実学入門 なぜ売れないのか 営業力は「仮説力」で決まる

【著者】稲垣佳伸 【発行】日本経済新聞社
【発行年月】2003年02月20日 【本体価格】1,600円
【ページ数】204p 【ISBN】4-532-31030-X

次のようなら要注意!
POSデータで売れ行きを判断している。
営業報告は営業マンの意見が中心。
会議の意見の大半が否定的なもの。
消費者や取引先の言葉をうのみにしている
本書 腰帯 より抜粋

POSデータシステムは非常に便利である。オフィスにいながら、いつ、どこで、何が、いくつ売れたかが手に取るようにわかるのだ。しかし、それには大きな落とし穴があるという。明日の売れ筋がわからないのだ。わかるのは、今日、あるいは昨日までに、いくつ売れたかということだけ。

そう、売れた結果のみしかわからない…。だからこそ、大切なのは現場感覚なのだという。数字に頼り過ぎると実体が見えなくなるのだと。

あるドラッグストア・チェーンでの話。担当者がベビーフード関連の売り場分析をしたところ、特定の二人の購入額が毎月ダントツに高かった。さまざまな角度から分析しても理解できず、仕方なく店頭のパートの女性に聞いてみると、答えは簡単だった。双児がいる家庭だったのだという。納得…。

そこで本書は、今注目されている「定性情報」の重要性を後押しする。データに頼る「定量情報」とは、販売数量や仕入金額、市場シェアなどを表し、「定性情報」とは、意見やクレームといった言葉や文字、画像など数値化できないものだ。マーケッターには馴染みの言葉であろう。

意思決定や判断をするための情報が定量情報で、観察や機会発見をするための情報が定性情報ということか。営業マンは現場での観察力を磨き、仮説を立てることで新しい市場機会を発見していくのだと著者は主張する。「モノを売ること」ではなく「モノが売れる機会を見つけてくること」なのだと。

本書を読み進めていくと、会社として成績を残すための仕事ぶりがよくわかるだろう。現場から「(情報ではなく)事実」を持ち帰り社内で共有する。そのための営業日報の効果的な使用方法などから、「事実+仮説=意見」の公式を用いて、マーケティングの極意を伝授する。

他にも、インターネットを介したダイレクト・マーケティングの意外な活用方法を紹介している。今まで無駄に使用していたインターネットの将来性、メーカーにとって、流通にとってホントの顧客とじっくり話すことの重要性なども盛り込んでいる。

顧客の声の大切さや仮説力の重要性は、あちこちの本で紹介されているが、その本質を伝えることが本書の狙いだ。24年間にわたって、数万本の定性情報を活用したプロジェクトから得た著者の経験を、店頭開発のマーケッターである営業マンたちに向けて発信している、そんな一冊なのだ。