ビジョニング

【著者】塚田修【発行】日経BPクリエーティブ
【発行年月】2004年04月05日 【本体価格】1,800円
【ページ数】239p 【ISBN】4-86153-000-8

ビジョンを持てば、当然、生き方が変わる。忙しい日常に流されるだけの日々から、次に何をするか、具体的な目標が見えてきて、あなた自身がいきいきと輝き始めるだろう。

本書 P47 より抜粋

バブルの崩壊とともに、“身分保証”であった年功序列・終身雇用も崩壊した。そして、社員の能力や実績に応じて給料が支払われる、能力主義、成果主義を取り入れる企業が増えた。

いま、日本の企業が人材戦略は、中高年をリストラし、単純な業務は派遣やパート、あるいはアウトソージングに切り替えることで、高騰した人件費を抑えようとしている。要は、その会社にとって“必要な人材”と“不必要な人材”を選別している状態なのだ。

最近では、定期昇給を廃止する企業も増えてきており、能力主義や成果主義が浸透すればやがては収入格差が大きくなる。本書の著者は「稼げる人」と「稼げない人」の二つに分かれるという。「これからは企業に依存したスタイルをやめ、自立した生き方をすべきだ」というのが本書の根幹にある。

著者はいつ、会社を去ることになっても生活していけるように、常に先を見据えて「今何をすべきか」と自問し、行動できる社員がいま企業が求める人材像なのだという。それが本書でいう「ビジョン」だ。

「ビジョン」とは、「自分が将来的に何をしたいかと考えたときに、その夢ややりたいことと現時点では相当な距離があっても、“こんなことをやってみたい”と考えたこと」だと著者は説明する。

確かに、ビジネスで成功を収めた著名人の記事や書籍を読むと、よく彼らのビジョンにもとづいた行動や精神的な強さに嫉妬心すら覚えた経験はあるだろう。「自分はなぜ明確なビジョンが持てないのか」と。本書を読めば分かるが、恐らくそれは自分を振り返り、俯瞰できずにいるからだと思われる。

本書では、ビジョンの立て方から、そのビジョンに付随する中期的な戦略計画「ミッション」、さらに現時点で何をすべきかの「バリュー」まで、その重要性を説き、著者の経験を踏まえた、実践的な説明がなされている。

本書にはさらに、ビジョンなき企業についても書かかれており、「やらされ感」を抱いている社員がいる組織は、かなり危険な状態であると警告している。経営者の将来的なビジョンを明確に社員に伝えること、それを社員に理解してもらうための実際に行われたセミナーの内容は必見だ。

本書はこの質問に答えられない全ての人が読むべきだろう。「あなたは、ビジョンをもっていますか?」

ゴー・パブリック 起業公開物語

【著者】市川一郎&アソシエイツ【発行】東洋経済新報社
【発行年月】2003年12月18日 【本体価格】1,600円
【ページ数】293p 【ISBN】4-492-53168-8

「この物語は、会社を辞めて起業し、株式公開したいと思っているあなたのための疑似体験ストーリーである」

本書 腰帯 より抜粋

最近、書店に足を運ぶと「独立・起業」と名のつく書籍を多く見かけるようになった。一従業員としてやりたいことを提案しても、会社側に認められなかったり、そもそも人に仕えることに嫌気がさしてきたり、と理由は様々だろうが、自分で会社を設立したいと思う人が増えてきたのは確かだろう。

そんな起業本の中から、面白そうな一冊をご紹介。腰帯には「起業…疑似体験ストーリー」と書かれている。本書は、ハウツー本のように「見出しがあって詳細が枝分かれ式に紹介されている」本ではない。純粋に物語なのだ。

主人公が会社を辞めて起業し、経営者として会社を成り立たせていくストーリーを読者が一緒に追っていく、という構成である。

ストーリー形式で知識を習得していく本は、概して大まかで入門的なものが多い。だが、こと経営者(独立・起業)に関しては、マニュアルに載っていないトラブルや障壁に出くわすことがほとんどだろう。本書には、起業から経営、株式公開までさまざまな課題に取り組む主人公の姿が描かれている。

読み進めてみると、その内容は実にキメ細かい。ベンチャーキャピタリストに相談することから、資金のやりくり、会計士の登場や、人材の獲得など、リアルに会社経営の大変さが読みとれる。

さらには、社内スタッフが起こすトラブルもある。給料が少ないために、接待費として大金を遊びに使ったり、営業がきちんと契約書を交わさなかったために取引先と揉め事が発生したり、会社の金を横領し逃げ出す社員など、実際に起こりうるトラブルと直面する場面も如実に描かれている。

資金繰りの難しさや、内部管理体制の徹底、株式公開への長い道のり。会社をまともに運営していくには多くの人の助けを必要とし、信頼関係と情熱をもって突き進んで行かなくてはいけないのだと、本書を読んでみればわかるだろう。読み物としてもかなり面白い。

退職するときは退職の本、起業するときは起業の本、経営には経営の本、などという行き当たりばったりの行動をとる前に、まず経営者になるとこんな喜びや苦悩があるのだ、というのを全体像として確かめておくのも大切なことなのではないだろうか。動き始めてからじゃ遅いのかも知れない。

30分間で天職が見つかる本

【著者】柏木理佳 【発行】PHP研究所
【発行年月】2004年01月05日 【本体価格】1,100円
【ページ数】204p 【ISBN】4-569-63157-6

実際に経験した仕事は何種類ありますか?
現在仕事の種類は四万以上もあるといわれています。その中で自分で体験したごくわずかな仕事の内容だけから選ぶのはもったいなくはありませんか?

本書 P116 より抜粋

本書によると、ある人材派遣会社が若手社員を対象に実施したアンケートでは、今現在「好きな仕事をしている」「仕事にやりがいを感じている」と答えたのは全体の2割程度だったという。それ以外の約8割は、前向きな意識で仕事ができていないということなのだ。

学生時代から、実際の仕事に関する知識の浅いまま、自分のやりたいことが見いだせないまま、「就職」ではなく「就社」活動をしているというのが原因かもしれない。また、イメージは華やかだった希望の職種に就けたのに、実際の業務は地味でルーチンだったという失敗例もあるだろう。

仕事自体は面白いが、上司とウマが合わないといった人間関係が影響しているケース、仕事に見合った評価・報酬が得られないという条件面での不満が影響しているケースなど、負のファクターを上げればきりがない。しかし、その減点方式で転職を繰り返しても期待する結果はなかなか望めない。

仕事がイメージ通りに面白く、高揚感を抱きながら働ける環境…。そこに行き着くには、当然のことながら自分の働きたい環境を自分自身で詳細に「内定」させることだ。ゴールが決まれば、あとはそれに向かって行動すればいいだけのことだからだ。

しかし今現在、若者を中心に取り巻く問題は「やりたいことがない」ことなのだ。これは日本人の生活が豊かになったことと、幼い頃から仕事に対する意識づけを行う教育環境が確立されていないことなどが理由に挙げられる。

それでは、どうすればいいのか…。

本書の著者は海外留学から帰国後、就職活動の失敗を経て実に様々な職種に就いている。目移りしやすいタイプのようにも見えるが、そこには盤石な自己分析があり、納得して突き進んでいく様子がうかがえる。就職先も貿易会社からスチュワーデス、アナウンサーなど、競争率の激しいものばかりだ。

著者によれば、自己分析において重要なことは、<過去>の経験を思い起こすことのようだ。幼い頃に思い描いた夢や、嬉しかったこと辛かったことを詳細に“書き記す”ことで、少し先の自分がイメージできるというワケなのだ。しかもこの作業は本書があれば手間がかからない。

本書には質問項目が提示してあり、それに沿って進められるので実行しやすいだろう。これは転職を考える上でも必ず役に立つ作業だ。自分自身を見つめ直し、本当にやりたい仕事に就く意欲があれば、誰にでもできることだ。就職・転職を考えている方には、ぜひ読んで実行していただきたい。

この人がかっこいい!この仕事がおもしろい!

【著者】NPO法人 キャリナビ
【発行】日経BP社 【発行年月】2003年10月06日
【本体価格】2200円 【ページ数】621p 【ISBN】4-8222-4357-5

運命の出会いを大事に進む
好きなものは好き!やりたいことをやる!
複数の職業を経て転職を見つける
学生時代のサークルを本業にする
子供の頃からの夢を実現する

本書 表紙 より抜粋

生活の多くの時間を占める「仕事」。ということは、当然ながら人生の大半は仕事をしているということだ。社会にとって、自分にとって意義のある仕事をすれば、その充足感も変わってくることだろう。だからこそ誰もが仕事で悩み、やりがいというものを模索するのだ。

“自分らしい生き方、働き方”とは何か。高度成長期では「有名大学・有名企業に所属すれば安泰だ」というシンプルな構造で、目標がはっきりしていた。しかし大企業神話が崩れた今は、有名大学を卒業しても必ずしも将来が保証されることはなくなってしまった時代である。

現在は、将来に対する画一的な「正解」はなくなってしまったと言われている。一人ひとりが「自分なりの将来像」を持つしかないのだと。それでは、「自分らしく働いている人」はどんなところにいるのか、どういう働き方をしているのかをまず知っておく必要があるのではないだろうか。

本書は、NPO法人キャリナビWEBサイトに掲載されている「この人がかっこいい!お仕事人辞典」を再編集し、書籍化したものである。内容は、学生が「こんなふうに生きてみたい」と思う全国各地の大人(ナビゲーター)たちを取材し、執筆してできたものだ。

本書で紹介しているナビゲーターは全部で54人。宇宙開発事業団で働く人から雑誌記者、お好み焼き屋さんやセパタクロー選手など実に多彩な職種が名を連ねる。改めて、いろんな仕事があるのだと驚くことだろう。

本書の面白さは、前述したように学生たちが取材しているところだ。ナビゲーターは彼らに、自分の仕事の楽しさを理解してもらうために、非常に分かりやすく解説してくれている。一般的な“お仕事情報誌”とは違い、彼らの言葉で実際の仕事に沿って話しているので実にリアルだ。

ナビゲーターの働きぶりを見ると、彼らはやはり様々な困難と立ち向かって仕事の喜びを獲得していることがわかる。自分らしい働き方とは、誰かと比較するわけでもなく、決めた道を自分が納得するレベルまで突き進んでいくことなのだと教えられる。

54人のインタビューはどこから読んでもいい。単なる“甘えの個性”ではなく、自己責任のもとで目一杯頑張っている彼らの様子を垣間見ることで、これまでの自分の働き方を振り返り、今後の参考にしてみてはいかがだろうか。600ページにわたって仕事の面白さを紹介するオススメの一冊。

仕事の裏切り なぜ、私たちは働くのか

【著者】ジョアン・B・キウーラ
【発行】翔泳社 【発行年月】2003年11月21日
【本体価格】2,800円 【ページ数】445p 【ISBN】4-7981-0440-x

人は仕事を通じて尊厳やアイデンティティを得たり、自己を表現したり、社会で役に立っているという実感を得たりする。仕事が経済的な取引以上のものであると思えば、さらにそれは意味のある行為となる。

本書 289P より抜粋

キャリアアップやリーダーシップ、上司・部下との付き合い方など、いかにビジネスマンとして成果を出していくか、という書籍をこれまで多く紹介してきた。しかしもっと根本的に、仕事を哲学すること自体も大いに意味のあることなのだと、本書を読んで深く感じられた。

「なぜ、私たちは働くのか」。本書のテーマはここから始まる。

仕事の何がそれほどいいのか。歴史を見ても、仕事をしないで過ごせる人、仕事をするべきか否かを、自ら選択できる身分の人は稀なのだという。我々も時々、働かないで過ごせたらどんなに楽なのだろう考えてしまう。趣味に打ち込み、名著を読み、旅することができたらどんなに良いかと。

突然だが、あなたは宝クジの高額が当たっても仕事を続けるだろうか。宝クジは、仕事や物質的な要求からの自由を夢見させてくれるが、実際に当選しても仕事を続ける人は驚くほど多いのだとか。仕事をしないことは、簡単なことだと思えるが、一生働かないという状態は現実的には難しいらしい。

働くかどうかの選択の余地がない人にとって「なぜ働くのか」という問いかけは間違っている。我々は「生きていくために働く」からだ。生活のために賃金労働をするのだが、そう考えると、仕事を経済的に意味づける傾向がますます強くなっているということなのだろうか。

昔から、「人は働かなければ悪いことをする」といわれてきた。本書によると、「仕事がある」ということは、単に物質的な要求を満たす以上の意味を持つのだという。仕事はさまざまな心理的、社会的な要求、例えば自制心、人間関係、規則正しさ、自己効用感などを満たしてくれるのだと。

1930年代に行われた、ある社会地理学研究例が載っている。ある小さな工業労働者のコミュニティが街ごと失業している状態を調査たものだ。そこの住民は、景気の良い時ほど仕事と同じくらい余暇活動にも熱心だったという。政治活動やいろんなイベントなどを企画し楽しんでいたと。

しかし、工場が閉鎖し、町全体が失業状態になると住民たちは無気力になった。つまり彼らは、外の世界から切り離され「時間を活用する」という物質的・精神的動機を失ってしまったということなのだ。仕事がない自由な暮らしとは、休暇のない窮屈な生活なのだということがわかる、良い例だ。

仕事、お金、時間。この3つは今を生きるビジネスマンにとっての最重要テーマだ。本書には、「生きるために働く」のではなく「働くために生きる」という言葉がある。いま一度、深いレベルで「自分にとって仕事とは何か」と、見つめ直してはいかがだろうか。

パーソナルブランド

【著者】佐藤修 【発行】日経BP企画
【発行年月】2003年10月14日 【本体価格】1,500円
【ページ数】206p 【ISBN】4-931466-93-1

「これなら自分でやりたい」、「これは自分はやりたくない」ということくらいなら、どんな人でもいえるでしょう。そこを大切にしてほしいのです。

本書 P71 より抜粋

「みんながハッピーに仕事をし、暮らしを成り立たせていくにはどうしたらいいか?」。アメリカに本社を置き、世界的な規模でビジネスを展開するグローバルカンパニー3社に所属してきた本書の執筆者は、このテーマを30年以上にわたって、追いかけてきたという。

このご時世、1つの会社に自分の人生の大半を捧げ、企業風土に即したサラリーマンでいることは危険だ。そこで「個人の市場価値」が重要視されるようになってきた。本書ではこれを「パーソナルブランド」と表現するが、これは単なる「市場価値」という言葉で判断できるものではなさそうだ。

消費市場低迷が長期化するのに伴い、各企業とも自社のブランド戦略の再構築に迫られてきた。本書ではこれは、個人についてもまったく同様のことがいえるというのだ。あるプロジェクトに欠員が生じて、その補充を行わなければならないというケースで解説している。

プロジェクトリーダーは、何人かの候補をリストアップする。そして過去にどんな成果を上げてきたのか、どんなスキルをもっているのか、プレッシャーにどのくらい強いのか、これまで一緒に仕事をしてきた人たちの評判はどうか、など候補者の一人ひとりについて検討する作業に入るだろう。

セールス部門であれば、売り上げをたくさん上げている人に越したことはない。研究開発部門であれば、特許などの知的財産をたくさん持っている人に注目するだろう。しかし、プロジェクトリーダーはおそらく、そういう目で見える数字だけでは判断しないはずだと、著者は断言する。

