新・オトナの学校 仕事常識

【著者】安部健太郎・石川淳一ら【発行】日本経済新聞社
【発行年月】2004年03月16日 【本体価格】1,200円
【ページ数】252p 【ISBN】4-532-31130-6

中国式宴会 「隣国だから」の油断は失敗を招く
よろしかったでしょうか。 これが「バイト語」になります
上司の仲人 「脱・会社」が進む結婚式
出張でためたマイル 仕事で得た「財産」は誰のもの?

本書 目次 より抜粋

組織内の人材流動が激しい時代になった。コア世代も変われば、その常識も変わる。これまで当たり前と思われてきたビジネスマナーや仕事の技術も、今やローカルルールにより様々なカタチを見せはじめてきた。

本書は「NIKKEIプラス1」で連載されている「仕事常識」をまとめたもので、“今さら人に聞けない”ビジネスマナーや仕事の技術を幅広く網羅している。新人から中堅層まで、気づかぬうちに自分の印象を悪くしている行動、言動を本書で確認してみよう。

例えば「茶髪の限界点」。染髪など御法度だった常識が、今は緩和されているようだ。女性にとってはおしゃれの一環だが、男性は「取引先に若々しく見られたい」「清潔感をだすため」など仕事上の効果も考える人が多いという。化粧品メーカーも「社会人向け」ヘアカラーを売り込んでいるほどだ。

しかし、接客業などは状況が全く異なる。厳格にルールを定めているホテルオークラはこうだ。まず、男性は染髪禁止。女性は認めているが、全職場に髪の色の“ものさし”があり許容範囲を越えていないかチェックをしているという。

ものさしは日本ヘアカラー協会が作っており、最も黒い1から、ほとんど白い20まで数字で髪の色の明るさを示すらしい。ちなみにオークラの基準は7以下という。日本人の標準的な黒髪(3から4程度)に比べ多少茶色く見える程度のものものらしい。

これだけでも、ルールとして規定されている、ない、がハッキリわかる。組織内でも営業マンと技術者は仕事内容が違うから髪も服装も異なっていて当然かもしれない。だが、これも使い分けが必要だろう。技術者だからといってクライアントと接する機会にラフな格好で出かけるのも考えものだ。

この他にも本書には「中国人に招かれたときの宴会作法」や「出張でためたマイルは誰のものか」「話すだけではもったいないケータイ活用術」など、今この時代だからこそトラブルになりかねない事例や、デキるビジネスマンが利用する便利ツール活用法など、“お役立ち情報”が満載だ。

環境問題や社会全般の動きなどが変えてきたビジネス作法。大学でもマナー講座でもなかなか学べないであろう、人間同士の付き合いを踏まえた実用ベースの仕事術。すべての社会人が「基本」を見直すために、一読しておくことをお勧めしておきたい。

店はこうして生まれ変わった!

【著者】笹幸恵【発行】ダイヤモンド社
【発行年月】2004年03月11日 【本体価格】1,700円
【ページ数】276p 【ISBN】4-478-560-8

業績の低迷した小売ベンチャーがある日、社長の決断で「店舗改善委員会」を発足。やる気に満ちた若手社員を選抜し、不振店舗の改革に乗り出した。

本書 腰帯 より抜粋

デフレ不況の中、業績に伸び悩む企業が喘いでいる。社員のモチベーションも下がる一方。そんな中で、見事に業績改善を果たした企業があった。本書は、業績不振に陥った組織を再生に導くノンフィクションストーリーだ。

あるコンタクトレンズメーカーに務めていた社員が、「安全で快適なコンタクトレンズ」を「安く」お客様に提供したい、という思いから独立を決意。後に、(株)日本オプティカル代表の長村隆司氏として世に名を馳せることになる。

長村氏は創業から13年で150店舗(2002年9月時点)を全国に展開させ、会社をジャスダックに上場させた敏腕経営者である。経営は順風満帆と思われていた矢先、顧客からの相次ぐクレーム、それに比例し売上の下落が目立ち始めていた。そこで長村氏は業を煮やし、再編に向け動き始めた。

日本オプティカルは、それまでエリア内の知名度を高めるドミナント出店を基本としてきた。これを、個店ベースでの販促を重視する方向へ転換。全国各エリアから選抜された若手社員を中心に「店舗改善委員会」を発足する。

この委員会は、2年間という期限付きで、業績不振店舗を高収益店舗として生まれ変わらせることがミッション。1店舗につき約2ヶ月で全国各地の店舗をまわり、結果を残さなければならない。しかも業績不振店舗なだけあって、行く先々で問題は山積していた。

競合対策や広告戦略を怠っていたり、もっと内的な要因、例えば店長の指導力・統率力不足、スタッフの専門知識や販売技術の不足、販売意欲の欠如など、長村氏の目の届かないところでは、散々な有り様だったことがわかる。

委員会が各店舗を立ち直らせるストーリーが大半だが、この過程は面白い。競合がひしめく商圏における販促・広報活動や、指導すればすぐに泣き出してしまう店長、委員会と店舗の確執、委員会と本社の軋轢など、当然だが全てがリアルなのだ。組織のトップと末端の実情が如実に描かれている。

特筆すべきは、委員会のメンバーがほとんど20代の若者だったことだ。会社の将来を左右する壮大なプロジェクトを、若手に託す企業のスタンスに惹きつけられる。小売業の視点に徹して業績改善をテーマにした本書ではあるが、役に立ち学べることも多い。ぜひ多くの方に読んでいただきたい。

休むために働くドイツ人、働くために休む日本人

【著者】福田直子【発行】PHP研究所
【発行年月】2004年03月05日 【本体価格】1,200円
【ページ数】191p 【ISBN】4-569-63367-6

ドイツは先進国の中で、最も労働者の時間当たりの賃金が高く、有給休暇が多い一方、労働時間が少なく、税金や社会保障費が高い国となった。

本書 P184 より抜粋

まず、大変興味深いタイトルだ。ともに敗戦から立ち上がり、世界で最も裕福な国の一つとして立ち直った両国の働き方は似ていると思われていた。しかし、これまでの既成概念として“勤勉”とされるドイツ人と日本人の働き方は、我々のイメージと全く異なるようだ。

著者は「日本人とドイツ人の働き方は全く違う」という。ドイツでは、週の労働時間を削減し、有給休暇は年に6週間もあるという。「過労死するくらいなら太りすぎで死にたい!」というドイツ人。限られた時間内で猛烈に働き、休む。つまり、自分や家族との時間を得るために一生懸命働くらしい。

一方、日本人の働き方はどうか。日本人は仕事を一つのアイデンティティと位置づけ、“自己実現のために”とまで言い切ってしまう。オンとオフを使い分けず、キャリアアップをめざしている。人生のほとんどを仕事に費やしまさに「働くために、休日で身体を休める」というスタンスになっている。

両国の仕事に対する考え方の違いは、シンプルに“文化・性格の違い”という理由だけでは済まされそうもない。例えば、ドイツの社会保障制度は日本のそれとは全然違うという。

ドイツには現在、人口8200万人中、失業者が400万人ほど。労働時間は法律で厳格に限られていて、役人は朝7時から働くと、3時頃には家に帰ったりする。カトリック休暇や超過勤務による代休はきっちり取らなければいけない。体調不良は数日間休む、など仕事ができない条件が山ほどある。

会社にいる人間は、人がいない分働かなければ、と思うと、5時か6時くらいには帰宅しているというから驚く。ドイツには従業員の過労を防ぐ「閉店法」があるため、日々の必需品を買うには早く帰らないといけないらしい。

こんな働き方で十分な生活ができるくらいの収入はあるのだろうかと疑いたくもなる。しかしドイツでは、ずっと失業していても十分暮らせるだけの生活を保障してしまっているのだという。福祉国家ドイツでは失業者も手厚く保護されていて、食べていけるだけの保障を政府がしてくれるのだという。

保護され過ぎているドイツ、保護が足りない日本。しかし根本は、それぞれの生活を意識した働き方なのである。経済大国の中でも、日本と対照的なビジネス社会。その実情を知ることで、“当たり前”になっている働き方を、もう一度見直す機会を与えてくれる一冊である。読むことをお勧めしたい。

なぜ「ただの水」が売れるのか

【著者】高田公理
【発行】PHP研究所 【発行年月】2004年01月05日
【本体価格】1400円 【ページ数】300p 【ISBN】4-569-63358-7

「お米」は「嗜好品」か?
「水」が「嗜好品」になる時代
女子大生の大半は「タバコぎらい」?
茶系飲料ーブランド選択性の大きい感性製品
若い女性の「かわいい」表現の謎

本書 各見出し より抜粋

今や水を買うことも当たり前の時代になった。普段購入するミネラルウォーターと水道水の価格を比較してみると驚くことだろう。東京都の場合、水道水の価格は20平方メートルで2331円。これを500ミリリットルの価格に換算してみると、なんと5銭8厘なのだそうだ。

つまり、ミネラルウォーターの価格は水道水の約1700倍弱あるということになる。現代の日本人はミネラルウォーターに相当の金額を支払っているということだ。水を買うことの理由としては「水道水はまずい」「有害物質の不安がある」など様々だろう。

しかし、日本の水道水は今も飲料水としての十分な品質を維持している。にもかかわらず、ミネラルウォーターの消費は著しい増加の傾向をたどっているようだ。だとしたら、改めてその要因を追究するにも意味があるのではないか、というのが本書の根本的なテーマなのだ。

そして本書では、こうした問題に応えていくために、現代にとっては死語に近い「嗜好品」という側面からアプローチしていく。その上で21世紀という時代にふさわしい日本人の生活イメージとそれに応える商品やサービスのありようを模索していく、という構成になっている。

「嗜好品」という言葉が死語に近いと前述したが、これはモノが飽和した現代が象徴している。衣食住が充分でなかった戦後と比較してみると明白だろう。「生活必需品」という概念が時代とともに変わってきて、最低限の生活を保つための買い物、という意識が希薄になってきたものと思われる。

つまり、モノを買うときには「より楽しく」「よりおいしく」といった具合に、全てが嗜好品レベルでの購買意識に変わっているということなのだ。本書では、「嗜好品」というキーワードを徹底的に調査し、追究している。各年代、地域、性別ごとに座談会方式で生活者の意識を語ってもらっている。

この座談会が本書の大半を占めるが、この内容が実に興味深く面白い。彼らの嗜好品に対する意識や定義がほとんど一致しない。特定の商品について語ってもらってもその思いはバラバラだ。現代のモノに対する必須条件や購買意識は、その生活者のライフスタイルよって全く異なるということだ。

現代の生活必需品とは、もはやその枠を超えて、その上にさらにプラスαが期待される。商品寿命の短命化も顕著だ。こうした事実を踏まえても、本書は2004年のサービスを考える上で貴重な一冊だろう。単なるマーケティングにとどまらない嗜好品の文化論を、ぜひ一度読んでいただきたい。

3びきのこぶたと学ぶ やさしい会計

【著者】松井浩一
【発行】総合法令出版 【発行年月】2003年12月09日
【本体価格】1,200円 【ページ数】175p 【ISBN】4-89346-820-0

・会計って何なの?
・仕訳ってどういうものなの?
・決算でやるべきことは何なの?
・貸借対照表や損益計算書は何のためにつくるの?
・経営分析ってどんなふうにやるの?

本書 腰帯 より抜粋

書店では、「会計」に関する書籍が多く並ぶ。貸借対照表や損益計算書を読みとることで、会社の経営状態を理解するためにと、そのニーズは次第に高まってきた。しかし問題は「難しい」ことだ。多くの専門用語や計算方式、簿記の知識や数字に弱い読者は、頭を悩ましてきたことだろう。

本書は、会計本の入門中の入門“楽しく読める会計の絵本”なのだ。ページ数も少なく、この上なく平易な文章。これまで会計のことで理解に苦しんだり、もう一度最初から勉強したい人には、ピッタリの書籍だろう。

内容は、3匹のこぶたが会社を設立し、経営していく中で直面する困難に立ち向かっていくというもの。起業から経営していく中で常につきまとう「会計」。本書は絵本を読む感覚で、会計の基本的な知識を自然に勉強できてしまう代物なのだ。しかし、中身は終始リアルで実践的な構成だ。

長男のこぶたが社長、次男のこぶたが営業部長、末っ子の「トロン」は経理部長という肩書き。彼らは初めて会社を立ち上げるので、設立の手続きやお金の流れ、決算のことなど知る由もない。そこで経理部長のトロンは何かトラブルや疑問を持つと、公認会計士(キツネ)のもとへ足を運ぶのだ。

キツネは実に親切で、3匹のこぶたたちに会計の“イロハ”を丁寧に教えてくれる。会計の基本「複式簿記」とは何なのか、「借方・貸方」の考え方や覚え方など、読んでいて頬が緩むくらい優しく解説してくれる。

3匹のこぶたは、クルマが好きだということで、自動車販売の会社を設立することに。そして後半には童話でお馴染みのオオカミ(ライバル会社社長)も登場する。オオカミは彼らよりも安価で、大量にクルマを売りさばいていく。顧客を失った彼らは、ライバル会社の調査を始めることに。

物語を読み進めていくと、“古い態勢で経営が困難な、実存する会社”を如実に映し出しているようで面白い。肩書きだけはしっかりしているが、社長と営業部長は実質働きが悪かったり、保身に奔走したりする。設立から、経営、販売まですべて現場の役者が抑えていることからも頷ける。

本書は、可愛らしいイラストとともに、楽しく理解していける会計の良書といえる。勤めている会社の経営状態や体力を把握するためや、これから起業を考えている人など、「会計」を知るべき必要を感じている人は、本書を一読することから始めるのもいいだろう。

日本の優秀企業研究

【著者】新原浩朗
【発行】日本経済新聞社 【発行年月】2003年09月25日
【本体価格】1,800円 【ページ数】319p 【ISBN】4-532-31086-5

うまくいっていない企業の場合は、コンサルタントなどの他人の意見の無批判な導入や同業者のまねが多く、良いところのみ取ろうとして、かえって継ぎはぎになってしまう。

本書 P99 より抜粋

企業の「原点回帰」。これが本書の根幹にある。

今の日本を背負う多くの大企業の創業者は、これまでに、事業推進の中で企業の「本質」を経験的に学習してきたという。そして、その学んだことを時代環境に合わせて、具体的な経営の「形」を作り上げてきたのであると。逆に現在、あまり成果のでない企業はどうなのだろうか。

それらの企業は、長期不況の中、生き残りをかけて「米国式」と呼ばれるいろいろな新しい「形」を導入し始めている。カンパニー制や執行役員制、成果主義に基づいた従業員評価制度など。確かに「形」の上では変革を遂げたように見えるかも知れない。が、肝心の中身「本質」は変わっただろうか。

本書で著者は、財務データによる企業のサンプルを抽出し、中長期にわたり構造的に競争力のある「優秀企業」と、うまくいっていない企業との相違を明らかにする。内容は、仮説に対する証明という論法ではなく、あくまでデータに基づく結論を述べるというスタイルなので読んでいて理解しやすい。

優秀企業に共通的に観察できる特徴で、そうでない企業とを区分する条件は6つあるという。第一の条件は「わからないことは、わけること」。企業の経営者が自分でわかっていない事業を、自分の責任範囲の事業として手がけてはいけないのだという。

調査の結果、社長がわかったふりをして経営しているケースが最も成果が悪かったのだそうだ。合併や統合というボヤけた繋がりを持たず、事業売却を含めて完全にわける。優秀企業はあるコンセプトの塊になっていて、その経営者は自企業について、そのコンセプトを明確に説明できるのだという。

そう、だからこそ企業のトップ経営者には現場感覚が非常に重要なのだ。優秀企業の経営者は、自企業が取り組む事業の範囲を明確に認識し、わからない事業には手を出さない。そのためには企業組織のヒエラルキーが重層ではなく、従業員との関係を保つフラットな構造であるべきなのだろう。

このように本書では、優秀企業に見られる特徴を、該当する企業約30社を紹介しケーススタディを交えながら丁寧に解説していく。他の5つの条件においても、我々が忘れかけていた本来の企業の在り方を掘り起こしてくれている。

優良な成果につながる「経営者の普段着の現場感覚」、「修羅場経験による後継の育成」、「自発性のガバナンス」とは何なのか。企業の持続的な競争優位性を獲得するために、本書の示唆する内容を愚直に吟味して頂きたい。「日本発の経営学」を、ぜひ一読することをオススメする。

ドキュメント知財攻防

【編者】日経産業新聞【発行】日本経済新聞社
【発行年月】2003年08月22日
【本体価格】1,500円 【ページ数】355p 【ISBN】4-532-31070-9

今、「攻防」が起きている。音楽、アニメ、書籍、ゲームなどコンテンツという知的財産の権利のコントロール(支配)を巡り、様々な対立が表面化している。

本書 P4 より抜粋

デジタル技術が台頭し、コンテンツに対する注目が高まってきた。コンテンツはメディアで流通するが、かつては書物くらいしかなかったメディアは、インターネットやDVDなど、様々な形態に多様化している。ネットもパソコンだけでなく、携帯電話や携帯情報端末へと細分化している。

これにより優れたコンテンツを生み出す者が、莫大な富を獲得できる時代が始まった。そして「知財」を、いかに生み出し、いかに活かし、いかに守るか。その「攻防」もまた、始まったのだ。コンテンツ優位の時代に企業戦略はどうあるべきなのだろうか。

本書は、2002年4月から日経産業新聞で連載してきた「知財攻防」をベースに担当記者が大幅に加筆・修正し、一部書き下ろしたものだ。本書によると、今はコンテンツ業界の支配権が揺らいでいるのだという。デジタル技術の登場でコンテンツの著作権がコントロールできなくなっているのだと。

確かに、音楽はパソコンで自由に複製されネット上を飛び交う。ブロードバンドの普及で映像もまた然りだ。また、アナログの世界でも新古書店の流行で、新刊本で出たばかりのコミックが安値で手に入る。その結果、レコード会社や映画会社、出版社の売れ行きが鈍化し、実入りに影響している。

それに対抗する動きも出ている。

音楽業界は、パソコンを使った音楽CDのデジタルコピーを防ぐ新技術を導入した。コピーCDを作ったり、インターネットで楽曲ファイルを交換する動きを、音源であるCDの元から断つ狙いだ。日本では2002年からエイベックスが導入した「コピーコントロールCD」なるものだ。

これを巡って業界が揺れ動く。日本レコード協会は、著作権保護のため、音質が劣化しないデジタル方式の音楽複製した場合、CDの売れ行き悪化の原因とし補償金を徴収すると主張。一方CD・ビデオレンタル業界は、売れ行き悪化の原因ではなく、レコード会社の販売手法に問題があると反論する。

本書ではさらに、アーティスト側の権利保護を考慮した新しい動き、映画館や喫茶店などで流れるBGMに関する問題点、ネットラジオ局と音楽ソフト業界の対立、急成長中の着メロ市場の動向まで記載し、様々な立場の見解を紹介する。

この他にも、書籍に関する著作権侵害、アニメやゲーム、アイドルの権利を巡って様々な論争を紹介している。著作権を巡って、果ては将来の文化創造を守ることを考慮すると、コンテンツ業界から目が離せなくなる。デジタル時代のビジネスモデルのあり方を、一層考えさせられる一冊だ。

ウケる技術

【著者】小林昌平・山本周嗣・水野敬也【発行】オーエス出版
【発行年月】2003年07月31日【本体価格】1,500円
【ページ数】215p【ISBN】4-7573-0178-2 C0033

自分の欠点をかばうのではなく、それすらも笑いのきっかけにできるというポジティブさ、これがウケる人のスタンスなのです。

本書 P113 より抜粋

まず最初に断っておこう。この本、ごく普通のビジネス書ではない。いや、ビジネス書という範疇に入れてしまってはいけないのかもしれない。しかしビジネスの現場で、役に立ちそうな一冊であるとも言えるのだ。まさに「書評者泣かせ」の一冊である。

面白い人の周りに人が集まってくるのはなぜか。それは言うまでもなく、楽しい時間を享受できるからだ。では、面白さとは何か。それは自分にとっての「意外さ、新鮮さ」から成るものなのだろう。言葉選び、声の大きさ、話し方、体の動きなどをTPOで使い分けているのだと思われる。

「ウケる人」は常に2、3歩先を(無意識かもしれないが)想定して会話を作り上げてくるのだ。場に即した「笑い」は人間関係を豊かにする。ことビジネスの現場でも、楽しく仕事がしたいと願う人は多いはずだ。顧客や上司と上手く付き合えない、と悩んでいるのではないだろうか。

