デフレ生活革命

【著者】榊原英資【発行】中央公論新社
【発行年月】2003年06月25日【本体価格】1,400円
【ページ数】241p【ISBN】4-12-003413-5 C0033

大切なのは、私達の直面する問題が、構造的・制度的だと認識することによって、私達の行動様式や企業の戦略、政府の政策を変えていくことなのです

本書 P74 より抜粋

21世紀に入って、いよいよデフレ(継続的物価の下落)に歯止めが利かなくなってきた。多くの政治家やアナリストは、デフレを政策によって逆転することができるはずだ、と論じているが、本当に可能なことなのだろうか。

そもそも、国際的秩序、国や企業のあり方、個人生活のすべてが激変する可能性のある大改革を4、5年で完成できる訳がない。何か歴史的な大改革でもしなければ、日本経済は回復へと向かうことは難しいのではないか、というのが、本書の問題提起だ。

ただ単に指をくわえて「バブルよ再び」といったインフレ待望論では、問題は決して解決しないだろう。本書では、世界の経済情勢や宗教観などを把握しながら、日本の経済や生活体系の今後を推論する。

まず、資産価格が下降続きの現状で我々は何をすべきか、著者は提言する。「資産は出来るだけ持たない方がいい」と。多くのアナリストたちが底値だと、買いを勧めてきたが、投資家たちは裏切られてきた。90年代の企業経営や経済政策の最大の失敗は、資産価格の見通しを誤ったこと、だという。

構造的インフレ後、構造的デフレの時代に転じた現在、資産価格は下降する傾向があるとの認識を持つべきと進言する。そう、素人の投資家が大した企業情報もなく、ただ証券会社の勧誘に従って株で儲けるなどという時代は終わったというのだ。また著者は、無駄な資産を整理することも勧めている。

例えば、別荘を持つことが一時ブームになった。十分な所得がある人には問題ないが、普通のサラリーマンが無理をして買っても大変なだけで、しかもそれが銀行ローンでということになると厄介だと。当面地価が底を打つ気配を見せない現状では、所有すること自体危険なことなのだと看破する。

借金をして住宅等の有形資産を持つことは、少なくとも今後、経済的には極めて不利になる可能性が高くなってくるということなのだ。確かに、我々はこれまでその時代に見合った生活を送ってきたが、一時富を掴んでしまったことによって、後戻りできない生活体系になってしまったのかも知れない。

さらに本書では、これからの会社のあり方、賃金体制の問題、労働の意義や自然・環境の限界説にまで踏み込んで、我々に「新しい生活のススメ」を指南する。経済の将来を世界的規模で、論理的に考察する本書は、いま読むべき一冊なのかもしれない。