日本の優秀企業研究

【著者】新原浩朗
【発行】日本経済新聞社 【発行年月】2003年09月25日
【本体価格】1,800円 【ページ数】319p 【ISBN】4-532-31086-5

うまくいっていない企業の場合は、コンサルタントなどの他人の意見の無批判な導入や同業者のまねが多く、良いところのみ取ろうとして、かえって継ぎはぎになってしまう。

本書 P99 より抜粋

企業の「原点回帰」。これが本書の根幹にある。

今の日本を背負う多くの大企業の創業者は、これまでに、事業推進の中で企業の「本質」を経験的に学習してきたという。そして、その学んだことを時代環境に合わせて、具体的な経営の「形」を作り上げてきたのであると。逆に現在、あまり成果のでない企業はどうなのだろうか。

それらの企業は、長期不況の中、生き残りをかけて「米国式」と呼ばれるいろいろな新しい「形」を導入し始めている。カンパニー制や執行役員制、成果主義に基づいた従業員評価制度など。確かに「形」の上では変革を遂げたように見えるかも知れない。が、肝心の中身「本質」は変わっただろうか。

本書で著者は、財務データによる企業のサンプルを抽出し、中長期にわたり構造的に競争力のある「優秀企業」と、うまくいっていない企業との相違を明らかにする。内容は、仮説に対する証明という論法ではなく、あくまでデータに基づく結論を述べるというスタイルなので読んでいて理解しやすい。

優秀企業に共通的に観察できる特徴で、そうでない企業とを区分する条件は6つあるという。第一の条件は「わからないことは、わけること」。企業の経営者が自分でわかっていない事業を、自分の責任範囲の事業として手がけてはいけないのだという。

調査の結果、社長がわかったふりをして経営しているケースが最も成果が悪かったのだそうだ。合併や統合というボヤけた繋がりを持たず、事業売却を含めて完全にわける。優秀企業はあるコンセプトの塊になっていて、その経営者は自企業について、そのコンセプトを明確に説明できるのだという。

そう、だからこそ企業のトップ経営者には現場感覚が非常に重要なのだ。優秀企業の経営者は、自企業が取り組む事業の範囲を明確に認識し、わからない事業には手を出さない。そのためには企業組織のヒエラルキーが重層ではなく、従業員との関係を保つフラットな構造であるべきなのだろう。

このように本書では、優秀企業に見られる特徴を、該当する企業約30社を紹介しケーススタディを交えながら丁寧に解説していく。他の5つの条件においても、我々が忘れかけていた本来の企業の在り方を掘り起こしてくれている。

優良な成果につながる「経営者の普段着の現場感覚」、「修羅場経験による後継の育成」、「自発性のガバナンス」とは何なのか。企業の持続的な競争優位性を獲得するために、本書の示唆する内容を愚直に吟味して頂きたい。「日本発の経営学」を、ぜひ一読することをオススメする。