コミュニケーションに関する書籍は数多く見かける。しかし、あらゆるコミュニケーション本を見回しても、これほど「笑い」という強力なツールに特化した書籍はないだろう。本書を読むと「ウケる人」のコツがわかる。

「ウケる人」になる為には、「ツッコミ」の本質的な理解から始める必要がある、と冒頭から生真面目に書かれていて、読んでいても思わず顔が緩んでしまう。しかし内容は真剣そのもの。普段テレビで見る「意味わかんねーよ!」などと乱暴に言うだけの、表面的なイメージではまだまだ甘いらしい。

例えば、上司が救いようのない“サムい”冗談を言っても、「あなたは今、面白いことを言った。そのことを私はよく理解していて賛同していますよ」というアピールが重要なのだという。

そして、「あなたは面白い」「あなたはこれこれという点で面白い」、さらに「あなたは気づいていないかも知れないけど、今こんなにも面白いことを言った」というように、表面上は攻撃的なトーンであっても、相手が「面白いことを言っている」部分を拾ってあげる気持ちが重要なのだと。

そう、「ツッコミ」とは「相手を立てる」サービス精神、曰く「ツッコミサービス」でなければいけないのだという。

本書はこのように、個人のセンスに依拠しがちな「笑い」という高いハードルを乗り越え、体系化している。「ロジカルシンキング、問題解決法、説得術」など、いわばハードなスキルに対しての「対人力、ヒューマンスキル、人間関係のスキル」というソフトなスキルがギッシリ詰まっているのだ。

本書には、様々なケーススタディ(会話内容)が載っているが、笑いの質は概して“今っぽい”。“シュール”な笑いを、分解してかなり丁寧に解説している。これで手強い上司やクライアントでも上手く立ち回れるのでは、と自信がつくかも知れない。一読をお勧めする。

顧客第2主義

【著者】ハル・ローゼンブルース、ダイアン・M・ピータース
【発行】翔泳社【発行年月】2003年08月08日
【本体価格】2,200円【ページ数】365p【ISBN】4-7981-0388-8

あらゆる企業は関心事の順位に基づき経営される。当社の場合、社員、サービス、利益の順である。会社は社員を重視する。そして社員は顧客へのサービスを重視する。利益は最終結果である。

本書 P35 より抜粋

ビジネスマンの、自分が勤める会社への忠誠心や仕事への意欲のなさをよく耳にする。退職や欠勤、無関心、無気力など、様々な弊害は企業の生産性を下げ、市場での競争力をそいでいるようにも見える。なぜ、仕事によって多くの人は、精神的に追いつめられてしまうのか。

本書には、明快にその答えが書かれている。原因は職場が幸福でないからだと。もっと多くの企業が、社内政治や社会的イメージ、利潤追求にかけるのと同じくらいの注意を社員に払えば、それは改善されるのだという。利潤は職場の幸福から自然に生まれる。だが、その逆はないのだと。

一日の大半の時間を過ごす会社。そこでストレスを溜めて家路につく。家族とも上手くコミュニケートできない。それも相まって憂鬱な精神状態のまま出勤する。これでは仕事がはかどるわけがない。だったら、会社が楽しければ良いではないか、ということだ。

企業は顧客に対し、最高のサービスを追究する。当然ながら、顧客があってこその利益だ。しかし、著者が育てた旅行代理店ローゼンブルス社は、彼らの顧客を「二番目」と位置づける。そう、ローゼンブルス社は、自社で働く社員を第一に優先する環境を作り上げているのだ。

理由は簡単だ。顧客にサービスを提供するのは社員で、最高レベルのサービスは心から生まれる。だから、社員の心をつかむ会社が最高のサービスを提供する、ということなのだ。本書には、ローゼンブルス社の社員に対する様々な「職場の幸福」システムが記載されている。

まず、採用は人柄の良い人材しか採らない。人柄は成果に比例すると。そして入社すると、「ランチタイム学習」など様々な研修が用意されている。そこには必ず「楽しさ」が存在する。変化という刺激を常に与え、社員に飽きさせない毎日を確立しているのだ。

しかし、仕事には必ず顧客が存在する。「ウチにはウチの事情があるし…」と悲観してしまうかもしれない。ビジネスには様々なしがらみが存在し、一人の力だけではどうにもならないことが多い。しかし、それは改善できる。その術を知った人が立ち上がればいいだけのことだ。

本書は単なるローゼンブルス社の成功物語ではない。一企業に成功をもたらした要因と、自分のビジネスに様々な形で応用できるアイディアをまとめた参考マニュアルなのだ。従属的な働きでは将来必ず「余分な社員」になってしまう。だからこそ本書を読んで決起して欲しいのだ。お勧めの一冊。

なぜ企業はシェアで失敗するのか!

【著者】リチャード・ミニター 【発行】日本経済新聞社
【発行年月】2003年08月08日 【本体価格】1,600円
【ページ数】237p 【ISBN】4-532-31069-5

利益リーダーが市場リーダーになる例はそれなりに見かけるが、市場リーダーが利益リーダーになることはめったにない。

本書 P138 より抜粋

経済が低迷する中、企業は勝ち組を目指し奔走している。買収や合併を繰り返し、規模の拡大で何とか顧客を増やそうと試みる。生き残るためには何が重要か。当然利益を上げることではないか。無論、誰もが理解していることだ。しかし正確には、理解している“つもり”だったのかもしれない。

企業を成長させるためには「市場シェアを築くこと」だと主張する経営者は実に多い。市場シェアの伸びは、長期的な利益成長につながる。その分野で最大手になれば、莫大なサービス収入が得られるようになるという思い込みがある。これこそ間違った常識なのだと、著者は看破する。

先に言っておくが、これは未来の話ではない。今までも、この常識に囚われた企業の多くは成長を鈍化させ、業界から撤退するなど悲惨な結果を残しているそうだ。少なくとも企業の経営者は、自分たちがシェア追求戦略を選ぶ理由、あるいは、選ばない理由を知っておくべきなのだ。

本書では、市場シェア追求の理論がほとんどの業界で全く役に立たないことを示す。これまで市場シェアを追求してきた企業の実例を列挙し、市場シェアの大きさがもたらす「優位」、この無意味さを証明していくのだ。生き残りをかけ、どうすれば利益リーダーシップ企業となれるのかを紹介する。

まず、シェア追求戦略の実際はどうなのか。「アマゾン・ドット・コム」の売上高は、世界のどの書店よりも多いだろう。言うまでもなく、アメリカ国内最大のオンライン書店だ。ただ、市場シェアは7年間伸び続けているのにも関わらず、2002年1月まで一度も利益を計上しなかったそうだ。

実は、このようなケースは山ほどあるのだという。大手企業が、市場シェアや他社を上回る規模を活かして、非常に大きな利益を稼ぎ出している実例を探すと、それとは正反対の結果が出てきたのだという。

本書には、驚くべきデータが載っていた。「70%以上のトップ企業は、収益性では首位ではない」というのだ。市場シェアと利益に関する従来の常識をこっぱみじんに打ち砕くものだ。他の約30%の企業は、「利益を追求した結果、市場シェアでもトップになった」ということだった。

いかがだろうか。少なくとも業界のトップシェア企業が、必ずしも安定した利益を計上しているという固定概念は消え失せるだろう。どういう方法で業界のリーダーシップを握るか、その全貌を本書でご覧いただきたい。少なくとも企業マネージャーは、その論拠を知っているべきなのだ。

数学で身につける柔らかい思考力

【著者】ロブ・イースタウェイ ジェレミー・ウィンダム
【発行】ダイヤモンド社
【発行年月】2003年06月05日 【本体価格】1,500円
【ページ数】206p 【ISBN】4-478-82008-2

なぜ月曜日はすぐにやってくるのか?
うわさ話と伝染病はどこまで広がるのか?
なぜ天気予報は当たらないのか?
画像データはなぜ圧縮できるのか?

本書 見返し より抜粋

「論理的…」、「図で…」など、思考力を身につける書籍は最近多く見かける。しかし、今回紹介するのは「数学」を意識した思考力本だ。

学生時代、苦手だった数学に対して「将来、絶対必要のない学問」と、自分に言い聞かせていたことを思い出す。「円の面積、関数、確率」など、考えただけで、頭痛がする人も多いことだろう。それは当時の数学の授業が「成績表のための数学、テストのための公式」だったからだ。

現在は、少しずつその点は改善されてきているようだ。数学を抽象的な理論からではなく、日常生活に関わる現実的な例から始めなければいけない、ということが、周知のこととなってきている。数学の抽象的な概念は、馴染み深い場面に当てはめてみないと、多くの人は理解も納得もできないのだ。

本書の内容は、「どうすれば理想の結婚相手を選べるか」「絶対にヒットする曲を作る方法」「なぜ月曜日はすぐにやってくるのか」などの16の疑問を、数学的アプローチで掘り下げる。ここでは、「理想の結婚相手」を選ぶ数学的方法を紹介しよう。

例えば、年間10回のデートが出来るお見合いクラブがあったとする。そしてこちらがプロポーズしさえすれば、必ずその人と結婚できる設定とする。10人のうち1人が最高の相手で、1人が最悪の相手となる。最高の相手と結ばれる確率は10分の1だ。一度断ったら後戻りはできないものとする。

だが10人に会う順番は分からない。ここでは、最初にあった人に決めてしまう方法は賢くない。当然他の人と比べたいところだ。1つの方法として、最初の相手をまず断る。残りの9人から、最初の人より良い相手を選べばいい。これで10分の9の確率で最初の相手より良い人と結婚できるだろう。

だが、最初の相手が最高の相手だったらこの作戦は失敗だ。それなら、基準にする人を増やせばいいという。初めの3人とまずデートをする。その後、その3人の誰よりも高得点だった最初の人にプロポーズをするという方法が数学的に最適な方法だというのだ(詳しくは本書を参照して欲しい)。

いかがだろうか。数学の授業が盛り上がることは間違いないだろう。本書の内容は単に、これらの疑問を解決するためだけのものではない。本書で数学的意識を高めていくことで、普段の生活に、ひいてはビジネスに応用できることを期待しているのだ。読み物としてもかなり面白い。オススメの一冊!

経済学思考が身につく100の法則

【著者】西村和雄【発行】ダイヤモンド社
【発行年月】2003年05月29日【本体価格】1,800円
【ページ数】170p【ISBN】4-478-21043-8

本書で養う経済学的思考は、社会問題のみならず、人生のあらゆる問題の解決方法を考えることにも適用できるのである。

本書「はじめに」より抜粋

景気の悪さに不満を漏らす我々だが、実際、その打開策として何をすればよいか。政策に何を求めればよいのか、経済の断片的な知識だけでは想像できない。結局、無関心のまま“お上”に任せてしまう。何となく生活できている「豊かさ」に危機感を感じることができないのかもしれない。

本書では、経済学は、社会と経済の問題を解決するために必要な思考力を養うのに、有効な学問と位置づける。身の回りで起こっている事象を、敏感に感じ取ってもらいたいというのがテーマだ。

一例として、日本の経済の現状を紹介する。

バブル崩壊後、不況が続く。税収が減少する一方で景気対策として公共投資を行うために、政府は国債を発行してきた。現在国債の発行残高が360兆円に達し、国と地方の債務を合わせると600兆円を超えているという。

その中で、必要性の低い高速道路などの建設に使われる、従来型の公共事業に対する批判も高くなってきた。不必要な公共投資の需要拡大効果は、その年限りに終わってしまう。そう、もっと波及効果の高い、将来の生産性を向上させ、新産業を産む公共投資に変えていくべきだ、ということなのだ。

デフレでは、物価が下がっても借金の価値は下がらないから、負債のある企業の負担が重くなる。賃金は下がりにくいので、企業はリストラで社員の数を減らし、失業者が増える。現在の日本が陥っている状況だ。

さらに、これを放っておけば、国内全体の需要は落ち込み、物価がまた下落する。企業の収益が悪化し、不良債権が増加する、リストラで失業者が増える、需要が減る、物価がさらに下がるという、デフレ・スパイラルに落ち込んでいく、といった具合に、総体的な流れもやさしく解説する。

本書はタイトル通り「経済学思考を身につける」本。さまざまな経済理論を「100の法則」として紹介することで、我々の学習意欲を喚起する。平易な文章でまとめてくれていて、練習問題までついている丁重さだ。

本書を読むことで、我々は日々の経済のニュースの背景には、どんな本質が隠されているのかが見えてくるだろう。ビジネスマンにとって必須の経済用語、公式、定理を厳選し紹介している。

本書の中身を知っておくことで、直接的な仕事に役立つことはないかもしれない。が、社会の流れを知ることは、やはり仕事にとって、とても必要なことなのだ。その大切さを知る人も、実は、とても少ないのだ。

デフレ生活革命

【著者】榊原英資【発行】中央公論新社
【発行年月】2003年06月25日【本体価格】1,400円
【ページ数】241p【ISBN】4-12-003413-5 C0033

大切なのは、私達の直面する問題が、構造的・制度的だと認識することによって、私達の行動様式や企業の戦略、政府の政策を変えていくことなのです

本書 P74 より抜粋

21世紀に入って、いよいよデフレ(継続的物価の下落)に歯止めが利かなくなってきた。多くの政治家やアナリストは、デフレを政策によって逆転することができるはずだ、と論じているが、本当に可能なことなのだろうか。

そもそも、国際的秩序、国や企業のあり方、個人生活のすべてが激変する可能性のある大改革を4、5年で完成できる訳がない。何か歴史的な大改革でもしなければ、日本経済は回復へと向かうことは難しいのではないか、というのが、本書の問題提起だ。

ただ単に指をくわえて「バブルよ再び」といったインフレ待望論では、問題は決して解決しないだろう。本書では、世界の経済情勢や宗教観などを把握しながら、日本の経済や生活体系の今後を推論する。

まず、資産価格が下降続きの現状で我々は何をすべきか、著者は提言する。「資産は出来るだけ持たない方がいい」と。多くのアナリストたちが底値だと、買いを勧めてきたが、投資家たちは裏切られてきた。90年代の企業経営や経済政策の最大の失敗は、資産価格の見通しを誤ったこと、だという。

構造的インフレ後、構造的デフレの時代に転じた現在、資産価格は下降する傾向があるとの認識を持つべきと進言する。そう、素人の投資家が大した企業情報もなく、ただ証券会社の勧誘に従って株で儲けるなどという時代は終わったというのだ。また著者は、無駄な資産を整理することも勧めている。

例えば、別荘を持つことが一時ブームになった。十分な所得がある人には問題ないが、普通のサラリーマンが無理をして買っても大変なだけで、しかもそれが銀行ローンでということになると厄介だと。当面地価が底を打つ気配を見せない現状では、所有すること自体危険なことなのだと看破する。

借金をして住宅等の有形資産を持つことは、少なくとも今後、経済的には極めて不利になる可能性が高くなってくるということなのだ。確かに、我々はこれまでその時代に見合った生活を送ってきたが、一時富を掴んでしまったことによって、後戻りできない生活体系になってしまったのかも知れない。

さらに本書では、これからの会社のあり方、賃金体制の問題、労働の意義や自然・環境の限界説にまで踏み込んで、我々に「新しい生活のススメ」を指南する。経済の将来を世界的規模で、論理的に考察する本書は、いま読むべき一冊なのかもしれない。

野球と銀行

【著者】木村剛/二宮清純【発行】東洋経済新報社
【発行年月】2003年07月14日【本体価格】1,600円
【ページ数】260p【ISBN】4-492-39404-4

金融行政にしろ、野球にしろ、それが存在しているのは、いったい誰のためのものなのかという点をまずは考えなければなりません。

本書 P58 より抜粋

大手銀行における資本不足が明らかとなり、公的資金注入の対象になったという衝撃が走ったのは、つい最近のことだ。「ルールを勝手に変えるな」という批判も続出。だが、本書の著者木村は「そもそも銀行側は、ルール通りにプレーをしているのか」と、疑問を投げかけることから、本題は始まる。

そこで、他方の著者二宮も近年失敗続きの「プロ野球」にも共通するところがあるという。「一見何の関係もない2つのジャンルの共通点を探っていくことで、日本が失敗してきた理由が掴めるかもしれない。そして今後の方策を模索できる可能性もある」という、2人の対談の記録が、本書である。

両者とも「銀行」と「プロ野球」は、このままでは弱体化していくことは目に見えているという。原因は、裁量権を持つトップ陣営がフェアプレーをしないからだと。そこで挙げられるのが「ルールの定義」だ。ルールとは誰の為のものなのか。まずはそこから議論していくことになる。

アメリカのメジャーリーグは、細かいルールをよく変えるという。例えばストライクゾーンも昨シーズンから時間短縮のために、高い球も取るようにした。理由の1つは「アメリカのベスボールはファミリースポーツで、長時間の試合は、帰宅時間が遅くなるのでファンに嫌われる」からだと。

これで打撃戦が少なくなり、平均試合時間が20分短くなった。それをマネして日本もルールを変更した。しかしここからが問題だ。「それでは打者が不利になるではないか」という反対論しか出てこなかったのだ。そう、日本には“野球といえども興行”という認識をもてないのが危険なのだという。

利用者の視点に立てないのは銀行も同じらしい。2001年末に石川銀行が破綻した。その少し前にその銀行は第三者融資を行った。自分達の赤字を誤魔化すためにだ。何も知らない高齢者や債務者に自分達の株を売りまくり、その後、その株はただの紙切れになってしまったことは言うまでもない。

詐欺のようなものだと、木村は続ける。金融庁は事実を知りながら何もしなかったと。被害者が出ても「ルール上問題ない」で終わりだった。他の手段についても「ルールにない、前例もない」としか言わなかったそうだ…。

そう、日本にはルールを“信仰”し“利用”する思想がないのだ、と二宮は言及する。国民の視点でルールを作らず、自分達の視界でしか物事を考えられないようでは、今後の発展は期待できないものだと改めて気付かされる。

本書は、スポーツと金融という異なるジャンルのプロが「日本という病」の核心に迫り、提言する。2人の鋭い視点は、読者をグイグイ引き込んでいくだろう。とにかく、面白い一冊なのだ。

「クビ!」論。

【著者】梅森浩一【発行】朝日新聞社
【発行年月】2003年06月30日【本体価格】1,200円
【ページ数】221p【ISBN】4-02-257849-1

外資系企業では、クビは日常茶飯事。長く勤めていれば、誰もが経験していることです。だから、クビはクビでも、一般的に日本人が思い浮かべるイメージとは、いささか趣が異なります。
本書 172P より抜粋

バブル崩壊後、相次ぐ大企業の倒産劇が続いている。自己資本ではどうにもならなくなった企業は、合併や買収で何とか生き残ろうと必死だ。そこで企業経営の第一の負担となる人件費の削減に目を向けられることとなった。もはやリストラの“波”は他人事ではなくなってしまった。

本書の著者はまさに“クビ切り”の請負人であった。外資系企業の人事部長として通算1000人という社員を退職に追いやった張本人である。クビを切られる方は当然難事ではあるが、切る側も相当のストレスと葛藤に見舞われ、ポリシーをもって臨まなければなし得なかっただろう。

本書は単純に“クビ切り自慢”などという「つまらない内容」ではない。ここから学べること、それは「経営者として、社員として、プロフェッショナルであれ」という色彩が強く感じられる内容だ。それは本書で紹介している外資系企業と日本の企業を比較することで、明解となる。

そもそも終身雇用制度や年功序列型賃金などは外資系企業では考えられないことだ。完全なる実力主義。業績の上がらない社員は即解雇。当然ながら雇用側は雇われる人間を一人のプロとして扱い、雇われる側も“クビ”というリスクを覚悟して入社してくるという。

そう、外資系企業ではクビ切りは日常茶飯事のことなのだ。外資系企業で働くビジネスマンは個々人が自分の専門分野を伸ばし、どこででも通用する市場価値を持っているため、どこの会社でもやっていけるのだと。そして、自分に仕事が回ってこなくなった時点で、会社員としての引退なのだという。

一方、日本企業で働くビジネスマンは言うまでもなく組織的だ。新卒として入社後、いろいろな部署を経験させられ、一種のゼネラリストとして育成させられる。つまり、その企業内での特殊的なスキルしか身につかない。クビになり、他の企業に転職できてもまたゼロからのスタートなのだ。

日本企業はリストラをしても不思議なことに業績が上がらない。それはリストラに失敗しているからなのだと。著者は、日本企業の「整理解雇」にも疑問を投げかける。目先の業績をばかりに関心をもってクビを切っていては、いちばん大切な「持続する改革」に至らないのだということだ。

