仕事は早くて雑でいい

【監修】神谷健司/小松俊明/町田秀樹
【出版社】アスペクト【発刊年月】2002年07月09日
【本体価格】1,400円【ページ数】203p【ISBN】4-7572-0926-6

しかし、企業の現場の本音は違う。最初にリストラするのは「やる気も能力も高い人」だ。(中略)「やる気も能力も高い」人がなぜ最初にリストラされるのか。それは、上司が使いこなせないからである。
本文 64p より 抜粋

タイトルが素晴らしい。仕事はきちんと丁寧にするのが当たり前のはずなのに、それを雑で良いなんて!キャッチーな題名で引きつける本書は、組織戦略・人事戦略・ヘッドハンティングのプロが、会社が手放さない人材になる秘訣を明かしている。

まず、成長著しいベンチャー企業の現場で採用・育成に携わる神谷氏が、組織を活性化し続けるために、必要な人材と、その育成方法を開陳する。言われた仕事は期日に関係なく「今すぐ」やれと。そのためには、雑でも良い。雑で直しが入っても、そこで上司とのコミュニケーションが生まれる、それが良いんだと。なるほど!の着眼点である。

さらに、価値を持つ人材で居続けるためには、仕事の価値観を整理するとともに、つねに自身の業務改善を行うべきだと指摘する。業務改善のポイントは「早く・安く・正しく・楽しく」の4つ。自身が求められる役割を、4つの視点から改善し続けることができる、その人が求められる人材なのだと。

次に、外資系企業の幹部社員のヘッドハンティングに携わる小松氏が、ヘッドハンターの視点から、市場が求める人材像と、転職市場に関するさまざまな知っておきたいことを、具体例を交えてわかりやすく紹介している。

リストラされやすい部門、リストラされるだろうサイン、転職の適齢期は入社何年なのか…など、興味深いトピックスが満載なのだ。例えば、リストラサインとして、会社のサイトから、自身の部署の商品がなくなったとき、自分たちはリストラ候補に上がっていることは間違いないという。冗談のような話だが、実際にあったケースなのだという。

最後に、企業の組織戦略と人事戦略づくりに携わる町田氏が、企業がリストラを進める背景と、具体的なリストラの進め方を、企業の立場から紹介している。リストラに関しては、社会現象としてのネガティブな側面からのニュースしか流れていなかったので、この情報はとてもありがたい。

過去の成功体験はもう必要とされていない現状、企業は組織改革を進める中で、人材フローマネジメント(=組織の新陳代謝を促す仕組み)を重要視し始めていること、企業がリストラ対象者を抽出する方法など、あー、そういうことなのかぁと、読みすすめながら、思わず口から漏れそうな内容だ。

読後一番の感想は「やられたなぁ…」正直な気持ちである。今までの関連本にはなかった切り口(言えなかったというのが正直なところだと思うが)や知りたかった企業の本音(やや偏っている印象もあるが)が、本書には盛りだくさんなのである。ぜひとも読むべき一冊だろう。