもあるが、高い成功率を誇る彼の仕事術(=取り組む考え方やルール)は、ビジネスパーソンにも見習うべきものが多い。本書では、デューク・トウゴウの思想と行動、理念と実践、哲学を、35のビジネスシーンに分類。同時にフィクションのデューク・トウゴウと比較するために「秀才・凡人・バカ」と分類された現実の人々の行動も紹介している。

例えば「報酬」について。秀才は「報酬の額に見合った仕事をする」凡人は「報酬と仕事量のアンバランスに気がつかない」バカは「とにかく報酬に目がくらんでしまう」と看破。しかし、デューク・トウゴウは「雇い主がどれだけ自分を真剣に使おうとしているかを知るために報酬を受け取る」としている。どういうことだろうか。

ゴルゴは多額の報酬を前金で要求する。何故だろうか。それは相手の真意を測るためである。まあ、殺人を行うわけだから、当然といえば当然だけれども…。現実、自分が求められている、という視点で、自分の仕事を考えるビジネスパーソンはそうはいないだろう。しかし、自分の求められ方=客観的な評価をきちんと意識して仕事をすることが大切なのは、当然のことだ。

そのほかにも、「顧客」「コンタクト」「ビジネスツール」「経費」など…さまざまなシーンにて、デューク・トウゴウに学ぶべき法則を抽出しているのだ。自分の行動は「秀才」なのか、それとも「バカ」なのか、それを図る物差しにもなっていて(そういう意図でこの本は書かれていないだろうけれども)、今の自分をビジネスアクションをチェックするのにモッテコイだ!

成功に偶然は存在しない、ということを、その仕事振りで私たちに教えてくれるデューク・トウゴウ。スーパービジネスパーソンでもある、彼の生き方から、学ぶことは実はとても多かった、ということが本書を読めばわかる。ファンならずとも、一読をお勧めする。筆者の「妄想」がたっぷり入ったコラムもかなり面白い。でも、ゴルゴが上司なら…ちょっと嫌だなぁ。

テクノ・ヒーローの伝言

【著者】滝田誠一郎【出版社】小学館
【発刊年月】2001年08月01日【本体価格】1,200円
【ページ数】285p【ISBN】4-09-346421-9

「特許を申請できるくらいの成果を上げても、それでも正規のテーマとして認めてもらえない。ならば実験機を作ってデモでも見せてやろうじゃないか、と。ベル研でやっているレベルのことだったら、あんなものすぐにできるさとかいって実験機を作りました」(中略)日本初の文字読み取り装置が完成する。が、それを見ても課長の評価は変わらなかった。
本書 144 p より抜粋

本書カバーの折り返しにこうある-「20世紀後半に活躍し、日本を世界に冠たる技術大国にした陰の立役者たち」を本書では「テクノ・ヒーロー」と名づけた-と。怒濤のように世界を席巻した「メイド・イン・ジャパン」を生み出した17人の物語である。面白いに決まっている。

世界にはばたいた日本製品…どのようなものがあるだろうか。例えば「チキンラーメン」「ジャスピンコニカ」「ウォークマン」「写ルンです」「プリウス」-それらのすべては、実にオリジナリティ溢れるものである。その素晴らしい製品を開発するに当たって、開発者たちは、何をどう考えていたのだろうか。

日本語ワープロを開発した東芝の研究者は、入社後に与えられた研究テーマにおいて、アイデアを出せども出せども、先人が必ずいる。もう研究は嫌、と思った矢先に、あまり人の手に触れていない研究テーマを見つける。会社には内緒(=アンダー・ザ・テーブルと呼ぶそうだ)で研究を始める。そして、3年経って、その研究が会社に認められ、ワープロ開発の糸口となる。

ボンカレーを完全な製品として世に出した大塚化学の研究者は、不完全だった製品を見て、自らの技術を会社に売り込む。完全な製品化に成功するも、20年後に左遷されてしまう。が、好きなことをやって良いと言われ、海外をブラブラすることに。そこで見つけたマイクロ波による食品加工技術を応用して、「あ!あれたべよ」を作ってしまうのである。

そう、彼らの話は一様に面白い。分野は違うはずなのに、皆同じように自分たちの技術に信念にも似た自信を持っている。また、どんな難題にも「考える」という、実にシンプルな行為で乗り切ってしまう。「絶対にできるはずだ」「何としてでもやらなければ」「断固としてやるべきだ」-著者の言葉を借りれば「開発者魂」を持って製品開発をしているのだ。

ひとつひとつのエピソード中に、自分の仕事に応用できるスキルが隠されている…と言うわけでも別にない。しかし、読んでいて、ワクワクする、ドキドキする、そして、自分の普段の仕事振りを見直し、そして…。明日からしっかりと頑張ろうって、やる気になるのだ。つまり、ビジネスパーソンに元気を与える、そんな本である。ぜひとも、手元に1冊常備ください。

コンサルティングの悪魔

【著者】ルイス・ピーノルト【訳者】森下賢一【出版社】徳間書店【発刊年月】2000年10月31日【本体価格】1,800円【ページ数】406p【ISBN】4-19-861256-0

コンサルタントという職業は、現代において、親の七光、遺産、コネ、特殊な才能などに恵まれなくても、少し頭がよく、ことにその回転がよければ、普通のサラリーマンにはとても望めない莫大な収入、パワー、早い昇進などを実現することが期待できるキャリアだということが(中略)理解できる。
本書 404p より抜粋

コンサルタント…確かに不思議な商売である。その分野でのエキスパートではない彼らが、一定のメジャー(=このハカリがミソなのだが)とノウハウを持って、企業再建などを担っていく。そんなコンサルタントの「裏=悪魔的な部分」を、赤裸々に描いたのが本書である。少し古い本ではあるが、とても面白いので紹介しておきたい。

本書では、コンサルタントになるための方法から、コンサルタントの日常、その社内での人間関係、プレゼンテーションや提案書作成のテクニック、はたまた、ストレス解消法まで、事細かに書いてある。それらは、とてもドラマティックな文章で紹介されており、読むものを飽きさせることがない。ノン・フィクションではあるけれども、よく出来たドラマのようなのだ。

例えば、恐怖の階級制度…という章では、コンサルタントにおける最悪の恐怖の一つに「失敗しつつある任務の中心に収まってしまうこと」をあげ、実際に筆者がそうなってしまったケースを書いている。そして、まとめには、「コンサルタントは失敗しそうな任務をどうやって予知するか」として、教訓が述べられている。この、各コラムのあとにあるまとめは絶品である。

ドラマティックに仕立てられた事実を、コンサルタントらしい分析で、ある種の「教訓」としてまとめ上げている。ここを拾い読みするだけでも、本書を手にする意味はあるだろう。

先の章の例では、入れ込みすぎない・内部からの危険信号を無視しない・誤った信頼を持たない・データの量にこだわらない・クライアントの事業との疎隔感に気をつけること・予定された会議への欠席や結果提出の遅延が続くと危ない…など、10の項目がまとめられている。どれもなるほどと、思わず唸ってしまう。

筆致はとてもネガティブである。しかし、ビジネス社会における様々なノウハウを、別の側面から描き出している、と言っても過言ではない。その面白さと、詰まっている知恵を考えると、お買い得な本だろう。一冊でしばらく楽しめます、お勧め。でも、コンサルタントって、こんな人ばかりではないですよ、この点はお間違えのないように!

マッキンゼー式世界最強の仕事術

【著者】イーサン・M・ラジエル【訳者】嶋本恵美/田代泰子
【出版社】英治出版【発刊年月】2001年04月20日
【本体価格】1,500円【ページ数】262p【ISBN】4-901234-11-0

よい仕事上のメッセージには、簡潔、完全、構造という三つの特徴がある。ボイスメール、電子メール、社内連絡メモを送るときに、この三つの点が守られていればメッセージは伝わる。
本書 190p より抜粋

社会全体の情報化が高度に進み、仕事をする=情報を処理する、という時代になってしまったようである。それにより、今までの仕事のやり方ではスピード不足となり、先輩だからといって、あとから入社した新人に、おいそれと仕事を教えることが出来ない状態に、実はなっているようだ。そこで、仕事のハウツー…今、あらゆる仕事術の本が売れている。

マッキンゼー・アンド・カンパニーは、本書にもあるとおり、世界的にもっとも有名な戦略コンサルティング会社の一つである。そのメンバーには著名人も数多く、優秀な人材が強力な組織を築いていると評判だ。その組織体の中で作られた仕事術、否が応でも期待してしまう。そして、事実、この書籍はとても売れている。

本書の内容は実に簡単なモノである。事実に基づいた、構造的な思考に、プロとしての誠実さを結びつければ、ビジネスの目標への道を歩むことが出来る、これだけだ。しかし、すべてのビジネスパーソンの行動の基本は、この簡単なプロセスに集約されていると言っても過言ではない。そう、これさえ出来れば仕事は出来るのだ。

本書ではまず、ビジネスにおける問題をどう考えるか、ということをレクチャーしている。解決法の作り方、問題解決への重要法則など、いずれもこのメールマガジン読者なら、良く知っていることではあるだろうが、コンパクトにまとめられていて、頭の整理になる。そして、具体的な解決方法、解決策のプレゼンテーション技法へと続く。何れも簡潔で的を得たコラムだ。

さらに、マッキンゼーで生き抜く方法として、厳しい競争社会を生き抜くためのノウハウが提示されている。自分だけの師匠(メンター)を見つける、良きアシスタントを確保するなど、仕事そのものよりも、仕事をするための環境について、幾つかの有益なアドバイスがなされている。自らのビジネス環境を改善するためのヒントが、多く含まれているはずだ。

本書の腰帯にこうある。「知識・情報を詰め込む前に、ビジネスの基本思考を学べ!」…情報処理が仕事になりつつある今のビジネス社会ではあるけれども、情報を処理するためのエンジンがしっかりしていないと、仕事はままならない。実に当たり前のことである。本書を読めば、その当たり前のことが確実に出来るようになりそうだ。自らのスキルチェックとして…どうぞ!

口コミ伝染病

【著者】神田昌典【出版社】フォレスト出版
【発刊年月】2001年03月10日【本体価格】1,500円【ページ数】274p
【ISBN】4-89451-109-6

口コミに関する研究が少ないのには、理由がある。口コミには、「お客様に奉仕していれば、自然に起こる」「コントロールできない」との迷信があるからである。この迷信のために、口コミを主体的に活用しようと思う会社がほとんど現れない。(中略)この本は、口コミ・パワーを強める方法を、誰でも即、実践できるように書かれている。
本書 6ページ より

今回は、職務上の直接的なメリットを受ける人は、そうたくさんはいないだろうけど、実に面白い一冊を紹介する。今マーケティングの世界では、その効果が見直されている「口コミ」について、今までの常識を覆すセオリーをたくさん紹介した、いわゆる「目からウロコが落ちる」本である。

従来のマーケティング業界の常識としては、口コミは自然発生的に生じるもので、コントロールやプロモーションは難しいとされていた。本書はその常識を覆す、口コミをある程度こちら側から起こしてやり、自らの顧客自身が「宣伝媒体」となるプログラムを提示している。その仕組みは明快で、実践が容易であるようだ。読んでいて、力が湧いてくる、そんな内容である。

さて、詳しい内容は本書を手にとってもらえばわかることだが、ここでは本書をまったく違う視点で読み解いてみたい。本書の筆者は2500社の顧客を抱える、カリスママーケッター。本書を読む限り、絶大な信頼を寄せられているようだ。その信頼の秘密は、本書をよく読んでみるとわかる。

まず、文章が平易である。読んでみればわかるのだが、単にカンタンというわけではなくて、読み手のレベルとニーズに合わせてある。次に、引いてくる様々な事例が適切で、スキルの理解をサポートすると同時に、実践をする際のイメージトレーニングになっている。さらに、スキルの理解から行動までが、押し付けがましくなく、しかし、一直線で設定されている。

賢明な皆さんは、すでにお分かりだろう。この本は、どのようにして相手を説得すれば、その相手は十分に得心するのか、という「ギミック」が満載された本なのだ。どうすれば「きっかけ」が掴めるか、どの例をあげれば相手が「イメージ」しやすいか、どうすれば相手が「行動」を起こすか…。きちんと読めばすべて書いてある。これは、すべてのビジネスパーソンに必須のスキルであるはず。

スキルアップのための読書に大切なことは「雑食」であると言って良い。要は、自分には関係ない分野だからといって、書店に並ぶ面白そうなビジネス書を読まずにいることは、実は大変な損失なのだ。多方面の「ビジネス力」を形成するためには、好き嫌いせずになんでも食べることをお勧めしよう!

構想大学デザイン学部

【編】ATAデザインプロジェクト【出版社】プレジデント社
【発刊年月】2001年01月25日【本体価格】1,400円【ページ数】237p
【ISBN】4-8334-9065-X

構想デザインとは構想と解決(実践表現)である。成長から深化、成熟化への道を歩む転換期に新たなシステムをデザインする、一人ひとりの幸福、満足のために生産し、サービスする、社会システムも変える(中略)「構想デザイン」は新たな言葉であるが、組織や個人の経営資源となることは間違いない。
本書 講座終了の言葉 より

デザインと聞いて思い浮かべるのは…グラフィック、プロダクト、建築、インテリアなどだろう。本書でいうところのデザインとは、表現を主体とする狭義のデザインではなく、この言葉が本来持っている「構想、発想」という意味で用いられている。その範囲は「DNAのデザイン」から「国のデザイン」まで、とても幅広い。

本書では、新しく広い意味でのデザイナーを、様々な分野に訪ね、その行動におけるポリシーをまとめている。紹介されている24人は、構想を持ち、方策を示し、実践すること、それを「デザイン」としている。これからのビジネスマンとして、もっとも必要とされる能力そのものではないか。

例えば、セレクトショップ・ユナイテッドアローズの重松社長は、事業は拡大するばかりではない、ビジョンをデザイン化するために起業したんだ、という潔さから、想いをカタチにするための人材配置、コンセプトデザイン、編集作業だという店作りに注力する。その視点は、プロジェクトをマネジメントする際に参考になるだろう。

「事業構想学部」というユニークな学部を持つ宮城大学の野田一夫学長は、本書の中で構想とは「発想を計画に結びつけるまでの仕事のプロセス」である、と述べている。また、各種のプロジェクトで、終始キーマンとしての役割を果たせる人材にとって、「構想」という概念は、基本的職能であり、かつ必須資質であるとしている。

先端・営・感性・共生・社会・育…の6分野で、時代の最先端を走る「構想デザイナー」たちの話はとても興味深く、そして、かなり刺激的だ。彼らの共通点である、新しい視点の持ち方、既存の枠を越えて新領域を作り出す能力、時代を読み取る優れた先見性、それらが、それぞれの立場から、自身の言葉で語られる。力に満ちたその言葉は、読むだけで元気が沸くようだ。

最近流行している多くのビジネス書のように、エッセンスを抽出というスタイルではなく、書名でもわかるように、それぞれの人物による講義仕立てになっている。興味のある項から読み進められるところも嬉しい。すべてのビジネスマンが「デザイン」という視点を持つことを願って、この本を強くお勧めしたい。

ポケモンストーリー

【著者】畠山けんじ/久保雅一
【出版社】日経BP社
【発刊年月】2000年12月10日【本体価格】1,400円【ページ数】542p
【ISBN】4-8222-4199-8

ポケモンは、人々の予想をいつも覆します。ポケモンカードも(略)「コロコロコミック」の綴じ込み付録のカードに刺激された子どもたちは、発売と同時にポケモンカードに殺到しました。難しいゲームだと言われ、任天堂をはじめとする玩具メーカー、卸問屋、小売店に敬遠されていたにもかかわらず
本文 244p より

アニメやコミックスなどと並んでテレビゲームは、ある意味、世界に誇る日本の製品であると言ってよいだろう。その中でも「ポケモン」ことポケットモンスターは、世界中の子供たちのハートをつかみ、虜にしている、ナンバーワンの製品だ。本書は、そんなポケモンが描いたサクセスストーリーを、丹念な取材と担当プロデューサーの脚注という手法により、紹介している。

ポケモンについて、全く知らないという人はいないだろう。任天堂より販売されている「ゲームボーイ」という携帯ゲーム機のアプリケーションだ。ゲームの詳細は割愛するが、テレビゲームの持つ要素に「交換する」という行動を持ち込んだ、画期的なソフトであることは、あまり知られていない。

このポケモン、ゲームからアニメ、グッズなど、トントン拍子に成功を収めたと思われがちなのだが……。実は、テレビゲームにおける新しい概念をどんどん盛り込んだために、開発はベタ遅れ、ソフトウェアの斬新さに対する評価軸の無さから、ヒットまでに周辺のバックアップが無い、ヒットしたらしたで、アニメ番組が事故を起こしてしまう、なと、一筋縄で今の地位を築いたわけではないのだ。本書では、そのあたりの「苦労話」が丹念に書き込まれている。これが、ポケモンを知らない人でも、かなり面白い。

また、テレビゲームのキャラクターが、マンガに、アニメに、映画に、グッズにと、水平展開されていくのだが、プロデューサーたちの戦略的でいて、大胆な行動、緻密な計画に、驚かされること多数である。成功すべくして、ポケモンは成功したんだなと、思わず唸ってしまう。ビジネスチャンスを見つけ出し、誰をターゲット(=消費者・社内の両方)にすれば、このプロジェクトは成功するのか…。本書から、その勘所を学ぶことが出来るだろう。

腰帯に日本初の「親子で読めるビジネス書」と銘打つだけあって、本書は振り仮名がついている。大冊でもあるし、冬休みにじっくりと親子で楽しまれてはいかがかなと、お勧めする。なるほどと、膝を打つ場面が満載ですよ。

戦略シナリオのノウハウ・ドゥハウ

【著者】野口吉昭編/HRインスティテュート著
【出版社】PHP研究所
【発刊年月】1999年07月15日【本体価格】1,600円【ページ数】235p
【ISBN】4-569-60685-7

戦略は、理念&目標というビジョンを実現するための大きな方向づけ、ベクトルであり、計画・管理・業務を本来、規定するものだ。つまり、多くの意思決定を統合するルールでもある。(中略)が、この定義では、少々モノ足りない。それは、抽象的すぎるからだ。(中略)戦略の定義は、時代背景や市場構造によってニュアンスが異なって当然! 現在は、やはりFocus & Deep! がわかりやすい。
本文 25p より

あなたの企画には戦略が足りないな--と言われた経験はありますか?あると答えた人は、優秀な上司をお持ちですね、羨ましい限りです。

ビジネスの現場で戦略という言葉を耳にすることは多いが、戦略とは何なのか、きちんと理解している人はひどく少ない気がする。総花的でお題目のような言葉を戦略と呼ぶ人もいれば、実施するための計画を戦略と勘違いしている向きもある。今回紹介するこの本は、戦略とは何か、その入り口から、戦略立案の方法論まで、ギュッと凝縮された一冊だ。

本書では、戦略はコンセプトであるとしている。ここで言うコンセプトとは、従来からの「概念」とは少し違い、何かに対しての「差別的優位性」である、としている。つまり戦略とは、あるビジョンを実現するための、差別的優位性を示したものであり、ビジョン実現のために用意される、さまざまな計画の指針となるべきものである、と定義付けている。このあたりの「言葉」の整理がきちんとなされている本は、意外と珍しい。

さらに、戦略を実現するための「シナリオ」を作成するための-分析、考え方をまとめる、具体的にプレゼンテーションをするなど-ノウハウを紹介している。それぞれが、簡潔ではあるが「しなくてはならないツボ」をきちんと押さえてあるために、手引書として完成度の高いものになっている。

平易な文章と適切な図版(まとめる書類のサンプルまである)で大変わかりやすい本書は、とても魅力的だ。しかし、ノウハウだけでは、必要十分でないことも忘れてはいけない。ツールを使いこなすには、利用者側にもそれなりの「体力」を要求する。ビジネスに関する「視座・視点」をきちんと持ち合わせなければ、どんな優れたノウハウも、宝の持ち腐れとなるだろう。

このノウハウ群を積極的に「ツール」として活用することによって、企画や、戦略立案といった部分でのビジネススキルが、かなり向上することだろう。それほどに即効性の高い本である、とお勧めできる。版を重ねているようなので、手に入れやすいはずだ。ぜひ。

問題解決と意思決定

【著者】クイン・スピッツア/ロン・エバンス
【出版社】ダイヤモンド社
【発刊年月】1998年10月22日【本体価格】2,400円【ページ数】298p
【ISBN】4-478-49026-0

混同されることが多いが、「知識」と「情報」は異なる概念である。情報に深い思索や体験を加えることによって自分の血肉になったもの、それが知識である。(中略)本書が示す「問題解決と意思決定」という枠組みはそのかなりの部分がわれわれの知識創造の枠組みと重なり合っている。
本文 日本語版に寄せて より

ある外資系企業に勤める外国人ビジネスマンと、日本の企業の会議について話す機会があった。彼は、議題が事前に通知されていないこと、その割には、その場で話し合うだけの前提を誰も持っていないこと、結論がかなりの割合で持ち越されてしまうことなど、その効率の悪さを嘆き、何とかならないのかとぼやいていた。なるほど。

よく考えてみれば、会議の進め方なんて、ビジネススキルのひとつだと思うのだが、系統立てて社員を教育している会社は、それほど多くない(はずだ)。同じように、日本のビジネスマンは、今、直面しているビジネス上の問題を解決するためのノウハウに関するレクチャーを受けているのだろうか。たいていは、先輩などのみようみまねで、何とかやり過ごしているケースが多いはずだ。

本書は、問題解決の普遍的な手法として、クリティカル・シンキング・プロセスと題して紹介している。触りだけ紹介すると、それは、4つの思考プロセスからなる。

まずは「状況把握」=これは、起きている問題を特定するために考えられるウイークポイントを洗い出し、優先順位をつけるプロセスである。次に「問題分析」=これは、先ほどあげた問題点の中から、真の原因を見つけ出すためのプロセス。そして「決定分析」=問題点に対する対応策を検討し決定するプロセス。最後に「潜在的問題・潜在的好機分析」=簡単に言えば決定された対応策を実施し続けるためのプロセスである。

どれも、簡潔ではあるが、ツボを得た解説がなされていて、頭の中がどんどん整理されていく感じすらする。上にあげたプロセスは、至極当たり前のことであるはずなのだが、意外と出来ていないことでもある。ハウツーとして整理されていれば、有難いことこの上ない。そのほかにも、情報過多を克服するための方法、システム思考を行うためのコツとツボ、意思決定にかかわる価値観の作り方など、興味深いコンテンツが盛りだくさんである。

冒頭に引用したが、「知識」と「情報」は異なるものである。ビジネスハウツー本にある情報を、うまく知識化する、その方法論が明示されているこの本、ぜひとも手にとるべきだろう。

知られざる特殊特許の世界

【著者】稲森謙太郎【出版社】太田出版
【発刊年月】2000年08月04日【本体価格】1,600円【ページ数】258p
【ISBN】4-87233-526-0

もしあなたが、会社の仕事の一環として発明しようと考えているのなら、その発明は、会社のもとのなってしまう可能性が高いということだ。というのも会社の従業員の場合、ふつうはその入社時に「職務発明(会社の業務範囲に属し、発明をするに至った行為が現在または過去の職務に属する発明)は、その特許を受ける権利を会社に事前譲渡する」といった内容の雇用契約を結ばされることが多いからである。
本文 256p より

「特許」とは、周りに溢れているはずのものだけれども、ほとんど縁のないモノでもある。ビジネスモデル特許が話題だけれども、多くのビジネスマンは、特許そのもののことは、ほとんど判っていないだろう。本書は、フツーの人にも読める特許の本を作りたい、という著者の思いが形になったものである。表題の「特殊特許」とは、著者特有の言葉で、出願者がフツーじゃない、技術の内容や解釈がフツーじゃない、権利の範囲がフツーじゃない、と、とにかくフツーじゃない特許をこう呼んでいる。そのフツーじゃない特許を糸口に、特許と言う世界を解きほぐしていく。

特殊特許は、松下電器が考えた「漫才人形」や、小室哲哉が出願した「時計型シンセサイザー」、大仁田厚の「特殊リング」、鈴木その子の「ダイエット食品特許」など、興味深いものが多い。その一つ一つの特許を、発明者へのインタビューと、一般人にもわかりやすい解説、という構成で紹介している。本文そのものもかなり面白いが、派生していく話題、例をあげれば、大仁田厚の「特殊リング」の解説から、プロレス技は特許が取れるのか、というあたりは、なるほどと思いながら、笑ってしまう。

本稿の読者にとっては、この特殊特許の部分は「頭の休憩」的な部分であり、実は、本文に挿入されている「コラム」を一押ししておきたい。「知的所有権について」「特許の取得方法」「特許の範囲」「ビジネスモデル特許について」などの、特許に関する広く一般的な知識が、コンパクトに面白いエピソードと一緒にまとめられている。特許に関する入門書を読めば良いのだろうけれども、その無味乾燥さから比べると、やはりこの本は「出色」の出来である。

これからの時代、ビジネスマンに必要な基礎知識のひとつとして「特許」ははずせないように思う。アイデアがビジネスになる時代、その権利に関する知識は、広く浅くでも良いから知っておくべきだろう。シニカルな笑いに包まれたこの本で、サクッと知的武装しよう。

