「査定!」論。

【著者】梅森浩一【発行】PHP研究所
【発行年月】2004年03月31日 【本体価格】1,300円
【ページ数】221p 【ISBN】4-569-63519-9

日本の経営者は、自分たちが平社員の時にどういう視線で物事を、なによりも「上司」を見ていたのかということを、いま一度思い起こすべきでしょう

本書 P97 より抜粋

「1人の給料が上がれば、その分、必ず、誰かの給料が下がるシステム」。この「人の失敗を喜ぶような成果主義」を日本企業に適用してまかり通るのか、という疑問に『「クビ!」論』で話題を呼んだ著者が、外資で鍛え上げられたプロの人事担当者の立場から「査定制度」について書いた本である。

近年「成果主義」と叫ばれ、さまざまな業種の会社が導入を試みている。だが、話題になるのは成功例よりむしろ、失敗例の方が多いのではないだろうか。社員の実力により業績評価をするというシンプルなものであるのに、ここ日本ではどうしてうまくいかないのだろう。

「終身雇用」「年功序列制度」に慣れ親しんできた日本の労働者。だが、時代は変わり、恒常的に利益を生み出せない状況や、自分の業績に見合わない評価に、我慢できなくなってきた若い人材からの押し上げも重なり、経営者は「成果主義」を意識せざるを得なくなった。

そこで日本の企業の多くが、外資系の見よう見真似で導入してみたものの、結局はうまくいかない。理由はいろいろあるが、一つは「フェア」でないところのようだ。例えば「年功序列制度」を残したまま「成果主義」を導入しても、全く機能するはずがない、と著者は看破する。

査定システムで最も重要なのは、「何のために査定するのか」「査定結果がいったい何に結びつくのか」という点が、明確であることなのだという。本来、真っ先になくすべき「年功序列制度」が残っている以上、誰も本気になれないだろうと。

確かに、せっかくできた査定結果も「はじめに結果ありき」ではそもそもうまくいくわけがない。つまり、「成果主義」と「年功序列制度」は両立しないことがわかる。この年功序列の廃止は、年齢や入社年次、性差別や国籍などを含めた「一切の差別を認めない」ことを意味するのだ。

また、著者は日本の「終身雇用制度」についても見解を述べている。「守るべきは終身雇用、なくすべきは年功序列」として「公正な実力主義に基づく終身雇用制度」のあり方も述べている。

このように、本書には「ゼロサム・ゲーム」のような、間違った見解のまま「成果主義」を導入する企業に疑問を投げかけ、「人の幸せをも喜べるような成果主義」とはどういうものなのか、について様々な角度から意見を述べている。優秀な社員を失う前に、ぜひ読んでおきたい一冊だ。

稼ぐチームのレシピ

【著者】キャメル・ヤマモト【発行】日本経済新聞社
【発行年月】2004年01月13日 【本体価格】1,400円
【ページ数】316p 【ISBN】4-532-31116-0

素材を生かした絶品料理をつくるには秘伝の「レシピ」が必要なように、レシピ次第で、人材は生きたり死んだりする。

本書 見返し より抜粋

会社という組織には目標やビジョン、ミッションがあり、それに向けて活動をしている。そして、会社の中には実に多くのチームが存在する。課や部は当然ながら1つのチームであるし、タスクフォースやプロジェクトチームも同様だ。

チーム内にはいろんなタイプのスタッフがいる。スタッフにはそれぞれの価値観や仕事観がある。個人においてそうであるように、チーム単位においてもそれぞれの慣習や文化がある。だから、社内で他のチームと意見が合わなかったり、仕事に対する意識でぶつかることがあっても当然のことなのだ。

実は、チームには色んなタイプがあるようだ。あなたが働いている職場は、本書で紹介するいずれかのチームに近いはず。または、いずれかになり損ねているのではないだろうか。摩擦を引き起こす他のチームは別のタイプのチームに近いはずだ。

本書で紹介するチームタイプは大きく分けて4つ。何よりも“和”を大切にする「仲間チーム」、仕組みと規律を重視する「軍隊チーム」、専門性の高い人材が集まる「開発チーム」、創造性と意外性で勝負する「アメーバチーム」があるのだという。

「じゃあ、どのチームがいちばん稼ぐわけ?」というと、それは適材適所であり、どれも理想的なチームなのだそうだ。タイトルに「レシピ」とついているが、人材を集めてつくるチームは食材を集めてつくる料理と似ている、ということのようだ。

