日本語の作文技術

【著者】本多勝一 【出版社】朝日文庫 【発刊年月】1999年06月01日30刷
【本体価格】540円 【ページ数】 342P 【ISBN】4-02-260808-0

その意味での「事実的」あるいは「実用的」な文章のための作文技術を考えるにさいして、目的はただひとつ、読む側にとってわかりやすい文章を書くこと、これだけである。
同書 なぜ作文の「技術」なのか より

ビジネス環境に電子化の波が飲み込まれたとしても、仕事に必要な基本的な技術とは、今でも「読み・書き・算盤」ではないのだろうか。大量のデータを処理する、様々なドキュメントを作成する、さらに、電子計算機を自在に操ることも要求されている。これから3回にわたり、現代の「読み・書き・算盤」の技術を向上させる書籍を紹介したい。第1回は「書く技術をアップする」書籍を。

文章を書くことは「読む側にとってわかりやすい文章を書くこと」という1点に絞り、書くという行為を、技術としてまとめている。読者の中には、文章作成が苦手な人も多いだろう。しかし、書く技術を身につけることは、確実にキャリアアップにつながるはずだ。仕事上で、わかりやすい 文章を書く能力が、有利な武器であることは、想像に難くない。

句読点の打ち方、助詞の使い方、段落や文章のリズム。どれも学校で習った記憶はあるが、忘れてしまっている「技術」だ。それらを、例を挙げながら、丁寧に解説している。タイトルに技術と謳うだけあり、実に機能的な構成になっている書籍だ。著者は、文章があまり上手くなかったらしい。だからこそ、どうすれば良い文章が書けるかということを検証し、スキルに昇華させることが出来たのだろう。

本書の上手な利用法。まず、文章を書く際の、技術的なことをおさらいし、そのあと、文章のトーンや、リズムなど、文章の「旨味」を身につける、という順序で学習すると良い。見違えるほど、自らが書く文章がわかりやすくなるはずだ。その効果を期待して、読んでみて欲しい。

仕事文の書き方(高橋昭男著/岩波新書/630円+税)は、新書で珍しい横書き。レポートなどの「仕事文」に、いかに説得力を持たせるかという視点で書かれている。論文の書き方(清水幾太郎著/岩波新書/640円+

税)は古典的名著。論文執筆の心得がまとめられている。併せてぜひ!

「ひとり勝ち社会」を生きぬく勉強法

【著者】中山 治【出版社】 洋泉社
【発刊年月】 1999年9月8日
【本体価格】1500円【ページ数】227P【ISBN】4-89691-406-6

このような「ひとり勝ち社会」が世界のトレンドとしてわが国にも押し寄せているのです。では、「ひとり勝ち社会」を生き抜いてゆくためにはどうしたらよいのでしょうか。それには、一人一人がかしこくなるほか道はありません。かしこさだけが「ひとり勝ち社会」を生き抜く大きな力となるのです。
同書 P17から引用

優秀と評される経営者の方にお会いすると、大抵「この人凄い勉強家だな」と感じる。本棚に並ぶ書籍の数や、幅広い知識と相手を楽しませる会話。そういったものは、一朝一夕で身につくものではないからだ。恐らく、経営を成り立たせるという責任、貪欲な情報欲と、それに伴う勉強癖が、彼らの人格を創っているのだと思う。

ところで、経営者だけでなく、ビジネスマンも自己責任や、実力が常に問われている昨今。私達ビジネスマンも同様に勉強をすることが必要とされている。が、自己啓発という言葉で語られることが多かったからだろうか、「勉強」という言葉は私達ビジネスマンにとって意外となじみのない言葉のように思う。しかし、今まで以上に求められるビジネス社会において、自己啓発よりも、より目的性を明確にした「ビジネスマンのための勉強」が重要になってくるのではないだろうか。

さて、今回紹介する1冊は、そんなビジネスマンのための勉強法に関した1冊である。このテーマを扱ったものには、「隙間時間を利用しよう」といったノウハウ的な書籍が多いなか、『「ひとり勝ち社会」を生きぬく勉強法』は、思考力・発想力や、表現力、そしてヒューマンスキルを高めるための方法を解説してくれる。ビジネスマンに必要とされるベーシックなスキルを高めるための方法の全体像が学べるのでお勧めだ。

「地頭の良さ」や「かしこさ」が必要とされる昨今。「勉強って言うけれど、何をどうしたらよいのか?」と思っている方だけでなく、「自分なりの勉強法は既に確立済みだよ」という方にも役立つに違いない。同書を手にとり、あなたにとっての最良の勉強法を確立していただきたい。

アイデア×アイデア

【著者】百式管理人 田口元【発行】英知出版
【発行年月】2004年02月13日 【本体価格】1,400円
【ページ数】223p 【ISBN】4-901234-35-8 C0030

走って逃げる以外の道
通報を自動化する
移行をスムーズに
増え続けるデータの関連性

本書 目次 より抜粋

新商品の寿命が短くなったといわれる。新商品がドンドン出てくる時代に、新しい発想というのは一つのカギになっている。人と違うことを考えたり、既存のアイデアを組み合わせたりして、また新しい価値を創り出す時代。生産者にとっては面白い状況であるし、また厳しい状況でもあるだろう。

アイデアは、意外なキッカケから生まれることが多い。人との会話から…、動物の行動を見ているうちに…、という具合に。だがそれに気づける人とは常に頭の上にアンテナを立てている人なのだ。何も意識せずに生活していても決して新しい発想は出てこない。本書を読むと、そう思えて仕方がない。

面白いウェブブサイトがある。ユニークな海外のビジネスアイデアを紹介する「百式」というサイトだ。奇抜なアイデアから、思わず膝を打つようなアイデアまでいろいろ紹介されていてかなり楽しい。この人気サイトの管理人である著者が厳選した100例を、本書では掲載している。

実際、冒頭から度肝を抜く内容だ。アイデア001『不審な人につかまれると電流が流れるジャケット』。タイトルだけ見てもかなり魅力的。これは女性が自衛のために着るものであるらしいが、ただのジャケットではなく、人につかまれると軽い電流を流してくれる機能がついているようだ。

微弱な電流を流すことで、相手が驚いているスキに逃げられるというのだ。これを着て道を歩けるかどうかというファッション的な問題は甚だ疑問だがこの発想は素晴らしい。危険を回避するために、単純に走って逃げる体力勝負以外の選択肢を与えてくれた。実際に販売予定だというから面白い。

どうだろう、1つ目のアイデアだけみても、次のアイデアが気になりドンドン読みたくなるではないか。『銃声を感知して瞬時に位置を割り出し、通報してくれるシステム』『おならの音と臭いを吸収してくれるマット』『カプセル型の使い捨て胃カメラ』など次から次へと新しい発想が紹介される。

写真付きで面白く解説してくれるので読んでいて飽きない。さらに、紹介される製品やサービスを提供する会社のアドレスが載っているため、気になるモノがあったら直接調べられるのが嬉しい。

大事なのは、紹介されるオモシロ製品やサービスそのものではなく、この発想を何かに生かせないか、どうにか展開できないかと自身に問うことだ。世界中のアイデアを見て、広い視野で“発想する”トレーニングをしてみてはいかがだろうか。

一瞬でキャッシュを生む!価格戦略プロジェクト

【著者】主藤孝司【発行】ダイヤモンド社
【発行年月】2004年02月13日 【本体価格】1,600円
【ページ数】250p 【ISBN】4-478-50221-8

他の増収策とは違い、値上げ戦略にはほとんど投資がいらない。新商品開発も不要。新たな人事の募集も店舗調達もいらない。それでいて一気にキャッシュを倍増させることが可能だ。

本書 P26 より抜粋

“GDPの実質成長率が何%上昇”と煽り立てられても、懐の実際はいかがなものか。モノがいくつ売れようが、単価が下がっていては「利益」は生まれない。会社という単位で考えてみても、価格を下げてシェアを奪うという「戦略」論が意味をなさなくなってきたようだ。

勝ち負けの二極化が進む現在、特に中小企業が喘いでいる。体力のない組織はどうしても“安く、早く”でしか太刀打ちできないと苦しんでいる。この“負の呪縛”から解き放たれるためには「価格」について再度考慮する必要があるのではないだろうか、というのが本書の問題提起なのだ。

天才起業家と呼ばれる著者は、20代の頃から、家庭教師派遣、プリクラ端末販売等をはじめとして、いくつもの事業を立ち上げ成功させてきた。特筆すべきは、NTTのISDN回線の販売事業に携わった際、わずか2年で社員2名で、大手企業を抑え日本全国トップの代理店になったことだ。

つまり、規模の大小は関係ない。小さい規模なら小さい規模なりの価格戦略を持って利益を上げていこうということなのだ。そして、本書でオススメする価格戦略はシンプルに「値上げ」だ。戦略に裏付けされた値上げをすれば当然利益も上昇していくことになる。

デフレ経済の最中、世間の常識は「安くなければ売れない」低価格競争の時代。だが、実際に高価格戦略で成功した身近な例があるのは確かだ。

今、コンビニエンスストアは「コンビニ不況」と呼ばれるくらい売上が落ち込んでいる。その中でも大きく売上げを伸ばし、コンビニを支えている商品があるという。それは「高価格のおにぎり」だ。

普通のおにぎりの値段は100円から130円。だが今売れているのは160円から200円の価格帯のおにぎりなのだという。これは単に高いだけでなくご飯に新潟産のコシヒカリを使ったり、具材に北海道産のイクラを使ったり、価格に見合うだけの商品を提供しているのが売れている理由だと。

ポイントは、コンビニ商品に飽きた人へ、質の高いサービスや品質を提供しているところだ。高価格で売るためには、必然的に戦略的な考え方、それなりの「仕組み発想」が必要なのだという。

本書を読めば、小さな組織でも通常の何倍もの価格で売り、成功しているいくつもの例を目の当たりにできるだろう。内容は、単なるケース紹介だけではなく、消費者の感情に訴える実際の価格設定方法など“目からウロコ”の情報ばかりだ。日常のビジネスライフのヒントになることも多いだろう。

もっと早く、もっと楽しく仕事の成果を上げる方法

【著者】古谷昇【発行】PHP研究所
【発行年月】2004年02月06日 【本体価格】1,300円
【ページ数】207p 【ISBN】4-569-63359-5

テクニックや手法のようにお勉強形式で身につけるものではなくて、気づきによって学んでいく、わかっていくのがコツというものなのである。賂

本書 P40 より抜粋

あなたは、小学生に初めて跳び箱を飛ばせるにはどう教えるだろうか。恐らく「助走スピードを上げなさい」とか「踏み切る位置はここだ」という具合に必要なポイントを一つ一つ挙げるだろう。そして何度も練習させ、飛べるまで待つのではないだろうか。これが本書の導入部分だ。

しかし、これこそ「ダメ」な教え方なのだという。これは、飛べるようになるまで練習し、身体で覚えさせるという古い方法だと。確かに、運動音痴な子がそのうち嫌気がさすことは目に見えている。本当は飛べる能力があるかもしれないのに、だ。

跳び箱を上手く跳べるようになるのには「コツ」がある。それはまず両腕で体重を支える感覚を覚えさせる、ということだった。床に座らせ、両足の間に両手をつかせて、両腕で身体を少し浮かせる練習をさせる。そうするとみんな面白いように跳び箱を飛べるようになるらしい。

そう、物事には「コツ」がある。人のあらゆる活動には「1,意気込みでやる」「2,テクニック&知識でやる」「3,コツでやる」という3つのレベルがある。1は、多くの人が嫌い実用性も薄い。2は“お勉強”形式で時間もかかる。しかし3で覚えたノウハウは汎用性があり、決して忘れない。

これは仕事の上でも使えそうだ。例えば“プレゼン上達法”。プレゼンテーションは自分の売り込み方でもあって、どんな業界でも、あらゆるビジネスマンの必須科目にもなっている。

内容の良し悪しは「構成」と「スライドの書き方」。話法は「スライドの説明方法」「話のつなぎ方」。スライドの説明は「その場でアンダーラインを入れる」「項目数を先に宣言する」などがある。と、羅列したが、これらのテクニックを全て覚えたところで“ムダ”だというのだ。

プレゼンのコツは意外なところにあった。

「声を大きく」「スライドを見ない」「テンポを変える」。これだけだという。下手にテクニックだけに頼ると、(よくある)思いもしない展開になったとき対処できないからだ。つまり、この3つのコツだけ意識するだけで、経験を積めば上達していくということなのだ。

本書では、上司や先輩との付き合い方や、経営戦略の考え方、会議の進め方など、仕事で直面するさまざまなケースを想定し、それを上手く乗り越える「コツ」を伝授する。いち早く“できるビジネスマン”になるためにはコツがいる。それを本書でマスターしてみてはいかがだろうか。

正しいこと

【著者】ジェフリー・L・セグリン【発行】ダイヤモンド社
【発行年月】2004年02月05日 【本体価格】1,600円
【ページ数】213p 【ISBN】4-478-73275-2

受け取ってもよいビジネス・ギフトの上限
元社員に関して問い合わせがあったとき
社員の監視。監視者を監視するのは誰か?
賄賂と訳されない賄賂

本書 目次 より抜粋

職場内での恋愛関係、お歳暮やお中元、上司と部下間での貸し借りなどについて、普段あまり気にせず過ごしている。しかし、ここから発生するトラブルや事件が実に多いことも事実だ。だが、これには明確なルールを決めることが難しく、個人の裁量に委ねるしかないのが現状だろう。

また、職場内での宗教問題、時間外での仕事の依頼、ネットやメールの監視(プライバシーの問題)など、よくよく考えてみればトラブルとなりうるネタは山ほどある。ビジネス社会に生きていくためには何を「正」とし、判断し行動すればいいのだろうか。

「今の私の行動は正しいことか」という問いに対する難しさ、葛藤やジレンマは今も昔も変わらず普遍的なものだ。本書は、このような難しい疑問に対し、どう立ち向かえばいいのかを解りやすく教えてくれるビジネスエッセイ集である。

1998年から現在まで続いている『ニューヨークタイムズ』の人気コラム“正しいこと”から過去4年間分をまとめ、本にしたものである。コラムの一話一話が独立したテーマで成り立っており、誰もが直面する可能性のある事例ばかりが掲載されている。

コラム「受け取ってもよいビジネス・ギフトの上限」の内容はこうだ。

ニューヨークにあるテレコンプ社のCEOが、クリスマス休暇が近づいた頃に、お世話になった顧客のためにグリーティングカードと一緒に、アメリカン・エキスプレスの50ドルギフト券を贈ることにした。

郵送2,3日後、そのうちの2人からギフト券が送り返されてきた。送り返してきた2人の会社には「25ドル以上のギフトを受け取ってはいけないというギフト・ポリシー」があったのだ。

この事例だけでも、多くのことを考えさせられる。まず、ギフト自体に潜む“ビジネスにおける見返り”への期待。ギフトを受け取る制限の規定。ギフトを送り返すことの倫理観など。そう、ここには贈る側と、贈られる側のさまざまな気持ちが錯綜しているのだ。

本書は、考えても答えが出し切れない倫理やモラルの世界を、深く多角的に考察する。形式張った文化や規定について、我々は今一度考える必要があるように思える。自分が起こす行動は、どのような倫理的意味をもつのか。より広い視点で考える機会を与えてくれる良書だ。

