慮(おもんばか)る力
【著者】岡本呻也【出版社】ダイヤモンド社
【出版社】フォレスト出版
【発刊年月】2001年10月18日【本体価格】1,800円
【ページ数】494p【ISBN】4-478-71046-5
○葬儀で涙は流さない、機械になったつもりで遺族のために仕事をする
○答えはお客さんのことを考えながら自分で運転してみて発見できる
○オペレーターは困っているお客様の気持ちになれなければならない
本書 各扉 より抜粋
本書は「良い仕事というのは一体どのようなものなのか」という原点に立ち返って各業界の達人たちに話を聞き、彼らがいかにお客さんや相手をこまやかに気遣っているかを、インタビューの手法を使って導き出したものだ。さて、今なぜ「慮る力」に注目する必要があったのだろうか。
著者は、デフレの原因である「仕事に付加価値が付けられない理由」は「本当に相手のことを考えて仕事をする態度」が、心の中から抜け落ちてしまっているからではないか?と説く。そんな自己中心的な振る舞いは、個人だけではなく、リストラなどの企業の生き残り策にも現れているのだと言う。
この厳しい経済状況の中を生き残っていくためには、消費者ニーズを満たす新しい付加価値を付け加えていくこと=「相手のことをよく考えて、相手のためになる仕事をする」こと=慮る力を発揮すること、が不可欠である、という視点で、プロの仕事上の心構えにアプローチしていく。
相手が何を望んでいるのか、それをどのように察知すればよいのか、達人たちはどのような「慮る力」を発揮しているのか、その力をどのように仕事に活かしているのか、丁寧なインタビューによって、著者は詳細に聞き出している。そのプロフェッショナルの「言葉」がとても魅力的だ。
本書に登場するプロフェッショナル達は、自身の仕事の目的や役割をきちんと押さえ、厳しい訓練と長い経験を積んで、その「慮る力」を磨きこんでいる。その努力のモチベーションとなっているのが「なぜ自分はこの仕事をするのか?」という動機と原体験にある。
高級ホテルに働く人、パソコンのカスタマーサポート、カーナビの開発担当者、再就職支援会社のコーディネーター、医師、葬儀社のスタッフなど…幅広い「慮る力」の達人たちの発言は、実に示唆に富んでいる。当たり前だけれども、見落としていた「気づき」に溢れていると言って良いだろう。
それ以上に羨ましいのが、インタビューに答えている達人たちの「自信」と「幸せ具合」である。仕事に対する誇りと、そのオモシロさを、実に幸福そうに語っているのだ。同じ仕事をしているビジネスパーソンとして、これほど「ジェラシー」を感じることはないかもしれない。
前書きには「自分の意識を知ることが、すなわち客の望みを知ることに直結しているはずだからです。相手を慮るということは、自らを省みることに他ならないのです」とある。望まれることをする、相手に喜んでいただける、自分も幸せ。仕事はそれに尽きるのでは…そんな思いにさせる一冊である。
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