本書では、このように外資系企業と日本企業の体質の相違点を列挙し、我々に警告を投げかける。逆に「クビにならないためには」、「自分の存在価値を誇示するための方法」など、ビジネスマンとしてのミッションも同時に提示してくれる。ぜひ、一読することをオススメする。

ビジネス・セラピー

【著者】青木仁志 【発行】PHP研究所
【発行年月】2003年06月23日 【本体価格】1,600円
【ページ数】265p 【ISBN】4-569-62911-3

人間は、周囲の状況を完全にコントロールすることはできない。だから、どんなに成功をつかもうと努力しても、困難な問題に直面することがある。しかし成功のプログラムができていれば、必ず道を切り開いていくことはできる。
本書 3P より抜粋

トップセールスマンを育ててきた著者の経験をもとに、本書は、どんな職業の人にも成功を約束するノウハウを結集したものだ。この講座を経て成功したビジネスマンは、決して人一倍才能があったわけではない。だから誰でも成功できることを確信した内容なのだ。

仕事を楽しみながら成功を収めるということは、単に大金持ちになるということではないはずだ。何億稼ごうが、本人の意思と反するものであれば何の意味もなさない。本人がいちばんよくわかっているはずだ。「自分はどうありたいか」ここから本書の“セラピー”は始まっていく。

熱い情熱や思いを、あなたの原理原則にのっとった思考によって「質化」させる。成功を収める為にはこの作業が不可欠なのだという。質化とは「願望を明確にする」「目標を設定する」「プランを立てる」ことだ。大切なことが見えてくれば、そうでないものも判別できる。

どうでもいいことを排除していくと、本当に大切なことに突き当たる。ここが肝なのだと。「思いの種をまき、行動を刈り取り、行動の種をまき、習慣を刈り取り、習慣の種をまいて、成功を刈り取る」といった流れだ。

そこで、どんな仕事にも共通する原理原則とは「人の役に立つ」ことだ。役に立たなかったら代価をもらえるわけがない。その原理原則をおさえたら次は積極思考だと。しかし誤った解釈で突き進んではいけない。

例えば、新規事業をやるには3つのポイントがある。統計、調査、計画だ。問題は計画にある。事実は一つだが、解釈は多数あることだ。勝手な思い込みで計画を立ててはいけないのだという。間違いを認めずに最後まで行ってしまうと積極思考はかえって仇になるということなのだ。

さらに本書のウリは約100頁にも及ぶ成功へのプログラムにあるだろう。「なぜ、あなたは成功しなければならないのか」。ここで思い浮かべることは「人生で大切なこと、誰が喜ぶか、誰を守れるか、成功するのがあなたでなければ行けない理由」などだ。成功するための障害を明確にすることだ。

このように、本書にはここでは紹介しきれない程の成功へのエッセンスに、著者自信の経験、成功をつかんだ数々の人たちのインタビュー事例がギッシリ詰まっているのだ。“成功と幸福をつかむために”本書を一度手に取ってみてはいかがだろうか。

インナーワーク

【著者】ティモシー・ガルウェイ 【発行】日刊スポーツ出版社
【発行年月】2003年06月02日 【本体価格】1,500円
【ページ数】398p 【ISBN】4-8172-0224-6

もっと明るくとか、プラス思考で、などと強引なやり方で気分を変えようとする前に、まず自分の知覚力(意識)に、感じ取るチャンスを与えてはどうだろうか。感じ取ること自体に、実は自然治癒力(自修作用)が含まれていることに驚くはずだ。
本書 184P より抜粋

様々な「ビジネスのハウツー本」的な書籍が流布しているが、本書に出会えたことはある意味ラッキーだったかも知れない。ビジネスマンにおける仕事への考え方を見事に覆し、これまでの「常識」を完全に裏切ることになる。

本書は「集中力の秘密」を分りやすく解説し、世界のスポーツ心理学の応用分野で高い評価を得た「インナーゲーム」理論を、ビジネスの分野に移植したものだ。マニュアル通りのプラクティスではプレイヤーは往々にして成果を挙げられない。それは、人間の本能に起因しているのだという。

例えば人間にとって「売買」は古くからの普遍的な行為だ。上手に売る方法としては数多くの本や研修コースが作られてきたはずだ。しかし著者はここで意外にも、まず5歳児の例を挙げて解説する。

「5歳児はモノを売るのが上手い。両親に欲しいものをなんでも買わせてしまう。買い手と親しい関係を作り上げ、反対されても、相手の弱味を知っていたり、もう一方の買い手にアプローチするなど実に創造的だ。」そう、彼らは「あきらめ」を知らない。

なぜ、彼らはこの技術を会得できたのだろうか。

子供は、セールスのやり方を身につける為に、当然だが「仕事」とか「お勉強」はしていない。欲しいものを手に入れる方法を自然なプロセスの中で体験的に学び取っていく。明確な目的意識をもった5歳児は、自分への自信と希望に満ちそこへ注意を集中し、言動をとっているのだというのだ。

簡単な例を挙げたが、要は「輝かしい結果を得る為には、注意力を一つに集中すること」に重要性があるようだ。

人間が内側にもっている能力は、妨害因子さえゼロならそのまま100%発揮されるのだという。裏を返せばわずかな自信のなさ、誤った推測、ミスを恐れる不安感などがパフォーマンスを大きく妨げているのだと改めて著者は主張する。

このように、本書では具体的な実験や実例を挙げながら、セールスの現場や顧客対応、組織改革の問題点とその対処例を具体的に提示する。さらに人材開発や従業員の意識改革に試行錯誤する企業経営者や管理職にとっては、格好の手引書となるだろう。

副業生活のすすめ

【著者】川村亮 【発行】かんき出版
【発行年月】2003年04月21日 【本体価格】1,400円
【ページ数】219p 【ISBN】4-7612-6087-4

副業は、本業では得られなかった世界を見せてくれるものであり、本業ではできなかったことを実現させてくれるものでもあります。副業で得た体験や知識は、あなたの人生を豊かにしてくれます。
本書 4P より抜粋

あなたは、自分の会社がこの先ずっと安泰だと信じてはいないだろう。なぜなら、この先、何が起こるか想像ができないからだ。ちょっとした大企業でさえ、吸収や合併を交え、生き残りに必死なのだ。減量経営で、いつ自分の身に降り掛かるやもしれない「リストラ」の文字・・・。

そんな状況だからこそ、本書で紹介する「副業」という概念を頭に入れておくとよいかも知れない。本業がうまくいかなくなった時、副業が順調ならその分不安も少なくなる。何より好きなことをできるのが、副業の醍醐味だろう。失敗しても副業は副業。本業を軸にして働けばいいのだという。

著者が主張する副業のポイントは、働き過ぎないこと、収入をあてにし過ぎないこと、会社にバレないこと。そして、安易にサラリーマンを辞めようとしないことだ。本書では各ポイントの詳細を解説しているが、サラリーマンであることの特権を、堅く保持することを強く推薦している。

サラリーマンのメリットとは、給料という定収があること。金銭面で長期的な計画を立てられる。しかし、副業は成功した分収入は増えるが、万が一病気などで入院でもしたら、事態は急変する。つまり、定収や休職手当、労災など特権を享受できるサラリーマンを辞める必要はないということだ。

ゲーム感覚で、好きな仕事を楽しむ副業と、核となる本業を上手く使い分ける。このバランスを守り、建設的で豊かな社会生活を送ろう、というのが本書の幹なのだ。

しかし、本書の“ツボ”は意外なところにあった・・・。

副業生活の「内緒話し」的な要素も実に充実していたのだ。会社にバレないための副業パートナーの選び方や、住民税の納付方法、取引先の選定、顧客の管理方法など、著者の実体験に基づいて、リアルに解説してくれている。

特に、副業を始めるサラリーマンの多くが悩む「確定申告」については、丁寧にポイントを押さえてくれている。副業所得のあった通知が、会社に届かないようにする方法や、夫婦で事業を展開する時、配偶者特別控除を意識した入金方法の分け方など、かなり突っ込んだ内容も網羅している。

本書を機会に、1ヶ月分の飲み代やタバコ代を稼ぐ程度の、軽い“ノリ”で副業を考えてみてはいかがだろうか。社内にいては経験できない出会いや、知見を広めることができるだろう。本書は「人生をより豊かなものにする」方法として、副業を提案する。オススメの一冊だ。

スイス銀行体験記

【著者】野地秩嘉 【発行】ダイヤモンド社
【発行年月】2003年02月27日 【本体価格】1,500円
【ページ数】216p 【ISBN】4-478-62056-3

□実際に1500万円でスイス銀行に口座を作った著者のリアルな体験記
□超一流プライベート・バンクの運用と相談の具体的な中身が初めて明かされる!
本書 腰帯 より抜粋

2002年、民間の格付け機関ムーディーズ・イノベーターズ・サービスが日本政府の円建て債務格付けをAa3からA2へと2段階引き下げた。これは解釈のしようによっては、海外の人たちは「日本政府の借金返済能力の行く末を心配」しているとも考えられる。しかし、それに対して財務省は「ムーディーズは許せん」と拳を振り上げた。

彼らは、歴史上、こんなに借金を増やした国はない、と忠告してくれているのにである。今後日本は、非常時の経済対策を採用するしかない、我々は非常時を想定し自分の資産を守り、運用していかなくてはならないと、本書の著者は強く説く。

そして、筆者は思いもよらない話を始める。日本の資産家たちはすでに、自分の資産を、海外の、それも「プライベート・バンク」という、小説や劇画の世界にしかなかったような場所に、移転し始めているというのだ。日本のコマーシャルバンク(商業銀行)では危ないと…。

本書で紹介する「プライベート・バンク」は、個人客だけを相手にした銀行のことである。ある企業が100億を持ち込んで「取り引きしたい」と言っても、彼らは断る。欧米では銀行の役割が明確になっているのだ。そう、まだ日本には純粋なプライベート・バンクは存在しないということだ。

プライベート・バンクの大きな特徴は5つ。

1.あくまで個人資産家の財産を長期的な管理・運用に特化する。
2.いくつもの国に支店を置き、国がなくなるリスクまで想定している。
3.系列金融機関の金融商品の押し売りはしない。
4.簡単に取り引きできるわけではない。客の身元を厳しくチェックする。
5.客の秘密を守る。それが国の法律で縛られている。

本書は、著者自身と客が体験したプライベート・バンクのリアルな姿が載っている。著者は今回の取材を通して、お金持ちではない人がお金持ちになる種を見つけることができたという。だから現在お金持ちでない人が読んでも本書は役に立つだろう…。

資産・金融関連の書籍の多くは、専門家が書いているため難解な専門用語や読解するのに苦労するものばかりだ。本書は平易な文章で読みやすく、ドキュメンタリー形式で構成され、読むものを飽きさせない。

近い将来、外見ではわからない、プライベート・バンクに口座を開き、マネー・コンシェルジュを使いこなす人が、微笑する姿が目に浮かぶと、著者はいう。プライベート・バンクが、ある意味で「究極のブランド」になる日はそう遠くないだろう。オススメの新刊。

消費の正解

【著者】松原隆一郎/辰巳渚【発行】光文社
【発行年月】2002年12月20日【本体価格】1,300円
【ページ数】307p【ISBN】4-334-97370-1

ブランド財布に5万円と温泉旅行に3万円…成熟した消費はどっち?ランキングに入ったものをつい買ってしまうのは悪い習慣?トイレットペーパーに花柄がついているとお得?新商品・新発売に惹かれてしまうのはどうして?
本書 見返し より抜粋

最近良く思うことがある。私たち「消費者」は、なんだかバカにされているんじゃないかと。店頭には「流行りモノ」ばかり並び、それを「買わされている」感じがして仕方ないのだ。例を挙げればペットショップ。今並んでいるのは「チワワ」ばかりという有様…。

そもそも「消費」とは何なのだろう?「消費者」とは一体誰なのか?という疑問に迫っていくのが、本書の狙いだ。多くの著書を残す、社会経済学者の松原隆一郎氏と、著書『「捨てる!」技術』で有名なマーケティングプランナー辰巳渚氏との対話形式で、本書は構成されている。

最初のテーマは、「エルメスで買い物をする人が、100円ショップでも買い物をするのはどう理解すればいいか」について語る。確かに、高級ブランドのバッグを片手に、100円のハンガーを大量に購入しているのを見かける。不思議といえば不思議な光景かもしれない。

そういう人たちは、エルメスで買い物をする時、「一生モノなんだし、60万円でも高くない」と言い、100円ショップでは「安いし、モノだっていい」と語る。筋が通っているようでいて、何か変だ。

そのような「消費者」を理解する場合、商品の「コストパフォーマンス」を考えると、話が良くわかるようだ。

「高くていいもの=ブランド品」「安くてもいいもの=100円ショップ」と、きちんと評価できる感覚を、最近の消費者は自然と身につけているのだという。「価格だけが価値じゃない」という考え方を、コストに対するパフォーマンスを、様々な軸で判断し、使い分けることで、自身が満足すると。

このように本書では、12回分のゼミナールとして、身近で素朴な消費の疑問を究明していく。その様子をライブ感覚で参加できるのも、読むものに飽きさせないつくりだ。各回、章末に「わかったこと」「読者への問題提起」として、まとめを確認することで、さらに理解も深められるのも有り難い。

本書を読み終えると、自分の「消費」に対する認識が変わるだろう。例えばコンビニでサラダを買う時に、ドレッシングが別売になっていることや、レジで「箸をお付けしますか」と聞かれることに対して、「生産者の」の意図が見えてきて、消費することに「クリエイティブ」を感じられるからだ。

最終章は、それまでの議題を踏まえてのテーマ『消費者は「バカ」なのか』という、派手なタイトルで読者を挑発する。豊富な知識と情報を併せもつ二人のディスカッションから、消費の深くを学ぶことができる。オススメ。

60分間・企業ダントツ化プロジェクト

著者】神田昌典【発行】ダイヤモンド社
【発行年月】2002年12月05日【本体価格】1,600円
【ページ数】354p【ISBN】4-478-37421-X

全国3800社を超えるクライアントの経験をもとに、成功する企業家の発想法・思考プロセスを伝授する。
本書 腰巻 より抜粋

新商品を売るために、会議室でダラダラと意見交換をする。皆の意見がバラバラで、結局権力のある人が勝ってしまう、という無鉄砲な戦略・無駄な時間を費やす会社が多いのでは…と、本書を読み終えた直後にそう思った。もはや「広告を出す」だけでは、モノは売れないのだ。

顧客の視点で戦略を考えろ、聞き飽きたフレーズだが、どうすれば「顧客の視点」で考えられるのかを、今まで誰も教えてはくれなかった。なぜか?それは誰も知らないからだ。

本書では、そんな疑問に「顧客を魅了することに焦点を絞る」ことで、革新的なアイディアが自然と見えてくるのだという。

本書は、「6つのステップと、それの関連する20のチャート」によって構成されている。圧倒的な競争力を実現するための戦略、それを作り出すためのノウハウがギッシリと詰まっているのだ。

例えば、2つの商品ラインがあり、どちらを販売しようか、というケース。「コンピュータ初心者用自習教材/コンピュータ中級者用自習教材」この2つを「ニーズ(必要性)・ウォンツ(欲求)分析チャート」にあてはめる。

まず、コンピュータ初心者は、自習教材のニーズは高い。同僚にゼロから教えてもらうのは迷惑をかけてしまうからだ。

さらに「学びたい」というウォンツもそこそこ高い。一方中級者は、ニーズはやや低い。人に聞くこともできるし、オンラインヘルプで解決できるからだ。ウォンツも初心者よりは強くはない。

以上をビジュアル化し、それぞれの位置付けを確認すると明らかに初心者用自習教材の方が販売しやすいことがわかる。確かに、各レベルにあった商品を大量に裁きたいところだが、売れ残るのはどちらであるか明白なのだ。

なるほど、これだけ見ても顧客を意識した商品戦略であることが伝わってくる。このような顧客視点のリアルな戦略が、本書のウリだろう。本書の視座視点を、普段から意識していれば、モノが売れていくしくみがわかり、ちょっとした感動すら味わえるかもしれない。

本来、著者はこの内容を高額の受講料を受け取り、セミナーで商売人に向け講義をしている。それがこの一冊に集約され、なにより本代だけで勉強できるのが嬉しい。著者もそれは陳謝している。数々の著書をのこす実践マーケッターの最新の自信作。一読の価値は十分にある。

会社に行きたくない人悩み相談室

【著者】ジェレミー・ブルモア【訳者】長島水際【出版社】朝日新聞社
【発刊年月】2002年10月05日
【本体価格】1,200円【ページ数】174p【ISBN】4-02-257790-8

上司がアルコール依存症になっているため、近ごろは彼をかばわなければならない機会がますます増えてきました。彼を裏切るようなまねはしたくないのですが、苦しい立場に追いこまれており、上司のためにつきつづけている嘘が、なんらかのかたちでわたし自身に跳ねかえってくるのではないかと心配しています。
本文 85p より抜粋

一切の悩みを持たないで、日々楽しく会社に通っている人は、一体どのくらいいるというのだろう。もちろん、全くいないわけではないだろうが、その数はとても少ないことは、容易に想像がつく。では、その悩みの原因となっているものは、職場における「何もの」なのだろうか。

筆者は、仕事に行きたくないと悩む人たちにとっての、唯一最大の問題は、仕事の本質ではなく、人間性の本質にあると説く。つまり、仕事上の問題の大半は、人間関係の問題なのだと。そして、その問題となる人間関係の悩みを「あら?」という視点から、解決に導いてくれるのが、本書なのだ。

同僚のひとりに、どうしようもなく癇にさわる男がいる…との相談が舞い込む。彼の意見は確かに悪くない。でも、声や態度が鼻につく。しかも、残念なことに、社長は彼のことを気に入っている様子。この同僚に対する偏見を無くすには、どうしたらよいのでしょうと。

筆者の回答は明快だ。あなたがいらだっているのは、彼の声や態度のせいではないはずだ。彼がいい意見を述べ、そして、社長に気に入られているからだと、まず喝破してしまう。その上で、相談者が、その「彼」にそんな態度を取らないでいられる方法を伝授している。

また、ランチタイムになると、銀行に行かなかったからなどと理由をつけては、小銭を借用する上司について悩む部下がいる(どこの国にもこんな人がいるもんだと笑ってしまった)。それに対して、筆者は、かけあって返金してもらうのが筋だけども、と前置きしてから面白いことをいう。

小銭をせびる欠点を補う取り柄、例えば、あなたをみっちり教育し、指導し援助してくれるなら、まあ、それは、授業料みたいなもんだと思えばよいじゃないかと。「気は持ちよう」ということが言いたいのだろうが、いやはやなんとも牧歌的な回答で、ビジネス書らしからぬところが面白い。

そのほかにも、オーナーが経費でジャガーを買ったんだが、どうさせればよいか?や、同僚が鼻が曲がるほど臭いので、その対処法を伝授して欲しい、はたまた、上司の娘が部下になったのだが、給料は高いは仕事は出来ないわで往生しているなど、様々な難問に、筆者は真摯に答えている。

本書は、突拍子もない質問が並び、割とラフな回答が並んでいるように見える。しかし、職場の難しい人間関係を解決するための糸口を、的確に示していることは、読めばわかる。そういえばあの人はこんな感じだなぁと、不思議と読み進めるうちに、浮かび上がってきたりするのだ。オススメ!