企画の道具箱

【著者】細野晴義【発行】実業之日本社
【発行年月】2004年01月15日 【本体価格】1,400円
【ページ数】222p 【ISBN】4-408-10573-2

「この物語は、会社を辞めて起業し、株式公開したいと思っているあなたのための疑似体験ストーリーである」

本書 P162 より抜粋

「企画書が書けない」「企画書をどうかけばいいのかわからない」と思ったことはないだろうか。頭の中には何となくイメージできているのだが、紙面にするには難しいと。本書を読めばわかるが、実は、頭の中にあるものを紙面に落とすまでには、やらなければいけないことがあるようだ。

「企画書はドラマだ!」。ビジネスには決まった型は存在しない、人と人とが織りなすドラマがあるのだと、本書は冒頭から掲げている。つまり、そのドラマを企画するのだから、企画書作成にマニュアルがあること自体がおかしいということなのだ。

では、どうすれば書けるか。それは、書き始める前段階「インプット」の作業が肝心なのだと。「インプット」しないと「アウトプット」はできない。例えば、医者なら最新の情報や技術を学び、治療にあたる。コピーライターでも、一言を書くのに莫大な資料に目を通す、といった具合だ。

そこで、企画書を作るには表や図式化を考えるよりもまず「言葉をしっかり作る」ことを、本書では勧めている。そのために大切なのは「メモを取ること」だと。メモを作れば、表や図にするのにも簡単。呼応関係や言葉遣いを統一させることで、不足部分が見えてくるし、アイデアも出てくるという。

本書では、競合文具メーカー2社のケーススタディを交えながら、課題克服のための企画書作成をしていく。ブレーンストーミングから生まれたキーワードたちをうまく仲間分けして、問題点や課題解決方法を明確化していくことで、魅力的な企画を一気につくりあげていく、といった内容だ。

本書を読みながら驚いた。「人を魅了させるための企画書本」だけあって、いつのまにか「書けそうだ」と思わせるような巧みな構成になっていることに。平易な文章で読みやすいし、理解に一切苦しまない。何よりそこにドラマがあると感じられるのだ。

これまでの企画書解説の多くは、見せ方に重点を置き、テンプレートに当てはめていく、というタイプのものが多かった。分かりやすい図説も重要なことかも知れないが、企画書を書く人それぞれの立場が変われば、ドラマの展開も変わるはずだ。

我々は普段「顧客のために」などと頭では理解しているものの、実際に行動に移す時には自分の視点で物事を考えがちだ。それはやはり本質的な部分で顧客や問題点を理解していないことなのだ。本書を一読されれば、その方法を身につけられることだろう。

連戦不敗のプレゼンテーション

【著者】村山涼一 【発行】PHP研究所
【発行年月】2003年11月05日 【本体価格】1,200円
【ページ数】204p 【ISBN】4-569-63150-9

非言語コミュニケーションや心理、クロージングや戦略といった側面から定義した方が、仕事を成功させるという意味では効果的だと思う。

本書 P19 より抜粋

企画は素晴らしいのに、プレゼンテーターが十分に説明、説得ができないでダメになってしまうケースがある。一方、企画はそれほど大したことないのに、プレゼンテーターの力量で決まってしまうプレゼンは多い。これは企画のデキを超える、プレゼンテーションの役割の重要性を意味している。

書店に並ぶ“プレゼン本”は、「話し方や企画書の作り方、プレゼンの達人が語る体験談」などが多い。しかし本書には、それだけでプレゼンを定義するのは「違和感がある」と記されている。本書で最も主張する、交渉現場での奥義とは、これまでの常識を覆す「非言語プレゼンテーション」なのだ。

非言語コミュニケーションの研究者によると、二者間の対話において、言葉によって伝えられるメッセージは全体の35%に過ぎないのだという。残りの65%は、話しぶり、動作、ジェスチャー、相手との間の取り方など言葉以外の手段なのだという。

つまり、説得的コミュニケーションにおいて、「話し手が何を言うか」よりも「どう言うか」の方が、聞き手は影響されやすいということなのだ。ここでは、実際のプレゼンにおいて、複雑な事柄でも瞬時に理解させるために、言葉をより効果的にする「ジェスチャー」の使い方を紹介する。

最も簡単な例としては、時間の変化を表現すること。過去から現在、現在から未来。これは言葉で伝えてもわからないことはないだろうが、手のひらを左前方に差し出して、同じ位置を右までずらしながら「過去から現在に至るまで」と言った方がイメージできるし、時間の経過が意識しやすいのだと。

「こんなことは、プレゼンツール(パワーポイントなど)でやれる」とお思いだろう。しかし、プレゼンの内容はそれだけではないはずだ。売り上げの変化から、ターゲットの絞り込み、(広告がテーマなら)認知行動のイメージや(店頭での)購買行動などもイメージさせなくてないけない。

本書には、プレゼンにおける様々なシーンで、場に即した身体の動きがイラスト付きで丁寧に解説されている。言葉だけでは相手には伝わりにくい。イメージを相手に委ねるよりも、プレゼンターがイメージを提示することで、聞き手は理解する手間が省けて、印象に残りやすいことがわかるだろう。

仕事のデキは、人とのコミュニケーションで左右されることが多い。プレゼンに限らず、仕事を部下に頼むときや、説明するときなど、分かりやすく印象に残りやすい表現方法を身につけておきたい。プレゼンターを含む全てのビジネスマンの読んでいただきたい一冊だ。

技術者が営業をきわめる本

【著者】寺松輝彦 【発行】PHP研究所
【発行年月】2003年05月21日 【本体価格】1,450円
【ページ数】220p 【ISBN】4-569-62877-X

技術者営業は、営業マンより専門知識を活かして、お客様を納得できるように話せる有利な立場にいることを自覚しましょう。
本書 123P より抜粋

「技術革新」という言葉を、我々は日々浴び続けている。パソコン1つとっても、購入したばかりなのに、もう陳腐化してしまい、倍以上の性能のマシンが、安く手に入る。技術革新を身近に感じる瞬間だ。これは、IT関連に限らず、バイオ関連、医療、環境などの分野でも、顕著なのだ。

新技術と思っていても、導入が遅れれば、さらにそれを上回る新製品が市場に出回る。いわゆるロングヒットが生まれにくい状況だ。また、自社の市場を他社に奪われたり、技術開発のコストを回収する前に、その技術が古くなってしまうという状況も、日常茶飯事的になっているようだ。

もう、悠長なことは言っていられない。どこよりも先に、どこよりも早く新製品を市場に出し、そのコストを回収することが最低限のミッションになりつつある。そこで、自社製品を商品化する最後の関門、営業マンに求められる「資質」が注目されるようになったのである。

今までは、専任の営業マンと必要に応じて関係する技術者が補足説明に出かけるパターンが多かったが、これでは時代の速さについて行けなくなっているのだという。そこで考え出されたのが「技術者営業」という概念だ。

本書ではまず、技術者営業の利点として、商談の場において「専門知識に長けている為、説得力のある発言ができる」、「強引な売り込みをされないであろうという安心感がある」こと、などが挙げられるようだ。つまり、その場で顧客の課題にフレキシブルに対応できる技術者の役割を実証している。

さらに「技術者だからこそ、顧客の“真のニーズ”をつかめる」のだと著者は主張する。消費者のニーズをふまえ、顧客の開発方向と技術担当者の能力を把握し、アドバイスや助力ができるというのだ。しかし、職人気質の人に顧客と親交を密にすること自体、そもそも難題では、と疑問が残るだろう。

本書は、そんな技術者に向けた“超”レクチャーブックである。技術者であるメリットを活かしながら、顧客との会話の仕方や提案、プレゼンの方法など、システマチックな展開で構成されている。特に「オサカナトウキ」という話の聞き方のコツなど、即実践できる宝刀も用意されている。

本書にはこのように、技術者が営業を始めるときに必要な“心構え”がギッシリ詰まっている。しかもかなり丁寧に綴られているので、技術系ではない「営業マン」が読んでも、参考になる箇所は多いだろう。スピード社会の現在、読んでおいて損はない一冊として、オススメする。

10年かかるところを2年でできる 昇給昇進のための21の心構え

【著者】ブライアン・トレーシー 【発行】きこ書房
【発行年月】2003年04月22日 【本体価格】1,100円
【ページ数】166p 【ISBN】4-87771-095-7

これからご紹介する「21の心構え」を日常の仕事で使ってもらえれば、同じ収入、同じ成功を手にするために必要な、何年にもわたるハードワークを省略できるはずだ。
本書 腰帯 より抜粋

本書は、ベストセラー「カエルを食べてしまえ!」の著者ブライアン・トレーシーの最新刊だ。この本を読むと、どうやら、我々はキャリアというものに対して神経質になりすぎていた節があると感じてしまう。

様々な情報が錯綜する環境で、焦点が定まらなかったと言っても良いかもしれない。「まず、目の前の仕事を成し遂げよう」要は、到達点ばかりに視点を合わせて、足元がボヤけている……そんな時、ふと我に返ることも重要だと気付かされる一冊なのだ。

何の努力もしないで、昇給昇進を勝ち取ることは、まずない。我々はそれを目指し、様々な知識や技術を身につけようとするだろう。本書は、キャリアアップという概念を「昇給昇進」という形で表現した、新感覚のビジネス書といえるだろう。

しかし、自分のステータスを上げるために、ただ合理的にミッションを消化する、それで理想の未来を勝ち取るには相当の時間がかかる。そう、自己中心的思考は昇給昇進の邪魔をするというのだ。

本書で紹介する「21の心構え」は、実に単純で明快。「昇給昇進を手にするためには、在籍期間が重要な要素ではない。要はやり方だ」ということだけだ。読み進めていくと、仕事に対して、自然とポジティブに考えられるようになるだろう。

21個の項目の中から、興味深いものを一つ紹介しよう。「外見」についてだ。本書では、あなたがいる業界、会社において相応しい外見でいること、が必要なのだという。

人間は外見に弱いもので、あなたが他人を判断する時同様、他人もあなたを外見で判断していると。そして、自分の外見に無関心・無頓着なために、昇進が遅れている人は実に多いという。

さらに、コミュニケーションの専門家によると、人は最初の4秒間で相手に点数をつけ、次の30秒間で印象をまとめあげている、という驚くべき人間心理も披露される。そして、当然、対処のためのの処方箋も提示される。

このように本書には、昇給昇進のための秘訣がギッシリ詰まっている。これまでの仕事に対する姿勢や態度を見直すために、何より「短期間で“出世”したい!」人は本書を一読すると良いだろう。

実学入門 なぜ売れないのか 営業力は「仮説力」で決まる

【著者】稲垣佳伸 【発行】日本経済新聞社
【発行年月】2003年02月20日 【本体価格】1,600円
【ページ数】204p 【ISBN】4-532-31030-X

次のようなら要注意!
POSデータで売れ行きを判断している。
営業報告は営業マンの意見が中心。
会議の意見の大半が否定的なもの。
消費者や取引先の言葉をうのみにしている
本書 腰帯 より抜粋

POSデータシステムは非常に便利である。オフィスにいながら、いつ、どこで、何が、いくつ売れたかが手に取るようにわかるのだ。しかし、それには大きな落とし穴があるという。明日の売れ筋がわからないのだ。わかるのは、今日、あるいは昨日までに、いくつ売れたかということだけ。

そう、売れた結果のみしかわからない…。だからこそ、大切なのは現場感覚なのだという。数字に頼り過ぎると実体が見えなくなるのだと。

あるドラッグストア・チェーンでの話。担当者がベビーフード関連の売り場分析をしたところ、特定の二人の購入額が毎月ダントツに高かった。さまざまな角度から分析しても理解できず、仕方なく店頭のパートの女性に聞いてみると、答えは簡単だった。双児がいる家庭だったのだという。納得…。

そこで本書は、今注目されている「定性情報」の重要性を後押しする。データに頼る「定量情報」とは、販売数量や仕入金額、市場シェアなどを表し、「定性情報」とは、意見やクレームといった言葉や文字、画像など数値化できないものだ。マーケッターには馴染みの言葉であろう。

意思決定や判断をするための情報が定量情報で、観察や機会発見をするための情報が定性情報ということか。営業マンは現場での観察力を磨き、仮説を立てることで新しい市場機会を発見していくのだと著者は主張する。「モノを売ること」ではなく「モノが売れる機会を見つけてくること」なのだと。

本書を読み進めていくと、会社として成績を残すための仕事ぶりがよくわかるだろう。現場から「(情報ではなく)事実」を持ち帰り社内で共有する。そのための営業日報の効果的な使用方法などから、「事実+仮説=意見」の公式を用いて、マーケティングの極意を伝授する。

他にも、インターネットを介したダイレクト・マーケティングの意外な活用方法を紹介している。今まで無駄に使用していたインターネットの将来性、メーカーにとって、流通にとってホントの顧客とじっくり話すことの重要性なども盛り込んでいる。

顧客の声の大切さや仮説力の重要性は、あちこちの本で紹介されているが、その本質を伝えることが本書の狙いだ。24年間にわたって、数万本の定性情報を活用したプロジェクトから得た著者の経験を、店頭開発のマーケッターである営業マンたちに向けて発信している、そんな一冊なのだ。

あなたを危機から救う 一分間謝罪法

【著者】ケン・ブランチャード&マーグレット・マクブライド
【著者】松本剛史【発行所】扶桑社【発行年月】2003年01月30日
【本体価格】933円【ページ数】142p【ISBN】4-594-03852-2

若者は、「一分間謝罪法」を学ぶ。それは単に謝るだけではない。悪化したあらゆる状況を好転させ、あなたを危機から救う、すばらしい知恵が秘められていた!
本書 見返し より抜粋

物語は、ある「若者」が勤務する会社の取締役会から始まる。そこで社長が思わぬ失態を演じる。重役たちから経営について詰問を浴びせられ、社長が逆上してしまうという最悪のケース。

翌週の火曜日までに重役たちの信頼を回復するように、社長は議長から言い渡される。社長のアシスタントである「若者」は、会社の危機を感じ、解決法を探索すべく週末旅に出ることを決心する。<一分間マネジャー>に会うために…。なかなかドラマチックなオープニングである。

事の次第を知った<一分間マネジャー>は、自らの編み出したメソッド「一分間謝罪法」を若者に伝授する。その謝罪法とは、とてもシンプルなものだった。「降伏し、誠実になる」ことだという。自分のミスを素直に受け止めて、償い、今後の決意を示し、行動することだと、実例を挙げて教える。

本書を読み進めると、そもそも「降伏し、誠実になる」などという言葉そのものを理解していたつもりでも、多くの人は実践できていないのでは!?と気付くことになるだろう。中途半端なプライドや保身が邪魔をし、100%正直に問題に取り組むことが、難しいことだと再認識することになる。

自分が正直であることを示すことで「降伏」し、誠実であることは、“有言実行”で証明する。つまり<一分間謝罪法>は申し訳ないという気持ちを込めた単なる「謝罪」ではなく、素早く実践に移す「行動」を伴うことが必須条件になるのだという。

そう「スミマセン」は単なる形式的な挨拶にすぎない。ミスを犯した状況を好転させるには対人心理を考慮し、論理的整合性で解決できるという。

従来のトップダウン型の組織形態は古びてきた。上からの命令で動かすというよりも、若手社員に仕事を「依頼」する、という形態にシフトしている。上司と部下との関係をより良いものにするには、ミスした上司が謝ることも必要なことだと納得できる。自己中心的リーダーでは部下はついてこない。