花森安治の編集室

【著者】唐澤平吉【出版社】晶文社
【発刊年月】1997年09月30日【本体価格】2,100円【ページ数】269p
【ISBN】4-7949-6322-X

「(略)それよりぼくからきみたちにいっておきたいことがひとつある。それは1年間、なぜと訊かないでほしいということだ。ここでは朝から晩まで、なぜと訊きたくなることが山ほど出てくるはずだ。しかし、訊かないでほしい。そんな質問にいちいち答えていたら、こっちはしごとをしている間がない。百万言ついやしてわかるならいいが、ことばではわからないことがある。だから、なぜと疑問におもったらじぶんで考えてほしい。1年もすればわかるだろう。これだけだ」
本文 35p より

花森安治とは、日本のメディアの中でもひときわ異彩を放つ雑誌「暮しの手帖」初代編集長である。筆者は、その伝説の編集者の元で、編集部員として過ごした。本書は、厳しくも実りある日々を綴った評伝である。ハウツー本ではないので、ビジネスシーンにおける具体的なノウハウが書かれているわけではない。しかし、底に流れる「ビジネスの基本」という水脈を自ら見つけることで、必ず役に立つはずだ。

花森は編集部における「独裁者」であった。引用部分は聞きようによっては部下を信頼した発言におもえるが、他のページをよく読むと、実は、考えるのは自分だけで良い、周りは手足であれば足るのだ、と言い放っている。ひとつのものを作り上げる過程で、そのすべてを思うが侭に作る、しかし、すべてに神経を行き届かせる。同時に、出来あがったものすべてに対して責任を取る。この頑ななまでの「職人的」な姿勢は、今のビジネス社会で忘れ去られている部分である。仕事をする上で肝に銘じなければならない、見なおすべき視点だろう。

またこの独裁者は、折に触れて、自らのポリシーをスタッフに明確に伝えている。なぜこう考えるのか、どうしてこのような作業をしなくてはならないのか。仕事に対してかかわる人々の間での意思疎通。リーダーがもっとも配慮しなくてはならないポイントであるが、それは一番難しい作業でもある。人間関係の調整と言うだけでなく、すべてのスタッフに対して思想を浸透させることも重要である、ということを本書は教えてくれる。

ビジネス社会における個性的な成功者の評伝を読むことはとても楽しい。自らのキャリアアップの一助になると言う以上に、その生き様が痛快であったり、悠揚迫らぬ風格があったりと、読んでいて飽きることがないからだ。こんな凄い人がいるんだなと、読後に元気が沸いてくるのが嬉しい。少し前の本なので、入手が難しいかもしれない。大型書店、図書館、古書店などで探してほしい。疲れが出てくるこの時期、一服の清涼剤としてお勧めしておく。

総解説・ビジネスモデル特許

【著者】牧野和夫/シドニー・ハント・ウィークス/河村寛治
【出版社】日本経済新聞社
【発刊年月】2000年06月07日【本体価格】1,600円【ページ数】189p
【ISBN】4-532-14835-9

コンピュータ2000年問題が何ごともなく過ぎ去った今日、もっとも脅威となるビジネスリスクは何であろうか。米国のビジネス関係者は、おそらく口を揃えて「ビジネスモデル特許」と答えるだろう。反対に、eビジネスの拡大の後で、金脈を掘り当てるような一攫千金のチャンスはどこに転がっているのだろうか。この質問に対しても、米国の多くのビジネス関係者は同じように、「ビジネスモデル特許」と答えるだろう──。
本文 はじめに より

ビジネスモデル特許──。ビジネス雑誌などで、しばらく前から頻繁に目にする言葉である。本書では、この注目される新型特許の全体像を、順にビジネスモデル特許の概念、先進国であるアメリカの具体的な事例、今後のアメリカの特許政策の方向性、日本での実例と特許法との位置付け、今後の企業としての対応策と、さまざまな側面から、詳細に解説している。ビジネスモデル特許とは何ぞや、この本を読めばある程度はわかるようになっている。

ビジネスモデル特許とは、カンタンに言うと「主にITを利用して実現したビジネス手法を対象にして取得された特許」のこと、とある。従来の特許法などでは、認められないだろうと思われていた、アイデアや手法などが、IT関連であれば特許とみなされていく。それは、アメリカの特許保護政策もさることながら、インターネットを中心とした技術の進化のスピードと、浸透の速度に合わせたものであると言うことが、本書を読み進めていくうちにわかる。

そのほかにも、「あなたの会社が警告書を受け取ったら」という、実に興味深い項もある。警告書の内容だけでは不十分な場合が多いから、特許侵害の理由を明らかにしてもらうことが第一である、というところから始まって、どういうプロセスで対抗していくのか、が書かれていて、実務者でなくとも、かなり面白い。インターネットがこれだけ普及すると、いつ何時、自分の業務範囲内が、ネットワーク技術とかかわってくるかわからない。突然、ビジネスモデル特許と、格闘しなければならなくなるだ(ヤヤ大げさか?)。知っておいて損はない。

ビジネスモデル特許を解説した本は多数出版されているが、易しすぎず難しすぎないベストバランスの本書を、このコーナーではお勧めしておきたい。「ビジネスモデル特許」が気になるヒトは、本書でまずアウトラインを掴むと良いだろう。

広井王子の全仕事

【著者】出山健示 【出版社】毎日コミュニケーションズ
【発刊年月】2000年04月07日 【本体価格】2,857円 【ページ数】 191P
【ISBN】4-8399-0259-3

目の前には小さな革製の旅行カバンがひとつずつ置かれている。ペタペタと無造作に貼られたステッカーが異国情緒を醸し、旅ごころを刺激する。どの顔にも一様に、この意表を突いた企画書に戸惑いを隠せない。──企画書? そう、テーブルの上にズラリと並んだ小さなカバンは、広井王子によって、「これが企画書です」と配られたもの。この日レッドカンパニーが提案する企画書だという。
本文「企画書芸術論」より

「サクラ大戦」シリーズや「天外魔境」シリーズなどで、ゲームファンにはおなじみの、クリエーター・広井王子。この本は、ゲームクリエーターとしての枠を超え、マルチに活躍する彼の仕事振りを、一冊にまとめたものである。これがかなり面白い。

B級クリエーターを自認する広井。その理由を「自分は新しいものを作り出しているわけではない。子供のころのキラキラした思い出を、今の時代に合うようなカタチでよみがえらせただけ」とする。しかし、これは、蓄積された情報を、加工してカタチにするという、当たり前の企画技法だ。別段珍しいことでもない。広井は企画をするということ重視していて、「企画自体が技術。コトを起こすための技。だから技術料が派生するのが当たり前」と考えている。そして、B級と言っている割には、「私の企画料は高いですよ」と公言しているらしい。プロとしての高い意識を感じると同時に、無形なものに金をかけたがらない日本の風潮に一石を投じている。

モノづくりにこだわる反面、例えば、遅くなりがちなゲーム発売日を守るために、作りこんであったエピソードを捨てる、という思い切りの良さも見せる。これらの行動は、すべて、お客様のために、という基準で成されている。クリエーターなのに、独り善がりにならず、客のためにという感覚を大切にしているところも、興味深い。このような、モノ作り職人としてのエピソードが満載で、広井のことを知らずとも、十分に満喫できる。

筆者の力量不足か、見出しの割には中身が薄い部分もあり、全面的に満足と言うわけにはいかない本ではある。しかし、次の二つのコトは学べる。「ヒトの心を捉えるにはどうすれば良いのか」そのエッセンスが、この本には散りばめられている。それと「案外オーソドックスなスキルで新しいエンター テイメントは作られている」ビジネスを成功させるスキルは、案外「ヒトに好かれる」ってトコロにあるんじゃないか。そんなことを気づかせてくれている。探して読んでみて欲しい一冊だ。

戦略コンサルタントビジネス・スキル・ブック

【著者】小河光生【出版社】東洋経済新報社
【発刊年月】1998年11月06日 【本体価格】2,200円 【ページ数】 254P
【ISBN】4-492-53048-7

自社の先輩のノウハウを当てにできない今、自ら新しいスキルを開発していかなくてはならない。そのためには自らのスキルをまず、全て「棚卸し」して、時代に合わないスキルを捨象し、ビジネスの原理原則まで立ち戻る必要がある。そして、この本の内容が新しい「ビジネス・スキル」取得の端緒になってくれれば、と願っている次第である。
本文「はじめに」より

経済誌を開いても、ビジネス雑誌をめくっても、そこにはいつもコンサルタントがいる。まさに引く手数多、時代が彼らを求めているのだろう。現代のビジネスマンに必要とされるスキルは、置かれている状況を的確に把握し、最短距離で適切な戦略を実行できるか、と言うことに尽きる。

しかしながら、的確に状況を判断するためには、どうすれば良いのか。把握した状況を分析するには、何を基準にすれば良いのか。分析から導き出された状況を改善するためには、どのような戦略を立てれば良いのか。これらを系統立てたスキルとして持ち合わせているヒトは少ない。コンサルタントは、これらのスキルを持ち合わせていないとできない仕事。まさに、全てのビジネスマンに、コンサルタント的要素が求められる時代になったのだ。

本書は、コンサルタント的要素を持つヒトのことを、付加価値型人材として、その人材とは、いったいどういうヒトなのか、また、そのような人材になるためには、どのようなスキルが必要なのか、ということが、簡単にまとめてある。ざっと目を通してみると、どのような能力が要求されているのかが、良くわかるようになっている。

付加価値型ビジネスマンになるための、基本的なスキルとして、「情報の練りこみ方」「様々な戦略や方法論を知ること」を紹介。また、各論として「財務会計」「マーケティング」「マネジメント」それぞれの分野の、必要とされるポイントが、わかりやすくまとめられている。時代が求めるビジネスマンになるためには、何を知っておかなくてはならないか、その道しるべとして、適当な一冊だろう。

自分に足りない(コンサルタント的)スキルはいったいなんなのか。この本でチェックしてみることをお勧めする。

デザインマネジメント戦略

【著者】佐藤典司【出版社】NTT出版【発刊年月】1999年04月30日 【本体価格】2,300円 【ページ数】 257P 【ISBN】4-7571-2013-3

いまや、商品の基本的機能の価値が主体で、商品の発する情報価値が従という時代は終わった。もちろん、その力関係は個別の商品によって違うだろうが、おしなべて、消費における情報価値優位の時代は、ますます動かしがたいものとなりつつある。
本文18ページより

ドラスチックに変わる消費者のこころを的確にとらえ、商品やサービスの魅力をアップさせる情報価値創造の定石を、本書では解き明かす。腰帯にある「ヒトは、商品そのものの性能も大切だけれども、それ以上に、付加されている情報に消費行動が左右されている」ということを、実にわかりやすくまとめている。本書は二つのパートからなる。まず、情報消費社会論と題して、情報消費社会という新しい概念を、詳細に提示し、つづいて、デザインマネジメント戦略とし、情報消費社会に企業が対応するための、マネジメント手法を、具体的に提示している。

情報消費社会論では、情報は「何かとの差」であるとし、その価値は「他との相対的なもの」であるとしている。一過性の流行、と片付けられていた現象も、実は、その商品が持つ情報の他商品との差異が、ライバルの追随か、自らの販売拡大によって自然に埋まったからだとし、消費者の飽きっぽさを嘆くのは、多くの場合間違いだとしている。売れすぎるから、商品価値が下がる、それは、その商品が、機能を求められているのではなく、その商品についた情報を求められているからに他ならない、とするこの視点、特に目新しくないが、明快になっていた話でもない。なんとなく、わかっていたことを、クリアにされていく快感が、この本にはある。

デザインマネジメント戦略では、デザインマネジメントを実践していく上で必要なスキルを、目標設定、管理手法、人材、組織づくりなどの、多方面から示唆している。情報と、その価値を論じる本は多数見ることができるが、情報の価値を見出し、その価値を作り出すためのスキルを詳細に論じた本は少ない。その部分でも、特筆すべきだろう。

講義を思わせる丁寧に順を追った説明と、饒舌とも感じるかもしれない砕いた文章が、本書をわかりやすいものとしている。難を言えば、つまみ食いしにくい本ではあるが…。ゆっくりと噛み含むように読むと、なるほどと思えるはず。情報の本質を掴むためには、一読しておくべき本だろう。

ティッピング・ポイント

【著者】マルコム・グラッドウェル【出版社】飛鳥新社
【発刊年月】2000年03月15日 【本体価格】1,700円 【ページ数】 310P
【ISBN】4-87031-394-4

ティッピング・ポイント[THE TIPPING POINT]
あるアイディアや流行もしくは社会的行動が、敷居を越えて一気に流れ出し、野火のように広がる劇的瞬間のこと。
同書 見返し より

あらゆる流行の感染には原因がある。同書では、流行=感染であるとし、その「病原菌」を探すことで、流行の仕組を構造的に説明しようとしている。その試みが、まずとても興味深い。伝染病が感染する仕組は、病原菌を運ぶ人々、病原菌そのもの、病原菌が作用する環境、その三つの関数である、と同書では説明している。それらの要因を、流行になぞらえると、少数者の法則、粘りの要素、背景の力、とし、詳細な解説を行っている。すべてを説明する余裕はないので、少数者の法則の触りだけを紹介する。

まず、流行が生み出されるのは、ごく限られたキーパーソンが、発信源となって起きている、と述べている。そのキーパーソンは、社交的で、活動的で、知識が豊富で、しかも、仲間内に影響力がある、といった事柄にぬきんでているヒトであるとしている。これらの要素を持たないヒトが発信する情報と、持つヒトの発信する情報では、伝達力に格段の差が生まれるらしい。また、それぞれも、能力により、コネクター、通人、セールスマンと分類されている。それぞれがどういう特性があるのかは、同書を読む楽しみとして残しておこう。ここでは書かないが、なるほどと膝を打つことは、請け合いだ。このキーパーソンをどう動かすか、ということが、流行づくりのカギになるとしている。

当たり前のセオリーのようだが、この手の話が、論理的にまとめられた書籍は、実はとても少ない。豊富な事例や、わかりやすい引用。文章内の重要な文言には、極端に太い文字を用いるなど、読みやすさにも配慮している。鍵穴を模したクエスチョンマークを、大きく配した装丁、内容が俯瞰できる腰帯など、書店で手にとって、楽しいものとなっているところも、評価しておきたい。

流行していく仕組を知ったからと言って、流行を作り出せるわけではないが、流行を作り出せない仕組を作ってしまう失敗は、回避できるかもしれない。まずは一読し、流行発信のセオリーを身につけておくことは、決して損ではないだろう。お勧めしておきたい。

おたずね申す日本一-食材の現場から

【著者】フライ【訳者】酒井一夫【出版社】東京図書
【発刊年月】1994年02月25日【本体価格】1,500円【ページ数】158p
【ISBN】4-489-00431-1

【著者】大本幸子【出版社】TBSブリタニカ
【発刊年月】1998年07月28日 【本体価格】1,600円 【ページ数】 315P
【ISBN】4-484-98209-9
同書 おわりに より

「料理王国」という月刊誌に連載されていた記事を、単行本としてまとめたものである。さまざまな食材の日本における最高峰を作っているヒト、その現場を訪ね歩いたルポだ。なかなかに興味深い。日本一の食材を味わいたいヒトのために、取り寄せリストまでついている親切さ。しかし、この本の面白さは、モノを作る、それに携わる人たちの気持ちを描いているところにある。

ここに紹介されている食材は、全部で二十四種類。牡蠣から始まって、黒豚、メロン、椎茸、わさび、蜂蜜、黒豆、鶏など…、多岐にわたる。採りに行くヒト、育てるヒト、立場は違うが、自然を相手にした、とても過酷な仕事である。考えようによっては、自らの力ではどうしようもない部分が多い。しかし、あらゆる知恵を持って、その困難に立ち向かうココロの持ちようは、ビジネスマンにとっても、多いに参考になる。凡百のビジネス書では及ばないほど、生産者からの言葉一つ一つが、とても重い。

例えば、マスカットを作っている岡山の浅野弘さんの話。マスカットは、作ることそのものにも手間をかけるが、それ以外にも注意が払われている部分がある。出荷の調整である。毎年出荷前に会議が行なわれ、各農家ができ具合を報告、計画出荷をする。何時何時と言う細かい日付と、その日付に出荷される場所まで指定される。がんじからめのように見えるが、それを、無理無駄を出さないシステムとし、そういう流れが、作り手を潤している、と、実にドライな感覚で実行している。しかし、その底辺にあるのは、(マスカット生産にかかわるヒト)みんなが幸せになって欲しい、と真剣に考えていることだ。

儲かって、しかも、幸せになれることを考えている。当たり前のことのようだが、実際にこのような行動がとれるビジネスマンは、ひどく少ない。キャリアアップのためのポリシーとして、持つべき矜持だと思う。そんなスタイルも、この本には溢れている。読んでおきたい。

マーケティング22の法則

【著者】アル・ライズ/ジャック・トラウト【出版社】東急エージェンシー
【発刊年月】94年01月15日 【本体価格】1,456円 【ページ数】 231P
【ISBN】4-88497-023-3

(私たちはいろいろのアイデアやコンセプトを”マーケティング”という旗印の下に提示しているが、それはあなたが会社のどの部署にいようと、またあなたの会社がどんな商品やサービスを販売していようとも有効である)
同書 はじめに より

まずこの本は、読み物としてとても興味深い。第1章で紹介される「一番手の法則」では、大西洋を最初に単独で横断飛行したヒトの名前は、チャールズ・リンドバーグだけれども、二番目に単独飛行したヒトの名前は?という問いかけから始まる。その名はバート・ヒンクラーである。このヒト、リンドバーグよりも腕の良い飛行士で、少ない燃料で、早く飛行することが出来たが…。家を出て、その妻も消息を知らないという、名誉を得ることが出来ないヒトだった。ねっ、オモシロそうでしょ。

このハナシの肝は、二番煎じの商品は、たいていは今一つで、成功する商品は、まず消費者の心に、最初にインプットされたブランドこそなのだ、ということだ。このイントロの後、アメリカでのハイネケンビールの成功の理由(一番優れた味ではないのに、最初に登場した輸入ビールであることから、今もシェアトップである)や、USAトゥディの不振の原因(はじめてだからと言ってタイミングが遅いと成功できない)なとが、平易な文章で述べられている。

このほかにも、カテゴリーの法則(あるカテゴリーで1番になれないのだったら、1番になれるカテゴリーを作れというハナシ)や、心の法則(市場に最初に参入することも大切だけれども、ココロの中に最初に入り込むのが大切と言うハナシ)、知覚の法則(ヒトの商品を選択する際の判断能力は絶対的ではなくベストの商品を提供しても消費者の心の知覚に負けることがある)、集中の法則(いくつも言葉を並べるよりもひとつの言葉を集中して植え付けるべきだ)など…。ギュッと凝縮された、なるほどと膝を打つ考え方に溢れている。

カバーにある推薦者の言葉だが、経営・マーケティングに求められるものは、概念枠組の組み立てと、分析力、応用力であるとある。その通りだ。まずは、概念の整理と、世の中を分析のための指針の概略を、この本から学んでおくことをお勧めしたい。きっと役立つ。

横井軍平ゲーム館

【著者】横井軍平 【出版社】アスペクト 【発刊年月】1997年06月09日
【本体価格】1,400円 【ページ数】 199P 【ISBN】4-89366-696-7

先端技術を用いた商品は当然コストが高くつく。しかも、そこから生まれる商品は、多くの場合他社との価格競争になりがちだ。しかし、普及をしてさらにその技術が枯れてしまえば、ウソのように低いコストで商品が作れることになる。そこで、その技術の使い道にひとひねりを加えて商品化する。これが横井式発想、「枯れた技術の水平思考」だ。
同書 27p より

横井軍平の名前を聞いて、ピンと来る人は、かなりのゲームマニアだ。古くは「ウルトラマシン」「ラブテスター」などの玩具を、さらに「ゲームウォッチ」「ゲームボーイ」などの、携帯ゲームを開発した人である。さらに「十字コントローラー」の発明者でもある。任天堂の開発部長を長く務め、退職後は会社を起こすが、不慮の事故でこの世を去った。この稀代のヒットメーカーの発想を、牧野武文という優れた書き手がインタビュアーとなり、話をまとめることで、ビジネスマンにとっても興味深いものに仕上がった。

基本的には、開発秘話がまとめられたこの本。個々の商品に関する話も十分に面白いが、巻末にまとめられている「横井軍平の哲学」という項が興味深い。例を挙げればきりがないので、ここでは簡単に紹介しておく。

筆者は、ユーザーの立場を考えれば、難しい技術を使う見栄を捨てることが大切と説き、若いヒトが、思い切った新しいことをやる際に、上に立つヒトに度量があるか、ということが問題だと喝破する。また、モノづくりは、ユーザーニーズを具現化するというよりも、ユーザーが求めていないものは何かということを探すのがポイントであると、全く新しい視点を提示する。さらに、技術に惚れ込むな、常にビジネスとしての採算を気にかける、そんな水平思考を忘れるなと、水を差す。ここには、物づくりに関わるヒトにだけではなく、あらゆるビジネスマンへの金言が並ぶ。

ヒットメーカーの発想本は、たいていの場合、自慢話に過ぎないものが多い。しかしこの本は違う。あっと息を呑むような、アイデアのヒントが詰まっている。それは小手先だけのものではない。だからこそ、全く古びていない。そして、それらはさり気なく並んでいる。気をつけて、注意深く読むことをお勧めする。

問題解決プロフェッショナル

【著者】齋藤 嘉則 【監修】株式会社グロービス【発行】ダイヤモンド社
【発刊年月】 1997年 1月 23日 【本体価格】2330円 【ページ数】206P

それでは、 自分自身の市場価値を高めるための最もベーシックで重要な スキルは何か。私は問題解決の能力であると考える。 それは、どの分野 でのプロフェッツショナルを目指すにしろ、まず「 問題解決のプロフェ ッショナル 」になることが、「 UP型人材 」として自分の市場価値を最 大限に高めることのはじまりになると考えられるからだ。
同書 P202から引用

昨今のような、従来のやりかたや、経験がなかなか通用しにくくなってきた時代においては、私達ビジネスマンはさまざまな問題に囲まれている。言ってみれば、ビジネス自体が問題解決の連続なのだから、私達は毎日なんらかしらの問題を解決していると言ってもよいだろう。同時に、問題がどこに存在しているのか、という問題の本質を発見する「問題発見能力」が重要になってきていることはよく言われることだ。

しかし、日常の業務では、なかなか問題の本質的な部分に切り込むことは出来きない。摘出した課題に対し、「これで解決できるだろう」という解決方法を実践しながらも、「この対処で本当によいのだろうか」という意識をもちながら仕事をしている人は意外に多いのではないだろうか。

さて、今回紹介させていただく『問題解決プロフェッショナル』は、「問題の発見と解決方法」に関する思考技術について述べられた1冊だ。「ゼロベース思考」と 「仮説思考」という2つの思考方法に加え、「MECE」と「ロジックツリー」という思考のための技術を紹介。これらの方法を使って、筆者の「ソリューションシステム」の全体像を紹介してくれている。

「思考の技術」という風に書かれると何か非常に特殊で難しいことのように思えるが、そんなことはない。これらの技術は誰もが、普段無意識に実践していることだ。しかし、この技術を無意識に実践するか、意図的に利用するかでは効率や、効果に大きな違いが存在する。マッキンゼーでマネージャを務めていたこともある筆者が、実践したケースを時間軸で紹介しながら上記のソリューションシステムを紹介している当書。高度な思考方法の習得を、一つのクイズを解きあかしていくようにすんなりと理解できるように構成されている。

コンサルタントという思考のプロの技術を、誰もがビジネスの現場で使えるように体系化してくれる本書。是非一読をし、問題解決の手法の技術を取得していただきたい。この技術は、貴方のキャリアの力強い味方になってくれるに違いない。

コンサルティング・マインド

【著者】野口 吉昭 【出版社】PHP研究所 【発刊年月】1999年7月15日
【本体価格】 590円 【ページ数】275P

時代の構造変革の中、 これからのビジネス・パーソンは、企業に多くの ことを望むのではなく一人ひとりが「自立」をしなければならない。組 織と自分との関係の中で、「個」 という自分がどうしたのかを自らのビジョンとして打ち出し、組織に対して影響を与える必要がある。
同書 P4から引用

近年、コンサルティング業界は、学生の就職先として大人気業界だ。コンサルタントという響きが持つ輝きと、そのやりがいのある仕事内容が、学生のハートをつかんでいるのだろう。また、キャリア採用においてもコンサルティング業界の人気は年々上昇している。それを受けてか、求人情報誌をひもとけば、様々なコンサルティングファームが、ITから経営に関するコンサルタントまで募集情報を掲載している。ということで、最近コンサルタント人気が非常に高い。

さて、今週紹介する「ビジネスマンのためのコンサルタント能力養成読本」と題された同書は、コンサルタントに必要とされる「モノの見方・考え方」をコンパクトに説明してくれる1冊だ。この一冊を読めば、なかなか想像しにくいコンサルタントという人たちが、どのような仕事をし、どのようなスキルが必要とされているのかがわかる。コンサルタントになりたいと考えている人だけでなく、コンサルタントってなにやっているのかよく解らないという人にお勧めだ。

同書で特に熟読していただきたいのが、「自分のリストラクチャリング」-自分概念構築のための自己変身と題された第3章である。「明るくなければ勝ち抜けない」「創造力の源、ポジティブシンキング」「ビジネス能力はコミュニケーション能力が原点」という項目は、コンサルタントに必要な能力ということだけでなく、全てのビジネスマンに必要な能力といって良いだろう。

