ハイテクハイタッチ
【著者】ジョン・ネズビッツ
【訳者】久保恵美子【出版社】ダイアモンド社
【発刊年月】2001年06月07日【本体価格】1,800円
【ページ数】305p【ISBN】4-478-19040-2
ささやかな変化を感じ取るこうした能力は、時計、誰かとの約束、仕事の締め切り、お気に入りの夜7時のテレビ番組などが生活に入り込んだ現代では、すっかり衰えてしまった。
本書 50p より抜粋
あとがきによると、本書の著者の1人であるジョン・ネズビッツは、世界的な視野に立った社会現象分析の書を数多く著している未来予測学者であるとのこと。ベストセラー「メガ・トレンド」で名前を知っている、という方も多いだろう。本書は、テクノロジーに支配されている社会の中で「人間らしさって何」という問題を投げかけている。コレがなかなかに面白い。
面白いコラムの例を1つあげれば、テクノロジーが進化することによって、便利になるどころか「ストレス」が発生してしまう。そこでストレスから逃れるために「ハイテク」から逃れるわけだが、結果的に、テクノロジーの存在しない「シンプルライフ」は、とても複雑なものである、ことを紹介している。求めたシンプルは複雑だった…どういうことだろう。
ビル・ゲイツの自宅のように、すべてがコンピューターで制御された暮らしは、ボタン1つで快適な生活環境が手に入れられる。しかし、ガスも電気も水道もないシンプル・ライフでは、通常レベルの生活環境を手に入れるだけで、薪を割り、火を起こし、水を汲む、と様々な「タスク」を要求し、実現するための「スキル」を求められる。よっぽど複雑ではないか!
しかし現実的には、テクノロジーに囲まれて快適な暮らしをしている人は、その暮らしから逃れるために「旅」に出て不便を享受する。一方で、普段から不便な暮らしをしている人は、旅に出たいとも思っていない。2つの暮らしの間に横たわるキーワードは「人間らしさ」と言うことになるのだろう。テクノロジーは、人間らしさを満足させるまでには進化していないのだと。
本書では、ハイテク社会がもたらす「息苦しさ」を解消するためには、人間らしさという視座視点を忘れてはならないということを、アメリカでの様々な実例とともに教えてくれている。これからのビジネスパーソンが備えておくべき見識の1つだろうと考える。
本書は2部構成になっていて、第2部では「宗教」「芸術」をキーワードにして、遺伝子テクノロジーを詳しく検証している。遺伝子操作による生命のコントロールを止めるには、人の倫理観しかない。欧米では宗教がその拠りどころになるが、宗教観の希薄な日本ではどうなんだろうと、いろいろ考えさせられる内容になっている。読み応えある「お買い得」な本。お勧め。
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