物語の最後は、<一分間謝罪法>を身につけた「若者」が会社に戻り、社長に効果的な解決手段を伝授する。そして再び取締役会が始まる…。

本書で紹介する<一分間謝罪法>は、多くのリーダーが活用すべきだが、部下もこれを活用することで、よりよい結果を享受できる、としている。「謝るのが苦手」な人には、かなりオススメの一冊だろう。

朝10時までに仕事は片づける

【著者】高井伸夫【発行所】かんき出版
【発行年月】2002年12月02日【本体価格】1400円【ページ数】219p
【ISBN】4-7612-6056-4

夜は一日の労働で疲れているし、ストレスも感じているから効率が悪いでしょう。となれば朝、それも早朝しかないことになります。朝の時間が、早起きが、ますます必要になってきているのです。
本書 98P より抜粋

本書は、充実した一日を過ごすために、56項目からなる「仕事と人生の時間整理術」を伝授している。核となるのが「朝の過ごし方」。現代社会が夜型思考のため、自然と夜の時間は楽しみのひとつになってしまったが、それはあなたのキャリアアップの妨げになるのだという。

時代は「足腰」を使う農業社会に始まり、「手先」を使う工業化社会、商業・サービス業社会では「口先」になった。そしてソフト化社会の現代は「頭脳」が個人レベルの指標というわけだ。これが意味するところは、個人の能力の差は、時代の変貌につれて、劇的に開いたということだ、という。

上から与えられた仕事だけ「こなす」だけでは、この競争社会では生きていけなくなる。自ら戦略を立て、提案し、自主的に仕事を創りだし、結果を残していかなくてはならない。そのためには相当の準備時間を要する。そこでようやく本書は提案する。「今より2時間早く起きること」の実践だ。

たまたま早朝に目が覚めて、誰よりも早く出社した経験は有るだろう。そんな時は決まって、なぜか体の調子も良く、仕事の運びがうまくいった気がする。仕事が実にスムーズだったのではないだろうか。時間を上手く活用できて、充実していることを体感する。しかし、それは3日として続かない…。

本書では、「とりあえず3連勝」の勝ち癖を勧める。どんなに辛くても早起き3日間を義務として、達成できたら1勝。そして次の3日間は何か実のあることをプラスしレベルアップ。そうやって徐々に体を慣らすことで、晴れて3連勝後には、体は確実に早起きメカニズムを記憶しているというのだ。

当の著者は、朝4時に起床するという。目覚めてすぐに思いついたことをメモ。6時には職場に到着し、当日の予定をテープに録音。新聞に目を通し、気になった記事はコピーを社内に配付。その他、前夜に食事をした取引先に礼状を書き、部下との早朝のひざ詰め面談などをこなす(詳細は本書で)。

驚くかも知れないが、これは著者の午前10時までの日課の一部なのだ。

朝の時間帯は、頭を使う仕事に向いているという。特に、朝は右脳が働く、だから経営者や企画者が事業戦略などを考えるのに向いているのだと、本書は説く。

なるほど、確かに健康面だけでなく仕事上のメリットも多く、仕事ができれば人も集まる。「プラスのスパイラル」にハマると運もつかめるということか。「できる社員」になるためには、まず今よりも、2時間早起きすることから始める。そのための手引きになる1冊なのだ。

会議革命

【著者】齋藤孝【発行】PHP研究所
【発行年月】2002年10月29日【本体価格】1,200円
【ページ数】191p【ISBN】4-569-62479-0

本当の会議はすがすがしい。
本書 腰巻 より抜粋

ある友人の外国人ビジネスパーソンが、こうつぶやいた「日本の会議はあまりに不思議なことばかりだ」と。彼が言うには、1.議題が当日に発表されることが多い。2.議題のための資料も当日渡される。3.十分な討議が出来ないままになんとなく結論が出される。のが日本の会議だと言う。

極端な話だとは思う反面、まあ、当たらずとも遠からずだな、という気になるだろう。会議といえば「会社員の義務」みたいなものであり、そこは「苦痛を伴う場所」だ、そんな認識は、日本の会社に勤務するほとんどのビジネスパーソンが共通に持っているだろう。

さて今回紹介する「会議革命」は、そんな辛いことでしかない会議の場を、「すがすがしい」ものにするのだと言う。腰帯には「時間半減。気分爽快。成果倍増。」とある。そして著者はと言うと、あのベストセラー「声に出して読みたい日本語」で、名高い人でもある。期待感も増す。

まずは「会議はアイデアを出す場所である」と定義する。アイデアを出すために、様々な努力を払うべきだと、筆者は主張するのだ。会議は戦う場所ではない。みんなで困難を乗り切るための「アイデア」を出す場所なんだと。そして「ゴール」を生み出したかどうかを、成果と考える。

さらに「レジュメ」の作り方にも言及する。報告が長すぎる会議が苦痛の原因を生み出すのだとし、司会者の「如才なさ(=つまりは何も生み出さない議事進行)」にも、大きな罪があると。そして、会議をサッカーに例えて、司令塔的な役割の人物を用意しようと提案する。

会議に必要なことは「事前の段取り」「会議中の討議のしやすさ」「出しやすい結果を設定する」ことに尽きるようだ。そのためのノウハウを、本書は事細かに紹介している。その細かさに驚くとともに、即、真似をしてみたいそんな魅力的なテクニックも多い。

著者のスペシャル技ともいえる「三色ボールペン活用術」をはじめ、「セクシャルパワーの利用」「他人の脳みその使い方」「ホワイトボードの上手な活用方法」など、会議に悩んでいる人なら(=おそらくほとんどのビジネスパーソンがそうだろう)読んでみたいに違いない。

会議とは「チーム・コミュニケーション」なんだということを、本書では繰り返し教えてくれる。今までのような「御前会議」スタイルでは、激動のビジネス社会を乗り切れないだろう。すがすがしい気分になれるかは保証しないが「良い会議」をやってみたい!と考える人は一読すると良いだろう。

ブランド力

【著者】山田敦郎+グラムコブランドマーク研究班
【発行所】中央公論新社【発行年月】2002年09月25日
【本体価格】2,000円【ページ数】429p【ISBN】4-12-003310-4

資生堂/モンブラン/エルメス/ロールス・ロイス/ジャガー/スタジオジブリ/久保田/関さば・関あじ/P&G/ネスレ/GAP/エゴイスト/浜崎あゆみ/中谷彰宏/ウールマーク…。
本書に紹介されているブランドの抜粋

またしても時代はブランドブームである。「ヒト・モノ・カネ・情報・ブランド、これが新時代の五大経営資源」といわれる中で、21世紀に求められる資産は「ブランド」であるといわれている。そんな中での本書の登場だ。なかなかの大冊、読むのに骨が折れそうな気がする。

しかし、この本はきわめて面白い。「ブランド力」というタイトルと、腰帯の「パワーブランドになるための条件とは何か」によって、ずいぶん損をしているのではと思う。ブランドを軸にした、とても興味深いビジネスストーリーが、ここにはたくさん描かれているからだ。

まず、最初に「資生堂」が紹介される。資生堂と言えば「化粧品」、その資生堂の商品に変化がおきているのだという。パッケージラベルに、資生堂の文字が消え始めているのだ。本書は、本来なら押し出すべきものが消えていくところを着眼点として、資生堂のブランド戦略に迫っていく。

資生堂のマークである「花椿」は、写真家でもあった初代社長が自ら絵筆を取り、デザインしたものであること。創業の土地である「銀座」にこだわり続ける理由。そして、掲げるスローガンの大切さに触れる。その周辺のエピソードを読むだけで、すでに楽しい。

そして、話はグローバル化する企業としてのブランド戦略へと広がっていくのだ。ローカルブランドの育成、新カテゴリー市場での戦略、さらには世界的なポジションの確立まで、話題が広がっていく。バックヤードにある「芸術的」な部分を視座に据えることで、その戦略が鮮明になっていく。

そう、本書を読むことによって、その企業の「持ち味」を、様々な角度から知ることになる。裏を返せば、ブランド力を持つ企業は、読むものをひきつける強烈な「個性」が存在するということでもあるのだろう。当然、綿密な取材による、事実が積み上げられた文章に、よるところも大きい。

企業のメッセージが消費者に届きにくくなった、だから、ブランドを持っている企業だけが、1人勝ちできる時代になっている…という声を、よく耳にする。しかし、本書を読めば、本末転倒な話であることがわかる。ブランドとは信頼の証、ブランド企業はそれを守るべく大変な努力をしているのだ。

自身に関係のない分野の話だと思わず、一度本書を手にとって見てほしい。専門用語も少なく、平易な文章とともに、企業が消費者にコミットする際、欠かしてはならない矜持のようなものが、本書にはギュッと詰まっているからだ。オススメの一冊である。

図で考える人は仕事ができる

【著者】久垣啓一【発行所】日本経済新聞社
【発行年月】2002年05月20日
【本体価格】1,500円【ページ数】220p【ISBN】4-532-16418-4

図には、いろいろな情報を関連づけて一目でわかってしまう、そんな力があるのです。
本書 13p より抜粋

様々な場所でのカンファレンスでの発表スタイルが変わってきたのは、ここ最近のことだろう。しばらく前は、プレゼンテーションソフトを利用していても、箇条書きの文字が順番に出てくるだけだった。今は違う。多種多様な「図」が登場し、伝達される内容への理解を助けるようになった。

本書の著者は、図解コミュニケーションの第一人者であり、その著作も多いのだが、今回は、図解の技術を紹介するのではなく「図で考える」という視点での1冊となっている。まずは、図で考えるとなぜ良いのか?道順を説明するという困難さ、という、割と想像しやすいシーンから、本書は始まる。

まず、注目したいのは「図読」という言葉だ。

物事は、何かにつけ「立体的」に捉えるほうが、理解は早いのだが、文章では、その思考の流れなどを、立体的に書き記すことは、とても難しい。図なら、矢印などの装飾、文字の配置による関係の説明など、一目瞭然で伝えることが出来る。そこに着目して「図読」なのである。

文章を読むときに、紙(A4サイズを著者は推奨している)とペン、そして蛍光マーカーを用意する。そして、文章を読みすすめ、ポイントと思える箇所に印をつけながら、一読する。マーキングしたキーワードを、紙に写してから、それぞれのキーワードの相関関係などを、図解していく。

難しいことではないようだ。線で結んだり、マルで囲んだりして、書き手の考えを「繋がりが一目できるよう」デッサンしていく。出来たら、もう一度文章に戻る。作成した図を見ながら、最初に気がつかなかったポイントを、図の中に書き込んでいく。頭の中が、ドンドン整理されていくはすだ。

そうすることで、読んでいる文章の書き手自身が気がつかなかった(=つまり書かれていないこと)事柄を発見できることもあるという。要するに、文章を立体視することによって、次元が増えて、新しい「見えていなかったところ」が見えたのだろう。感動を覚えることもあると、筆者は述べている。

情報が氾濫する社会だけに、その押し寄せる情報を、正確にキャッチするとともに、自らの「伝えたいこと」も、誤りなく伝える技術が、ますます重要視されてくるだろう。「図解」と「図読」は、覚えておいて損のないスキルのひとつだろう。

1日を26時間にする、最強の時間活用術

【著者】ヴィンス・パネラ【訳者】楡井浩一【発行所】PHP研究所
【発刊年月】2002年10月21日
【本体価格】1,400円【ページ数】275p【ISBN】4-569-62452-9

この5分間の使い方で、仕事と成績が飛び抜ける。自分をコントロールできれば、時間をコントロールできる。
本書 腰帯 より抜粋

世の中のすべての人にとって、もっとも平等なものは「1日の時間は24時間であること」だと、よく言われる。しかし、本書のタイトルはどうだ!1日の時間が2時間も増やせるとは…。日ごろから時間に追われているビジネスパーソンにとって、こんな嬉しいことは、ないはずだ。

まず最初にこんな例を挙げる。30分のテレビ番組では、10分間はCM。あなたはその時間をどのように使うか、ツボなのはそこだと。将来の目標を達成するために、時間の使い方で困っている人はかなり多いと。本書は、簡単かつ誰にでも利用できる手法で、時間を有効に使う技術を伝授する。

本書では、終始、5分間の大切さを強調している。毎日無駄に過している時間があったら、自分の目標に向かって、24時間のうち5分間だけそのための努力にあてれば、将来は全く異なる成果を生み出せる、というのだ。なるほど、それは最もな話。しかし、実際に5分くらいで何が変わるのか?

5分だからこそ、努力することなく長く続けられ、長く続けられるからこそまとまった成果を出すことが出来る、と本書は説く。語学の勉強、楽器演奏の習得、新しい興味ある分野の勉強…5分で出来ることは計り知れない。当然、日常業務の改善だって、ある程度は可能なのだ。

毎日の5分によって、0.5%しか改善できないとしても、1年では300%、2年で1000%以上の改善となると、筆者は力説する。数字のレトリックに過ぎないのだが、なんとなく「力」が沸いてくる感じがする。ああ、今日からでも、その「5分」を大切にして頑張ろうと。

さらに、本書では、普段の仕事における「時間をむだにする要素」を13項目上げ、それを回避することを提唱している。集中力を乱され、時間を浪費する要素、例えば、同僚に話し掛けられる、仕事を振られる、電話、電子メールなど…。自分の時間を増やすには、これらを縮小すべきだという。

自分は今、何をすべきか。常に問いかける。これを心がけるだけで、仕事の段取り、効率がぐんと上がる。目標を明確化することにより、無駄を省けるし、短時間でミッションを終えることができるという。

その「容易そう」だけど「意外と難しい」ことを、実行するためのノウハウが、本書には詰まっている。呼吸法や睡眠の大切さを説明する項目もあり、読んでいて、いろんな意味で楽しい1冊だ。

「時間がない」と言い訳するのは簡単だけれども、本書を読み進めると、時間を「浪費している」という事実を、改めて認識できる。そして、目標を達成するためには、やはり「意欲」が根幹にあるのだ、と、深く考えさせられるはずだ。時間について悩んでいるなら、必読だろう。

デスクトップの技術

【著者】中野不二男【出版社】新潮社(新潮選書)
【発刊年月】2002年09月15日
【本体価格】1,100円【ページ数】237p【ISBN】4-10-603516-2

本当に役に立つ情報は、システム化された「机上空間」から生まれる
本書 カバー より抜粋

デスクトップという言葉を目にして、思い浮かべるモノは何だろう。机の上を想像する人は、実はそれほど多くなく、パソコンの初期画面を、それとした人が、結構いたのではないだろうか?本書は、机上空間についての「テクニック集」だが、パソコンについて、読むべきところが多い。

筆者は、パソコンの使い方として「中級機種・複数併用型」という、一風変わったスタイルを提案している。購入してから時間が経過パソコンでも、機能を絞れば、まだまだ活用が可能で「元が」取れると。さらに、バックアップを丸ごと取ってしまうために便利なことなど、その効能を説く。

さらに、ノートパソコンを譜面台のような器具にセットして、かなり変わった利用法をしていることを開陳するのだが、なにより、その方法に至った結論を、これこれこういう風にしようと、最初は考えたが、上手くいかずに…と、実に細かく書いてあるのが面白い。

