業界用語辞典

【編者】米川明彦【出版社】東京堂出版
【発刊年月】2001年09月10日【本体価格】2,800円
【ページ数】393p【ISBN】4-490-10572-X

ごごいち[午後一]<広告>午後一番。◇言語92.2「午後一番の略。広告業界では二時頃を指すことが多い。ちなみに、今日中は、翌朝には、ということ。朝一は十時から十一時の間というのが定説」
本書 244p より抜粋

普段仕事をしている時に使っている何気ない言葉の中にも、実は自分の職場でしか、また、自分が仕事している業界内でしか通用しないモノがあるはずだ。社会に出て、その「符牒」らしきものを、さりげなく使いこなせた時、何となくその集団の一員になれた気がしなかっただろうか?そう、業界用語と言うのは、その集団に属している人のロイヤリティも向上させる。

今日紹介する本は、日本で初めての本格的な隠語・業界用語辞典である「集団語辞典」から、86業界で毎日使われている4800語を収めた画期的な辞典である。といっても、本欄で紹介するんだから、実用として使って欲しい、と言うわけではなく、読み物として紹介している。この辞典…とても面白いのだ。

例えば、百貨店業界(ホントはそんな業界はないけど…)には「トイレ」の別称があることは、よく知られていることだろう。しかし、「いちご摘む」「いの字」「遠方」「奥」「三三」「十番」「神閣」「仁久」「三軒屋(すけんや)」「スタジオ」「二の字」…ほか、14通り以上もあるなんて、知ってましたか?しかも、音を聴いても理解できない言葉ばかり…。

さらに、本書によると、「遠方」は三越の店員の間での隠語であり(今も使っているのかしら?三越の方、いらっしゃいましたらメールにてご教授ください!)、シンカクは松坂屋、サンサンは大丸、すけんやは東急や西武、二の字は松屋の、それぞれ隠語となっている。トイレ1つで、どうしてこれほどまでに違うのか、しかし東急と西武は同じなのかなど、興味は尽きない。

本書は感心するくらい、実に幅広い業界を網羅している。収録されている業界は、銀行・証券・保険などの金融関係をはじめとして、デパート・病院・航空、果ては、魚河岸・相撲・芸者、さらには、警察や官庁まで。一語一語に、小説や雑誌などから拾った使い方の用例があげてあるので、言葉の意味が確実に理解できる。言葉は生き物である、ということがわかる。

実は本書、読んですぐに役に立つと言う人は、ほとんどいないと思われる。業界用語を知ったからといって、半可通になっても仕方がないはずだ。しかし社会人たるもの、引き出しは多く持っていた方が良い。自分が関係する業界の「不思議な」言葉を覚えておいて、話のキッカケにするものお勧めだ。仕事とはコミュニケーションだ、ということがわかるはずだ。一読を!