「これまでの日本的企業社会の特徴は、自らが考え、みずからが行動しなくても、何とかやっていけるということだった。しかし、これからは時代を見つめ、新しい自分を構築しなければ生き残れない時代、組織に多くのことを望むのではなく、組織に対してどんな影響が与えられるかが問われる時代になったのだ」という著者の言葉からも伺えるように、コンサルタントを目指している人のみならず、自己を確立させたいと考えているビジネスマンの方に是非とも手にとっていただきたい一冊だ。

ノンデザイナーズ・ブック

【著者】Robin Williams 【訳】吉川典秀
【出版社】株式会社毎日コミュニケーションズ 【発刊年月】1998/6/5
【本体価格】1400円 【ページ数】150P

人生においては、複数のものごとが同時に存在するというダイナミックな関係が成立します。(中略)これらのページ(や人生)上での力関係は、協調、衝突、コントラストのいずれかになります。
同書 P75から引用

当[en] Career Newsのリニューアル時、最後までもめたことがあった。それは、メールマガジンのコンセプトを「キャリアプランニング」を支援するのか、「キャリアデザイン」を支援するのか、のどちらを選ぶかということだった。

そんなこともあり、私にとってこの「デザイン」という言葉が、重要な言葉になっていた。一概にいうことは出来ないと思うが、デザインの優れているものは大抵、その中身も優れているものだと思う。CDのジャケット買い(?)や、本を装丁で選んだりできるのもそんなためだ。iMacが売れているのだってあのフォルムによるところが大きい。

さて、今週紹介するこの『ノンデザイナーズ・ブック』は、デザインというものが、どいういった要素から成り立ちどういった論理で構成されているのかを教えてくれる本だ。私はこの本を読んでから、デザインとは項目の優先順位をいかにつけ、限定された空間の中で、それを実現するのかを考えることだと認識するようになった。

デザインとは単に見た目などをさすのではない。その背後にあるコンセプトや、プランをどのように実現するのかという努力に基づいた実践なのだ。(iMacを見るといつもこう思うようになった。)

何かのプランを練る時、実はデザインという要素が必ず存在している。クライアントに企画書を提出する時にも、メールを書く時にも。しかし、デザインに疎い人にとって、良いデザインや、レイアウトというのは力を入れた割に、その成果がなかなか反映されないものだ。そんなもどかしさを感じたことのある人に是非手にとって欲しい。「デザインなんてこと考えたことない」と断言できる方には特にお薦めな一冊だ。

藤田田社長が高橋徹教授にIT特別講義を受ける

【著者】藤田田/高橋徹
【出版社】KKベストセラーズ
【発刊年月】2001年05月30日【本体価格】1,450円【ページ数】238p
【ISBN】4-584-18610-3

高橋 ファックスでやるよりも、インターネットのほうが安くたくさん送れる、情報量も多いし。
藤田 ファックスだと、先生、紙一枚送ればいいんでしょう。これを自分で打つとなればたいへんじゃないですか。
本書 51p より抜粋

藤田田と言えば、日本マクドナルドの社長。高橋徹と言えば、インターネット協会の副会長。稀代の経営者がインターネットの第一人者に、ITとは「本当に儲かるのか」という視点で講義を受けたのが、本書である。インターネットについての解説書としては、入門レベルにも満たない。しかし、裏読みすればなかなか面白い本である。

本書は4つのパートに分かれている。最初に「インターネットとパソコンはどういう関係にあるのですか?」として、インターネット関係周辺事情を、解りやすく紹介している。以下、「デジタルデバイド(情報格差)をどうしたら埋められますか?」「ITを使って儲けるにはどうすればいいのですか?」「IT革命の最先端をきって何かやれることはないですか?」と続く。

いずれのコラムも、本誌の読者にとって知らないことはないレベルの内容である。では、何故本書を勧めるのか…理由は二つある。一つは、インターネットにさほど詳しくない上司などに、インターネットについて解説するためのガイドラインとして利用するのだ。この程度に噛み砕いて説明すればわかるのだなと。その基準として本書は最適である。

そしてもう一つは、企業のトップの視点、特に藤田田というオリジナリティ溢れた経営者が考えるITを知ることが出来る。ITで何が出来るか、というよりも、関連企業を知りたがる(=株式投資のためだろう)、自分が使えなくても、自らの店舗での儲ける手段として利用できないか常に考えている…一般のビジネスパーソンとは、まるで見ているところが違う。

本書の圧巻は、マクドナルドの店舗においてシンガポールのチャンギ空港のように、無線LANを利用して、お客がインターネットを利用できるようにしないかと、提案する高橋教授の話を受けて、藤田社長が自社のIT担当を呼ぶシーンである。良い話なのでぜひ社員に講義してやってください、と請うも、講義された社員が冷静に対応している。その応酬が手に汗を握る。理想論と現実がぶつかる瞬間で、かなり興味深い。

店頭で手にとって、そのシーン(189ページから始まる)を読んでみて欲しい。今からでもすぐパソコンが利用できますよ、と説く教授に、なるほどそれくらいカンタンに取得できるならいいなぁ、と言いながら、実はまったくやる気がない社長など、ツボは満載である。ってなんか息抜き本の紹介みたいですが…。実は奥が深い本である。貴方のIT関連の提案が受け入れられない理由、わかったりしますよ。

デジタルな経済-世の中の大変化小変化

【著者】伊藤元重【出版社】日本経済新聞社
【発刊年月】2001年02月23日【本体価格】2,500円【ページ数】365p
【ISBN】4-532-14903-7

この本の主たる分析対象は、IT産業ではありません。流通、金融、雇用、生産など、経済の主たる分野がこの本の対象となります。デジタル革命によってこうした経済の主流分野がどのように変化していくのか、その変化の論理(ロジック)を明らかにしようというのがこの本の主たる目的なのです。
本書 14ページ より

インターネット万能のメッキが剥げ、そのバブルが弾けたと喧伝されているが、本当のところはどうなんだろうか。最先端の技術や新しいビジネスモデルやセオリーを紹介した本はたくさん出版されているが、今までのビジネスとの関わりがあまりにも不明確で、絵空事の感があった。

本書は「ウォーキング・エコノミスト」を自認する筆者が、ITとそれを取り巻く様々な事象を、身近な例を丹念に引きながら、実にわかりやすく紹介している。現在のIT化の流れを「デジタル日本経済」と位置付け、今までのビジネス社会と乖離しない、シームレスな解説がなされている。これはありがたい。

まずここで言う「デジタル経済」とは、今までの「大量規格型製品を生産・流通するマス」の市場から、「一人ひとりの個人をパーソナルな存在としてとらえる」取引への変化が成り立つ経済のこととしている。そして、デジタル革命は、産業革命に匹敵する環境の変化であると説く。

ITしか出来ない企業や人の将来は厳しい。企業が持っていたいろいろなビジネスの機能が分割され、新しいビジネスが生まれる。と言ったビジネス環境の話から、ITの普及により女性が活躍する時代になるはず、と社会的な話まで、話題は興味深くそして幅広い。何よりたくさんの事例が取り上げられていることが、本書を理解しやすいものにしている。

ITにできないことをやる。だから価値がある。-腰帯にかかれた言葉である。このフレーズが本書の主張の根幹をなしている。IT以外のことをしなさい、と言ってるわけではない。ITには出来ないことを考えて、ITを活用して、それをカタチにする、というビジネスモデルを作ることが、これからは大切と、述べているのだ。

自分自身のビジネスには縁が無いため、今までのインターネット本にピンと来なかった人にも、この本はぜひ読んでおいて欲しい。インターネットに関わる様々な「身近」な「インターネット」の話題について、きちんと理解することが出来るはずだから。わかりやすい語り口の文章も二重丸。ぜひどうぞ。おすすめです。

bウェブ革命-ネットで「勝つ」5つの戦略

【著者】ドン・タブスコット デビッド・ティコル
アレックス・ローヴィー
【出版社】株式会社インプレスコミュニケーション
【発刊年月】2001年02月11日【本体価格】2,500円【ページ数】415p
【ISBN】4-8443-1467-X

だれでもマーケティングの4P、つまりプロダクト(商品)、プライス(価格)、プレース(場所)、プロモーション(宣伝)を知っているはずだ。4Pは、「企業が顧客に商品を売り込む」という、支配力に基づく単純な一方通行のパラダイムに支えられていた。(中略)bウェブは、こうしたすべての活動を一変させる。
本書 318ページ より

ITビジネスはドッグイヤーと言われ、注目すべき「キーワード」や「コンセプト」が目まぐるしく変化している。しかし、ビジネスそのものの変質というアクションは、大きな流れになっており、もはや揺るぎない。インターネット経済の本質を知り、成功を収めるためには、その潮流を見失わないことが必要だ。今回取り上げる本には、その流れが書かれている。ITビジネスに携わっている人はもちろん、あまり関係がない人にも刺激的な1冊だ。

まず、この本のキーワードとなっているbウェブについてカンタンに説明しておこう。本書ではまず、「工業化時代の企業が資本を具体的に形にしたものなら、bウェブは、デジタル資本を具体的な形にしたものである」とある。概念だけだと、かなり難しい。

要は、経済活動にかかわるソースは、それが例え消費者であれ、流通機構であれ、すべてネットワークにより繋がり互いに影響しあう、これからの普遍的なビジネスプラットフォームを、bウェブと呼ばせている。そして、そのプラットフォームの覇者になるための戦略が書かれているのだ。その記述は難しくもかなり興味深い。

また、bウェブで勝ち抜くために、本書では次の概念が提示されている。「広場」「アグリケーション」「バリューチェーン」「アライアンス」「流通ネットワーク」の5つだ。それぞれの概念は、それほど珍しいわけではない。既に行われているビジネスモデルに過ぎない場合も多い。しかし、bウェブというコンセプトからの再整理で、気づかされるポイントは多い。

例えば「広場」の紹介の項では、今やあらゆるものの価格に交渉の余地があるという立脚点から、インターネットが、売りたい人と買いたい人の広大な広場として機能し、そして、結果として、価格が引き下がるメカニズムを作り出すことを整理している。そして、その「広場」の設計方法と収益確保の戦略にまで、カンタンではあるが言及している。

それぞれに用意された豊富な事例、導き出されているセオリーは、一読に値するものが多く、インターネットビジネスにかかわらない人にも、目を通していただきたい。しかし、この本を読み通すには根気が必要である。理由は訳がこなれていないことにある。これは、インターネット上の言葉が、日本語として定着していないからだろう。それを補って余りある「刺激」がここにはある。

Eメールマーケティング

【著者】ジム・スターン、アンソニー・プライアー
【監訳者】三石玲子
【出版社】インプレス
【発刊年月】2000年10月11日【本体価格】2,000円【ページ数】397p
【ISBN】4-8443-1421-1

EメールはEコマースで成功する特効薬となる。なぜならそれは、手軽かつ安価。一方、演出次第では、つまりEメールに付加価値をつける手段をマスターすれば、顧客を獲得し、つなぎ止め、生涯の顧客にする最適かつ最強の手段になるからだ。これこそがEメールマーケティングの真骨頂。
監訳者あとがき より

電子メールの持つパワー、本誌の読者なら十分に感じていることだろう。電子メールを利用し始めると、それなしの生活やビジネスは成り立たないのでは、と思えるくらいに、自らの暮らしの中に浸透してしまう。先週に引き続いて今週も、その電子メールををマーケティング活動に利用するためのノウハウが詰まった本を紹介しよう。

本書のサブタイトルにこうある-顧客は価値ある情報を待っている-。読み手にとって必要な情報を送り届けることさえ出来れば、電子メールは最強のマーケティングツールに足りえるのだと。まあ、必要な情報を提供できればマーケティングツールとして機能する、ということは、他のメディアでも言えるんですが…。電子メールが他のメディアと異なるところは、そのダイレクト感だろう。

よりダイレクトに手元に情報を届けることが出来るということは、情報の受け手側にとって、受け取りを拒むことが難しいということでもある。したがって、ビジネスに利用する場合には、情報を受け取る相手の「同意」を得ること(=オプトイン)が大切なのだと述べている。ここが本書の肝だろう。まさに今流行の「パーミッション・マーケティング」である。オプトインへの理解をベースに、本書では、Eメールマーケティングについての、事細かなハウツーを解説してくれている。電子メールマーケティングに関する、現時点での決定版的な書籍であると言ってよいだろう。

顧客を囲い込むための手法、顧客にアプローチするための文章づくり、顧客の心理など、本書には、電子メールによるビジネスに関係のないヒトにも役に立つTipsが、実は満載である。当然、ツールとして電子メールを利用することを前提に書かれているが、最新マーケティングの基本を理解するためにも適した本である。

まったくの余談だが、本書を読むと企業や電子モールなどが送付してくる電子メールの(マーケティング的な)意味が理解できるようになる。電子メールがなくてはならないものになりつつある貴方は、ひょっとしたら、一読しておいたらよいかもしれない(笑)。とにかく、面白い一冊です。

Eメールマーケティング実践講座

【著者】喜山荘一 著
【出版社】インプレス
【発刊年月】2000年10月11日【本体価格】1,600円【ページ数】229p
【ISBN】4-8443-1422-X

2000年現在、Eメールマーケティングは(中略)あらゆるネット上のビジネスシーンに活躍の場を広げてきている。1.プロモーション 2.販売3.囲い込み 4.リサーチ 5.メーリングリストを使ったコミュニティ運営 6.企業発オプトインメール配信 7.メールオペレーション(中略)たかがEメール、されどEメールなのだ。
本文 13p より

インターネットの普及とともに、電子メールはビジネスに欠かせないツールになってきた。従来の電話に取って代わる連絡手段としての役割から、マーケティングやプロモーションのツールへと、その活躍の範囲を広げている電子メール。今週来週の二回にわたって、電子メールをマーケティング活動に利用するためのノウハウが詰まった、そして日々のメールのやりとりにも必ず使える書籍を紹介しよう。

今回取り上げる本書は、電子メールマーケティングの先駆けである、富士通株式会社「iMi」の事例を豊富に盛り込んだ実践的な一冊。電子メールマーケティング=聞くマーケティングと定義づけている。また、今流行りの「パーミッション・マーケティング」との違いを、生活者の意見を、さまざまなタイミング(顧客以前、顧客化、顧客以後)で吸い上げること(パーミッション・マーケティングは見込み顧客の顧客化の段階のみ)としている。なかなか興味深い。

例えば、プロモーションの項では、ターゲットに手紙を書くようにメールを書く、という視点から、「はじめまして。株式会社○○と申します」「え?会社(株式会社○○)はしゃべらないですよ。担当者のお名前でいきましょうよ」というやり取りがまず紹介されている。そして、電子メールによるプロモーションは、広告を情報に変換する「インフォマーシャル」が有効であると結論。1パーソナル感、2限定感、3リアル感、4ギフト感、四つの要素をフィルターとすると、広告は情報化するとしている。さらに、実際に情報化がなされた広告(電子メール)を提示している。実に丁寧な構成である。

 本書の特徴として、1.事例が大変具体的であること。2.プランニングプロセスがある程度明確にされていること。3.一定のトピックスごとにまとめが用意されていること。があげられる。この特徴が、本書を無類のわかりやすい本に仕上げているといって良いだろう。電子メールをプロモーションツールに利用するためのヒントが満載である。実践講座という表題にふさわしい一冊である。自らのビジネスに使えないかと、考えている人にとって、必読の1冊だ。ぜひ一読していただきたい。

IT2001なにが問題か

【監修】林紘一郎・牧野二郎・村井純
【出版社】岩波書店
【発刊年月】2000年09月25日【本体価格】2,400円【ページ数】475p
【ISBN】4-00-009849-7

この情報社会とよばれる一つの時代の切り口を、そのありのままの断層を見ていただければ幸いである。その断層の中から、次の時代を創造するための光の束をぜひつかんでいただきたい。
本文 はじめに より

このメールマガジンの読者にマーケティング調査をしても、属性が偏りすぎて、意味をなさない場合がある。何故か。すべての人たちがインターネットの利用者であるからだ。そんな社会はまだ無い。しかし、今の勢いだと、そう遠くない将来に、そういう社会が実現されるのではないか、それほど、インターネットを取り巻く潮流は、大きなものになっている。しかし、インターネットについて、皆さんはどのくらい知っていますか?

 本書は、インターネットが起こしている大きなうねりである「IT革命」のさなかの、ありのままの姿を、ざっくりと理解できるように編まれている。インターネットのインフラや制度的な問題、現場で起こっているさまざまな課題、教育、経済、メディア、市民活動、といった視点からみた、インターネットの活用事例と問題点、可能性を、多数の論客が極めてわかりやすく論じている。実際のインターネット利用者であっても整理できていないインターネットの今を、この本を読むことで大づかみにすることが出来る。

 それぞれのコラムは、レベルの差はあれども、興味深い。例えば、 「日本にデジタルデバイドは存在するか?」の項では、日本にはアメリカ型のデジタルデバイド(=持つものと持たざるものの格差)は存在しないと。代わりに、デジタルデバイスが生活に存在しなかった世代、デジタルデバイスをなんだかの形で受け入れざるおえなかった世代、すでに生活環境の中にデジタルデバイスがある世代、それぞれに葛藤が生じていると述べている。それぞれの意識格差、なぜデジタルデバイスを受け入れないのかという心のメカニズム、さらには、子供たちへのデジタルデバイスの与え方について、など、話は広がっていく。

 このように、従来の「インターネット解説本」には無い「総花的視点」は実にありがたい。おそらくは、個別に専門的に述べられていただろう、さまざまな分野での、インターネットについての議論が、掻い摘んでここで読むことが出来る。当然のことながら、関連のホームページ、必要な情報源、キーワードの解説など、コラムの理解への補助も万全である。インターネットの積極的な利用者として、一度全体像を、きちんと把握しておきたい、という人にお勧めの一冊なのだ。ただし、所詮「紙の本」である。生の情報は先に進んでいるということを、忘れないという前提であるが…。

パーミション・マーケティング

【著者】セス・ゴーディン
【出版社】翔泳社
【発刊年月】1999年11月15日【本体価格】2,000円【ページ数】285p
【ISBN】4-88135-805-7

パーミション・マーケティングはデートに似ている。見知らぬ人をともだちに、ともだちを生涯の顧客に変えていく。デートで忘れてはならないルールがそのまま当てはまるし、同時に、そのベネフィットもまた当てはまるのである。
本文 まえがき より

モノやサービスに対して対価を払わせることは、至難の技である。正確に言うと、きちんと予測をして、それを行うことは難しい。モノやサービスがあふれている今、何に対してヒトは財布を開くのか…。優れたマーケティング・プランナーでも、その答えを導き出せないでいる。最早ベストセラーで、紹介の余地がないかもしれない本書は、その問題を「ともだち・マーケティング」で解消せよと説く。

従来のような、マス・メディアを利用して、大量にまるで網をかけるかのごとく顧客を獲得するのではなく(=この従来型手法を「土足・マーケティングと本書では呼んでいる)、顧客ターゲットの興味を引くような「きっかけ」を小さく提示し、何度も繰り返し「ささやく」ことで、心を開かせて、顧客を獲得すると言うのだ。パーミション・マーケティング、実に古典的な手法ではあるが、今までは、この手法、うまく行えなかった。

その理由は、顧客ターゲットに対して、メッセージをダイレクトに、そして、属性に合わせて提供するメディアがなかったからだ。手法としては効果的なのはわかっていても、手段がなかった。しかし、インターネットの登場で、状況は一変する。顧客ターゲットのパーソナルな情報を吸い上げることも、ある一定のレベルまでは簡単になったし、その属性に合わせて情報提供することも容易になった。(ある意味で)古い手法を、新しい技術が、完全なものとして実現させたと言える。

知る限り、最近、この手法を取り入れようとしている企業は多い。即効性を期待する流通業などでも、いわば「手間のかかる」「ともだち作り」を行おうとしている。それだけ注目すべき理論なのだ。

顧客ターゲットを「ともだち」にしていくためのプロセスや、ウェブ・マーケティングを効果的に行うための留意点、ケーススタディと、内容も盛りだくさん。出版されてからしばらくたつが、内容は古びてはいない。ある意味、普遍的なセオリーである「パーミション・マーケティング」に触れておいて、損はない。

ネット資本主義の企業戦略

【著者】フィリップ・エバンス/トーマス・S・ウースター
【出版社】ダイヤモンド社
【発刊年月】1999年11月11日 【本体価格】2,400円 【ページ数】 355P
【ISBN】4-478-37287-X

戦略再考の指針
1)現時点では業界でリードする存在であっても、今の事業定義が二~三年後にも有効だと仮定することはできない。2)デコンストラクションの波に襲われる可能性が最も高いのは、既存企業にとっても最もダメージが大きく、また既存企業がそのダメージを認めたがらない部分にほかならない。3)デコンストラクションが経済的に成立しうるのを誰かが証明してくれるのを待っていては、おそらくライバルが欲しがっている最大の競争優位つまり「時間」を譲り渡してしまう結果になる。(以下略)
本文「今、何をやるべきか」より

ご存知の通り、百科事典のブリタニカは、エンカルタに代表されるCD-ROM百科事典の出現によって、その絶対的地位を奪われ、インターネット上でソースを無料で提供するという事態に追いこまれてしまった。本書ではまず、ここに含まれた失敗が、インターネットビジネスにおける、全ての本質を包含しているとし、「ブリタニカの失敗」を、不吉な前例としてあげている。

進化しつづける情報技術、その能力を活用することによって、ビジネスや産業の定義、さらには競争優位はどう変わっていくのか。つまり本書によるところの「情報に関しての新しい経済原理」を理解し、戦略を立案していないと、最も安定的と考えられていた産業や、確立済みのビジネスモデル、最強のブランドでさえも、粉々に砕け散ってしまう可能性を、「ブリタニカの失敗」は、示唆していることを本書では解説している。

そして、その危機を乗り越えるための「希望」とは、持続的な価値を持つ新しい「何か」を築くことであるとしている。さらに「何か」を構築するための様々なアプローチも、詳細にかかれている。「リッチネス」「リーチ」や「デコンストラクション」「ディスインターミディエーション」などと言った、インターネットビジネスに係わるために知っておきたいキーワードも、様々なセオリーとともに満載されている。

インターネット社会においては、ここに書かれている先端の理論ですら、既に過去のものかもしれない。しかし、単純化した公式による近道を設定しなかった分、本書の視座視点は、色あせることはない。ぜひ読んでおきたい一冊である。

イノベーションのジレンマ

【著者】クレイトン・クリステンセン【出版社】翔泳社
【発刊年月】00年01月31日 【本体価格】2,000円 【ページ数】 291P
【ISBN】4-88135-839-1

本書でとりあげるのは、業界をリードしていた企業が、ある種の市場や技術の変化に直面したとき、その地位を守ることに失敗した話である。単なる企業の失敗談ではなく、優良企業の話である。多くの経営者が尊敬して手本にしようとし、革新能力と実行力で知られているような企業である。
同書 序章 より

最近評判の本である。通常この手の本は、事例を詳細に分析し、さまざまな道しるべを示す。しかし、往々にして事例が古くなってしまい、本として手に取るタイミングを逸すると、陳腐化することが多い。本書は、そんな劣化(米国では97年出版)を感じさせない、凄まじい破壊力がある。

先に本書序章より引用した文章が、この本のすべてだ。内容紹介としては過不足はない。つまり、どれだけ優れた戦略をもって企業運営を行ってきても、否、行ったからこそ、企業がその地位を追われてしまうことがある。ということを、詳細に実証研究しているのだ。努力しても、努力したからこそ、駄目になってしまう。なんて恐ろしい話なのだろうか。

ここでは、努力と言う平易な言葉で書いたが、掻い摘んで言うと、努力は2種類の技術としてまとめられている。まずは-持続的技術-これは、ある製品の性能を向上させる技術をまとめて、こう呼んでいる。もうひとつは-破壊的技術-これは、既存の製品の性能を向上させるものとは違って、同等の製品(むしろ性能的には劣る場合が多い)を、別のアプローチで作ってしまう技術のことだ。

破壊的技術から生まれた商品は、大抵が、低品質だか低価格で、持続的技術を持って生まれた製品からは、歯牙もかけれらないコトが多い。しかし、高品質を求める市場とは、全く違う市場が生まれた時(正しくは破壊的技術が新しい市場を生み出す場合が多い)に、持続的技術では、対応できなくなり、取り残されてしまう。顧客のニーズに合わせて、技術を高めていくという、企業戦略的には誤りは見えないと言うのに。それだけで、新市場を見出すことはできないのだ。今の栄華は永遠ではない、と言うことに尽きるだろう。これ以外にも、興味深い話が満載だ。

この本の魅力は短い紙数では語ることは難しい。ヤヤ難しい目の内容だが、まずは手に取ることを強くお勧めする。買って損なし。

ネットビジネス戦略入門

【著者】パトリシア・シーボルト【出版社】翔泳社
【発刊年月】99年07月21日 【本体価格】2,200円 【ページ数】 485P
【ISBN】4-88135-768-9

成功するための重要な八つの原則

・適切な顧客を狙う
・顧客の振舞いを総合的に把握する
・顧客に影響を与える業務プロセスを合理化する
・顧客との関係を広い視野で捉える
・顧客に主導権を与える
・顧客の業務を支援する
・個別化したサービスを提供する
・コミュニティーを育てる
同書 96p より