候補になった人が持つ基本的なスキルや成果にプラスして「彼と一緒に仕事をしていると、どんなことでも楽しくやれる」「好奇心が旺盛なので、他のメンバーに良い刺激を与えてくれる」といった「数字で表せないプラスアルファ」を加味して選考していくに違いないと。

パーソナルブランドもコーポレートブランドも全く同じで、その人のブランド価値が高まれば信頼性が増し多くのファンを獲得していくことができる。これがどこに行っても通用するパワーとなっていくのだと著者は主張する。

個人においてもまず「自分は何をやりたいのか」というビジョンをはっきりさせて、そこにベクトルをあわせながら自分だけのブランドを構築させていく必要があるということだ。日本企業のいまに働くビジネスマンに、自分らしい働き方とはどんなものなのかを、改めて考えさせてくれる一冊だ。

自分の仕事をつくる

【著者】西村佳哲 【発行】晶文社
【発行年月】2003年09月30日 【本体価格】1,900円
【ページ数】271p 【ISBN】4-7949-6585-0

優れた技術者は、技術そのものでなく、その先にかならず人間あるいは世界の有り様を見据えている。

本書 P72 より抜粋

企業社会における経済活動の大半は、経済のための経済であり、より多くのお金を引き寄せるために仕事が重ねられる。産業革命が生み出した「多くのモノを安くつくる」姿勢は、モノが飽和するまでは受け入れられたかも知れないが、今はそういう生産力は、もはや通用しなくなりつつある。

私たちは毎日、誰かがデザインしたものに囲まれて暮らしている。換言すると、生きていくということは、様々な人の“仕事”に接し続けているとも言えるだろう。しかし作り手が「こんなもんでいいや…」という意識で作ったものは、我々にその否定的な気持ちを伝えてくる、と本書にはある。

本書は、とりわけモノづくりに没頭し、いい仕事を求め続けている人に著者がインタビューし、彼らの仕事に対する哲学やこだわり、作品に対する働き方を紹介する。ここでは、バタフライスツールなどの作品で知られる工業デザイナー・柳宗理氏のこだわりを紹介しよう。

柳氏は、どんな作品にでも初期の段階でスケッチや図面を引くことはなく、いろんな模型を組み合わせ、感触として形を掴んでいくという。机上でのレタリングでは絶対いいデザインはできないのだと。つまり技術者などとのワークショップの中からモノを作りながら、できていくものなのだという。

ということは、最初にイメージしていたモノは作れない。椅子でも最低1年くらい時間を費やし、試行錯誤の末、理想の形に仕上げるのだと。若いデザイナーたちにも苦言を呈する。「作業を始めると同時にデザイン雑誌に頼ってはいけない」。デザインという作業は時間がかかるものなのだと。

著者が手にした柳氏のコーヒーカップは「モノを通じて自分が大事にされていることが感じられるデザイン」だと思ったという。こうした仕事は、今や希少だ。「デザインのためのデザイン」は「人を幸せにする」原点を忘れているのではないかと、改めて考えさせられる内容だ。

本書を読み進めていくと、我々の仕事の目的はそもそも何だったのか、自問自答する必要があるのではないかと深く考えさせられる。受けた仕事はこなさなければいけない。仕事は選べないし、家庭や生活もある。しかし好きな仕事をしたい。こういう悩みはビジネスマンには尽きない。

本書で紹介する作り手たちは、どんな請負の仕事だとしても、ある一点で共通する。それは「自分の仕事」にしていることだ。彼らの働き方は、世の中のワーカーたちのそれとは異なる。エネルギッシュで、主体的に仕事をする姿を、本書で垣間見ていただきたい。仕事観が変わるかもしれない。

ビジネスマン あなたの市場価値

【著者】箭内昇・山崎元 【発行】ビジネス社
【発行年月】2003年09月18日 【本体価格】1,500円
【ページ数】270p 【ISBN】4-8284-1070-8

30歳と40歳との間ではかなりの自分の価値アップがないと、年収で評価したときの自分の価値というものを維持することすらできません。

本書 P67 より抜粋

本書は、11回も銀行や生保、証券会社など転職を重ねたという経歴を持つ山崎氏と、体制派の代表である銀行に長い間在籍していたキャリアをもつ箭内氏との対談形式の構成になっている。この先、どういうタイプのビジネスマンが成功するか、両氏の実体験を踏まえて展開されるリアルな内容だ。

箭内氏は、21世紀のビジネス社会が求めている人材は「T字型人間」なのだと表現する。Tの縦の長い棒が専門能力で、横の棒がゼネラリスト的な能力を表しているという。つまり“ある分野での専門能力をもったゼネラリスト”のことだと。

ビジネスの世界が専門化してきている傾向があることから、ビジネスマンは何か一つでも自分の得意分野を持たなければいけない。それを持ってマネージャークラスまでになり、さらにその上には経営能力のある人が上がっていくのだと。そう、どちらの能力もビジネスリーダーには必要なのだ。

さらに読み進めていくと、本書は「あなたの市場価値」を高めていくための単なる教科書ではなかった。バブル崩壊前後の激動の金融・経済の動向、大企業病ともいわれる会社依存主義を目の当たりにしてきた両氏による、これからのビジネス社会への提言が、ギッシリ詰まっている内容なのだ。

中でも、若手からシニアまでの各世代は今後どういうポジショニングで働くか、また逆に会社側が各世代の社員をどう扱うか、などの内容は新鮮だ。両氏の意見が一致したのは、30代の若手を活用することが企業にとっても社会全体にとっても重要だということだ。

日本の企業は30代によって支えられているのにも関わらず、彼らを充分に使い切れていないという。彼らにもっと権限とお金を与えて爆発的に働いてもらわなければいけないのに、それができていないと。

原因は様々な要因が絡んでいるのだが、どうやらそろそろ引退を控えた既得権者たちが、何とか自分たちの力を維持しようと勢力を保持していることにあるようだ。だからこそ、何のしがらみも持たない“外様”のような人材やまだ社内文化に染まっていない若手に期待しているのだと両氏は主張する。

他にも、会社における人事部の存在意義、良い企業・悪い企業の見分け方、CEOがいない日本企業の悲劇など、これまでの、今後のビジネス界全体に問題を提起し、両者それぞれの見解を披露する。21世紀を生きるビジネスマンには、まさに福音をもたらす一冊になるだろう。

キャリア・カウンセリング

【著者】金井壽宏 【発行】日本経済新聞社
【発行年月】2003年08月22日 【本体価格】1,500円
【ページ数】291p 【ISBN】4-532-31074-1

今までの人生を振り返り、これからの人生に何が大切かを考えるようなプロセスが意味を持ってくるだろう。

本書 P74 より抜粋

本書は「中期キャリア危機」として、35~45歳頃に経験する心理的危機を中心に展開している。中堅として仕事を実際に動かすのと同時に、部下の指導も行い、これから後期キャリアに移行しようとする時期だ。この“キャリアの中間点”は、非常に重要なポイントだという。

空中ブランコの有名な例がある。前のブランコを手放さないと、次のブランコには手が届かない。その間で、どちらのブランコからも手が放れている危ない状態がある。この中間点は次につながる移行期なのだと。そこには大きなストレスがある。そう、キャリアの節目では必ず“悩み”が存在すると。

リアルな例で詳説する。第一子が誕生したとしよう。夫婦はずっと子供が欲しかったのに、いざ生まれたら知らないことが多く苛立ち、困惑してしまうことがよくある。最近の悲痛な事件にも見られるように。原因は何か。夫婦が見逃しているのは「終焉と中立圏という段階の重み」と筆者は表現する。

つまり、3人の新しい生活、子供が一緒の生活という“開始の局面”にしか考えが及ばないことだと。焦点は子供の誕生を機に“終わる”ものがあるということ。例えば、しばらくは二人きりで旅行や遊びには行けなくなる。睡眠時間も変動する、などが挙げられるだろう。

実際に3人の生活が始まる前の宙ぶらりんな時期にこそ、父親・母親になるとはどういうことなのか、子供を持つことはどういうことなのか、重みを持って心深く考えることが必要なのだという。

確かに、これを仕事に置き換えて見るとよくわかる。何年も所属した部署での経験を無視するかのような配置転換、ゼロから始める新しい仕事。これは自分のキャリアにとって、ある意味、不健康なサイクルだろう。

しかし、この節目節目において、自分自身で終焉と始まりの関連性を想像することで受け入れるか否かの判断もでき、納得して先に進めるのかも知れない。だが、そこには多くの悩みや、ストレスが存在する。本書では、「中年よ、小志を抱け」と悩みを自然な現象とし、読者を和ませてくれる。

「やればできる」でなく「できればやる」。キャリアとは轍のようなもの。毎日考えるものではない。節目節目で後ろを振り返り、その過程を未来に活かすために修正するものなのだと本書にはある。多数の心理学者の考察を経営学者の編著者がまとめ上げた魅力ある一冊を、ぜひ読んでいただきたい。

キャリアの教科書

【著者】佐々木直彦【発行】PHP研究所
【発行年月】2003年07月07日【本体価格】1,600円
【ページ数】286p【ISBN】4-569-62998-9

エンプロイアビリティを高めるために、3つのワークは非常に重要な役割を果たす。3つのワークがなければエンプロイアビリティが高まることはない。

本書 76P より抜粋

雇用形態が劇的に変化した今、自分の“キャリア”を考える、または考えさせられる機会が増えた。自分の将来を見据え、今何をしなければいけないのか。そこまでは、漠然とだが考えている人は多いはずだ。「さあ、そこでどうすれば…」と先が続かない。そんな時に本書を手にとっていただきたい。

本書のキーワードは「エンプロイアビリティ」。直訳すると「雇用される能力」。他にも「転職能力」や「自分の市場価値」とも呼ばれるものだ。エンプロイアビリティには、3つの観点があり、今の会社に居続けること、転職を可能にすること、やりたい仕事をすること、にわけられるという。

今の会社に居続けるためには、単に優等生的な仕事をこなせばいいのだ。平均以上の成果をだし、処遇には文句を言わない。会社にとって都合の良い人材としていればいいだけの話だという。しかし、終身雇用などと安心できる時代ではない。これでは働きたいように働けるはずがない。

次に、転職を可能にするエンプロイアビリティは、市場価値を高めるための専門能力を高める努力をすればいいという。その後、能力を正当に評価してもらう環境を探せばいいのだと。問題は、やりたい仕事を続けるエンプロイアビリティだ。誰もがその答えを待っていたのではないだろうか。

実は、そこには肩書きや給与面などのケースで妥協もできる程度の適応力も問われてくるのだという。生活水準も下がるかもしれない。これを覚悟できればやりたい仕事ができる可能性は高まるのだと。しかしこれは“取っかかり”に過ぎない。そこまでの覚悟が持てた時、理想の未来が見えてくる。

やりたい仕事を追求するほど、一つの分野で専門性を高めることができる。特定のテーマを持って仕事をし続けるほど、必要な情報も集まり知識も経験も増え、キャリアを積み重ねることができる。素晴らしい実績をあげれば、そのままエンプロイアビリティの向上に繋がるのだと、著者は主張する。

キャリアアップのために、必要な要素がいくつかある。道が正しいのか確認する、フィールドワーク、ビジョンを立て、戦略を練り、行動するコンセプトワーク、情報や評価、支援を得るためのネットワーク。

本書では、これらをわかりやすいケースストーリーを用意することで、見事に我々の頭の中に刻み込んでくれるのだ。

キャリアに関する書籍はいくつも存在するが、単なる“読み物”で終わっていなかっただろうか。本書はタイトル通り「教科書」だと感じる。再度、自分の行動を見直し、役立てて損はない一冊だ。

会社はこれからどうなるのか

【著者】岩井克人 【発行】平凡社
【発行年月】2003年02月23日 【本体価格】1,600円
【ページ数】341p 【ISBN】4-582-82977-5

わたしたちはいま、あたかもグローバル標準であるかのようにみなされている株式主権論のドグマに囚われずに、もう一度おカネとヒトとの関係を考え直し、資本主義の新たな形態の中で生き抜いていける、新たな会社の形態を考えていかなければいけないのです。
本書 282P より抜粋

今の日本経済は大きな構造変化の中にいる。「グローバル化」「IT革命」「金融革命」など…、これが原因で企業はリストラをせざるをえない状況になってしまった。世界を相手に競争を始め、他社といかに差別化し、コストパフォーマンスを重視した結果の惨劇ともいえる。

本書では、会社という存在を様々な角度から考察し、ポスト資本主義における会社のあり方を読者に提案する。将来、どの形態をもつ会社が最も適当かの断定的な議論を避け、読者に選択権と考えるキッカケを与えてくれる内容といえるだろう。以下に挙げる例は、代表的アメリカ型大企業の失敗例だ。

今から10年ほど前まで「会社は誰のものか」という問いかけが、盛んに行われていた。会社とは株主のものでしかないとする、アメリカ的な「株主主権」論と、従業員のものだという日本的な「会社共同体」論だ。そこで著者は、この株主主権的な会社はグローバル標準にはなり得ないことを論じる。

2001年12月、アメリカのエンロンという会社が、それまでの記録を塗り替える大型倒産をした。幹部にはそうそうたるメンバーを配し、その経営監査体制はアメリカ型のコーポレート・ガバナンスの模範ケースであるとまで言われていた。

しかし、エンロンの経営者は会社の業績を粉飾して株価を吊り上げ、自分の持ち株を売り抜けて巨万の富を手に入れた。不正が発覚しそうになると、会計事務所と共謀し証拠書類を隠滅。犠牲者は失職した従業員だけでなく、多くの株主の手元にも、紙クズとなった株券だけが残った、という事件だ。

これは、アメリカ型のコーポレート・ガバナンス制度が、本質的に矛盾した制度であるからなのだと主張する。株式会社の経営者は株主の代理人などではなく、会社の代表機関であるという点なのだと。会社が結ぶどの契約も経営者を通してしか結べない。結局経営者の自己契約に過ぎないのだという。

株式会社における経営者の行動には、一種の倫理観が要求される。そもそも株式会社において所有と経営の分離したシステムは不正行為への招待状以外の何ものでもないと論じる。経営者の会社に対する忠実義務と注意義務こそ全てのコーポレート・ガバナンスの中核であるべきなのだという。

本書では、過去に見られる会社の仕組みを、さまざまな角度から考察し、学習できる構成になっている。他にも、転職時における賃金カットの秘密などを読んでみると、経営者の“腹のウチ”も推測できるようになる。新しい資本主義に相応しい会社のあり方、新しい働き方を考えるヒントになる一冊。

キャリア・コンサルティング

【著者】丸山貴宏 【発行所】翔泳社
【発行年月】2002年12月24日 【本体価格】1500円【ページ数】278p
【ISBN】4-7981-0331-4

今後日本企業も、リストラに伴うセカンドキャリア・サポートだけでなく、自立した個人と会社との方向の擦り合わせ、個人の成功と企業の成功を合致させていくための、キャリア・コンサルティングを行っていく必要があります。
本書 3P より抜粋

我々は、新入社員から始まり、転職や独立と、それぞれの時期において「キャリア」という言葉を意識するようになった。理由としてはやはり、企業が年功序列制度や終身雇用制度をもはや守れなくなり、社員は「自分のことは自分で考えなくてはならない」状況になってしまったからだろう。

