藤田田社長が高橋徹教授にIT特別講義を受ける

【著者】藤田田/高橋徹
【出版社】KKベストセラーズ
【発刊年月】2001年05月30日【本体価格】1,450円【ページ数】238p
【ISBN】4-584-18610-3

高橋 ファックスでやるよりも、インターネットのほうが安くたくさん送れる、情報量も多いし。
藤田 ファックスだと、先生、紙一枚送ればいいんでしょう。これを自分で打つとなればたいへんじゃないですか。
本書 51p より抜粋

藤田田と言えば、日本マクドナルドの社長。高橋徹と言えば、インターネット協会の副会長。稀代の経営者がインターネットの第一人者に、ITとは「本当に儲かるのか」という視点で講義を受けたのが、本書である。インターネットについての解説書としては、入門レベルにも満たない。しかし、裏読みすればなかなか面白い本である。

本書は4つのパートに分かれている。最初に「インターネットとパソコンはどういう関係にあるのですか?」として、インターネット関係周辺事情を、解りやすく紹介している。以下、「デジタルデバイド(情報格差)をどうしたら埋められますか?」「ITを使って儲けるにはどうすればいいのですか?」「IT革命の最先端をきって何かやれることはないですか?」と続く。

いずれのコラムも、本誌の読者にとって知らないことはないレベルの内容である。では、何故本書を勧めるのか…理由は二つある。一つは、インターネットにさほど詳しくない上司などに、インターネットについて解説するためのガイドラインとして利用するのだ。この程度に噛み砕いて説明すればわかるのだなと。その基準として本書は最適である。

そしてもう一つは、企業のトップの視点、特に藤田田というオリジナリティ溢れた経営者が考えるITを知ることが出来る。ITで何が出来るか、というよりも、関連企業を知りたがる(=株式投資のためだろう)、自分が使えなくても、自らの店舗での儲ける手段として利用できないか常に考えている…一般のビジネスパーソンとは、まるで見ているところが違う。

本書の圧巻は、マクドナルドの店舗においてシンガポールのチャンギ空港のように、無線LANを利用して、お客がインターネットを利用できるようにしないかと、提案する高橋教授の話を受けて、藤田社長が自社のIT担当を呼ぶシーンである。良い話なのでぜひ社員に講義してやってください、と請うも、講義された社員が冷静に対応している。その応酬が手に汗を握る。理想論と現実がぶつかる瞬間で、かなり興味深い。

店頭で手にとって、そのシーン(189ページから始まる)を読んでみて欲しい。今からでもすぐパソコンが利用できますよ、と説く教授に、なるほどそれくらいカンタンに取得できるならいいなぁ、と言いながら、実はまったくやる気がない社長など、ツボは満載である。ってなんか息抜き本の紹介みたいですが…。実は奥が深い本である。貴方のIT関連の提案が受け入れられない理由、わかったりしますよ。

デジタルな経済-世の中の大変化小変化

【著者】伊藤元重【出版社】日本経済新聞社
【発刊年月】2001年02月23日【本体価格】2,500円【ページ数】365p
【ISBN】4-532-14903-7

この本の主たる分析対象は、IT産業ではありません。流通、金融、雇用、生産など、経済の主たる分野がこの本の対象となります。デジタル革命によってこうした経済の主流分野がどのように変化していくのか、その変化の論理(ロジック)を明らかにしようというのがこの本の主たる目的なのです。
本書 14ページ より

インターネット万能のメッキが剥げ、そのバブルが弾けたと喧伝されているが、本当のところはどうなんだろうか。最先端の技術や新しいビジネスモデルやセオリーを紹介した本はたくさん出版されているが、今までのビジネスとの関わりがあまりにも不明確で、絵空事の感があった。

本書は「ウォーキング・エコノミスト」を自認する筆者が、ITとそれを取り巻く様々な事象を、身近な例を丹念に引きながら、実にわかりやすく紹介している。現在のIT化の流れを「デジタル日本経済」と位置付け、今までのビジネス社会と乖離しない、シームレスな解説がなされている。これはありがたい。

まずここで言う「デジタル経済」とは、今までの「大量規格型製品を生産・流通するマス」の市場から、「一人ひとりの個人をパーソナルな存在としてとらえる」取引への変化が成り立つ経済のこととしている。そして、デジタル革命は、産業革命に匹敵する環境の変化であると説く。