サブタイトルに「すべてのビジネスは顧客志向型になる」とあるこの本は、インターネットで成功する企業と、失敗する企業では、いったいどこが違っていたのかということを、アメリカの有力コンサルタントが、詳細に分析したものである。インターネットネットビジネスの現状を大まかに理解し、成功のコツとツボを知るためには、最適の一冊といって良い。

この本では、アマゾンコム・アメリカン航空などの、インターネットビジネスにおけるケーススタディが、紹介されている。読み進めると、その例から導き出された、上記の八つの原則は、ネットビジネスのみならず、あらゆるビジネスシーンで通用する原則である、と言うことがわかる。IT業界の本だが、それ以外のビジネス(むしろ、こちらのほうが読後に受ける影響は大きいかもしれない)にも十分に役に立つだろう。

これらの重要な原則は、当たり前のことと思われるような内容ばかり。この本の筆者も、単純な原則なので平凡に写る、と述べている。しかし、一つ一つをみれば当たり前のこの原則が、実践できている企業はひどく少ないコトに気がつく。すべてを実践するためには、越えなくてはいけないハードルは多い。同書には、なぜ実践するのが難しいかという問題点と、その解決策が、豊富な事例をベースに具体的に提示されている。

他の関連本と違う、ビジネスの本質をクリアにしたこの本は、多少のことでは陳腐化しないように思われる、骨のある本だ。しかしながら、どうせ読むなら、急がれたほうが良い。さあ、書店へ。

インターネット社会の幻想

【著者】牧野武文 【出版社】アルク 【発刊年月】1999年01月30日
【本体価格】880円 【ページ数】 207P 【ISBN】4-87234-995-4

インターネットでビジネスチャンス、インターネットは無法地帯-。まことしやかに巷に流れる賛歌や苦言は果たして本当なのか。人類史上まれに見る発明品、インターネットにまつわる<正しい使い道>を解き明かす。
同書 表紙 より

読み・書き・算盤シリーズ最終回。算盤=商売人の必須ツール=現代ではコンピュータやインターネット。それを使いこなすことは、ビジネスマンのリテラシーであることは、疑いようがない。しかし、使えるということと、使いこなすということは、実は違う。使うためにはスキルを身につければ良いが、使いこなすにはポリシーを持つ必要がある。しっかりと活用するためには、コンピュータやインターネットに対する考え方を、客観的にそして明確にするコトが大切なのだ。

書店に出向いてみても、使うための書籍は多いのだが、使いこなすためのセオリーが記されたものは少ない。今回は、インターネットを客観視するための貴重な一冊を。

この本の素晴らしさは、インターネットの有益だと思われていた部分を、かなり明快に否定し、インターネットの持ついかがわしさを、裏づけを持って安心させるところにある。

例えば、電子メールでは仕事にならないことを紹介する。ビジネストレンドである、電子メールでの打ち合わせを、真っ向から否定するのだ。納期が遅れそうだ、と連絡、まずいといわれ、二日ほど欲しいと願い、では半分だけでも先に送れ、という内容を、電話なら1分程度で済むのに、電子メールなら、最低4度はやり取りが必要になる、非効率だ、と切って捨てる。なるほど、その通りである。電子メールは、その良さが十分にあるが、それだけを盲信していてはいけないのだ。すべてを礼賛するわけではなく、問題点をベースにして使いこなすことで、より実戦的なインターネット利用が可能になることは、容易に想像できる。

その他にも、モバイル、SOHO、インターネット通販など、インターネットの実際を、ニュートラルな立脚点で記している。今年初めに書かれた本で、既に若干古くなっている部分もある。しかし、インターネットとは何だ、その価値をクリアにしておきたい、そんな人にはピッタリの本である。一読をお勧めする。

デジタル社会論

【著者】武田徹 【出版社】共同通信社 【発刊年月】1999年11月9日
【本体価格】1700円 【ページ数】 269P 【ISBN】4-7641-0435-0

デジタル化の動きを伝える情報は確かに増えている。新聞記事がそれに触れる機会は当然のごとく多くなってきているし、関連業界の潤いが広告出稿力の増加に繋がってきていることもあって専門雑誌の類も数多く創刊されている。

だが、僕はそうした趨勢を長めながら、隔靴掻痒の思いを抱いてきた。今、デジタル化を遂げつつある社会で本当に何が起きているのか。それが分かるようで分からない。豊富な情報量が報じられているようで、核心の部分に手が届いていない、もどかしい感じがするのだ。
同書 P6から引用

冒頭の引用にもあるように、最近のデジタル化のスピードは信じられない程急速に進んでいる。そして、この波を捕らようとして、私達の生活やビジネスの変化をテーマとした雑誌や書籍が数多く創刊されている。しかし、そんな状況において、逆にふと不安になることはないだろうか。今起きているのは一体どんなことなのだろうか、と。

さて、今週紹介する『デジタル社会論』は、このようなデジタル化の波の中、私達の周りに起きていることは、いったい何なのか、というテーマに鋭く切り込んだ1冊だ。取り上げる主題は幅広い。「恋愛の未来系」「広告ビジネスとネット社会」 「デジタル宗教」「電子本」「表現の自由」そして「パソコン教育」。そんな様々な切り口から、「今、現在起きていること」を切り取ろうとする筆者の姿勢は、デジタル化という流れの中で起きている事を垣間見せてくれる。

『日経ゼロワン』に寄稿されたルポタージュ「デジタル・ラプソディー -今、デジタル社会で起きていること」の1998年8月号から99年10月号までをまとめたこの1冊。記されている内容の多くが、随分昔に起きた出来事のように感じることにこの世界のあまりに急速な変化を実感する。しかし、この速度は、私達の周りで、いや私達に起きている現実そのものなのだ。

これからも、今まで以上にデジタル化は急速に進んでいくことだろう。そして私達の生活や、ビジネスのあり方を根本的に変革していくことだろう。だから、今起きている事はなんなのだろうか、という問いを、私達はよくよく考える必要があるのではないか。どういう時代に生きているのかを認識しておくことは、これからのキャリアを考える時、重要なことだと思うからだ。

ビジョニング

【著者】塚田修【発行】日経BPクリエーティブ
【発行年月】2004年04月05日 【本体価格】1,800円
【ページ数】239p 【ISBN】4-86153-000-8

ビジョンを持てば、当然、生き方が変わる。忙しい日常に流されるだけの日々から、次に何をするか、具体的な目標が見えてきて、あなた自身がいきいきと輝き始めるだろう。

本書 P47 より抜粋

バブルの崩壊とともに、“身分保証”であった年功序列・終身雇用も崩壊した。そして、社員の能力や実績に応じて給料が支払われる、能力主義、成果主義を取り入れる企業が増えた。

いま、日本の企業が人材戦略は、中高年をリストラし、単純な業務は派遣やパート、あるいはアウトソージングに切り替えることで、高騰した人件費を抑えようとしている。要は、その会社にとって“必要な人材”と“不必要な人材”を選別している状態なのだ。

最近では、定期昇給を廃止する企業も増えてきており、能力主義や成果主義が浸透すればやがては収入格差が大きくなる。本書の著者は「稼げる人」と「稼げない人」の二つに分かれるという。「これからは企業に依存したスタイルをやめ、自立した生き方をすべきだ」というのが本書の根幹にある。

著者はいつ、会社を去ることになっても生活していけるように、常に先を見据えて「今何をすべきか」と自問し、行動できる社員がいま企業が求める人材像なのだという。それが本書でいう「ビジョン」だ。

「ビジョン」とは、「自分が将来的に何をしたいかと考えたときに、その夢ややりたいことと現時点では相当な距離があっても、“こんなことをやってみたい”と考えたこと」だと著者は説明する。

確かに、ビジネスで成功を収めた著名人の記事や書籍を読むと、よく彼らのビジョンにもとづいた行動や精神的な強さに嫉妬心すら覚えた経験はあるだろう。「自分はなぜ明確なビジョンが持てないのか」と。本書を読めば分かるが、恐らくそれは自分を振り返り、俯瞰できずにいるからだと思われる。

本書では、ビジョンの立て方から、そのビジョンに付随する中期的な戦略計画「ミッション」、さらに現時点で何をすべきかの「バリュー」まで、その重要性を説き、著者の経験を踏まえた、実践的な説明がなされている。

本書にはさらに、ビジョンなき企業についても書かかれており、「やらされ感」を抱いている社員がいる組織は、かなり危険な状態であると警告している。経営者の将来的なビジョンを明確に社員に伝えること、それを社員に理解してもらうための実際に行われたセミナーの内容は必見だ。

本書はこの質問に答えられない全ての人が読むべきだろう。「あなたは、ビジョンをもっていますか?」

ゴー・パブリック 起業公開物語

【著者】市川一郎&アソシエイツ【発行】東洋経済新報社
【発行年月】2003年12月18日 【本体価格】1,600円
【ページ数】293p 【ISBN】4-492-53168-8

「この物語は、会社を辞めて起業し、株式公開したいと思っているあなたのための疑似体験ストーリーである」

本書 腰帯 より抜粋

最近、書店に足を運ぶと「独立・起業」と名のつく書籍を多く見かけるようになった。一従業員としてやりたいことを提案しても、会社側に認められなかったり、そもそも人に仕えることに嫌気がさしてきたり、と理由は様々だろうが、自分で会社を設立したいと思う人が増えてきたのは確かだろう。

そんな起業本の中から、面白そうな一冊をご紹介。腰帯には「起業…疑似体験ストーリー」と書かれている。本書は、ハウツー本のように「見出しがあって詳細が枝分かれ式に紹介されている」本ではない。純粋に物語なのだ。

主人公が会社を辞めて起業し、経営者として会社を成り立たせていくストーリーを読者が一緒に追っていく、という構成である。

ストーリー形式で知識を習得していく本は、概して大まかで入門的なものが多い。だが、こと経営者(独立・起業)に関しては、マニュアルに載っていないトラブルや障壁に出くわすことがほとんどだろう。本書には、起業から経営、株式公開までさまざまな課題に取り組む主人公の姿が描かれている。

読み進めてみると、その内容は実にキメ細かい。ベンチャーキャピタリストに相談することから、資金のやりくり、会計士の登場や、人材の獲得など、リアルに会社経営の大変さが読みとれる。

さらには、社内スタッフが起こすトラブルもある。給料が少ないために、接待費として大金を遊びに使ったり、営業がきちんと契約書を交わさなかったために取引先と揉め事が発生したり、会社の金を横領し逃げ出す社員など、実際に起こりうるトラブルと直面する場面も如実に描かれている。

資金繰りの難しさや、内部管理体制の徹底、株式公開への長い道のり。会社をまともに運営していくには多くの人の助けを必要とし、信頼関係と情熱をもって突き進んで行かなくてはいけないのだと、本書を読んでみればわかるだろう。読み物としてもかなり面白い。

退職するときは退職の本、起業するときは起業の本、経営には経営の本、などという行き当たりばったりの行動をとる前に、まず経営者になるとこんな喜びや苦悩があるのだ、というのを全体像として確かめておくのも大切なことなのではないだろうか。動き始めてからじゃ遅いのかも知れない。

30分間で天職が見つかる本

【著者】柏木理佳 【発行】PHP研究所
【発行年月】2004年01月05日 【本体価格】1,100円
【ページ数】204p 【ISBN】4-569-63157-6

実際に経験した仕事は何種類ありますか?
現在仕事の種類は四万以上もあるといわれています。その中で自分で体験したごくわずかな仕事の内容だけから選ぶのはもったいなくはありませんか?

本書 P116 より抜粋

本書によると、ある人材派遣会社が若手社員を対象に実施したアンケートでは、今現在「好きな仕事をしている」「仕事にやりがいを感じている」と答えたのは全体の2割程度だったという。それ以外の約8割は、前向きな意識で仕事ができていないということなのだ。

学生時代から、実際の仕事に関する知識の浅いまま、自分のやりたいことが見いだせないまま、「就職」ではなく「就社」活動をしているというのが原因かもしれない。また、イメージは華やかだった希望の職種に就けたのに、実際の業務は地味でルーチンだったという失敗例もあるだろう。

仕事自体は面白いが、上司とウマが合わないといった人間関係が影響しているケース、仕事に見合った評価・報酬が得られないという条件面での不満が影響しているケースなど、負のファクターを上げればきりがない。しかし、その減点方式で転職を繰り返しても期待する結果はなかなか望めない。

仕事がイメージ通りに面白く、高揚感を抱きながら働ける環境…。そこに行き着くには、当然のことながら自分の働きたい環境を自分自身で詳細に「内定」させることだ。ゴールが決まれば、あとはそれに向かって行動すればいいだけのことだからだ。

しかし今現在、若者を中心に取り巻く問題は「やりたいことがない」ことなのだ。これは日本人の生活が豊かになったことと、幼い頃から仕事に対する意識づけを行う教育環境が確立されていないことなどが理由に挙げられる。

それでは、どうすればいいのか…。

本書の著者は海外留学から帰国後、就職活動の失敗を経て実に様々な職種に就いている。目移りしやすいタイプのようにも見えるが、そこには盤石な自己分析があり、納得して突き進んでいく様子がうかがえる。就職先も貿易会社からスチュワーデス、アナウンサーなど、競争率の激しいものばかりだ。

著者によれば、自己分析において重要なことは、<過去>の経験を思い起こすことのようだ。幼い頃に思い描いた夢や、嬉しかったこと辛かったことを詳細に“書き記す”ことで、少し先の自分がイメージできるというワケなのだ。しかもこの作業は本書があれば手間がかからない。

本書には質問項目が提示してあり、それに沿って進められるので実行しやすいだろう。これは転職を考える上でも必ず役に立つ作業だ。自分自身を見つめ直し、本当にやりたい仕事に就く意欲があれば、誰にでもできることだ。就職・転職を考えている方には、ぜひ読んで実行していただきたい。

この人がかっこいい!この仕事がおもしろい!

【著者】NPO法人 キャリナビ
【発行】日経BP社 【発行年月】2003年10月06日
【本体価格】2200円 【ページ数】621p 【ISBN】4-8222-4357-5

運命の出会いを大事に進む
好きなものは好き!やりたいことをやる!
複数の職業を経て転職を見つける
学生時代のサークルを本業にする
子供の頃からの夢を実現する

本書 表紙 より抜粋

生活の多くの時間を占める「仕事」。ということは、当然ながら人生の大半は仕事をしているということだ。社会にとって、自分にとって意義のある仕事をすれば、その充足感も変わってくることだろう。だからこそ誰もが仕事で悩み、やりがいというものを模索するのだ。

“自分らしい生き方、働き方”とは何か。高度成長期では「有名大学・有名企業に所属すれば安泰だ」というシンプルな構造で、目標がはっきりしていた。しかし大企業神話が崩れた今は、有名大学を卒業しても必ずしも将来が保証されることはなくなってしまった時代である。

現在は、将来に対する画一的な「正解」はなくなってしまったと言われている。一人ひとりが「自分なりの将来像」を持つしかないのだと。それでは、「自分らしく働いている人」はどんなところにいるのか、どういう働き方をしているのかをまず知っておく必要があるのではないだろうか。

本書は、NPO法人キャリナビWEBサイトに掲載されている「この人がかっこいい!お仕事人辞典」を再編集し、書籍化したものである。内容は、学生が「こんなふうに生きてみたい」と思う全国各地の大人(ナビゲーター)たちを取材し、執筆してできたものだ。

本書で紹介しているナビゲーターは全部で54人。宇宙開発事業団で働く人から雑誌記者、お好み焼き屋さんやセパタクロー選手など実に多彩な職種が名を連ねる。改めて、いろんな仕事があるのだと驚くことだろう。

本書の面白さは、前述したように学生たちが取材しているところだ。ナビゲーターは彼らに、自分の仕事の楽しさを理解してもらうために、非常に分かりやすく解説してくれている。一般的な“お仕事情報誌”とは違い、彼らの言葉で実際の仕事に沿って話しているので実にリアルだ。

ナビゲーターの働きぶりを見ると、彼らはやはり様々な困難と立ち向かって仕事の喜びを獲得していることがわかる。自分らしい働き方とは、誰かと比較するわけでもなく、決めた道を自分が納得するレベルまで突き進んでいくことなのだと教えられる。

54人のインタビューはどこから読んでもいい。単なる“甘えの個性”ではなく、自己責任のもとで目一杯頑張っている彼らの様子を垣間見ることで、これまでの自分の働き方を振り返り、今後の参考にしてみてはいかがだろうか。600ページにわたって仕事の面白さを紹介するオススメの一冊。

仕事の裏切り なぜ、私たちは働くのか

【著者】ジョアン・B・キウーラ
【発行】翔泳社 【発行年月】2003年11月21日
【本体価格】2,800円 【ページ数】445p 【ISBN】4-7981-0440-x

人は仕事を通じて尊厳やアイデンティティを得たり、自己を表現したり、社会で役に立っているという実感を得たりする。仕事が経済的な取引以上のものであると思えば、さらにそれは意味のある行為となる。

本書 289P より抜粋

キャリアアップやリーダーシップ、上司・部下との付き合い方など、いかにビジネスマンとして成果を出していくか、という書籍をこれまで多く紹介してきた。しかしもっと根本的に、仕事を哲学すること自体も大いに意味のあることなのだと、本書を読んで深く感じられた。

「なぜ、私たちは働くのか」。本書のテーマはここから始まる。

仕事の何がそれほどいいのか。歴史を見ても、仕事をしないで過ごせる人、仕事をするべきか否かを、自ら選択できる身分の人は稀なのだという。我々も時々、働かないで過ごせたらどんなに楽なのだろう考えてしまう。趣味に打ち込み、名著を読み、旅することができたらどんなに良いかと。

突然だが、あなたは宝クジの高額が当たっても仕事を続けるだろうか。宝クジは、仕事や物質的な要求からの自由を夢見させてくれるが、実際に当選しても仕事を続ける人は驚くほど多いのだとか。仕事をしないことは、簡単なことだと思えるが、一生働かないという状態は現実的には難しいらしい。

働くかどうかの選択の余地がない人にとって「なぜ働くのか」という問いかけは間違っている。我々は「生きていくために働く」からだ。生活のために賃金労働をするのだが、そう考えると、仕事を経済的に意味づける傾向がますます強くなっているということなのだろうか。

昔から、「人は働かなければ悪いことをする」といわれてきた。本書によると、「仕事がある」ということは、単に物質的な要求を満たす以上の意味を持つのだという。仕事はさまざまな心理的、社会的な要求、例えば自制心、人間関係、規則正しさ、自己効用感などを満たしてくれるのだと。

1930年代に行われた、ある社会地理学研究例が載っている。ある小さな工業労働者のコミュニティが街ごと失業している状態を調査たものだ。そこの住民は、景気の良い時ほど仕事と同じくらい余暇活動にも熱心だったという。政治活動やいろんなイベントなどを企画し楽しんでいたと。

しかし、工場が閉鎖し、町全体が失業状態になると住民たちは無気力になった。つまり彼らは、外の世界から切り離され「時間を活用する」という物質的・精神的動機を失ってしまったということなのだ。仕事がない自由な暮らしとは、休暇のない窮屈な生活なのだということがわかる、良い例だ。

仕事、お金、時間。この3つは今を生きるビジネスマンにとっての最重要テーマだ。本書には、「生きるために働く」のではなく「働くために生きる」という言葉がある。いま一度、深いレベルで「自分にとって仕事とは何か」と、見つめ直してはいかがだろうか。

パーソナルブランド

【著者】佐藤修 【発行】日経BP企画
【発行年月】2003年10月14日 【本体価格】1,500円
【ページ数】206p 【ISBN】4-931466-93-1

「これなら自分でやりたい」、「これは自分はやりたくない」ということくらいなら、どんな人でもいえるでしょう。そこを大切にしてほしいのです。

本書 P71 より抜粋

「みんながハッピーに仕事をし、暮らしを成り立たせていくにはどうしたらいいか?」。アメリカに本社を置き、世界的な規模でビジネスを展開するグローバルカンパニー3社に所属してきた本書の執筆者は、このテーマを30年以上にわたって、追いかけてきたという。

このご時世、1つの会社に自分の人生の大半を捧げ、企業風土に即したサラリーマンでいることは危険だ。そこで「個人の市場価値」が重要視されるようになってきた。本書ではこれを「パーソナルブランド」と表現するが、これは単なる「市場価値」という言葉で判断できるものではなさそうだ。

消費市場低迷が長期化するのに伴い、各企業とも自社のブランド戦略の再構築に迫られてきた。本書ではこれは、個人についてもまったく同様のことがいえるというのだ。あるプロジェクトに欠員が生じて、その補充を行わなければならないというケースで解説している。

プロジェクトリーダーは、何人かの候補をリストアップする。そして過去にどんな成果を上げてきたのか、どんなスキルをもっているのか、プレッシャーにどのくらい強いのか、これまで一緒に仕事をしてきた人たちの評判はどうか、など候補者の一人ひとりについて検討する作業に入るだろう。

セールス部門であれば、売り上げをたくさん上げている人に越したことはない。研究開発部門であれば、特許などの知的財産をたくさん持っている人に注目するだろう。しかし、プロジェクトリーダーはおそらく、そういう目で見える数字だけでは判断しないはずだと、著者は断言する。

候補になった人が持つ基本的なスキルや成果にプラスして「彼と一緒に仕事をしていると、どんなことでも楽しくやれる」「好奇心が旺盛なので、他のメンバーに良い刺激を与えてくれる」といった「数字で表せないプラスアルファ」を加味して選考していくに違いないと。

パーソナルブランドもコーポレートブランドも全く同じで、その人のブランド価値が高まれば信頼性が増し多くのファンを獲得していくことができる。これがどこに行っても通用するパワーとなっていくのだと著者は主張する。

個人においてもまず「自分は何をやりたいのか」というビジョンをはっきりさせて、そこにベクトルをあわせながら自分だけのブランドを構築させていく必要があるということだ。日本企業のいまに働くビジネスマンに、自分らしい働き方とはどんなものなのかを、改めて考えさせてくれる一冊だ。

自分の仕事をつくる

【著者】西村佳哲 【発行】晶文社
【発行年月】2003年09月30日 【本体価格】1,900円
【ページ数】271p 【ISBN】4-7949-6585-0

優れた技術者は、技術そのものでなく、その先にかならず人間あるいは世界の有り様を見据えている。

本書 P72 より抜粋

企業社会における経済活動の大半は、経済のための経済であり、より多くのお金を引き寄せるために仕事が重ねられる。産業革命が生み出した「多くのモノを安くつくる」姿勢は、モノが飽和するまでは受け入れられたかも知れないが、今はそういう生産力は、もはや通用しなくなりつつある。

私たちは毎日、誰かがデザインしたものに囲まれて暮らしている。換言すると、生きていくということは、様々な人の“仕事”に接し続けているとも言えるだろう。しかし作り手が「こんなもんでいいや…」という意識で作ったものは、我々にその否定的な気持ちを伝えてくる、と本書にはある。

本書は、とりわけモノづくりに没頭し、いい仕事を求め続けている人に著者がインタビューし、彼らの仕事に対する哲学やこだわり、作品に対する働き方を紹介する。ここでは、バタフライスツールなどの作品で知られる工業デザイナー・柳宗理氏のこだわりを紹介しよう。

柳氏は、どんな作品にでも初期の段階でスケッチや図面を引くことはなく、いろんな模型を組み合わせ、感触として形を掴んでいくという。机上でのレタリングでは絶対いいデザインはできないのだと。つまり技術者などとのワークショップの中からモノを作りながら、できていくものなのだという。

ということは、最初にイメージしていたモノは作れない。椅子でも最低1年くらい時間を費やし、試行錯誤の末、理想の形に仕上げるのだと。若いデザイナーたちにも苦言を呈する。「作業を始めると同時にデザイン雑誌に頼ってはいけない」。デザインという作業は時間がかかるものなのだと。

著者が手にした柳氏のコーヒーカップは「モノを通じて自分が大事にされていることが感じられるデザイン」だと思ったという。こうした仕事は、今や希少だ。「デザインのためのデザイン」は「人を幸せにする」原点を忘れているのではないかと、改めて考えさせられる内容だ。

本書を読み進めていくと、我々の仕事の目的はそもそも何だったのか、自問自答する必要があるのではないかと深く考えさせられる。受けた仕事はこなさなければいけない。仕事は選べないし、家庭や生活もある。しかし好きな仕事をしたい。こういう悩みはビジネスマンには尽きない。

本書で紹介する作り手たちは、どんな請負の仕事だとしても、ある一点で共通する。それは「自分の仕事」にしていることだ。彼らの働き方は、世の中のワーカーたちのそれとは異なる。エネルギッシュで、主体的に仕事をする姿を、本書で垣間見ていただきたい。仕事観が変わるかもしれない。

ビジネスマン あなたの市場価値

【著者】箭内昇・山崎元 【発行】ビジネス社
【発行年月】2003年09月18日 【本体価格】1,500円
【ページ数】270p 【ISBN】4-8284-1070-8

30歳と40歳との間ではかなりの自分の価値アップがないと、年収で評価したときの自分の価値というものを維持することすらできません。

本書 P67 より抜粋

本書は、11回も銀行や生保、証券会社など転職を重ねたという経歴を持つ山崎氏と、体制派の代表である銀行に長い間在籍していたキャリアをもつ箭内氏との対談形式の構成になっている。この先、どういうタイプのビジネスマンが成功するか、両氏の実体験を踏まえて展開されるリアルな内容だ。