また、メモの取り方の紹介では、あまり活用されているのを、耳にしたことがない「オーガナイザー系アプリケーション」のメモ機能を、上手に利用する方法が書かれている。「メモの技術」なるベストセラーを出した筆者ならではの、実践的なテクニックなので、参考になりそうだ。

刮目すべきは、ハードディスクの整理の仕方に言及している項である。自身のパソコンの具合が悪くなって、いろいろと調べたがよくわからない。その筋に詳しい知人に診断してもらうと、スワップの問題だと指摘され、ハードディスクを整理するように言われてしまう。

ハードディスクをパーティション設定して、使うことを勧められ、それを実施する。また、パソコンの専門家から、ウィルスなどからパソコンを守るための手段として、ハードディスクを「半年に1回フォーマット」することを教えられ、目からウロコを落とす。

ハードディスクを3つに分割することは、どこかで読んだことがある、が、なぜ、そうしなければならないのか、その理由が書かれている本は、とても少ない、ましてや、ハードディスクを定期的に初期化してしまう、なんてテクニックは、一般的には全く知られていないと。

情報整理術という視点を軸に、パソコン、情報携帯端末、文房具、PDFファイルの活用技術まで(=これも素晴らしい)まで、利用者の立場から、テクニックを紹介している、実に「楽しい」本だ。万人に役立つかというと、難しいところだが、一読の価値はあるはず。オススメ。

気がつくと机がぐちゃぐちゃになっているあなたへ

【著者】リズ・ダベンポート【訳者】平石律子【出版社】草思社
【発刊年月】2002年09月12日
【本体価格】1,300円【ページ数】222p【ISBN】4-7942-1146-5

平均的なビジネスマンは探し物をするためだけに1年間に150時間を浪費 している。ということは、探し物をせずにすめば、毎年ほぼ1カ月分の時間 が浮く計算になる。そうなったら、いまよりどれほど多くの休暇が取れるか 考えてみて欲しい。
本文腰帯より抜粋

突然だが、あなたの机の上は、きれいに整理整頓された状態だろうか?自信を持って「yes」と答えることの出来る人は、とても少ないはすだ。そう、たいていのビジネスパーソンのデスクトップは、程度の差こそあれ、とんでもない惨状であることは間違いない。

本書には、開けるのも恐ろしいような引き出し、モニターや電話機に貼られたいつの要件かわからないポスト・イットの短冊、崩壊寸前の紙類でできた地層を、机の上から一掃し、働くために最適なスペースを作り出すためのノウハウを、事細かに提供している。

まず本書では、コックピット・デスクを作ることを勧めている。最も頻繁に使う道具を手元において、書類の置き場所も、その役割に応じてきちんと定めておくものだ。見ないでも、必要だと思えば自然と手が動いて取ることが出来る、そんなスペース作りを目指すというのだ。

そのためにはまず、整理をするための「空きスペース」を作ることを指示される。私たちが整理できない原因を「(何か強力なきっかけがない限り)ファイルや引き出しや本棚の中身を一切捨てようとしない」からだと、看破する。いきなり耳が痛い方も多いだろう。そう、まず捨てるのである。

「6カ月以上保存しているものの95パーセントは、じつはゴミだ」という視点で、今まで溜め込んでいたものをドンドンと整理していく。と同時に、使いやすいように書類を分類整理していくのだが、書類の山にうんざりしないようにと警告されている。しかし、うんざりなんてとんでもない!

本題に入る前の序章を読み進めているに過ぎないのに、既に書類を捨てることによる「爽快感」を目の当たりにしているような気がする。準備ステップの段階で、軽やかなデスクを作りたい!という衝動に駆られてしまう(事実私は机をスッキリと整理してしまった)。

先ほど述べた「コックピット・デスク」のほか、要件の出入りを整理するための「管制塔」を作ること、さらには、行動計画の優先順位のつけ方、片付けるタイミングなど、本書は実に細部にまでノウハウを張り巡らせている。ぜひ、手にとって、その「お役立ち感」を確認してみて欲しい。

「机の周辺を徹底的に使いやすいように整理する」本書にはそれ以外のことは書かれていない。しかし、そのことに関してはまさに決定版だ。机の上が「きたない」と感じでいるあなたには、福音の一冊だろう。

心理学博士が書いたコンサルティング・セールスの成功法則

【著者】鈴木丈織【出版社】PHP研究所
【発刊年月】2002年08月15日
【本体価格】1,500円【ページ数】248p【ISBN】4-569-62350-6

納得のメカニズムは、自分のバラバラになっている考え方を筋道を立てて体系化させることです。また、漠然として曖昧なものがきちんと明確に整理されたり、判明することです。お客様のなかの混沌とした欲求や欲望が具体的に見えてきたときに、「やっぱりそうか!」と意識できる満足感なのです。
本文 92p より 抜粋

なんとなく、なぜ上手くいくかわかっているんだけど、明快な言葉で説明出来ない…そんなノウハウを皆さんもお持ちだろう。その「なんとなく」の部分をスッキリと説明されたときの「気持ちよさ」は、そうなんだ!と文字通り膝を打ちたくなる、そんな感じではないだろうか。

本書は、まさにその「膝打ち本(=勝手に命名)」の一冊である。セールスを行うときの、ターゲットの心の変化、それを読み取ってこちらが繰り出すテクニック、それらを心理学的な裏打ちとともに、系統立てて紹介してくれている。まさに「スッキリ!」の内容盛りだくさんなのだ。

まずは「ファースト・コンタクトを成功させる7つの法則」と題して、顧客の信頼感を醸成するためのテクニックを紹介している。好印象を与える、同調する、欲望と恐怖を抱かせる、褒める、支える、電話を使いこなす、言葉を駆使する。並べてみると、まあ、当たり前の言葉が並んでいるが…。

例えば「支える」の項を見てみる。顧客はあなたに役に立ってもらおうなんて最初は思っていない、あなたの役立ちへの自信もうぬぼれだ、要は「支える」という意識を持つ、と言うところからスタートせよ、と本書は述べる。

そして、顧客の感性(=正確でも合理的でも論理的でもない攻めどころ)を揺さぶることで、支えられている演出をせよ、と具体的な方法を、以下の5つ紹介している。

1.焦らずゆっくりとした口調。2.顧客の言葉を丁寧に復唱する。3.語尾は曖昧にしない。4.話題の「見出し」を早く話すこと。5.話の内容を途中でポイントごとに整理すること。たったこれだけのことだ。

しかし、この5つを自身が顧客になってセールスマンから行われている姿を想像して見るとわかる。確かにこれらの行為によって、信頼感が醸成され、相談の1つでもしてみようか、そんな気がするだろう。と同時に、日常、自身が行っているアクションも、断片的だが、似たようなことをしているな、と気づくはずなのである。言われてみれば…というやつだ。

理解をして行動するのと、闇雲に動くのでは、その成果に大きな違いが出ることは言うまでもない。セールスマン向けに書かれた本だが、すべてのビジネスパーソンが、その人間関係を築くときのノウハウを整理するために最適の一冊だろう。部下への同様のテクニックを教えるための「タネ本」としてもお勧めしておこう。

仕事は早くて雑でいい

【監修】神谷健司/小松俊明/町田秀樹
【出版社】アスペクト【発刊年月】2002年07月09日
【本体価格】1,400円【ページ数】203p【ISBN】4-7572-0926-6

しかし、企業の現場の本音は違う。最初にリストラするのは「やる気も能力も高い人」だ。(中略)「やる気も能力も高い」人がなぜ最初にリストラされるのか。それは、上司が使いこなせないからである。
本文 64p より 抜粋

タイトルが素晴らしい。仕事はきちんと丁寧にするのが当たり前のはずなのに、それを雑で良いなんて!キャッチーな題名で引きつける本書は、組織戦略・人事戦略・ヘッドハンティングのプロが、会社が手放さない人材になる秘訣を明かしている。

まず、成長著しいベンチャー企業の現場で採用・育成に携わる神谷氏が、組織を活性化し続けるために、必要な人材と、その育成方法を開陳する。言われた仕事は期日に関係なく「今すぐ」やれと。そのためには、雑でも良い。雑で直しが入っても、そこで上司とのコミュニケーションが生まれる、それが良いんだと。なるほど!の着眼点である。

さらに、価値を持つ人材で居続けるためには、仕事の価値観を整理するとともに、つねに自身の業務改善を行うべきだと指摘する。業務改善のポイントは「早く・安く・正しく・楽しく」の4つ。自身が求められる役割を、4つの視点から改善し続けることができる、その人が求められる人材なのだと。

次に、外資系企業の幹部社員のヘッドハンティングに携わる小松氏が、ヘッドハンターの視点から、市場が求める人材像と、転職市場に関するさまざまな知っておきたいことを、具体例を交えてわかりやすく紹介している。

リストラされやすい部門、リストラされるだろうサイン、転職の適齢期は入社何年なのか…など、興味深いトピックスが満載なのだ。例えば、リストラサインとして、会社のサイトから、自身の部署の商品がなくなったとき、自分たちはリストラ候補に上がっていることは間違いないという。冗談のような話だが、実際にあったケースなのだという。

最後に、企業の組織戦略と人事戦略づくりに携わる町田氏が、企業がリストラを進める背景と、具体的なリストラの進め方を、企業の立場から紹介している。リストラに関しては、社会現象としてのネガティブな側面からのニュースしか流れていなかったので、この情報はとてもありがたい。

過去の成功体験はもう必要とされていない現状、企業は組織改革を進める中で、人材フローマネジメント(=組織の新陳代謝を促す仕組み)を重要視し始めていること、企業がリストラ対象者を抽出する方法など、あー、そういうことなのかぁと、読みすすめながら、思わず口から漏れそうな内容だ。

読後一番の感想は「やられたなぁ…」正直な気持ちである。今までの関連本にはなかった切り口(言えなかったというのが正直なところだと思うが)や知りたかった企業の本音(やや偏っている印象もあるが)が、本書には盛りだくさんなのである。ぜひとも読むべき一冊だろう。

なぜこの人ばかりが出世するのか

著者】ローラ・バーマン・フォートガング【訳者】西村美由起
【出版社】KKベストセラーズ
【発刊年月】2002年05月15日【本体価格】1,300円
【ページ数】271p【ISBN】4-584-18671-5

あなたがトップをめざすことを妨げているものは何でしょう。私はこれまでのクライアントから判断するかぎり、仕事と人生で克服しなければならないハードルは九つあります。
本文 25p より 抜粋

自分とそれほど能力に差があるとは思えないのに、なぜか周囲の評価が高い同期が、あなたの周りにはいないだろうか。また日ごろから、自分にはもっと力があるはずなのに、それが発揮できていない、また、力を発揮する場所が与えられていないと悩んではいないだろうか。

本書は自分自身の仕事(とそれに関するすべてのこと)の現実を見つめなおして、考える理想に近づくことが出来ない理由を探ることで、なりたい自分になる方法をレクチャーしてくれている。自分を変えて、潜在能力を解き放つのが、本書の目的なのだ。

まず、自分の理想像がわかっているか?という投げかけで、自分の価値観を見つけ出すことの大切さと、自身の(さまざまな意味での)実現を妨げているなにか(それはいろいろと提示されている)をクリアするアクションを呼びかける。

面白いのは、アメリカの本には珍しく、本書で提示しているさまざまな目標ををやり遂げるためには、根性が必要なんだ!と言い切っている点かもしれない。弱音を吐かず歯を食いしばって(正しいベクトルに向かって)頑張ることこそが、成功の道なんだと力説している。

「人生これからなのに前に進む道が見えない」「コマネズミのように働いて燃え尽きそう」「他にやりたいことがあるのにできない」「どうすれば殻を突き破って頭角を現せるのか」「独立・起業して成功したい」「目先の売り上げばかりに振り回されている」「実力はあるのに発揮する場所がない」…

目次から拾い上げた本書の内容である。見ればわかるが、仕事に就いたばかりの新入社員、悩みが多すぎる中間管理職、独立を意識しだしたアントレプレナーまで、幅広い(そして一見相反する立場の)人たちに対して役に立つようになっている。

メールの返事を早く処理する、仕事をすべて書き出して優先順位をつける、自分に期待して、そして投資して、グレードを上げるなど…。ここに書かれていることは、本当に「当たり前」のことが多い。しかし、正直言って、その当たり前のことができないのが、また私たちでもある。

本書は噛んで含めるように繰り返し大切なことを教えてくれている。それこそ、挫けそうになる私たちを叱咤激励するコーチのように。なりたい自分に近づいている、そんな手ごたえがない人にとって、本書は役立つ一冊になるに違いない。

仕事ができる人の実戦ビジネス読書術

【著者】桜井直行【出版社】KKベストセラーズ
【発刊年月】2002年06月01日【本体価格】680円
【ページ数】230p【ISBN】4-584-12043-9

読んでいただければお分かりになると思うが、ここ10年の重要なビジネス書をきちんと読んでいれば、多くの出来事が予測できた。将来を展望して、どんなチャンスとリスクがあるかを知ることが、ビジネス書を読む大きな意義なのだ。そのことも実感していただきたい。たとえば、中国の将来がどうなるかというホットなトピックスも、すでに出ている中国関連のビジネス書に答えがあるはずだ。
本文 5p より 抜粋

ビジネスに関する新書に今、勢いがあるようだ。オフィス街の書店などをのぞいてみると良くわかるが、様々なビジネステーマで、いろんな出版社から新書が出されている。即役に立ちそうな良書も多いので、注意しておくことをお勧めしたい。

今回はそんな「役に立ちそうなビジネス系新書」の中からの一冊。筆者は実際にビジネス書の編集に携わると同時に、ビジネス書批評のスタンダードを目指して批評活動をしているという御仁だそうだ。ビジネス書のかなりの部分を知り尽くした、その人が、仕事の力になる101冊を厳選している。

この本は、ここ10年くらいのビジネス書における「(売れた売れないにかかわらず)重要なもの」を書評し、その本が読むべき本になった事情を鑑みた上で、その本自体が「よい本かどうか」を採点している。これによって、ビジネス書に向かい合う「姿勢」を学ぶことができるのだ。

取り上げている分野は「マネジメント」「自己啓発」「株式投資入門」「金融スキャンダル」「世界の中の日本」「構造改革論」の6つ。筆者の考える「ビジネス書の売れ筋」を分類したとある。なるほど、ビジネスにおける大きな流れなら、この6つの分類で、ある程度は追えそうである。

ユニークなのは本を採点する基準。1.切り口/2.コンテンツ力/3.満足感という3つの軸を出している。そのいずれもが、ビジネス書編集者としての筆者による「ビジネス書の作り手」サイドからの、プロの考えであるところが、とても面白い。

例えば2番目のコンテンツ力は、内容の面白さや説得力を評価の基準にしていない。原稿の分量を重要視しているのだ。雑誌の論文程度で済むものを、無理やり大著に仕上げることもある出版業界。その分量に見合ったしかるべき内容が盛り込まれてあるか?そこが評価のポイントになるのだそうだ。

本書で勧められている本の中で、自ら興味深いものを選んでコツコツ読むことも良いだろう。しかし、本書はやはり「ビジネス書選びの視座視点」を身に付けるために利用することを推奨したい。それさえ身に付けば、ビジネス書売り場の「混沌」で、迷うことは少なくなる(でも迷うときもある)。