だが、ただ単純に今の会社を辞めて次のステップに進みたい、という先走る思いは存在しても「今の自分には何ができて」「次はこんなスキルを身につけたい」そして「将来はこんなことがしたい」などという明確な自己分析のもと、キャリアアップを成功させられる人は、そうそういないのが現実。

そこで本書が紹介するのは、いま急速な注目を浴びている「キャリア・コンサルティング」の重要性だ。アメリカと比べ、カウンセリングの存在自体があまり注目されていなかった日本において、なぜ急にキャリア・カウンセリングがここまで盛り上がったのだろうか。 その牽引要素は…、

坂口厚生労働大臣の「将来的にキャリア・コンサルタントを5万人まで増やす」という発言だ。アメリカにはキャリア・カウンセラーが17万人いる。そこで雇用が硬直化している日本でも就職や転職に関するキャリア・コンサルタントを育成すれば、同様に雇用の流動化が起こると考えているのだ。

カウンセリングという、日本人には「治療」的なイメージの払拭と、個別相談だけでなく、セミナー企画やキャリアプランの設計など、言葉通り、コンサルタントの仕事をこなす意味合いで厚生労働省はこの名にこだわった。本書では、彼らの仕事内容と理論に基づいたケーススタディを紹介する。

まず、彼らの立場を「相談者の意思決定を支援する人」と著者は定義する。必要な援助以外に、過度の指示や命令はタブーなのだという。あくまでも意思決定は相談者なのだ。そこで、彼らは相談者を理解し信頼関係を築き、情報提供やアクションフォローといったステージへ慎重に進めていくという。

ケーススタディを読んでいくと、コンサルタントの巧妙さが実によくわかるだろう。フラットな視点で相談者を理解し、気持ちを察しそれを言葉に落とすことで、相談者から信頼を得る。会話を進めるうちに相談者さえも気づけなかった希望の職種や会社、本人の強みまでもがドンドン浮かび上がる。

客観的な自己分析は重要だといわれるが、実際に採用のプロから客観視してもらうことで、目標が明確になるなら「私も!」とつい思ってしまうかもしれない。

この他にも、実際の現場で活躍する人事担当者の座談会や、コンサルティング業界の情報なども豊富。ぜひ、一読をオススメする。

仕事力ー月曜の朝が待ちどおしくなる4つのステップ

【著者】ダイアン・トレイシー【訳者】島村浩子
【発行所】アーティストハウスパブリッシャーズ【発売】角川書店
【発行年月】2002年7月7日【本体価格】1,400円
【ページ数】238p【ISBN】4-04-898085-8

仕事上の問題のなかには、プライベートで遭遇した問題と似たものがあったのです。会社や組織は人生の縮図に過ぎません。そこで出会う問題を解決できなければ、おそらく人生のほかの部分で出会う問題もなかなか解決できないはずです。
本書 10P より抜粋

仕事と人生の充実度は密接に関係するものだろう。仕事が安定することによって、生活にリズムをつくり出すことは、言うまでもない。仕事がうまくいかなければ、同時に自分の生き方にも不安を抱くようになる。本書のタイトル=「仕事力」とは「生活力」とも、換言できるかもしれない。

本書では、仕事が原因で悩みを抱える8人を救出すべく、「キャリア・エンパワーメントのための4つのステップ」という、簡明かつ論理的な手法を提示する。そして、8人が各々の問題を解消するために起こした行動を、追っていく構成になっている。具体的でとてもわかりやすい。

例として、ある35歳の女性が陥った状況をあげている。仕事ではある程度成功を収め、衣食住も社会人の平均レベルを超えていた。しかし、帰って寝るだけの家、ボロボロになった自分の身体を、ふと顧みる。そして、健全な人間関係、健康な身体を取り戻そうと、行動を起こし始める。

まずは「問題の明確化」「前向きなビジョン」「感情の理解」「自分本位の選択」という4つのステップから、とるべきアクションを見つけ出し、そして実践する。彼女の例だと、まず、仕事に費やす一日の時間を削減することから始めるのだ。

それは、彼女にとってはかなり勇気のいることだ。そして、週末は必ずリラックスする時間にあてる。さらに、食事の改善などの、新しいライフスタイルを導入し、生き生きとした社会生活を取り戻すことに成功する。

仕事に苦悩するなら、まずは働き方を変えてみようと、他人のせいにする前に、自分の心のもち様をかえてみようと、早い決断をするのは止めようと、著者は頑に主張する。それで人生は変わるはずだと。

本書には、自分を見つめ直すためのチェックリストが8人の例に合わせて載っているので、読みながらぜひ試して欲しい。自分の中で何が問題で、これからどう行動すべきかが明らかになるはずだ。自分の周辺環境も確認でき、ハッとすることもあるかもしれない。

漫然と生活し、何気なく不満を抱いているだけでは何も解決しない。問題とビジョンを明確にすることを、本書ではくり返し主張する。なにより本書を読むことで、生き生きとした生活を取り戻すカンフル剤になることは、間違いない。まずは一読をオススメする。

コンセプトは「安心」

【著者】谷口正和【出版社】東洋経済新報社
【発刊年月】2002年08月01日
【本体価格】1,400円【ページ数】218p【ISBN】4-492-55450-5

ペットも安心の市場の一方の主役である。ペットはすでに「愛玩」の粋を超えている。(中略)ペットとしてウサギを飼う人がますます増加している。専門の月刊誌や季刊誌も登場し、どれも売れ行きは絶好調だという。「うさぎ情報誌」(ペット新聞社)は月刊誌化した。ウサギ専門のペットシッターやホテルも登場している
本文 137p より抜粋

朝起きて、新聞を開き、不安をかき立てる記事が一本も掲載されていない、そんな日はありえないのが、最近の日常である。この、不安だらけの時代に「安心」をコンセプトにしたマーケットが広がり始めている・・・と、紹介しているのが、本書『コンセプトは「安心」』である。

マーケットの主人公は「個客」なのだと、筆者は説く。そして「個客」の心を掴むためには「安心を創造する」商品の提供が、必要だという。その視点を持たない場合、価格が安かろうが、大量生産が出来ようが、顧客から支持されなくなるというのである。

事例として、本書はまず「家と周辺が安心の拠点」になっていることを紹介する。コンビニの来店客、テーマパークの来園者、さらには、駅の建物がライフセンターとして機能し始めている点をあげ、コミュニティは集約され、自己完結を始めていると言う。

さらには、エンタテイメント、移動手段、情報網、コミュニケーションスタイルも、その自己完結型コミュニティに適合した発展を、し始めていることを紹介している。地域生活圏が自己完結できるのも、そこに「安心」という底支えがあるからだ、と論じているのだ。

なるほど、言われてみれば、その通りの視点である。しかし、改めて指摘されないと、なかなか気づきにくい視点であるとも言える。以下、心に、共生することに、自己解決に、安心のよりどころを見つけ出していく。その視座のユニークさとともに、豊富な事例も、本書の見逃せない魅力である。

それ以上に、本書の読みどころは「情報のクリッピングの巧みさ」にあるのかもしれない。筆者は、新聞や雑誌などの媒体や、書籍を丹念に読み進め、気になる事柄を拾う。そして、拾った情報を、いくつかの分野に集めて、共通する「キーワード」を、浮かび上がらせるのだ。

そのキーワードは、実に「説得力」を持ち得ることは、本書を読みすすめていけば一目瞭然だろう。それが、新しいコンセプトを生み出すかどうかは別の問題として、今時代が「どんな熱を帯びているのか」を、的確に把握するためのノウハウが、この一冊にギッシリと詰まっている。

今を知ることも出来、さらに、これからの今を知るためのスキルも身に付くという、一粒で二度美味しい一冊である。読んで損はないハズだ。

働くことの意味がわかる本

【著者】飯田史彦【出版社】PHP研究所
【発刊年月】2002年08月14日
【本体価格】1,000円【ページ数】150p【ISBN】4-569-62375-1

「働くこと」そのものには、意味などありません。しかし、「自分が働くことによって、自分や誰かや何かに与えるさまざまな影響」については、それぞれの人が、自分なりの答えを見出すことができます。
本文 9p より抜粋

社会に出て働くようになってから、働くってどういうことだろう?と自問したことがない、という、ある意味幸せな人は、どのくらいいるのだろうか?生きがいに関するベストセラーを持つ筆者が、若いビジネスパーソンに向けて「働くこととはなんだ?」ということを、解いている。

まず、冒頭で「働くことそのものには、意味などありません」と、本書は言い切ってしまい、いきなり読者を混乱させる。「働くことには、どのような意味があると思いますか?」という質問に、世の中のほとんどの人が、明確な答えを持ち得ないところから、働くことについて、論を進めていく。

まずはじめに「働く」とはどういうことなのか、それを定義付ける。働くとはいったい何なのか?働くことによってもたらされる真情は、どのようなものであるか?職場についてはどのように考えればよいのか?詳しく書くと、読む楽しみが減るので割愛するが、頭がどんどんとクリアになるのだ。

例えば「働くことは、○○である」という言葉で、心情を描写する。働くこと=使命・悦楽・災難・苦痛・試練…字を読んだだけで、ああ!と、思わず同意してしまうキーワードで、働くことによって起きている気持ちの部分を整理してくれる。

さらには、仕事が生むさまざまな価値として、仕事が「自分に与える影響」と「自分以外のものに与える影響」に分けて、解説をしている。その広がりと、考える要素の「もれなく感」が、とても興味深い。

また、本書では、働くことを、様々な観点から眺めている。これがかなり面白い。その一部を羅列してみると、

働くことは「人間の本能」だと考えてみる
働くことは「悟りを開く手段」だと考えてみる
働くことは「サッカーをするようなもの」だと考えてみる
働くことは「回転寿司を食べるようなもの」だと考えてみる
働くことは「カラオケで歌うようなもの」だと考えてみる

全部で20。そのどれもが、なるほど「働くということ」には、そういう側面はあるなぁと、納得してしまう「ツボ」なのである。

本書は、社会人経験の浅い若年層に向けて書かれている。しかし、後輩や部下がいるような、社会人のベテラン選手も、目を通すことを勧めたい。悩んでいる後輩に的確なアドバイスが出来るようになる、それ以上に、自身の働くことについての考え方が、明確化することは間違いないからだ。

組織の中で成功する人の考え方

【著者】アラン・ダウンズ【訳者】山田聡子【出版社】きこ書房
【発刊年月】2002年08月25日
【本体価格】1,300円【ページ数】190p【ISBN】4-87771-085-X

成功するために、弱点を克服しようとする人は多い。ビジネス書を読んだり セミナーに出席したり、とにかく何でもやってみる。しかしどんなに補修を やってみたところで、弱点が完全に克服されることはほとんどない。弱点は 長所によって克服できるのだ。
本文53pより抜粋

書名が面白い。今まで多かった「キャリアアップ」や「組織の殻を破って活躍」ではなくて「組織の中で成功する」なのである。タイトルだけ見れば、保身のための「ゴマのすり方」や「見栄えがよい報告の仕方」などが書かれているのかと、ワクワクしてしまう。

まず、成功者たちのパワーの秘密は、実は単純明快なものだという説明から筆者は始める。「自分の才能を全面的に信じること、これに尽きる」のだという。そのためには、苦手なことはやる必要はない、得意なこと(=やっていて飽きないこと)をやりさえすればよいのだと。

人は自分が得意とする分野には自然と引き寄せられるものだ、と筆者は説いている。その分野には「強い憧れ」のようなものを抱き、さらには、その仕事を行うときには「喜び」まである。そして実際、その仕事に取り組むときには「素早く仕事を覚えて」しまうのだという。

覚えが悪い仕事はその分野の才能がないと割り切り、その長所だけに情熱を注げ、短所は長所がグンと伸びれば、見えなくなってしまうものだと。そして、その才能が発揮できるように、仕事の形態まで自分にあわせよと説明する。そのためには転職も選択肢だと。

あれ?組織の中で成功するだったはずでは…そう、本書には冒頭で述べたような「保身」などのノウハウは一切書かれていなかった。

自身の才能を再点検し、その長所だけを集中して伸ばすことに努力をする、そのために、仕事を始めた頃のような情熱を甦らせる、そうすることで(漠然とした)不安に打ち勝ち、組織の中で成功しよう!ということらしい。実に直球勝負なのである。

「そんなことは実際には無理だよ!」「生活があるし冒険は出来ないね」などという声が聞こえてきそうだ。本書はそんな(とても悪い言い方をするとしたら)言い訳にも、ある程度は対応している(アメリカの本なのでそのまま鵜呑みには出来ないですが)。まずは読んでみることをオススメする。

ネガティブな要素ばかりがクローズアップされる最近のビジネス社会。だからこそ、自分を信じ、自分の能力を最大限に発揮するために、最高の情熱を傾ける…そんな考えが必要なのかもしれない。「経営心理学者」の肩書きを持つ筆者の言葉は、迷うあなたを、そっと後ろから押してくれるだろう。

あなたのパラシュートは何色?