箭内氏は、21世紀のビジネス社会が求めている人材は「T字型人間」なのだと表現する。Tの縦の長い棒が専門能力で、横の棒がゼネラリスト的な能力を表しているという。つまり“ある分野での専門能力をもったゼネラリスト”のことだと。

ビジネスの世界が専門化してきている傾向があることから、ビジネスマンは何か一つでも自分の得意分野を持たなければいけない。それを持ってマネージャークラスまでになり、さらにその上には経営能力のある人が上がっていくのだと。そう、どちらの能力もビジネスリーダーには必要なのだ。

さらに読み進めていくと、本書は「あなたの市場価値」を高めていくための単なる教科書ではなかった。バブル崩壊前後の激動の金融・経済の動向、大企業病ともいわれる会社依存主義を目の当たりにしてきた両氏による、これからのビジネス社会への提言が、ギッシリ詰まっている内容なのだ。

中でも、若手からシニアまでの各世代は今後どういうポジショニングで働くか、また逆に会社側が各世代の社員をどう扱うか、などの内容は新鮮だ。両氏の意見が一致したのは、30代の若手を活用することが企業にとっても社会全体にとっても重要だということだ。

日本の企業は30代によって支えられているのにも関わらず、彼らを充分に使い切れていないという。彼らにもっと権限とお金を与えて爆発的に働いてもらわなければいけないのに、それができていないと。

原因は様々な要因が絡んでいるのだが、どうやらそろそろ引退を控えた既得権者たちが、何とか自分たちの力を維持しようと勢力を保持していることにあるようだ。だからこそ、何のしがらみも持たない“外様”のような人材やまだ社内文化に染まっていない若手に期待しているのだと両氏は主張する。

他にも、会社における人事部の存在意義、良い企業・悪い企業の見分け方、CEOがいない日本企業の悲劇など、これまでの、今後のビジネス界全体に問題を提起し、両者それぞれの見解を披露する。21世紀を生きるビジネスマンには、まさに福音をもたらす一冊になるだろう。

キャリア・カウンセリング

【著者】金井壽宏 【発行】日本経済新聞社
【発行年月】2003年08月22日 【本体価格】1,500円
【ページ数】291p 【ISBN】4-532-31074-1

今までの人生を振り返り、これからの人生に何が大切かを考えるようなプロセスが意味を持ってくるだろう。

本書 P74 より抜粋

本書は「中期キャリア危機」として、35~45歳頃に経験する心理的危機を中心に展開している。中堅として仕事を実際に動かすのと同時に、部下の指導も行い、これから後期キャリアに移行しようとする時期だ。この“キャリアの中間点”は、非常に重要なポイントだという。

空中ブランコの有名な例がある。前のブランコを手放さないと、次のブランコには手が届かない。その間で、どちらのブランコからも手が放れている危ない状態がある。この中間点は次につながる移行期なのだと。そこには大きなストレスがある。そう、キャリアの節目では必ず“悩み”が存在すると。

リアルな例で詳説する。第一子が誕生したとしよう。夫婦はずっと子供が欲しかったのに、いざ生まれたら知らないことが多く苛立ち、困惑してしまうことがよくある。最近の悲痛な事件にも見られるように。原因は何か。夫婦が見逃しているのは「終焉と中立圏という段階の重み」と筆者は表現する。

つまり、3人の新しい生活、子供が一緒の生活という“開始の局面”にしか考えが及ばないことだと。焦点は子供の誕生を機に“終わる”ものがあるということ。例えば、しばらくは二人きりで旅行や遊びには行けなくなる。睡眠時間も変動する、などが挙げられるだろう。

実際に3人の生活が始まる前の宙ぶらりんな時期にこそ、父親・母親になるとはどういうことなのか、子供を持つことはどういうことなのか、重みを持って心深く考えることが必要なのだという。

確かに、これを仕事に置き換えて見るとよくわかる。何年も所属した部署での経験を無視するかのような配置転換、ゼロから始める新しい仕事。これは自分のキャリアにとって、ある意味、不健康なサイクルだろう。

しかし、この節目節目において、自分自身で終焉と始まりの関連性を想像することで受け入れるか否かの判断もでき、納得して先に進めるのかも知れない。だが、そこには多くの悩みや、ストレスが存在する。本書では、「中年よ、小志を抱け」と悩みを自然な現象とし、読者を和ませてくれる。

「やればできる」でなく「できればやる」。キャリアとは轍のようなもの。毎日考えるものではない。節目節目で後ろを振り返り、その過程を未来に活かすために修正するものなのだと本書にはある。多数の心理学者の考察を経営学者の編著者がまとめ上げた魅力ある一冊を、ぜひ読んでいただきたい。

キャリアの教科書

【著者】佐々木直彦【発行】PHP研究所
【発行年月】2003年07月07日【本体価格】1,600円
【ページ数】286p【ISBN】4-569-62998-9

エンプロイアビリティを高めるために、3つのワークは非常に重要な役割を果たす。3つのワークがなければエンプロイアビリティが高まることはない。

本書 76P より抜粋

雇用形態が劇的に変化した今、自分の“キャリア”を考える、または考えさせられる機会が増えた。自分の将来を見据え、今何をしなければいけないのか。そこまでは、漠然とだが考えている人は多いはずだ。「さあ、そこでどうすれば…」と先が続かない。そんな時に本書を手にとっていただきたい。

本書のキーワードは「エンプロイアビリティ」。直訳すると「雇用される能力」。他にも「転職能力」や「自分の市場価値」とも呼ばれるものだ。エンプロイアビリティには、3つの観点があり、今の会社に居続けること、転職を可能にすること、やりたい仕事をすること、にわけられるという。

今の会社に居続けるためには、単に優等生的な仕事をこなせばいいのだ。平均以上の成果をだし、処遇には文句を言わない。会社にとって都合の良い人材としていればいいだけの話だという。しかし、終身雇用などと安心できる時代ではない。これでは働きたいように働けるはずがない。

次に、転職を可能にするエンプロイアビリティは、市場価値を高めるための専門能力を高める努力をすればいいという。その後、能力を正当に評価してもらう環境を探せばいいのだと。問題は、やりたい仕事を続けるエンプロイアビリティだ。誰もがその答えを待っていたのではないだろうか。

実は、そこには肩書きや給与面などのケースで妥協もできる程度の適応力も問われてくるのだという。生活水準も下がるかもしれない。これを覚悟できればやりたい仕事ができる可能性は高まるのだと。しかしこれは“取っかかり”に過ぎない。そこまでの覚悟が持てた時、理想の未来が見えてくる。

やりたい仕事を追求するほど、一つの分野で専門性を高めることができる。特定のテーマを持って仕事をし続けるほど、必要な情報も集まり知識も経験も増え、キャリアを積み重ねることができる。素晴らしい実績をあげれば、そのままエンプロイアビリティの向上に繋がるのだと、著者は主張する。

キャリアアップのために、必要な要素がいくつかある。道が正しいのか確認する、フィールドワーク、ビジョンを立て、戦略を練り、行動するコンセプトワーク、情報や評価、支援を得るためのネットワーク。

本書では、これらをわかりやすいケースストーリーを用意することで、見事に我々の頭の中に刻み込んでくれるのだ。

キャリアに関する書籍はいくつも存在するが、単なる“読み物”で終わっていなかっただろうか。本書はタイトル通り「教科書」だと感じる。再度、自分の行動を見直し、役立てて損はない一冊だ。

会社はこれからどうなるのか

【著者】岩井克人 【発行】平凡社
【発行年月】2003年02月23日 【本体価格】1,600円
【ページ数】341p 【ISBN】4-582-82977-5

わたしたちはいま、あたかもグローバル標準であるかのようにみなされている株式主権論のドグマに囚われずに、もう一度おカネとヒトとの関係を考え直し、資本主義の新たな形態の中で生き抜いていける、新たな会社の形態を考えていかなければいけないのです。
本書 282P より抜粋

今の日本経済は大きな構造変化の中にいる。「グローバル化」「IT革命」「金融革命」など…、これが原因で企業はリストラをせざるをえない状況になってしまった。世界を相手に競争を始め、他社といかに差別化し、コストパフォーマンスを重視した結果の惨劇ともいえる。

本書では、会社という存在を様々な角度から考察し、ポスト資本主義における会社のあり方を読者に提案する。将来、どの形態をもつ会社が最も適当かの断定的な議論を避け、読者に選択権と考えるキッカケを与えてくれる内容といえるだろう。以下に挙げる例は、代表的アメリカ型大企業の失敗例だ。

今から10年ほど前まで「会社は誰のものか」という問いかけが、盛んに行われていた。会社とは株主のものでしかないとする、アメリカ的な「株主主権」論と、従業員のものだという日本的な「会社共同体」論だ。そこで著者は、この株主主権的な会社はグローバル標準にはなり得ないことを論じる。

2001年12月、アメリカのエンロンという会社が、それまでの記録を塗り替える大型倒産をした。幹部にはそうそうたるメンバーを配し、その経営監査体制はアメリカ型のコーポレート・ガバナンスの模範ケースであるとまで言われていた。

しかし、エンロンの経営者は会社の業績を粉飾して株価を吊り上げ、自分の持ち株を売り抜けて巨万の富を手に入れた。不正が発覚しそうになると、会計事務所と共謀し証拠書類を隠滅。犠牲者は失職した従業員だけでなく、多くの株主の手元にも、紙クズとなった株券だけが残った、という事件だ。

これは、アメリカ型のコーポレート・ガバナンス制度が、本質的に矛盾した制度であるからなのだと主張する。株式会社の経営者は株主の代理人などではなく、会社の代表機関であるという点なのだと。会社が結ぶどの契約も経営者を通してしか結べない。結局経営者の自己契約に過ぎないのだという。

株式会社における経営者の行動には、一種の倫理観が要求される。そもそも株式会社において所有と経営の分離したシステムは不正行為への招待状以外の何ものでもないと論じる。経営者の会社に対する忠実義務と注意義務こそ全てのコーポレート・ガバナンスの中核であるべきなのだという。

本書では、過去に見られる会社の仕組みを、さまざまな角度から考察し、学習できる構成になっている。他にも、転職時における賃金カットの秘密などを読んでみると、経営者の“腹のウチ”も推測できるようになる。新しい資本主義に相応しい会社のあり方、新しい働き方を考えるヒントになる一冊。

キャリア・コンサルティング

【著者】丸山貴宏 【発行所】翔泳社
【発行年月】2002年12月24日 【本体価格】1500円【ページ数】278p
【ISBN】4-7981-0331-4

今後日本企業も、リストラに伴うセカンドキャリア・サポートだけでなく、自立した個人と会社との方向の擦り合わせ、個人の成功と企業の成功を合致させていくための、キャリア・コンサルティングを行っていく必要があります。
本書 3P より抜粋

我々は、新入社員から始まり、転職や独立と、それぞれの時期において「キャリア」という言葉を意識するようになった。理由としてはやはり、企業が年功序列制度や終身雇用制度をもはや守れなくなり、社員は「自分のことは自分で考えなくてはならない」状況になってしまったからだろう。

だが、ただ単純に今の会社を辞めて次のステップに進みたい、という先走る思いは存在しても「今の自分には何ができて」「次はこんなスキルを身につけたい」そして「将来はこんなことがしたい」などという明確な自己分析のもと、キャリアアップを成功させられる人は、そうそういないのが現実。

そこで本書が紹介するのは、いま急速な注目を浴びている「キャリア・コンサルティング」の重要性だ。アメリカと比べ、カウンセリングの存在自体があまり注目されていなかった日本において、なぜ急にキャリア・カウンセリングがここまで盛り上がったのだろうか。 その牽引要素は…、

坂口厚生労働大臣の「将来的にキャリア・コンサルタントを5万人まで増やす」という発言だ。アメリカにはキャリア・カウンセラーが17万人いる。そこで雇用が硬直化している日本でも就職や転職に関するキャリア・コンサルタントを育成すれば、同様に雇用の流動化が起こると考えているのだ。

カウンセリングという、日本人には「治療」的なイメージの払拭と、個別相談だけでなく、セミナー企画やキャリアプランの設計など、言葉通り、コンサルタントの仕事をこなす意味合いで厚生労働省はこの名にこだわった。本書では、彼らの仕事内容と理論に基づいたケーススタディを紹介する。

まず、彼らの立場を「相談者の意思決定を支援する人」と著者は定義する。必要な援助以外に、過度の指示や命令はタブーなのだという。あくまでも意思決定は相談者なのだ。そこで、彼らは相談者を理解し信頼関係を築き、情報提供やアクションフォローといったステージへ慎重に進めていくという。

ケーススタディを読んでいくと、コンサルタントの巧妙さが実によくわかるだろう。フラットな視点で相談者を理解し、気持ちを察しそれを言葉に落とすことで、相談者から信頼を得る。会話を進めるうちに相談者さえも気づけなかった希望の職種や会社、本人の強みまでもがドンドン浮かび上がる。

客観的な自己分析は重要だといわれるが、実際に採用のプロから客観視してもらうことで、目標が明確になるなら「私も!」とつい思ってしまうかもしれない。

この他にも、実際の現場で活躍する人事担当者の座談会や、コンサルティング業界の情報なども豊富。ぜひ、一読をオススメする。

仕事力ー月曜の朝が待ちどおしくなる4つのステップ

【著者】ダイアン・トレイシー【訳者】島村浩子
【発行所】アーティストハウスパブリッシャーズ【発売】角川書店
【発行年月】2002年7月7日【本体価格】1,400円
【ページ数】238p【ISBN】4-04-898085-8

仕事上の問題のなかには、プライベートで遭遇した問題と似たものがあったのです。会社や組織は人生の縮図に過ぎません。そこで出会う問題を解決できなければ、おそらく人生のほかの部分で出会う問題もなかなか解決できないはずです。
本書 10P より抜粋

仕事と人生の充実度は密接に関係するものだろう。仕事が安定することによって、生活にリズムをつくり出すことは、言うまでもない。仕事がうまくいかなければ、同時に自分の生き方にも不安を抱くようになる。本書のタイトル=「仕事力」とは「生活力」とも、換言できるかもしれない。

本書では、仕事が原因で悩みを抱える8人を救出すべく、「キャリア・エンパワーメントのための4つのステップ」という、簡明かつ論理的な手法を提示する。そして、8人が各々の問題を解消するために起こした行動を、追っていく構成になっている。具体的でとてもわかりやすい。

例として、ある35歳の女性が陥った状況をあげている。仕事ではある程度成功を収め、衣食住も社会人の平均レベルを超えていた。しかし、帰って寝るだけの家、ボロボロになった自分の身体を、ふと顧みる。そして、健全な人間関係、健康な身体を取り戻そうと、行動を起こし始める。

まずは「問題の明確化」「前向きなビジョン」「感情の理解」「自分本位の選択」という4つのステップから、とるべきアクションを見つけ出し、そして実践する。彼女の例だと、まず、仕事に費やす一日の時間を削減することから始めるのだ。

それは、彼女にとってはかなり勇気のいることだ。そして、週末は必ずリラックスする時間にあてる。さらに、食事の改善などの、新しいライフスタイルを導入し、生き生きとした社会生活を取り戻すことに成功する。

仕事に苦悩するなら、まずは働き方を変えてみようと、他人のせいにする前に、自分の心のもち様をかえてみようと、早い決断をするのは止めようと、著者は頑に主張する。それで人生は変わるはずだと。

本書には、自分を見つめ直すためのチェックリストが8人の例に合わせて載っているので、読みながらぜひ試して欲しい。自分の中で何が問題で、これからどう行動すべきかが明らかになるはずだ。自分の周辺環境も確認でき、ハッとすることもあるかもしれない。

漫然と生活し、何気なく不満を抱いているだけでは何も解決しない。問題とビジョンを明確にすることを、本書ではくり返し主張する。なにより本書を読むことで、生き生きとした生活を取り戻すカンフル剤になることは、間違いない。まずは一読をオススメする。

コンセプトは「安心」

【著者】谷口正和【出版社】東洋経済新報社
【発刊年月】2002年08月01日
【本体価格】1,400円【ページ数】218p【ISBN】4-492-55450-5

ペットも安心の市場の一方の主役である。ペットはすでに「愛玩」の粋を超えている。(中略)ペットとしてウサギを飼う人がますます増加している。専門の月刊誌や季刊誌も登場し、どれも売れ行きは絶好調だという。「うさぎ情報誌」(ペット新聞社)は月刊誌化した。ウサギ専門のペットシッターやホテルも登場している
本文 137p より抜粋

朝起きて、新聞を開き、不安をかき立てる記事が一本も掲載されていない、そんな日はありえないのが、最近の日常である。この、不安だらけの時代に「安心」をコンセプトにしたマーケットが広がり始めている・・・と、紹介しているのが、本書『コンセプトは「安心」』である。

マーケットの主人公は「個客」なのだと、筆者は説く。そして「個客」の心を掴むためには「安心を創造する」商品の提供が、必要だという。その視点を持たない場合、価格が安かろうが、大量生産が出来ようが、顧客から支持されなくなるというのである。

事例として、本書はまず「家と周辺が安心の拠点」になっていることを紹介する。コンビニの来店客、テーマパークの来園者、さらには、駅の建物がライフセンターとして機能し始めている点をあげ、コミュニティは集約され、自己完結を始めていると言う。

さらには、エンタテイメント、移動手段、情報網、コミュニケーションスタイルも、その自己完結型コミュニティに適合した発展を、し始めていることを紹介している。地域生活圏が自己完結できるのも、そこに「安心」という底支えがあるからだ、と論じているのだ。

なるほど、言われてみれば、その通りの視点である。しかし、改めて指摘されないと、なかなか気づきにくい視点であるとも言える。以下、心に、共生することに、自己解決に、安心のよりどころを見つけ出していく。その視座のユニークさとともに、豊富な事例も、本書の見逃せない魅力である。

それ以上に、本書の読みどころは「情報のクリッピングの巧みさ」にあるのかもしれない。筆者は、新聞や雑誌などの媒体や、書籍を丹念に読み進め、気になる事柄を拾う。そして、拾った情報を、いくつかの分野に集めて、共通する「キーワード」を、浮かび上がらせるのだ。

そのキーワードは、実に「説得力」を持ち得ることは、本書を読みすすめていけば一目瞭然だろう。それが、新しいコンセプトを生み出すかどうかは別の問題として、今時代が「どんな熱を帯びているのか」を、的確に把握するためのノウハウが、この一冊にギッシリと詰まっている。

今を知ることも出来、さらに、これからの今を知るためのスキルも身に付くという、一粒で二度美味しい一冊である。読んで損はないハズだ。

働くことの意味がわかる本

【著者】飯田史彦【出版社】PHP研究所
【発刊年月】2002年08月14日
【本体価格】1,000円【ページ数】150p【ISBN】4-569-62375-1

「働くこと」そのものには、意味などありません。しかし、「自分が働くことによって、自分や誰かや何かに与えるさまざまな影響」については、それぞれの人が、自分なりの答えを見出すことができます。
本文 9p より抜粋

社会に出て働くようになってから、働くってどういうことだろう?と自問したことがない、という、ある意味幸せな人は、どのくらいいるのだろうか?生きがいに関するベストセラーを持つ筆者が、若いビジネスパーソンに向けて「働くこととはなんだ?」ということを、解いている。

まず、冒頭で「働くことそのものには、意味などありません」と、本書は言い切ってしまい、いきなり読者を混乱させる。「働くことには、どのような意味があると思いますか?」という質問に、世の中のほとんどの人が、明確な答えを持ち得ないところから、働くことについて、論を進めていく。

まずはじめに「働く」とはどういうことなのか、それを定義付ける。働くとはいったい何なのか?働くことによってもたらされる真情は、どのようなものであるか?職場についてはどのように考えればよいのか?詳しく書くと、読む楽しみが減るので割愛するが、頭がどんどんとクリアになるのだ。

例えば「働くことは、○○である」という言葉で、心情を描写する。働くこと=使命・悦楽・災難・苦痛・試練…字を読んだだけで、ああ!と、思わず同意してしまうキーワードで、働くことによって起きている気持ちの部分を整理してくれる。

さらには、仕事が生むさまざまな価値として、仕事が「自分に与える影響」と「自分以外のものに与える影響」に分けて、解説をしている。その広がりと、考える要素の「もれなく感」が、とても興味深い。

また、本書では、働くことを、様々な観点から眺めている。これがかなり面白い。その一部を羅列してみると、

働くことは「人間の本能」だと考えてみる
働くことは「悟りを開く手段」だと考えてみる
働くことは「サッカーをするようなもの」だと考えてみる
働くことは「回転寿司を食べるようなもの」だと考えてみる
働くことは「カラオケで歌うようなもの」だと考えてみる

全部で20。そのどれもが、なるほど「働くということ」には、そういう側面はあるなぁと、納得してしまう「ツボ」なのである。

本書は、社会人経験の浅い若年層に向けて書かれている。しかし、後輩や部下がいるような、社会人のベテラン選手も、目を通すことを勧めたい。悩んでいる後輩に的確なアドバイスが出来るようになる、それ以上に、自身の働くことについての考え方が、明確化することは間違いないからだ。

組織の中で成功する人の考え方

【著者】アラン・ダウンズ【訳者】山田聡子【出版社】きこ書房
【発刊年月】2002年08月25日
【本体価格】1,300円【ページ数】190p【ISBN】4-87771-085-X

成功するために、弱点を克服しようとする人は多い。ビジネス書を読んだり セミナーに出席したり、とにかく何でもやってみる。しかしどんなに補修を やってみたところで、弱点が完全に克服されることはほとんどない。弱点は 長所によって克服できるのだ。
本文53pより抜粋

書名が面白い。今まで多かった「キャリアアップ」や「組織の殻を破って活躍」ではなくて「組織の中で成功する」なのである。タイトルだけ見れば、保身のための「ゴマのすり方」や「見栄えがよい報告の仕方」などが書かれているのかと、ワクワクしてしまう。

まず、成功者たちのパワーの秘密は、実は単純明快なものだという説明から筆者は始める。「自分の才能を全面的に信じること、これに尽きる」のだという。そのためには、苦手なことはやる必要はない、得意なこと(=やっていて飽きないこと)をやりさえすればよいのだと。

人は自分が得意とする分野には自然と引き寄せられるものだ、と筆者は説いている。その分野には「強い憧れ」のようなものを抱き、さらには、その仕事を行うときには「喜び」まである。そして実際、その仕事に取り組むときには「素早く仕事を覚えて」しまうのだという。

覚えが悪い仕事はその分野の才能がないと割り切り、その長所だけに情熱を注げ、短所は長所がグンと伸びれば、見えなくなってしまうものだと。そして、その才能が発揮できるように、仕事の形態まで自分にあわせよと説明する。そのためには転職も選択肢だと。

あれ?組織の中で成功するだったはずでは…そう、本書には冒頭で述べたような「保身」などのノウハウは一切書かれていなかった。

自身の才能を再点検し、その長所だけを集中して伸ばすことに努力をする、そのために、仕事を始めた頃のような情熱を甦らせる、そうすることで(漠然とした)不安に打ち勝ち、組織の中で成功しよう!ということらしい。実に直球勝負なのである。

「そんなことは実際には無理だよ!」「生活があるし冒険は出来ないね」などという声が聞こえてきそうだ。本書はそんな(とても悪い言い方をするとしたら)言い訳にも、ある程度は対応している(アメリカの本なのでそのまま鵜呑みには出来ないですが)。まずは読んでみることをオススメする。

ネガティブな要素ばかりがクローズアップされる最近のビジネス社会。だからこそ、自分を信じ、自分の能力を最大限に発揮するために、最高の情熱を傾ける…そんな考えが必要なのかもしれない。「経営心理学者」の肩書きを持つ筆者の言葉は、迷うあなたを、そっと後ろから押してくれるだろう。

あなたのパラシュートは何色?

