世界がもし100人の村だったら

【再話】池田香代子【対訳】C.ダグラス・スミス
【出版社】マガジンハウス
【発刊年月】2001年12月11日【本体価格】838円
【ページ数】64p【ISBN】4-8387-1361-4

「 20人は栄養がじゅうぶんでなく1人は死にそうなほどですでも15人は太り過ぎです。
本書 本文 より抜粋

中学校に通う長女の担任は生徒たちに、毎日メールで学級通信を送ってくださるとてもすてきな先生です。そのなかに、とても感動したメールがあったのでみなさんにも送ります。少し長くてごめんなさい。-このなんとも言えない手触りのやさしい文章から始まるメールを、あなたも多分受け取ったことがあるだろう。あの-世界がもし100人の村だったら-が本になった。

世界に住む、63億の人たちを100人の村になぞらえたこのメール。そのうちの52人が男性で、48人が女性。30人がこどもで70人が大人。そのうちの7人がお年寄りであると続く。さらに、異性愛者と同性愛者、有色人種か否か、どの地域に住む人なのか、どんな宗教を信じている人たちがいるのか、どんな言葉を喋る人がいるのか…。世界をスケール化していく。

さらにメールはその村に住む人がどのような暮らしをしているのか、ということもスケール化していく。栄養状態、持てる富、使用するエネルギーの割合、きれいな水が飲めているのか、預金、車の所有、教育、コンピュータ、識字率…。100人という単位で、世界の人たちの暮らしぶりをみると、いかに格差があるか、ということがまざまざと浮かび上がってくる。

そして、メールは世界に住む人たちがおかれている状態に言及する。迫害されているか否か、死の恐怖に直面しているかどうか、この村では1年に1人が死に、2人が生まれている。自分たちが想像している以上に、世界の人には自由はなく、そして、安全に暮らせていないことも、このメールは教えてくれる。そして、今の自分の状態が素晴らしいということも同時にだ。

このメールは、インターネット上で流布することによって、様々な文章の改良や追加、削除が繰り返されて、そして、今もまるで「ボトル・メール」のように流され続けている。本書では、このメールの素性から、改編の経緯などが詳しく解説され興味深い。著者は、このメールを「インターネット・フォークロア」と呼び、グローバル時代の「民話」であるとしている。

ビジネス・パーソンである本誌読者は、本書をどのように捉えれば良いのだろうか。書評担当者である私はこう考える。「座標軸」だと。ある人は「コンピュータの普及率」を見て、市場の可能性を見出すだろう。また別の人は「英語よりも普及している言葉」として、中国語に着目するのも良いかもしれない。そう、自分の知らないスケールには、思わぬ発見がある。

そんな難いことは抜きにして、一年に一度くらいは仕事ではなく、例えば、世界の色々なことに思いを馳せてもよいのではないだろうか。本年度最後のブックレビューだからこそのチョイスである。すべての人にラブ&ピース…ている…様な気がする。まずは書店で手にとって見て欲しい。買いたくなるはずだから。