会社はこれからどうなるのか
【著者】岩井克人 【発行】平凡社
【発行年月】2003年02月23日 【本体価格】1,600円
【ページ数】341p 【ISBN】4-582-82977-5
わたしたちはいま、あたかもグローバル標準であるかのようにみなされている株式主権論のドグマに囚われずに、もう一度おカネとヒトとの関係を考え直し、資本主義の新たな形態の中で生き抜いていける、新たな会社の形態を考えていかなければいけないのです。
本書 282P より抜粋
今の日本経済は大きな構造変化の中にいる。「グローバル化」「IT革命」「金融革命」など…、これが原因で企業はリストラをせざるをえない状況になってしまった。世界を相手に競争を始め、他社といかに差別化し、コストパフォーマンスを重視した結果の惨劇ともいえる。
本書では、会社という存在を様々な角度から考察し、ポスト資本主義における会社のあり方を読者に提案する。将来、どの形態をもつ会社が最も適当かの断定的な議論を避け、読者に選択権と考えるキッカケを与えてくれる内容といえるだろう。以下に挙げる例は、代表的アメリカ型大企業の失敗例だ。
今から10年ほど前まで「会社は誰のものか」という問いかけが、盛んに行われていた。会社とは株主のものでしかないとする、アメリカ的な「株主主権」論と、従業員のものだという日本的な「会社共同体」論だ。そこで著者は、この株主主権的な会社はグローバル標準にはなり得ないことを論じる。
2001年12月、アメリカのエンロンという会社が、それまでの記録を塗り替える大型倒産をした。幹部にはそうそうたるメンバーを配し、その経営監査体制はアメリカ型のコーポレート・ガバナンスの模範ケースであるとまで言われていた。
しかし、エンロンの経営者は会社の業績を粉飾して株価を吊り上げ、自分の持ち株を売り抜けて巨万の富を手に入れた。不正が発覚しそうになると、会計事務所と共謀し証拠書類を隠滅。犠牲者は失職した従業員だけでなく、多くの株主の手元にも、紙クズとなった株券だけが残った、という事件だ。
これは、アメリカ型のコーポレート・ガバナンス制度が、本質的に矛盾した制度であるからなのだと主張する。株式会社の経営者は株主の代理人などではなく、会社の代表機関であるという点なのだと。会社が結ぶどの契約も経営者を通してしか結べない。結局経営者の自己契約に過ぎないのだという。
株式会社における経営者の行動には、一種の倫理観が要求される。そもそも株式会社において所有と経営の分離したシステムは不正行為への招待状以外の何ものでもないと論じる。経営者の会社に対する忠実義務と注意義務こそ全てのコーポレート・ガバナンスの中核であるべきなのだという。
本書では、過去に見られる会社の仕組みを、さまざまな角度から考察し、学習できる構成になっている。他にも、転職時における賃金カットの秘密などを読んでみると、経営者の“腹のウチ”も推測できるようになる。新しい資本主義に相応しい会社のあり方、新しい働き方を考えるヒントになる一冊。
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