ITしか出来ない企業や人の将来は厳しい。企業が持っていたいろいろなビジネスの機能が分割され、新しいビジネスが生まれる。と言ったビジネス環境の話から、ITの普及により女性が活躍する時代になるはず、と社会的な話まで、話題は興味深くそして幅広い。何よりたくさんの事例が取り上げられていることが、本書を理解しやすいものにしている。

ITにできないことをやる。だから価値がある。-腰帯にかかれた言葉である。このフレーズが本書の主張の根幹をなしている。IT以外のことをしなさい、と言ってるわけではない。ITには出来ないことを考えて、ITを活用して、それをカタチにする、というビジネスモデルを作ることが、これからは大切と、述べているのだ。

自分自身のビジネスには縁が無いため、今までのインターネット本にピンと来なかった人にも、この本はぜひ読んでおいて欲しい。インターネットに関わる様々な「身近」な「インターネット」の話題について、きちんと理解することが出来るはずだから。わかりやすい語り口の文章も二重丸。ぜひどうぞ。おすすめです。

bウェブ革命-ネットで「勝つ」5つの戦略

【著者】ドン・タブスコット デビッド・ティコル
アレックス・ローヴィー
【出版社】株式会社インプレスコミュニケーション
【発刊年月】2001年02月11日【本体価格】2,500円【ページ数】415p
【ISBN】4-8443-1467-X

だれでもマーケティングの4P、つまりプロダクト(商品)、プライス(価格)、プレース(場所)、プロモーション(宣伝)を知っているはずだ。4Pは、「企業が顧客に商品を売り込む」という、支配力に基づく単純な一方通行のパラダイムに支えられていた。(中略)bウェブは、こうしたすべての活動を一変させる。
本書 318ページ より

ITビジネスはドッグイヤーと言われ、注目すべき「キーワード」や「コンセプト」が目まぐるしく変化している。しかし、ビジネスそのものの変質というアクションは、大きな流れになっており、もはや揺るぎない。インターネット経済の本質を知り、成功を収めるためには、その潮流を見失わないことが必要だ。今回取り上げる本には、その流れが書かれている。ITビジネスに携わっている人はもちろん、あまり関係がない人にも刺激的な1冊だ。

まず、この本のキーワードとなっているbウェブについてカンタンに説明しておこう。本書ではまず、「工業化時代の企業が資本を具体的に形にしたものなら、bウェブは、デジタル資本を具体的な形にしたものである」とある。概念だけだと、かなり難しい。

要は、経済活動にかかわるソースは、それが例え消費者であれ、流通機構であれ、すべてネットワークにより繋がり互いに影響しあう、これからの普遍的なビジネスプラットフォームを、bウェブと呼ばせている。そして、そのプラットフォームの覇者になるための戦略が書かれているのだ。その記述は難しくもかなり興味深い。

また、bウェブで勝ち抜くために、本書では次の概念が提示されている。「広場」「アグリケーション」「バリューチェーン」「アライアンス」「流通ネットワーク」の5つだ。それぞれの概念は、それほど珍しいわけではない。既に行われているビジネスモデルに過ぎない場合も多い。しかし、bウェブというコンセプトからの再整理で、気づかされるポイントは多い。

例えば「広場」の紹介の項では、今やあらゆるものの価格に交渉の余地があるという立脚点から、インターネットが、売りたい人と買いたい人の広大な広場として機能し、そして、結果として、価格が引き下がるメカニズムを作り出すことを整理している。そして、その「広場」の設計方法と収益確保の戦略にまで、カンタンではあるが言及している。

それぞれに用意された豊富な事例、導き出されているセオリーは、一読に値するものが多く、インターネットビジネスにかかわらない人にも、目を通していただきたい。しかし、この本を読み通すには根気が必要である。理由は訳がこなれていないことにある。これは、インターネット上の言葉が、日本語として定着していないからだろう。それを補って余りある「刺激」がここにはある。

Eメールマーケティング

【著者】ジム・スターン、アンソニー・プライアー
【監訳者】三石玲子
【出版社】インプレス
【発刊年月】2000年10月11日【本体価格】2,000円【ページ数】397p
【ISBN】4-8443-1421-1

