仕事の裏切り なぜ、私たちは働くのか
【著者】ジョアン・B・キウーラ
【発行】翔泳社 【発行年月】2003年11月21日
【本体価格】2,800円 【ページ数】445p 【ISBN】4-7981-0440-x
人は仕事を通じて尊厳やアイデンティティを得たり、自己を表現したり、社会で役に立っているという実感を得たりする。仕事が経済的な取引以上のものであると思えば、さらにそれは意味のある行為となる。
本書 289P より抜粋
キャリアアップやリーダーシップ、上司・部下との付き合い方など、いかにビジネスマンとして成果を出していくか、という書籍をこれまで多く紹介してきた。しかしもっと根本的に、仕事を哲学すること自体も大いに意味のあることなのだと、本書を読んで深く感じられた。
「なぜ、私たちは働くのか」。本書のテーマはここから始まる。
仕事の何がそれほどいいのか。歴史を見ても、仕事をしないで過ごせる人、仕事をするべきか否かを、自ら選択できる身分の人は稀なのだという。我々も時々、働かないで過ごせたらどんなに楽なのだろう考えてしまう。趣味に打ち込み、名著を読み、旅することができたらどんなに良いかと。
突然だが、あなたは宝クジの高額が当たっても仕事を続けるだろうか。宝クジは、仕事や物質的な要求からの自由を夢見させてくれるが、実際に当選しても仕事を続ける人は驚くほど多いのだとか。仕事をしないことは、簡単なことだと思えるが、一生働かないという状態は現実的には難しいらしい。
働くかどうかの選択の余地がない人にとって「なぜ働くのか」という問いかけは間違っている。我々は「生きていくために働く」からだ。生活のために賃金労働をするのだが、そう考えると、仕事を経済的に意味づける傾向がますます強くなっているということなのだろうか。
昔から、「人は働かなければ悪いことをする」といわれてきた。本書によると、「仕事がある」ということは、単に物質的な要求を満たす以上の意味を持つのだという。仕事はさまざまな心理的、社会的な要求、例えば自制心、人間関係、規則正しさ、自己効用感などを満たしてくれるのだと。
1930年代に行われた、ある社会地理学研究例が載っている。ある小さな工業労働者のコミュニティが街ごと失業している状態を調査たものだ。そこの住民は、景気の良い時ほど仕事と同じくらい余暇活動にも熱心だったという。政治活動やいろんなイベントなどを企画し楽しんでいたと。
しかし、工場が閉鎖し、町全体が失業状態になると住民たちは無気力になった。つまり彼らは、外の世界から切り離され「時間を活用する」という物質的・精神的動機を失ってしまったということなのだ。仕事がない自由な暮らしとは、休暇のない窮屈な生活なのだということがわかる、良い例だ。
仕事、お金、時間。この3つは今を生きるビジネスマンにとっての最重要テーマだ。本書には、「生きるために働く」のではなく「働くために生きる」という言葉がある。いま一度、深いレベルで「自分にとって仕事とは何か」と、見つめ直してはいかがだろうか。
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