高級食材だけで料理がおいしくなるとは限らないように、「稼ぐ人」だけを集めたチームが「稼ぐチーム」になるとは限らない。他方、ありふれた食材でも組み合わせや味付けを変えればおいしい料理ができる。「安い人」中心でも目的に合わせた仕組みや動機づけを行えば良いチームができると。

本書では、理想的なチーム作りに役立つ工夫を、4つのタイプ別に詳しく解説している。異なるタイプのチーム同士が、お互いをどう評価しているか、ということも深く読み込めばわかってくるので面白いし、お互いの意見調整などにもきっと役立つことだろう。

他にも、タイプ別チーム内におけるリーダーの役割、採用や人材の育て方など、“おすすめレシピ”が満載だ。4つのチームタイプと、チームを動かす人材起用をマスターする「秘伝ツール」は、稼ぐ理想的なチームづくりの福音の書になるはずだ。

リーダーは、ピーターパンの心を持って!

【著者】アレッサンドロ・ケーロ【発行】ダイヤモンド社
【発行年月】2004年01月29日 【本体価格】1,400円
【ページ数】131p 【ISBN】4-478-72024-X

個人のリーダーシップは、その人の権力や、職業上の地位、社内や社会での地位、他人よりも抜きんでる能力にあるのではなく夢見る力や、その夢を信じ、夢を実行に移す力にある。

本書 P18 より抜粋

我々にとって「ピーターパン」はディズニーのアニメでお馴染みだ。大人になることを憂うウエンディの手を取って、子供がいつまでも子供でいられるという国、ネバーランドへと旅立つピーターパンの冒険。多くの人々の心をつかんだ物語である。

そのピーターパンがいまの時代に実在したとしたら、どんな仕事に就いていただろうか。また、実業家や企業の一員であったなら、同僚や部下に対してどんな発想を持ち込んだか、というのが本書誕生のきっかけだ。

しかし本書には、おとぎ話のピーターパンは登場しない。会社を経営しながらも、役員に経営の権利を譲ることにし、自分はボランティア活動のためにアフリカへと旅立ってしまう、冒険心旺盛な「ピーター」と呼ばれる男が主人公。

この主人公ピーターを、現代社会のリーダーの象徴と位置づけて、上司や部下の本心から慕われるリーダーの心構えを紹介しているのだ。また、各章には、論文、挿話、小説、詩などが随所で引用され、メリハリの効いた構成で読みやすい。

各章で綴られるリーダーの心構え、つまりピーターのエピソードは実に面白い。各エピソードを読み終えると、一旦読み進めるのを休止し自分の立場に置き換えて考えさせられてしまうくらいだ。

ロマンティックで空想家、不可能な物語を描くのが好きなピーターの活動計画の立て方はこうだ。本文中では、ある教授がアメリカの有力企業の管理者たちを前に、<有効な時間のプランニング>と題し、講義をする話。

教授は大きなガラス容器を出し、大きな石ころを容器いっぱいに詰めた。しかし教授は「これではいっぱいではない」と。次に砂利を容器の中に流し込む。そして次に砂を同様に流し込む。講義の中で行われた実験はこれだけだが、ここから重要なことが学びとれる。

自分の人生において、いちばん大きな石は何なのか。健康、家族、友達…。自分という容器の中に一番大事なものを最初に入れないと、貴重な時間を充実させることはできない、ということなのだ。砂、つまり自分にとって些細な事を優先させると、容器はいっぱいにならないのだから。

これはリーダーにおける時間の使い方の一部だが、もはや本書は管理職向けというよりも、誰もが学んで欲しい内容である。ページ数も少なく読みやすい構成なので、ぜひ手にとってほしい一冊だ。

脱コンピテンシーのリーダーシップ

【著者】デイブ・ウルリッチ/ジャック・ゼンガー/ノームスモールウッド
【発行】ダイヤモンド社 【発行年月】2003年10月09日
【本体価格】2,400円 【ページ数】297p 【ISBN】4-478-37442-2

称賛されるリーダーとは、どのように行動するかを学ぶだけでなく確実に成果を上げるように行動をとる、ということだ。

本書 P5 より抜粋

書店に並ぶリーダーシップに関する書籍は、感動的なストーリーを語ったものや、リーダーが成功に対する信念を描いたものなどさまざまだ。しかしそれらの共通点は、リーダーに必要な「望ましい特性リスト」で締めくくっているというところ。そして、それらの書籍はある重要な要素を軽視している。

効果的なリーダーシップとは何か。本書では、これを「特性×成果」と表現している。注目すべき点は、2つの要素が足し算ではなく掛け算となっていることだ。つまり特性、成果のいずれかの点数が低い場合はリーダーシップの有効性は低くなるということだ。