EメールはEコマースで成功する特効薬となる。なぜならそれは、手軽かつ安価。一方、演出次第では、つまりEメールに付加価値をつける手段をマスターすれば、顧客を獲得し、つなぎ止め、生涯の顧客にする最適かつ最強の手段になるからだ。これこそがEメールマーケティングの真骨頂。
監訳者あとがき より

電子メールの持つパワー、本誌の読者なら十分に感じていることだろう。電子メールを利用し始めると、それなしの生活やビジネスは成り立たないのでは、と思えるくらいに、自らの暮らしの中に浸透してしまう。先週に引き続いて今週も、その電子メールををマーケティング活動に利用するためのノウハウが詰まった本を紹介しよう。

本書のサブタイトルにこうある-顧客は価値ある情報を待っている-。読み手にとって必要な情報を送り届けることさえ出来れば、電子メールは最強のマーケティングツールに足りえるのだと。まあ、必要な情報を提供できればマーケティングツールとして機能する、ということは、他のメディアでも言えるんですが…。電子メールが他のメディアと異なるところは、そのダイレクト感だろう。

よりダイレクトに手元に情報を届けることが出来るということは、情報の受け手側にとって、受け取りを拒むことが難しいということでもある。したがって、ビジネスに利用する場合には、情報を受け取る相手の「同意」を得ること(=オプトイン)が大切なのだと述べている。ここが本書の肝だろう。まさに今流行の「パーミッション・マーケティング」である。オプトインへの理解をベースに、本書では、Eメールマーケティングについての、事細かなハウツーを解説してくれている。電子メールマーケティングに関する、現時点での決定版的な書籍であると言ってよいだろう。

顧客を囲い込むための手法、顧客にアプローチするための文章づくり、顧客の心理など、本書には、電子メールによるビジネスに関係のないヒトにも役に立つTipsが、実は満載である。当然、ツールとして電子メールを利用することを前提に書かれているが、最新マーケティングの基本を理解するためにも適した本である。

まったくの余談だが、本書を読むと企業や電子モールなどが送付してくる電子メールの(マーケティング的な)意味が理解できるようになる。電子メールがなくてはならないものになりつつある貴方は、ひょっとしたら、一読しておいたらよいかもしれない(笑)。とにかく、面白い一冊です。

Eメールマーケティング実践講座

【著者】喜山荘一 著
【出版社】インプレス
【発刊年月】2000年10月11日【本体価格】1,600円【ページ数】229p
【ISBN】4-8443-1422-X

2000年現在、Eメールマーケティングは(中略)あらゆるネット上のビジネスシーンに活躍の場を広げてきている。1.プロモーション 2.販売3.囲い込み 4.リサーチ 5.メーリングリストを使ったコミュニティ運営 6.企業発オプトインメール配信 7.メールオペレーション(中略)たかがEメール、されどEメールなのだ。
本文 13p より

インターネットの普及とともに、電子メールはビジネスに欠かせないツールになってきた。従来の電話に取って代わる連絡手段としての役割から、マーケティングやプロモーションのツールへと、その活躍の範囲を広げている電子メール。今週来週の二回にわたって、電子メールをマーケティング活動に利用するためのノウハウが詰まった、そして日々のメールのやりとりにも必ず使える書籍を紹介しよう。

今回取り上げる本書は、電子メールマーケティングの先駆けである、富士通株式会社「iMi」の事例を豊富に盛り込んだ実践的な一冊。電子メールマーケティング=聞くマーケティングと定義づけている。また、今流行りの「パーミッション・マーケティング」との違いを、生活者の意見を、さまざまなタイミング(顧客以前、顧客化、顧客以後)で吸い上げること(パーミッション・マーケティングは見込み顧客の顧客化の段階のみ)としている。なかなか興味深い。

例えば、プロモーションの項では、ターゲットに手紙を書くようにメールを書く、という視点から、「はじめまして。株式会社○○と申します」「え?会社(株式会社○○)はしゃべらないですよ。担当者のお名前でいきましょうよ」というやり取りがまず紹介されている。そして、電子メールによるプロモーションは、広告を情報に変換する「インフォマーシャル」が有効であると結論。1パーソナル感、2限定感、3リアル感、4ギフト感、四つの要素をフィルターとすると、広告は情報化するとしている。さらに、実際に情報化がなされた広告(電子メール)を提示している。実に丁寧な構成である。

