これが週刊こどもニュースだ
【著者】池上彰【出版社】集英社文庫
【発刊年月】2000年09月25日【本体価格】533円
【ページ数】278p【ISBN】4-08-747244-2
国にお金が足りなければ、もっとお札を印刷すればいいんじゃないですか?
──いい質問ですね。私たち大人は、そんなことをすればインフレになって しまうことを知っています。でも、その理屈をこどもたちにわかるように説 明できるでしょうか。
本文 20p より 抜粋
週刊こどもニュースをご存知だろうか?NHKで土曜日の夕方に放送されている「子供向け」のニュース番組なのだが、ご覧になったことある方も多いだろう。子供向けだといって侮ってはいけない。この番組、実は各方面で常に注目されている、とても興味深い番組なのだ。
この番組は、子供に向けてニュースを発信しているが、その中身は「子供向け」だというわけではない。政治、金融、世界情勢などの、込み入った(それは大人にもわかりにくい)話題を取り上げる。「普通のニュース」を、子供にも充分わかるように、知恵を出し、工夫をしている。
本書は、番組のキャスターが、ニュース選びのポイントから、子供たちに伝えることが出来るまでにニュースを噛み砕くノウハウを、楽しい裏話とともに公開した1冊だ。子供たちは持ち合わせている「語彙」と「常識」は大人が考えるよりもずっと少ない。だから苦労は並大抵でなく、ゆえに面白い。
引用部分でいうと、経済学の教科書や専門書を片っ端からチェックしても、「インフレにはコストプッシュ・インフレと、デマンドプル・インフレがある」と書いてあるだけで、なぜ国が勝手にお札をするとインフレになるのかという常識の説明が無いことに愕然とする。
さらには、カラ出張をしていた部下を持つ県知事が、番組の子供レポーターにそれを説明するが、「公金支出の不適切な処理」と言っても当然通じず、いろいろ説明した挙句に「要するに、ウソついちゃったんだよ」と思わず言ってしまったところなど、思わず笑ってしまった。
本書は2つの示唆を与えてくれている。1つは、人に何かを伝達するときには、その伝達すべき内容を完全に理解する必要があること。そして、もう1つは理解した内容を伝えるためには、あらゆる工夫を施す必要があるということだ。当たり前のことだが、おそらく実行できている人は少ないだろう。
仕事における指示やレクチャーに置き換えると、その作業の重要性がわかるだろう。こちらはなんとなくわかったことを、あいまいに伝達し、子供ほど素直ではない受け手は、疑問を呈することなく、いくつか情報が欠落した状態で仕事をすすめる…。これではいけない。
伝えるべき内容を自分のものにするための方法、そして、相手に伝達するためのテクニックが本書には満載である。部下に指示が上手く出来ない、上司に上手く報告が出来ない、そんなお悩みを持つ向きは、一度本書を紐解くことをお勧めしよう。なるほどと膝を打つこと請け合いである。
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