インターネット的

【著者】糸井重里【出版社】PHP研究所
【発刊年月】2001年07月27日
【本体価格】660円【ページ数】236p【ISBN】4-569-61614-3

「IT時代のビジネスモデル」を狙う前に、幸せ観、歴史観、世界観を宣言 しなかったら、ものをつくることも売ることもはじまらない。ネットを通じ て「個」と「個」がつながる時代だからこそ、「お客様は神様」原則を乗り 越えなければクリエイティブな市場は育たない。
見返しより抜粋

この本を紹介するかどうか、ギリギリまで迷った。出版直後にレビューしようと思ったが、あまりにも「素晴らしい」内容だったので、人に教えるのが惜しかったのだ。1年たって再び読み返してみて、この本がまったく古びていないことに驚き、本欄で紹介することにした。遅くなってすみません。

糸井重里は言わずと知れた広告業界のスーパースターである。コピーライターという仕事を世に知らしめた人物であり、釣りやモノポリー、ビデオゲームといった異分野にも才能を発揮していたことは、周知のことだろう。その人がインターネットに足場を移して、今も活躍している。

筆者はインターネットそのものよりも「インターネット的」なものに可能性を見出し、魅力を感じている。このインターネット的というのを説明するのはとても難しいのだが(なにしろ筆者はその説明のためにこの一冊を費やしているのだから)、そこには「パソコンさえなくてよい」らしい。

インターネット的について、筆者は「リンク・フラット・シェア」という、インターネット利用者にとっては、ごく当たり前の言葉を提示している。しかし、そのありふれた言葉も筆者の手にかかれば、ピカピカのキーワードとして、本質がむき出しになる。

例えばリンク。一見不要な情報からのつながりに可能性を見せること、それがリンクという考え方である、と筆者は言う。しかし、実はそれは、インターネットが存在する前からあることなんだと、看破する。

今までだって、自身が様々な情報を発信することで、その情報に共鳴し、人と人とが繋がることがあったじゃないかと。それがインターネット的なんだと。なるほど確かに「インターネット的」である。

本書を読み進めていくと、インターネット的という言葉には、インターネットを利用していない人と、既に利用している人とを「結ぶ」役割がある、そのことが良くわかるのだ。

「正直は最大の戦略である」「あの人たちの会社だから、いいよなぁ」という見方をされて好感をもたれることが、経営そのものの重要な要素になってくる時代が、本当にくるような気がする、と筆者は繰り返し述べている。そして、今事実、そんな時代が来ていることは、誰もが気づいているはずだ。

インターネットを利用してビジネスを、と考えているすべての人は、最新技術の話や、マーケティングセオリーが紹介された本を読む前に、まずこの一冊に目を通すべきだろう。ここには、さらに裾野が広がるだろうインターネットの、ごく近い未来が描かれているからだ。

社長!それは「法律」問題です

【著者】中島茂+秋山進【出版社】日本経済新聞社
【発刊年月】2002年06月25日
【本体価格】1,500円【ページ数】326p【ISBN】4-532-14985-1

日本の取締役制度だって、株主代表訴訟制度のおかげで、随分背骨が入り始めているわけですね。公認会計士・監査法人だって、訴えられる時代になったら、変わったでしょう。長い目でみれば、訴えられることはいいことなのです。
本文 180p より 抜粋

とても売れている本で、今さら取り上げるのもどうかと思ったが、やはりかなり面白い一冊であるので、紹介することにした。あのベストセラー「経済ってそういうことだったのか会議」の法律版のような本である。ただし、会議を行っているメンバーは違うけれども。

まず「法人」について語っている。法人ってどんな人なんだろう、法律の世界では「法人実在説」と「法人擬制説」があるのだと、非常に興味深いところから話が始まっている。企業買収や内部造反の生々しい話が、ビジネスの中での「法律」のリアルさを伝えている。

しかも、法律に関する話をしているはずなのに、日本の経営者が役員になって何が嬉しいかとたずねられたら「秘書と車と個室」と答えていて、役員になって何をやる、という話は出ないというエピソードに脱線したりする。話がフラフラと色んなところに行くが、それもまた楽しいのだ。

また、リスクマネジメントの項では、素朴に人を信じすぎる日本人として、リスクマネジメントに真剣に取り組まない日本の会社を「国民性」と絡めて危機への警鐘を鳴らす。日本の経営者はいくら言っても「いや、わが社は大丈夫ですよ」と言ってしまうらしい。

さらに、今注目のキーワードである「コンプライアンス」に関しても、本書は言及している。社会通念上の常識や論理に照らして企業が正しい経営を行うこととして、単なる「法律遵守」だけではないことを、事例を交えて紹介されていて、その「芯」の部分を掴むことが出来る。

そのほかにも「知的財産」「独禁法」「ディスクロージャー」「企業再編」など、興味深いワードが満載なのだ。それぞれにわかりやすい「実例」、ビジネスパーソンとしての素朴な「突っ込み」、法律家としての明快かつ納得な「回答」、それぞれがかみ合って、スラスラと読めてしまう。

また、さらに本筋から離れた話をコラムとして罫線でくくり、紹介しているのだが、特許に目をつけ始めているのは「特許マフィア」と呼ばれる、かなり危ない人たちであること、法律学者というのはいったい何をやっているのか?など、読み物としても「面白く」仕上げられている。

ビジネスパーソンにとって「法律」が無縁ではないことは、昨今のニュース報道を見ていてもあきらかだろう。その場での、対処対応を間違ってしまえば、会社自体が消滅してしまうのだ。知らないではすまないビジネスのルールをこの本で確認してみると良いだろう。お勧めの一冊である。

事業企画書の作り方

【著者】野口吉昭+HRインスティテュート
【出版社】ダイヤモンド社【発刊年月】2001年09月28日
【本体価格】1,800円【ページ数】314p【ISBN】4-478-37380-9

将来のビジョンを共有するには、数字だけではとっつきにくい。いったいどうなっているのか、が見えてこない。イメージが沸かない。という人もいるはずだ。そこで、わかりやすくイメージを共有するために、定性目標を設定する。
本文 136p より 抜粋

仕事上の、何か新しいアイデア(=少なくとも自分自身では画期的なものだと思っている)を思いついたとする。どう考えてもビジネスとして成立しそうだ…社内ベンチャーに応募する、あるいは起業して一山当てようとして、あなたはそのアイデアを形にするためのノウハウを持っているだろうか?

本書はそんな「やりたいことを実現する」ための必修スキルを、企画立案からリスクマネジメントにいたるまで、そのプロセスにしたがって、細かいステップを踏みながら紹介している。効率的にビジネスプランをまとめる方法がギッシリと詰まっているのだ。

まず、ビジネステーマを考える技法として、インターネットの徹底活用を紹介することから始まる(本書はできる限りのことをインターネット利用によって片付けることをテーマとしている=ただし1年前の本なので若干古い記述も見られる)。これはとても嬉しい着眼点である。

潤沢な予算が与えられ、数々のリソースにあたりながら、大規模に作業が出来る環境があればよいが、ほとんどのビジネスパーソンは、自身がそのような立場にはないだろう。自分で思いついたプランをカタチにするための、その手弁当的な作業プロセスにおいて、インターネットを使いこなすことは、とても大きな「鍵」になってくるからだ。

以下、テーマ決めが済んだら、ネットでの市場調査の方法、ビジネスミッションやビジョンの決定技法、ビジネスモデル構築や資金調達の方法、さらには事業収支シミュレーションまで、48のステップに細分化され、それぞれノウハウが紹介されている。

また本書は、視点を変えれば、読み物としても面白い。例えば、考えたアイデアをビジネスモデル特許にするためのプロセスが紹介されている。ネット上で特許検索をし、特許申請のプロセスを紹介するとともに、見ておくべきインターネットのサイトも紹介している。パラパラと興味深いワードを拾って読むだけでも、なんとなくビジネス体力がつく、そんな感じなのだ。

自分は事業企画や起業に縁遠いから…と思われている方も、本書にはぜひ目を通しておくべきだ。ここに書かれている情報の収集から加工までのテクニックは、ビジネスパーソンとして、ぜひとも身に付けておきたいことばかりだからだ。引用にあるように文章はやわらかく、内容も噛み砕かれてわかりやすくなっている。まずは書店で手にとって見ることをお勧めする。

これが週刊こどもニュースだ

【著者】池上彰【出版社】集英社文庫
【発刊年月】2000年09月25日【本体価格】533円
【ページ数】278p【ISBN】4-08-747244-2

国にお金が足りなければ、もっとお札を印刷すればいいんじゃないですか?
──いい質問ですね。私たち大人は、そんなことをすればインフレになって しまうことを知っています。でも、その理屈をこどもたちにわかるように説 明できるでしょうか。
本文 20p より 抜粋

週刊こどもニュースをご存知だろうか?NHKで土曜日の夕方に放送されている「子供向け」のニュース番組なのだが、ご覧になったことある方も多いだろう。子供向けだといって侮ってはいけない。この番組、実は各方面で常に注目されている、とても興味深い番組なのだ。

この番組は、子供に向けてニュースを発信しているが、その中身は「子供向け」だというわけではない。政治、金融、世界情勢などの、込み入った(それは大人にもわかりにくい)話題を取り上げる。「普通のニュース」を、子供にも充分わかるように、知恵を出し、工夫をしている。

本書は、番組のキャスターが、ニュース選びのポイントから、子供たちに伝えることが出来るまでにニュースを噛み砕くノウハウを、楽しい裏話とともに公開した1冊だ。子供たちは持ち合わせている「語彙」と「常識」は大人が考えるよりもずっと少ない。だから苦労は並大抵でなく、ゆえに面白い。

引用部分でいうと、経済学の教科書や専門書を片っ端からチェックしても、「インフレにはコストプッシュ・インフレと、デマンドプル・インフレがある」と書いてあるだけで、なぜ国が勝手にお札をするとインフレになるのかという常識の説明が無いことに愕然とする。

さらには、カラ出張をしていた部下を持つ県知事が、番組の子供レポーターにそれを説明するが、「公金支出の不適切な処理」と言っても当然通じず、いろいろ説明した挙句に「要するに、ウソついちゃったんだよ」と思わず言ってしまったところなど、思わず笑ってしまった。

本書は2つの示唆を与えてくれている。1つは、人に何かを伝達するときには、その伝達すべき内容を完全に理解する必要があること。そして、もう1つは理解した内容を伝えるためには、あらゆる工夫を施す必要があるということだ。当たり前のことだが、おそらく実行できている人は少ないだろう。

仕事における指示やレクチャーに置き換えると、その作業の重要性がわかるだろう。こちらはなんとなくわかったことを、あいまいに伝達し、子供ほど素直ではない受け手は、疑問を呈することなく、いくつか情報が欠落した状態で仕事をすすめる…。これではいけない。

伝えるべき内容を自分のものにするための方法、そして、相手に伝達するためのテクニックが本書には満載である。部下に指示が上手く出来ない、上司に上手く報告が出来ない、そんなお悩みを持つ向きは、一度本書を紐解くことをお勧めしよう。なるほどと膝を打つこと請け合いである。

一橋大学ビジネススクール 知的武装講座

【著者】伊丹敬之/伊藤邦雄/沼上幹/小川英治
【出版社】プレジデント社
【発刊年月】2002年04月27日【本体価格】1,600円
【ページ数】355p【ISBN】4-8334-1747-2

「あの会社は官僚的だから」─。いまや官僚的であることはタブー視されている。しかし、相次いで起こる企業不祥事は、組織とはどうあらねばならないかを教えている。日本企業は自社の組織が真の官僚制組織かどうかを、チェックし再評価する必要がある。なぜなら、創造性や戦略の原点は組織にあるからだ。
本文 180p より 抜粋

本書は、「日本企業の経営課題」「企業価値を創造する経営戦略」「人と組織を活性化させるための戦略的課題」「複雑化する金融・為替を理解する」と4つの講座構成になっている。各講座は、表題にもある一橋大学の経営学修士コースの教育担当者が、分担して執筆している。

トップマネジメントから為替まで、日本企業が抱える問題点を幅広く扱い、しかも私たち(=著者たち)なりに、そうした問題をどう掘り下げるのか、その切り口を深く提供するのが本書執筆の目的だと、はしがきにある。なるほど興味深いコンテンツがギッシリと詰まっている。

最初の講座は「日本企業の経営課題」。最初の課題として、執行役員制度の流行をケーススタディとして、めまぐるしく変化するビジネスの世界を読み解くためのバックボーンを提示する。以下、経営改革が進まない原因を「ロワートップ」に求めたり、トップと現場の遊離を「社長ごっこ」にあると喝破したりと、面白く読み進めていくことができる。

次に「企業価値を創造する経営戦略」講座では、「企業価値」「株主価値」「コーポレートブランド」「流行の経営」「CBバリュエーター」「ビジネスモデル特許」「EVA」など、気になるワードが目白押しだ。

「人と組織を活性化させるための戦略的課題」講座では、組織設計の基本原理を考えるとして、官僚制組織ははたして害悪なのか?と投げかけ、また、会社組織を疲労させる原因として、「人前で大人げなくすごんだり、大騒ぎすることができる、育ちの悪さを基盤とする人」をその1つとしてあげてみたりと、興味が尽きない内容になっている。

最後の「複雑化する金融・為替を理解する」講座では、やはり「為替介入」「ハネムーン効果」「ロンバート型貸し出し」「ドル圏拡大」などの、ちょっと気になるのキーワードが、わかりやすいケーススタディによって、そのアウトラインが解説されている。

この1冊で世の中の経済・経営を読み解けるとは思わない。しかし、ここに提示されている40のキーコンセプトは、ビジネスパーソンとして、最低限知っておくべき「基礎」であるような気がする。新聞を読んで、わかった気になっている「知識」を定着するために、お勧めの本である。

サラリーマンサクセスストーリー

【著者】西村克己【出版社】日本実業出版社
【発刊年月】2002年05月10日【本体価格】1,200円
【ページ数】126p【ISBN】4-534-03399-0

稟議とは提案者が稟議書を作成し、部長から役員、社長にまで回覧させる。 この回覧に時間がかかるのだ。出張や会議で、役員も稟議書に目を通す時間 が少ない。机の上で2~3日放置されることもある。
本文 58p より 抜粋

近頃、若いビジネスパーソンに向けた書籍に変化が現れている。今までも社会の仕組みや今なすべきことを「やさしく」書いてあるモノは少なくなかったのだが、最近はやさしさから一歩進み「食べやすいよう噛み砕いてある」モノが増えてきた。

今回ご紹介する1冊は、その代表格といえるのではないだろうか。腰帯にはこうある。「会社組織の成り立ちから、仕事のノウハウまで、絵本のスタイルでやさしくわかる」と。そう、ついにビジネスパーソンに向けて、仕事の仕組みをレクチャーする「絵本」が登場したのだ。

ストーリーは単純。大手電機メーカーへの就職が決まった主人公が、新製品を社内公募で提案。見事採用になり、新製品開発プロジェクトのメンバーになる。さまざまな苦難(?)を経て、その新製品は大ヒットを飛ばす、というものだ。話自体は、取り立てて面白いものではない。

ストーリーの間には、「社会人のマナー」「企画ってこんなもの」「会社でのものの決まり方」「製品設計全体の流れ」といった、物語りに登場したキーワードを中心にしたコラムが挟まれている。その記述は「これでもか!」というくらい噛み砕かれていて、とてもわかりやすくなっている。

本書を読むうちに、「企画」「プレゼン」「マーケティング」「物流」「広告」「販売」など、必要なビジネス知識がどんどん身についていく。と本書の見返しには謳われている…が、それほど大げさなものではなく、ビジネスパーソンがごく常識的に知っておくべき事柄が整理されているに過ぎない。

こう書いていくと、新社会人以外には本書を薦める理由がないように思えるが…。実は新社会人を教育する立場にあるだろう、先輩ビジネスパーソンにぜひとも読んでほしい一冊なのだ。理由は2つ。

まず最初の理由は「仕事をわかりやすく説明するテクニックが学べる」というところだ。本書はビジネス社会でのさまざまなキーワードを、たとえ話、図解、イラストなどを使って、わかりやすくレクチャーしている。この技術を知らない手はないだろう。

もう1つは「ベンチマーク」だ。自分の新社会人時代とは違う、この程度のことも理解していない、自分のビジネス常識は世間とずれていないか、などを、本書をベンチマークにして確認することができる。

本そのものデザインもとても良く出来ている。バカにしないで、まずは書店で手にとって見るとよい。ナルホドのツボが、たくさんある1冊だ。

ペンギンの国のクジャク

【著者】BJギャラガー/ウォレン・H・シュミット
【訳者】田中一江【出版社】扶桑社
【発刊年月】2002年02月28日【本体価格】933円
【ページ数】167p【ISBN】4-594-03408-X

これは、快適で安全で、規則を守ってさえいれば先が読めることをよしとする世界で、ユニークかつ創造的であろうとすることの危険性と可能性を語る物語だ。
本文 5pより 抜粋

組織の海に浮かぶペンギンの国。そこに所属するのは成功の証だけれど、ペンギンらしくふるまわなければ成功することはできない。ある日、1羽のクジャクがこの国にやって来た。本書は、ビジネス社会における組織と個人のかかわりを見直すためのヒントが満載のビジネス寓話である。

先のクジャクは、組織の活性化を図りたいとするペンギンからスカウトされてペンギンの国にやってくる。クジャクは努力をし業績を上げるが、ペンギンというスタイルに馴染まないことによって、評価されずにジレンマに陥ってしまう。自分のスタイルを変えて、組織に馴染むべきか否か。

本書は、世界のどんな組織でも起きている「守旧派vs改革派」のもたらす問題点をわかりやすく提示している。守旧派の流儀防衛の手口、また改革派の守旧派に対しての歩み寄りテクニック、そして失望、さらには守旧派なりの焦り。物語は意外な方向へと向かっていくのだが…。

話を結末まで書いてしまうのは野暮なので止そう。われわれは多様性を求める、と言いつつ、ペンギンスーツを用意し、ペンギン歩きを強要し、組織の中に埋没させようとする官僚的な組織の人たちのことを「ペンギン」に例えたセンスが、言いえて妙で笑えてしまう。確かにペンギン…そう見える。

巻末には、ペンギンの国の中でクジャクやそのほかの鳥として生きていくヒント、そしてペンギンを飛ばせるためのアイデアがまとめられている。本書の肝はこの部分にあると言っても過言ではない。ビジネス社会における組織に蔓延する、さまざまなジレンマを解決する糸口がそこにはある。

例をいくつか挙げておこう。例えば、他所に行きたくないクジャクのためには、サバイバルテクニックとして、仕事の実績がウリになるのだから、何より仕事を頑張ろうとし、いざとなったらペンギン・スーツを着ることも厭わない「柔軟性」を持とうと提案。さらに、嫌なら辞めちゃえばとも言う。

また、ペンギン振りを指摘する方法として、ペンギンたちがいかにも言いそうなフレーズを列挙している。「ここでは、そういうやり方はしない」「社長が承知しない」「ここは無難にいこう」「だまって、わたしのいうとおりにすればいいんだ」身に覚えのある言葉が並んでいて、驚いてしまう。

本書は、組織に馴染めない個性派社員にも、組織を活性化しようとする管理職にも一読をお勧めしたい。組織とはなんなのか、活性化とはどういうものなのか、何となくわかった気でいたことが、ここではっきり言語化できるはずだから。何より、すっと読めるのが嬉しい。

ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本

【著者】向山淳子+向山貴彦【出版社】幻冬舎
【発刊年月】2001年12月20日【本体価格】1,300円
【ページ数】171p【ISBN】4-344-00140-0

今回、この本を書くにあたって、英語に触れてきた半世紀の経験から、日本 国内でもっとも有効と思われる英語の勉強法を整理してみました。(中略) 本書が一冊で英語のすべてがわかるといった本ではなく、英語の世界に足を 踏み入れ、実践の中で英語を学んでいくことを前提とした「準備の書」だからです。
本書 はじめに より抜粋

今書店を賑わせている注目の一冊である。ちょっとかわいらしい「猫」とともに、キュートな表紙をご覧になった方もあるだろう。あの本のことだ。昨年末に発売された同時に話題となり、今売れに売れている。現在、書評担当者の私の手元にある本は、2002年1月5日発行のもので第4刷となっているのだ。これは凄い勢いである!

山口県下関市の梅光学院という小ぢんまりとした大学で教鞭をとる筆者は、自らの若い時の体験と(詳しくは書きませんがなかなかドラマチックなようです)述べ千人以上の学生をアメリカに正規の留学生として送り出してきた試行錯誤の中から、地道ではあるけれども、初心者から中級者を対象にした「日本国内でもっとも有効と思われる英語の勉強法」を生み出した。

その内容は至ってシンプル。英語は「簡単な言語」であると認識すること。英語は人間の「思考の順番と同じく言葉が並べられる」こと。英語は英語であって「英会話やヒアリングといったジャンルは存在しないという」こと。唯一の上達法は「たくさん英語を読む」こと。それだけのことで、日本人が苦手としている「英語」が上達するのだという。

英語で書かれた文章をそれこそ「浴びるほど」読むことによって、覚えたという記憶すらない「無意識の記憶」をまずは作り出す。その土台を作らない限り、言葉は身に付かないのだと筆者は言う。意識して思い出さなければならない記憶なんて、人間の思考スピードやしゃべる速度についていけないハズだからと、日本語なら至極当然と思えることが、本書には書かれている。

考えれば実にその通りだ。日本人の子供は流暢に日本語を話すが、話している内容はたわいもない。ビジネスに必要な内容が話せるわけがないのだ。ビジネスパーソンは、日ごろから様々な情報に「接し続けている」からこそ、そのような「仕事に必要な会話」が出来るようになるのだから。脳の固まった「大人」なら、なおのこと「論理的」に学ぶことが、必要と思われる。

本文中にたくさん添えられた、英語の構造を示すための図版類がとても素晴らしいほか、難しい文法用語は一切排除してあるなど、この本には、紹介し切れなかった素晴らしい点がある。少しでも英語に不安を持っている人は、ぜひ手にとって見ることをお勧めする。これならわかる、ぜひ英語を勉強しよう!と思うこと請け合いである。イチオシ!