 本書の特徴として、1.事例が大変具体的であること。2.プランニングプロセスがある程度明確にされていること。3.一定のトピックスごとにまとめが用意されていること。があげられる。この特徴が、本書を無類のわかりやすい本に仕上げているといって良いだろう。電子メールをプロモーションツールに利用するためのヒントが満載である。実践講座という表題にふさわしい一冊である。自らのビジネスに使えないかと、考えている人にとって、必読の1冊だ。ぜひ一読していただきたい。

IT2001なにが問題か

【監修】林紘一郎・牧野二郎・村井純
【出版社】岩波書店
【発刊年月】2000年09月25日【本体価格】2,400円【ページ数】475p
【ISBN】4-00-009849-7

この情報社会とよばれる一つの時代の切り口を、そのありのままの断層を見ていただければ幸いである。その断層の中から、次の時代を創造するための光の束をぜひつかんでいただきたい。
本文 はじめに より

このメールマガジンの読者にマーケティング調査をしても、属性が偏りすぎて、意味をなさない場合がある。何故か。すべての人たちがインターネットの利用者であるからだ。そんな社会はまだ無い。しかし、今の勢いだと、そう遠くない将来に、そういう社会が実現されるのではないか、それほど、インターネットを取り巻く潮流は、大きなものになっている。しかし、インターネットについて、皆さんはどのくらい知っていますか?

 本書は、インターネットが起こしている大きなうねりである「IT革命」のさなかの、ありのままの姿を、ざっくりと理解できるように編まれている。インターネットのインフラや制度的な問題、現場で起こっているさまざまな課題、教育、経済、メディア、市民活動、といった視点からみた、インターネットの活用事例と問題点、可能性を、多数の論客が極めてわかりやすく論じている。実際のインターネット利用者であっても整理できていないインターネットの今を、この本を読むことで大づかみにすることが出来る。

 それぞれのコラムは、レベルの差はあれども、興味深い。例えば、 「日本にデジタルデバイドは存在するか?」の項では、日本にはアメリカ型のデジタルデバイド(=持つものと持たざるものの格差)は存在しないと。代わりに、デジタルデバイスが生活に存在しなかった世代、デジタルデバイスをなんだかの形で受け入れざるおえなかった世代、すでに生活環境の中にデジタルデバイスがある世代、それぞれに葛藤が生じていると述べている。それぞれの意識格差、なぜデジタルデバイスを受け入れないのかという心のメカニズム、さらには、子供たちへのデジタルデバイスの与え方について、など、話は広がっていく。

 このように、従来の「インターネット解説本」には無い「総花的視点」は実にありがたい。おそらくは、個別に専門的に述べられていただろう、さまざまな分野での、インターネットについての議論が、掻い摘んでここで読むことが出来る。当然のことながら、関連のホームページ、必要な情報源、キーワードの解説など、コラムの理解への補助も万全である。インターネットの積極的な利用者として、一度全体像を、きちんと把握しておきたい、という人にお勧めの一冊なのだ。ただし、所詮「紙の本」である。生の情報は先に進んでいるということを、忘れないという前提であるが…。

パーミション・マーケティング

【著者】セス・ゴーディン
【出版社】翔泳社
【発刊年月】1999年11月15日【本体価格】2,000円【ページ数】285p
【ISBN】4-88135-805-7

パーミション・マーケティングはデートに似ている。見知らぬ人をともだちに、ともだちを生涯の顧客に変えていく。デートで忘れてはならないルールがそのまま当てはまるし、同時に、そのベネフィットもまた当てはまるのである。
本文 まえがき より

モノやサービスに対して対価を払わせることは、至難の技である。正確に言うと、きちんと予測をして、それを行うことは難しい。モノやサービスがあふれている今、何に対してヒトは財布を開くのか…。優れたマーケティング・プランナーでも、その答えを導き出せないでいる。最早ベストセラーで、紹介の余地がないかもしれない本書は、その問題を「ともだち・マーケティング」で解消せよと説く。

