辞めて正解!?-私がまだサラリーマンだった頃

【著者】神濤玉青【出版社】情報センター出版局
【発刊年月】2001年11月16日【本体価格】1,300円
【ページ数】185p【ISBN】4-7958-3692-2

本書は、31人31様の脱サラ模様を収めたインタビュー集です。さまざまな価値観と、その人なりの懸命な生き方。それぞれの物語に、そこにしかない味わいと真実があります。あなたの心に響く物語を探してください。
本書 まえがき より抜粋

本書は各界の著名人の「脱サラ模様」を描いたものである。その数31人。サラリーマン暦10ヶ月から、果ては45年生まで。それぞれのサラリーマンだった頃の思い出と、退職時のことについて、インタービューしたものをまとめている。本誌の読者にとっては、興味深い内容ではないだろうか。

例えば、最近注目度が高まっている、劇作演出家の松尾スズキさんは、サラリーマンにあこがれていたと言う。自分自身の「変さ」を自覚し、透明な存在として、社会に埋没するためにサラリーマンになったのだが…結局はその「リセット」は成功することなく、会社でも浮いた存在になった。

彼は、サラリーマンでは自分を埋没させることは出来ずに、結局自分自身を埋没させるために、自分の居場所を作った(=劇団の結成)のだと言う。そして、自分の居場所を見つけるためには、しばらくウダウダあがくことを勧めている。これは「モラトリアム脱サラ」の例である。

関西を中心に「お天気オジサン」として有名な福井敏夫さんは、仕事を「人を使う仕事」「人から使われる仕事」の2種に分類。自分は気が弱いから、人を使うことは出来ない。だからと言って縦社会の中で縛られることもイヤだ。技術屋なら現場で自分の好きなことがやれる、と思い、気象庁の気象予報官を仕事にしたと話す。

自身は職人気質の予報官だったが、サラリーマン生活32年目にして、静止気象衛星「ひまわり」を使った日本最初の気象解説をテレビで行う羽目になり、テレビの天気解説者としてブレイクしてしまう。「大変身脱サラ」の典型だ。この調子で、いずれの著名人のエピソードも、なかなか面白い。

著者も前書きで述べているが、本書に登場する「脱サラ」組には、いくつかの共通点がある。1つは「退職時に不安や恐怖を感じていること」である。本書に登場する人たちは、いずれも豊かな才能で、世に出ている人たちばかりだ。そんな彼らでも、退職時に発生する「ネガティブ」な力に押しつぶされそうになっている。

もう1つは「サラリーマン時代の経験が糧になっている」と、サラリーマン時代を否定する人はいないということ。本書の肝は、実はこの一点にあるといって良い。本書に書かれてあることすべては、今頑張っている「サラリーマンへのエール」に他ならないのだ。仕事に疲れたとき、手にとって読んでみると良い、そんな本なのかもしれない。