なぜ「ただの水」が売れるのか

【著者】高田公理
【発行】PHP研究所 【発行年月】2004年01月05日
【本体価格】1400円 【ページ数】300p 【ISBN】4-569-63358-7

「お米」は「嗜好品」か?
「水」が「嗜好品」になる時代
女子大生の大半は「タバコぎらい」?
茶系飲料ーブランド選択性の大きい感性製品
若い女性の「かわいい」表現の謎

本書 各見出し より抜粋

今や水を買うことも当たり前の時代になった。普段購入するミネラルウォーターと水道水の価格を比較してみると驚くことだろう。東京都の場合、水道水の価格は20平方メートルで2331円。これを500ミリリットルの価格に換算してみると、なんと5銭8厘なのだそうだ。

つまり、ミネラルウォーターの価格は水道水の約1700倍弱あるということになる。現代の日本人はミネラルウォーターに相当の金額を支払っているということだ。水を買うことの理由としては「水道水はまずい」「有害物質の不安がある」など様々だろう。

しかし、日本の水道水は今も飲料水としての十分な品質を維持している。にもかかわらず、ミネラルウォーターの消費は著しい増加の傾向をたどっているようだ。だとしたら、改めてその要因を追究するにも意味があるのではないか、というのが本書の根本的なテーマなのだ。

そして本書では、こうした問題に応えていくために、現代にとっては死語に近い「嗜好品」という側面からアプローチしていく。その上で21世紀という時代にふさわしい日本人の生活イメージとそれに応える商品やサービスのありようを模索していく、という構成になっている。

「嗜好品」という言葉が死語に近いと前述したが、これはモノが飽和した現代が象徴している。衣食住が充分でなかった戦後と比較してみると明白だろう。「生活必需品」という概念が時代とともに変わってきて、最低限の生活を保つための買い物、という意識が希薄になってきたものと思われる。

つまり、モノを買うときには「より楽しく」「よりおいしく」といった具合に、全てが嗜好品レベルでの購買意識に変わっているということなのだ。本書では、「嗜好品」というキーワードを徹底的に調査し、追究している。各年代、地域、性別ごとに座談会方式で生活者の意識を語ってもらっている。

この座談会が本書の大半を占めるが、この内容が実に興味深く面白い。彼らの嗜好品に対する意識や定義がほとんど一致しない。特定の商品について語ってもらってもその思いはバラバラだ。現代のモノに対する必須条件や購買意識は、その生活者のライフスタイルよって全く異なるということだ。

現代の生活必需品とは、もはやその枠を超えて、その上にさらにプラスαが期待される。商品寿命の短命化も顕著だ。こうした事実を踏まえても、本書は2004年のサービスを考える上で貴重な一冊だろう。単なるマーケティングにとどまらない嗜好品の文化論を、ぜひ一度読んでいただきたい。