【著者】リチャード・N・ボウルズ【監修】リクルートワークス研究所
【訳者】花田智恵【出版社】翔泳社
【発刊年月】2002年09月10日
【本体価格】1,600円【ページ数】307p【ISBN】4-7981-0237-7

そもそも人間の寿命より、会社の寿命のほうが圧倒的に短いので、好むと好まざるにかかわらず、転職という問題に直面するようになりました。どうしても、自分のキャリアについて考えざるを得なくなったのです。
本文 305p より 抜粋

とても売れている本で、今さら取り上げるのもどうかと思ったが、やはりかなり面白い一冊であるので、紹介することにした。あのベストセラー「経済ってそういうことだったのか会議」の法律版のような本である。ただし、会議を行っているメンバーは違うけれども。
アメリカ人は生涯に平均8回も転職するらしい。その転職社会アメリカにおいて「バイブル」と崇められ、全世界10以上の言語に翻訳され、700万部も売れている、そんな本がついに日本に登場した。それが本書「あなたのパラシュートは何色?」である。

職探しとキャリア・チェンジのための最強実践マニュアル~と銘打たれた本書は、単なる転職ガイドとは一線を画している。誰もが心に思い描く「夢の仕事」をつかむためのノウハウがギッシリと詰められているのだ。

本書ではまず、自身が何を求めているのかを整理するように要求する。職探しは「従来型の」必要に迫られたものなのか、それとも「人生を変える」自分自身が本当に就きたい仕事を見つける職探しなのか。まずは、そのスタンスを明らかにせよとする。

そして、職探しの方法や、就職・転職の秘訣など、細かな「技術」が紹介されている。それは、おおよそ実践的で、即役立つノウハウである。こんな細かいところまで…と思わず笑ってしまうような記述も少なくない。

さらに、自分が本当に就きたい職業、自分が持っているスキル、そして、なりたい自分になるためのステップ…そう、夢の仕事をつかむためのコツとツボが、綿密なエクササイズプログラムとともに紹介される。実は本書の肝はココだといっても過言ではないのだ。

ここでは詳細に書くことはしない。実際に本書を手にとって読んでみて、そしてエクササイズを一つ一つ丁寧にやってみること(=これが肝心)。結果現れた「本当の自分」を「見直して」みるとよいだろう。

さらに、転職は、会社勤めだけではない「アメリカ流」を反映しているのか「事業を起こすには」という章も用意されている。その事業の探し方から、うまくいかなかった場合の撤退、その場しのぎの方法まで、細かく書かれているところも、かなり興味深い。

アメリカ流の転職ガイドなので、日本の実情とかけ離れているのでは…という心配は無用。監修者が日本の労働に関するデータを、詳細な部分まで実に豊富に紹介しているからだ。知らなかった、日本の労働環境に関する様々な数字や実態が並んでいて、ここを読むだけでも面白い。

冒頭でも述べたが、本書は単なる転職ガイドではない。むしろ「自分探しのノウハウ」が満載された1冊と考えると良いだろう。自身を見直してみたいと考える読者の皆さんは、ぜひ店頭で手にとって見て欲しい。イチオシ。

ウォー・フォー・タレント

【著者】エド・マイケルズ/ヘレン・ハンドフィールド=ジョーンズ
     ベス・アクセルロッド/マッキンゼー・アンド・カンパニー監訳
【訳者】渡会圭子
【出版社】翔泳社【発刊年月】2002年05月17日【本体価格】2,200円
【ページ数】277p【ISBN】4-7981-0149-4

何十年にもわたり、これが多くの企業にとっての求人活動風景だった。採用 担当部署が求人広告を出せば、仕事を欲しがっている人々が門前に列をなす。 あくまで企業が主導権を握り、だれを雇うかを決定した。雇われる側に、力 はほとんどなかったのだ。現在では、もちろん話はまったく違っている。パ ワー・バランスが、有能な人材の側に傾いているのだ。
本文 118p より 抜粋

人材が企業盛衰の鍵を握っており、優れたタレントの獲得と育成の必要性が叫ばれているのは周知だろう。ウォー・フォー・タレント=人材育成競争と名づけられた本書は、マッキンゼーが実施した調査に基づき、人材を重視する理由、有能な人材の集め方、人材を育てるノウハウを明らかにしている。

マッキンゼーは、「人材育成競争」に勝つための5つの行動指針を、次のように述べている。1.マネジメント人材指向こそ経営層の要件。2.人材を引きつける魅力の創出。3.リクルーティング戦略の再構築。4.マネジメント人材が育つ組織。5.人材マネジメントにおける選択と集中。以上だ。

まず、1番目の「マネジメント人材指向」とは、組織の仕組みや考え方の中心・主軸を、マネジメント人材の強化・育成とするような意識や企業文化のことを言う。これは、人事部で出来ることではなく、社員の意識付けが大切になることは言うまでもない。トップのみならず、ミドルレンジまでの管理職にも、この人材を指向するべきだとしている。

2番目の「人材を引きつける魅力の創出」とは、企業は顧客に対する価値を提供しているはずだ、それと同じくらい人材に対しても「訴求価値」を創出すべきだと説いている。人目を引く「働くべき価値」とはなんなのか。アメリカ企業のケーススタディで知ることが出来る。

3番目の「リクルーティング戦略の再構築」は注目だ。優秀な人材はすでに企業のしかるべきポジションに納まってしまった-という前提に、求職のために列を成した人の群れから、選ぶという採用方式は陳腐化している、と言う。しかし、その割には、企業の採用方式は遅れているとも指摘する。

アメリカのエクセレントカンパニーの事例をベースに、それぞれの項目を具体的に解説、進むべき道筋を提案している。日本の実情も巻頭にコンパクトにまとめられ、人材育成競争の現状と課題をパースペクティブに見ることが出来る1冊に仕上がっている。

本書は、組織におけるあらゆるレベルのリーダー=社員を管理する立場にあり、社員のキャリアと成功に影響力を持つすべてのリーダーに向けて書かれたものだとされている。心当たりのある人は、ぜひとも熟読すべきだろう。成長するだろう企業が、あなたに求めている役割が、ここに書かれている。

新卒無業。

【編著者】大久保幸夫【出版社】東洋経済新報社
【発刊年月】2002年05月07日【本体価格】1,400円
【ページ数】233p【ISBN】4-492-26064-1

無業者の問題をもう一度別の角度から見てみよう。2001年の春に大学を卒業した世代の流れを中学校からさかのぼって見てみる。(中略)この世代168万人のうち、高校、短大、大学を卒業し、就職先で少なくとも三年は働いているという人は、計算すると45万人。わずか全体の27%ということになる。
本文 182p より 抜粋

新卒無業-聞き慣れない言葉に戸惑う方も多いだろう。平たく言えば、学校は卒業したけれども就職はしていない、そんな人たちのことをいう新しい言葉である。ちなみに2001年3月大学卒業者における「新卒無業」者率は21.3%。実に驚くべき数字ではないか。

本書はその驚愕の数字を執筆の動機としながら、ある意味「日本独自」のシステムである「新卒採用」制度の崩壊と、その現場にいる人たちの価値観の変化や新しい模索について、さらには近い将来訪れるだろう、雇用の現場における問題点とその解決策を提言している。

大学や短大は出たけれど職に就けない。その大きな問題について、本書では不景気だから…というありきたりな視点では、語っていない。学生そのものの質の低下(とその原因)や、就職指導する学校の問題点(世間とずれた常識で動いている)などに言及している。

自分のことすら話せない大学生。サービス業を低く見る高校の就職指導担当者。志望企業の名前さえ正確に書けない志願者。やりたい仕事(=企画系)と求人(=多くは営業系)のミスマッチ。フリーターというセーフネット。そして、そのフリーターの五割は正社員並みに働いているという事実…。

本書を読み進めるうちに、戦後日本の成長を支えてきた制度が、雇用という側面からも音を立てて崩れている、ということを実感する。そして、それらの綻びは、今は小さいけれども、今後「大きな危機」がやってくる予兆であることは言うまでもない。

若年失業という世界各国が持つ悩み。それを日本には無縁なものにしていた「新卒採用制度」の崩壊。敗者復活がなりにくい日本の中で、はじめの第一歩を上手く踏み出せなかった人はどうなってしまうのか…。「新卒就職から終身雇用で定年へ」という価値観の見直しが迫られているのだろう。

だか、悲観的な話ばかりではない。さまざまな角度から「雇用」について真正面から取り組む人たちや、自分たちで新しい働き方を模索する「20代」についても、本書は多くのページを割いている。社会制度としては目立つ改善はないが、個人としては、確かに新しい時代に向かっているようだ。

仕事とはなんだろう。就職とはなんだろう。キャリアとはなんだろう。それらを深く考えてみるために、今の労働市場の一面を知るためのナビゲーターとして、本書は役に立つだろう。一読をお勧めしたい。

知的プロフェッショナルへの戦略

【著者】田坂広志【出版社】講談社
【発刊年月】2002年03月18日【本体価格】1,500円
【ページ数】225p【ISBN】4-06-211153-5

分かりやすく言えば、転属や転職、独立などにおいて、次の職場や職業を選ぶとき、「給料」や「年俸」などの金銭的報酬に目を奪われることなく、「この職場で、いったい何が学べるのか?」(知識報酬)「どのような人的ネットワークを築くことができるのか?」(関係報酬)「仕事を通じて自分の業界での評価を高められるか?」(評価報酬)「人間としての成長の目標となるような上司がいるか?」(成長報酬)といったことに目を向けて、人生の選択をしていくということです。
本文 116p より 抜粋

長い引用から始まったが、行間の余白ががたっぷりと取られ、口述筆記にも 似た(実は違うらしい)文体のこの本は、実に示唆に富んでいる。読みやす くはあるけれども、そこに書かれていることは、かなり難しく、そして重要 なことである。

これからの時代に、ビジネスパーソンは何を目指したらよいのか?その難問に本書は明快に答える。「知的プロフェッショナル」を目指すべきだと。勘の良い読者なら「ナレッジワーカー(知識労働者)」とどこが違うんだ?という疑問を持っただろう。

本書は「求められる人材」と「活躍する人材」という言葉を提示し、その答えを導き出す。ナレッジワーカーは、その知識を「労働力」として、社会に求められる人材である。一方、知的プロフェッショナルは「指導力」を発揮することで、社会で活躍する人材なのだと。

では、職業的な知恵を使って仕事をするナレッジワーカーになるためにはどうすればよいのか?「収穫逓増」のキャリア戦略を取るべきだと本書の筆者は説く。この耳慣れない経済用語を使って説明されていることは、結局先に引用した4つのリターンを最大化するということらしい。

金銭的なことは「見えるリターン」だが、それを追い求めるのではなく、知識やリレーション、評価、それに伴う成長こそが、「目に見えない」が大切な仕事の報酬である、その報酬を逓増(=簡単にいえば雪ダルマ式に増やすという感じか…)させることこそが、大切だという。

さらに、自己投資のためのポイントや、師匠と呼ぶべき人を作ること、そして、知恵の交換の技法や、聞くこと反省することの大切さ、個人ブランドの確立まで、「活躍する人材」として必要な「力」を身につけるための、さまざまなステップが、順番に記されている。

最初に読みやすいと書いたが、実はこの本はとても読みにくい。理由はカンタン。筆者が作った(と思われる)新しい言葉があちらこちらに散りばめられているからだ。読みやすそうな雰囲気にだまされてはいけない。繰り返すが、そこに書かれていることは、かなり難しく、そして重要なことなのだ。

これからさらに進化することが予想される知識社会で成功するためのポイントをつかみたい、そんなあなたは、まずこの本を読むと良いだろう。

フリーエージェント社会の到来

【著者】ダニエル・ピンク【訳者】池村千秋【出版社】ダイヤモンド社
【発刊年月】2002年04月18日【本体価格】2,200円
【ページ数】394p【ISBN】4-478-19044-5

重要なのは、企業の寿命が短くなっているこの時代に、私たち一人ひとりの 寿命は長くなっているということだ。これからは、勤め先の企業より長生きするのが当たり前になる。ひとつの組織に一生涯勤め続けるなどということ は考えにくくなる。
本文 14p より 抜粋

フリーエージェントと聞くと何を連想するだろうか。プロ野球選手のストーブリーグでのFA宣言を思い浮かべる人が多いかもしれない。もしくは、勤めている会社の中には、社内転職の制度があって、それをFAと呼んでいるというところもあるかもしれない。

本書でいうフリーエージェントとは、自宅でひとりで働き、組織の庇護を受けることなく自分の知恵だけを頼りに、独立していると同時に社会とつながっているビジネスを築き上げた人のことをいう。オーガニセーション・マン(=組織人間)の時代は終わったのだと、本書は高らかに謳い上げる。

本書ではまず、新しい働き方であるフリーエージェントについて、そのメリットが述べられている。何よりも組織に縛られない。そして、会社に勤めていては、潰れてしまったらお終いだ。複数のクライアントを持つことでリスクを回避できる。さらに、時間が自由になるなど、様々だ。

さらに、組織に縛られない代わりにできる「新しい人の結びつき」にも言及している。上下の繋がりではなく、緩やかではあるけれどもフラットな人の繋がりが生まれるのだと。プロジェクトが始まると人材が集まり、使命が終わると解散して次のプロジェクトへ…どうやらそんな世界らしい。

今までのような年を取ってリタイアする、という時代は終わって、年齢を重ねても働き続けることを望む時代になった今、高齢者のフリーエージェントは、インターネットを利用して、好きなときに求められるだけ働くというスタイルを取るだろう、とも本書では書かれている。

また、フリーエージェントにとって必要な設備として、スターバックスのようなコーヒーショップが挙げられていたり、一日のうち家族以外で口を利いたのはフェデックスの配達員だけだったりすることがあると暴露したりと、なかなかユニークな内容で、読んでいて面白い部分がたくさんある。

筆者はアメリカのゴア前副大統領の首席スピーチライターからフリーエージェントした人物。パースペクティブでありながら、綿密な取材による細かい事象も丹念に拾い上げていて、アメリカにおける「組織に属さず働く」ことを、立体的に描き出している。

日本にこういう社会が訪れるかどうかは別にして、新しいワーキングスタイルの一端に触れるために、本書を読むのは悪くないと思う。訳文も構成もよく、とても読みやすい一冊である。ぜひどうぞ。

「課長」の作法

【著者】山田敏世【出版社】NHK出版
【発刊年月】2002年03月10日【本体価格】640円
【ページ数】189p【ISBN】4-14-088022-8

部下の期待に応えつつ上司にも信頼され、さらに上にも下にもこびることな く独自のスタンスを貫ける課長になるためには、「開放性」「包容性」「正確性」「一貫性」の四つが重要です。
本文 67p より 抜粋

課長の仕事とはなんだろうか?部下である課員はもちろんのこと、現在課長を務めている方でも、的確に答えられる人はそれほど多くないだろう。重要な役割ではあるんだろうけれども、なんとなく茫洋としてつかみどころのない役職、それが「課長職」である・・・という感じがする。

本書は、ビジネスマナー・秘書実務の講師でもある筆者が、組織人として、またチームリーダーとして、課長が求められるもっとも基本的なビジネスマナーとは何か?また、上司からも部下からも信用される「課長」とはどんな人物なのか、やさしい語り口で伝授してくれる。

述べられているポイントは、ザックリ大別してしまうと2つ。1つは「おかしな振る舞いはしていませんか?」ということ。そして、もう1つは「部下をきちんと指導できていますか?」ということ。たった2つのことだけれども、ずいぶんと耳が痛い「指摘」が並んでいるのだ。

例えば「振る舞い」に関して。「ちょっといいですか」と部下が話しかけているのに、「いいよ、何?」と言いながら、実はパソコンから目を離さず、マウスを動かして、ながら聞きしている・・・こういう人は、自分では話を聞いているつもりでも、部下の評価は「話を聞いてくれない課長」となる。

実際の自分自身がイメージしている行動と、部下や上司の評価にズレが生じることが、自らの評価を落としている、ということがわかる。自分の普段の態度が「そのポジションにふさわしく」振舞えているのか?この本を読み込めば、自身の問題点が少しだが浮き彫りになってくる。

さらに、部下を「出る杭を育てる」と題して、どのように「やる気を出させて」「能力を伸ばして」「組織人としてのマナーを身に付けさせる」のか。遅刻はいけないこと?マナーを学んでも金になるの?など、頭が痛くなりそうな、しかし、 わかりやすい事例を示して紹介している。かなり面白い。

今、課長職に就いている方はもちろんのこと、組織に所属するビジネスパーソンにも、本書は広く読んでいただきたい1冊である。課員は、課長が望むことを先回りして理解し、望まれる部下になるためのツボをチェックするために、お勧めしておきたい。新書なので、サクッと読めるのもマルである。

これだ!と思える仕事に出会うには

【著者】シェリル・ギルマン【訳者】ニキ・リンコ【出版社】花風社
【発刊年月】2001年12月25日【本体価格】1,600円
【ページ数】293p【ISBN】4-907725-36-1

私は以前、ヨガを教えていたことがある。講師になろうと決心したのは「人に教えるとなったら、いやでも必死で練習せざる得なくなって、よく身につくだろう」と思ったからだ。だから、近所の生涯教育センターに行って、ヨガを教えたいという話を持ちこみ、スタジオを開き、ヨガの本をありったけ買いこみ、週に三回ヨガ教室に通って講師の資格を取った──このとおりの順番で。
本文 192pより抜粋

不況だ、リストラだと、厳しい労働環境にあるはずなのに、だからこそなのか「自分の好きな仕事に就く」という視点での職探しが、ひそかに(といっては変だが)ブームである。要は「天職を見つけるために転職したい(下手なシャレだと笑わないように!)」人が増えているということなのだろう。

本書は、数多くの「天職探し」を助けてきた「天職・転職コンサルタント」が豊富な事例を交えて語る本当にやりたい仕事を見つけてゲットするためのスキル──を紹介した本だ。と、腰帯にはある。なるほど、アメリカにおいての「好きなことを仕事にする方法」が、詳細に書かれている。

まず、今の自分の仕事を見直すことにより「今の仕事の中にも、自分のやりたいことはあるのでは?」ということを気づかせようとする。実のところその行為は、仕事について「正面きって向き合うためのトレーニング」の一環に過ぎないのだが…。今の自分を正しく見据えるところから本書は始まる。

次に、転職という「冒険色の濃い」アクションを起こす際に生じる、さまざまなネガティブな要素を「本当の安全とは何か?」と問いを立てることによって、その不安を取り除かせる構成に、本書はなっている。また、実際に生じるストレスに立ち向かう方法も紹介されているのも嬉しい。

さらに、読者の持つ「創造力を解放させる」ことによって、ポジィティブな考えを志向させ、小さな頃から思い描いてきた「仕事への理想」を思い起こさせることで、なりたい仕事へ気持ちをフォーカスさせている。追い討ちをかけるように、人生の目的についても本書は掘り下げさせるのだ!

