ザ・ブランド
【著者】ナンシー・ケーン【訳者】樫村志保【出版社】翔泳社
【発刊年月】2001年11月13日【本体価格】2,500円
【ページ数】510p【ISBN】4-7981-0145-1
(前略)そして数日に一度は、たとえ客の顔ぶれが同じでも、これらの品を全部入れ替えてディスプレイを一新する。そうすればご婦人方は友達を連れて来店するようになるだろう。ビジネスと娯楽が手を取り合ったときの効果について、君に多くを話す必要はないと思う。
本書 50p「ウエッジウッドがベントリーにあてた手紙」 より抜粋
2002年もブランドの年だろう。100円均一ショップが隆盛を極め、価格破壊とも思える流通業者が幅を利かせていたじゃないか、という声が聞こえてきそうだが…。東京・銀座や大阪・心斎橋の高級ブランドショップで、入場制限をしている様を見ていると、そう思わずにはいられない。
消費者というものは「保守的」である。なかなか買い物をしたがらない。自身の購買行動を振り返ってみればわかるだろう。事前に情報を入手する、実際に手にとって比較する、さまざまな意見を人に求める…。それほどまでに悩んでも、購入する際には「ブランド」が大きな要因を占める。
商品購入時にいくつかの選択肢があって、最終的には「ブランド」によって決めた経験を読者の皆さんもお持ちだろう。そう、ブランドには、一般的に言われがちなステータス性はもとより、品質やサービスに対する「裏打ち」という要素が、想像以上に大きいのだ。
本書は、「スターバックス」「デルコンピュータ」「ウェッジウッド」「ハインツ」「エスティ・ローダー」「マーシャル・フィールズ」など、世界に名だたるブランドの、世紀を超えたブランド戦略について、実に丁寧に言及したものである。大冊なので読むのに骨が折れるが、なかなか面白い。
本書ではまずブランドのことを「起業家が、自らの自信と誇り、商品・サービスの優位性を消費者に知らしめるべく活用したマーケティングツール」であると定義付けている。そして、そのツール(=ブランド)をどのように育て、活用してきたかを、時間軸に沿って紹介している。
例えば、英国陶器の代表的なブラント「ウェッジウッド」の項では、1700年代後半には、経営者たちはすでに「製造と同じくらいマーケティングが重要」であるということを認識し、手紙にしたためている。当時の戦略は、ロシア王朝を始めとした上流社会に認められることだと考えていたそうだ。
そう、マーケティングなどという言葉がない、そんなことを考える人はいなかった時代にもかかわらず、食器をセットして用意(=ブランドの構築)、顧客ロイヤリティを向上させる。上流階級が好むものは、中流階級もこぞって求めるはず。そしてこの中流階級こそがボリュームゾーンであると認識、販売戦略を展開していった。よく見れば、今と全く同じじゃないか!
ここで紹介されている6つの有名ブランドは、異なる業界、そして時代背景を持っている。本書は、新市場を創出した、これらのブランドの「起業家」たちのビジネス史になっていると言ってもよいだろう。マーケティングなどには縁がない、という読者にでも、興味深く読むことが出来るだろう。
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