従来のような、マス・メディアを利用して、大量にまるで網をかけるかのごとく顧客を獲得するのではなく(=この従来型手法を「土足・マーケティングと本書では呼んでいる)、顧客ターゲットの興味を引くような「きっかけ」を小さく提示し、何度も繰り返し「ささやく」ことで、心を開かせて、顧客を獲得すると言うのだ。パーミション・マーケティング、実に古典的な手法ではあるが、今までは、この手法、うまく行えなかった。

その理由は、顧客ターゲットに対して、メッセージをダイレクトに、そして、属性に合わせて提供するメディアがなかったからだ。手法としては効果的なのはわかっていても、手段がなかった。しかし、インターネットの登場で、状況は一変する。顧客ターゲットのパーソナルな情報を吸い上げることも、ある一定のレベルまでは簡単になったし、その属性に合わせて情報提供することも容易になった。(ある意味で)古い手法を、新しい技術が、完全なものとして実現させたと言える。

知る限り、最近、この手法を取り入れようとしている企業は多い。即効性を期待する流通業などでも、いわば「手間のかかる」「ともだち作り」を行おうとしている。それだけ注目すべき理論なのだ。

顧客ターゲットを「ともだち」にしていくためのプロセスや、ウェブ・マーケティングを効果的に行うための留意点、ケーススタディと、内容も盛りだくさん。出版されてからしばらくたつが、内容は古びてはいない。ある意味、普遍的なセオリーである「パーミション・マーケティング」に触れておいて、損はない。

ネット資本主義の企業戦略

【著者】フィリップ・エバンス/トーマス・S・ウースター
【出版社】ダイヤモンド社
【発刊年月】1999年11月11日 【本体価格】2,400円 【ページ数】 355P
【ISBN】4-478-37287-X

戦略再考の指針
1)現時点では業界でリードする存在であっても、今の事業定義が二~三年後にも有効だと仮定することはできない。2)デコンストラクションの波に襲われる可能性が最も高いのは、既存企業にとっても最もダメージが大きく、また既存企業がそのダメージを認めたがらない部分にほかならない。3)デコンストラクションが経済的に成立しうるのを誰かが証明してくれるのを待っていては、おそらくライバルが欲しがっている最大の競争優位つまり「時間」を譲り渡してしまう結果になる。(以下略)
本文「今、何をやるべきか」より

ご存知の通り、百科事典のブリタニカは、エンカルタに代表されるCD-ROM百科事典の出現によって、その絶対的地位を奪われ、インターネット上でソースを無料で提供するという事態に追いこまれてしまった。本書ではまず、ここに含まれた失敗が、インターネットビジネスにおける、全ての本質を包含しているとし、「ブリタニカの失敗」を、不吉な前例としてあげている。

進化しつづける情報技術、その能力を活用することによって、ビジネスや産業の定義、さらには競争優位はどう変わっていくのか。つまり本書によるところの「情報に関しての新しい経済原理」を理解し、戦略を立案していないと、最も安定的と考えられていた産業や、確立済みのビジネスモデル、最強のブランドでさえも、粉々に砕け散ってしまう可能性を、「ブリタニカの失敗」は、示唆していることを本書では解説している。

そして、その危機を乗り越えるための「希望」とは、持続的な価値を持つ新しい「何か」を築くことであるとしている。さらに「何か」を構築するための様々なアプローチも、詳細にかかれている。「リッチネス」「リーチ」や「デコンストラクション」「ディスインターミディエーション」などと言った、インターネットビジネスに係わるために知っておきたいキーワードも、様々なセオリーとともに満載されている。

インターネット社会においては、ここに書かれている先端の理論ですら、既に過去のものかもしれない。しかし、単純化した公式による近道を設定しなかった分、本書の視座視点は、色あせることはない。ぜひ読んでおきたい一冊である。

イノベーションのジレンマ

【著者】クレイトン・クリステンセン【出版社】翔泳社
【発刊年月】00年01月31日 【本体価格】2,000円 【ページ数】 291P
【ISBN】4-88135-839-1

本書でとりあげるのは、業界をリードしていた企業が、ある種の市場や技術の変化に直面したとき、その地位を守ることに失敗した話である。単なる企業の失敗談ではなく、優良企業の話である。多くの経営者が尊敬して手本にしようとし、革新能力と実行力で知られているような企業である。
同書 序章 より