世界がもし100人の村だったら

【再話】池田香代子【対訳】C.ダグラス・スミス
【出版社】マガジンハウス
【発刊年月】2001年12月11日【本体価格】838円
【ページ数】64p【ISBN】4-8387-1361-4

「 20人は栄養がじゅうぶんでなく1人は死にそうなほどですでも15人は太り過ぎです。
本書 本文 より抜粋

中学校に通う長女の担任は生徒たちに、毎日メールで学級通信を送ってくださるとてもすてきな先生です。そのなかに、とても感動したメールがあったのでみなさんにも送ります。少し長くてごめんなさい。-このなんとも言えない手触りのやさしい文章から始まるメールを、あなたも多分受け取ったことがあるだろう。あの-世界がもし100人の村だったら-が本になった。

世界に住む、63億の人たちを100人の村になぞらえたこのメール。そのうちの52人が男性で、48人が女性。30人がこどもで70人が大人。そのうちの7人がお年寄りであると続く。さらに、異性愛者と同性愛者、有色人種か否か、どの地域に住む人なのか、どんな宗教を信じている人たちがいるのか、どんな言葉を喋る人がいるのか…。世界をスケール化していく。

さらにメールはその村に住む人がどのような暮らしをしているのか、ということもスケール化していく。栄養状態、持てる富、使用するエネルギーの割合、きれいな水が飲めているのか、預金、車の所有、教育、コンピュータ、識字率…。100人という単位で、世界の人たちの暮らしぶりをみると、いかに格差があるか、ということがまざまざと浮かび上がってくる。

そして、メールは世界に住む人たちがおかれている状態に言及する。迫害されているか否か、死の恐怖に直面しているかどうか、この村では1年に1人が死に、2人が生まれている。自分たちが想像している以上に、世界の人には自由はなく、そして、安全に暮らせていないことも、このメールは教えてくれる。そして、今の自分の状態が素晴らしいということも同時にだ。

このメールは、インターネット上で流布することによって、様々な文章の改良や追加、削除が繰り返されて、そして、今もまるで「ボトル・メール」のように流され続けている。本書では、このメールの素性から、改編の経緯などが詳しく解説され興味深い。著者は、このメールを「インターネット・フォークロア」と呼び、グローバル時代の「民話」であるとしている。

ビジネス・パーソンである本誌読者は、本書をどのように捉えれば良いのだろうか。書評担当者である私はこう考える。「座標軸」だと。ある人は「コンピュータの普及率」を見て、市場の可能性を見出すだろう。また別の人は「英語よりも普及している言葉」として、中国語に着目するのも良いかもしれない。そう、自分の知らないスケールには、思わぬ発見がある。

そんな難いことは抜きにして、一年に一度くらいは仕事ではなく、例えば、世界の色々なことに思いを馳せてもよいのではないだろうか。本年度最後のブックレビューだからこそのチョイスである。すべての人にラブ&ピース…ている…様な気がする。まずは書店で手にとって見て欲しい。買いたくなるはずだから。

シーマン語録-現代人への185の賢言

【言】シーマン【編者】斉藤由多加【出版社】ダイヤモンド社
【発刊年月】2001年11月08日【本体価格】1,000円
【ページ数】224p【ISBN】4-47870237-3

「ボーナス」が必ず出ると思われてるこの国の文化が幸せすぎるんだよな。
(今年はボーナスに不満がある、と答えたサラリーマンに対して)
本書 9p より抜粋

シーマン?という方でも、顔は人間でカラダは魚と言う、妙に小生意気(とつい思ってしまう)な毒舌を吐く、不思議な生き物をモチーフにしたテレビゲームのコマーシャルは目にしたことがあるだろう。あれである。シーマンとは、古代エジプトの時代から伝説として語り継がれてきた生き物(と本書ではなっている)こと(らしい)。

もともと「シーマン」というゲームは、画面の向こうにいるシーマンと、プレーヤーが会話できるところに「ミソ」がある。本書は、その会話(?)の中で生まれた、その妙な生き物からの名言集・・・?みたいなものだ(上手く説明できない…)たぶん。

なんだゲームか!と侮らない方が良い。この本、只モノではないのだ。シーマンからの言葉の贈り物は、仕事/職場編に始まって、事業/経営編、出会い/恋愛編、人間関係編、水商売/ホステス編と多岐に渡る。腰帯に「人生に迷ったときに開く本-現代人を覚醒させるヒントがある」と銘打つだけあって、目からうろこの言葉が満載なのだ。

例えば、今の会社を辞めようと考えている…とシーマンに告白した中年サラリーマンは、「多くの人が、転職することで自分自身の価値を確認したいって、思っているみたい。」と返されてしまう。あっ、読者の皆さんは、今ドキッとしなかっただろうか?

また、キャリアウーマンを目指すとシーマンに宣言したOLに対して、「人生の勝者っていうものは、なんだと思う?俺は、楽しんだもん勝ちだと思うね。」と本質を突き、時間にルーズなことについて「時間どおりじゃなくても、早く来るヤツは、ルーズって言わないもんな。」と驚愕の定義を導き出してしまう。ウーンと思わす唸ってしまう。

さらに、嫌な仕事をしないと言った社会人には、「そもそも人がしたくないようなことだから仕事って呼ぶんだ。だれもがしたいことは快楽っていうんだ。」と喝破する。一ページに一言。サクサクと、しかしつい、かみ締めながら読んでしまう。何故だろう。

ここに収録されている言葉は、一読して「わかっているヨ!そんなこと!」というものが多い。しかし、よく読み返してみればわかる。本当にわかっていたことなのか?いつもそう思っているのか?自分に今足りなかった視座視点は何か、シーマンは警告してくれている…様な気がする。まずは書店で手にとって見て欲しい。買いたくなるはずだから。

2003年の「痛み」

【著者】水木楊【出版社】PHP研究所
【発刊年月】2001年09月28日【本体価格】1,100円
【ページ数】157p【ISBN】4-569-61871-5

(前略)高齢社長の中には、総会でのキツイ質問をおそれるあまり、失禁をする者すらいる。そんな連中はみなオムツをして総会に臨んでいるのを知る者は少ない。
本書 39p より抜粋

激動する国際情勢の影響によって、首相がやると宣言していた「痛みを伴う構造改革」が見えにくくなってきている。マスメディアの報道をつぶさに点検しても、よくわからない、というのが実際のところだろう。今日紹介する本は、この「改革」が実施された場合、起き得るかもしれない「近未来」をシミュレーションしたものだ。

話は2001年12月2日から始まる。主人公は赤司光二、47歳。つい1カ月前までは中堅広告代理店の部付部長だったが、その子会社に転籍になっている。専業主婦の妻、就職を断念してフリーターを気取る長男、私立高校生の長女という家族。浜田山のマンション暮らしだ。これらの家族の2003年9月までの物語なのだ。

主人公の会社は倒産してしまう。同窓生はホームレスになって、デモに加わり首相官邸に突入していく。妻はリサイクルショップで働き、様々な節約生活術(=風呂水は一週間に一度しか取り替えない、ストッキングに玉ねぎを入れて保存する…など)で家計を支える。娘は公立高校に変わる…景気が悪化するとともに、登場人物たちの暮らしぶりは、変化していく。

さらに、ショッキングなのは、高校卒業後の娘が大学進学を断念して東南アジアの工場に集団就職していくシーンだ。真っ暗闇の最悪シナリオを描けば描くほど、みなさんは、そうならないためにはどうしたらいいかを真剣になって考えるはずである、と本書腰帯にあるが、まさにその通り。どうすれば良いのか、評者である私は、読後に考え込んでしまった。

小説部分に随所に出てくるキーワードは、新聞にも良く出ている言葉でもある。丁寧に解説が施してある。また、この小説のブリーフィングと題して、今回の構造改革を推し進めると、何故最悪シナリオが起動してしまうのか、を解説してくれている。これもわかりやすい。今のニュースを読み解くための知識のある程度は、この本で得られてしまう。掻い摘んで知っておくためにも、お勧めである。

本書はリアリティをセールスポイントにしながら、ディテールに荒唐無稽な部分があり、予測ではないシミュレーションであっても、首を傾げざる終えない部分もある。しかし、それを補って余りあるほど、突きつける課題は大きく、そして深い。今、すべてのビジネスパーソンが考えるべきテーマを、この本は熱く提示している。すぐに読むべきだろう。

知のミネラルウォーター

【【編者】ネイチャー・ジャパン【出版社】徳間書店
【発刊年月】2001年09月30日【本体価格】1,000円
【ページ数】189p【ISBN】4-19-861414-8

現代農業は、多くの人に原始的で非能率的だとみられている伝統的農法から、きつい反撃パンチをくらった。コメの品種を混ぜて栽培すると、単一栽培よりも病気に強いだけでなく、収穫量も増えることが最大規模の実験で示された。
本書 165P より抜粋

テレビを見ていると、宮崎アニメの魅力の秘密!というようなものが流れていた。その内容も興味深いものだったが、それ以上に心惹かれたのは、そこに登場した学者の研究内容についてだった。

蝶などの生物と、風船などの無生物の動きを、赤いポイントにして、その移動をアニメーション化して…どちらが生物的な動きか?ということを実験しているのだという。無生物の動きは、そのままでは生物的に見えないが、逆再生すると見えるという話だった。なるほど。そこで1つの不思議がある。そんな研究をして、それがどのように世の中的に生かされるのだろうか…。

まあ、何か用途はあるのだろう。しかし、素人目にはまったく不明である。長々と前ふりしたが、今回紹介する本は、そんな興味深く面白く、そして不思議な、学者先生たちの研究をコンパクトにまとめた、コラムがいっぱい詰まった本である。

例えば、スチュワーデス。この仕事には危険がいっぱいだという。休息時間なしの長距離飛行を続けると、脳内の思考と学習を行う部位である皮質と海馬の一部が萎んでしまうのだとか。要は、時差ぼけによって、脳が痩せちゃうというのだ!事実、長時間の飛行を繰り返すスチュワーデスたちの中に、記憶力減退に苦しんでいる人もいるらしい。

さらに、野菜嫌いは遺伝するのだという研究を続けている学者もいる。遺伝的に苦味を感じやすい人がいるそうで、その人たちは、芽キャベツやホウレンソウなどの果物や野菜は食べたがらないそうだ。その数は約25パーセント。男性よりも女性に多いそうだ。なるほど。

他にも、・良い成績を取るためにはまずは睡眠からだ・酒を飲むことは悪いことばかりではないこと・ヒヒの尻はどうして大きいのかということ・テレビ映像に感動するチンパンジーの話・牛のゲップが原因で地球が温暖化してしまう…など、とにかく盛りだくさんなのである。楽し過ぎる。

ビジネスパーソンに本書をお勧めする理由は1つ。それは、本書の腰帯にもあるが「脳への栄養」である。科学者たちはこんな面白い研究をしているのかというある種の「感動」や、知的好奇心を「満足」させる内容に、読むだけで脳が活性化する…そんな感じがするのだ。

そして、なにより手軽で、記述は実にわかりやすい。書店で手に取れば、この本の良さはきっとわかる。お勧めしておきたい。

サラリーマン社会小事典

【編著者】松野弘【出版社】講談社(現代新書)
【発刊年月】2001年08月20日【本体価格】840円
【ページ数】381p【ISBN】4-06-149564-X

マトリックス組織、コア・コンピタンス経営、フレックスタイム制、転籍、出向、ワーキング・ランチ、社内恋愛……サラリーマン必須の基礎用語184項目!
本書 腰帯 より抜粋

さて、自分が今居るサラリーマン社会について、あなたはどの程度のことを知っているだろうか。会社の中のことくらいは判っているだろうが、大きな視座に立ってみると、理解していないことが多いだろう。そんなサラリーマン社会を知るための網羅的で、ユニークな用語集が出た。それが本書である。

初めに、サラリーマンとサラリーマン社会の形成と変遷が語られている。かつてサラリーマンはエリートであった。高等教育機関から作り出された、企業の経営幹部を守る立場の人であったのだ。その後サラリーマンは大衆化、フツーの人の代名詞になるのだ。今や労働人口の八割を占める。

続いて、サラリーマン社会で働くことの意味がよくわかる用語…が解説されている。役職定年制、早期退職優遇制度、メンタルヘルス対策、過労死、オープンエントリー制、アウトプレースメント、社内FA制、労災など、人事や労務について、重要で新規性の高い、実に気になるワードが並ぶ。

さらに、サラリーマン社会で企業経営のことがよくわかる用語…として、企業フィランソロピーや、機能別組織と事業部制組織など、21世紀の会社がどの方向に進みたいのかがわかるワードが並べられている。それを知ることで、自分が企業社会の中で何をすべきなのかがわかるようになっている。

また、サラリーマン社会で企業の人材開発のことがよくわかる用語…の項では、社内公募、自己実現、メンター制度など、企業が人を作るための今後の方向性が解るキーワードが書かれている。自分が受ける教育の持つ意味を網羅的に知っておくべきだということは、言うまでもない。

本書は、産業社会論を大学にて教える教授と、その人が主催する、若手から定年間際のサラリーマンで構成された「サラリーマン社会研究会」が執筆に協力している。サラリーマンの社会の中で、実際に経験した事柄を元に書かれている分、リアリティを感じる内容になっている。

一つ一つのキーワードをそれほど深く言及しているわけではないが、その言葉の意味を確実に理解することは出来るようになっている。さらに、執筆者たちは、用語批評という社会現象の分析を通じて「サラリーマン社会論」的なモノを展開しようと試みている。そこがなかなか面白い。

メインコンテンツの間に挟まれる「コラム」もなかなか味があり(=ラッシュアワー時の到着駅のトイレがどうして混雑しているのかに言及したりしている…)、通勤途中の電車の中などで、パラパラと読むには最適の一冊といえるだろう。おすすめ。

業界用語辞典

【編者】米川明彦【出版社】東京堂出版
【発刊年月】2001年09月10日【本体価格】2,800円
【ページ数】393p【ISBN】4-490-10572-X

ごごいち[午後一]<広告>午後一番。◇言語92.2「午後一番の略。広告業界では二時頃を指すことが多い。ちなみに、今日中は、翌朝には、ということ。朝一は十時から十一時の間というのが定説」
本書 244p より抜粋

普段仕事をしている時に使っている何気ない言葉の中にも、実は自分の職場でしか、また、自分が仕事している業界内でしか通用しないモノがあるはずだ。社会に出て、その「符牒」らしきものを、さりげなく使いこなせた時、何となくその集団の一員になれた気がしなかっただろうか?そう、業界用語と言うのは、その集団に属している人のロイヤリティも向上させる。

今日紹介する本は、日本で初めての本格的な隠語・業界用語辞典である「集団語辞典」から、86業界で毎日使われている4800語を収めた画期的な辞典である。といっても、本欄で紹介するんだから、実用として使って欲しい、と言うわけではなく、読み物として紹介している。この辞典…とても面白いのだ。

例えば、百貨店業界(ホントはそんな業界はないけど…)には「トイレ」の別称があることは、よく知られていることだろう。しかし、「いちご摘む」「いの字」「遠方」「奥」「三三」「十番」「神閣」「仁久」「三軒屋(すけんや)」「スタジオ」「二の字」…ほか、14通り以上もあるなんて、知ってましたか?しかも、音を聴いても理解できない言葉ばかり…。

さらに、本書によると、「遠方」は三越の店員の間での隠語であり(今も使っているのかしら?三越の方、いらっしゃいましたらメールにてご教授ください!)、シンカクは松坂屋、サンサンは大丸、すけんやは東急や西武、二の字は松屋の、それぞれ隠語となっている。トイレ1つで、どうしてこれほどまでに違うのか、しかし東急と西武は同じなのかなど、興味は尽きない。

本書は感心するくらい、実に幅広い業界を網羅している。収録されている業界は、銀行・証券・保険などの金融関係をはじめとして、デパート・病院・航空、果ては、魚河岸・相撲・芸者、さらには、警察や官庁まで。一語一語に、小説や雑誌などから拾った使い方の用例があげてあるので、言葉の意味が確実に理解できる。言葉は生き物である、ということがわかる。

実は本書、読んですぐに役に立つと言う人は、ほとんどいないと思われる。業界用語を知ったからといって、半可通になっても仕方がないはずだ。しかし社会人たるもの、引き出しは多く持っていた方が良い。自分が関係する業界の「不思議な」言葉を覚えておいて、話のキッカケにするものお勧めだ。仕事とはコミュニケーションだ、ということがわかるはずだ。一読を!

実学入門・なにが小売業をダメにした

【著者】石原靖曠【出版社】日本経済新聞社
【発刊年月】2001年04月05日【本体価格】1,600円
【ページ数】239p【ISBN】4-532-14905-

日本のチェーンストアは、(中略)みなが同じ教科書を持って、同じビジネスモデルを追及してきたことで、企業間の差異がほとんどないという店の同質化が進みました。
本書 8p より抜粋

日本の小売業が未曾有図の事態を迎えていることを認識していないビジネスパーソンはいないだろう。なぜ、ここまで日本の小売業がダメになってしまったのか。本書では、小売業の不振の原因を徹底解明。その原因を「顧客満足をはき違えたこと」として、復活のヒントを提示している。

本書で筆者は、日本の小売業における危機的状況を作った要因の多くは「貧しい大衆のために、とにかく安い商品を提供したい」という想いが強すぎ、「安さのためには、自分たちのやり方に従ってもらう」という、本末転倒の発想に陥ってしまった結果だとしている。心当たりがないわけでもない。

大型スーパーなどは、ここのところ人員を大幅に削減してきていた。その結果、売り場に店員の影が無くなってしまっていた。説明がほしい商品を購入しようと思っても、店員を探し出すのに四苦八苦である。これでは、お客の側が商品を理解しているという「前提」で買い物をしなくてはならない。

また、買い物カートを利用するために100円玉が必要(まあ、一定の場所に返却すればお金は戻ってくるんですが…)といった施策に至っては、お客に店のオペレーションを負担させているに他ならない。それでいて、それほどには値段を安くできないというジレンマに陥っている。中途半端なのだ。

本書では、流通小売業態の「まるで博覧会」のようなアメリカの豊富な事例を引いて、これら日本の小売業が抱える問題点を解決するための糸口を提示している。そして買い物の場を「夢を楽しむ」「近くて便利な」「ワンランクアップ」と3つのステージに見立て、そこに存在する「顧客利益」を考えることを提案している。なかなか興味深い。

少子高齢化時代を迎えて、価格志向は通用しなくなる、と言う論に対して、「じゃあユニクロは?」という声も聞かれる。ユニクロは確かに低価格路線ではあるが、それ以上に「カジュアル・ファッション」をトータルに提案することで、今まで「何を普段着たらよいかわからなかった」人たちを、顧客として掘り起こした。つまり、新しい顧客利益を生み出していたのだ。

腰帯にもあるが、この本は専門用語はできるだけ排除し、語り口調で書かれてある。この分野に精通していない人間にとって、これほど有難いことはないはずだ。流通業の不振構造(=顧客主義のはき違え)は、実は他の業界にも起きうるだろう。間違わないためのヒントが満載されている本書に、ザッと目を通しておくことをお勧めしたい。

ハイテクハイタッチ

【著者】ジョン・ネズビッツ
【訳者】久保恵美子【出版社】ダイアモンド社
【発刊年月】2001年06月07日【本体価格】1,800円
【ページ数】305p【ISBN】4-478-19040-2

ささやかな変化を感じ取るこうした能力は、時計、誰かとの約束、仕事の締め切り、お気に入りの夜7時のテレビ番組などが生活に入り込んだ現代では、すっかり衰えてしまった。
本書 50p より抜粋

あとがきによると、本書の著者の1人であるジョン・ネズビッツは、世界的な視野に立った社会現象分析の書を数多く著している未来予測学者であるとのこと。ベストセラー「メガ・トレンド」で名前を知っている、という方も多いだろう。本書は、テクノロジーに支配されている社会の中で「人間らしさって何」という問題を投げかけている。コレがなかなかに面白い。

面白いコラムの例を1つあげれば、テクノロジーが進化することによって、便利になるどころか「ストレス」が発生してしまう。そこでストレスから逃れるために「ハイテク」から逃れるわけだが、結果的に、テクノロジーの存在しない「シンプルライフ」は、とても複雑なものである、ことを紹介している。求めたシンプルは複雑だった…どういうことだろう。

ビル・ゲイツの自宅のように、すべてがコンピューターで制御された暮らしは、ボタン1つで快適な生活環境が手に入れられる。しかし、ガスも電気も水道もないシンプル・ライフでは、通常レベルの生活環境を手に入れるだけで、薪を割り、火を起こし、水を汲む、と様々な「タスク」を要求し、実現するための「スキル」を求められる。よっぽど複雑ではないか!