短く書く仕事文の技術

【著者】高橋昭男【出版社】講談社
【発刊年月】2001年12月20日【本体価格】740円
【ページ数】199p【ISBN】4-06-272110-4

3年ほど前、ある企業経営者から、こんな話を伺ったことがある。(中略)「こちらが指定したキーワードを充足する内容でA4判1枚程度にまとめてくれる有能なアシスタントが絶対に必要な世の中になってきた。そのようなスペシャリストを養成する教育機関が必要だね」
本文 14p より 抜粋

仕事文を語らせれば右に出るものはない筆者が、新しい仕事文の本を出していた。サブタイトルに「削り方・磨き方・仕上げ方」とある。今度は「短く書く」技術について言及した一冊だ。無駄がなくわかり易く、そして説得力のある仕事文を書くためのコツが満載されている。

まずは「簡潔な文章のすすめ」として、『100文字レシピ』という本を紹介している。カンタンかつ本格的で美味しい家庭料理を、たった100文字で説明しているその本を見て、情報の伝達は簡潔に、特に仕事文は出来るだけ簡潔に、膨大な文章は仕事には「不要」だと、読者に勧める。

続いて「削って磨く技術」として、ただでさえ短い文章の代表である朝日新聞のコラム「天声人語」を半分に削る練習法を紹介している。文章の結論を見つけ出し、構造やキーワードを把握してから、結論以外の情報を優先順位をつけて並べ替え、削っていく…。書くと簡単だが、大変な作業である。

この「削って磨く」という大変な作業をすることで、書き手が伝えたいことを、どのような方法を用いて表現しているのかが、手にとるようにわかるようになる。その知識は、当然自分が文章を書く立場になったとき、相手に自分の意図を伝えるためのノウハウになることは、言うまでもないだろう。

さらに「論理で説得力をもたせる」として、演繹的・帰納的、それぞれとそれぞれの組み合わせによる文章作成技術を紹介している。仕事文には説得力が必要だ!といわれることが多い。文章における説得力とは何か、この短い章を読むだけで、その答えを得ることが出来るのである。

また「文章のパワーアップ術」として、どこまでやさしく噛み砕いた文章を作るべきなのか、読み手に論点をアピールするために考えなくてはならないこと、さらには、能動態・受動態、カタカナ語の必要性まで、仕事文を磨き上げるための話題が、多岐にわたって触れられている。

恐ろしいほどに忙しいこの時代…長ったらしい報告書や企画書は誰も望んでいないはずだ。簡潔で明瞭な仕事文を書くことが出来る、それはビジネスパーソンの必須能力になるに違いない。そのために必要なテクニックは、大体のところ本書に詰まっている、といっても過言ではない。一押しです。

時間を他人より2倍うまく使う技術

【著者】小石雄一【出版社】実業之日本社
【発刊年月】2002年01月18日【本体価格】1,300円
【ページ数】190p【ISBN】4-408-10488-4

経営者は金持ちを、ビジネスマンは時間持ちを目指せ!
表紙 より 抜粋

本書の冒頭にはこう書かれている-ちょっとしたヒントで誰もが時間を有効に使うことができます。日常生活を思い出していただきたい。無駄の時間、もったいない時間がどれほどあるでしょうか。-と。その時間の無駄遣いを解消し、自身のスキルアップのために利用するためのコツとツボが詰め込まれているのがこの本のすべてだ。それよりも上手い説明はない。

筆者は、惰性で会社の同僚と一緒に行動をとるビジネスパーソンを揶揄し、戒める。他人と一緒に行動することを好む日本人だが、他人よりも有効に時間活用がしたければ、それではいけないと。しかし、まったく付き合わず自分勝手に行動していても、協調性がないということでリストラの標的にされてしまう…それでもまたいけないと。

本書は、1日の時間を1.朝、2.昼休み、3.アフターファイブ、4.週末、5.移動時間の5つに分けて、「仕事以外の時間を有効に使うためのヒント」を提示している。その1つ1つは「朝少し早く起きよう」や「アフターファイブは会社以外の人とも交流をもとう」など、単純で即実行できそうなものばかり。目次で気になるところから拾い読みをお勧めしたい。

ノウハウ本のノウハウを開陳してしまっても仕方ないので、本書の視座視点に触れておきたいと思う。ポイントは2点。「自分の時間を編集する能力を持てるかどうか?」「一人を恐れることはないか?」たったこれだけのことである。しかし、自らを振り返ってみれば、この2つはなかなか出来ないことである。至難と言っても良い。

例えば、自分の時間を編集すると言っても、中長期、短期、いずれに時間軸に対しても、自分のするべきことが明確に整理されていないと、それは出来ない。自身が何をしなければいけないのか、「(締切まで設定された)リスト」が作れて、「隙間の時間を編集活用できる」ハズだからだ。自分のやるべきことが精度高く整理できていると胸を張れる人は多くないだろう。

一人を恐れないことは、さらに難しい。本書の筆者も述べているが、付き合いが悪いと、会社などでは間違いなく浮いた存在になるだろう。同僚や上司と同じ場所に出張に行くときも、列車の座席は別で良い、と書いてあるが、果たしてそれが出来るのか…孤独感や疎外感以上の「触れ合わないことによっておきる摩擦」を覚悟しなくてはならない。

それらを差し引いても本書にはなかなか興味深いヒントが満載である。日々なんとなく仕事をして、今後にも漠然とした不安をもつビジネスパーソンたちは、ぜひ読むべきだろう。自分の出来ることが、見直せる時間の無駄が、そこには書かれているはずだから。まずは書店にてパラパラとめくってみてください。

伝わる・揺さぶる!文章を書く

【著者】山田ズーニー【出版社】PHP研究所
【発刊年月】2001年11月29日【本体価格】660円
【ページ数】236p【ISBN】4-569-61736-0

就職活動の自己推薦状の場合、いい文章を書くとは、「文章が評価されて、企業に採用されること」以外にないと私は思う。どんなに文章がうまいと褒められても、結果、採用されなかったら、いい文章を書いたと言えない。あなたの書く文章は、状況に応じて、よく働いてくれるだろうか?望む結果を出しているだろうか?
本文 27p より抜粋

文章を書くのは得意だ!と胸を張って言えるビジネスパーソンは、それほど多くはいないだろう。しかし、日常の仕事を振り返ってみれば、伝言メモ、稟議書、企画書、日報・・・など、私たちは実にたくさんの文章を書いている。書くという行為について、無関心ではいられないはずだ。

しかし、よく考えてみると、社会に出てから、文章を書くことについて特別な訓練を受けた記憶はない。見よう見まねで、なんとなく文章を書いてきたはずだ。まあ、個人的に「文章読本」の類の本を購入して、「上手な文章」を作る努力をしている人も、いるかもしれないが。

今回紹介する新書は、名文を作成するための本ではない。著者は「文章が状況の中できちんと機能する」という表現をしているが、自ら書く文章が、書くための使命を全うするためにはどうすれば良いのか、という視点で、指南されているのである。これが、なかなか素晴らしい。

きちんと機能する文章を書くための手順として、著者は7つの思考方法を提案している。まずは、自分が一番言いたいこと=意見を見つけ出す。次に、何のために書くのか=望む結果を整理する。そう、文章を書くということはこういうことなのだ、とまず気づかされる。

そして、望む結果を実現するための文章作りとして、自身の問題意識がどこに向かっているのか=論点を整理することや、その文章によって心を動かす必要がある人=読み手、は誰なのか、読み手にとって、自分はどんな人間なのか?を検証する。ここで、文章を書くことはコミュニケーションなのだと、改めて考えさせられるはずだ。

最後に、自分の考えは「独りよがり」ではないという「論拠」を提示し、読み手の共感を誘い、納得を導き出せと教える。そう、文章を作成すると言うことは、実に知的な「ゲーム」であることを、本書はわからせてくれる。このプロセスは、相当に面白いこと請け合いだ。

受験生のための「小論文」教育に長く携わった著者なだけに、ノウハウを伝授すると言うことにかけては、天下一品である。本書でも、基本的な考え方をまず教え、それをさらにブラッシュアップ、という「誰でもグングン力がつく」ような構成も嬉しい。間違いなく「必読」の一冊である。

ヒット力

【著者】長田美穂【出版社】日経BP社
【発刊年月】2002年01月28日【本体価格】1,600円
【ページ数】342p【ISBN】4-8222-4266-8

世の中の潮流としては、健康志向で減塩、薄味のものが好まれています。でもお母さんは、濃い味のものであっても子供がそれでごはんを食べると、喜ぶんです。「子供がごはんを食べる」という部分を、素直に訴える商品にしよう、と決めました
本書 「味の素・ごはんがススムくん」の項より抜粋

モノが売れない時代と言われて久しい。その理由としては、魅力的な商品がないからだ、不況、生活に必要なモノはすべて行き渡ったからだなど、さまざま挙げられているが、実際のところはわからない。また、ヒットした商品やベストセラー商品がないわけでもない。

本書では、そんな難しい時代にもかかわらず売れた、その商品の背景を、膨大かつ緻密な取材を通して描き出している力作である。取り上げている商品は、「アイボ」から始まって、「宇多田ヒカル」「動物占い」「甘栗むいちゃいました」、さらには「牛角」までと幅広い。

筆者は、かつての商品開発トレンドのキーワードであった「技術」「安さ」「マーケティング」を踏まえて、2000年代の商品開発は、商品開発者が「経営者」になっていることを、仮説としてあげている。一社員がそこまでの意気込みがなければ、ヒット商品が作れない時代が来たとしているのだ。

アイデアが優れていても、デフレ傾向にある市場に耐えられる安さと品質を持つ商品を作り出し、全国の消費者に行き渡らせる「ヒット商品」に仕立てるためには、設備投資、材料など一切の価格交渉、流通ルートの確保など、全方位展開で「企業の存続」をかけた勝負に出ないと無理だと説く。と、難しいことを書いたが、そんな堅苦しいことを抜きにして、本書は読み物としてとても面白い。ヒット商品(本書に取り上げられている商品はどれも「大ホームラン商品」だが…)が生まれる背景にあるサクセスストーリーが、同じビジネスパーソンとして、ワクワクするものばかりだからだ。

また、意外な発見も提示してくれる。その1つとして、キリンビバレッジ・聞茶の項では、商品コンセプトの中心となった「茶芸(=細長い茶碗に茶を注ぎ、飲む器に移して、最初の茶碗の香を楽しむという作法)」は、実は歴史の浅い「遊び」であることを、本書は紹介している。興味深い。

本書は、ヒット商品と、その商品にかかわるさまざまな情報を通じて、今の世の中(=正確には少し前の)が持つ「時代性」を描き出している。読後、何故モノは売れなくなったのかは分からないが、何故売れるものがあったのか、ということは分かる。面白い本であった。

情報整理がうまくいく小さな27のヒント

【著者】新津隆夫【出版社】ダイヤモンド社
【発刊年月】2001年11月08日【本体価格】1,400円
【ページ数】218p【ISBN】4-478-74026-7

新聞の切り抜きを始めたのは、ひとつのテーマを決めて取材活動をするようになってからだ。テーマが決まると、必然的にその分野、その業界、その世界は、今どうなっているのかを知らなくてはならない。それに付随して周辺のことも知りたくなる。ひとつの情報を得れば、それがどういう位置にあるのかを確認するために、さらに情報を得たくなるものだ。これは、ビジネスシーンでも同じはずだ。
本書 20p より抜粋

気が付けば世の中は「整理ブーム」である。多くのビジネスパーソンはご存じないかもしれないが、ウイークデーの昼間の主婦向けテレビ番組では、どうすれば「キッチンが片付く」のか、いかに「リビングの小物をオシャレに収納」するか、そんな話題が目白押しだ。

そして、ビジネスパーソンの間では「情報整理術」は身に付けたいノウハウの王道を行っている。とにかく情報が何故必要なのか、どんな情報が自身には不可欠なのか、ということを考える前に、ひたすら情報収集のテクニックと、その整理法を学んでしまうわけだが・・・。

本書は「情報整理」にポイントを絞りながら、情報の収集、そして情報活用のために必要な視点と、具体的で実践的なノウハウが、一読して理解できる「易しい語り口」で紹介されている。ごく一般的なビジネスパーソンが、情報を取り扱う際に必要なテクニックは網羅されている、お勧めの一冊だ。

本書の一番素晴らしいところは、デジタル情報とアナログ情報の混在する現状を認識し、その上での「棲み分け」を提案しているところだろう。たいていの「情報整理本」は、どちらかに「偏って」しまって、現実的でない提案をしているものが多い。本書はその点、バランスがとてもよい。

また、ジャーナリストでもある筆者の「取材術」が開陳されている点も、魅力だろう。ネタの拾い方、インタビューの仕方、メモの取り方など。これらは、ビジネスパーソンにも必須テクのはずだが、人から教わることもなく、また、系統立てて学ぶことも難しい。この際、ぜひ身に付けてしまおう。

さらに、なるほどと呟いてしまう「小ネタ」も満載である。例えば、テレビを見るときは、ビデオデッキに新品のテープをセットして、ビデオのチューナーを通してコンテンツを見よう、とある。これを読んで、ハタと気づいた読者も少なくないはず。あっ、ビデオ録ろう、と慌てることも、もう無い。

インターネットで見るべきページを情報収集という視点からチョイス、雑誌などのメディア情報も、これさえ読んでおけば「時代の流れはだいたいわかる」とセレクトしてくれているところも、忙しいビジネスパーソンにとってはありがたい。サクッと読んで、即実行したい一冊だ。

ザ・ブランド

【著者】ナンシー・ケーン【訳者】樫村志保【出版社】翔泳社
【発刊年月】2001年11月13日【本体価格】2,500円
【ページ数】510p【ISBN】4-7981-0145-1

(前略)そして数日に一度は、たとえ客の顔ぶれが同じでも、これらの品を全部入れ替えてディスプレイを一新する。そうすればご婦人方は友達を連れて来店するようになるだろう。ビジネスと娯楽が手を取り合ったときの効果について、君に多くを話す必要はないと思う。
本書 50p「ウエッジウッドがベントリーにあてた手紙」 より抜粋

2002年もブランドの年だろう。100円均一ショップが隆盛を極め、価格破壊とも思える流通業者が幅を利かせていたじゃないか、という声が聞こえてきそうだが…。東京・銀座や大阪・心斎橋の高級ブランドショップで、入場制限をしている様を見ていると、そう思わずにはいられない。

消費者というものは「保守的」である。なかなか買い物をしたがらない。自身の購買行動を振り返ってみればわかるだろう。事前に情報を入手する、実際に手にとって比較する、さまざまな意見を人に求める…。それほどまでに悩んでも、購入する際には「ブランド」が大きな要因を占める。

商品購入時にいくつかの選択肢があって、最終的には「ブランド」によって決めた経験を読者の皆さんもお持ちだろう。そう、ブランドには、一般的に言われがちなステータス性はもとより、品質やサービスに対する「裏打ち」という要素が、想像以上に大きいのだ。

本書は、「スターバックス」「デルコンピュータ」「ウェッジウッド」「ハインツ」「エスティ・ローダー」「マーシャル・フィールズ」など、世界に名だたるブランドの、世紀を超えたブランド戦略について、実に丁寧に言及したものである。大冊なので読むのに骨が折れるが、なかなか面白い。

本書ではまずブランドのことを「起業家が、自らの自信と誇り、商品・サービスの優位性を消費者に知らしめるべく活用したマーケティングツール」であると定義付けている。そして、そのツール(=ブランド)をどのように育て、活用してきたかを、時間軸に沿って紹介している。

例えば、英国陶器の代表的なブラント「ウェッジウッド」の項では、1700年代後半には、経営者たちはすでに「製造と同じくらいマーケティングが重要」であるということを認識し、手紙にしたためている。当時の戦略は、ロシア王朝を始めとした上流社会に認められることだと考えていたそうだ。

そう、マーケティングなどという言葉がない、そんなことを考える人はいなかった時代にもかかわらず、食器をセットして用意(=ブランドの構築)、顧客ロイヤリティを向上させる。上流階級が好むものは、中流階級もこぞって求めるはず。そしてこの中流階級こそがボリュームゾーンであると認識、販売戦略を展開していった。よく見れば、今と全く同じじゃないか!