本書はリーダーシップの「成果」について厳しいまでに固執している。読み進めていくと確かに「成果を出すために…を行う」といった表現が多いことからも頷ける。望ましい成果とは何か、どのように望ましい成果は定義され測定されるのかをかみ砕き、具体的に提示している。

リーダーが「望ましい成果に集中している」かどうか、という評価には基準があるという。「バランス・戦略的・継続・無私」の点だ。これらの基準により、望ましい成果をどの程度達成できるかが決まるというのだ。

「バランス」に関して本書では、社員の成果(人的資本)、組織の成果(学習、イノベーション)、顧客の成果(ターゲット顧客を楽しませる)、投資家の成果(キャッシュフロー)という、さらにつの分野に焦点を当てている。リーダーはこのつの分野に成果をバランスさせなければいけないと。

例えば、リーダーがつの成果(分野)に対して合計で100ポイントの注意とエネルギーを配分するとしたら、60ポイント以上のものと10ポイント以下のものはつくってはいけないという。これが実際に偏っている場合、つの成果を、まずバランスさせることから始めなければいけないのだと。

なるほど、この作業を行えば次にとるべき行動と達成すべき成果が明確になる。顧客第一主義で一時の成功をもたらした企業でも、社員に対する成果を怠れば、優秀な社員はその企業に定着しない、といった具合か。つの成果を均等に目指していくことが、チームや企業の成功に帰因するのだろう。

このように本書では、リーダーにとっていかに「成果」が重要なものか、また適切な特性を、どう成果に結びつけるかを、かなり丁寧に解説している。本書には、成果重視の新しいリーダーになるための提言がギッシリ詰まっているのだ。全く新しい発想、かつ理論的で実践可能な内容構成。オススメ。

会社を変える社員はどこにいるか

【著者】川上真史【発行】ダイヤモンド社
【発行年月】2003年08月28日【本体価格】1,500円
【ページ数】202p【ISBN】4-478-44046-8

企業がダメだから、人事制度がヘンだからなどと企業側にだけ責任を求めていては、何も進まない。今こそ企業も個人も変化を起こすべきときである。

本書 P198 より抜粋

最近、仕事の成果に従って評価される「成果主義」が浸透してきた。終身雇用が終焉を迎え「ウチの会社もそろそろ…」という流れが至るところに…というところだろうか。実はその成果主義を誤ったカタチで導入し、人材不況に陥る最悪のパターンを迎えてしまう会社が多いのだという。

成果主義を導入する目的は、個々の社員がセルフマネジメント的な動きを起こすようになり、競争力を持つ人材を生み出すことだ。そのためには「動機づけ」が必要となるという。また、高いパフォーマンスをあげる人材から辞めていくことがないように、継続的な動機づけも求められる。

本書では、「コンピテンシー」を人材不況脱出のための大きなキーワードとしている。一般的には「能力」と訳されるが、それでは少し視点が違う。個人の能力を見る場合、ほとんどの人は「優秀かどうか」という視点で見ているのではないだろうか。しかし、優秀かどうかは関係ないというのだ。

個人の持っている能力が成果につながるかどうか──がコンピテンシーの視点なのだという。なるほど、個人の知識や思考力、動機などの側面が充実していても、継続的に成果を出せなければ、競争力を持った人材とは言い難いということなのだろう。

著者は、能力をもっているのにも関わらず、成果が出ないのは、セルフマネジメントができていないからだと主張する。自分自身がどのような成果を生み出せるのかを証明できないと、誰も自分を選んでくれないのだから。

コンピテンシーのレベルは5段階に分かれていると本書にはある。この5段階が市場価値、投資価値を決める。価値を持ち、投資に値すると考えられる人材は、レベル4以上の力を発揮できるのだとか。例えば、レベル4以上は「状況変容行動」ができ、レベル3以下は「状況従属行動」しかできない。

ごく一般的な日本企業のビジネスパーソンを、5段階レベルで日頃の行動を見てみると、約9割以上がレベル2程度だという。これは、当たり前のことしかできないレベルだ。

世界的に求められている人材が、自らビジネスを創り出せる人であるこの状況で、これでは、世界を敵に回して「勝ち目がない」のは明白だろう。

本書には、世界的に競争力をもった人材を育てるためのノウハウがギッシリ詰まっている。キャリア創造、コーチング、部下の動機づけなど、本質的な会社のあり方から、具体的な人材育成法まで、これまで我々が抱いていたビジネスの常識を覆す。人材づくりに迷ったら、ぜひ読んでいただきたい。

