研究力

【監修】有馬朗人【出版社】東京書籍
【発刊年月】2001年05月25日【本体価格】1,800円【ページ数】318p
【ISBN】4-489-00609-8

独創的なアイデアは個人から出るのであって、会議からは出ません。日本の研究の多くはプロジェクトチームを組んで、会議、会議で進めていきます。そういう進め方をしたら、ろくなことはありません。
本書 31p より抜粋

本書では、科学や工学の分野の最先端で活躍する10人の研究者が、第一線の研究者になるために必要な「研究力」について語っている。それぞれの研究者が、ブレークスルーを生み出す力とは何か、紹介しているわけだが、一般的なビジネスパーソンにとって、かなり刺激的な内容になっている。

本書の内容だが…正直難しい。正確には、ブックレビュアーの私が、自分の知識として持ち得ない分野の話ばかりであったので、きちんと理解できなかった、だけであるが…。しかし、それを差し引いても本書はとても面白い。そこには、研究者たちの「思考」が見え隠れしているからだ。

研究者の思考は、まず研究ありきである。その全くのストレートさに驚いてしまう。研究のためなら、企業に勤めていたとしても、配置された場所にも行きたくないと言うし、あるテーマを追いなさいという命令書だって無視してしまう。結果を出せば大丈夫、という信念が、なんともユーモラスだ。

そして、研究のためなら教わることを厭わないところが素敵なところだ。本書に登場する研究者たちは一様に、一流の先生に師事することや、有望な人材と積極的に交流することを勧めている。また、自らの専門分野でないところで、不明なことが生じた場合、菓子折り一つでその分野の一流どころを訪ね、しっかり教えを受けている。その素直さがうらやましく感じられる。

さらに、研究費を獲得するためのプロポーザルのテクニックや、研究者がベンチャー企業を起こすということ、また、世界のライバルたちと伍すための自分なりの方法論が、カンタンではあるが開陳されている。やっていることは違えども、研究者もまた、ビジネスパーソンと同じだなぁと、読んでいて頷くことも多い。

監修者である有馬朗人氏(元文部大臣でご存知の方も多いはず)は、研究者にとっての真の研究力とはなにか、研究生活から得た教訓として、次のようにまとめている。

まず、若いときに非常に優れた独創的な人に会って、その人がどのように振舞うかみることが大切だとしている。そして、ある時期からは、完全に1人になれ、と説く。さらに、どんな攻撃を受けようとも、自分が正しいと思ったらめげないこととしている。なんだ、自分たちと一緒じゃないか、そう思われた方は多いだろう。

ピンと来たあなたには、本書はお勧めである。研究者の「思考」を垣間見てみよう。一押し本です。