デジタルな経済-世の中の大変化小変化

【著者】伊藤元重【出版社】日本経済新聞社
【発刊年月】2001年02月23日【本体価格】2,500円【ページ数】365p
【ISBN】4-532-14903-7

この本の主たる分析対象は、IT産業ではありません。流通、金融、雇用、生産など、経済の主たる分野がこの本の対象となります。デジタル革命によってこうした経済の主流分野がどのように変化していくのか、その変化の論理(ロジック)を明らかにしようというのがこの本の主たる目的なのです。
本書 14ページ より

インターネット万能のメッキが剥げ、そのバブルが弾けたと喧伝されているが、本当のところはどうなんだろうか。最先端の技術や新しいビジネスモデルやセオリーを紹介した本はたくさん出版されているが、今までのビジネスとの関わりがあまりにも不明確で、絵空事の感があった。

本書は「ウォーキング・エコノミスト」を自認する筆者が、ITとそれを取り巻く様々な事象を、身近な例を丹念に引きながら、実にわかりやすく紹介している。現在のIT化の流れを「デジタル日本経済」と位置付け、今までのビジネス社会と乖離しない、シームレスな解説がなされている。これはありがたい。

まずここで言う「デジタル経済」とは、今までの「大量規格型製品を生産・流通するマス」の市場から、「一人ひとりの個人をパーソナルな存在としてとらえる」取引への変化が成り立つ経済のこととしている。そして、デジタル革命は、産業革命に匹敵する環境の変化であると説く。

ITしか出来ない企業や人の将来は厳しい。企業が持っていたいろいろなビジネスの機能が分割され、新しいビジネスが生まれる。と言ったビジネス環境の話から、ITの普及により女性が活躍する時代になるはず、と社会的な話まで、話題は興味深くそして幅広い。何よりたくさんの事例が取り上げられていることが、本書を理解しやすいものにしている。

ITにできないことをやる。だから価値がある。-腰帯にかかれた言葉である。このフレーズが本書の主張の根幹をなしている。IT以外のことをしなさい、と言ってるわけではない。ITには出来ないことを考えて、ITを活用して、それをカタチにする、というビジネスモデルを作ることが、これからは大切と、述べているのだ。

自分自身のビジネスには縁が無いため、今までのインターネット本にピンと来なかった人にも、この本はぜひ読んでおいて欲しい。インターネットに関わる様々な「身近」な「インターネット」の話題について、きちんと理解することが出来るはずだから。わかりやすい語り口の文章も二重丸。ぜひどうぞ。おすすめです。