最近評判の本である。通常この手の本は、事例を詳細に分析し、さまざまな道しるべを示す。しかし、往々にして事例が古くなってしまい、本として手に取るタイミングを逸すると、陳腐化することが多い。本書は、そんな劣化(米国では97年出版)を感じさせない、凄まじい破壊力がある。

先に本書序章より引用した文章が、この本のすべてだ。内容紹介としては過不足はない。つまり、どれだけ優れた戦略をもって企業運営を行ってきても、否、行ったからこそ、企業がその地位を追われてしまうことがある。ということを、詳細に実証研究しているのだ。努力しても、努力したからこそ、駄目になってしまう。なんて恐ろしい話なのだろうか。

ここでは、努力と言う平易な言葉で書いたが、掻い摘んで言うと、努力は2種類の技術としてまとめられている。まずは-持続的技術-これは、ある製品の性能を向上させる技術をまとめて、こう呼んでいる。もうひとつは-破壊的技術-これは、既存の製品の性能を向上させるものとは違って、同等の製品(むしろ性能的には劣る場合が多い)を、別のアプローチで作ってしまう技術のことだ。

破壊的技術から生まれた商品は、大抵が、低品質だか低価格で、持続的技術を持って生まれた製品からは、歯牙もかけれらないコトが多い。しかし、高品質を求める市場とは、全く違う市場が生まれた時(正しくは破壊的技術が新しい市場を生み出す場合が多い)に、持続的技術では、対応できなくなり、取り残されてしまう。顧客のニーズに合わせて、技術を高めていくという、企業戦略的には誤りは見えないと言うのに。それだけで、新市場を見出すことはできないのだ。今の栄華は永遠ではない、と言うことに尽きるだろう。これ以外にも、興味深い話が満載だ。

この本の魅力は短い紙数では語ることは難しい。ヤヤ難しい目の内容だが、まずは手に取ることを強くお勧めする。買って損なし。

ネットビジネス戦略入門

【著者】パトリシア・シーボルト【出版社】翔泳社
【発刊年月】99年07月21日 【本体価格】2,200円 【ページ数】 485P
【ISBN】4-88135-768-9

成功するための重要な八つの原則

・適切な顧客を狙う
・顧客の振舞いを総合的に把握する
・顧客に影響を与える業務プロセスを合理化する
・顧客との関係を広い視野で捉える
・顧客に主導権を与える
・顧客の業務を支援する
・個別化したサービスを提供する
・コミュニティーを育てる
同書 96p より

サブタイトルに「すべてのビジネスは顧客志向型になる」とあるこの本は、インターネットで成功する企業と、失敗する企業では、いったいどこが違っていたのかということを、アメリカの有力コンサルタントが、詳細に分析したものである。インターネットネットビジネスの現状を大まかに理解し、成功のコツとツボを知るためには、最適の一冊といって良い。

この本では、アマゾンコム・アメリカン航空などの、インターネットビジネスにおけるケーススタディが、紹介されている。読み進めると、その例から導き出された、上記の八つの原則は、ネットビジネスのみならず、あらゆるビジネスシーンで通用する原則である、と言うことがわかる。IT業界の本だが、それ以外のビジネス(むしろ、こちらのほうが読後に受ける影響は大きいかもしれない)にも十分に役に立つだろう。

これらの重要な原則は、当たり前のことと思われるような内容ばかり。この本の筆者も、単純な原則なので平凡に写る、と述べている。しかし、一つ一つをみれば当たり前のこの原則が、実践できている企業はひどく少ないコトに気がつく。すべてを実践するためには、越えなくてはいけないハードルは多い。同書には、なぜ実践するのが難しいかという問題点と、その解決策が、豊富な事例をベースに具体的に提示されている。

他の関連本と違う、ビジネスの本質をクリアにしたこの本は、多少のことでは陳腐化しないように思われる、骨のある本だ。しかしながら、どうせ読むなら、急がれたほうが良い。さあ、書店へ。

インターネット社会の幻想

【著者】牧野武文 【出版社】アルク 【発刊年月】1999年01月30日
【本体価格】880円 【ページ数】 207P 【ISBN】4-87234-995-4

インターネットでビジネスチャンス、インターネットは無法地帯-。まことしやかに巷に流れる賛歌や苦言は果たして本当なのか。人類史上まれに見る発明品、インターネットにまつわる<正しい使い道>を解き明かす。
同書 表紙 より