これが答えだ!─部下の潜在力を引き出す12の質問─

【著者】カートコフマン&ゲイブリエル・ゴンザレス=モリーナ
【発行】日本経済新聞社
【発行年月】2003年07月25日【本体価格】1,800円
【ページ数】347p【ISBN】4-532-31062-8

最も熱意のある集団は、もっとも生産的だ。残りの集団は平凡か、凡庸、または紛れもなく破壊的である。

本書 P108 より抜粋

指導者が最近よく問われる「組織があっての人か、人があっての組織か」に対し、意見はしばしば分かれる。企業内で、社員が何の興味も適性もない知識を植え付けるために、研修に送り込まれる。そこで社員は劣っている点を強化するよう指示される。しかし、これは賢い時間の使い方ではない。

スポーツに例えるとわかり易い。野球チームで1番から9番まで長距離打者を並べても、チームとして機能しないことは明白だ。だから与えられた打順の役割を各選手に強要する。しかし、無差別に求めるスキルを身につけさせようとする、組織の指導法ではもはや成果を上げられない。

「最も強力で、活気があり、生産性が高く、利益をもたらす職場」と、そうでない職場にどのような環境の違いがあるのか…。

本書では、世界規模のネットワークをもつギャラップ社の調査により、その答えを発見し全貌を紹介する。まず、ギャラップ社は世界の66カ国で、何百万人もの社員に次の質問をした。「あなたは毎日職場でもっとも得意な仕事をする機会を与えられていますか」と。

その結果「与えられている」と答えたのは5人に1人だったという。つまり一企業の中で80%の社員が得意とする分野の仕事を与えられていないということだ。しかし、優れた企業は、社員の才能、得手不得手を調べ上げて、人材を適所に配置させているというのだ。この差はなんなのか?

ギャラップ社が行った調査により、生産性の高い組織を作るための2つの結論が導き出された。まず、全ての仕事の成果に影響を与える12の条件が確認されたこと。第二に、12の条件を満たす責任と、実際に実行出来るのは各職場のマネージャーと、一人ひとりの社員であることがわかったという。

意外な条件もあった。「職場の中に親友がいること」だというのだ。これまで企業は社員同士が仲良くなり、無駄な時間を過ごすのを奨励しなかった。しかし、これは大きな利益を生み出すというのだ。職場に親友がいることで社員の仕事に対する熱意は驚くほど上昇する“証拠”を挙げている。

50年以上にわたって、ギャラップ社は、顧客や社員に、仕事、職場、購買や消費に関わる決定について幅広く質問を行ってきた。主要な業界すべてに取材し、世界的な規模で調査を実施してきた膨大なデータが「答え」を裏付けている。データから見えた真実とは…一読することをお勧めしたい。

あなたのチームは、機能してますか

【著者】パトリック・レンシオーニ【発行】翔泳社
【発行年月】2003年06月17日【本体価格】1,600円
【ページ数】243p【ISBN】4-7981-0368-3

信頼のないチームのメンバーは…
互いに自分の弱みや間違いを隠す。
助けを求めたり、建設的な意見を出したりすることをためらう。
自分の担当外の仕事を手伝うことをためらう。

本書 215P より抜粋

多くの企業において、クオリティの高いチーム作りはなかなか実現しにくいものだ。組織が質の高いチームワークの実現に失敗するのは、危険な5つの落とし穴に気付かないうちに陥ってしまうからであるという。この落とし穴を、本書では「5つの機能不全」と呼んでいる。

本書は、この「5つの機能不全」がもたらす影響、チームワークの機能を回復するプロセスやノウハウを単に羅列するわけではなく、“フィクション”という形でストーリー化し、読者をグイグイ引き込んでいく構成に仕上げている。

舞台はシリコンバレーの新興ハイテク企業。そこへ今や伝統的な産業と言える自動車業界から女性CEOがやってくる。それまで一見波風も立てず、“質の高い個人の集合体”という概念でやってきた経営陣は、この新任CEOによって一気に混乱させられる。そう、この企業はチームとして全く機能していなかったのだ。

機能不全とは、「信頼の欠如、衝突への恐怖、責任感の不足、説明責任の回避、結果への無責任」の5つ。ここでは、この5つの中で最も土台となり基本的で重要な要素、「信頼」とはどんなものかを紹介する。

