インターネット的

【著者】糸井重里【出版社】PHP研究所
【発刊年月】2001年07月27日
【本体価格】660円【ページ数】236p【ISBN】4-569-61614-3

「IT時代のビジネスモデル」を狙う前に、幸せ観、歴史観、世界観を宣言 しなかったら、ものをつくることも売ることもはじまらない。ネットを通じ て「個」と「個」がつながる時代だからこそ、「お客様は神様」原則を乗り 越えなければクリエイティブな市場は育たない。
見返しより抜粋

この本を紹介するかどうか、ギリギリまで迷った。出版直後にレビューしようと思ったが、あまりにも「素晴らしい」内容だったので、人に教えるのが惜しかったのだ。1年たって再び読み返してみて、この本がまったく古びていないことに驚き、本欄で紹介することにした。遅くなってすみません。

糸井重里は言わずと知れた広告業界のスーパースターである。コピーライターという仕事を世に知らしめた人物であり、釣りやモノポリー、ビデオゲームといった異分野にも才能を発揮していたことは、周知のことだろう。その人がインターネットに足場を移して、今も活躍している。

筆者はインターネットそのものよりも「インターネット的」なものに可能性を見出し、魅力を感じている。このインターネット的というのを説明するのはとても難しいのだが(なにしろ筆者はその説明のためにこの一冊を費やしているのだから)、そこには「パソコンさえなくてよい」らしい。

インターネット的について、筆者は「リンク・フラット・シェア」という、インターネット利用者にとっては、ごく当たり前の言葉を提示している。しかし、そのありふれた言葉も筆者の手にかかれば、ピカピカのキーワードとして、本質がむき出しになる。

例えばリンク。一見不要な情報からのつながりに可能性を見せること、それがリンクという考え方である、と筆者は言う。しかし、実はそれは、インターネットが存在する前からあることなんだと、看破する。

今までだって、自身が様々な情報を発信することで、その情報に共鳴し、人と人とが繋がることがあったじゃないかと。それがインターネット的なんだと。なるほど確かに「インターネット的」である。

本書を読み進めていくと、インターネット的という言葉には、インターネットを利用していない人と、既に利用している人とを「結ぶ」役割がある、そのことが良くわかるのだ。

「正直は最大の戦略である」「あの人たちの会社だから、いいよなぁ」という見方をされて好感をもたれることが、経営そのものの重要な要素になってくる時代が、本当にくるような気がする、と筆者は繰り返し述べている。そして、今事実、そんな時代が来ていることは、誰もが気づいているはずだ。

インターネットを利用してビジネスを、と考えているすべての人は、最新技術の話や、マーケティングセオリーが紹介された本を読む前に、まずこの一冊に目を通すべきだろう。ここには、さらに裾野が広がるだろうインターネットの、ごく近い未来が描かれているからだ。