エクスペリエンス・エコノミー 経験経済

【著者】B・J・パイソンII+J・H・ギルモア
【出版社】流通科学大学出版
【発刊年月】2000年02月26日 【本体価格】1,770円 【ページ数】 317P
【ISBN】4-947746-02-5

本書の著者パイソンとギルモアは、サービス経済を中心とする経済システムの行き詰まりを打開し、新たな成長と雇用の拡大を実現するキーになるのは「経験」という価値の提供(オファー)にあると主張します。単なる商品「機能」の提供ではなく、また、「利便」的サービスの提供でもない、さらに上位の価値として商品サービスに「経験」という価値を組み込むことで、サービス経済社会を超えた次の経済的発展段階へ移行することができる、というのが著者たちの主張です。
本文「訳註に代えて」より

本書は二つの重要なキーワードを述べている。商品サービスが「コモディティ化(=差別化がなされていないもの)」しないためには、「経験」の価値を体現化した商品サービスを提供すること。そして「経験」を商品サービスに付加するためには、顧客を観客にみたてた「演劇」というモデル化で実現しようとしていること。この二つは、それほど新しい考えとはいえないが、この本は類書にない丁寧な解説で、具体的にどう考えれば良いかを、明確に示している。

まず、ここでいう経験とは「過去の体験」という意味ではなく、「その場で、心や身体が受ける、精神的、肉体的な感動」のことを指している。例えば、今人気のスターバックスコーヒーは「コーヒー・エクスペリエンス」という言葉で、自社の提供する価値を表現している。商品やインテリア、サービスなどではない。スターバックスでコーヒーを飲む行為そのものに、対価を支払わせる。このように、五感を包み込むような商品サービスを、今後は提供しなくてはならないと、本書は説く。

また、「エクスペリエンス」を最も商品サービス化した典型として、ディズニーランドを引き合いに出している。ここでは、消費者を「ゲスト」と呼び、従業員を「キャスト」としている。乗り物に乗ると言うサービスを提供するのではなく、キャストが作り出す、五感に訴えるステージングから、ゲストは、固有の経験を与えられるのだ。そのためには、仕事にかかわる全ての人たちは、役者であり、その与えられた役を、演じることが必要なのだとしている。働く側からみれば、仕事とは、与えられた役回りなのである。だれもが、あるシーンの役者なのだ。

内容ぎっしりの本書の全てを、この欄で伝えることは難しい。この本の面白さを読んで「経験」して欲しい。さあ、書店へ急げ!