商品企画のシナリオ発想術

【著者】田中央 【発行】岩波新書
【発行年月】2003年01月08日 【本体価格】700円
【ページ数】178p 【ISBN】4-00-700056-5

■冷蔵庫、食器棚、工事現場、健康法がこんなに変わる
■ハンズフリー 近未来の携帯電話を描く
■コンセプトマーケット 出会いを演出する
■さまざまなアイデアを20のシナリオで公開

本書 表紙裏 より抜粋

日本は戦後復興期からモノが豊かに出回り、モノづくりの競争は激化してきた。そして、いつからか次第に我々の生活は多様化し、個性派の時代になった。モノが飽和し、渾沌とした生活者は「生活の質的向上」をめざして模索しているのが現状だ。

そう、モノの作り手側としてのメーカーも、売れ筋商品ばかりを追い求めるわけにはいかなくなってきた。もっと積極的に、ユーザーが新しいライフスタイルを築けるようなものの提案が求められているのだ。

作り手はそれをイメージし、具体的な仮説を立てることによって創造しなくてはならない。そこで本書では、新しい商品開発のコンセプトワークに「シナリオライティングによる発想法」を紹介する。

著者はまず、「モノ」の前提には必ず「コト」が存在すると主張する。「コト」なしに「モノ」は創造できないと。つまり新商品を開発するためには、ユーザーが使用した時に「どんな気持ちになるか、どこに価値を置くか」などをイメージし、コンセプトを細かく設定する必要があると言及している。

我々は日頃の生活の中で、多かれ少なかれ満足や不満を抱く。創造性の発揮の前にはこのような動機と問題意識が不可欠なのだそうだ。不安から安心、不思議から納得も同様である。

著者は、この3つの「不」はネタづくりのタネそのものなのだと重ねて強調する。ニーズと欲求の両立というところか。

そして、話題は著者が富士写真フィルムに在籍中に、大ヒット商品「(使い切りカメラ)写ルンです」の商品コンセプトを確立させた経緯に移る。

「親近感」がキーワードだった「写ルンです」。この言葉を手がかりに新商品がどんなものであるかを的確に表すのに、発想の手続きとして「比喩」表現を実践。類義語や同義語に置き換えてみるのだという。

「身近な、しっくり、気安い」などに置き換えていくことで発想が成長していくのだという。驚くかもしれないが結局、最終的なメタファは「キャラメル」に決定した。

今度はキャラメルの観察だ。色に特化していえば、キャラメルの箱の色はお菓子メーカーのアイデンティティカラー。そうなるとカメラもフィルムパッケージのグリーンに落ち着くことになる。と、スマートに解決できていく。

本書に掲載されているシナリオの例を読み勧めていくと、我々の新しいライフスタイルとして、新しい商品がどんどん出てくるような気がしてくる。なぜか数年後の生活が楽しみになってしまう。この発想術はさまざまな場面で応用できるし、世の中を楽しくするための一冊になりそうだ。