新卒無業。

【編著者】大久保幸夫【出版社】東洋経済新報社
【発刊年月】2002年05月07日【本体価格】1,400円
【ページ数】233p【ISBN】4-492-26064-1

無業者の問題をもう一度別の角度から見てみよう。2001年の春に大学を卒業した世代の流れを中学校からさかのぼって見てみる。(中略)この世代168万人のうち、高校、短大、大学を卒業し、就職先で少なくとも三年は働いているという人は、計算すると45万人。わずか全体の27%ということになる。
本文 182p より 抜粋

新卒無業-聞き慣れない言葉に戸惑う方も多いだろう。平たく言えば、学校は卒業したけれども就職はしていない、そんな人たちのことをいう新しい言葉である。ちなみに2001年3月大学卒業者における「新卒無業」者率は21.3%。実に驚くべき数字ではないか。

本書はその驚愕の数字を執筆の動機としながら、ある意味「日本独自」のシステムである「新卒採用」制度の崩壊と、その現場にいる人たちの価値観の変化や新しい模索について、さらには近い将来訪れるだろう、雇用の現場における問題点とその解決策を提言している。

大学や短大は出たけれど職に就けない。その大きな問題について、本書では不景気だから…というありきたりな視点では、語っていない。学生そのものの質の低下(とその原因)や、就職指導する学校の問題点(世間とずれた常識で動いている)などに言及している。

自分のことすら話せない大学生。サービス業を低く見る高校の就職指導担当者。志望企業の名前さえ正確に書けない志願者。やりたい仕事(=企画系)と求人(=多くは営業系)のミスマッチ。フリーターというセーフネット。そして、そのフリーターの五割は正社員並みに働いているという事実…。

本書を読み進めるうちに、戦後日本の成長を支えてきた制度が、雇用という側面からも音を立てて崩れている、ということを実感する。そして、それらの綻びは、今は小さいけれども、今後「大きな危機」がやってくる予兆であることは言うまでもない。

若年失業という世界各国が持つ悩み。それを日本には無縁なものにしていた「新卒採用制度」の崩壊。敗者復活がなりにくい日本の中で、はじめの第一歩を上手く踏み出せなかった人はどうなってしまうのか…。「新卒就職から終身雇用で定年へ」という価値観の見直しが迫られているのだろう。

だか、悲観的な話ばかりではない。さまざまな角度から「雇用」について真正面から取り組む人たちや、自分たちで新しい働き方を模索する「20代」についても、本書は多くのページを割いている。社会制度としては目立つ改善はないが、個人としては、確かに新しい時代に向かっているようだ。

仕事とはなんだろう。就職とはなんだろう。キャリアとはなんだろう。それらを深く考えてみるために、今の労働市場の一面を知るためのナビゲーターとして、本書は役に立つだろう。一読をお勧めしたい。