ここで紹介されている6つの有名ブランドは、異なる業界、そして時代背景を持っている。本書は、新市場を創出した、これらのブランドの「起業家」たちのビジネス史になっていると言ってもよいだろう。マーケティングなどには縁がない、という読者にでも、興味深く読むことが出来るだろう。

慮(おもんばか)る力

【著者】岡本呻也【出版社】ダイヤモンド社
【出版社】フォレスト出版
【発刊年月】2001年10月18日【本体価格】1,800円
【ページ数】494p【ISBN】4-478-71046-5

○葬儀で涙は流さない、機械になったつもりで遺族のために仕事をする
○答えはお客さんのことを考えながら自分で運転してみて発見できる
○オペレーターは困っているお客様の気持ちになれなければならない
本書 各扉 より抜粋

本書は「良い仕事というのは一体どのようなものなのか」という原点に立ち返って各業界の達人たちに話を聞き、彼らがいかにお客さんや相手をこまやかに気遣っているかを、インタビューの手法を使って導き出したものだ。さて、今なぜ「慮る力」に注目する必要があったのだろうか。

著者は、デフレの原因である「仕事に付加価値が付けられない理由」は「本当に相手のことを考えて仕事をする態度」が、心の中から抜け落ちてしまっているからではないか?と説く。そんな自己中心的な振る舞いは、個人だけではなく、リストラなどの企業の生き残り策にも現れているのだと言う。

この厳しい経済状況の中を生き残っていくためには、消費者ニーズを満たす新しい付加価値を付け加えていくこと=「相手のことをよく考えて、相手のためになる仕事をする」こと=慮る力を発揮すること、が不可欠である、という視点で、プロの仕事上の心構えにアプローチしていく。

相手が何を望んでいるのか、それをどのように察知すればよいのか、達人たちはどのような「慮る力」を発揮しているのか、その力をどのように仕事に活かしているのか、丁寧なインタビューによって、著者は詳細に聞き出している。そのプロフェッショナルの「言葉」がとても魅力的だ。

本書に登場するプロフェッショナル達は、自身の仕事の目的や役割をきちんと押さえ、厳しい訓練と長い経験を積んで、その「慮る力」を磨きこんでいる。その努力のモチベーションとなっているのが「なぜ自分はこの仕事をするのか?」という動機と原体験にある。

高級ホテルに働く人、パソコンのカスタマーサポート、カーナビの開発担当者、再就職支援会社のコーディネーター、医師、葬儀社のスタッフなど…幅広い「慮る力」の達人たちの発言は、実に示唆に富んでいる。当たり前だけれども、見落としていた「気づき」に溢れていると言って良いだろう。

それ以上に羨ましいのが、インタビューに答えている達人たちの「自信」と「幸せ具合」である。仕事に対する誇りと、そのオモシロさを、実に幸福そうに語っているのだ。同じ仕事をしているビジネスパーソンとして、これほど「ジェラシー」を感じることはないかもしれない。

前書きには「自分の意識を知ることが、すなわち客の望みを知ることに直結しているはずだからです。相手を慮るということは、自らを省みることに他ならないのです」とある。望まれることをする、相手に喜んでいただける、自分も幸せ。仕事はそれに尽きるのでは…そんな思いにさせる一冊である。

あなたもいままでの10倍速く本が読める

【著者】ポール・R・シーリィ【監訳者】神田昌典
【出版社】フォレスト出版
【発刊年月】2001年09月26日【本体価格】1,300円
【ページ数】260p【ISBN】4-89451-119-3

二十五分で、この本を読んでみよう!
本書 扉 より抜粋

ブックレビューを担当しているくらいなので、読書量はかなりあります。と言いつつ最近では読むペースが落ちて(忙しいのもあるんですが…)1年に300冊程度。それでも追いつかずに「積読」の本も大量にあったりして。そんな私の悩みを解消するべく、探し出したのが、今週紹介するこの本。

本書は、アメリカの大手企業の研修でも使用されていると言われる「フォトリーディング」というメソッドの解説書。このノウハウを身に付けることによって、1日1冊、らくらく本が読め、仕事場のデスクに山積みの文書がどんどん片付くのだという(本書腰帯より)。

まずは従来の「読書法」からの脱却で、本書の内容は始まる。本を読むのではない、内容を脳に写し取るのだと。そうでもしないと、物理的に1分間で60ページ(!)も読むことは出来ないと解く。読むのではなくて「見る」のだ。しかし、ぼんやり眺めても、その内容が理解できるわけではない。

このノウハウには5つのステップが用意されている。ハウツー本のレビューという性格上、詳しくは書けないが、なかなか興味深い内容で、普通に読書をする人たちにとっても、目からうろこが落ちるといったものでいっぱいなのだ。ここでちょっとだけ紹介してみよう。

まず「読書目的を明確にする」ことが肝心だと説く。これは意外と出来ていないことではないだろうか?読書をする前に、設計図を作ってしまうのだ。この本を読むことで、どんな情報を、どの程度の精度で、いつ必要か…。これらを整理して読書するだけで、スピードと理解度が格段に違うと言う。

さらに「スーパーの棚を見るような感じ」で、読書することを本書は教えている。なるほどと思うだろう。あの広いスーパーの商品の中から目的のものを見つけ出す時に、一つ一つじっくりと商品を見て見つけ出す人は1人もいないはず。読書にその行動を応用しようと言うのだ。

しかし、スーパーは目的の棚がわかるじゃないか、との声も聞こえてきそうだが・・・本にもどこにどんな情報が載っているか、ちゃんと「棚の案内」に相当する機能はある。目次や見出しがそれに当たるのだ。引き比べてみれば、ああ、と膝を打ってみたくなるはずだ。

文章を速く読むことが出来る…そのノウハウを身に付けると同時に、そのノウハウを活かすツボまで、本書では細かくわかりやすく書かれている。まずは書店で「フォトリーディング」することをお勧めしよう。

イノベーティブ・シンキング

【著者】コンラッド・ヘロウド【出版社】ダイヤモンド社
【発刊年月】2001年10月04日【本体価格】1,200円
【ページ数】100p【ISBN】4-478-49031-7

私が求めていたのは、アイデアを生み出す際の基礎となるような考え方を教えてくれるテクニック、いったん身につければイノベーティブ・シンカーが生み出すのと同じたぐいのアイデアを、同じ数だけ生み出せるようになるテクニックでした。そうしたテクニックが見つからなかったので(中略)明らかにしようと私は決心しました。
本書 8p より抜粋

多くのビジネスパーソンと接していて感じることの1つに、アイデアを持たない人が多いことがあげられる。アイデアは単なるひらめきであって、自分にはその能力がないと思っている人ばかりである、と言ったほうが、正しいのかもしれない。そして、考えることを放棄している(風に見える)。

アイデアは、本当にひらめきなのだろうか。考えればわかることだが、アイデアは単純にひらめきだけでは生まれない。ひらめくための「準備」を用意周到に行う必要があるのだ。なにも知らないことについて、考えても、なにも浮かばない。当たり前のことである。

本書はアイデアを生み出すための「方法」が、実に簡単明瞭に説明されている。本書で紹介されている、システマティックにアイデアを創成するテクニックは、「情報把握」「アイデアを考える」「アイデアを改良する」「アイデアを試す」と、大きく分けて4つに分類されている。

まず、アイデアを生み出すために必要なのは「情報を収集し把握する」ことである。本書では「インフォメーション・シンキング」と題して、慣れてしまって見過ごしてしまいそうなことも、アイデアを作り出すためには見逃してはならないと説く。さらに、情報把握のコツをまとめてくれている。

次に、アイデアを考える方法として、本書は5つのノウハウを提供してくれている。その1つが「チャレンジ・シンキング」だ。今までの慣行や制約に疑問を持ち、それにチャレンジすることを「アイデア」としてまとめる手法である。その簡単な例として「ボディ・ショップ」や「アマゾン・ドット・コム」を上げ、ポイントを判りやすく解説している。

さらに、せっかく考えたアイデアを没にしないために、アイデアを改良し、実現できる形にブラッシュアップする必要がある。本書では「モディファイド・シンキング」として、アイデアのプラス面・マイナス面をハッキリし、改良することをあげている。

この本に書かれてあることは、取り立てて新しいことではない。そして、何より難しいこと、実行できないことは、一つも書かれていない。しかし「アイデアが豊富だ」と思われている人は、意識しないで、本書に書かれていることを、無意識に行っている気がする。そのくらい「即戦力」になる一冊である。読まないでいると、必ず損をする、そんな本だ。

めざせ!レインメーカー

【著者】ジェフリー・J・フォックス
【監修】金井壽宏【訳者】馬場先澄子【出版社】万来舎
【発刊年月】2001年07月17日【本体価格】1,300円
【ページ数】166p【ISBN】4-901221-05-1

コラム24「聞くことを恥じない」……営業員のやり方を顧客に批判させてごらんなさい。「大事なことはちっとも質問してくれない」というのが、もっもと多い意見でしょう。(中略)ろくろく質問しない営業員がなぜそんなにも多いのでしょう。
本書 83p より抜粋

最近噛んで含めるように易しく、しかもそんなところまで!というところまで、懇切丁寧にかかれたビジネスハウツー書が増えている。何人かに訪ねてみると、「仕事に関する適切なアドバイスをしてくれる上司や先輩がいなくなっている」という、ビジネス現場の変化に影響を受けているのではないか?と言うことだった。

世の中の流れの速さに、管理職クラスの今まで培ってきたビジネスノウハウが通用しない、また、適切なアドバイスが出来そうな先輩たちは、自らの業務が忙しく、とても後進を育てている余裕はない。そんな中、今回ご紹介するような類の本が、求められているのだろう。そう、本書は「よく出来る(でもちょっと小うるさい)先輩」のような本である。

レインメーカーとは、本来は「雨を降らす呪術師」のこと。実りの雨をもたらす彼らは、集団の中で高い地位を与えられていました。転じて、現代では「所属する組織に一定の利益をもたらす人」のことを、そう呼ぶようになっている。顧客が落とす金=雨…ということなのだ。そのレインメーカーになるためのテクニックが、前述のとおり「懇切丁寧」に書かれている。

書かれている内容にそれほど目新しいことはない。顧客へのサービスを充実させるテクニック、顧客を購買行動にいざなうためのコツとツボ、ビジネスリスクを最大限に回避するために注意しなければいけないことなどが、あらゆる角度から紹介されている。「わかっているよ!そんなことは!」というモノも決して少なくない。

例えば、「口にものを入れたまましゃべらない」というコラムがある。要は「礼儀を知らなければ客は逃げてしまいますよ」と言うことなのだが…当たり前だろうと思わず失笑してしまう。さらに、「営業先ではコーヒーを飲むな」というコラムに至っては、コーヒーを何時こぼしてしまうかもわからない、そのときにトラブルが起きるかもしれない、ということなのだが…。

では、何故本書をお勧めするのか。実は、「当たり前」のことですら出来ていないビジネスパーソンが、意外に多いからだ。自分は大丈夫と思っていても、レインメーカーになりそこなっているケースは良くある。例えば、商談中にかかってきた携帯電話に出る貴方!その行動は、顧客の心を離しているんですよ!心当たりのあるヒトは、ぜひ書店で手にとって見て欲しい。

英語でヒット商品! Hit products

【著者】イーオン語学教育研究所+株樹孝佳【出版社】増進会出版社
【発刊年月】2001年05月10日【本体価格】1,000円
【ページ数】126p+CD-ROM【ISBN】4-939149-41-2

At that time, McDonald's had about 2,000 franchises, mostly in the United States and Canada. An item on the menu --"Smile...0 yen"--became the talk of the town.
本書 9p より抜粋

さて、そろそろ休みに入る方もチラホラと居られるだろう。夏休みには勉強しようということで、今やビジネスマンの三種の神器の1つである「英語」を磨くためのこの1冊をご紹介。

Mobile English と銘打たれた本シリーズですが、その名のとおり「持ち運びやすい」サイズである。これは、どこへでも携帯するための配慮だ。隙間時間を上手く利用する、社会人の学習のための基本である。

次に1冊につきワンテーマである。興味のあるテーマなら、嫌な勉強もスムーズに行えるだろう、という工夫である。今回ご紹介するのは、たまたまビジネスパーソンに向いた「商品企画」だが、他に「恋愛」「ダイエット」「サッカー」「ビール」など…そのテーマは豊富である。

Morning Lesson としてちょっとしたコラム、EveningLessonとして朝のコラムを受けての簡単な会話の2部構成となっている。日本語でコラムを読み、英語で確認することで、英語独特の表現を理解をする。さらに、会話の中で言い回しを学ぶ。なかなか憎らしいシステムになっている。しかも朝晩…要は通勤時間にお勉強できるわけだ。

例えばコラムだが、1つ目は今話題の「マクドナルド」。1971年にオープン、当初はスマイル0円などが話題を呼んだ。単なる子供のおやつとしか見られていなかったが、朝食メニューをセットすることで、忙しいサラリーマンの支持を得た。さらには、独立店舗からインショップタイプに戦略転換を図った、など、意外と読み応えがある。

続く会話だが、スマイル頼んでみなよってキッカケから、インドのマックでは牛肉の代わりにヒツジの肉を使う話、そんなにマックに詳しいアメリカ人は、実は学生時代にマックでアルバイトをしていた、けども、コロッケバーガーなんてアメリカにはなかったよ、ってオチまでついている。そのトホホ感も良い。

書かれている英語のレベルは大したことはない。サクサクっと進む程度のものだ。自分の英語をちょっと磨きなおすために、自分のテーマ興味あるテーマをチョイスして、チャレンジしてみると良いだろう。かなりお勧め。

ものづくりのヒント

【著者】岸田能和【出版社】かんき出版
【発刊年月】2001年06月25日
【本体価格】1,400円【ページ数】223p【ISBN】4-7612-5940-X

女性向けの商品を企画するときに(中略)まず考えなくてはいけないことは「その女性たちが何をしたいか」のはずだ。そこを飛び越し、女性だから、小さくて、軽くて、簡単にすれば事足りると(中略)あげくの果てに色や形をかわいらしくすれば「女性仕様」ができあがる、といった安易な発想でつくられた商品が多いような気がする。
本書 47p より抜粋

例えば、今このメールマガジンを読んでいるパソコンも、実は人の手によって作られたものである。当たり前のようだが、意外と忘れがちだ。入力しているキーボードのサイズも、勝手に出来上がったわけではなく、誰かが決めて作ったわけである。そんな「モノ」づくりのプロが書いた、考えるためのヒントが詰め込まれているのが、本書である。