自分のやりたい仕事を「あぶり出させておいて」実際にその仕事に就くための手段として、本書ではいくつかの具体案を提示する。「今いる場所でそれを見つけ出す」という極めて現実的な提案から、「自分が習いたいことを教えてしまえ」と、いささか強引な手口まで、バラエティに富んでいる。

その他にも、自分を売り込むコツなど、役に立つだろう「スキル」が満載の一冊である。それぞれの項目に「演習問題」がついている。本書を手に取ったら、ノートを用意して、設問に丁寧に解答すれば、かなり自分自身のことが「客観視」できるだろう。

流し読みして「何かが得られる」類の本ではない。しっかりと繰り返し読み込んでこそ「価値のある一冊」だろう。本メルマガ読者には、お勧めの一冊である。ただし、訳文はこなれているが、構成が洗練されていないからか、若干読みにくいかもしれない。頑張って読んで欲しい。

辞めて正解!?-私がまだサラリーマンだった頃

【著者】神濤玉青【出版社】情報センター出版局
【発刊年月】2001年11月16日【本体価格】1,300円
【ページ数】185p【ISBN】4-7958-3692-2

本書は、31人31様の脱サラ模様を収めたインタビュー集です。さまざまな価値観と、その人なりの懸命な生き方。それぞれの物語に、そこにしかない味わいと真実があります。あなたの心に響く物語を探してください。
本書 まえがき より抜粋

本書は各界の著名人の「脱サラ模様」を描いたものである。その数31人。サラリーマン暦10ヶ月から、果ては45年生まで。それぞれのサラリーマンだった頃の思い出と、退職時のことについて、インタービューしたものをまとめている。本誌の読者にとっては、興味深い内容ではないだろうか。

例えば、最近注目度が高まっている、劇作演出家の松尾スズキさんは、サラリーマンにあこがれていたと言う。自分自身の「変さ」を自覚し、透明な存在として、社会に埋没するためにサラリーマンになったのだが…結局はその「リセット」は成功することなく、会社でも浮いた存在になった。

彼は、サラリーマンでは自分を埋没させることは出来ずに、結局自分自身を埋没させるために、自分の居場所を作った(=劇団の結成)のだと言う。そして、自分の居場所を見つけるためには、しばらくウダウダあがくことを勧めている。これは「モラトリアム脱サラ」の例である。

関西を中心に「お天気オジサン」として有名な福井敏夫さんは、仕事を「人を使う仕事」「人から使われる仕事」の2種に分類。自分は気が弱いから、人を使うことは出来ない。だからと言って縦社会の中で縛られることもイヤだ。技術屋なら現場で自分の好きなことがやれる、と思い、気象庁の気象予報官を仕事にしたと話す。

自身は職人気質の予報官だったが、サラリーマン生活32年目にして、静止気象衛星「ひまわり」を使った日本最初の気象解説をテレビで行う羽目になり、テレビの天気解説者としてブレイクしてしまう。「大変身脱サラ」の典型だ。この調子で、いずれの著名人のエピソードも、なかなか面白い。

著者も前書きで述べているが、本書に登場する「脱サラ」組には、いくつかの共通点がある。1つは「退職時に不安や恐怖を感じていること」である。本書に登場する人たちは、いずれも豊かな才能で、世に出ている人たちばかりだ。そんな彼らでも、退職時に発生する「ネガティブ」な力に押しつぶされそうになっている。

もう1つは「サラリーマン時代の経験が糧になっている」と、サラリーマン時代を否定する人はいないということ。本書の肝は、実はこの一点にあるといって良い。本書に書かれてあることすべては、今頑張っている「サラリーマンへのエール」に他ならないのだ。仕事に疲れたとき、手にとって読んでみると良い、そんな本なのかもしれない。

理想のわたしになる!最強のセルフプロデュース術

【著者】シェリル・リチャードソン【出版社】きこ書房
【発刊年月】2001年09月30日【本体価格】1,400円
【ページ数】260p【ISBN】4-87771-075-2

人生イコール仕事ではありません。「やるべきことリスト」の一番上に自分自身を据え、徹底したセルフケア(自己管理)を実践して、良質な生活を送るための強固な基盤をつくりましょう。
本書 第1章 コーチング覚書 より抜粋

一昔前にビジネスマンの間では「自分探し」なるキーワードが流行した。自分らしい生き方とは何だろう、本当の自分はどんな人間なんだろう。仕事だけが人生じゃないさ…的なワードが盛んに叫ばれたりもした。しかし、今はどうだろう。未曾有図の不景気の中で、そんな余裕はないといった感じか。

しかし、こんな世の中だからこそ、思い通りに生きたいと願って、自分なりの「幸せ」を追求すべきではないのか…。今週紹介する本は、そんな幸せを追求する人たちの生活改善に力を貸してきた、コーチングの第一人者が筆者である。今のままではいけない、と考える人には最適の一冊なのだ。

本書が提案するセルフプロデュースのポイントは7つ。「自分本位になること」「優先事項を整理すること」「自身が消耗している原因を突き止めること」「経済状態を健全なものにすること」「自身のエネルギー源を見直すこと」「心の通い合う仲間をつくること」「精神的な幸福を尊重すること」

どれも至極当たり前のことのように思える。だが、自身を振り返ってよく考えてみるとわかる。どのポイントも、実際には出来ていないことが多いはずだ。どうして自分は、その判りきったことが出来ないのだろうか。その答えを解く鍵は「正面から向き合う」というキーワードにある。

要は、セルフプロデュースをするためのポイントを実行するべきだということは、十分にわかっている。しかし、それが出来ない。出来ない理由もわかっている。だが、理由を発生させる原因まで突き詰めていない。ここに問題点があるのだ。本書を読めば、そのことが実にクリアに理解できる。

例えば、心が穏やかではない理由は、スケジュールが多忙でゆとりがないからである。とは判っている。しかし、何故スケジュールが多忙になるのか、どうしたら多忙な毎日から解放されるのか、理由を発生させている原因にまで、思いを至らせることは少ない。だが、ここを乗り越えなくては…。

本書は、その原因を探し出し(受けたことはないが)これがコーチングか!と思わせる内容で、解決するためのプロセスを、懇切丁寧に解説する。本書からの問いかけ(たくさんあります)に、ノートを取りながら(これはやったほうが良いです)答えていくと、今の自分に何が必要なのか、コーチしてくれると言うわけなのだ。これは読むしかないだろう。必読!

4回リストラされてもホームレスにならなかった私

【著者】トム・ロナーガン【訳者】岩田佳代子【出版社】花風社
【発刊年月】2001年08月10日【本体価格】1,200円
【ページ数】186p【ISBN】4-907725-28-0

誇りを持つ。そのためにはどうしたらいいのだろう。(略)とにかくまず、何か打ち込めるものを探してみよう。これまでの仕事を忘れるほど没頭できるものが必ずあるはず。その際、自分が探したくて探しているのだということを忘れずに。決して、探させられているのではない。間違えないでほしい。あなたの方から会社を見限ったのだ。
本書 65p より抜粋

「痛み」を伴う「構造改革」が実施されたとして…あなたの「首」は大丈夫ですか?厳しい現実に直面しているとき、不安な気持ちだけでは立ち向かっていくことは出来ないはず。4回もリストラをされながらも、そのたびに逞しく立ち上がった男の「勇気」と「知恵」を、開陳したものが本書である。

本書では、クビを切られた原因の大半は、自分に責任があるのではないとしている。自分がクビを切られたのは、他の誰かが、計画通りにコトを運ぶことが出来なかったため、なのだとしている。なるほど、モノは考えよう、実にポジティブである。

さらに、仕事を求めるために、友達やクビを切った上司へアプローチするための方法も書かれている。例えば、友達が「話し掛けやすい」ように、自分のリストラ劇を、「決心したよ、仕事を変えようと思ってね」などと、上手に脚色することなどがそれである。この視点はなかなか面白い。履歴書や面接などといった、求職時に必要とされるテクニックも解説されている。

また、それでもダメなときというわけではないだろうが、起業するためのテクニックも披露されている。右へ行っても左へ行ってもダメなとき…きっとあなたはどちらへ行こうとしていたのでもない、真ん中を進もうとしていたんだ、と言うことだろう。これまた、ポジィティブ・シンキングである。起業時に必要なユニークな心構えが書かれている。

これらのスキルを見ていて気がつくのは、前向きな人生を歩む筆者は、その行動の裏打ちとして、相手の求めていることを読んでいるということ。本書の最大の肝は、実のところ、クビになった焦りを持つ自分では、到底考えられそうにない「相手(=受け手)の心理」を紹介しているところにある。この心理戦、どんなビジネスシーンでも有効であることは言うまでもない。

短いが適切で今すぐにでも活用できるアドバイス、心を高揚させ前向きにしてくれる視点移動、ユーモア溢れる筆致、どれもが、読む人を勇気付けてくれることは間違いない。腰帯にもあるが「厳しい時代を生き抜く最強の仕事観」を作るために、読んでおいて損はないだろう。ピンチをチャンスに変えるために、一読を薦める。

ぼくたちは、銀行を作った。

【著者】十時裕樹【出版社】集英社インターナショナル
【発刊年月】2001年07月10日
【本体価格】900円【ページ数】143p【ISBN】4-7976-7044-4

そもそも、ネット銀行をつくってみたい(中略)免許が必要だ、ということくらいは漠然とは知っていたものの、さて、どうやって手をつけたらいいものやら。どうやったら免許がもらえるか、なんて当然のことながら、どこのホームページにも出ていません。困ったあげくに浮かんだアイデアは免許を交付してくれるところに直接聞きに行く、という至極単純なものでした。
本書 10p より抜粋

暑さが続いて疲れてくる。仕事に対する意欲がなんとなく失せてしまう。意気のあがらないまま仕事をしては、余計疲れます。と言うことで今週は、誰もが元気になる、ちょっとしたサクセスストーリーを綴ったこの1冊をご紹介する。読めばテンションがあがること、請け合いである。

本書は、ソニー銀行という、インターネット専業の銀行を立ち上げた男が、銀行が出来ていくまでのプロセスを、自らの手で書いたものである。実はそれだけだ。が…自慢話や苦労話がほとんどの類書とは、趣を異にしている。そこに漂うのは、トホホなくらいのノンビリ感なのだ。

インターネットパンクを一から立ち上げる、大変な事業である。実際に、本書の中でも様々な苦労や壁にぶち当たってはいるのだ。事業の凍結、戦後ほとんど類の無い新銀行の設立など、その実現まで、大変な苦労があったようである。しかし、その困難…をなんとも微妙な力の抜け具合で乗り切っていくのである。これは、痛快以外の何ものでもない。

事業の準備室が立ち上がって、オフィスを求めるのも、格安というところに配慮して、そんなところで良いのか?と周りから心配される。本社の遊休資産である机などをかき集めて経費節減を狙うも、別事業体となったので、買取だと言われて焦り、オフィス用品の安売りを探して、何故か「ユニクロ」を思い浮かべてしまう(アスクルだって!)。笑える。

大したことをやってのけているのに、本人にはその意識が無い。事業のプレゼンテーションをして、役員からクエスチョンがついた時、その理由について、1.ソニーがやるべき必然性が見えない、2.言っている本人に迫力がない、と言ってのけている。十分にその力の抜け方を、自覚しているのである。それは、実は強力な自信の裏返しなのだろう…そう思えて仕方ない。

元々本書は、銀行を立ち上げ時に、ネット上の銀行なんて、顔が見えないはずだから、その「体温」みたいなところを伝えたい、と始めたメルマガをまとめたものである。読んだ後に、仕事をするために必要な「謙虚さ」と「勇気」と「粘り強さ」と「理想を持つこと」を、周りを包む「温かさ」とともに受け取れる、そんな本だ。読んでやる気がでることは保証しますよ!