【著者】リチャード・N・ボウルズ【監修】リクルートワークス研究所
【訳者】花田智恵【出版社】翔泳社
【発刊年月】2002年09月10日
【本体価格】1,600円【ページ数】307p【ISBN】4-7981-0237-7

そもそも人間の寿命より、会社の寿命のほうが圧倒的に短いので、好むと好まざるにかかわらず、転職という問題に直面するようになりました。どうしても、自分のキャリアについて考えざるを得なくなったのです。
本文 305p より 抜粋

とても売れている本で、今さら取り上げるのもどうかと思ったが、やはりかなり面白い一冊であるので、紹介することにした。あのベストセラー「経済ってそういうことだったのか会議」の法律版のような本である。ただし、会議を行っているメンバーは違うけれども。
アメリカ人は生涯に平均8回も転職するらしい。その転職社会アメリカにおいて「バイブル」と崇められ、全世界10以上の言語に翻訳され、700万部も売れている、そんな本がついに日本に登場した。それが本書「あなたのパラシュートは何色?」である。

職探しとキャリア・チェンジのための最強実践マニュアル~と銘打たれた本書は、単なる転職ガイドとは一線を画している。誰もが心に思い描く「夢の仕事」をつかむためのノウハウがギッシリと詰められているのだ。

本書ではまず、自身が何を求めているのかを整理するように要求する。職探しは「従来型の」必要に迫られたものなのか、それとも「人生を変える」自分自身が本当に就きたい仕事を見つける職探しなのか。まずは、そのスタンスを明らかにせよとする。

そして、職探しの方法や、就職・転職の秘訣など、細かな「技術」が紹介されている。それは、おおよそ実践的で、即役立つノウハウである。こんな細かいところまで…と思わず笑ってしまうような記述も少なくない。

さらに、自分が本当に就きたい職業、自分が持っているスキル、そして、なりたい自分になるためのステップ…そう、夢の仕事をつかむためのコツとツボが、綿密なエクササイズプログラムとともに紹介される。実は本書の肝はココだといっても過言ではないのだ。

ここでは詳細に書くことはしない。実際に本書を手にとって読んでみて、そしてエクササイズを一つ一つ丁寧にやってみること(=これが肝心)。結果現れた「本当の自分」を「見直して」みるとよいだろう。

さらに、転職は、会社勤めだけではない「アメリカ流」を反映しているのか「事業を起こすには」という章も用意されている。その事業の探し方から、うまくいかなかった場合の撤退、その場しのぎの方法まで、細かく書かれているところも、かなり興味深い。

アメリカ流の転職ガイドなので、日本の実情とかけ離れているのでは…という心配は無用。監修者が日本の労働に関するデータを、詳細な部分まで実に豊富に紹介しているからだ。知らなかった、日本の労働環境に関する様々な数字や実態が並んでいて、ここを読むだけでも面白い。

冒頭でも述べたが、本書は単なる転職ガイドではない。むしろ「自分探しのノウハウ」が満載された1冊と考えると良いだろう。自身を見直してみたいと考える読者の皆さんは、ぜひ店頭で手にとって見て欲しい。イチオシ。

ウォー・フォー・タレント

【著者】エド・マイケルズ/ヘレン・ハンドフィールド=ジョーンズ
     ベス・アクセルロッド/マッキンゼー・アンド・カンパニー監訳
【訳者】渡会圭子
【出版社】翔泳社【発刊年月】2002年05月17日【本体価格】2,200円
【ページ数】277p【ISBN】4-7981-0149-4

何十年にもわたり、これが多くの企業にとっての求人活動風景だった。採用 担当部署が求人広告を出せば、仕事を欲しがっている人々が門前に列をなす。 あくまで企業が主導権を握り、だれを雇うかを決定した。雇われる側に、力 はほとんどなかったのだ。現在では、もちろん話はまったく違っている。パ ワー・バランスが、有能な人材の側に傾いているのだ。
本文 118p より 抜粋

人材が企業盛衰の鍵を握っており、優れたタレントの獲得と育成の必要性が叫ばれているのは周知だろう。ウォー・フォー・タレント=人材育成競争と名づけられた本書は、マッキンゼーが実施した調査に基づき、人材を重視する理由、有能な人材の集め方、人材を育てるノウハウを明らかにしている。

マッキンゼーは、「人材育成競争」に勝つための5つの行動指針を、次のように述べている。1.マネジメント人材指向こそ経営層の要件。2.人材を引きつける魅力の創出。3.リクルーティング戦略の再構築。4.マネジメント人材が育つ組織。5.人材マネジメントにおける選択と集中。以上だ。

まず、1番目の「マネジメント人材指向」とは、組織の仕組みや考え方の中心・主軸を、マネジメント人材の強化・育成とするような意識や企業文化のことを言う。これは、人事部で出来ることではなく、社員の意識付けが大切になることは言うまでもない。トップのみならず、ミドルレンジまでの管理職にも、この人材を指向するべきだとしている。

2番目の「人材を引きつける魅力の創出」とは、企業は顧客に対する価値を提供しているはずだ、それと同じくらい人材に対しても「訴求価値」を創出すべきだと説いている。人目を引く「働くべき価値」とはなんなのか。アメリカ企業のケーススタディで知ることが出来る。

3番目の「リクルーティング戦略の再構築」は注目だ。優秀な人材はすでに企業のしかるべきポジションに納まってしまった-という前提に、求職のために列を成した人の群れから、選ぶという採用方式は陳腐化している、と言う。しかし、その割には、企業の採用方式は遅れているとも指摘する。

アメリカのエクセレントカンパニーの事例をベースに、それぞれの項目を具体的に解説、進むべき道筋を提案している。日本の実情も巻頭にコンパクトにまとめられ、人材育成競争の現状と課題をパースペクティブに見ることが出来る1冊に仕上がっている。

本書は、組織におけるあらゆるレベルのリーダー=社員を管理する立場にあり、社員のキャリアと成功に影響力を持つすべてのリーダーに向けて書かれたものだとされている。心当たりのある人は、ぜひとも熟読すべきだろう。成長するだろう企業が、あなたに求めている役割が、ここに書かれている。

新卒無業。

【編著者】大久保幸夫【出版社】東洋経済新報社
【発刊年月】2002年05月07日【本体価格】1,400円
【ページ数】233p【ISBN】4-492-26064-1

無業者の問題をもう一度別の角度から見てみよう。2001年の春に大学を卒業した世代の流れを中学校からさかのぼって見てみる。(中略)この世代168万人のうち、高校、短大、大学を卒業し、就職先で少なくとも三年は働いているという人は、計算すると45万人。わずか全体の27%ということになる。
本文 182p より 抜粋

新卒無業-聞き慣れない言葉に戸惑う方も多いだろう。平たく言えば、学校は卒業したけれども就職はしていない、そんな人たちのことをいう新しい言葉である。ちなみに2001年3月大学卒業者における「新卒無業」者率は21.3%。実に驚くべき数字ではないか。

本書はその驚愕の数字を執筆の動機としながら、ある意味「日本独自」のシステムである「新卒採用」制度の崩壊と、その現場にいる人たちの価値観の変化や新しい模索について、さらには近い将来訪れるだろう、雇用の現場における問題点とその解決策を提言している。

大学や短大は出たけれど職に就けない。その大きな問題について、本書では不景気だから…というありきたりな視点では、語っていない。学生そのものの質の低下(とその原因)や、就職指導する学校の問題点(世間とずれた常識で動いている)などに言及している。

自分のことすら話せない大学生。サービス業を低く見る高校の就職指導担当者。志望企業の名前さえ正確に書けない志願者。やりたい仕事(=企画系)と求人(=多くは営業系)のミスマッチ。フリーターというセーフネット。そして、そのフリーターの五割は正社員並みに働いているという事実…。

本書を読み進めるうちに、戦後日本の成長を支えてきた制度が、雇用という側面からも音を立てて崩れている、ということを実感する。そして、それらの綻びは、今は小さいけれども、今後「大きな危機」がやってくる予兆であることは言うまでもない。

若年失業という世界各国が持つ悩み。それを日本には無縁なものにしていた「新卒採用制度」の崩壊。敗者復活がなりにくい日本の中で、はじめの第一歩を上手く踏み出せなかった人はどうなってしまうのか…。「新卒就職から終身雇用で定年へ」という価値観の見直しが迫られているのだろう。

だか、悲観的な話ばかりではない。さまざまな角度から「雇用」について真正面から取り組む人たちや、自分たちで新しい働き方を模索する「20代」についても、本書は多くのページを割いている。社会制度としては目立つ改善はないが、個人としては、確かに新しい時代に向かっているようだ。

仕事とはなんだろう。就職とはなんだろう。キャリアとはなんだろう。それらを深く考えてみるために、今の労働市場の一面を知るためのナビゲーターとして、本書は役に立つだろう。一読をお勧めしたい。

知的プロフェッショナルへの戦略

【著者】田坂広志【出版社】講談社
【発刊年月】2002年03月18日【本体価格】1,500円
【ページ数】225p【ISBN】4-06-211153-5

分かりやすく言えば、転属や転職、独立などにおいて、次の職場や職業を選ぶとき、「給料」や「年俸」などの金銭的報酬に目を奪われることなく、「この職場で、いったい何が学べるのか?」(知識報酬)「どのような人的ネットワークを築くことができるのか?」(関係報酬)「仕事を通じて自分の業界での評価を高められるか?」(評価報酬)「人間としての成長の目標となるような上司がいるか?」(成長報酬)といったことに目を向けて、人生の選択をしていくということです。
本文 116p より 抜粋

長い引用から始まったが、行間の余白ががたっぷりと取られ、口述筆記にも 似た(実は違うらしい)文体のこの本は、実に示唆に富んでいる。読みやす くはあるけれども、そこに書かれていることは、かなり難しく、そして重要 なことである。

これからの時代に、ビジネスパーソンは何を目指したらよいのか?その難問に本書は明快に答える。「知的プロフェッショナル」を目指すべきだと。勘の良い読者なら「ナレッジワーカー(知識労働者)」とどこが違うんだ?という疑問を持っただろう。

本書は「求められる人材」と「活躍する人材」という言葉を提示し、その答えを導き出す。ナレッジワーカーは、その知識を「労働力」として、社会に求められる人材である。一方、知的プロフェッショナルは「指導力」を発揮することで、社会で活躍する人材なのだと。

では、職業的な知恵を使って仕事をするナレッジワーカーになるためにはどうすればよいのか?「収穫逓増」のキャリア戦略を取るべきだと本書の筆者は説く。この耳慣れない経済用語を使って説明されていることは、結局先に引用した4つのリターンを最大化するということらしい。

金銭的なことは「見えるリターン」だが、それを追い求めるのではなく、知識やリレーション、評価、それに伴う成長こそが、「目に見えない」が大切な仕事の報酬である、その報酬を逓増(=簡単にいえば雪ダルマ式に増やすという感じか…)させることこそが、大切だという。

さらに、自己投資のためのポイントや、師匠と呼ぶべき人を作ること、そして、知恵の交換の技法や、聞くこと反省することの大切さ、個人ブランドの確立まで、「活躍する人材」として必要な「力」を身につけるための、さまざまなステップが、順番に記されている。

最初に読みやすいと書いたが、実はこの本はとても読みにくい。理由はカンタン。筆者が作った(と思われる)新しい言葉があちらこちらに散りばめられているからだ。読みやすそうな雰囲気にだまされてはいけない。繰り返すが、そこに書かれていることは、かなり難しく、そして重要なことなのだ。

これからさらに進化することが予想される知識社会で成功するためのポイントをつかみたい、そんなあなたは、まずこの本を読むと良いだろう。

フリーエージェント社会の到来

【著者】ダニエル・ピンク【訳者】池村千秋【出版社】ダイヤモンド社
【発刊年月】2002年04月18日【本体価格】2,200円
【ページ数】394p【ISBN】4-478-19044-5

重要なのは、企業の寿命が短くなっているこの時代に、私たち一人ひとりの 寿命は長くなっているということだ。これからは、勤め先の企業より長生きするのが当たり前になる。ひとつの組織に一生涯勤め続けるなどということ は考えにくくなる。
本文 14p より 抜粋

フリーエージェントと聞くと何を連想するだろうか。プロ野球選手のストーブリーグでのFA宣言を思い浮かべる人が多いかもしれない。もしくは、勤めている会社の中には、社内転職の制度があって、それをFAと呼んでいるというところもあるかもしれない。

本書でいうフリーエージェントとは、自宅でひとりで働き、組織の庇護を受けることなく自分の知恵だけを頼りに、独立していると同時に社会とつながっているビジネスを築き上げた人のことをいう。オーガニセーション・マン(=組織人間)の時代は終わったのだと、本書は高らかに謳い上げる。

本書ではまず、新しい働き方であるフリーエージェントについて、そのメリットが述べられている。何よりも組織に縛られない。そして、会社に勤めていては、潰れてしまったらお終いだ。複数のクライアントを持つことでリスクを回避できる。さらに、時間が自由になるなど、様々だ。

さらに、組織に縛られない代わりにできる「新しい人の結びつき」にも言及している。上下の繋がりではなく、緩やかではあるけれどもフラットな人の繋がりが生まれるのだと。プロジェクトが始まると人材が集まり、使命が終わると解散して次のプロジェクトへ…どうやらそんな世界らしい。

今までのような年を取ってリタイアする、という時代は終わって、年齢を重ねても働き続けることを望む時代になった今、高齢者のフリーエージェントは、インターネットを利用して、好きなときに求められるだけ働くというスタイルを取るだろう、とも本書では書かれている。

また、フリーエージェントにとって必要な設備として、スターバックスのようなコーヒーショップが挙げられていたり、一日のうち家族以外で口を利いたのはフェデックスの配達員だけだったりすることがあると暴露したりと、なかなかユニークな内容で、読んでいて面白い部分がたくさんある。

筆者はアメリカのゴア前副大統領の首席スピーチライターからフリーエージェントした人物。パースペクティブでありながら、綿密な取材による細かい事象も丹念に拾い上げていて、アメリカにおける「組織に属さず働く」ことを、立体的に描き出している。

日本にこういう社会が訪れるかどうかは別にして、新しいワーキングスタイルの一端に触れるために、本書を読むのは悪くないと思う。訳文も構成もよく、とても読みやすい一冊である。ぜひどうぞ。

「課長」の作法

【著者】山田敏世【出版社】NHK出版
【発刊年月】2002年03月10日【本体価格】640円
【ページ数】189p【ISBN】4-14-088022-8

部下の期待に応えつつ上司にも信頼され、さらに上にも下にもこびることな く独自のスタンスを貫ける課長になるためには、「開放性」「包容性」「正確性」「一貫性」の四つが重要です。
本文 67p より 抜粋

課長の仕事とはなんだろうか?部下である課員はもちろんのこと、現在課長を務めている方でも、的確に答えられる人はそれほど多くないだろう。重要な役割ではあるんだろうけれども、なんとなく茫洋としてつかみどころのない役職、それが「課長職」である・・・という感じがする。

本書は、ビジネスマナー・秘書実務の講師でもある筆者が、組織人として、またチームリーダーとして、課長が求められるもっとも基本的なビジネスマナーとは何か?また、上司からも部下からも信用される「課長」とはどんな人物なのか、やさしい語り口で伝授してくれる。

述べられているポイントは、ザックリ大別してしまうと2つ。1つは「おかしな振る舞いはしていませんか?」ということ。そして、もう1つは「部下をきちんと指導できていますか?」ということ。たった2つのことだけれども、ずいぶんと耳が痛い「指摘」が並んでいるのだ。

例えば「振る舞い」に関して。「ちょっといいですか」と部下が話しかけているのに、「いいよ、何?」と言いながら、実はパソコンから目を離さず、マウスを動かして、ながら聞きしている・・・こういう人は、自分では話を聞いているつもりでも、部下の評価は「話を聞いてくれない課長」となる。

実際の自分自身がイメージしている行動と、部下や上司の評価にズレが生じることが、自らの評価を落としている、ということがわかる。自分の普段の態度が「そのポジションにふさわしく」振舞えているのか?この本を読み込めば、自身の問題点が少しだが浮き彫りになってくる。

さらに、部下を「出る杭を育てる」と題して、どのように「やる気を出させて」「能力を伸ばして」「組織人としてのマナーを身に付けさせる」のか。遅刻はいけないこと?マナーを学んでも金になるの?など、頭が痛くなりそうな、しかし、 わかりやすい事例を示して紹介している。かなり面白い。

今、課長職に就いている方はもちろんのこと、組織に所属するビジネスパーソンにも、本書は広く読んでいただきたい1冊である。課員は、課長が望むことを先回りして理解し、望まれる部下になるためのツボをチェックするために、お勧めしておきたい。新書なので、サクッと読めるのもマルである。

これだ!と思える仕事に出会うには

【著者】シェリル・ギルマン【訳者】ニキ・リンコ【出版社】花風社
【発刊年月】2001年12月25日【本体価格】1,600円
【ページ数】293p【ISBN】4-907725-36-1

私は以前、ヨガを教えていたことがある。講師になろうと決心したのは「人に教えるとなったら、いやでも必死で練習せざる得なくなって、よく身につくだろう」と思ったからだ。だから、近所の生涯教育センターに行って、ヨガを教えたいという話を持ちこみ、スタジオを開き、ヨガの本をありったけ買いこみ、週に三回ヨガ教室に通って講師の資格を取った──このとおりの順番で。
本文 192pより抜粋

不況だ、リストラだと、厳しい労働環境にあるはずなのに、だからこそなのか「自分の好きな仕事に就く」という視点での職探しが、ひそかに(といっては変だが)ブームである。要は「天職を見つけるために転職したい(下手なシャレだと笑わないように!)」人が増えているということなのだろう。

本書は、数多くの「天職探し」を助けてきた「天職・転職コンサルタント」が豊富な事例を交えて語る本当にやりたい仕事を見つけてゲットするためのスキル──を紹介した本だ。と、腰帯にはある。なるほど、アメリカにおいての「好きなことを仕事にする方法」が、詳細に書かれている。

まず、今の自分の仕事を見直すことにより「今の仕事の中にも、自分のやりたいことはあるのでは?」ということを気づかせようとする。実のところその行為は、仕事について「正面きって向き合うためのトレーニング」の一環に過ぎないのだが…。今の自分を正しく見据えるところから本書は始まる。

次に、転職という「冒険色の濃い」アクションを起こす際に生じる、さまざまなネガティブな要素を「本当の安全とは何か?」と問いを立てることによって、その不安を取り除かせる構成に、本書はなっている。また、実際に生じるストレスに立ち向かう方法も紹介されているのも嬉しい。

さらに、読者の持つ「創造力を解放させる」ことによって、ポジィティブな考えを志向させ、小さな頃から思い描いてきた「仕事への理想」を思い起こさせることで、なりたい仕事へ気持ちをフォーカスさせている。追い討ちをかけるように、人生の目的についても本書は掘り下げさせるのだ!

自分のやりたい仕事を「あぶり出させておいて」実際にその仕事に就くための手段として、本書ではいくつかの具体案を提示する。「今いる場所でそれを見つけ出す」という極めて現実的な提案から、「自分が習いたいことを教えてしまえ」と、いささか強引な手口まで、バラエティに富んでいる。

その他にも、自分を売り込むコツなど、役に立つだろう「スキル」が満載の一冊である。それぞれの項目に「演習問題」がついている。本書を手に取ったら、ノートを用意して、設問に丁寧に解答すれば、かなり自分自身のことが「客観視」できるだろう。

流し読みして「何かが得られる」類の本ではない。しっかりと繰り返し読み込んでこそ「価値のある一冊」だろう。本メルマガ読者には、お勧めの一冊である。ただし、訳文はこなれているが、構成が洗練されていないからか、若干読みにくいかもしれない。頑張って読んで欲しい。

辞めて正解!?-私がまだサラリーマンだった頃

【著者】神濤玉青【出版社】情報センター出版局
【発刊年月】2001年11月16日【本体価格】1,300円
【ページ数】185p【ISBN】4-7958-3692-2

本書は、31人31様の脱サラ模様を収めたインタビュー集です。さまざまな価値観と、その人なりの懸命な生き方。それぞれの物語に、そこにしかない味わいと真実があります。あなたの心に響く物語を探してください。
本書 まえがき より抜粋

本書は各界の著名人の「脱サラ模様」を描いたものである。その数31人。サラリーマン暦10ヶ月から、果ては45年生まで。それぞれのサラリーマンだった頃の思い出と、退職時のことについて、インタービューしたものをまとめている。本誌の読者にとっては、興味深い内容ではないだろうか。

例えば、最近注目度が高まっている、劇作演出家の松尾スズキさんは、サラリーマンにあこがれていたと言う。自分自身の「変さ」を自覚し、透明な存在として、社会に埋没するためにサラリーマンになったのだが…結局はその「リセット」は成功することなく、会社でも浮いた存在になった。

彼は、サラリーマンでは自分を埋没させることは出来ずに、結局自分自身を埋没させるために、自分の居場所を作った(=劇団の結成)のだと言う。そして、自分の居場所を見つけるためには、しばらくウダウダあがくことを勧めている。これは「モラトリアム脱サラ」の例である。

関西を中心に「お天気オジサン」として有名な福井敏夫さんは、仕事を「人を使う仕事」「人から使われる仕事」の2種に分類。自分は気が弱いから、人を使うことは出来ない。だからと言って縦社会の中で縛られることもイヤだ。技術屋なら現場で自分の好きなことがやれる、と思い、気象庁の気象予報官を仕事にしたと話す。

自身は職人気質の予報官だったが、サラリーマン生活32年目にして、静止気象衛星「ひまわり」を使った日本最初の気象解説をテレビで行う羽目になり、テレビの天気解説者としてブレイクしてしまう。「大変身脱サラ」の典型だ。この調子で、いずれの著名人のエピソードも、なかなか面白い。

著者も前書きで述べているが、本書に登場する「脱サラ」組には、いくつかの共通点がある。1つは「退職時に不安や恐怖を感じていること」である。本書に登場する人たちは、いずれも豊かな才能で、世に出ている人たちばかりだ。そんな彼らでも、退職時に発生する「ネガティブ」な力に押しつぶされそうになっている。

もう1つは「サラリーマン時代の経験が糧になっている」と、サラリーマン時代を否定する人はいないということ。本書の肝は、実はこの一点にあるといって良い。本書に書かれてあることすべては、今頑張っている「サラリーマンへのエール」に他ならないのだ。仕事に疲れたとき、手にとって読んでみると良い、そんな本なのかもしれない。

理想のわたしになる!最強のセルフプロデュース術

【著者】シェリル・リチャードソン【出版社】きこ書房
【発刊年月】2001年09月30日【本体価格】1,400円
【ページ数】260p【ISBN】4-87771-075-2

人生イコール仕事ではありません。「やるべきことリスト」の一番上に自分自身を据え、徹底したセルフケア(自己管理)を実践して、良質な生活を送るための強固な基盤をつくりましょう。
本書 第1章 コーチング覚書 より抜粋

一昔前にビジネスマンの間では「自分探し」なるキーワードが流行した。自分らしい生き方とは何だろう、本当の自分はどんな人間なんだろう。仕事だけが人生じゃないさ…的なワードが盛んに叫ばれたりもした。しかし、今はどうだろう。未曾有図の不景気の中で、そんな余裕はないといった感じか。

しかし、こんな世の中だからこそ、思い通りに生きたいと願って、自分なりの「幸せ」を追求すべきではないのか…。今週紹介する本は、そんな幸せを追求する人たちの生活改善に力を貸してきた、コーチングの第一人者が筆者である。今のままではいけない、と考える人には最適の一冊なのだ。

本書が提案するセルフプロデュースのポイントは7つ。「自分本位になること」「優先事項を整理すること」「自身が消耗している原因を突き止めること」「経済状態を健全なものにすること」「自身のエネルギー源を見直すこと」「心の通い合う仲間をつくること」「精神的な幸福を尊重すること」

どれも至極当たり前のことのように思える。だが、自身を振り返ってよく考えてみるとわかる。どのポイントも、実際には出来ていないことが多いはずだ。どうして自分は、その判りきったことが出来ないのだろうか。その答えを解く鍵は「正面から向き合う」というキーワードにある。

要は、セルフプロデュースをするためのポイントを実行するべきだということは、十分にわかっている。しかし、それが出来ない。出来ない理由もわかっている。だが、理由を発生させる原因まで突き詰めていない。ここに問題点があるのだ。本書を読めば、そのことが実にクリアに理解できる。

例えば、心が穏やかではない理由は、スケジュールが多忙でゆとりがないからである。とは判っている。しかし、何故スケジュールが多忙になるのか、どうしたら多忙な毎日から解放されるのか、理由を発生させている原因にまで、思いを至らせることは少ない。だが、ここを乗り越えなくては…。

本書は、その原因を探し出し(受けたことはないが)これがコーチングか!と思わせる内容で、解決するためのプロセスを、懇切丁寧に解説する。本書からの問いかけ(たくさんあります)に、ノートを取りながら(これはやったほうが良いです)答えていくと、今の自分に何が必要なのか、コーチしてくれると言うわけなのだ。これは読むしかないだろう。必読!