とは言っても、堅苦しいものではなく、見開き単位の本当に軽いエッセー。しかし、その内容はなかなか骨太である。商品開発を進めるときに、もっとも大切な…使うヒトの置かれた状況に思いを馳せて「気づく」こと…その、わかっているようで、なかなか出来ないことを実行するための、なるほど!という視点がわかるエピソードが満載である。

例えば、障害を持つ人たちのためのトイレの設備を見て、バリアフリーであると設備を整えた側は自慢するが、健常者は「手すりがウゼー」となってしまう。障害者や高齢者の立場を配慮した商品開発は当然だが、健常者や若い人の立場にも立ってみてはどうだろう、と筆者は提案する。これはなかなか思い切った視点である。

しかし、考えてみると、機能とファッションを両立させるために大切な発想である、とも言える。若い人や健常者がカッコいいと言ってくれないようなものは、障害者や高齢者にとってもカッコいいわけがない、という発想も必要なのではないか、と筆者は書いている。思いを馳せる視野をより広く、というヒントである。この話は、実にわかりやすい。

また、エアコンが軽量化されることは、実はコスト削減に大きく貢献していること(どうしてだろうって思いません?)や、今時ネクタイを鉢巻にして酔っ払っている人はいない話(でも酔っ払いといえばそんな感じですよね)から思い込みが考えを縛っていないかといったヒントまで、読んでいて

「あっ!」と思うエピソードが多数ある。

読んでいて「頭が柔らかくなっていく」と言えば良いだろうか。いろんなことを「多方面」から見てみよう、そんな気になる本である。モノづくりに携わっていない人にでも、本書をお勧めしておきたい。考えるためのささやかなヒントが必ずあるはずだから。

eラーニング-実践的スキルの習得方法

【著者】山崎将志【出版社】ダイヤモンド社
【発刊年月】2001年01月12日【本体価格】1,800円【ページ数】203p
【ISBN】4-478-37347-7

プロフェッショナルの育成を、ITを活用して効率よく実現するのが「eラーニング」だ。高度なスキルを今までになくスピーディに習得させることが、企業の競争優位の必須条件になる。
本書 腰帯 より

IT活用といえば、業務の効率化や高付加価値化への利用を思い浮かべがちだが、高度なスキルを素早く習得させる手段としてのIT活用が注目を集めはじめている。それが、eラーニングだ。

本書では、これからのビジネスパーソンに求められる能力を「高度で実践的なスキル」であるとし、スキルを身につける方法の整理、マルチメディア・ネットワークの特徴を確認した上で、eラーニングの成功事例や導入のためのステップなどを紹介、その魅力を説いている。

実際にeラーニングが実施されない環境にいる読者にも、本書に注目してもらいたい理由は、eラーニングについて整理していく過程で、学習とは何かがきわめて明快に解き明かされていることにある。そう、この本はキャリアアップをするための学ぶという行動について、(eを使わなくても)最短距離を歩く基礎知識が書かれているのだ。

学習のプロセスとしては、観察学習=自分がなりたいモデル人物を設定し模倣を通じて自分なりの行動を確立すること、ピア・ディスカッション=同僚などに自分の行動や判断を示すことでその人たちから得られる反応で正誤を確認すること、二重ループ学習=計画を立て実行しそれを評価する、出来なかった場合は目標に立ち戻って見直すこと、の三つを上げている。

これらの学習プロセスによって得られるものは、スキルである(ちなみに本書ではスキルや知識についてもクリアな説明がなされている)。実践的なスキルを身につけさせるためには、従来型の研修やOJTなどでは様々な限界があり、スピードを上げるためにはeラーニングが最適であるとしている。

肝心のeラーニングの実像だが、本書を手にとって確認してみて欲しい。飛行機のフライトシュミレーターのようなもの、と言ったら語弊があるだろうか。今までの研修などでのレクチャー主体のモノではなく、PCの中で、自分のペースで、納得がいくまで、限定されたケースのシュミレーションが行える、掻い摘んで言うとこんな感じだ。

書店のビジネス書のコーナーでも、同類の書が多数出ている。言葉としても注目を集め始めている「eラーニング」。とりあえずは一読して、その概略を知っておいて、損はないだろう。お勧めの一冊だ。

仕事を楽しむための101の方法

【著者】ステファニー・ゴダード・デイヴィドソン
【出版社】ディスカバー21
【発刊年月】1999年04月26日【本体価格】1,200円【ページ数】157p
【ISBN】4-88759-092-X

50・この本を読もう-どうもやる気が出ないと感じたときは、この本をどのページでもいいから開いてみよう。今まさにあなたが必要としていることが書かれているだろう。
本書 85p より

一生懸命仕事をしていても、進捗状態が果々しくない。会社に向かう足取りが、どうにも重たい。仕事をしていても、何故か手ごたえを感じない。人間関係などの巧拙から、ストレスが激しい。今日もまた、職場で嫌な一日を過ごしている。そんな人は多いのではないだろうか。

長きにわたって、仕事を楽しめないでいる社員や管理職、経営者に対して、カウンセリング研修をおこなってきた筆者が、現状を少し変えるための、ごくカンタンなヒントを示したのが本書である。その数は101。どれも、ささやかなことだけれども、日々を何となく変えてくれそうな気がする。ヒントの幾つかの例をあげてみよう。

仕事の喜びリストをつくろう-今の仕事に配属された当時、どんなところにやりがいを感じていましたか。初心に返るために、今の仕事の「喜び」をリスト化しようというものである。

できないことではなく、できることに目を向けよう-出来ないことを見つけることは簡単だけど、出来ることを見つけることは難しい。自分に出来ることに目を向けよう、そして、それについて何かしてみよう。

リストアップされた方法を分類すると、「視点を変えてみる」「一息つく」「成果を目に見えるようにする」「ポジティブシンキング」「モチベーション維持」など…ごく当たり前のことしか書かれていない。しかし、短い言葉で、ちょっとずつ書かれていると、消化しやすい。何より心にぐっと響く。

どれも難しいことではない。しかし実は、日ごろ気が付いているというポイントでも、ない。言われてハッとする、灯台下暗し的な事柄ばかりである。そして、すぐに実行できることばかりだ。

素晴らしいビジネスパーソンライフをおくるために。実践しなければならないことは、全く難しいことではない、ということをこの本は教えてくれる。とても短い101の方法は、一通り読んで、気にいったノウハウを試すのも良いし、毎日一つずつ読んでトライしてみるのも面白いだろう。ビジネス社会の荒波を乗り切るための常備薬として、ぜひ一冊。

思考の用語辞典

【著者】中山元【出版社】筑摩書房
【発刊年月】2000年05月10日【本体価格】2,400円【ページ数】430p
【ISBN】4-480-84253-5

因果関係…なにかが起きる。するとみんなが思う。なぜ? どうして?ものごとの原因について問うことは、哲学よりも古い問いだ。因果関係を考えるのは、きっと人間の根本的な能力のひとつなのだろう。原始の呪術も、独自の論理でちゃんと因果関係を想定している。あのひとが死んだのはなぜ? 悪い霊のしわざ。雨が降らないのはなぜ? 雨乞いをしないから。それぞれにいきさつが考えられてるんだ。
本文 048p より

今回は、いろいろな概念=哲学素を100個集めた本を紹介する。腰帯には「考えるための読むための書くための」道具箱とある。なるほど、概念の役割を端的に言い表している。集められた哲学素の一つ一つは単語であり、(哲学的な)言葉の本義的な意味を知ることが出来る。

 概念、現象、啓蒙、経験、規範、システム、構造、因果関係、消費…。ビジネスサマリーを作成するために、これらの言葉の意味を使わないというヒトはいないだろう。振り返ってみて、用途に応じて、正しく言葉を使っているとは思うが、これらの言葉のもつ、哲学的な概念を知ることは、とても面白いことだ。ちなみに、先にあげた言葉たちは、この本の中で、哲学素として紹介されている。

 言葉としての源流、思考の道具足りえる原義、そしてそれは、様々な問題解決のためのきっかけに応用できる、という楽しさ。哲学とビジネスは遠いようだが、こと「考える」という点においては、当然類似性が高く、ビジネス社会には、哲学用語は溢れている。論理的に思考することが必要とされている社会であることを、何より証明してはいないか。

 概念をきちんと理解しておくことは、ビジネスサマリーを作成するときに役立つことはもちろん、ビジネスマンとしての「視座・視点」を持つためには、ぜひとも身に付けておきたい「基礎体力」の一つだと考える。ハウツーも必要だが、ここらで一つ、秋の夜長を利用して、知的冒険をすることをお勧めしたい。一つの哲学素が四ページと、決まっているところも、嬉しい。「なるほどー」と感心しながら読み進めたいところだ。

 哲学に関係した本だからと言って、難解なところは一切ない。どちらかというと「砕けた」調子で書かれていて、読みやすい本になっている。まずは手にとって安心してみてください。言葉は、その存在があまりに日常過ぎるからだろうか、どうも軽んじてしまう。この本は、自らの持っている言葉に対する「理解」を深めることで、思考力のブラッシュアップが図れる一冊である。興味のある方は、ご一読を。

思考のレッスン

【著者】丸谷才一
【出版社】文藝春秋
【発刊年月】1999年09月30日 【本体価格】1,238円 【ページ数】 282P
【ISBN】4-16-355610-9

レッスン5 考えるコツ 「謎」を育てよう/定説に遠慮するな/慌てて本を読むべからず/比較と分析で行こう/仮設は大胆不敵に/考えることには詩がある/大局観が大事
本書目次

丸谷才一といえば、独特の発想が魅力的な才人である。特に「文章読本」は名著との評価は揺るぎ無いだろう。その著者が、考え方のコツ、究極の読書法、文章の極意を、「語りおろし」のスタイルで伝授してくれるのが本書だ。ビジネススキルを直接高めるハウツーではないが、大きな意味での「考え方」を学ぶのには、大変役に立つ考え方が詰まっている。

本書は大きく二つのパートで構成されている。著者自身の思考スタイルが形成されていったプロセスを中心に語った、考えるための下地作りの部分と、その下地の上に立つ、具体的なノウハウの部分である。[en] Career Newsの読者にとっては、後半部分が読みどころとなる。

例えば、考えるコツとして著者は「謎を育てよ」としている。良い問は良い答に勝る。つまり、疑問としたところの着眼点がすばらしければ、そのアイデアは非常に良いものであると。さらに、常になぜだろうと考えつづけて、より良い問いに孵化させる必要があるとしている。これも、裏を返せば、良い疑問でなければ、長く思考するだけの強度がないわけで、すべてが繋がってくるわけだ。学問を志すものにとっては、至極当たり前のことだが、ビジネスにも十分生かせる考え方であることは、言うまでもないだろう。こう言ったノウハウが、わかりやすい口語調の文章で、たくさん書かれている。

インターネットがこれだけ普及し、情報の入手が容易になった時代だからこそ、ビジネスの上でのアイデアにも、オリジナリティが要求される。ところが、情報入手の容易さが、かえって資料のカットアンドペーストだけでも、アイデアを作り出せた、という錯覚に陥らせている。情報収集や加工の技術を伝える書籍は多いが、その奥にある本質の部分を教えてくれる本は、意外に少ない。少なくともビジネス書のコーナーにはない。たまには、思考のための基礎体力をつけるための読書をお勧めしておきたい。

仕事の快適整理術

【著者】ドン・アスレット+キャロル・カーティノ
【出版社】ジャパンタイムズ
【発刊年月】2000年05月20日 【本体価格】1,400円 【ページ数】 233P
【ISBN】4-7890-1009-0

人間関係の力学や礼儀作法、仕事の本質とは遠いところで起きる「目配せ」やいやがらせをことごとく取り除くことができれば、ごくふつうの人でも並はずれた実績をあげられることをわたしは知っている。あなたにもそれはできる。それもいますぐ。「仕事をシンプルなものにする」ことができさえすれば。
本文 229p より

オフィスワーカーは大変である。筆者たちは長年の観察の結果、人は、仕事そのものを毛嫌いしているわけではないことに、気がついた。人が「仕事」を遠ざけたくしているものとは、設備の問題、競争、権謀術数、たばこの煙、騒音などの、仕事とは関係のない別の要因なのである、と。本書では、仕事を行っている日常の「余計なもの」を剥ぎ取り、仕事をシンプルにすすめるための「コツとツボ」を紹介している。至極当たり前のことが書かれている本書を、本欄では別の読み方をしてみると面白いのではとお勧めしたい。

読者の皆様も既にお気づきだろうが、組織の中で快適に仕事をしていくことは、非常に難しい。本書に書かれているように、シンプルに仕事をすすめようとしても、多くのかかわる人たちが、同じ意識で仕事に取り組んでくれるかどうかは怪しい。快適に仕事ができる周辺環境を整えることに、まずは時間を割かなくては、と言う方がとても多いはずだ。そこで本書の登場である。本書にある仕事を快適にすすめるための「コツとツボ」を、何食わぬ顔をして受け売りしてみる。職場全体の改善を、さりげなく、そして効果的に行ってしまうためのツールとして、本書は活用できるのだ。

「仕事の優先順位や処理の手順」「時間管理の方法」「職場環境の整備」「整理や収納術」「コンピュータとの付き合い方」「電話や手紙のテクニック」「人間関係」「出張術」「ホームオフィス」など、網羅されているスキルは、別段目新しいものはない。いたってシンプルで、割合わかりきったものである。簡潔に書かれてある文章が、適切な訳と相俟って、理解しやすいものになっている。人を上手に動かすためには、コレくらい簡潔で端的なほうが良いと、読めばピンと来るだろう。

自分の仕事の進め方に関するスキルをチェックする意味でも、一度ざっと目を通しておくことを、強く勧めておきたい。

「超」発想法

【著者】野口悠紀雄【出版社】講談社
【発刊年月】2000年03月16日 【本体価格】1,600円 【ページ数】 270P
【ISBN】4-06-209991-8

ビジネスマンに必要なのは、「指導力」「判断力」「交渉力」「協調性」などだと思われていたのである。こうした能力や資質が今でも必要とされるのは、間違いない。しかし、それだけではいかんともしがたい時代になったのだ。人間関係だけに神経をすり減らすジェネラリストでは、競争に落伍する。二十一世紀は、「発想における競争の時代」なのである。
同書 22p より

「超」シリーズでおなじみの筆者の新刊である。筆者や同様の人気を誇る鷲田小彌太が書く本の素晴らしい点は、類書を読まずにすむ、というところに尽きる。両者とも、実に巧みな情報整理と編集加工作業で、他の書籍のエッセンスを抽出し、まとめあげている。忙しいビジネスマンにとっては、とてもありがたい存在と言える。

本書のテーマは「発想」。引用部分でも述べているが、今後のビジネスマンにとって、最も必要とされるスキルのひとつであることには間違いないだろう。その方法論を、実に明快に示している。中でも、基本五原則と題されたこの本の肝の部分は、必読だろう。

第一原則「発想は、既存のアイデアの組み換えで生じる。模倣なくして創造なし。」第二原則「アイデアの組み換えは、頭の中で行なわれる」第三原則「データを頭に詰め込む作業(勉強)がまず必要」第四原則「環境が発想を左右する」第五原則「強いモチベーションが必要」いずれも、従来からある発想法などを、筆者ならではの視点で練り直している。これらの原則を運用する際の問題点なども、きちんと明記してあるところが、嬉しい。

さらには、既存の発想法への厳しい批判(間違った発想法とまで切り捨てている)、発想を支援する環境整備の話や、パソコンをアイデア製造機として位置付け、その使い方と効能を記したパートも、従来の(ある意味本格派)発想法の本にはなかったものだ。役に立つだろう。

この本を購入すると、筆者が提供しているインターネットホームページに用意されている「発想ソフト・Denken」へのアクセス・ナンバーが、付録として付いてくる。インターネットを発想に活用するための、充実したリンク集だ。この心配りも憎い。書店で見かけたら、即購入だ!

