もしもウサギにコーチがいたら

【著者】伊藤守【発行】大和書房
【発行年月】2002年5月10日【本体価格】1,200円
【ページ数】213p【ISBN】4-479-76121-7

反省なんてさせない。ウサギには、次に何をやるかを聞く。アドバイスはしない。ウサギは自分で考え、自分で行動して欲しい。「知らない」ことを知らない。ウサギは何が問題かがわからない。
本書 腰帯 より抜粋

イソップ物語の「ウサギとカメ」の話を思い出して欲しい。ウサギは俊足という素晴らしい才能を持ちながらも、最終的にはカメとの競走に負けてしまう。ウサギの慢心が勝負の分かれ目になったと。

そう、我々はこの寓話から「油断大敵」を教訓として受け取っている。誰もが記憶している物語だ。カメは努力家で、ウサギは才能に埋もれて努力しないから…。しかし、ウサギの人生はそこで終わってはいない。まだ始まったばかりなのだ、と著者は言う。

あれ以来、カメと再び競走していないじゃないかと。本書は、そのウサギに貼られた悲しいレッテルに立ち向かう。今度はウサギにコーチをつけて。

なるほど、この話は、会社における上司と部下との関係に適用できる。上司をコーチ、優秀な部下をウサギと位置付け、ウサギはどんな性質をもっているか、コーチはウサギをいかに理解していくか、に迫っていくことで、よりよいコーチングができるといのが本書の狙いだと考える。

例えば、ウサギの耳は長いが、話の全てを聞いているわけではないという。聞きたいことを、聞きたいようにしか聞かない。音に反応しているように見えるが、実は最初から聞きたい音があるという。興味の範囲でスクリーニング(選別)し、自分の都合で聞いているわけだ。何ともわがままな…。

ウサギは耳で聞いているのではなく。脳で聞いている。だから聞いていても理解できない。それは「リセプター(知識の蓄積)」がない証拠なのだという。それがわかった時点で、リセプターのある領域の話をするか、意図的に創っていくことが賢明なのだと主張する。

さらに「最近、どう?」という質問をされると、ウサギは「イエス」か「ノー」でしか答えられない。質問自体に創造性がないからだ。「仕事を楽しむために、具体的にどんなことをしている?」これだとウサギは喜ぶし答えは無限だ。自由に連想させることが重要なのだと言う。

せっかく良い才能をもっている部下を、トップダウンの命令形式で仕事をさせていたら、才能を眠らせたままにしてしまう。それは部下にとって、上司にとって、何より会社にとって不幸であることは間違いない。多様な価値観をもつ若手社員と上手に付き合っていくためにコーチングの知識は必須だ。

本書は、このようなコーチングの手法を「視点を変える53の方法」として段階を踏みながら網羅している。部下とうまく付き合えない人にはかなりオススメの一冊、面白い!