しかし現実的には、テクノロジーに囲まれて快適な暮らしをしている人は、その暮らしから逃れるために「旅」に出て不便を享受する。一方で、普段から不便な暮らしをしている人は、旅に出たいとも思っていない。2つの暮らしの間に横たわるキーワードは「人間らしさ」と言うことになるのだろう。テクノロジーは、人間らしさを満足させるまでには進化していないのだと。

本書では、ハイテク社会がもたらす「息苦しさ」を解消するためには、人間らしさという視座視点を忘れてはならないということを、アメリカでの様々な実例とともに教えてくれている。これからのビジネスパーソンが備えておくべき見識の1つだろうと考える。

本書は2部構成になっていて、第2部では「宗教」「芸術」をキーワードにして、遺伝子テクノロジーを詳しく検証している。遺伝子操作による生命のコントロールを止めるには、人の倫理観しかない。欧米では宗教がその拠りどころになるが、宗教観の希薄な日本ではどうなんだろうと、いろいろ考えさせられる内容になっている。読み応えある「お買い得」な本。お勧め。

リーディング・ザ・レボリューション

【著者】ゲイリー・ハメル【訳者】鈴木主税・福嶋俊造
【出版社】日本経済新聞社【発刊年月】2001年01月25日
【本体価格】2,200円【ページ数】423p【ISBN】4-532-14881-2

慣れ親しんでいるが機能しないビジネス・モデルと、斬新ではあるが試されていないビジネス・コンセプトの狭間にいる個人は、次のような不安を感じている。長年培ってきた技術と人間関係は、新しい枠組みの中でも通用するのだろうか。どの程度まで過去を断ち切らなければならないのか。新しい世界に適応していくためには、どれほどの努力が必要なのか。
本書 330p より抜粋

変革が叫ばれだして久しい。今、変わるということがまるでブームのようである。しかし、引用部分を読めばわかるが、今までのことを、さあ変える、と言っても、それはとても難しいことである。変化を促すためのモチベーションとなるもの…本書には、新しい世界へと飛び出すための、価値ある理想が詰め込まれている。

本書では「企業革命家」になることを勧めている。自分の会社を変えたい、変えないと未来がない、と考えているビジネスパーソンであれば、誰もがこの本を読むべきなのだと。

ビジネス社会では、手放しでの進歩が終わったと同時に、イノベーションの時代が登場し、そのスピードが、今までの企業の現状維持に必要な「囲い」をなぎ倒してしまっている。そんな時代に必要な人材は、企業革命家なのだと、その実践すべきノウハウが書かれているのだ。

とは言っても、取り立てて難しいことが書いてあるわけではない。現状をよく分析し、理解をした上で、先を見通し、クリエイティビティの高い施策を実施しなさい、ということだけである。シンプルではあるが、なかなか実行できないことでもある。自分自身の変革のテクニックはもちろん、他人や会社までを、上手く巻き込むためのノウハウも、書き込まれている。

類書との決定的な違いは、ビジネスの現場から得た豊富な事例をもとに、セオリーを紹介しているところだろう。実務家としての視点で書かれたものであるから、リアルで実用に耐えうる内容になっている。また、具体的に何をすれば良いのか、が、きちんと書かれている。これなら、新入社員から中間管理職まで、誰が読んでも役に立つことは、間違いないだろう。

なお、この本、ビジネス書にしては異例の「デザインを意識」した紙面になっている。従来のビジネス本は、単に文字の羅列と、無味乾燥なデータを割付ただけにすぎなかったが、本書は、印象的なビジュアルを随所に盛り込んでいる。このあたりも、なかなか今までにはなかった本、と付け加えておきたい。少し前の本ですが、ぜひご一読を。

日本を知る105章

著者】コロナブックス【出版社】平凡社
【発刊年月】2001年05月25日【本体価格】2,000円【ページ数】326p
【ISBN】4-582-63390-0

Among the numerous variety of human relationships,
the duty of justice to be pursued as a human being is called giri.
There is no other word quite so typically Japanese.
Besides, there is no exact equivalent to the word in English.
本書 254p より抜粋

新しい上司はフランス人♪…とは、今流行るあの歌のワンフレーズだ。インターネットの普及を始めとして、ビジネスパーソンの交流範囲もかなりインターナショナルになったことを感じている方は多いだろう。さて、自らの周辺は国際化した、しかし、自らの足元である「日本」のことを、周りの人たちにきちんと説明できるだろうか。今回は趣の違うこの1冊を。

本書は「いき」から「演歌」まで、知っているようで意外と知らない(=きちんと説明できない)日本のいろいろを105のキーワードとしてピックアップし、日本を代表する作家・文化人たちが解説をおこなっている。キーワードにピッタリな写真とともに、全文英訳が付いている。この解説、なかなかの含蓄で、おもわず「なるほど…」と唸ってしまうモノになっている。

取上げられている105のキーワード。その守備範囲は意外と広い。生け花や武士道、禅、茶道といった、オーソドックスなもの。富士山、松、ひらがな、といったもの。パチンコや漫画、ファミコンなどの新しい文化。また、変わったところでは、愛想笑いや受験戦争、満員電車などといった、いわゆる日本らしいトピックスが並んでいる。かなり楽しく読み進められる。

例えば…義理。対人関係のなかで、人として踏みおこなわねばならぬ道や、道理のことを<義理>という。が、この言葉、代表的な日本的フレーズであって、英語に相当する言葉はないらしい。そして、外国人にとってこれほど厄介で始末におえない言葉ないに違いない、としている。日本人の対人関係の基本を、あなたなら外国人に対して、どのように説明するだろうか?

異なる文化に育った人に対して、自らの文化を適切に説明することはかなり困難である。しかし、話題として求められることは意外に多い。ちょっとしたコミュニケーションツールとして、今時のビジネスパーソンなら、本書に載っていることくらいは、最低限身に付けておいたほうが良いだろう。

わかりやすい(直訳にかなり近いが…)英訳も案外ためになる。難しい解説を、実にシンプルな英語で表現してある。日本語と併せて読めば、意外なスキルアップも期待できるだろう。まずは書店で手にとって欲しい。本欄としては変化球だが、お勧めである。

ニュースをみるとバカになる10の理由

【著者】ジョン・サマービル
【訳者】林岳彦/立木勝【出版社】PHP研究所
【発刊年月】2001年05月10日【本体価格】1,500円【ページ数】233p
【ISBN】4-569-61582-1

(前略)見逃されている重大なことがある。この本はその問題点を指摘するという意味で他書とは一線を画している。「その問題点」とは、ニュースの「定時性(デイリネス)」、つまり日々欠かさずにニュースが流れているということである。
本書 12p より抜粋

あるタウン誌のライターに聞いた話である。その地方に大きな水族館が出来た。入場者一番乗りは県内でも有名な「一番乗り専門(世の中にはこういう人もいるのだ)」の男性であった。しかし、翌日の新聞には最初の入場者として、県外から来た中学生2人組が紙面を飾っていた。何故こういうことが起きるのだろうか。本書を読めば、その理由がわかるはずだ。

新聞は毎日決まった時間に一定の量が届けられている。テレビやラジオといった放送メディアのニュースも、定時に流されている。当たり前のことなのだが…ここに落とし穴があるというのだ。世の中で起きている「ニュース」と呼ばれる出来事は、日々一定量起きているわけでは、当然ない。

また、それぞれのメディアが、世の中で起きているすべての「ニュース」を伝えているわけでもない(物理的にも出来るわけがない)。しかし、時間がくれば新聞は発行しなければならないし、テレビ番組はオンエアーしなくてはならない。まず、その定時性が「ニュース」というコンテンツの信頼感を損ねているというのだ。

さらに、ニュースは「広告を売るための道具である」というジャーナリストの言葉を引いて、稼ぐためのニュース作りについて言及している。読者を惹きつけるための見出しやレイアウト、ショッキングな写真、すべてを知らせずに小出しにする内容など。当たり前のことではなく、当たり前でないことを伝えるのが「ニュース」の役割であるとしている。考えてみればそうだ。

また、速報性の名の元に、ニュースが取上げる内容は、そのトピックスのごく一部に過ぎないことを指摘。あるトピックスに対して議論を深めるほどの情報量を、新聞やテレビが提供できているとは思えないとしている。ニュースは、半可通ばかりを生み出しているのではないのか、そう考えると、新聞やテレビは見ないほうが健全なのではないのか…と思えてくるのだ。

本書に書かれていることは、ある意味で一方的で得心いかない部分もある。実際、自分で収集できる情報など多寡が知れているわけで、ニュースの良い部分は計り知れないのだから。一方、本書が指摘するようなことを忘れて、発信されている情報をすべて信じて(そして頼りにしても)も、またいけないのであろう。情報社会に住む私たちが、必ず持っていたい視点を得るために、目を通しておくことを薦めておきたい。

これまでのビジネスのやり方は終わりだ

【著者】リック・レイバン クリストファー・ロック
ドク・サールズ デビッド・ワインバーガー
【訳者】倉骨 彰【出版社】日本経済新聞社
【発刊年月】2001年03月23日【本体価格】1,600円【ページ数】301p
【ISBN】4-532-14902-9

ネットで成功するための、クルートレインの12ステップ
1 リラックスする 2 ユーモアを持つ 3 自分の肉声を見つけそれを使う4 真実を語る 5 パニックに陥らない 6 楽しみながら働く 7 大胆に行う 8 好奇心を忘れずに 9 遊び心を持って 10 夢を持って 11 人の話に耳を傾ける 12 お喋りをつづける

インターネットを利用してビジネスをするものにとっての最大の悩みは、事業として成り立つのかが判断しにくい、と言うことだ。正確に言うと、自分たちが今まで培ってきた、判断のためのスケールが、まるで通用しない、となるのかもしれない。本日紹介する「これまでのビジネスのやり方は終わりだ」は、そんな悩みを解決する糸口が見つかるかもしれない一冊だ。

まず冒頭に「95のテーゼ」題して、ビジネスの要素=市場・企業・顧客・コミュニケーション・ワークマネジメントが、インターネットの出現によって劇的に変わったことをまとめている。このテーゼの中で貫かれていることは、一方的なものは古びた、これからは双方向なのだ、という点である。

せっかく、企業と顧客が、上司と部下が、ダイレクトに結ばれたんだ、もっと話そうよ、ということである。そして、その押し付けではない、インタラクティブなコミュニケーションが実現したとき、顧客は満足し、社員は画期的な仕事をし、社会は笑いの絶えないものになるのではないかと、本書では述べられている。なるほど、素晴らしい。

ということは、今までのビジネスマネジメント(=一方的な管理や命令)や顧客とのコミュニケーション(=プッシュタイプの広告や両者間のコミュニケーションチャネルが細くリアルタイムでないこと)が、まるで通用しない世界である、ということになる。新しいメジャー(=コミュニケーション)を持って、ビジネスを構築していかなくてはならない、そんな時代であることを教えてくれているのだ。

サブカルチャー的なフレーバーのする本書は、翻訳もそのテイストに習っている。したがって、サクサクっと読めるという感じではない。また、その多くのパラグラフは、インターネットの最先端を行く人(=マニアではない)のマインドであって、マスな意見ではないだろう、とも思える。

しかし本書に記されている「人間同士の会話がビジネスを作り出していく」というポリシーは、これからの時代のビジネスを考えるうえで、必要不可欠なモノとなるだろう。それに触れるために一読をお勧めしておきたい。ビジネスとは人の声なり、という実に当たり前の結論が、インターネットビジネスにも、求められていることが、わかるはずだから。

チーズはどこへ消えた?

【著者】スペンサー・ジョンソン【出版社】扶桑社
【発刊年月】2000年11月30日【本体価格】838円【ページ数】94p
【ISBN】4-594-03019-X

物事を簡潔に捉え、柔軟な態度で、すばやく動くこと。問題を複雑にしすぎないこと。恐ろしいことばかり考えて我を失ってはいけない。小さな変化に気づくこと。そうすれば、やがて訪れる大きな変化にうまく備えることができる。変化に早く適応すること。遅れれば、適応できなくなるかもしれない。最大の障害は自分自身の中にある。自分が変わらなければ好転しない。
本書 65p より

言わずと知れた大ベストセラーである。2月現在で99万部、まだまだ売れつづけている。この、100ページに満たない小冊子が、何故そんなにヒトの心を惹きつけているのだろうか?粗筋は以下のとおりである。

ある国に、2匹のねずみと2人の小人が住んでいる。迷路があり、そこでチーズを探す。探していたチーズが見つかり、安住を決め込むのだが、ある日突然そのチーズはなくなる。

単純なねずみたちは、次のチーズを見つけるためにさっさと行動に移るのだが、知恵のある小人たちは、チーズが消えたことの検証ばかりして、なかなか新しいチーズ探しに行こうとしない。しかし、小人のうちの1人が、勇気を出して迷路を探し回り、ついに新しいチーズを見つけるのだった。

チーズとは、私たちが人生に求めているもの。例えば、仕事や家族、財産や安定などを指している。迷路とは、会社や地域社会、家庭など、チーズを追い求める場所のことである。書かれてあることをまとめれば…世の中は変化している、そのことに早く気が付くこと、そして自分も変わること、それが肝心だ…ということだけだ。

それ以上でもそれ以下でもない。現状を何とかしなくては、そう思っている人たちの琴線に触れた、ということになるのだろう。究極のポジティブ・シンキングと言えるこの本。その内容に特段の新しさはない。しかし、この本には意外な活用方法がある。

変化を恐れるなと、ヒトに説くことは難しいけれども、この本を薦めることはそれほど難しいことではない。そう、自らがいる組織のなかで、変化を必要とする人間に対し、そっと気が付かせるために、この本は最適なのかもしれない。企業が一括購入し、社員に配布するケースが多いのもうなづける。

ダイナミックな変化が求められる今のビジネス社会。わかっていても身をすくめてしまいそうになる。そんな時、この本を手にとって見ると良い。ゆっくりとではあるが、確実に背中を押してくれるはずだから。

日本の論点2001

【編者】文藝春秋
【出版社】株式会社文藝春秋
【発刊年月】2000年11月10日【本体価格】2,667円【ページ数】828p
【ISBN】4-16-503000-7

二十一世紀初頭の日本社会を考えるうえで選択肢となるであろうホットな論議を、さまざまな分野から抽出し、当該分野の第一人者、または論争の当事者に持論を展開していただいたものです。本書に収録した各論文は問題点を俯瞰しやすいように、とりわけ価値観の衝突が大きく、議論の分かれることの多い二三分野に分類しました。
本書の読み方 より

毎日、新聞は読んでいる、インターネットのニュースサイトもチェックしている、帰宅すれば、テレビのニュース番組も見ている。多忙な中でも、これだけの情報収集を行っているビジネスマンは、決して少なくないだろう。しかし、そこで流れているニュース一つ一つの、本質的な課題や出てくるキーワードを確実に理解できているヒトは、どれだけいるだろうか。

そんなヒトにお勧めしておきたいのが本書である。本書は、今の日本社会において考えなければならない、様々なトピックスを、その分野の(異論はあるにせよ)第一人者と呼ばれるヒトが、論文を展開、さらに必要なキーワードを抽出し、コンパクトに解説してくれている。一渡り読んでおくことで、世の中の流れを格段に深く理解することが出来るはずだ。

例えば「リストラ」という、耳に馴染んだキーワードにおいても、雇用を維持するべきなのか、雇用を創出するべきなのか、長期的視野に立った将来の労働力不足を見通せているのか……など、知っておくべき視点が多くある。カンタンに知っておいて損はない。また本書は、それぞれの筆者が論を展開した後に、基本図書として関連図書を紹介している。これも有難い。

ビジネスマンは、日々の忙しさから、往々にして「自分のテリトリー」のことだけしか知らない、ということになりがちだ。自分の国が今置かれている立場や情勢、社会での様々な問題を、広い視野を持って見通す力に関して、意識して持たないと身につかない。この広い視野、意外と今の業務にも役立つことがあるはず。ビジネスは社会を相手にしているということから、それは自明だ。ビジネスマンとしての基礎的素養をビルドアップするために、ご一読を。

市場「淘汰」されるサービス業 顧客「選択」されるサービス業

【著者】村上世彰【出版社】ダイヤモンド社
【発刊年月】1999年02月18日【本体価格】1,800円【ページ数】231p
【ISBN】4-478-50163-7

「我々銀行を、小売業と一緒にされては困りますね」あるとき、某大手都市銀行の役員はこのように発言した。しかし、実は「一緒」なのである。銀行をはじめとする金融業も、百貨店やスーパーマーケットといった小売業も、等しく「サービス・プロバイダー」(サービスの提供者)なのだ。
本文 019p より

プロバイダーと聞いて何を思い浮かべるだろうか?たいていはISP(インターネット・サービス・プロバイダー)を、真っ先にイメージするだろう。最近話題のASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)を頭に浮かべる人もいるかもしれない。本書では、サービスを提供する産業を広く「サービス・プロバイダー」と呼んでいる。

いささか旧聞に属する本ではあるが、サービス・プロバイダーを語るに、最も的を得て、しかも、コンパクトにまとまっている本ということで、ぜひ紹介しておきたい。著者は、通商産業省サービス産業企画官という肩書きを持つ「お役人」である。サービス産業の現状とあるべき姿について、わかり易く紹介されている。

内容だが、まず、サービス・プロバイダーについて述べている。サービス産業全体における「プロハイダー」としての視点の欠如を指摘。さらに、優れたサービス・プロバイダーとしての要件、サービス・プロバイダーの巨大化、寡占化について言及している。グローバル・スタンダードを踏襲していけば、結果的に、それに対応するために、統合が進み、サービス産業は寡占状態になる、というくだりは、ぜひとも知っておくべき流れであることは、言うまでもない。

さらに、サービス・プロバイダーを進化させる要素として、評価システムについても、そのあらましをまとめている。サービスの質を低下させている原因は、提供者と受給者の情報格差(サービスについて提供を受ける側が何も知らなさ過ぎる)であるとし、サービスを公正に評価するシステムの必要性を説く。さらには、評価システム事業のケーススタディを取りあげて、「プロバイダーを評価すること」についての、具体的な理解を促している。

今後のビジネス社会において、サービスに関する原理原則を理解していないビジネスマンに、多くは望めないだろう。あらゆるビジネスマンは、実は、一人一人が「サービス・プロバイダー」なのだから。自らが提供すべきサービスのための指針と、その評価軸が詰まっているこの本、目を通しておくべきだろう。

新聞広告で企業戦略を読む

【編者】日本経済新聞社広告局【出版社】日本経済新聞社
【発刊年月】2000年08月02日【本体価格】1,600円【ページ数】239p
【ISBN】4-532-14848-0

新たな世紀に向かって、広告の出し手も受け手も根底から価値観の再検討を問われている。そのなかで、ひとつひとつの広告に出し手の考え抜かれた英知が集中されている限り、新聞広告は広告主と読者のインタラクティブな関係、交流の契機と場面になり得るということである。インタラクティブという効用がネットの専売特許であるかのような世上の常識は見直されなければならないのではないか。
本文 16p より

ビジネスマンにとってのベーシックな情報源とは何だろう。インターネットが席巻しているこの時代においても、未だそれは新聞であることに間違いはない。本書は、日経新聞に出稿された「広告」を事例とし、そのメッセージから時代の潮流をつかむ、という内容である。シリーズとしては3冊目になるこの本、なかなかに面白い。