英語できますか?-究極の学習法-

【著者】井上一馬 【出版社】新潮社 【発刊年月】1998年08月20日
【本体価格】1,000円 【ページ数】 199P 【ISBN】4-10-600543-3

いずれにしても、英語を話すことはそれほどむずかしいことではありません。基本構文を覚えて単語を覚えれば、それで話せるようになる。それくらい単純に考えた方がいいと思います。
同書 12p より

もう十五年近くも前のことだ。ある情報系の会社の営業マンが解雇された。理由は営業成績の不振。彼は英語とフランス語が堪能で、ドキュメント作成能力に優れていた。しかし、営業マンとしての「押し」みたいなものが弱く、与えられたノルマはほとんど達成できずにいた。解雇後の再就職は、大変だったと聞く。もし今の時代なら、彼はとても重宝されるに違いない。それほど、今の世の中は、どこででも、語学を必要としている。

今回の書籍の腰帯にはこうある。-今度は習得できるかもしれない-そう英語をモノにしたい、と思うヒトは多い。しかし、モノになっているヒトはひどく少ない。結果的に、合理的無知(=必要を感じないのだから知らなくても良い)の境地に達してしまう。だが、インターネット時代。英語へのニーズは、飛躍的に高まって、無視して通れる存在では無くなってしまった。本書は、コラムニスト・翻訳家としても名高い筆者が、実に読みやすい文章で、英語の学習法を教授してくれる。

外国語を学ぶためにもっもと重要なことは、リスニングであり、習得するための近道であると、本書は説く。そのために、やりなおしの第一歩として、英語の基本文型が一通り収められている初級の英会話のテキストとテープを、買ってくるところから始まる。そのテキストを全くゼロから始めるとして、約300時間かけ、徹底的に反復することをすすめている。といったように、段階を追って、そのステップで何をすれば良いのか、事細かに記してある。また、なぜその学習をおこなうのか、と言う理由づけもなされているので、無味乾燥な学習にならずにすむ。これなら頑張れそうだ。英語が必要なヒトに、まずは一読をお勧めする。

人生を変える 80対 20の法則

【著者】リチャード・コッチ
【訳】仁平 和夫【出版社】TBSブリタニカ 【発刊年月】1998年6月1日
【本体価格】1600円 【ページ数】280P

好きなことをやろう。好きなことを自分の仕事にしよう。 自分の仕事を 楽しいものにしよう。金持ちになった人はほとんど例外なく、 好きなこ とをさんざんやって大いに楽しんだうえに、 笑いが止まらないほど儲けている。

これもまた、80対20の法則の一例である。
同書 P182から引用

80対20の法則とは、インプットの 20%がアウトプットの 80%を占めるというパレートの法則で有名だ。今週御紹介するのは、このパレートの法則を仕事やキャリアプランに適応するとどのようになるかを解説した一冊である。

「最小限の努力で最大限の効果が上がる」。 この本の腰巻きにあるこのフレーズを逆にとらえれば、「努力」とは、 80%のアウトプットを生み出している 20%のインプットを知らなければ、十分なかたちで身を結ぶことはない、ということだ。これは、20%の顧客が 80%の利益を生み出しているという言葉を言い直したものだが、企業のみならず個人のキャリアプランにも同じことが言える。

全ての時間、全ての選択肢に対し同じように力をそそぐことは不可能だ。そうであるならば、価値の優先順位付けを明確にし、それに対し、20%の力を注ぐようにする。この不均衡を理解しているか否かが成功と不成功をわけるのだ。

自分が望む仕事をし、求めている報酬、望んでいる評価を得られるようにするためには、 80%のアウトプットを生み出している 20%のインプットは何なのかを知らなければならない。そのためには、なにをアウトプットしようとしているのかを貴方が十分に理解していなくてはならない。先週御紹介した「TQ」とあわせて読めば、この1冊が貴方のキャリアプランに対しはかり知れない価値と知恵を生み出してくれはずである。

TQ 心のやすらぎを発見する時間管理の探求

【著者】ハイラム・W・スミス 【訳者】黄木 信 ジェームス・スキナー
【出版社】キングベアー出版 【発刊年月】 1999年 2月 5日
【本体価格】1,715円円 【ページ数】417P

多くの人が次のように言う。「長期目標を決めました。私は今、ここに います。毎日毎日目標に近づいています」

時間管理に関する書籍はあまりにも多く、それらを通読すること自体に、多時間を費やしてしまうことがある。それらの多くは、細切れの時間を有効に活用し、時間を生み出すノウハウや、早朝の時間を有効に利用することで、生産性を高める方法などを伝授してくれるが、それらを実際に実践することは、非常に難しいことだったりする。その理由は時間をコントロールする、というよりも、時間を生み出さなくてはならない、というどこか脅迫観念めいたものがその背後にあるからなのではないだろうか。

さて、今週とりあげた『TQ 心のやすらぎを発見する時間管理の探求』は、単なる時間管理方法でなく、時間を管理するとは、どういうことなのだろうかという根本的な問題設定から、時間管理に関して語られている一冊だ。私達の時間が限られたものである以上、その中で実行することもやはり限られている。この状況の中で、私達が望む人生を作り上げるためには、みずからの価値観を明確にし、それに基づいた優先順位付けをしていくことが重要だ。

時間管理を価値観に基づいた出来事管理としてとらえることで、「心の安らぎ」を得られるとする同書。あわただしい毎日をおくるビジネスマンにとって、「心の安らぎ」は魅力的な言葉であることだろう。しかし、同書で詳細に説明されているのだが、「やすらぎ」とは、私達自身が、最も価値を置くものを認識していなければ得ることの出来ないものだ。

同書で紹介されている「生産性のピラミッド」、「リアリティー・モデル」などの考え方は、同時に、自分の価値観を認識、あるいは発見することにも役立つのだが、これは非常に価値のあることだ。優先順位の高いものには、なにがあるかを考え、その中で最も価値を置くものはどれなのかを考える。これは、キャリアプランという長期的なプランを立てる際にも、最も重要なことではないだろうか。

人と違うことをやれ!

【著者】堀 紘一【出版社】三笠書房 【発刊年月】1999年4月30日
【本体価格】1429円 【ページ数】278P

近代日本は今、三つ目の大きな曲り角にきている。一回目は明治維新。 つまり封建社会から”国家”が確立していった時代。2回目は戦後。国家 より民間、すなわち”企業”が確立していった時代。そして今、三回目。 企業から個人が独立して確立していく時代である。
同書 P5から引用

随分前のことだが、タレントの木村拓也が「サラリーマンは顔が見えない」というようなことをコメントしていた。その時私は、自分自身のことを反省すると同時に、「魅力的な人間に職業は関係ないよな」と感じたことを覚えている。私の知人のサラリーマンには魅力溢れる人物が沢山いる。

ところで、こういった魅力を感じる人物を思い浮かべてみると、誰もが全く異なる性格や能力ではあるのだが、共通しているのは、「その人にしかない何か」を感じさせることだ。「人と違うなにかを持っている」と感じさせる人とも言えるだろう。

さて、今週取り上げた「人と違うことをやれ!」と題された当書。「戦略的生き方のすすめ」という副題がつけられた当書は「戦略」と、「考える力」と「信頼」の重要性を説いた誰が読んでも「なるほど」と納得するはずの内容だ。挑戦的な題名にも関わらず、ユニークながらも王道を行く内容に仕上がっている。

独自の戦略と頭の使い方で、成功をおさめた人物のエピソードが数多くおさめられている当書。そのエピソードから戦略的な思考のノウハウを学べることはもちろんなのだが、彼等がかもし出す魅力を感じることで、魅力ある人物になる方法論としても読むこともできる。「企業から個人が独立して確立していく時代」は、その人だけの生き方を確立していく最大のチャンスでもあるのだ。魅力あるオリジナルな生き方の知恵を満載した本書を是非とも多くの人に手に取っていただきたい。

1日に24時間もあるじゃないか

【著者】中谷 彰宏 【出版社】ダイヤモンド社
【発刊年月】 1999年 7月 8日
【本体価格】1400円 【ページ数】170P

忙しい時に、人間はもっとも充実した時間を生きている。
本書 腰巻きから引用

今週とりあげるのは、『1日に24時間もあるじゃないか』という1冊だ。「時間を味方にする50のヒント」が詰まった本書は、時間管理の方法論の体裁をとってはいるが、そのヒントの背景にあるのは、なりたい自分になるためにはどうしたら良いのか、というテーマにある。本書に書かれているのは自己実現のための時間管理法と言ってもよいだろう。

[en] Career Newsのテーマになっている「キャリアプニング」。これは長期的に見れば、どのように生きていくか、ということだ。しかし、そのプランに基づいて今日一日をどう生きるか、ということも同時に非常に重要なことだ。人の数だけ様々なキャリアや生き方があるが、あらゆる人に公平に与えられていた一日という24時間をどう過ごしていくのかが、1年後、3年後、10年後を作り上げていくのだからだ。

さて、この『1日に24時間もあるじゃないか』。「会議に遅れる人も、飛行機には遅れない」「先延ばしは、時間の借金」などといった言葉が、あなたにとっての有意義な時間の使い方だけでなく、他人の時間をいかに価値のあるものにするのか、というテーマにも言及されている。私にとって時間が重要であると同様に、上司、同僚、そして部下のあの人にとっての時間も重要なのだという当たり前のことを気がつかせてくれる優しいアフォリズム集となっている。

小難しい時間管理方法でなく、「そうなんだよな」という納得とともに、貴方に有効な時間管理のノウハウをプレゼントしてくれる当書。当書を通読するわずかな時間は、必ずや、貴方に何十倍もの時間を生み出してくれるはずだ。日頃「忙しい、忙しい」といっている人に、特にお勧めの 1冊だ。

創造力の掟 ~情報空間の編集力学~

【著者】角田健司 【出版社】 勁草書房 【発刊年月】 1996年10月15日
【本体価格】2472円 【ページ数】246P

「オリジナリティーの確立と品質の維持、この二つをあわせ持った時、人はプロフェッショナルになる」
同書腰巻きより

情報をいかに収集し、加工し、価値あるものにしていくか。ビジネスにおいて最重要とも言えるこのスキルの重要性は、インターネットの急激な広がりに伴い、今までにないほど高くなっている。

ところで、情報を活用することを扱った書籍を何冊も手にとっているのだが、なかなか「これ」といった本に出会うことがない。「超整理法」という大ベストセラーが記憶に新しいのだが、他にこれという一冊がなかなか見当たらない。

さて、今回取り上げるのは、インターネットが一般化するはるか以前に出版された情報と創造をテーマに編まれた一冊だ。勁草書房という哲学などの出版に強い出版社から出された1冊だ。(80年代に売れた、「構造と力」を出した出版社といえば、ご存知の方も多いかもしれない。)

当書では、(0)プロローグからはじまり、(1)収集力の掟、(2)分析力の掟と7つの掟を紹介。それぞれのパートで項目毎に分類されたTOPICSを紹介。(7)管理力の掟というパートに加えられた「日本型創造力の盲点」というパートは抽象的な内容ながらも、情報と創造というテーマを締めくくるにふさわしい知的な興奮を与えてくれる。

冒頭に取り上げたという腰巻きのコピーにあるように、情報社会において、プロフェッショナルを追求するビジネスマンの方に是非一度手にとって頂きたい1冊だ。あまりにも早い速度で進むこの時代の流れにも古びることのない骨太な内容は、何かを貴方の中に残してくれるであろう。

アイデアの作り方

【著者】ジェームス・W・ヤング
【訳】今井茂雄 【解説】竹内均 【出版社】TBSブリタニカ
【発刊年月】 1988年4月8日 【本体価格】777円 【ページ数】102P

アイデアの作成はフォード車の製造と同じように一定の明確な過程であるということ、その作成に当たって私達の心理は、修得したり制御できる操作技術によってはたらくものであること、そして、なんであれ道具を効果的に使う場合と同じように、この技術を修得することがこれを有効に使いこなす秘訣である、ということである。
同書 P18から引用

産業構造がハードからソフトへと大きく移行するにつれアイデアの重要性はさらに高まった。企画マンのみならず、営業でも、経理でも、様々な職種で問題解決のための発想力が必要とされている。

しかし、このアイデア。「どこからそんな発想を。。。」という質と量のアイデアを出してくる人がいる一方で、「全く何も思い付かない。。。」という状況に陥ってしまう人もいる。非常にやっかいなものである。

さて、「60分で読めるけれど、一生あなたを離さない本」というコピーのこの『アイデアの作り方』。コピーばかりな羊頭狗肉のビジネス書が多いなか、解説を除けば、 30分で読めるコピーに恥じない実力派の書籍である。

著者のジェームス・W・ヤング氏は、アメリカの広告代理店・トンプソン社の常任最高顧問、アメリカ広告代理業協会の会長を務めた方。閃きとアイデアが勝負ともいえる世界で最先端を走っていた人のアドバイスはアイデアを求められている全てのビジネスマンに必ずヒントを与えてくれることだろう。アイデアを出す技術を、効率よくしかもわかりやすく修得させてくれる書籍は、なかなかない。

また、解説を書いている著名な物理学者である竹内均さんの文章もすこぶる面白い。今日購入すれば、明後日からはこの技術を実践できる。そんな即効性も嬉しいお勧め本です。

考える技術・書く技術

【著者】バーバラ・ミント 【監修】株式会社グロービス
【訳】山崎康司 【出版社】ダイヤモンド社 【発刊年月】 1995/4
【本体価格】2330円 【ページ数】212P

本来文章を作成するということは、自分の考えを読み手に伝える以前に、「自分の考えを練り上げる」ことを要求するものである。しかし、この書き手の義務を認識し、それを果たしている人間は極めて少ない
同書 P209から引用

人は常にコミュニケーションをしている。インターネット、電話、手紙、口頭、あらゆる場面で。ビジネスも突き詰めれば、コミュニケーションの一つ。だからこそ、ビジネスにおいてコミュニケーション能力は、最も必要な能力の一つにあげられる。

さて、今回紹介させていただく書籍は、コミュニケーションの一つの形である「書く」という技術に関する本。「“てにをは”を正しく」や「イントロを魅力的に」といったノウハウ的な内容の書籍が多いなか、この『考える技術・書く技術』は、「書くとは、考えることだ」という主張に基づき、「書く」ことだけでなく「どのように考えればよいか」ということまでも解説してくれる。

「書くべきことがまとまっていない状況で書き始めても文章を書けるわけがない。」そんな誰でもが知っていることを、論理的かつ、科学的に説明している本書。単に文章を書くということのみならず、プレゼンテーション、企画立案などビジネス全般に必ず役立つ。「考える」ことと「伝える」ことは、常に表裏一体だからだ。

本書を読んだ結果、私が文章がうまくなったか否かは分からないが「考える」という技術を学ぶことができた。「書くことは考えることである」このことを実感できるだけで、何かが変わるはず。全ての人にオススメできるすばらしい本だ。