知られざる特殊特許の世界

【著者】稲森謙太郎【出版社】太田出版
【発刊年月】2000年08月04日【本体価格】1,600円【ページ数】258p
【ISBN】4-87233-526-0

もしあなたが、会社の仕事の一環として発明しようと考えているのなら、その発明は、会社のもとのなってしまう可能性が高いということだ。というのも会社の従業員の場合、ふつうはその入社時に「職務発明(会社の業務範囲に属し、発明をするに至った行為が現在または過去の職務に属する発明)は、その特許を受ける権利を会社に事前譲渡する」といった内容の雇用契約を結ばされることが多いからである。
本文 256p より

「特許」とは、周りに溢れているはずのものだけれども、ほとんど縁のないモノでもある。ビジネスモデル特許が話題だけれども、多くのビジネスマンは、特許そのもののことは、ほとんど判っていないだろう。本書は、フツーの人にも読める特許の本を作りたい、という著者の思いが形になったものである。表題の「特殊特許」とは、著者特有の言葉で、出願者がフツーじゃない、技術の内容や解釈がフツーじゃない、権利の範囲がフツーじゃない、と、とにかくフツーじゃない特許をこう呼んでいる。そのフツーじゃない特許を糸口に、特許と言う世界を解きほぐしていく。

特殊特許は、松下電器が考えた「漫才人形」や、小室哲哉が出願した「時計型シンセサイザー」、大仁田厚の「特殊リング」、鈴木その子の「ダイエット食品特許」など、興味深いものが多い。その一つ一つの特許を、発明者へのインタビューと、一般人にもわかりやすい解説、という構成で紹介している。本文そのものもかなり面白いが、派生していく話題、例をあげれば、大仁田厚の「特殊リング」の解説から、プロレス技は特許が取れるのか、というあたりは、なるほどと思いながら、笑ってしまう。

本稿の読者にとっては、この特殊特許の部分は「頭の休憩」的な部分であり、実は、本文に挿入されている「コラム」を一押ししておきたい。「知的所有権について」「特許の取得方法」「特許の範囲」「ビジネスモデル特許について」などの、特許に関する広く一般的な知識が、コンパクトに面白いエピソードと一緒にまとめられている。特許に関する入門書を読めば良いのだろうけれども、その無味乾燥さから比べると、やはりこの本は「出色」の出来である。

これからの時代、ビジネスマンに必要な基礎知識のひとつとして「特許」ははずせないように思う。アイデアがビジネスになる時代、その権利に関する知識は、広く浅くでも良いから知っておくべきだろう。シニカルな笑いに包まれたこの本で、サクッと知的武装しよう。