研究力

【監修】有馬朗人【出版社】東京書籍
【発刊年月】2001年05月25日【本体価格】1,800円【ページ数】318p
【ISBN】4-489-00609-8

独創的なアイデアは個人から出るのであって、会議からは出ません。日本の研究の多くはプロジェクトチームを組んで、会議、会議で進めていきます。そういう進め方をしたら、ろくなことはありません。
本書 31p より抜粋

本書では、科学や工学の分野の最先端で活躍する10人の研究者が、第一線の研究者になるために必要な「研究力」について語っている。それぞれの研究者が、ブレークスルーを生み出す力とは何か、紹介しているわけだが、一般的なビジネスパーソンにとって、かなり刺激的な内容になっている。

本書の内容だが…正直難しい。正確には、ブックレビュアーの私が、自分の知識として持ち得ない分野の話ばかりであったので、きちんと理解できなかった、だけであるが…。しかし、それを差し引いても本書はとても面白い。そこには、研究者たちの「思考」が見え隠れしているからだ。

研究者の思考は、まず研究ありきである。その全くのストレートさに驚いてしまう。研究のためなら、企業に勤めていたとしても、配置された場所にも行きたくないと言うし、あるテーマを追いなさいという命令書だって無視してしまう。結果を出せば大丈夫、という信念が、なんともユーモラスだ。

そして、研究のためなら教わることを厭わないところが素敵なところだ。本書に登場する研究者たちは一様に、一流の先生に師事することや、有望な人材と積極的に交流することを勧めている。また、自らの専門分野でないところで、不明なことが生じた場合、菓子折り一つでその分野の一流どころを訪ね、しっかり教えを受けている。その素直さがうらやましく感じられる。

さらに、研究費を獲得するためのプロポーザルのテクニックや、研究者がベンチャー企業を起こすということ、また、世界のライバルたちと伍すための自分なりの方法論が、カンタンではあるが開陳されている。やっていることは違えども、研究者もまた、ビジネスパーソンと同じだなぁと、読んでいて頷くことも多い。

監修者である有馬朗人氏(元文部大臣でご存知の方も多いはず)は、研究者にとっての真の研究力とはなにか、研究生活から得た教訓として、次のようにまとめている。

まず、若いときに非常に優れた独創的な人に会って、その人がどのように振舞うかみることが大切だとしている。そして、ある時期からは、完全に1人になれ、と説く。さらに、どんな攻撃を受けようとも、自分が正しいと思ったらめげないこととしている。なんだ、自分たちと一緒じゃないか、そう思われた方は多いだろう。

ピンと来たあなたには、本書はお勧めである。研究者の「思考」を垣間見てみよう。一押し本です。

ビジネス・リーダーへのキャリアを考える技術・つくる技術

【著者】グロービス・マネジメント・インスティテュート
【出版社】東洋経済新報社
【発刊年月】2001年05月31日【本体価格】1,800円【ページ数】217p
【ISBN】4-492-53113-0

□キャリアを考え、つくるというスタンス

○まず、現時点での自分を正しく認識させたうえで(自己理解・自己洞察)
○自分にとって残された時間の中で(時間軸)
○何を目指して(ありたい姿・状態:志向性)
○何を大切にして(価値判断基準)
○どのようなポジションで(企業・組織の中での役割)
○どのような仕事をしていくのか考えて(仕事の内容)
○そのためにどのような行動を起こしていくのか(行動計画)

本書 3p より抜粋

終身雇用制度の実質的な崩壊によって、ビジネスパーソンのキャリアプランは非常にわかりにくいものになっている。今までのように、一定の年齢がやってくれば、入社同期が同じくらいの時期に同等の地位に付き、後は少なくなる役職を確保できるかどうかの椅子取りゲーム…そんな長閑な時代ではないのだ。自身のキャリアプラン、どのように考えればよいのだろうか。

腰帯にも銘打つとおり、本書は「戦略的キャリアマネジメント」の教科書の決定版である。このフレーズだけでレビューの紹介が終わってしまうほど、キャリアプランの策定において、知っておくべきことが、簡便にかつ、解りやすくまとめられている。ビジネスリーダーとして生き残っていくための、必要最小限であろうガイドラインを本書で知ることが出来る。

まず本書は、キャリアという漠然とした言葉では、なりたい自分にはなれないと指摘する。やりたいことはいったい何なのか…その本質的な部分を考えさせる。その上で、世間に流れている「キャリアアップ」に関する幻想と誤解を解いていく。中でも、とても短いコラムなのだが、採用側の論理も紹介しているところに注目しておきたい。

結局、キャリアをアップさせるということは、自分の努力だけではすまないということだ。自分の商品価値を見極め、その価値を高め、そして必要なところへ自らをセールスしていく。常に、相手を意識したものでなくてはならない、ということが、本書を読み進めていくうちにわかる。

やりたいことを見つければ、次は、それを実現するための周辺環境の整備という、当たり前のプロセスを、丁寧に紹介した書籍は意外と少ない。やりたい仕事のつかみ方や能力開発の手法が、具体的に細かく紹介されている本書は、ビジネスキャリアとは何か知りたい、自らのキャリアプランをもう一度再検討したい、そんな貴方にお勧めしておきたい一冊である。

アメリカ式論文の書き方

【著者】フライ【訳者】酒井一夫【出版社】東京図書
【発刊年月】1994年02月25日【本体価格】1,500円【ページ数】158p
【ISBN】4-489-00431-1

論文をまとめるというのは、一つのテクニックです。これを身につけてしまえば、後は流れ作業なのです(本書に記されている論文のまとめ方のノウハウの意の文を略)これさえマスターしてしまえば、(中略)論文の内容を高めることに力を注ぐことが出来るのです。
本書 訳者あとがき より抜粋

出来るビジネスパーソンとして身に付けておきたい「技術」の一つとして、ドキュメント作成があるだろう。しかし、レポートや報告書、企画書などを作成するためのノウハウを、きちんと教わった経験のある人は少ないはず。本書には、ドキュメントを作成するための技術が、事細かなポイントまで詰め込まれている。

本書のわかりやすさは、その本の成り立ちに由来している。もともとはアメリカの高校上級生、もしくは大学生がレポートを作成する際のハウツーをまとめたものである。しかし、自分の考えをまとめて主張するトレーニングが行われることのない日本においては、ビジネスパーソンにとっても、十分に役に立つ。本書を読むと、ドキュメント作成は技術であることがわかる。

本書に書かれてあるテクニックは、1.あるテーマについて情報を見つける方法。2.情報を整理し結論を導き出す方法。3.よく構成された詳細なレポートをまとめる方法。4.自分の考えを効果的に伝える方法。の4つである。それぞれのポイントが、学生向けだからだろうか、実に細かく「手取り足取り」書かれている。

まず、論文を作成する際には、その半分を調査、そして残りを執筆に充てるようにと、本書では説く。説得力のある文書を作成するためには、事前の調査が十分でないといけない、ということなのだろう。文献の探し方、得た情報のカード化の技法などがまとめられている。今やインターネット時代、若干古びた技法もあるが、基本の部分は十分に参考になる。

情報の整理まで出来たら論文は出来たも同然とし、情報を論旨に沿って並べ替えなどを行い、さらに情報に自らの考えなどを肉付けしながら、仕上げを行っていく。ブラッシュアップの技法まで、単純であるが必要なテクニックが、細かく紹介されている。そのあまりのシステマティックさに、本書読了時点でもう、論文がすらすらと書ける気になってしまうから、不思議だ。

かなり旧い本であることから、インターネットの利用法などもなく、時代に適応していないところもある。しかし、ペーパーを作成するための基本的なテクニック習得は、この一冊を読めば十分であると断言してよいだろう。本稿作成時にインターネット書店で確認したが、今ならまだカンタンに本書は手に入るようだ。さあ、急いで。必読です。

日本経済幻論 -これからの時代ってむごくない?-

【著者】しりあがり寿+日本総合研究所【出版社】PHP研究所
【発刊年月】2001年01月31日【本体価格】1,400円【ページ数】180p
【ISBN】4-569-61325-X

(前略)本書は、このような日本経済、日本企業の現状認識に基づき、二 十一世紀に向けた改革の方向性について、米国経済あるいはアングロ・サ クソン型経営システムとの比較から学ぼうという意図が込められている。
本書 はじめに より

何をどう考えても、日本の今の経済状態は良くないのだろう。ビジネス雑誌や新聞、テレビでのニュースなどを見ていても、「良くない」とは報じられているのだが、それらを見ていても、「何が理由で悪い状態」なのか、「どうすれば改善に向かう」のか、そして、「個人としては何をすればよい」のか、一向にわからない。

本書は、哀愁のマンガ家・しりあがり寿の、今の日本経済をテーマにした、コミカルでいて悲哀の漂うマンガに、日本総研の切れのある解説を加える、というスタイルを取っている。内容は、経済原論・サラリーマン像・経営・インターネット・ビジネスモデル・ゲーム社会・消費者ニーズの八項目。それぞれの項目について、現在と未来を、わかりやすく説明している。

例えば「サラリーマン像」は、世界一元気で働き者と言われた「ジャパニーズ・ビジネスマン」がいなくなった原因、経営トップが突然外国人に交代すること、在宅勤務について、ネット社会が大きくなるにつれ雇用形態が変化する予測、企業組織のバーチャル化などが、取り上げられている。コラムそれぞれは、短い解説だが、大まかなところをガチッと掴むことができる。

コラムの頭についたマンガは相当笑える。誰もが思っている最近のビジネストレンドに潜む「それっておかしいじゃん」を、実に端的に描いているからだ。ツボに入るというのは、このことだろう。ビジネス書にマンガを導入するケースが増えてきているが、テキストを絵に直しただけ、というものが多い。ここでは、読む前にそのコラムの「肝」を示している。楽しく読めることは間違いない。

腰を据えてじっくりと読む、という内容ではない。それよりも、通勤電車の中で、リラックスして読むことをお勧めしたい。易しいからといって、内容が雑であるということはない。必要なデータなどの図版は適宜挿入されているし、なにより「どうすればよいのか」のヒントが多数盛り込まれている。サクッと読めるのが、忙しい身には何よりありがたいはず。

キャリアショック

【著者】高橋俊介【出版社】東洋経済新報社
【発刊年月】2000年11月20日【本体価格】1,500円【ページ数】214p
【ISBN】4-492-53108-4

いま求められているのは、予想外のどのようなキャリアショックに対しても柔軟に対応できる能力を、会社主導ではなく、自分主導で身につけていくことである。それは、単に雇用の流動性に対応して社外でも通用するスキルを身につけるといった次元のものではなく、その先をいなかければならない。
はじめに より

一昔前までのキャリアプランといえば、就職した企業内で、いかに上位のポストに就くかということを示していた。したがって、個人の能力を磨くというよりも、「組織の中での動き」という観点からのキャリア開発がなされてきた。しかし、終身雇用制度のなし崩し的な瓦解などによって、個人という観点からキャリア開発を行うことが必要になっている。

本書は、人材マネジメント分野で長年コンサルティングをおこなってきた筆者が、個人の観点からのキャリア開発を体系化、今後の個人と企業のキャリア開発のあり方について、詳細に述べている。なかでも注目しておきたいのは、「キャリアコンピタンシー」という概念だ。

終身雇用が当たり前だった時代は、キャリアプランは容易に設定できた。目標となるポストや先輩を見つけ、努力をすればよかったからだ。しかし今や吸収や合併などによって、会社そのものが何時消滅するかわからない。本書ではそのことを「キャリアショック」と呼んでいる。

自分が描いていた将来像が予期せぬカタチで崩壊することが、日常で次々と起こっている今、キャリアプランを設定するのはかなり難しい。そこで、自分のキャリアにとって「好ましい変化」を仕掛けて、変化に対応するだけの「能力」を備えること=キャリアコンピタンシーが要求されている。

本書では、キャリアコンピタンシーを身に付けるための視座視点がわかりやすく示されている。キャリアショックとは何か、キャリアそのものの本質、キャリアを切り開くための行動指針や、企業が考えるべきことなど、興味深い内容が並んでいる。

例えば、キャリアをアップさせるときに、今までやってきたことを、さらに積み上げるだけでは競合するものに勝てないと判断したときには、水平展開(=異分野や本流ではなく傍流への移動)をして、キャリアを進めていくことが書かれている。気が付いていても、思い切ることができない行動だが、本書に示されている事例などを読むと、なるほどと頷かされることも多い。

自分のキャリアプランを考える上で、必読の一冊といえるだろう。まず本書を読んで、自分のキャリアアップアクションを精査してみることをお勧めしたい。

ビジネスマンのための知的ミーハー思考のすすめ

【著者】文月敏雄
【出版社】PHP研究所
【発刊年月】2000年11月27日【本体価格】1,250円【ページ数】269p
【ISBN】4-569-61327-6

問題は、知識収集の際のメンタリティです。「自分で考えなくても、解答はどこかにある。誰かが持っている。それを探し当てるのが、知的な活動なんだ」と思い込み、この”知的な活動”を果てしなく繰り返してきたことが問題なのです。つまり、「知のフロンティア」を「知識のフロンティア」と勘違いしていたわけです。
本文18ページより

考えるという作業はとても難しいと感じるヒトは多いだろう。その理由の一つに、考えるスキルを教育のどの段階ででも教わらなかった、ということがあるはずだ。社会に出て働き始めてもそれは同様で、きちんとした「考えるための技術」をレクチャーされているヒトはひどく少ない。

本書は「考えることを考えよう」をコアコンセプトとした、思考のためのガイドブックである。理路整然と考えるためのテクニックが並べられた本ではない。どちらかというと、考えるためのヒントが適宜詰まった読み物体裁になっている。

まず「考えない症候群」に陥ってませんかと、様々な「既成概念」という枠にとらわれた中でしか考えれないヒト=本当に考えていないヒトと看破している。ビジネス書を読む際のメンタリティとして、「答えは本の中にある」と思い込んで探そうとしていませんかと、耳の痛い指摘をしている。なかなか興味深い。

さらに「考えることを考える」として、考えなくてもすんだ日本の土壌、アメリカにおける考えるということの若干のヒント等を整理。日本人の均一性という気質に言及し、変化が生じない環境では、考えることよりも知っているということが尊ばれてきたことに触れている。何故考えなくてもすんできたのか、というベースは、知っておいて損はない。

以降、考えるためのテクニックと進むのだが、広告代理店(博報堂)からコンサルティング会社(ボストン・コンサルティング・グループ)へと進んだ筆者の経験を交えてのノウハウ(というよりもヒント)は、読んでいてとても面白い。

また、「潜在ニーズを探ることは難しい。顕在ニーズを大切にせよ。」などの指摘など、わかり切ったことと「枠」を作ってしまっていたことにも気づかされたりして、汗顔の至りである。

この中に「解答」があるというタイプの本ではない。しかしヒントはたくさん詰まっている。軽装版のこの本を通勤の行き帰りにでも読んで、街を観察してみることをお勧めする。思考技術が磨かれることだろう。

目標達成の秘訣100

【著者】ロジャー・ブラック【訳者】梶原建ニ
【出版社】TBSブリタニカ
【発刊年月】1992年03月03日【本体価格】1,456円【ページ数】293p
【ISBN】4-484-92102-2

○朝食ミーティング、黄昏ミーティング コメント…朝食ミーティングはいいアイデアだ。ただし中身を忘れた企画倒れに注意。やっておくとあとのスケジュールが楽になる、日常的な打ち合わせの時間に利用するのがいい。(中略) 適した仕事のタイプ…日常的な雑務、ビジネス上のつき合い、社内または他社合同の新規プロジェクトに関する予備診断。いろいろの根回し。スタッフ問題。
本文 059p より

パッと思い浮かぶ、ビジネスマンに大切なスキルと言えば、「時間管理」と「人間管理」だろう。理由はとてもカンタンで、仕事とは時間に追われてするものだし、仕事とは1人ではほとんど出来ないからだ。しかし、この2つ、なかなか手ごわい。本書は、時間管理の改善と業績の向上に有効なメソッドを、100章の短いセクションに分けて紹介している。先の2つの悩みを解決する手法が満載だ。

さすが1つのテーマを100に分けているだけのことはある。一つ一つのメソッドが、実に詳細である。そしてとても面白い。例えば「ピンチを分析する」というコラムではこうだ。

一年半後の発売を予定している製品のコスト問い合わせのメモが販売部長から届くが、優先順位を下にして処理をしないでおく、そうすると穏やかな文面のメモ(ただし期日の明示はない)がまた届く、さらにほっておくと、販売部長の秘書から「メモは読みましたか?」とせかされて、ちょっと優先順位を上げる、が、依然先のことだろう、と思っていたら、メモの用件の真の依頼者である取締役が、腹を据えかねた声で督促の電話、明日までにコストを出せと言われて関係個所に問い合わせるも、無理といわれて途方にくれるというプロセスが示される。その中に、気づくべきだった予兆がいくつか隠されている、としてポイント解説を始める(ちなみにどこが予兆だったか分かりますか?…回答は…書店で見てください)。

メモの取り方から、時間は何故失われる?、他人を説得するためのポイント、文書の書き方など……。出来るビジネスマンなら、無意識にやっていること、コツとして知っていることを、この本は一つ一つ丁寧に拾い上げて文字として置き換えている。自らの仕事の進め方をもう一度見直し、スキルアップを図るための格好の「バイブル」になること請け合いだ。

