キャリア・カウンセリング

【著者】金井壽宏 【発行】日本経済新聞社
【発行年月】2003年08月22日 【本体価格】1,500円
【ページ数】291p 【ISBN】4-532-31074-1

今までの人生を振り返り、これからの人生に何が大切かを考えるようなプロセスが意味を持ってくるだろう。

本書 P74 より抜粋

本書は「中期キャリア危機」として、35~45歳頃に経験する心理的危機を中心に展開している。中堅として仕事を実際に動かすのと同時に、部下の指導も行い、これから後期キャリアに移行しようとする時期だ。この“キャリアの中間点”は、非常に重要なポイントだという。

空中ブランコの有名な例がある。前のブランコを手放さないと、次のブランコには手が届かない。その間で、どちらのブランコからも手が放れている危ない状態がある。この中間点は次につながる移行期なのだと。そこには大きなストレスがある。そう、キャリアの節目では必ず“悩み”が存在すると。

リアルな例で詳説する。第一子が誕生したとしよう。夫婦はずっと子供が欲しかったのに、いざ生まれたら知らないことが多く苛立ち、困惑してしまうことがよくある。最近の悲痛な事件にも見られるように。原因は何か。夫婦が見逃しているのは「終焉と中立圏という段階の重み」と筆者は表現する。

つまり、3人の新しい生活、子供が一緒の生活という“開始の局面”にしか考えが及ばないことだと。焦点は子供の誕生を機に“終わる”ものがあるということ。例えば、しばらくは二人きりで旅行や遊びには行けなくなる。睡眠時間も変動する、などが挙げられるだろう。

実際に3人の生活が始まる前の宙ぶらりんな時期にこそ、父親・母親になるとはどういうことなのか、子供を持つことはどういうことなのか、重みを持って心深く考えることが必要なのだという。

確かに、これを仕事に置き換えて見るとよくわかる。何年も所属した部署での経験を無視するかのような配置転換、ゼロから始める新しい仕事。これは自分のキャリアにとって、ある意味、不健康なサイクルだろう。

しかし、この節目節目において、自分自身で終焉と始まりの関連性を想像することで受け入れるか否かの判断もでき、納得して先に進めるのかも知れない。だが、そこには多くの悩みや、ストレスが存在する。本書では、「中年よ、小志を抱け」と悩みを自然な現象とし、読者を和ませてくれる。

「やればできる」でなく「できればやる」。キャリアとは轍のようなもの。毎日考えるものではない。節目節目で後ろを振り返り、その過程を未来に活かすために修正するものなのだと本書にはある。多数の心理学者の考察を経営学者の編著者がまとめ上げた魅力ある一冊を、ぜひ読んでいただきたい。