4回リストラされてもホームレスにならなかった私

【著者】トム・ロナーガン【訳者】岩田佳代子【出版社】花風社
【発刊年月】2001年08月10日【本体価格】1,200円
【ページ数】186p【ISBN】4-907725-28-0

誇りを持つ。そのためにはどうしたらいいのだろう。(略)とにかくまず、何か打ち込めるものを探してみよう。これまでの仕事を忘れるほど没頭できるものが必ずあるはず。その際、自分が探したくて探しているのだということを忘れずに。決して、探させられているのではない。間違えないでほしい。あなたの方から会社を見限ったのだ。
本書 65p より抜粋

「痛み」を伴う「構造改革」が実施されたとして…あなたの「首」は大丈夫ですか?厳しい現実に直面しているとき、不安な気持ちだけでは立ち向かっていくことは出来ないはず。4回もリストラをされながらも、そのたびに逞しく立ち上がった男の「勇気」と「知恵」を、開陳したものが本書である。

本書では、クビを切られた原因の大半は、自分に責任があるのではないとしている。自分がクビを切られたのは、他の誰かが、計画通りにコトを運ぶことが出来なかったため、なのだとしている。なるほど、モノは考えよう、実にポジティブである。

さらに、仕事を求めるために、友達やクビを切った上司へアプローチするための方法も書かれている。例えば、友達が「話し掛けやすい」ように、自分のリストラ劇を、「決心したよ、仕事を変えようと思ってね」などと、上手に脚色することなどがそれである。この視点はなかなか面白い。履歴書や面接などといった、求職時に必要とされるテクニックも解説されている。

また、それでもダメなときというわけではないだろうが、起業するためのテクニックも披露されている。右へ行っても左へ行ってもダメなとき…きっとあなたはどちらへ行こうとしていたのでもない、真ん中を進もうとしていたんだ、と言うことだろう。これまた、ポジィティブ・シンキングである。起業時に必要なユニークな心構えが書かれている。

これらのスキルを見ていて気がつくのは、前向きな人生を歩む筆者は、その行動の裏打ちとして、相手の求めていることを読んでいるということ。本書の最大の肝は、実のところ、クビになった焦りを持つ自分では、到底考えられそうにない「相手(=受け手)の心理」を紹介しているところにある。この心理戦、どんなビジネスシーンでも有効であることは言うまでもない。

短いが適切で今すぐにでも活用できるアドバイス、心を高揚させ前向きにしてくれる視点移動、ユーモア溢れる筆致、どれもが、読む人を勇気付けてくれることは間違いない。腰帯にもあるが「厳しい時代を生き抜く最強の仕事観」を作るために、読んでおいて損はないだろう。ピンチをチャンスに変えるために、一読を薦める。

ぼくたちは、銀行を作った。

【著者】十時裕樹【出版社】集英社インターナショナル
【発刊年月】2001年07月10日
【本体価格】900円【ページ数】143p【ISBN】4-7976-7044-4

そもそも、ネット銀行をつくってみたい(中略)免許が必要だ、ということくらいは漠然とは知っていたものの、さて、どうやって手をつけたらいいものやら。どうやったら免許がもらえるか、なんて当然のことながら、どこのホームページにも出ていません。困ったあげくに浮かんだアイデアは免許を交付してくれるところに直接聞きに行く、という至極単純なものでした。
本書 10p より抜粋

暑さが続いて疲れてくる。仕事に対する意欲がなんとなく失せてしまう。意気のあがらないまま仕事をしては、余計疲れます。と言うことで今週は、誰もが元気になる、ちょっとしたサクセスストーリーを綴ったこの1冊をご紹介する。読めばテンションがあがること、請け合いである。

本書は、ソニー銀行という、インターネット専業の銀行を立ち上げた男が、銀行が出来ていくまでのプロセスを、自らの手で書いたものである。実はそれだけだ。が…自慢話や苦労話がほとんどの類書とは、趣を異にしている。そこに漂うのは、トホホなくらいのノンビリ感なのだ。

インターネットパンクを一から立ち上げる、大変な事業である。実際に、本書の中でも様々な苦労や壁にぶち当たってはいるのだ。事業の凍結、戦後ほとんど類の無い新銀行の設立など、その実現まで、大変な苦労があったようである。しかし、その困難…をなんとも微妙な力の抜け具合で乗り切っていくのである。これは、痛快以外の何ものでもない。

事業の準備室が立ち上がって、オフィスを求めるのも、格安というところに配慮して、そんなところで良いのか?と周りから心配される。本社の遊休資産である机などをかき集めて経費節減を狙うも、別事業体となったので、買取だと言われて焦り、オフィス用品の安売りを探して、何故か「ユニクロ」を思い浮かべてしまう(アスクルだって!)。笑える。

大したことをやってのけているのに、本人にはその意識が無い。事業のプレゼンテーションをして、役員からクエスチョンがついた時、その理由について、1.ソニーがやるべき必然性が見えない、2.言っている本人に迫力がない、と言ってのけている。十分にその力の抜け方を、自覚しているのである。それは、実は強力な自信の裏返しなのだろう…そう思えて仕方ない。

元々本書は、銀行を立ち上げ時に、ネット上の銀行なんて、顔が見えないはずだから、その「体温」みたいなところを伝えたい、と始めたメルマガをまとめたものである。読んだ後に、仕事をするために必要な「謙虚さ」と「勇気」と「粘り強さ」と「理想を持つこと」を、周りを包む「温かさ」とともに受け取れる、そんな本だ。読んでやる気がでることは保証しますよ!

研究力

【監修】有馬朗人【出版社】東京書籍
【発刊年月】2001年05月25日【本体価格】1,800円【ページ数】318p
【ISBN】4-489-00609-8

独創的なアイデアは個人から出るのであって、会議からは出ません。日本の研究の多くはプロジェクトチームを組んで、会議、会議で進めていきます。そういう進め方をしたら、ろくなことはありません。
本書 31p より抜粋

本書では、科学や工学の分野の最先端で活躍する10人の研究者が、第一線の研究者になるために必要な「研究力」について語っている。それぞれの研究者が、ブレークスルーを生み出す力とは何か、紹介しているわけだが、一般的なビジネスパーソンにとって、かなり刺激的な内容になっている。

本書の内容だが…正直難しい。正確には、ブックレビュアーの私が、自分の知識として持ち得ない分野の話ばかりであったので、きちんと理解できなかった、だけであるが…。しかし、それを差し引いても本書はとても面白い。そこには、研究者たちの「思考」が見え隠れしているからだ。

研究者の思考は、まず研究ありきである。その全くのストレートさに驚いてしまう。研究のためなら、企業に勤めていたとしても、配置された場所にも行きたくないと言うし、あるテーマを追いなさいという命令書だって無視してしまう。結果を出せば大丈夫、という信念が、なんともユーモラスだ。

そして、研究のためなら教わることを厭わないところが素敵なところだ。本書に登場する研究者たちは一様に、一流の先生に師事することや、有望な人材と積極的に交流することを勧めている。また、自らの専門分野でないところで、不明なことが生じた場合、菓子折り一つでその分野の一流どころを訪ね、しっかり教えを受けている。その素直さがうらやましく感じられる。

さらに、研究費を獲得するためのプロポーザルのテクニックや、研究者がベンチャー企業を起こすということ、また、世界のライバルたちと伍すための自分なりの方法論が、カンタンではあるが開陳されている。やっていることは違えども、研究者もまた、ビジネスパーソンと同じだなぁと、読んでいて頷くことも多い。

監修者である有馬朗人氏(元文部大臣でご存知の方も多いはず)は、研究者にとっての真の研究力とはなにか、研究生活から得た教訓として、次のようにまとめている。

まず、若いときに非常に優れた独創的な人に会って、その人がどのように振舞うかみることが大切だとしている。そして、ある時期からは、完全に1人になれ、と説く。さらに、どんな攻撃を受けようとも、自分が正しいと思ったらめげないこととしている。なんだ、自分たちと一緒じゃないか、そう思われた方は多いだろう。

ピンと来たあなたには、本書はお勧めである。研究者の「思考」を垣間見てみよう。一押し本です。

ビジネス・リーダーへのキャリアを考える技術・つくる技術

【著者】グロービス・マネジメント・インスティテュート
【出版社】東洋経済新報社
【発刊年月】2001年05月31日【本体価格】1,800円【ページ数】217p
【ISBN】4-492-53113-0

□キャリアを考え、つくるというスタンス

○まず、現時点での自分を正しく認識させたうえで(自己理解・自己洞察)
○自分にとって残された時間の中で(時間軸)
○何を目指して(ありたい姿・状態:志向性)
○何を大切にして(価値判断基準)
○どのようなポジションで(企業・組織の中での役割)
○どのような仕事をしていくのか考えて(仕事の内容)
○そのためにどのような行動を起こしていくのか(行動計画)

本書 3p より抜粋

終身雇用制度の実質的な崩壊によって、ビジネスパーソンのキャリアプランは非常にわかりにくいものになっている。今までのように、一定の年齢がやってくれば、入社同期が同じくらいの時期に同等の地位に付き、後は少なくなる役職を確保できるかどうかの椅子取りゲーム…そんな長閑な時代ではないのだ。自身のキャリアプラン、どのように考えればよいのだろうか。

腰帯にも銘打つとおり、本書は「戦略的キャリアマネジメント」の教科書の決定版である。このフレーズだけでレビューの紹介が終わってしまうほど、キャリアプランの策定において、知っておくべきことが、簡便にかつ、解りやすくまとめられている。ビジネスリーダーとして生き残っていくための、必要最小限であろうガイドラインを本書で知ることが出来る。

まず本書は、キャリアという漠然とした言葉では、なりたい自分にはなれないと指摘する。やりたいことはいったい何なのか…その本質的な部分を考えさせる。その上で、世間に流れている「キャリアアップ」に関する幻想と誤解を解いていく。中でも、とても短いコラムなのだが、採用側の論理も紹介しているところに注目しておきたい。

結局、キャリアをアップさせるということは、自分の努力だけではすまないということだ。自分の商品価値を見極め、その価値を高め、そして必要なところへ自らをセールスしていく。常に、相手を意識したものでなくてはならない、ということが、本書を読み進めていくうちにわかる。

やりたいことを見つければ、次は、それを実現するための周辺環境の整備という、当たり前のプロセスを、丁寧に紹介した書籍は意外と少ない。やりたい仕事のつかみ方や能力開発の手法が、具体的に細かく紹介されている本書は、ビジネスキャリアとは何か知りたい、自らのキャリアプランをもう一度再検討したい、そんな貴方にお勧めしておきたい一冊である。

アメリカ式論文の書き方

【著者】フライ【訳者】酒井一夫【出版社】東京図書
【発刊年月】1994年02月25日【本体価格】1,500円【ページ数】158p
【ISBN】4-489-00431-1

論文をまとめるというのは、一つのテクニックです。これを身につけてしまえば、後は流れ作業なのです(本書に記されている論文のまとめ方のノウハウの意の文を略)これさえマスターしてしまえば、(中略)論文の内容を高めることに力を注ぐことが出来るのです。
本書 訳者あとがき より抜粋

出来るビジネスパーソンとして身に付けておきたい「技術」の一つとして、ドキュメント作成があるだろう。しかし、レポートや報告書、企画書などを作成するためのノウハウを、きちんと教わった経験のある人は少ないはず。本書には、ドキュメントを作成するための技術が、事細かなポイントまで詰め込まれている。

本書のわかりやすさは、その本の成り立ちに由来している。もともとはアメリカの高校上級生、もしくは大学生がレポートを作成する際のハウツーをまとめたものである。しかし、自分の考えをまとめて主張するトレーニングが行われることのない日本においては、ビジネスパーソンにとっても、十分に役に立つ。本書を読むと、ドキュメント作成は技術であることがわかる。

本書に書かれてあるテクニックは、1.あるテーマについて情報を見つける方法。2.情報を整理し結論を導き出す方法。3.よく構成された詳細なレポートをまとめる方法。4.自分の考えを効果的に伝える方法。の4つである。それぞれのポイントが、学生向けだからだろうか、実に細かく「手取り足取り」書かれている。

まず、論文を作成する際には、その半分を調査、そして残りを執筆に充てるようにと、本書では説く。説得力のある文書を作成するためには、事前の調査が十分でないといけない、ということなのだろう。文献の探し方、得た情報のカード化の技法などがまとめられている。今やインターネット時代、若干古びた技法もあるが、基本の部分は十分に参考になる。

情報の整理まで出来たら論文は出来たも同然とし、情報を論旨に沿って並べ替えなどを行い、さらに情報に自らの考えなどを肉付けしながら、仕上げを行っていく。ブラッシュアップの技法まで、単純であるが必要なテクニックが、細かく紹介されている。そのあまりのシステマティックさに、本書読了時点でもう、論文がすらすらと書ける気になってしまうから、不思議だ。

かなり旧い本であることから、インターネットの利用法などもなく、時代に適応していないところもある。しかし、ペーパーを作成するための基本的なテクニック習得は、この一冊を読めば十分であると断言してよいだろう。本稿作成時にインターネット書店で確認したが、今ならまだカンタンに本書は手に入るようだ。さあ、急いで。必読です。

日本経済幻論 -これからの時代ってむごくない?-

【著者】しりあがり寿+日本総合研究所【出版社】PHP研究所
【発刊年月】2001年01月31日【本体価格】1,400円【ページ数】180p
【ISBN】4-569-61325-X

(前略)本書は、このような日本経済、日本企業の現状認識に基づき、二 十一世紀に向けた改革の方向性について、米国経済あるいはアングロ・サ クソン型経営システムとの比較から学ぼうという意図が込められている。
本書 はじめに より

何をどう考えても、日本の今の経済状態は良くないのだろう。ビジネス雑誌や新聞、テレビでのニュースなどを見ていても、「良くない」とは報じられているのだが、それらを見ていても、「何が理由で悪い状態」なのか、「どうすれば改善に向かう」のか、そして、「個人としては何をすればよい」のか、一向にわからない。

本書は、哀愁のマンガ家・しりあがり寿の、今の日本経済をテーマにした、コミカルでいて悲哀の漂うマンガに、日本総研の切れのある解説を加える、というスタイルを取っている。内容は、経済原論・サラリーマン像・経営・インターネット・ビジネスモデル・ゲーム社会・消費者ニーズの八項目。それぞれの項目について、現在と未来を、わかりやすく説明している。

例えば「サラリーマン像」は、世界一元気で働き者と言われた「ジャパニーズ・ビジネスマン」がいなくなった原因、経営トップが突然外国人に交代すること、在宅勤務について、ネット社会が大きくなるにつれ雇用形態が変化する予測、企業組織のバーチャル化などが、取り上げられている。コラムそれぞれは、短い解説だが、大まかなところをガチッと掴むことができる。

コラムの頭についたマンガは相当笑える。誰もが思っている最近のビジネストレンドに潜む「それっておかしいじゃん」を、実に端的に描いているからだ。ツボに入るというのは、このことだろう。ビジネス書にマンガを導入するケースが増えてきているが、テキストを絵に直しただけ、というものが多い。ここでは、読む前にそのコラムの「肝」を示している。楽しく読めることは間違いない。

腰を据えてじっくりと読む、という内容ではない。それよりも、通勤電車の中で、リラックスして読むことをお勧めしたい。易しいからといって、内容が雑であるということはない。必要なデータなどの図版は適宜挿入されているし、なにより「どうすればよいのか」のヒントが多数盛り込まれている。サクッと読めるのが、忙しい身には何よりありがたいはず。

キャリアショック

【著者】高橋俊介【出版社】東洋経済新報社
【発刊年月】2000年11月20日【本体価格】1,500円【ページ数】214p
【ISBN】4-492-53108-4

いま求められているのは、予想外のどのようなキャリアショックに対しても柔軟に対応できる能力を、会社主導ではなく、自分主導で身につけていくことである。それは、単に雇用の流動性に対応して社外でも通用するスキルを身につけるといった次元のものではなく、その先をいなかければならない。
はじめに より

一昔前までのキャリアプランといえば、就職した企業内で、いかに上位のポストに就くかということを示していた。したがって、個人の能力を磨くというよりも、「組織の中での動き」という観点からのキャリア開発がなされてきた。しかし、終身雇用制度のなし崩し的な瓦解などによって、個人という観点からキャリア開発を行うことが必要になっている。

本書は、人材マネジメント分野で長年コンサルティングをおこなってきた筆者が、個人の観点からのキャリア開発を体系化、今後の個人と企業のキャリア開発のあり方について、詳細に述べている。なかでも注目しておきたいのは、「キャリアコンピタンシー」という概念だ。

終身雇用が当たり前だった時代は、キャリアプランは容易に設定できた。目標となるポストや先輩を見つけ、努力をすればよかったからだ。しかし今や吸収や合併などによって、会社そのものが何時消滅するかわからない。本書ではそのことを「キャリアショック」と呼んでいる。

自分が描いていた将来像が予期せぬカタチで崩壊することが、日常で次々と起こっている今、キャリアプランを設定するのはかなり難しい。そこで、自分のキャリアにとって「好ましい変化」を仕掛けて、変化に対応するだけの「能力」を備えること=キャリアコンピタンシーが要求されている。

本書では、キャリアコンピタンシーを身に付けるための視座視点がわかりやすく示されている。キャリアショックとは何か、キャリアそのものの本質、キャリアを切り開くための行動指針や、企業が考えるべきことなど、興味深い内容が並んでいる。

例えば、キャリアをアップさせるときに、今までやってきたことを、さらに積み上げるだけでは競合するものに勝てないと判断したときには、水平展開(=異分野や本流ではなく傍流への移動)をして、キャリアを進めていくことが書かれている。気が付いていても、思い切ることができない行動だが、本書に示されている事例などを読むと、なるほどと頷かされることも多い。

自分のキャリアプランを考える上で、必読の一冊といえるだろう。まず本書を読んで、自分のキャリアアップアクションを精査してみることをお勧めしたい。

ビジネスマンのための知的ミーハー思考のすすめ

【著者】文月敏雄
【出版社】PHP研究所
【発刊年月】2000年11月27日【本体価格】1,250円【ページ数】269p
【ISBN】4-569-61327-6

問題は、知識収集の際のメンタリティです。「自分で考えなくても、解答はどこかにある。誰かが持っている。それを探し当てるのが、知的な活動なんだ」と思い込み、この”知的な活動”を果てしなく繰り返してきたことが問題なのです。つまり、「知のフロンティア」を「知識のフロンティア」と勘違いしていたわけです。
本文18ページより

考えるという作業はとても難しいと感じるヒトは多いだろう。その理由の一つに、考えるスキルを教育のどの段階ででも教わらなかった、ということがあるはずだ。社会に出て働き始めてもそれは同様で、きちんとした「考えるための技術」をレクチャーされているヒトはひどく少ない。

本書は「考えることを考えよう」をコアコンセプトとした、思考のためのガイドブックである。理路整然と考えるためのテクニックが並べられた本ではない。どちらかというと、考えるためのヒントが適宜詰まった読み物体裁になっている。

まず「考えない症候群」に陥ってませんかと、様々な「既成概念」という枠にとらわれた中でしか考えれないヒト=本当に考えていないヒトと看破している。ビジネス書を読む際のメンタリティとして、「答えは本の中にある」と思い込んで探そうとしていませんかと、耳の痛い指摘をしている。なかなか興味深い。

さらに「考えることを考える」として、考えなくてもすんだ日本の土壌、アメリカにおける考えるということの若干のヒント等を整理。日本人の均一性という気質に言及し、変化が生じない環境では、考えることよりも知っているということが尊ばれてきたことに触れている。何故考えなくてもすんできたのか、というベースは、知っておいて損はない。

以降、考えるためのテクニックと進むのだが、広告代理店(博報堂)からコンサルティング会社(ボストン・コンサルティング・グループ)へと進んだ筆者の経験を交えてのノウハウ(というよりもヒント)は、読んでいてとても面白い。

また、「潜在ニーズを探ることは難しい。顕在ニーズを大切にせよ。」などの指摘など、わかり切ったことと「枠」を作ってしまっていたことにも気づかされたりして、汗顔の至りである。

この中に「解答」があるというタイプの本ではない。しかしヒントはたくさん詰まっている。軽装版のこの本を通勤の行き帰りにでも読んで、街を観察してみることをお勧めする。思考技術が磨かれることだろう。

目標達成の秘訣100

【著者】ロジャー・ブラック【訳者】梶原建ニ
【出版社】TBSブリタニカ
【発刊年月】1992年03月03日【本体価格】1,456円【ページ数】293p
【ISBN】4-484-92102-2

○朝食ミーティング、黄昏ミーティング コメント…朝食ミーティングはいいアイデアだ。ただし中身を忘れた企画倒れに注意。やっておくとあとのスケジュールが楽になる、日常的な打ち合わせの時間に利用するのがいい。(中略) 適した仕事のタイプ…日常的な雑務、ビジネス上のつき合い、社内または他社合同の新規プロジェクトに関する予備診断。いろいろの根回し。スタッフ問題。
本文 059p より

パッと思い浮かぶ、ビジネスマンに大切なスキルと言えば、「時間管理」と「人間管理」だろう。理由はとてもカンタンで、仕事とは時間に追われてするものだし、仕事とは1人ではほとんど出来ないからだ。しかし、この2つ、なかなか手ごわい。本書は、時間管理の改善と業績の向上に有効なメソッドを、100章の短いセクションに分けて紹介している。先の2つの悩みを解決する手法が満載だ。

さすが1つのテーマを100に分けているだけのことはある。一つ一つのメソッドが、実に詳細である。そしてとても面白い。例えば「ピンチを分析する」というコラムではこうだ。

一年半後の発売を予定している製品のコスト問い合わせのメモが販売部長から届くが、優先順位を下にして処理をしないでおく、そうすると穏やかな文面のメモ(ただし期日の明示はない)がまた届く、さらにほっておくと、販売部長の秘書から「メモは読みましたか?」とせかされて、ちょっと優先順位を上げる、が、依然先のことだろう、と思っていたら、メモの用件の真の依頼者である取締役が、腹を据えかねた声で督促の電話、明日までにコストを出せと言われて関係個所に問い合わせるも、無理といわれて途方にくれるというプロセスが示される。その中に、気づくべきだった予兆がいくつか隠されている、としてポイント解説を始める(ちなみにどこが予兆だったか分かりますか?…回答は…書店で見てください)。

メモの取り方から、時間は何故失われる?、他人を説得するためのポイント、文書の書き方など……。出来るビジネスマンなら、無意識にやっていること、コツとして知っていることを、この本は一つ一つ丁寧に拾い上げて文字として置き換えている。自らの仕事の進め方をもう一度見直し、スキルアップを図るための格好の「バイブル」になること請け合いだ。

古い本ではあるが、大型書店などではきちんと見かける。やはり人気のある本なのであろう。最近では、インターネットのブックショップも充実していることでもあるし。探してぜひ手に入れられることをお勧めする。漠然としていた「仕事」の進め方に一本芯が通る、そんな感じがしますよ。

大学教授になる方法

【著者】鷲田小彌太【出版社】青弓社
【発刊年月】1991年01月30日【本体価格】1,500円【ページ数】198p
【ISBN】4-7872-3037-9

私は、職業としての大学教授を、まず、学問上の目的を達成する手段としてではなく、生きるための手段として位置づけたい。つまり、普通の職業と同列に置いてみるのである。普通の職業であるから、普通の人がなれなくてはならない。だから、特殊な能力と努力を要求するような職業ではなく、いちばん層の厚い、偏差値五〇前後の人なら、方法さえ間違わなければなれるということを紹介したいのである。その意味で、まさに「ハウ・ツウ」ものである。
本文 はじめに より

まず最初にお断りしておきたい。今回取り上げる本は、本メールマガジンとしては、いささか毛色の変わったものである。ビジネスマンの直接的なスキルアップには結びつかないが、キャリアアップを狙う人間として、自らの仕事を客観視して、次のキャリアを目指すためにはどうすれば良いのか、という点において、かなり参考になる。ちょっと変化球なのだ。

今や、ライトな教養書の書き手としてメジャーな筆者の、出世作である。はじめにも書かれているとおりに、大学教授を職業として捉え、その職業につくためのノウハウが、細かく紹介されている。ある意味、ネガティブな視点で、パロディともとれるタッチで書かれた本である。

大学教授は、生きる糧の道を決定せずに、三十歳までうかうか過ごすことが出来るし、職をもって後も、ほぼ楽しみに近い「仕事」が保証される。高齢になってもそれなりの収入と、悪くない世間上の評価を得ることか出来る。自由気ままに生きるために、最もふさわしい仕事は、大学教授なのではないか、と筆者は言う。なるほど、そう聞くと良い職業だ(笑)。

大学教授の数を紹介して、比較的大きなコミュニティであると説き、その仕事の内容は「教育活動」「研究活動」「学内行政」であると解説する。さらに、大学教授になるには、実は資格など必要なく、研究者養成機関を経てなる「普通」コースから、大学を出ないで教授になる「超特殊」コースまであると紹介している。

その他にも、募集のされ方、応募の方法、コネの使い方、狙い目(=専門にはこだわってはいけない、短大や私立無名大学の教員になれ、勤務地にはこだわるな)など、実践的なコラムが満載されている。読みすすめていると、大学教授に本当になれそうな気がしてくるから楽しい(そんなにカンタンにはいかないだろうけど)。また、一般的なキャリアアップとの共通点(そのものズバリではないが)も実は多く、なるほどと思わせるところも結構ある。

本書は古い本ではあるが、かなりのベストセラーになったから、大型書店にならまだ新刊があるし、古書店でも手に入りやすい。探してみての一読をお勧めする。

iモード事件

【著者】松永真理【出版社】角川書店
【発刊年月】2000年07月25日【本体価格】1,300円【ページ数】221p
【ISBN】4-04-883633-1

「ねっ、これから何ヶ月もかかって開発していくうちには、迷ったり、自分たちの進む方向がわからなくなったりするときが必ずあると思うの。そんなとき、頭に浮かぶこのイメージを思い出せばいいのよ。『コンシェルジュ』という考えを実現するためにはどうすればいいのかを考えて進んでいけばいいの」私は若手に説明した。
本文 85p より

iモードと聞いて知らないビジネスマンはいないだろう。加入者台数一千万台を突破した、NTTドコモの携帯電話端末によって提供されているサービスである。単なる音声だけやり取りに終始していた携帯電話が、マルチメディア端末へ変貌を遂げたこのサービス成功の立役者が、42歳で転職した筆者だ。本書はその顛末を、当事者の視点でリアルに描いている。

本書には数多くの有益なビジネススキルが含まれている。その中でも一番の読みどころは、本書の底流に流れている「転職者としてのスキルの活かし方」ではないだろうか。筆者は、コンテンツ製作者としての力量を見こまれて、会社を移籍した。そして、違うカルチャーの存在する会社において、何度もその違和感に苦しみながらも、自らに求められている役割を見失わずに、スキルを発揮していく。その奮闘ぶりは、コミカルではあるけれども示唆に富んでいる。

自らの力量を最大限に活かすために、ある時は、組織にフィットさせる術を見つけ出す。またある時は、強引に主張を押し通すために、ネゴシエーションに全力を尽くす。必要な人材であれば、社外から引っ張ってくる。アイデアを生み出すためには、変わったカルチャーをそこに投入してみたりする。手を変え品を変え、自らの考えを浸透させていく。

即戦力として入社した「転職者」は、その会社に馴染むことだけが能じゃない。むしろ、戦力として機能することを最優先に考えて行動することが大切なんだと、本書は教えてくれる。

