実学入門・なにが小売業をダメにした

【著者】石原靖曠【出版社】日本経済新聞社
【発刊年月】2001年04月05日【本体価格】1,600円
【ページ数】239p【ISBN】4-532-14905-

日本のチェーンストアは、(中略)みなが同じ教科書を持って、同じビジネスモデルを追及してきたことで、企業間の差異がほとんどないという店の同質化が進みました。
本書 8p より抜粋

日本の小売業が未曾有図の事態を迎えていることを認識していないビジネスパーソンはいないだろう。なぜ、ここまで日本の小売業がダメになってしまったのか。本書では、小売業の不振の原因を徹底解明。その原因を「顧客満足をはき違えたこと」として、復活のヒントを提示している。

本書で筆者は、日本の小売業における危機的状況を作った要因の多くは「貧しい大衆のために、とにかく安い商品を提供したい」という想いが強すぎ、「安さのためには、自分たちのやり方に従ってもらう」という、本末転倒の発想に陥ってしまった結果だとしている。心当たりがないわけでもない。

大型スーパーなどは、ここのところ人員を大幅に削減してきていた。その結果、売り場に店員の影が無くなってしまっていた。説明がほしい商品を購入しようと思っても、店員を探し出すのに四苦八苦である。これでは、お客の側が商品を理解しているという「前提」で買い物をしなくてはならない。

また、買い物カートを利用するために100円玉が必要(まあ、一定の場所に返却すればお金は戻ってくるんですが…)といった施策に至っては、お客に店のオペレーションを負担させているに他ならない。それでいて、それほどには値段を安くできないというジレンマに陥っている。中途半端なのだ。

本書では、流通小売業態の「まるで博覧会」のようなアメリカの豊富な事例を引いて、これら日本の小売業が抱える問題点を解決するための糸口を提示している。そして買い物の場を「夢を楽しむ」「近くて便利な」「ワンランクアップ」と3つのステージに見立て、そこに存在する「顧客利益」を考えることを提案している。なかなか興味深い。

少子高齢化時代を迎えて、価格志向は通用しなくなる、と言う論に対して、「じゃあユニクロは?」という声も聞かれる。ユニクロは確かに低価格路線ではあるが、それ以上に「カジュアル・ファッション」をトータルに提案することで、今まで「何を普段着たらよいかわからなかった」人たちを、顧客として掘り起こした。つまり、新しい顧客利益を生み出していたのだ。

腰帯にもあるが、この本は専門用語はできるだけ排除し、語り口調で書かれてある。この分野に精通していない人間にとって、これほど有難いことはないはずだ。流通業の不振構造(=顧客主義のはき違え)は、実は他の業界にも起きうるだろう。間違わないためのヒントが満載されている本書に、ザッと目を通しておくことをお勧めしたい。