読み・書き・算盤シリーズ最終回。算盤=商売人の必須ツール=現代ではコンピュータやインターネット。それを使いこなすことは、ビジネスマンのリテラシーであることは、疑いようがない。しかし、使えるということと、使いこなすということは、実は違う。使うためにはスキルを身につければ良いが、使いこなすにはポリシーを持つ必要がある。しっかりと活用するためには、コンピュータやインターネットに対する考え方を、客観的にそして明確にするコトが大切なのだ。

書店に出向いてみても、使うための書籍は多いのだが、使いこなすためのセオリーが記されたものは少ない。今回は、インターネットを客観視するための貴重な一冊を。

この本の素晴らしさは、インターネットの有益だと思われていた部分を、かなり明快に否定し、インターネットの持ついかがわしさを、裏づけを持って安心させるところにある。

例えば、電子メールでは仕事にならないことを紹介する。ビジネストレンドである、電子メールでの打ち合わせを、真っ向から否定するのだ。納期が遅れそうだ、と連絡、まずいといわれ、二日ほど欲しいと願い、では半分だけでも先に送れ、という内容を、電話なら1分程度で済むのに、電子メールなら、最低4度はやり取りが必要になる、非効率だ、と切って捨てる。なるほど、その通りである。電子メールは、その良さが十分にあるが、それだけを盲信していてはいけないのだ。すべてを礼賛するわけではなく、問題点をベースにして使いこなすことで、より実戦的なインターネット利用が可能になることは、容易に想像できる。

その他にも、モバイル、SOHO、インターネット通販など、インターネットの実際を、ニュートラルな立脚点で記している。今年初めに書かれた本で、既に若干古くなっている部分もある。しかし、インターネットとは何だ、その価値をクリアにしておきたい、そんな人にはピッタリの本である。一読をお勧めする。

デジタル社会論

【著者】武田徹 【出版社】共同通信社 【発刊年月】1999年11月9日
【本体価格】1700円 【ページ数】 269P 【ISBN】4-7641-0435-0

デジタル化の動きを伝える情報は確かに増えている。新聞記事がそれに触れる機会は当然のごとく多くなってきているし、関連業界の潤いが広告出稿力の増加に繋がってきていることもあって専門雑誌の類も数多く創刊されている。

だが、僕はそうした趨勢を長めながら、隔靴掻痒の思いを抱いてきた。今、デジタル化を遂げつつある社会で本当に何が起きているのか。それが分かるようで分からない。豊富な情報量が報じられているようで、核心の部分に手が届いていない、もどかしい感じがするのだ。
同書 P6から引用

冒頭の引用にもあるように、最近のデジタル化のスピードは信じられない程急速に進んでいる。そして、この波を捕らようとして、私達の生活やビジネスの変化をテーマとした雑誌や書籍が数多く創刊されている。しかし、そんな状況において、逆にふと不安になることはないだろうか。今起きているのは一体どんなことなのだろうか、と。

さて、今週紹介する『デジタル社会論』は、このようなデジタル化の波の中、私達の周りに起きていることは、いったい何なのか、というテーマに鋭く切り込んだ1冊だ。取り上げる主題は幅広い。「恋愛の未来系」「広告ビジネスとネット社会」 「デジタル宗教」「電子本」「表現の自由」そして「パソコン教育」。そんな様々な切り口から、「今、現在起きていること」を切り取ろうとする筆者の姿勢は、デジタル化という流れの中で起きている事を垣間見せてくれる。

『日経ゼロワン』に寄稿されたルポタージュ「デジタル・ラプソディー -今、デジタル社会で起きていること」の1998年8月号から99年10月号までをまとめたこの1冊。記されている内容の多くが、随分昔に起きた出来事のように感じることにこの世界のあまりに急速な変化を実感する。しかし、この速度は、私達の周りで、いや私達に起きている現実そのものなのだ。

これからも、今まで以上にデジタル化は急速に進んでいくことだろう。そして私達の生活や、ビジネスのあり方を根本的に変革していくことだろう。だから、今起きている事はなんなのだろうか、という問いを、私達はよくよく考える必要があるのではないか。どういう時代に生きているのかを認識しておくことは、これからのキャリアを考える時、重要なことだと思うからだ。