余談だが、こういうリアルで実践的なビジネス書は、女性の手によってもたらされることが多い。不思議と言えば不思議。単にビジネス書としてだけではなく、1冊の読み物としても相当に面白い本である。文章もわかりやすくすらすらと読める。なにより新規事業が立ち上がっていくダイナミック感が楽しい。一読して損はないだろう。

仕事を愉しむ

【著者】高任和夫
【出版社】日経BP社
【発刊年月】2000年05月01日【本体価格】1,400円【ページ数】269p
【ISBN】4-8222-1444-3

マスコミは人の不幸は大きく取り上げるくせに、幸せな人たちの情報を伝達することについて、消極的すぎる。それに惑わされてはいけない。楽しく生きている人は一杯いるのだ。富の格差についてはだいぶ論じられているが、人生の格差も確実に広がっているのだ。どうもわたしたちは、そんな時代に踏み込んでいるようなのであった。
本文 まえがき より

本書は、「日経ベンチャー」に連載されていた、元商社マン小説家の企業探訪記をまとめたものである。紹介されている人は老若男女24人。並々ならぬパワーが必要な独立開業を成し遂げた人のエピソードを、これだけまとめて読むと、なかなかずっしりとくるものがある。本の名前は軽やかではあるが、中身は食べ応え十分だ。

「インターネット時代を突っ走る」「気がついたら起業家」「大企業とはひと味違う」「悠々自適とは無縁です」「主婦だからできた」「再生請け負います」…本書の章立てである。起業家と言えば、20歳代後半のネットベンチャーのそれを思い浮かべるけれども、60歳をすぎても、主婦であっても、起業家になれるんだなぁと、当たり前のことを改めて認識。仕事を愉しんでいるひとは、至るところにいるということだ。

読み進めてみると、起業家たちにはいくつかの共通点があることに気がつく。いつも考え抜いていること…結果論に過ぎないと言われそうだが、彼らはいつも考えている。フットワークが軽い…考え抜いた結果を行動に移すときの身の軽さは驚くものがある。結果を大切にしている…立ち上げる満足だけではなく、得られる結果を大切にしている。得たい結果の為に努力しているのだ。仕事が面白くてしょうがない…その面白さが原動力で、頑張れていることが、はっきりとわかる。

これら起業家の持つ資質的なものは、起業家でなくても、ビジネス社会において、仕事を遂行していくためには必須の力であるはずだ。「思考力」「企画力」「行動力」「分析力」そして「仕事を愉しむ力」…。自分には何が足りないのか、どこがセールスポイントなのか、いろいろと思い浮かべて読むと、より面白いかもしれない。また、楽しく仕事をしている人のエピソードを読むことは、それだけでとても勇気付けられるはずだ。自分も頑張るぞと、前向きになれそうな感じがする。「仕事倦怠期」気味だという方がいらっしゃったら、読むことをお勧めします。

私がマイクロソフトで過ごした日々

【著者】ジュリー・ビック
【出版社】アスキー出版局
【発刊年月】2000年04月15日【本体価格】1,600円【ページ数】229p
【ISBN】4-7561-3393-2

読者に「次のビル・ゲイツになれる」とは約束できませんが、ここに書かれた内容をぜひ試してみてください。そうすれば、少なくともあなたの会社は発展し、あなたのウェブサイトにはより多くのトラフィックが集まり、一緒に仕事をする人たちとより良い関係を築けることは確かだと思います。
本文 16p より

筆者の前著「私がマイクロソフトで学んだこと」は、他のビジネス書にはない、実用的なアイデアがふんだんに盛り込まれていたことで、一躍ベストセラーになった。「学んだこと」は、自らのキャリアを築くためのノウハウを中心としたものだったが、今回は組織としてビジネスを行っていくために、留意しなくてはいけないポイントに、フォーカスされている。

まずはチーム作り。マイクロソフトにおける人材採用と、適性把握、人材開発法が紹介される。キャリアアップを志す、[en] Career Newsの読者には興味深いところだろう。例えば、マイクロソフト人材採用時の最重要ポイントとして7つ挙げられている。「個人としての能力」「成果」「協調性」「製品とテクノロジーへの情熱」「長期的視野」「顧客への配慮」「専門的・技術的な知識、技能」。それぞれには副要因があるとし、「個人としての能力」を形成するそれは、「誠実さ、知的体力、落ち着き、創造力」といった特性である、としている。

その他にも「製品開発の法則」「製品改良&再生の法則」「戦略的パートナー化の法則」「ネットビジネスの法則」と盛りだくさん。いずれのコンテンツも、面白く興味深いエピソードを投げかけ、そこから抽出される、さまざまな「学ぶべきこと」を鮮やかに提示してくれている。平易な文章とともに、その構造化手法には、読み手としては感心するしかない。

さらに各コンテンツには、その分野のマイクロソフトにおけるプロフェッショナルたちが「私の学んだ3つの教訓」と題して、示唆に富んだ有益なコメントを寄せている。例えばこんな感じだ。「社内における上司の地位を知ること」「上司のクセを知ること」「自分と違うスキルを持つ上司が望ましい」。言われてみればなるほどである。本書中に随時挿入されているこの教訓を拾い読みするだけでも、凡百のビジネス書に勝るかもしれない。

翻訳書にありがちな、読みづらさは本書には皆無だ。内容もさることながら、翻訳者に負うところも多いのだろう。店頭で見つけられたら、即買いである。前著をお持ちでない方は、併せての購入をお勧めする。ぜひ。

人、われを「在宅勤務社員」と呼ぶ

【著者】松岡温彦【出版社】実業之日本社【発刊年月】1998年07月20日
【本体価格】1,300円 【ページ数】 206P 【ISBN】4-408-10277-6

10年間も「在宅勤務」を続けてきた現役会社員が、ビジネスマンの生き方を根底から問いなおす-。
同書 腰帯 より

新しいビジネススタイルとして、在宅勤務が取り沙汰されて、もうずいぶんになる。経費節減が叫ばれている今、このワークスタイルが、多くの企業によって採用されないのか、疑問に思う。理由としては、管理が行き届かない、人との繋がりが大事、という程度のものだろう。誰かが見張っていないと働かない社員など、それこそお荷物だし、人との繋がりなど信じられない世の中に、とうになっている。だからこそ、この働き方、注目しておいた方が良い。

今書店に、在宅勤務に関する満足な本はない。正確に言うと、この1冊きりである(と思う)。独立起業関係(所謂SOHO本)がほとんどで、しかもパソコンのことばかり書いてある。ビジネスマンに役立つ情報はないし、在宅勤務の話もない。在宅勤務社員にテレワーカーとルビを振るこの本は、10年にわたり在宅勤務を続けている銀行員が、そのワークスタイルを披露している。在宅勤務についてのノウハウが並ぶが、そのノウハウ、実は在宅でなくても役立つ、仕事の本質が書かれている。

必要なツール、自己管理のコツ、必要な資質、必要な知的インフラと続くコンテンツは、どれもとても興味深い。例えば、必要な資質として筆者は、好奇心、想像力、思考力、構想力、資金力の五つを挙げている。この五つが備わっていれば、テレワーカーでなくとも、一線のビジネスマンでありつづけることは、想像に難くない。求められている資質が、どう言うものなのかが、噛んで含める文章で、カンタンに説明されている。また、知的インフラとしては、美術館・博物館に始まって、図書館、劇場、さらには川辺にまでも取り上げている。これらのアイテムを、ビジネスライフに活かすためのヒントが、さり気なく紹介されている。

読み方によってはこの本、ビジネスマンの資産チェック表としても機能する。つまり、必要な資質を持っているか、知的インフラを自分が活用できているか、などを確認してみると良い。無い部分を補い、未活用な部分に気がつけば、新しいビジネスライフが啓けること、請け合いだ。手にとって見て

仕事!

【著者】スタッズ・ターケル【出版社】晶文社 【発刊年月】97年07月10日
【本体価格】4,600円 【ページ数】 705P 【ISBN】4-7949-5915-X

これは仕事についての本である。まさにその性質上、暴力について──からだ的にも精神的にも──の本だ。事故についてでもあり、胃潰瘍についてでもある。
同書 21p より

115の職業、133人の実在の人々に、ロングインタビューを試み、その人たちの職業について、その人たちの話し言葉でまとめた本である。あまりにも有名な本なので、ご存知の方も多いかと思う。アメリカでの初版は1972年。ニュージャーナリズムの原点といわれるこの著者は、例えば、村上春樹の「アンダーグラウンド」などにも影響を与えている。

ここに書かれているのは、様々な人の職業についてだ。製鋼所労働者から始まり、消防士に終わる。大学教授、モデル、新聞予約電話勧誘員、ドアマン、床屋、ガス検診員、専業主婦、騎手、無職のヒトまで、インタビュイーの属性は多岐にわたる。このボリュームは、世の中にはあらゆる職業があり、そして、今の自分のビジネス社会の狭小を教えてくれる。

スーパーマーケットのレジ係は、販売されているものの値段のたいていを暗記していて、時々店長にその値段を尋ねられるときの、その気分の良さを語り、いろいろなものを見たホテル従業員は、私は口の軽い人間ではない、他人のしていることなど詮索しない、それは私の仕事ではないからと語る。読み進めていくと、すべての仕事には、それぞれに矜持があり、哲学があるコトがわかる。

キャリアアップや、ビジネススキルの向上を目指すとき、なぜキャリアアップを望むのか、どうしてスキルの向上が必要なのか、自らの足元が見えなくなる場合が多い。そんな時、仕事について、多岐にわたり、あらゆるコトを見知っておくことで、自らの座標軸を定めることが出来る。仕事についての様々を、年の初めに確認しておくと良いだろう。

この本の表紙の推薦文にこうある。いちど読みはじめたら、自分の生き方や日常の仕事を、きびしく、じっくりみつめなおさずにはいられなくなる。まさにその通りである。かなりのボリュームで、しかも高価な一冊ではあるが、キャリアアップを目指すビジネスマンなら、一度は目を通しておきたい本である。

外資系企業が欲しい人欲しくない人

【著者】ポール・ゴールドスミス 【訳】千葉 望 【出版社】メタモル出版
【発刊年月】1999年 9月10日 【本体価格】1300円 【ページ数】 181P
【 ISBN】4-89595-242-8

しかし、冷静になって考えてみると、外資系企業といってもすべて同じではありません。また憧れだけで外資系企業をめざしても成功はおぼつかないし、どんな会社が自分にあっているのかをしっかり考えないまま華やかな情報に踊らされては道を誤るだけです。
同書 まえがきより

「GAP」も、「スターバックス」も、「P&G」も、そして「マクドナルド」も、外資系企業だ。それほど外資系企業は私達の生活になじんでいるのに、転職や就職という場面になると、外資系というのは、なんなかしらのバイアスがかかっている。「年収1億円!」から、「すぐレイオフ!」という話しまで、外資系企業にまつわる噂は事欠かないようだ。

さて、今週取り上げる『外資系企業が欲しい人欲しくない人』は、外資系企業を転職先として考える人に是非お薦めをしたい一冊である。この1冊を読むと外資系企業という風に言っても「それほど」日本企業と違いがないところや、大きく違うところが明確に解り非常に面白い。

外資系に転職をする時に誤りがちな点や、日本企業との大きな相違点を具体的に取り上げた9つの実例は、外資系への転職で成功をした人、そして失敗をした人を取り上げてくれている。他の外資系への転職ノウハウ本と異なり、外資系企業で働くということをニュートラルな視点で伝授してくれる。

著者である、ポール・ゴールドスミス氏は、日本で人材派遣会社を経営するイギリスの方だ。単なる外資系企業への転職のノウハウ書におさまらない同書は、外資系企業に興味のある人だけでなく、多くの人に、今後の働き方に関するヒントを与えてくれるだろう。

神のごとく創造し、奴隷のごとく働け!

【著者】ガイ・カワサキ
【訳】小田嶋 隆 【出版社】ダイヤモンド社【発刊年月】1999年7月15日
【本体価格】1600円 【ページ数】240P

人生があなたに課した最も偉大な役割は、革命家になることだ。
同書 P240から引用

読んでいる間、仕事上のアイデアや、新しい企画がどんどん沸いてくる1冊がある。今回紹介する『神のごとく創造し、奴隷のごとく働け!』は、そんな風に仕事に対する意欲をかき立ててくれる1冊だ。

明快なロジック。斬新なメタファー。そして読者の興奮を誘う強烈なアジテーション。ここまでポップに読者を徹底的にポジティブにさせてくれるビジネス書と出会うことはなかなかないはずだ。

筆者のカワサキ氏は、米アップルにてマッキントッシュの立ち上げに参画し同社チーフ・エバンジェリストを務める方だ。伝説とも言えるマックの歴史を作り上げたのは、こういった人達が「クリエイティブ」かつ「ハード」に働いていたのだろうな、と想像しながら読むのも面白い。また訳者である小田嶋氏のテンションの高い翻訳も本書のスピード感を加速させている。

「神のごとく創造せよ」「王のごとく命令せよ」「奴隷のごとく働け」と3つの部分から成り立つ本書。それぞれのパートには、仕事への革命を実現するための「エクササイズ」が随所にちりばめられている。読者の思い込みを揺るがし、新しい発想を導き出してくれるエクササイズを是非実行して欲しい。

同書を一読し、冒頭に掲げられたアップルコンピュータの広告に再度目を通す時、貴方の仕事に対する意欲はきっとより高まっているに違いない。仕事を通し、何かを成し遂げようとしている貴方に、是非「ビジネス」における

「革命家」となっていただきたいのだ。

<能力主義の心理学>

【著者】岡本 浩一 【出版社】講談社 【発刊年月】1999年1月20日
【本体価格】640円 【ページ数】P180 ISBN4-06-149435-X C0211
【ISBN】4-489-00431-1

サッカーの能力はサッカーフィールドで鍛えられ、将棋の棋力は将棋版で鍛えられるように、職場での能力は、結局、職場でいちばんよく鍛えられるものであるというのが事柄の本質であると思います。
同書 P29から引用

グローバルスタンダードや、実力主義という言葉の風が私達ビジネスマンの周りを吹き荒れるようになって随分経つ。しかし、こういった言葉が実際にどのような影響を与えるのかを、皮膚感覚で捕らえることは難しいことだと思う。変化しつつある状況に対し、どういったことをしていけば良いのか、また何を変えていかなければならないのか、そんな風に戸惑ってしまう人も多いのではないだろうか。

さて、今週紹介する『 <能力主義の心理学>』は、能力主義時代において私達ビジネスマンが「どのように」仕事に向き合っていくべきなのかを考察した一冊である。「能力とはなんだろうか」という設問からはじまり人事評価、セルフチェック方法、リーダーシップ、人間関係、と様々なテーマを横断し、最期に「自己実現を問い直す」という項目立てで構成された本書は、仕事に対する心構えを明快に語ってくれている。

新書という形式を活かし、能力主義に対する心構えをコンパトにまとめた同書は、日々仕事をする上でのキャリアアップのヒントだけでなく、今後の貴方のキャリアプランを考える際のヒントを与えてくれることだろう。「能力主義」という潮流に流されるのではなく、みずからの可能性と、能力の再発見をしたいと考える人に是非手にとっていただきたい1冊だ。

エネルギーを奪う仕事、もらえる仕事

【著者】藤原 和博 【出版社】新潮社 【発刊年月】1998年 7月18日
【本体価格】1400円 【ページ数】233P

「日本のビジネスマンはこれから 10年のうちに、“自分のテーマを追うシゴトをしているもの”と“他人が設定したテーマの実現を手伝うシゴトをしているもの”の二つの部族にわかれるだろう。前者を“やりたいシゴトをする人”、後者を“やるべき仕事をする人”と呼ぶならば、“たい族”と”“べき族”の分化が一大現象になる。」

「顔」が見えないといわれるビジネスマンの中にも 「スーパーな」突出した人材がたくさんいる。それは、会社の人であったり、取引先の人であったりするが、書籍の分野や、マスコミの分野でもそういったスーパーな人材との出会いがある。その人材は、急激な成長を続けるベンチャー企業代表だったり、有名コンサルタントだったりする。しかし、今回紹介する書籍の筆者は、リクルートとフェローという雇用契約を結んだ、どちらかといえば、「普通」のビジネスマンの藤原氏だ。

といっても藤原氏は、「普通の」という言葉から大きく逸脱する。リクルートに入社後、東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任し、「じゃマール」の創刊を手がけた方だ。しかし、私が「逸脱している」といったのは、その輝かしい経歴よりも、「一個人としての哲学」を持っている点にある。

「哲学」 というのは、仕事への哲学というよりも、どのように生きるべきかという命題をつきつめ、そしてその答えを実践する哲学だ。この『エネルギーを奪う仕事、もらえる仕事』は、その哲学と知恵に溢れた一冊だ。

冒頭の引用には、以下の言葉が続く。

「人は、自分の持つテーマの上にしっかりと二本の足で立っていると、そのシゴトからエネルギーをもらうことが出来る。何故か疲れない。ポジティブな思考が自然に生まれ、“自己実現”というわかりにくい現象も日常的に感覚できるようになる。」

「自分のテーマを追う」 これはなかなか出来ないことではある。しかし、それは「やってみよう」としていないだけなのではないだろうか?藤原氏のようなスーパーなビジネスマンの言葉に触れ、私はそう思った。これからをどのように生きていくのかを考える時、是非とも手にとって頂きたい柔らかな読後感を持つ一冊だ。

ヒューマンリソース戦略

【【著者】佐藤 修 【出版社】ダイヤモンド社 【発刊年月】1999年6月17日
【本体価格】1600円 【ページ数】205P

「必要な人材(質)を必要な数(量)採用し、育成して機会を与える。成功すればその度合いに応じて報い、個々人の成長とその成果とともに、企業も発展する。言い換えれば、個々人の成長の機会が与えられていない企業は、発展の余地もないだろう。」
同書 P48から引用

よく考えてみれば、会社における人事という機構は、解っているようで解らないところが多い。多くのビジネスマンにとって、人事とは採用をする人や、教育担当の個々人を指しているのではないだろうか。総体としての人事という機能は案外見えにくいのではないだろうか。

さて、今週取り上げる1冊は、「人事の価値が、はじめて明らかになった!」という腰巻きが印象的な1冊だ。この「はじめて」という言葉が人事という仕事の解りにくさを象徴していると思うのだが、その言葉の通り人事が経営に与える影響を明確に解き明かしてくれる。

トイザらスのケーススタディーを題材にし、経営ビジョン設定から内的外的環境の分析、戦略課題の摘出といった軌跡を、人事という立場から、描いている当書。通読し終えた時、企業のビジョン設定と個人のキャリアプラン設定は非常によく似ているのではないかと感じた。

同書の扉に引用された「1年楽しみたければ、麦を育てなさい。10年楽しみたければ、木を育てなさい。 100年楽しみたければ、人を育てなさい。」という『菅子』の言葉は、自分のキャリアプランにとって重要な職場をどのように育てて行くか、あるいは探し出すのか、という点で私達ビジネスマンにも同じことが言えるだろう。

サラリーマン・サバイバル

【著者】大前研一 【出版社】小学館 【発刊年月】 1999年1月1日
【【本体価格】1500円 【ページ数】269P

知的に怠惰な人には、本当に欲しいという情報はない。頭で考えてそれでいいやと満足し、そこで思考がストップしてしまうからだ。ところが、知的に怠惰ではない人、つまり攻撃型の頭の使い方をする人は、そこから自分で実際に調べ始める。その結果、大半の人が考えていることと違う結論がでてくるわけだ。
同書 P15から引用

『サバイバル』 という「さいとうたかを」のマンガが一時期私の周りで人気になった。原因不明の大地震により、たった一人東京の廃虚にのこされた主人公が、食事も、家も、全くない状況の中で、どのように生き延びていくのか、というストーリーの漫画だ。「教えられた知識」ではなく、試行錯誤をくり返しながら身につけた知識こそが、「生き延びる」ためには必要なのだというメッセージが印象的なマンガだった。

今回取り上げる『サラリーマン・サバイバル』という1冊は、まず「サラリーマン」と「サバイバル」という言葉の組み合わせが印象に残る。一昔前は「サラリーマン」といえば安泰の代名詞ですらあった。しかし、いまでは 安泰だと思われていた中でのリストラ、急激に進行する情報化、そして長 引く不況と、私達サラリーマンをめぐる状況は大きく変化している。

ではそんな状況の中、私達「サラリーマン」は、どのように生きぬいて行けばよいのだろうか。今回とりあげた「サラリーマン・サバイバル」の著者は、世界的に有名なコンサルティングファームのマッキンゼーの日本支社長を勤めたことでも有名な大前研一氏。同書における氏のメッセージは明快だ。「知的ホワイトカラーを目指せ(第1章)」「知的怠惰な人は、リストラの餌食になる(第2章)」これからのサラリーマンに必要なのは知的にサバイバルしていくことなのだ。だから、題名からは想像も出来ない程、冷静に私達がこれからどう働くべきか、そのために必要となる能力とは何かを示してくれる。

『サバイバル』の主人公が、回をおうごとに生き抜く術を身につけ逞しくなっていったように、昨今の状況だからこそ、私達も逞しくなれるのではないだろうか。知的に、そしてタフにこの時代を生き抜こうとする人に必ずや力を与えてくれるであろう一冊だ。

私がマイクロソフトで学んだこと

【著者】ジュリー・ビッグ 【訳】三浦明美 【出版社】アスキー出版局
【発刊年月】1997年10月11日 【本体価格】1600円 【ページ数】P231

たとえ昇進のチャンスを棒に振ったり、友達が同じ仕事で自分より給料が高かったり、希望した転属がかなえられなかったりしても、落ち込んではいけません。50年も働き続けるのです。いつもベストを尽くしていれば、そのうち帳尻は合うはずです。
同書 P209から引用

不景気でも毎日、新しいビジネス書が発行されている。新しい書籍を出来るだけ手に取るようにしているのだが、「これ」という一冊というのは、なかなかないものだ。多くのビジネス書は、一時的に流行るパラダイムの紹介だったり、その解説書だったりする。あるいは、同僚との食事時間でより有益な情報を得ることができるようなノウハウ本か。

しかし、そんななかでも時々、キラリと光る内容や、切り口、語り口のビジネス書に出会うことがある。そんな本は、発行年月日によらず、時々手にとって見たくなるものだ。今回紹介する書籍もそんな 1冊だ。

題名にもある通り、筆者のジュリ・ビッグさんはマイクロソフトでマネージャ、グループマネージャを歴任した方である。あのword、officeのプロダクト・マネージャをしていたというのだから、相当なキャリアを持った人なのだろう。しかし、この当書。題名からも伝わるように、語り口は、ふとしたきっかけに上司が部下に仕事のコツを教えるような優しさに溢れている。

エッセイのように読み進められる当書だが、この一冊を読み終えた時、きっと仕事やキャリアに関する知恵を身につけることができていることだろう。

「こんな上司や、同僚がいたらいいな」という読後感を得られるビジネス書は必ず役にたつ書籍であるというのが私の持論だ。その点からも、この書籍は、お勧めの一冊である。

女性が書いた書籍であるが、男女を問わず、仕事を前向きに考えている全ての人に手にとっていただきたい書籍だ。マイクロソフトというとコンピューター業界のことが書かれているように思えてしまうが、そんなことはない。優れた組織で働く、優れた人から学ぶことはとにかく多いものなのだ。

日本企業においても、こういった優秀なビジネスマンが執筆する等身大のビジネス書が多く出版されると嬉しいのだが。。。

オトナの会社コドモの会社

【著者】高橋 俊介 【出版社】ダイヤモンド社
【発刊年月】 1997年7月17日 【本体価格】1500円 【ページ数】255P

キャリアデザインの基本はライフデザインにある。「オトナの社員」としてのキャリアづくりは、ライフスタイルの変革から始まる。変革のきっかけは、自分でつかんでいくしかない。
同書 P245から引用

ビジネス環境が激変している昨今では、企業の戦略もさることながら、その戦略の実施能力が重要となってきている。ビジネスの成功や、プロジェクトの成功は、プラン自体もさることながら、それを推進する人にかかっていると言える。やはり「企業は人なり」、人材あっての企業なのだ。景気に関わらず、優秀な人材はどんな企業であれ求めている。

さて今回紹介する『オトナの会社コドモの会社』では、筆者である高橋氏が「オトナの社員」と認めるビジネスマン 5人のプロフィールをケーススタディーとして詳細に紹介している。インタビューから垣間見られる彼らの実績は、自主性の高さなどで、驚くものばかり。このような形で、優秀な人材をベンチマークし学ぶべきことは少なくないはずだ。彼らの声に触れることは必ず貴方の刺激になることだろう。仕事のみならず、自分の力でみずからの人生を切り開いている人達ばかりだからだ。

筆者である高橋氏は、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、人材マネジメント分野のコンサルティングカンパニー、ワトソン・ワイアットの代表取締役社長を勤めたこともある方。企業の人事担当者向けに書かれた本書だが、人事担当のみならず多くのビジネスマン、ビジネスウーマンの方にも手にとっていただきたい。

今の私の会社はオトナの会社だろうか?コドモの会社だろうか?今の私はオトナの社員だろうか?コドモの社員だろうか?

そんなことを考え、是非ともこれからのキャリアプランニングの参考にしていただきたい。オトナの方も、コドモの方にも「キャリアプラン」そして「ライフプラン」に対する考え方が大きく変わる一冊です。