古い本ではあるが、大型書店などではきちんと見かける。やはり人気のある本なのであろう。最近では、インターネットのブックショップも充実していることでもあるし。探してぜひ手に入れられることをお勧めする。漠然としていた「仕事」の進め方に一本芯が通る、そんな感じがしますよ。

大学教授になる方法

【著者】鷲田小彌太【出版社】青弓社
【発刊年月】1991年01月30日【本体価格】1,500円【ページ数】198p
【ISBN】4-7872-3037-9

私は、職業としての大学教授を、まず、学問上の目的を達成する手段としてではなく、生きるための手段として位置づけたい。つまり、普通の職業と同列に置いてみるのである。普通の職業であるから、普通の人がなれなくてはならない。だから、特殊な能力と努力を要求するような職業ではなく、いちばん層の厚い、偏差値五〇前後の人なら、方法さえ間違わなければなれるということを紹介したいのである。その意味で、まさに「ハウ・ツウ」ものである。
本文 はじめに より

まず最初にお断りしておきたい。今回取り上げる本は、本メールマガジンとしては、いささか毛色の変わったものである。ビジネスマンの直接的なスキルアップには結びつかないが、キャリアアップを狙う人間として、自らの仕事を客観視して、次のキャリアを目指すためにはどうすれば良いのか、という点において、かなり参考になる。ちょっと変化球なのだ。

今や、ライトな教養書の書き手としてメジャーな筆者の、出世作である。はじめにも書かれているとおりに、大学教授を職業として捉え、その職業につくためのノウハウが、細かく紹介されている。ある意味、ネガティブな視点で、パロディともとれるタッチで書かれた本である。

大学教授は、生きる糧の道を決定せずに、三十歳までうかうか過ごすことが出来るし、職をもって後も、ほぼ楽しみに近い「仕事」が保証される。高齢になってもそれなりの収入と、悪くない世間上の評価を得ることか出来る。自由気ままに生きるために、最もふさわしい仕事は、大学教授なのではないか、と筆者は言う。なるほど、そう聞くと良い職業だ(笑)。

大学教授の数を紹介して、比較的大きなコミュニティであると説き、その仕事の内容は「教育活動」「研究活動」「学内行政」であると解説する。さらに、大学教授になるには、実は資格など必要なく、研究者養成機関を経てなる「普通」コースから、大学を出ないで教授になる「超特殊」コースまであると紹介している。

その他にも、募集のされ方、応募の方法、コネの使い方、狙い目(=専門にはこだわってはいけない、短大や私立無名大学の教員になれ、勤務地にはこだわるな)など、実践的なコラムが満載されている。読みすすめていると、大学教授に本当になれそうな気がしてくるから楽しい(そんなにカンタンにはいかないだろうけど)。また、一般的なキャリアアップとの共通点(そのものズバリではないが)も実は多く、なるほどと思わせるところも結構ある。

本書は古い本ではあるが、かなりのベストセラーになったから、大型書店にならまだ新刊があるし、古書店でも手に入りやすい。探してみての一読をお勧めする。

iモード事件

【著者】松永真理【出版社】角川書店
【発刊年月】2000年07月25日【本体価格】1,300円【ページ数】221p
【ISBN】4-04-883633-1

「ねっ、これから何ヶ月もかかって開発していくうちには、迷ったり、自分たちの進む方向がわからなくなったりするときが必ずあると思うの。そんなとき、頭に浮かぶこのイメージを思い出せばいいのよ。『コンシェルジュ』という考えを実現するためにはどうすればいいのかを考えて進んでいけばいいの」私は若手に説明した。
本文 85p より

iモードと聞いて知らないビジネスマンはいないだろう。加入者台数一千万台を突破した、NTTドコモの携帯電話端末によって提供されているサービスである。単なる音声だけやり取りに終始していた携帯電話が、マルチメディア端末へ変貌を遂げたこのサービス成功の立役者が、42歳で転職した筆者だ。本書はその顛末を、当事者の視点でリアルに描いている。

本書には数多くの有益なビジネススキルが含まれている。その中でも一番の読みどころは、本書の底流に流れている「転職者としてのスキルの活かし方」ではないだろうか。筆者は、コンテンツ製作者としての力量を見こまれて、会社を移籍した。そして、違うカルチャーの存在する会社において、何度もその違和感に苦しみながらも、自らに求められている役割を見失わずに、スキルを発揮していく。その奮闘ぶりは、コミカルではあるけれども示唆に富んでいる。

自らの力量を最大限に活かすために、ある時は、組織にフィットさせる術を見つけ出す。またある時は、強引に主張を押し通すために、ネゴシエーションに全力を尽くす。必要な人材であれば、社外から引っ張ってくる。アイデアを生み出すためには、変わったカルチャーをそこに投入してみたりする。手を変え品を変え、自らの考えを浸透させていく。

即戦力として入社した「転職者」は、その会社に馴染むことだけが能じゃない。むしろ、戦力として機能することを最優先に考えて行動することが大切なんだと、本書は教えてくれる。

余談だが、こういうリアルで実践的なビジネス書は、女性の手によってもたらされることが多い。不思議と言えば不思議。単にビジネス書としてだけではなく、1冊の読み物としても相当に面白い本である。文章もわかりやすくすらすらと読める。なにより新規事業が立ち上がっていくダイナミック感が楽しい。一読して損はないだろう。

仕事を愉しむ

【著者】高任和夫
【出版社】日経BP社
【発刊年月】2000年05月01日【本体価格】1,400円【ページ数】269p
【ISBN】4-8222-1444-3

マスコミは人の不幸は大きく取り上げるくせに、幸せな人たちの情報を伝達することについて、消極的すぎる。それに惑わされてはいけない。楽しく生きている人は一杯いるのだ。富の格差についてはだいぶ論じられているが、人生の格差も確実に広がっているのだ。どうもわたしたちは、そんな時代に踏み込んでいるようなのであった。
本文 まえがき より

本書は、「日経ベンチャー」に連載されていた、元商社マン小説家の企業探訪記をまとめたものである。紹介されている人は老若男女24人。並々ならぬパワーが必要な独立開業を成し遂げた人のエピソードを、これだけまとめて読むと、なかなかずっしりとくるものがある。本の名前は軽やかではあるが、中身は食べ応え十分だ。

「インターネット時代を突っ走る」「気がついたら起業家」「大企業とはひと味違う」「悠々自適とは無縁です」「主婦だからできた」「再生請け負います」…本書の章立てである。起業家と言えば、20歳代後半のネットベンチャーのそれを思い浮かべるけれども、60歳をすぎても、主婦であっても、起業家になれるんだなぁと、当たり前のことを改めて認識。仕事を愉しんでいるひとは、至るところにいるということだ。

読み進めてみると、起業家たちにはいくつかの共通点があることに気がつく。いつも考え抜いていること…結果論に過ぎないと言われそうだが、彼らはいつも考えている。フットワークが軽い…考え抜いた結果を行動に移すときの身の軽さは驚くものがある。結果を大切にしている…立ち上げる満足だけではなく、得られる結果を大切にしている。得たい結果の為に努力しているのだ。仕事が面白くてしょうがない…その面白さが原動力で、頑張れていることが、はっきりとわかる。

これら起業家の持つ資質的なものは、起業家でなくても、ビジネス社会において、仕事を遂行していくためには必須の力であるはずだ。「思考力」「企画力」「行動力」「分析力」そして「仕事を愉しむ力」…。自分には何が足りないのか、どこがセールスポイントなのか、いろいろと思い浮かべて読むと、より面白いかもしれない。また、楽しく仕事をしている人のエピソードを読むことは、それだけでとても勇気付けられるはずだ。自分も頑張るぞと、前向きになれそうな感じがする。「仕事倦怠期」気味だという方がいらっしゃったら、読むことをお勧めします。

私がマイクロソフトで過ごした日々

【著者】ジュリー・ビック
【出版社】アスキー出版局
【発刊年月】2000年04月15日【本体価格】1,600円【ページ数】229p
【ISBN】4-7561-3393-2

読者に「次のビル・ゲイツになれる」とは約束できませんが、ここに書かれた内容をぜひ試してみてください。そうすれば、少なくともあなたの会社は発展し、あなたのウェブサイトにはより多くのトラフィックが集まり、一緒に仕事をする人たちとより良い関係を築けることは確かだと思います。
本文 16p より

筆者の前著「私がマイクロソフトで学んだこと」は、他のビジネス書にはない、実用的なアイデアがふんだんに盛り込まれていたことで、一躍ベストセラーになった。「学んだこと」は、自らのキャリアを築くためのノウハウを中心としたものだったが、今回は組織としてビジネスを行っていくために、留意しなくてはいけないポイントに、フォーカスされている。

まずはチーム作り。マイクロソフトにおける人材採用と、適性把握、人材開発法が紹介される。キャリアアップを志す、[en] Career Newsの読者には興味深いところだろう。例えば、マイクロソフト人材採用時の最重要ポイントとして7つ挙げられている。「個人としての能力」「成果」「協調性」「製品とテクノロジーへの情熱」「長期的視野」「顧客への配慮」「専門的・技術的な知識、技能」。それぞれには副要因があるとし、「個人としての能力」を形成するそれは、「誠実さ、知的体力、落ち着き、創造力」といった特性である、としている。

その他にも「製品開発の法則」「製品改良&再生の法則」「戦略的パートナー化の法則」「ネットビジネスの法則」と盛りだくさん。いずれのコンテンツも、面白く興味深いエピソードを投げかけ、そこから抽出される、さまざまな「学ぶべきこと」を鮮やかに提示してくれている。平易な文章とともに、その構造化手法には、読み手としては感心するしかない。

さらに各コンテンツには、その分野のマイクロソフトにおけるプロフェッショナルたちが「私の学んだ3つの教訓」と題して、示唆に富んだ有益なコメントを寄せている。例えばこんな感じだ。「社内における上司の地位を知ること」「上司のクセを知ること」「自分と違うスキルを持つ上司が望ましい」。言われてみればなるほどである。本書中に随時挿入されているこの教訓を拾い読みするだけでも、凡百のビジネス書に勝るかもしれない。

翻訳書にありがちな、読みづらさは本書には皆無だ。内容もさることながら、翻訳者に負うところも多いのだろう。店頭で見つけられたら、即買いである。前著をお持ちでない方は、併せての購入をお勧めする。ぜひ。

人、われを「在宅勤務社員」と呼ぶ

【著者】松岡温彦【出版社】実業之日本社【発刊年月】1998年07月20日
【本体価格】1,300円 【ページ数】 206P 【ISBN】4-408-10277-6

10年間も「在宅勤務」を続けてきた現役会社員が、ビジネスマンの生き方を根底から問いなおす-。
同書 腰帯 より

新しいビジネススタイルとして、在宅勤務が取り沙汰されて、もうずいぶんになる。経費節減が叫ばれている今、このワークスタイルが、多くの企業によって採用されないのか、疑問に思う。理由としては、管理が行き届かない、人との繋がりが大事、という程度のものだろう。誰かが見張っていないと働かない社員など、それこそお荷物だし、人との繋がりなど信じられない世の中に、とうになっている。だからこそ、この働き方、注目しておいた方が良い。

今書店に、在宅勤務に関する満足な本はない。正確に言うと、この1冊きりである(と思う)。独立起業関係(所謂SOHO本)がほとんどで、しかもパソコンのことばかり書いてある。ビジネスマンに役立つ情報はないし、在宅勤務の話もない。在宅勤務社員にテレワーカーとルビを振るこの本は、10年にわたり在宅勤務を続けている銀行員が、そのワークスタイルを披露している。在宅勤務についてのノウハウが並ぶが、そのノウハウ、実は在宅でなくても役立つ、仕事の本質が書かれている。

必要なツール、自己管理のコツ、必要な資質、必要な知的インフラと続くコンテンツは、どれもとても興味深い。例えば、必要な資質として筆者は、好奇心、想像力、思考力、構想力、資金力の五つを挙げている。この五つが備わっていれば、テレワーカーでなくとも、一線のビジネスマンでありつづけることは、想像に難くない。求められている資質が、どう言うものなのかが、噛んで含める文章で、カンタンに説明されている。また、知的インフラとしては、美術館・博物館に始まって、図書館、劇場、さらには川辺にまでも取り上げている。これらのアイテムを、ビジネスライフに活かすためのヒントが、さり気なく紹介されている。

読み方によってはこの本、ビジネスマンの資産チェック表としても機能する。つまり、必要な資質を持っているか、知的インフラを自分が活用できているか、などを確認してみると良い。無い部分を補い、未活用な部分に気がつけば、新しいビジネスライフが啓けること、請け合いだ。手にとって見て

仕事!

【著者】スタッズ・ターケル【出版社】晶文社 【発刊年月】97年07月10日
【本体価格】4,600円 【ページ数】 705P 【ISBN】4-7949-5915-X

これは仕事についての本である。まさにその性質上、暴力について──からだ的にも精神的にも──の本だ。事故についてでもあり、胃潰瘍についてでもある。
同書 21p より

115の職業、133人の実在の人々に、ロングインタビューを試み、その人たちの職業について、その人たちの話し言葉でまとめた本である。あまりにも有名な本なので、ご存知の方も多いかと思う。アメリカでの初版は1972年。ニュージャーナリズムの原点といわれるこの著者は、例えば、村上春樹の「アンダーグラウンド」などにも影響を与えている。

ここに書かれているのは、様々な人の職業についてだ。製鋼所労働者から始まり、消防士に終わる。大学教授、モデル、新聞予約電話勧誘員、ドアマン、床屋、ガス検診員、専業主婦、騎手、無職のヒトまで、インタビュイーの属性は多岐にわたる。このボリュームは、世の中にはあらゆる職業があり、そして、今の自分のビジネス社会の狭小を教えてくれる。

スーパーマーケットのレジ係は、販売されているものの値段のたいていを暗記していて、時々店長にその値段を尋ねられるときの、その気分の良さを語り、いろいろなものを見たホテル従業員は、私は口の軽い人間ではない、他人のしていることなど詮索しない、それは私の仕事ではないからと語る。読み進めていくと、すべての仕事には、それぞれに矜持があり、哲学があるコトがわかる。

キャリアアップや、ビジネススキルの向上を目指すとき、なぜキャリアアップを望むのか、どうしてスキルの向上が必要なのか、自らの足元が見えなくなる場合が多い。そんな時、仕事について、多岐にわたり、あらゆるコトを見知っておくことで、自らの座標軸を定めることが出来る。仕事についての様々を、年の初めに確認しておくと良いだろう。

この本の表紙の推薦文にこうある。いちど読みはじめたら、自分の生き方や日常の仕事を、きびしく、じっくりみつめなおさずにはいられなくなる。まさにその通りである。かなりのボリュームで、しかも高価な一冊ではあるが、キャリアアップを目指すビジネスマンなら、一度は目を通しておきたい本である。

外資系企業が欲しい人欲しくない人

【著者】ポール・ゴールドスミス 【訳】千葉 望 【出版社】メタモル出版
【発刊年月】1999年 9月10日 【本体価格】1300円 【ページ数】 181P
【 ISBN】4-89595-242-8

しかし、冷静になって考えてみると、外資系企業といってもすべて同じではありません。また憧れだけで外資系企業をめざしても成功はおぼつかないし、どんな会社が自分にあっているのかをしっかり考えないまま華やかな情報に踊らされては道を誤るだけです。
同書 まえがきより

「GAP」も、「スターバックス」も、「P&G」も、そして「マクドナルド」も、外資系企業だ。それほど外資系企業は私達の生活になじんでいるのに、転職や就職という場面になると、外資系というのは、なんなかしらのバイアスがかかっている。「年収1億円!」から、「すぐレイオフ!」という話しまで、外資系企業にまつわる噂は事欠かないようだ。

さて、今週取り上げる『外資系企業が欲しい人欲しくない人』は、外資系企業を転職先として考える人に是非お薦めをしたい一冊である。この1冊を読むと外資系企業という風に言っても「それほど」日本企業と違いがないところや、大きく違うところが明確に解り非常に面白い。

外資系に転職をする時に誤りがちな点や、日本企業との大きな相違点を具体的に取り上げた9つの実例は、外資系への転職で成功をした人、そして失敗をした人を取り上げてくれている。他の外資系への転職ノウハウ本と異なり、外資系企業で働くということをニュートラルな視点で伝授してくれる。

著者である、ポール・ゴールドスミス氏は、日本で人材派遣会社を経営するイギリスの方だ。単なる外資系企業への転職のノウハウ書におさまらない同書は、外資系企業に興味のある人だけでなく、多くの人に、今後の働き方に関するヒントを与えてくれるだろう。

神のごとく創造し、奴隷のごとく働け!

