広井王子の全仕事
【著者】出山健示 【出版社】毎日コミュニケーションズ
【発刊年月】2000年04月07日 【本体価格】2,857円 【ページ数】 191P
【ISBN】4-8399-0259-3
目の前には小さな革製の旅行カバンがひとつずつ置かれている。ペタペタと無造作に貼られたステッカーが異国情緒を醸し、旅ごころを刺激する。どの顔にも一様に、この意表を突いた企画書に戸惑いを隠せない。──企画書? そう、テーブルの上にズラリと並んだ小さなカバンは、広井王子によって、「これが企画書です」と配られたもの。この日レッドカンパニーが提案する企画書だという。
本文「企画書芸術論」より
「サクラ大戦」シリーズや「天外魔境」シリーズなどで、ゲームファンにはおなじみの、クリエーター・広井王子。この本は、ゲームクリエーターとしての枠を超え、マルチに活躍する彼の仕事振りを、一冊にまとめたものである。これがかなり面白い。
B級クリエーターを自認する広井。その理由を「自分は新しいものを作り出しているわけではない。子供のころのキラキラした思い出を、今の時代に合うようなカタチでよみがえらせただけ」とする。しかし、これは、蓄積された情報を、加工してカタチにするという、当たり前の企画技法だ。別段珍しいことでもない。広井は企画をするということ重視していて、「企画自体が技術。コトを起こすための技。だから技術料が派生するのが当たり前」と考えている。そして、B級と言っている割には、「私の企画料は高いですよ」と公言しているらしい。プロとしての高い意識を感じると同時に、無形なものに金をかけたがらない日本の風潮に一石を投じている。
モノづくりにこだわる反面、例えば、遅くなりがちなゲーム発売日を守るために、作りこんであったエピソードを捨てる、という思い切りの良さも見せる。これらの行動は、すべて、お客様のために、という基準で成されている。クリエーターなのに、独り善がりにならず、客のためにという感覚を大切にしているところも、興味深い。このような、モノ作り職人としてのエピソードが満載で、広井のことを知らずとも、十分に満喫できる。
筆者の力量不足か、見出しの割には中身が薄い部分もあり、全面的に満足と言うわけにはいかない本ではある。しかし、次の二つのコトは学べる。「ヒトの心を捉えるにはどうすれば良いのか」そのエッセンスが、この本には散りばめられている。それと「案外オーソドックスなスキルで新しいエンター テイメントは作られている」ビジネスを成功させるスキルは、案外「ヒトに好かれる」ってトコロにあるんじゃないか。そんなことを気づかせてくれている。探して読んでみて欲しい一冊だ。
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