例えば第1章では「金融」と「e-ビジネス」を取り上げて、その広告メッセージから「グローバルスタンダード」「新しいイメージの確立」「ヒューマンアクセス」と言うキーワードを抽出。その言葉の元に、それぞれの企業が、何を言わんとしているのかが、詳細に解説されている。広告によって発信されているメッセージが、時代を映す鏡であることがわかる。さらには、「企業メッセージの新戦略」「提案型アプローチ」「ニュースとの相乗効果を狙う」と、イメージ的な広告が影を潜め、メッセージ性の強い新聞広告が増えている、今の新聞広告の姿を解説している。

情報源としての、新聞と他のメディアとの違いを考えてみると「広告の違い」にあるのではないだろうか。ウェブ上でのバナー広告や、テレビなどのコマーシャルは、どちらかと言うと「一瞬のメッセージ」だ。しかし、他のメディアとは比較にならない情報量を提供出来る新聞広告は、「理解しやすいメッセージ」を発信していると言える。ビジネスマンとして、その重要性を再認識させられる1冊である。

また、新聞広告はビジネスドキュメントの作成時にも、大きいに参考になるはずだ。データの効果的な見せ方、ポリシーを伝えるための表現の工夫、わかりやすく陳腐ではない説得の言葉、など、表現のプロたちが、あらゆるテクニックを駆使している。本書は、広告表現における留意点も、かなり解説している。精読すれば、今までとは、一味違った書類作りのために役立つ、という本でもありそうだ。

組織の経済学

【著者】ポール・ミルグロム/ジョン・ロバーツ
【出版社】NTT出版社
【発刊年月】1997年11月10日【本体価格】5,500円【ページ数】702p
【ISBN】4-87188-536-4

本書でわれわれは、次のような疑問に答えようとする。(中略)「雇用、給与、昇進の仕組みは、従業員や役員の生産性にどのような影響を与えるのか」、「利益を生む資産を誰が所有するのかという問題は、どのような要因によって決定されるのか」、「企業の資金調達や所有構造は、企業の業績や経済システムのパフォーマンスにどのような影響を与えるのか」などである。
本文 腰帯 より

ビジネスマンとして日々忙しい毎日を送っていたとしても、自らが属している組織について考えを至らせているヒトは、意外に少ないのではないだろうか。キャリアを積み重ねていくと、避けては通れない「企業組織」について、系統立てて理解しておくことは、ぜひとも必要なことだろう。

腰帯には、アメリカのMBA、比較制度分析、企業理論の標準的な教科書であるとされている本書は、企業組織とそれを取り巻く制度について、数多い事例を挙げて、詳細に分析、システムとして考察している。経済組織としての企業の基本的な問題から始まって、組織における取引や効率性の問題、組織と市場との関係、組織における契約、インセンティブ、さらには、雇用、資金について、組織デザインと…企業組織に関する実に幅広い範囲の経済理論をカバーしている。それぞれの項が詳細で、拾い読みをするだけでも、実に楽しい。

例えば、報酬と動機付けという章では、さまざまな給与形態について整理した後に、報酬政策の目的として、給与を支払う意義について詳細に解説している。さらに、動機付けとしてのインセンティブ、出来高払い、業績評価と、トピックスは広がりを見せる。組織における経済学的視点でのレクチャーなのだが、本書に書かれてあることを理解しておくことにより、自らのビジネスマンとしての行動の裏打ちができることは間違いない。キャリアを積まれて、管理職になる方には、必読の1冊と言えるだろう。

ここでお断り。取り上げることをためらったくらいの大著である。この本を紹介しようと思ってから、通読するまでにずいぶん時間がかかってしまった。ボリュームもさることながら、内容はなかなかに歯ごたえがある。まとまった時間が取れるこの時期だからこそ、と言うよりも、この時期にしか紹介できない1冊である。高価なので、まず書店で(少し大きな書店ならあるようです)手に取られて、目次をじっくり見て欲しい。自らの興味のあるトピックスがひとつでもあれば、買いです。名著。

こんな経営手法はいらない

【著者】日経ビジネス 【出版社】日経BP社
【発刊年月】2000年06月25日 【本体価格】1,400円 【ページ数】 254P
【ISBN】4-8222-4187-4

サプライチェーン・マネジメント、IT、e組織、賃金革命、ISO、新人事制度、ERP……
流行りの経営手法をあなたの会社、ホントに活用できていますか?
本書 腰巻 より

あるシステムエンジニアに仕事の苦労を尋ねると、日本のほとんどの企業は「リプレイス」だけを求めるところが面倒だ、と話してくれた。コンピュータを使っての会計システムを導入する際にも、現状の処理方法の問題点を洗いなおして、解決のためのシステムを提案したとしても、必ず、例外処理として、今までの慣習(=往々にして大きな問題点であることが多いらしい)を残そうとする。結局煩雑な作業が必要なシステムになってしまって、今までのほうが仕事がしやすかったと、言われるのだそう。

本書のまえがきにも、同じことが書いてある。革新的な経営手法を導入したけれども、「日本の企業体質」に合わない、とブームは去っていく。現状否定をすることからは始めなくてはいけないのに、それができないところに問題があるはずと…。

本書では、経営手法を安易に導入すると、どんな痛い目に企業が遭うのかということを、浮き彫りにしている。紹介されている経営手法は「サプライチェーン」「ISO」「採用手段」「賃金体系」「新人事評価」「e組織」

「アフターサービス」と多岐にわたっている。それぞれに、最先端の経営手法を取り入れたことによって起きた「混乱」と問題点を具体的に提示。さらに、関連する「成功事例」を紹介する、という構成が、とてもわかりやすい。

自らの会社が行おうとしている、さまざまな「改革」の問題点が、とてもリアルに理解できることは、間違いない。自らの足元がなぜだめなのか。これがわかるだけでも、大きなスキルアップであることは、間違いないだろう。

雑誌(=日経ビジネス)に掲載された記事を再編集・加筆していることから、多少雑然とした感の書籍ではある。しかし、それを補って余りある示唆が、ここには詰まっている。書店で手にとって見ることを、まずはお勧めする。

エクスペリエンス・エコノミー 経験経済

【著者】B・J・パイソンII+J・H・ギルモア
【出版社】流通科学大学出版
【発刊年月】2000年02月26日 【本体価格】1,770円 【ページ数】 317P
【ISBN】4-947746-02-5

本書の著者パイソンとギルモアは、サービス経済を中心とする経済システムの行き詰まりを打開し、新たな成長と雇用の拡大を実現するキーになるのは「経験」という価値の提供(オファー)にあると主張します。単なる商品「機能」の提供ではなく、また、「利便」的サービスの提供でもない、さらに上位の価値として商品サービスに「経験」という価値を組み込むことで、サービス経済社会を超えた次の経済的発展段階へ移行することができる、というのが著者たちの主張です。
本文「訳註に代えて」より

本書は二つの重要なキーワードを述べている。商品サービスが「コモディティ化(=差別化がなされていないもの)」しないためには、「経験」の価値を体現化した商品サービスを提供すること。そして「経験」を商品サービスに付加するためには、顧客を観客にみたてた「演劇」というモデル化で実現しようとしていること。この二つは、それほど新しい考えとはいえないが、この本は類書にない丁寧な解説で、具体的にどう考えれば良いかを、明確に示している。

まず、ここでいう経験とは「過去の体験」という意味ではなく、「その場で、心や身体が受ける、精神的、肉体的な感動」のことを指している。例えば、今人気のスターバックスコーヒーは「コーヒー・エクスペリエンス」という言葉で、自社の提供する価値を表現している。商品やインテリア、サービスなどではない。スターバックスでコーヒーを飲む行為そのものに、対価を支払わせる。このように、五感を包み込むような商品サービスを、今後は提供しなくてはならないと、本書は説く。

また、「エクスペリエンス」を最も商品サービス化した典型として、ディズニーランドを引き合いに出している。ここでは、消費者を「ゲスト」と呼び、従業員を「キャスト」としている。乗り物に乗ると言うサービスを提供するのではなく、キャストが作り出す、五感に訴えるステージングから、ゲストは、固有の経験を与えられるのだ。そのためには、仕事にかかわる全ての人たちは、役者であり、その与えられた役を、演じることが必要なのだとしている。働く側からみれば、仕事とは、与えられた役回りなのである。だれもが、あるシーンの役者なのだ。

内容ぎっしりの本書の全てを、この欄で伝えることは難しい。この本の面白さを読んで「経験」して欲しい。さあ、書店へ急げ!

閑休自在 悠々自滴 異口同飲

【著者】西村佳也/長谷川好男【出版社】美術出版社
【発刊年月】1999年11月11日 【本体価格】1,500円 【ページ数】 160P
【ISBN】4-568-22109-9

ここに収められた一三四篇の文章は、すべて「あみだクジ」のごとき形式になっている。その時どきの歳時記的テーマをまず選び、そのテーマとなった事柄に関する思い入れ、こだわり、知識、教養、薀蓄、含蓄、洒落、諧謔、ノスタルジアなどをへめぐったあげく、最後に「ウイスキー」を愛飲する愉しさのところへ文章を落とし込む。見事な芸の連鎖である。
贅沢なたくらみ 村松友視 同書 腰帯推薦文 より

現代のビジネスマンに求められている教養とはなんだろうか。社会や経済問題に明るく、流行りモノに強く、そして、電子機器が操れるって感じだろうか。求められているリテラシーが、例えそこにあったとしても、(恐らく必要とされているだろう)スキルだけを磨くだけで良いのだろうか。さりとて、じゃあ、ビジネスマンの教養ってなんだ、と考えたときに、ひょっとしたら、指針になるのでは、という本を見つけた。

本書は、サントリー山崎の新聞広告をまとめただけの本である。広告コピーなれど、宣伝くさくなく、(架空の)私が登場し、ちょっとした雑感を書いている。ただそれだけ。しかし、その内容たるや、上記の推薦文のごとくである。たった三百文字で、悠々と遊ぶ。その馥郁たる世界は、なんとなく、オトナの教養をイメージさせる。別段、役に立つことが書かれているわけではない。しかし、オトナのビジネスマンとして、こんなことを知っていれば、カッコイイってことが、ここにはたくさん詰まっている。

例えば、紅葉を肴にウイスキーを楽しむために、もみじの葉に砂糖水を塗ったりする。文章を書いていて、テンの位置に迷ったことから、尾崎紅葉や二葉亭四迷に思いをはせる。上手な歩き方を忘れてしまったと嘆いてしまったり。サンタクロースの正しい住所を知っていたりする。さらには、深夜に卵焼きが食べたくなって焼いたりする(笑)。

こういう、取るに足らない、知っておいて、得にならないことを学ぶ機会を、私たちは失っているような気がする。こういうことを知っているヒトは、一目置きたくなるし、その余裕が羨ましくなる。キャリアアップに努力する一方で、たまの休みにでも、この本を開いてリラックスしてみてはどうだろうか。小さなエピソードだが、もっと知りたい、と思うきっかけづくりに向いているコラムも多い。どこから読んでも、誰が読んでも、楽しいという、いまどき珍しい本でもある。ぜひ書店でお探しください。

経済ってそういうことだったのか会議

【著者】佐藤雅彦/竹中平蔵【出版社】日本経済新聞社
【発刊年月】2000年04月03日 【本体価格】1,500円 【ページ数】 357P 【ISBN】4-532-14824-3

竹中□それを経済学の用語で表すと、「補完材と代替材」という考え方になります。「補完材」というのは、「コーヒーが売れれば、クリープが売れる」という関係です。これに対して、代替材というのは、新幹線に乗れば飛行機には乗らない-。つまり、新幹線か飛行機か、という関係です。さっきのゲームは両方の面があるのかもしれません。佐藤□ああそうですね。「放送の代替」と「テレビの補完」ですね。
同書 293p より

書店に行くと経済学の入門書が並んでいる。今現在の業務に直接係わらなくとも、ビジネスマンのリテラシーとして、経済がわかること、という風潮があるのだろう。本のサイズを大判にしたり、カバーに江口寿史を使ってみたり、図版を多用したり…。どれも取っ付き易さに配慮しているが、今回取り上げるこの本は、その中でも、わかりやすさでは、ずば抜けている。著者は「だんご3兄弟」でも知られる稀代のヒットメーカーと、気鋭の経済学者。そんな二人が、がっぷり四つに組み、経済学について語り合った対談集である。

佐藤氏の興味深く、極めて本質を突いた質問に対し、経済学者竹中氏は、簡潔にして的を得た経済学的回答で応える。貨幣と信用、株の話、税金の話、アメリカ経済、円・ドル・ユーロ、アジア経済の裏側、投資と消費、起業とビジネス、労働と失業、競争か共存か…。目次に並んだその会議の内容は、新聞でビジネス誌で、日々報じられている記事をすっきりと理解するために必要な知識を作るのに、十分な内容になっている。

例えば、貨幣に関する章では、小学校のときに集めたビン牛乳のふたが価値を持ち得たエピソードから、外国の紙幣はなぜおもちゃに見えてしまうのか、偽札を作ると誰が損をするのか、と言う話まで、様々な話題が展開される。その話の流れの中で、貨幣経済におけるいくつかの命題を解説したり、コンフィデンシャル・クライシスについて触れたり、と飽きさせることがない。知的な(しかし居丈高ではない)オモシロさに溢れている。

対談集にありがちな読み難さも全くなく、必要なところに繰り返し入れられる用語解説、きちんと意味がわかっているからこそ入るちょっとした挿絵(佐藤氏のイラストが可愛いのだ)や図版と、読み手に対して、たくさんの配慮がなされている。経済に興味がある人は、まずはこの本を手にとって欲しい。一押し。

新教養主義宣言

【著者】山形浩生【出版社】晶文社
【発刊年月】99年12月05日 【本体価格】1,800円 【ページ数】 293P
【ISBN】4-7949-6415-3

教養というのは、本来はずっとずっと実用的なものだ。さっきも言ったように、教養って価値判断のベースになるものなんだもの。そして世の中の「商売」と呼ばれているもの、ビジネスと称するものはすべて、この価値判断のかたまりじゃあございませんか。それをきちんと教えなくてはならない。
同書 28p より

口惜しいから書きたくはないが、世の中に溢れているビジネス書の書評の中で、山形浩生のそれは、実に信頼できる。まず駄目なものは駄目と、きちんと言いきってしまうところ。そして、その駄目さ加減が理解できることで、世の中の本質的な課題が見とおせてしまうところが素晴らしい。著者の文章はとてもわかりやすく(砕けたモノ言いともとれる)その分、不愉快な印象を読み手に与える場合もある。この著者の書籍を紹介している文を読むと、筋のとおった罵詈雑言、などと括ってあるものが多い。しかし、罵詈雑言と揶揄してしまっては、本質を見逃してしまうことになる。

著者は日本人の教養レベルが落ちていることを嘆く。教養とはリテラシーなはずなのに、ベースがない状態では、文化的にはもちろん、経済的にも世界に伍していくことは不可能だろうと。知的インラフとしての教養主義を唱えている。教育と啓蒙こそが、シンプレックスから、マルチプレックスへの掛け橋になるのだと。教養が衰えている、だから、日本社会が混迷をしているのではないかとも言う。

しかしここで疑問なのだが、教養ってなんだろう。筆者は、所謂「日本的」な教養は、もはや用を成さないと否定している。じゃあ「教科書」なのかと揶揄している。筆者の考える教養とは、このエピローグを読んでも茫洋としている。はっきりわかりにくい。

その答えは、実は、エピローグに続く本文にちりばめられている。情報化社会、ネットワークと経済、文化、社会システムなど、収められている文章の守備範囲はかなり広い。そして、読み勧めるうちに、自分の「新教養」のレベルがどの程度なのか、自覚できるだろう。知らないうちに。

巻頭からの50ページ分の文章は圧巻である。-心ときめくミームたちを求めて-というプロローグを読むためだけにお金を払っても惜しくない。

なんでんかんでんの作り方

【著者】川原ひろし【出版社】日経BP社
【発刊年月】99年12月01日 【本体価格】1,300円 【ページ数】 276P
【ISBN】4-8222-4136-X

「なんでんかんでん」には毎日少なくとも八百人のお客様が訪れる。仮に、毎日お客様の一割にあたる八十人の方が「まずい」と言えば、二ヶ月でその数はのべ五千人ほどになる。さして、さきほどの「一人のクレーム客の裏に五人の物言わぬクレーム客」という法則に従えば、のべ二万五千人の方が「まずい」と思っていることになる。それだけの数のお客様が黙って来なくなってしまったら……と考えただけでも、足ががたがた震える思いだ。
同書 173p より

「なんでんかんでん」とは東京で人気のあるラーメン店のこと。年商三億のこの店ができるまでのサクセスストーリーを、オーナーが自らでまとめたものだ。成功者の一代記を読むことは楽しい。何故ならそこには、成功者としての自信と自負が、存分に書き込まれているからだ。ヒトの(ある種の)自慢話は、自らのビジネスへの参考になるかというと疑問だが、やる気を喚起するには、よい素材だと思う。それこそ、「なんでんかんでん」の名物・博多ラーメンではないけれども、濃厚な方がより良い。

歌手を目指したが駄目だった著者は、一念発起しラーメン店を始める。実業家の一族に生まれた著者は、開業時、本人が書いているほどには苦労せず、店をヒットさせてしまう。開業時からとってきたさまざまな戦略は実に巧みで(後からまとめているからだろうけど)、中々に読ませる。

例えば、開店当初はメニューの数を増やし、居酒屋のような店にした。そうすることで、お客の店内滞留時間は増え、結果的に繁盛店を演出できる。ある程度お客がついたら、今度はメニューをラーメンに絞り込むことによって、掛かるコストをギュッと圧縮し、さらに、お客の回転率を上げた。この戦略、なかなか鋭い。要は、今店にとって、どのような戦略が必要なのか、ということを的確につかんでないと、考え付かないからだ。読み進めると、一つ一つがはっきりとした「目的」をもって実行されていることがわかる。できそうでできないことだと、心当たりあるでしょ?