【著者】ガイ・カワサキ
【訳】小田嶋 隆 【出版社】ダイヤモンド社【発刊年月】1999年7月15日
【本体価格】1600円 【ページ数】240P

人生があなたに課した最も偉大な役割は、革命家になることだ。
同書 P240から引用

読んでいる間、仕事上のアイデアや、新しい企画がどんどん沸いてくる1冊がある。今回紹介する『神のごとく創造し、奴隷のごとく働け!』は、そんな風に仕事に対する意欲をかき立ててくれる1冊だ。

明快なロジック。斬新なメタファー。そして読者の興奮を誘う強烈なアジテーション。ここまでポップに読者を徹底的にポジティブにさせてくれるビジネス書と出会うことはなかなかないはずだ。

筆者のカワサキ氏は、米アップルにてマッキントッシュの立ち上げに参画し同社チーフ・エバンジェリストを務める方だ。伝説とも言えるマックの歴史を作り上げたのは、こういった人達が「クリエイティブ」かつ「ハード」に働いていたのだろうな、と想像しながら読むのも面白い。また訳者である小田嶋氏のテンションの高い翻訳も本書のスピード感を加速させている。

「神のごとく創造せよ」「王のごとく命令せよ」「奴隷のごとく働け」と3つの部分から成り立つ本書。それぞれのパートには、仕事への革命を実現するための「エクササイズ」が随所にちりばめられている。読者の思い込みを揺るがし、新しい発想を導き出してくれるエクササイズを是非実行して欲しい。

同書を一読し、冒頭に掲げられたアップルコンピュータの広告に再度目を通す時、貴方の仕事に対する意欲はきっとより高まっているに違いない。仕事を通し、何かを成し遂げようとしている貴方に、是非「ビジネス」における

「革命家」となっていただきたいのだ。

<能力主義の心理学>

【著者】岡本 浩一 【出版社】講談社 【発刊年月】1999年1月20日
【本体価格】640円 【ページ数】P180 ISBN4-06-149435-X C0211
【ISBN】4-489-00431-1

サッカーの能力はサッカーフィールドで鍛えられ、将棋の棋力は将棋版で鍛えられるように、職場での能力は、結局、職場でいちばんよく鍛えられるものであるというのが事柄の本質であると思います。
同書 P29から引用

グローバルスタンダードや、実力主義という言葉の風が私達ビジネスマンの周りを吹き荒れるようになって随分経つ。しかし、こういった言葉が実際にどのような影響を与えるのかを、皮膚感覚で捕らえることは難しいことだと思う。変化しつつある状況に対し、どういったことをしていけば良いのか、また何を変えていかなければならないのか、そんな風に戸惑ってしまう人も多いのではないだろうか。

さて、今週紹介する『 <能力主義の心理学>』は、能力主義時代において私達ビジネスマンが「どのように」仕事に向き合っていくべきなのかを考察した一冊である。「能力とはなんだろうか」という設問からはじまり人事評価、セルフチェック方法、リーダーシップ、人間関係、と様々なテーマを横断し、最期に「自己実現を問い直す」という項目立てで構成された本書は、仕事に対する心構えを明快に語ってくれている。

新書という形式を活かし、能力主義に対する心構えをコンパトにまとめた同書は、日々仕事をする上でのキャリアアップのヒントだけでなく、今後の貴方のキャリアプランを考える際のヒントを与えてくれることだろう。「能力主義」という潮流に流されるのではなく、みずからの可能性と、能力の再発見をしたいと考える人に是非手にとっていただきたい1冊だ。

エネルギーを奪う仕事、もらえる仕事

【著者】藤原 和博 【出版社】新潮社 【発刊年月】1998年 7月18日
【本体価格】1400円 【ページ数】233P

「日本のビジネスマンはこれから 10年のうちに、“自分のテーマを追うシゴトをしているもの”と“他人が設定したテーマの実現を手伝うシゴトをしているもの”の二つの部族にわかれるだろう。前者を“やりたいシゴトをする人”、後者を“やるべき仕事をする人”と呼ぶならば、“たい族”と”“べき族”の分化が一大現象になる。」

「顔」が見えないといわれるビジネスマンの中にも 「スーパーな」突出した人材がたくさんいる。それは、会社の人であったり、取引先の人であったりするが、書籍の分野や、マスコミの分野でもそういったスーパーな人材との出会いがある。その人材は、急激な成長を続けるベンチャー企業代表だったり、有名コンサルタントだったりする。しかし、今回紹介する書籍の筆者は、リクルートとフェローという雇用契約を結んだ、どちらかといえば、「普通」のビジネスマンの藤原氏だ。

といっても藤原氏は、「普通の」という言葉から大きく逸脱する。リクルートに入社後、東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任し、「じゃマール」の創刊を手がけた方だ。しかし、私が「逸脱している」といったのは、その輝かしい経歴よりも、「一個人としての哲学」を持っている点にある。

「哲学」 というのは、仕事への哲学というよりも、どのように生きるべきかという命題をつきつめ、そしてその答えを実践する哲学だ。この『エネルギーを奪う仕事、もらえる仕事』は、その哲学と知恵に溢れた一冊だ。

冒頭の引用には、以下の言葉が続く。

「人は、自分の持つテーマの上にしっかりと二本の足で立っていると、そのシゴトからエネルギーをもらうことが出来る。何故か疲れない。ポジティブな思考が自然に生まれ、“自己実現”というわかりにくい現象も日常的に感覚できるようになる。」

「自分のテーマを追う」 これはなかなか出来ないことではある。しかし、それは「やってみよう」としていないだけなのではないだろうか?藤原氏のようなスーパーなビジネスマンの言葉に触れ、私はそう思った。これからをどのように生きていくのかを考える時、是非とも手にとって頂きたい柔らかな読後感を持つ一冊だ。

ヒューマンリソース戦略

【【著者】佐藤 修 【出版社】ダイヤモンド社 【発刊年月】1999年6月17日
【本体価格】1600円 【ページ数】205P

「必要な人材(質)を必要な数(量)採用し、育成して機会を与える。成功すればその度合いに応じて報い、個々人の成長とその成果とともに、企業も発展する。言い換えれば、個々人の成長の機会が与えられていない企業は、発展の余地もないだろう。」
同書 P48から引用

よく考えてみれば、会社における人事という機構は、解っているようで解らないところが多い。多くのビジネスマンにとって、人事とは採用をする人や、教育担当の個々人を指しているのではないだろうか。総体としての人事という機能は案外見えにくいのではないだろうか。

さて、今週取り上げる1冊は、「人事の価値が、はじめて明らかになった!」という腰巻きが印象的な1冊だ。この「はじめて」という言葉が人事という仕事の解りにくさを象徴していると思うのだが、その言葉の通り人事が経営に与える影響を明確に解き明かしてくれる。

トイザらスのケーススタディーを題材にし、経営ビジョン設定から内的外的環境の分析、戦略課題の摘出といった軌跡を、人事という立場から、描いている当書。通読し終えた時、企業のビジョン設定と個人のキャリアプラン設定は非常によく似ているのではないかと感じた。

同書の扉に引用された「1年楽しみたければ、麦を育てなさい。10年楽しみたければ、木を育てなさい。 100年楽しみたければ、人を育てなさい。」という『菅子』の言葉は、自分のキャリアプランにとって重要な職場をどのように育てて行くか、あるいは探し出すのか、という点で私達ビジネスマンにも同じことが言えるだろう。

サラリーマン・サバイバル

【著者】大前研一 【出版社】小学館 【発刊年月】 1999年1月1日
【【本体価格】1500円 【ページ数】269P

知的に怠惰な人には、本当に欲しいという情報はない。頭で考えてそれでいいやと満足し、そこで思考がストップしてしまうからだ。ところが、知的に怠惰ではない人、つまり攻撃型の頭の使い方をする人は、そこから自分で実際に調べ始める。その結果、大半の人が考えていることと違う結論がでてくるわけだ。
同書 P15から引用

『サバイバル』 という「さいとうたかを」のマンガが一時期私の周りで人気になった。原因不明の大地震により、たった一人東京の廃虚にのこされた主人公が、食事も、家も、全くない状況の中で、どのように生き延びていくのか、というストーリーの漫画だ。「教えられた知識」ではなく、試行錯誤をくり返しながら身につけた知識こそが、「生き延びる」ためには必要なのだというメッセージが印象的なマンガだった。

今回取り上げる『サラリーマン・サバイバル』という1冊は、まず「サラリーマン」と「サバイバル」という言葉の組み合わせが印象に残る。一昔前は「サラリーマン」といえば安泰の代名詞ですらあった。しかし、いまでは 安泰だと思われていた中でのリストラ、急激に進行する情報化、そして長 引く不況と、私達サラリーマンをめぐる状況は大きく変化している。

ではそんな状況の中、私達「サラリーマン」は、どのように生きぬいて行けばよいのだろうか。今回とりあげた「サラリーマン・サバイバル」の著者は、世界的に有名なコンサルティングファームのマッキンゼーの日本支社長を勤めたことでも有名な大前研一氏。同書における氏のメッセージは明快だ。「知的ホワイトカラーを目指せ(第1章)」「知的怠惰な人は、リストラの餌食になる(第2章)」これからのサラリーマンに必要なのは知的にサバイバルしていくことなのだ。だから、題名からは想像も出来ない程、冷静に私達がこれからどう働くべきか、そのために必要となる能力とは何かを示してくれる。

『サバイバル』の主人公が、回をおうごとに生き抜く術を身につけ逞しくなっていったように、昨今の状況だからこそ、私達も逞しくなれるのではないだろうか。知的に、そしてタフにこの時代を生き抜こうとする人に必ずや力を与えてくれるであろう一冊だ。

私がマイクロソフトで学んだこと

【著者】ジュリー・ビッグ 【訳】三浦明美 【出版社】アスキー出版局
【発刊年月】1997年10月11日 【本体価格】1600円 【ページ数】P231

たとえ昇進のチャンスを棒に振ったり、友達が同じ仕事で自分より給料が高かったり、希望した転属がかなえられなかったりしても、落ち込んではいけません。50年も働き続けるのです。いつもベストを尽くしていれば、そのうち帳尻は合うはずです。
同書 P209から引用

不景気でも毎日、新しいビジネス書が発行されている。新しい書籍を出来るだけ手に取るようにしているのだが、「これ」という一冊というのは、なかなかないものだ。多くのビジネス書は、一時的に流行るパラダイムの紹介だったり、その解説書だったりする。あるいは、同僚との食事時間でより有益な情報を得ることができるようなノウハウ本か。

しかし、そんななかでも時々、キラリと光る内容や、切り口、語り口のビジネス書に出会うことがある。そんな本は、発行年月日によらず、時々手にとって見たくなるものだ。今回紹介する書籍もそんな 1冊だ。

題名にもある通り、筆者のジュリ・ビッグさんはマイクロソフトでマネージャ、グループマネージャを歴任した方である。あのword、officeのプロダクト・マネージャをしていたというのだから、相当なキャリアを持った人なのだろう。しかし、この当書。題名からも伝わるように、語り口は、ふとしたきっかけに上司が部下に仕事のコツを教えるような優しさに溢れている。

エッセイのように読み進められる当書だが、この一冊を読み終えた時、きっと仕事やキャリアに関する知恵を身につけることができていることだろう。

「こんな上司や、同僚がいたらいいな」という読後感を得られるビジネス書は必ず役にたつ書籍であるというのが私の持論だ。その点からも、この書籍は、お勧めの一冊である。

女性が書いた書籍であるが、男女を問わず、仕事を前向きに考えている全ての人に手にとっていただきたい書籍だ。マイクロソフトというとコンピューター業界のことが書かれているように思えてしまうが、そんなことはない。優れた組織で働く、優れた人から学ぶことはとにかく多いものなのだ。

日本企業においても、こういった優秀なビジネスマンが執筆する等身大のビジネス書が多く出版されると嬉しいのだが。。。

オトナの会社コドモの会社

【著者】高橋 俊介 【出版社】ダイヤモンド社
【発刊年月】 1997年7月17日 【本体価格】1500円 【ページ数】255P

キャリアデザインの基本はライフデザインにある。「オトナの社員」としてのキャリアづくりは、ライフスタイルの変革から始まる。変革のきっかけは、自分でつかんでいくしかない。
同書 P245から引用

ビジネス環境が激変している昨今では、企業の戦略もさることながら、その戦略の実施能力が重要となってきている。ビジネスの成功や、プロジェクトの成功は、プラン自体もさることながら、それを推進する人にかかっていると言える。やはり「企業は人なり」、人材あっての企業なのだ。景気に関わらず、優秀な人材はどんな企業であれ求めている。

さて今回紹介する『オトナの会社コドモの会社』では、筆者である高橋氏が「オトナの社員」と認めるビジネスマン 5人のプロフィールをケーススタディーとして詳細に紹介している。インタビューから垣間見られる彼らの実績は、自主性の高さなどで、驚くものばかり。このような形で、優秀な人材をベンチマークし学ぶべきことは少なくないはずだ。彼らの声に触れることは必ず貴方の刺激になることだろう。仕事のみならず、自分の力でみずからの人生を切り開いている人達ばかりだからだ。

筆者である高橋氏は、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、人材マネジメント分野のコンサルティングカンパニー、ワトソン・ワイアットの代表取締役社長を勤めたこともある方。企業の人事担当者向けに書かれた本書だが、人事担当のみならず多くのビジネスマン、ビジネスウーマンの方にも手にとっていただきたい。

今の私の会社はオトナの会社だろうか?コドモの会社だろうか?今の私はオトナの社員だろうか?コドモの社員だろうか?

そんなことを考え、是非ともこれからのキャリアプランニングの参考にしていただきたい。オトナの方も、コドモの方にも「キャリアプラン」そして「ライフプラン」に対する考え方が大きく変わる一冊です。