自分の仕事をつくる
【著者】西村佳哲 【発行】晶文社
【発行年月】2003年09月30日 【本体価格】1,900円
【ページ数】271p 【ISBN】4-7949-6585-0
優れた技術者は、技術そのものでなく、その先にかならず人間あるいは世界の有り様を見据えている。
本書 P72 より抜粋
企業社会における経済活動の大半は、経済のための経済であり、より多くのお金を引き寄せるために仕事が重ねられる。産業革命が生み出した「多くのモノを安くつくる」姿勢は、モノが飽和するまでは受け入れられたかも知れないが、今はそういう生産力は、もはや通用しなくなりつつある。
私たちは毎日、誰かがデザインしたものに囲まれて暮らしている。換言すると、生きていくということは、様々な人の“仕事”に接し続けているとも言えるだろう。しかし作り手が「こんなもんでいいや…」という意識で作ったものは、我々にその否定的な気持ちを伝えてくる、と本書にはある。
本書は、とりわけモノづくりに没頭し、いい仕事を求め続けている人に著者がインタビューし、彼らの仕事に対する哲学やこだわり、作品に対する働き方を紹介する。ここでは、バタフライスツールなどの作品で知られる工業デザイナー・柳宗理氏のこだわりを紹介しよう。
柳氏は、どんな作品にでも初期の段階でスケッチや図面を引くことはなく、いろんな模型を組み合わせ、感触として形を掴んでいくという。机上でのレタリングでは絶対いいデザインはできないのだと。つまり技術者などとのワークショップの中からモノを作りながら、できていくものなのだという。
ということは、最初にイメージしていたモノは作れない。椅子でも最低1年くらい時間を費やし、試行錯誤の末、理想の形に仕上げるのだと。若いデザイナーたちにも苦言を呈する。「作業を始めると同時にデザイン雑誌に頼ってはいけない」。デザインという作業は時間がかかるものなのだと。
著者が手にした柳氏のコーヒーカップは「モノを通じて自分が大事にされていることが感じられるデザイン」だと思ったという。こうした仕事は、今や希少だ。「デザインのためのデザイン」は「人を幸せにする」原点を忘れているのではないかと、改めて考えさせられる内容だ。
本書を読み進めていくと、我々の仕事の目的はそもそも何だったのか、自問自答する必要があるのではないかと深く考えさせられる。受けた仕事はこなさなければいけない。仕事は選べないし、家庭や生活もある。しかし好きな仕事をしたい。こういう悩みはビジネスマンには尽きない。
本書で紹介する作り手たちは、どんな請負の仕事だとしても、ある一点で共通する。それは「自分の仕事」にしていることだ。彼らの働き方は、世の中のワーカーたちのそれとは異なる。エネルギッシュで、主体的に仕事をする姿を、本書で垣間見ていただきたい。仕事観が変わるかもしれない。
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