平易な文章と、かなり濃厚な自慢話は、ぐんぐん読み進めることができる。通り一遍読んだだけでは、その良さがわかりにくい本だろう。ひとつひとつのエピソードを、自分のビジネスライフに置き換えてみると、参になることが多いかもしれない。味見を勧めておきたい。

怪読力

【著者】鵜飼正樹【出版社】メディアワークス【発刊年月】99年10月20日
【本体価格】1,300円 【ページ数】 263P 【ISBN】4-8402-1311-9

お勉強好きサラリーマンが買う本
圧巻! 時間のスキマ埋めつくす情熱
人生の成功するための法則は幾つあるの?
同書 見出し より

この本は、朝日新聞に連載されていた書評コラムがまとめられたものである。この書き出しと、上の引用見出しでピンと来たアナタ、センスありますよ。そうこの本、タダの書評ではない。世の中に出回る多くの、ちょっと変な、少しおかしい、そんな本(おもにビジネスマンに向けられたモノ)にイチャモンをつける書評なのだ。そしてこの書評、かなり面白い。そして実は、ビジネスマンのスキルアップにもつながる(ことがあるかもしれない)。

この本は、腰帯にあるように、怪しげな光を放つ435冊の本!を紹介しているわけだが、ここでの多く本は、そのものは普通の本であることが多い。書店で横並びに見ると、いろいろとまとめてみると、違った視点で捉えてみると、たちまち怪しげなオーラを発してしまうのだ。例えば、人生に成功するための法則は、店頭にたくさん並んでいる。これらの法則の数を加算していくと、なんと1211にもなる、と述べる。類似本が多いということを揶揄しているのだが、店頭に出かけても、このツボに気がつくヒトはいない。ましては足し算するヒトはまずないだろう。

この例のみならず、本書には、このようなある種の視野の広さが感じられる。このあたりの能力は、一朝一夕に身につくものではない。本書を読めば、それはどう言うことなのか、ということが垣間見ることが出来る。

また、二番煎じ本の露骨さや、大真面目で書かれているが、類似本をまとめてみるとナニかがずれているコトへの指摘など、ビジネスマンに洪水のように向けられているビジネス本は、ちょっと変である、という真っ当な批判が、本書のベースには流れている。

生涯学習といいながら、いつまでたっても学校的な勉強以外が考えられない発想を嘆き、5分や10分の活用方法に血道をあげる、余裕のなさをたしなめる。読んでいて、本欄担当者としては耳が痛い。しかし面白い。自戒の念をこめて、まずはお勧めする1冊である。

流行人類学クロニクル

【著者】武田徹 【出版社】日経BP社 【発刊年月】1999年07月30日
【本体価格】3,500円 【ページ数】 862P 【ISBN】4-8222-4147-5

本書に記されているのは、紛れもなく僕達が生きた時代である。
同書 862p より

10年にわたって、雑誌・日経トレンディに連載されていた「新流行人類学」をまとめたもの。先週に続き大冊である。本当は来週紹介しようと思っていた。なぜなら、そのページ数から、締め切りまでにすべてに目を通すことは出来ないと踏んでいたからだ。果たして、スーッと読めてしまった。興味深い内容と読み易い文章、本書には、この二つが揃っている。

二十世紀末のニッポンの流行を省みることが、どうしてビジネススキルのアップに繋がるのだろうか。ビジネススキル向上のためには、実務的なノウハウを求めることも大切だが、それ以上に、パースペクティヴな視点が持てるかどうかが、様々な予測を持って行動しなくてはいけない、ビジネス社会において、今後は重要になると思われる。

流行という一過性の現象を、丁寧な取材と軽妙な筆致によって、文字に定着させた本書を読むことで、視点のありようを見つけ出すことが出来るだろう。流行の本質を炙り出す、といった大層なものではなく、流行の表層からでも、視点次第で多くのことが学べることがわかる。 また、過去に流行したものから、未来の流行を導き出すことは出来ないが、過去に失敗したケースからは、さまざまなことを学べるはずだ。

本書にはそれこそ、時代のあだ花のような事例が山とある。カバーしているテーマも、学生専用カードから始まって、丸の内ヤンエグ交流会、ソムリエ、ダブルワークウーマン、電磁波、和製ロック、仏教界と、実に幅広い。コラム一つ一つを解きほぐすように読み進めれば、過ぎてしまった流行だから分かる、答えを知っているから理解できる、様々な間違いに気がつくはずだ。そして、過去の様々な失敗例は、最良の教訓であることに気がつくだろう。

書店で手にとって、目次の中から興味あるコラムに、その場で目を通してみることをお勧めする。腰帯に-20世紀ニッポン流行供養の書-とあるこの本が、あなたの座右の書になるかもしれない。

ぼくはこんな本を読んできた

【著者】立花隆 【出版社】文藝春秋 【発刊年月】1995年12月20日
【本体価格】1456円 【ページ数】 311P 【ISBN】4-16-351080-X

金を惜しまず本を買え。本が高くなったといわれるが、基本的に本は安い。一冊の本に含まれている情報を他の手段で入手しようと思ったら、その何十倍、何百倍のコストがかかる。
同書「実戦」に役立つ十四ヵ条 より

仕事を進める上で、正確に資料を読むことが出来る、と自信を持って言えますか。「もちろん」といえる人は、少ないのではないだろうか。それ以上に、読むという行為の難しさを、認識している人は少ないのでは?資料や書籍を読むことが難しいのは、得た情報を活用する、という最終目的地までのプロセスが、理解できていないためだ。今回は、活用するための知識を身につけるための読書法を会得したい、そんな人向けの書籍を。

著者はジャーナリストで学者や研究者ではない。得意な分野はあるが、その道のプロとは違うのだ。しかし、専門家も目を見張るその仕事の秘密は、読書法にある。著者の仕事の進め方とは、ある分野について、膨大な読書によって学習、予備知識を持って、専門家に会い知識を深め、得たものを著作として発表している。

まずは読書。それがすべてのベースになっている。これは、仕事に必要な情報を、書籍やウェブなどから入手、さらに周辺から情報収集した上で、業務に活かすという、スキルの高いビジネスマンの情報活用法と、よく似ている。著者の読書法-知っておいて損はないノウハウだろう。

著者の読書法とは、1.まず金を使う-大金を使うことで、情報を一度に集めてしまうと同時に、投資したという気持ちを持つことで、そのテーマを投げ出さないようにする、という具体例からスタートする。以下、大型書店をはしごする、古典的入門書から名著へ読み進める、など。実に使えるノウハウが、「体験的独学の方法」という、わずか16ページのコラムに書かれている。これに、引用した「実戦」に役立つ十四ヵ条(わずか3ページ)の二つを読むために、この書籍を求めても損はない。

『読み書きの技法』(小河原誠著/ちくま新書/660円+税)が面白い。良い文章を書くための、正確な読み方というノウハウをまとめている。具体的な例が豊富で、役立つ。併せてぜひどうぞ。

一人勝ちの経済学

【著者】大前研一 【出版社】光文社 【発刊年月】1999年 8月30日
【本体価格】1600円 【ページ数】 323P 【ISBN】4-334-97228-4

つまり、自分がどういう人生を生きたいのかという「答え」によって、時間のかけ方もお金のかけ方も決ってくる。自分が何を手に入れるべきかも決ってくる。逆に言えば、どういう人生を生きたいのかが決っていない人には、自分が何を手に入れるべきかが分からないということである。
同書 P310から引用

ここ近年、今まででは考えられなかったメガヒットが乱立している。音楽や、映画というエンターテイメントの世界では宇多田ヒカル、B’z、GLAY、

『タイタニック』、そしてポケットモンスター。出版の世界では、『五体不満足』に『日本語練習帳』。『買ってはいけない』の大ヒットも記憶に新しい。

これらの大ヒットの裏側に、「人は選択肢が増えると、かえって選択ということをしなくなるのではないか」という疑問を感じたことから、この『一人勝ちの経済学』ははじまる。

近年日本で進行しているのは、様々な場所で言われる、「多様化」なのではなく、一極化という全く逆の方向性なのではないだろうか。そんな問題提起によって書かれた本書は、近年のメガヒット乱立の状況分析から、日本の経済・金融・産業に関して、そして日本とアメリカの関係、世界の経済に関して、と様々な問題に対して鋭い分析を加えている。

冒頭の引用は、こんな時代において私達に必要なことはなんなのか、という問いに対し、筆者である大前氏がみずから答えた言葉だ。同書は、単に一人勝ちというメカニズムを分析しているのではなく、急転落しがちな危うさもつ、一人勝ちという現象をいかに持続させていくか、という方法論へのヒントが解説されている。

最近の人事をめぐる動向は、私達ビジネスマンにとりャリアをいかに構築していくのか、という点において、間違いなく多様化の途を辿っている。この状況において、私達が思考停止に陥らず、みずからの望む道を選択し、成功を手にするための様々なヒントがちりばめられた同書。この1冊を、是非とも多くの方に手にとっていただきたい。

日本のおかま第一号 あなたは仕事に誇りをもっていますか?

【著者】野地秩嘉 【出版社】 メディアファクトリー
【発刊年月】1999年3月【本体価格】1500円 【ページ数】205P
【ISBN】4-88991-803-5

本当に人生は一度きりだと思うんです。僕は妻が死んだ時、人生はたった一度だから、後悔しないよう楽しもうと思いました。あのとき、自分の使命はふたりの子供を育て上げることだから、精一杯頑張るしかないと。しかし、無理して過労死するわけにはいかない。ですから休日はスキューバダイビングをやって、ストレスを発散し、人生を楽しみながら暮らしています。
同書 P143から引用

今週は、『日本のおかま第一号』という奇妙な題名の1冊を紹介したい。

この本は、筆者である野地氏が、下火となりつつある「正統派」キャバレーのNo.1ホステスの紅さん(玉音放送を聞いた現役ホステスに収録)や、サントリーでチーフブレンダーをつとめる興水さん(チーフブレンダーの技と素顔に収録)の仕事に対する姿勢、そして誇りに関して実施したインタビューをまとめた1冊だ。

仕事をテーマとしたインタビュー集や、ルポタージュは数多くある。(転職情報誌や、キャリアアップをテーマとする雑誌を開けば、毎週何人ものインタビューが組まれている)しかし、今週紹介するこの1冊が、他のインタビューと一線を画しているのは、その人にとって仕事とは何なのか、そして、仕事に対する考え方を通し人生といったものをどう考えているのかまでが、登場人物の答えから垣間見ることが出来るという点である。

冒頭で引用した言葉は、ロールスロイス、フェラーリといった高級車の総代理店でナンバーワン営業マンの飯島氏の言葉である。安いもので、2200万円、高いものとなると4300万円もするというロールスロイスを年間20台も販売する飯島氏のインタビューからは、どういった姿勢がお客さんを引き付けるのかという点だけでなく、私達が仕事をしていく上で必要なのはなんなのか、という考え方まで十分に伝わってくるものだ。

仕事をすることは、私達の人生において大きな比重を占める。それゆえに、この1冊のような、仕事をテーマとした秀逸なルポタージュは私達に様々なことを教えてくれる。この本に登場する9人が語る仕事への誇りや、筆者である野地氏の彼らへの愛情溢れる視線は、キャリアや仕事を考える際に忘れてなならない仕事に対する誇りを描き出してくれている。

同書を読み終え、副題になっている「あなたは仕事に誇りを持っていますか?」という問いかけをしたときに、日々の中で見過ごしてしまっているかもしれない「何か」を見つけることが出来るのではないか思う。そんな深い味わいを持つ本書を是非多くの方に手にとっていただきたい。

人間通になる読書術・実践編

【著者】谷沢永一【出版社】PHP研究所
【発刊年月】1999年9月3日
【本体価格】657円【ページ数】262P 【ISBN】4-569-60489-7

人を読書に向かわせる知的好奇心は、自分自身を成長させる原動力である
同書 扉より

読書の秋だ。夜の訪れが早くなってくるこの季節。ビジネス書や、仕事に関係する書籍だけでなく読書自体を楽しみたくなる。そんな折、読者の皆様はどのような読書生活をしているだろうか?是非今年の秋を充実した読書の季節にしていただきたいと思う。

と言っても、なかなか本を読む時間がないとか、お薦めの本がわからないのでどんな本を読めばよいのかわからないという人も多いのではないだろうか。そんな時に是非お勧めしたいのが、今週紹介する『人間通になる読書術・実践編』だ。

筆者である谷沢氏は、ベストセラーにもなった『人間通』の著者として有名な方。理解しやすい言葉で、人生の知恵を説いた『人間通』は、多くの人に手に取られた1冊だった。今回紹介する『人間通になる読書術・実践編』は、その名が示すとおり、谷沢氏による読書の実践編であり、氏が愛してやまない44冊の読書案内からなる第1部と読書の技術と題された第2部から編まれている。

「読者が直接に読まずとも、その書籍の精髄が理解できるように務めた」という筆者の言葉にもあるように、紹介される44冊の要約と、箴言集の言葉から多くのことを学べるように構成されている。

『井深大語録』や『ファーブル昆虫記』、そして『男はつらいよ 寅さんの人生語録』まで。同書で幅広く紹介された書籍の中から「これは」と思う書籍は是非手にとっていただきたい。読書という行為は、実生活や仕事の体験や経験をより深めるための智恵を与えてくれるのだから。

経営参謀が明かす 論理思考と発想の技術

【著者】後 正武【出版社】プレジデント社 【発刊年月】1998年12月25日
【本体価格】 1500円【ページ数】288P 【ISBN】4-8334-1664-6

論理は手段であって、目的ではないから、論理や発想の方法論を学びそれ を使う訓練をすることが、ただちにみなさまの仕事や社会活動のお役に立 つとは言えないだろう。しかし論理的な思考・発想の技術は、長い目で見 ると必ず「アタマをよくする」ために、そして「正しい判断」を行うため 有用であると思う。
同書 はしがきから引用

「戦略的思考が身につく」 と謳った書籍は数多くある。しかし、そういった書籍を1冊読んだくらいで戦略的思考は簡単に身につくわけではない。そんな容易に戦略的思考が身についたとしても、言ってみれば他の人も同様に戦略的になっているわけだ。つまり、そこではさらに高度な戦略的思考が必要とされ、無限連鎖を繰り返すように私達の戦略は高度なものが必要となってしまう。しかし、幸いなことに(?)私達は多くの場合、非戦略的な思考をしていることが多い。

さて、今週紹介する「論理思考と発想の技術」と題された1冊は、戦略的思考の基盤となる「論理」に関する1冊である。正直言って、この1冊を読んだ時、私の思考がいかにクリアになったかをこのスペースで伝えることに困難を覚えているほど、様々なノウハウが納めらた珠玉の1冊である。「正しい思考法で、最適な結論導き出す」考える筋道、論理の組み立て方、表現方法等を、演習問題と合わせて紹介してくれている同書は、論理という武器の使い方を読者にあますところなく伝授してくれる。

さて、本書と同様の成果を与えてくれる書籍には、[en] BOOK REVIEW No.39号で紹介した『考える技術・書く技術』がある。この2冊を合わせて読んでいただくと、この両書が持つ力をより強く実感することが出来るはずだ。

筆者である、後 正武氏は、ハーバード大学にてMBAを取得し、マッキンゼー・アンド・カンパニーにてプリンシパル・パートナー。ベイン・アンド・カンパニーにて取締役副社長、日本支社長を経られた方。戦略的思考を武器とするコンサルタントのノウハウを、今後の仕事と判断のための基盤に是非とも十分にお役立ていただきたい。

三年後に笑う会社

【著者】江坂 彰 【出版社】光文社 【発刊年月】 1999年 3月30日
【本体価格】848円 【ページ数】262P

時代が大きく変われば、競争の方法、ルールも変わる。
同書 P5から引用

今回紹介するのは『三年後に笑う会社』という1冊だ。書名の通り、3年後に笑っていられる会社を判断する基準を提示してくれている一冊だ。しかし同時に、この書籍に書かれた「笑う会社」の基準は、そのまま「3年後に笑うビジネスマン」になるための指標に一致する。私達ビジネスマンにとって笑う会社にいることも重要ではあるが、笑っていられるビジネスマンになっていることの方が実は重要なのではないだろうか。

例えば、「負ける会社-こんな会社は波間に沈む」と題された第2章は、“人まねばかりをする会社”“「和」、「協調」、「一致団結」から抜け出 せない”などの項目がある。この「会社」という言葉を「ビジネスマン」 におき替えてみれば、そこに書かれているのは、「3年後に笑うビジネス マン」になるためのヒントである。

また、「賢い兎は三つの穴を掘る」という中国の諺を紹介し、「三十代後 半から四十代前半は、三つの穴を堀りはじめる年代である。一つは家庭、 一つは会社、そしてもう一つは自分流の生き方とでも言おうか。」という 風に、本書には同時にこれからの生き方を示唆する多くの言葉が詰まって いる。

「経営者もミドルも、そして明日のエグゼクティブなベンチャーを目指す若 者の人も、本書を私からの逆説的応援歌と受け取ってくだされば幸いであ る」という筆者からの言葉にもあるように、この激変する時代、様々な世 代の方に手にとっていただき、多くの人に笑いっていただきたい。

会社はなぜ変われないのか

【著者】柴田昌治 【出版社】日本経済新聞社 【発刊年月】1998/1/23
【本体価格】 1,600円 【ページ数】350P

問題は、みんな文句をいうばかり、愚痴を言うばかりで「だからどうする」という姿勢がないことです。評論家ばかりで当事者がいないのです。
同書 P20から引用

今週とりあげるのは、1998年にビジネス書でベストセラーとなった『会社はなぜ変われないのか』だ。最近、続編が出版され、こちらも非常に売れている。そこで、再度読み直してみたのだが、非常に面白く、役立つ1冊だと痛感させられた。

No.48号で取り上げた「社長失格」と同様に、この1冊は小説の形式をとっている。最近、こういったストーリー性のあるビジネス書が人気を博しているようだが、これは、「読みやすい」というのが理由だけではないと私は考えている。今私達ビジネスマンが置かれている現実が、小説という形式をとった方が表現しやすい状況にあるからだと考えているのだ。使い旧された言葉ではあるが、激変するビジネス環境、見えない先行き。。。昨今ではそんな状況が当たり前になっている。

そんなこともあり、この1冊は、従来のビジネス書のように、要約を読めばエッセンスが分かるという種類のものではない。映画や、小説はその作品にふれることでエッセンスが初めて理解できるように、この1冊も、登場する人物達とともに考え、試行錯誤をしていただきたい。

この本がベストセラーになったことからも、「会社」というのは簡単に変えることの出来ないものだ、という認識を多くの人が持っているのだと思う。しかし、本当に会社は変われないのだろうか?

この本を読み終えた後であれば、「そんなことはない」と多くの方が思うに違いない。そして、事実、そう思う人がいれば、会社という組織は変えることができるはずなのだ。会社の「何か」を変えたいと思っている人だけでなく、変えることなど出来ないと思っている人に、一読を是非お勧めしたい。

社長失格

【著者】板倉雄治郎 【出版社】日経BP社 【発刊年月】1998年11月30日
【本体価格】1600円 【ページ数】371P

インターネット・ブームや金融機関の一連の改革は、そもそもどこから生まれてきたものなのか。そう、いうまでもなく米国だ。となると、これらのムーブメントは、現在グローバル・スタンダードとみなが呼ぶ米国主導型の国際市場の枠組みに対応するための壮大なる試行錯誤だったようにも思える。

そしてその米国における行動原則は、たとえ大組織であろうと最終的には個人が責任を持つ。すくなくともぼくはそう思っている。と考えると、この一連の流れはいったい何を意味するのか。
同書 P369から引用

「経営者意識を持つこと」がこれからのビジネスマンには必要だと言われる。しかし、この経営者意識、どのようなことを意識していけばよいのだろう。キャッシュフローの意識?ビジョンの策定能力?etc。。。

ビジネス書をひもとけば、必要とされる能力が簡潔にリストアップされている。しかし、それらは本当に「経営者意識」といわれるものなのだろうか?

さて、今回取り上げるのは、題名の通り、みずからに経営者失格の烙印をおした一人の男の物語だ。彼は、1997年にニュービジネス大賞を受賞し、インターネットブームとベンチャーブームの中で流星のごとく現れたベンチャー企業、ハイパーネット創業者、板倉雄一郎氏が同社の発足から倒産までを物語った一冊だ。

裁判所で、自己破産手続きをとる筆者の回想から始まるこの物語は、経営者という一人の人間の判断が会社に及ぼす影響、金融機関取引先とのかけひき、そして経営をするという苦悩、喜び。経営をするという「自己責任」を強烈なリアリティーと共に語りあげている。

経営者意識という昨今手垢のつきがちな言葉ではくくりきれない痛みを伝える当書。経営者のみならず、主体性をもちビジネス社会を生きようとしているすべての方に是非手にとっていただきたい一冊だ。そして倒産という出来事を経営者という視点から眺めてみて欲しい。雇用される側からは見えなかった何かがそこには開けるはずだ。

日本を創った12人

【著者】堺屋 太一 【出版社】PHP研究所 【発刊年月】 1996/11
【本体価格】前編 660円 後編 657円 【ページ数】前編 204P 後編 224P

本書では、今日の日本にまで深く影響を残している象徴的な十二人の「人物」を取り上げた。

それらの人々が歴史のどの段階で、どう行動し、それが今、われわれの心の中にどう生きているのか、われわれの発想、われわれの社会をどう規制しているのか。そしてそれが、これから世界と付き合っていく時に、どういう影響を与えるのだろうか。本書では、そんなことに視点を置いて「人物」を論じることにしたい。
同書 P13~14を引用

若かりし織田信長が、「おおうつけもの」と呼ばれていたことは有名な話だ。いくつもの城をもつ大名の子でありながら、裾野の短い着物で腰に巻いた縄に水入りの瓢箪をぶら下げ、馬で野原を駆けめぐる信長のイメージは、多くの人が共有しているものだろう。しかし、その姿を、「社長の息子が髪を茶色に染め、オートバイを乗り回しているようなものだ」といわれると信長が、急に身近な存在に思えてくる。たしかに、信長は、魅力的なバカ息子だったのだろう。

作家としても経済評論家としても著名な堺屋 太一氏の語り口は、そんな風に歴史上の人物を、いきいきと「今ここ」によみがえらせる。

聖徳太子、光源氏、源頼朝、織田信長、石田三成、徳川家康、石田梅岩、大久保利通、渋沢栄一、マッカーサー、池田勇人、そして松下幸之助。

彼等が歴史の中で達成した大プロジェクトの数々。その雄大さや、歴史的役割の大きさは、現代に生きる私達ビジネスマンの志を必ず奮い立たせるはずだ。

偉人の業績を読み、彼らの生きた時代の空気を吸うこと。そして視点を広げるということはそれだけで、楽しいことだ。それに、先がなかなか見えにくい昨今。歴史に学びことはあまりにも多い。

歴史上の人物は、書物の中に存在しているわけではない。彼らが生きた時代に呼吸し、考え、企画を練り、それを力の限り実現してきたのだから。そう、今ここに生きる私達と全く同じように。