チームワークは信頼を築くことから始まる。信頼とは「チームのメンバーが互いに理解しあい、心を開けること。互いに遠慮せずに、非難を恐れず、自分の間違いや弱み、不安を認めること」なのだという。信頼を築くには、個人が「完全無欠でありたいという気持ちを克服すること」なのだと。

例えば、社内会議において、自分が最も正しいと思い続けている限り、メンバーの意見も耳に入らないし、議論も活発に起こらない。表面上の「信頼」ではなく、人としてメンバーの強みと弱みを共有することで、相手を理解できる。話し合いは、まずそこからなのだという。

本書で紹介する5つの機能不全は、全く異なる問題で個別に対処できるかのように誤解されるかも知れない。だが実際には、これらは相互に関係しており、1つでも脆い部分があれば、チームの成功は絶望的になる可能性もあるのだという。

これまでのチームとしての慣行を覆すことは容易ではないだろう。しかし、それから脱しない限り、新しいパワーを生み出すことは困難であるし、会社は変われない。本書を一読し、リーダーとして、メンバーとして、機能することから始めてみることをお勧めする。

リーダーが困ったときに読む本

【著者】ロス・ジェイ 【発行】ディスカバー21
【発行年月】2003年03月10日 【本体価格】1,400円
【ページ数】221p 【ISBN】4-88759-246-9

・部下のうちの誰かをリストラしなくてはならない
・優秀な部下が辞めたいと言い出した
・部下が仕事のストレスで苦しんでいる
本書 腰帯 より抜粋

組織における「リーダー」と呼ばれる人に求められる資質は、「問題解決能力」だといわれている。日頃から携わっている仕事においては、経験則で対処できることが多い。しかし、全く直面したことのない、社内でのトラブルもリーダーは想定し、準備をしておく必要がある。

本当に困った状況というのは、その問題が今まで経験したこともなく、マニュアルにも載っていない場合であるという。「部下にリストラを言い渡す」や「上司から仕事の失敗をなすりつけられる」「自分より年長者の上司になる」などが、それにあたるだろう。

無論、自分が経験したことのない問題でも、他の誰かが経験していることがあるはずだ。つまり、誰かが答えを知っているというわけ。本書には100件ものトラブル解決法が載っている。リアルな状況を想定しているので、そのままマニュアル本として活用できるだろう。

例えば、こんなケースがある。「本当は能力不足の部下が、自分ではかなり仕事ができると思い込んでいる」という、上司にとっては面倒な事態。「多少のミスはあったが、きちんとこなした」と息巻いている部下に対して、あなたならどのように接してあげられるだろうか。

あなたはイライラするかもしれないが、部下がどう思っているかは問題ではないと、著者は看破する。対処すべき点は、部下の能力不足ということに尽きる。つまり、能力不足を自覚させることではなく、本人の思っているような「有能さ」を発揮してもらうことに、上司は注力すべきなのだという。

有能や無能というレベルの不毛な議論ではなく、ひたすら部下の仕事振りに焦点をあてる。部下が同意するような目標と基準を明確に設定し、必要あらば文書化に。さらに、目標未達成とみなす基準も決めておくことで、本人が認めざるを得ないように、準備も万全にしておけばいいのだという。

なるほど、期限に間に合い、ミスのない仕事でなければ、目標を達成したことにならないのだと、最初にはっきりと説明しておくことで、自分の能力不足を誤魔化したり、強弁する余地を与えないで済むだろう。実際にその点がなくなれば、本人の能力上昇も期待出来る。

このように、本書には「部下に対して」困ったとき、さらに上司に対して、同僚に対して、顧客に対してなど、リアルなトラブル解決法がギッシリ詰まっている。本書を自分のデスクや、鞄の中に忍ばせておけば役に立つ時が必ずやってくるに違いない。オススメの一冊だ。

もしもウサギにコーチがいたら

【著者】伊藤守【発行】大和書房
【発行年月】2002年5月10日【本体価格】1,200円
【ページ数】213p【ISBN】4-479-76121-7

反省なんてさせない。ウサギには、次に何をやるかを聞く。アドバイスはしない。ウサギは自分で考え、自分で行動して欲しい。「知らない」ことを知らない。ウサギは何が問題かがわからない。
本書 腰帯 より抜粋

イソップ物語の「ウサギとカメ」の話を思い出して欲しい。ウサギは俊足という素晴らしい才能を持ちながらも、最終的にはカメとの競走に負けてしまう。ウサギの慢心が勝負の分かれ目になったと。

そう、我々はこの寓話から「油断大敵」を教訓として受け取っている。誰もが記憶している物語だ。カメは努力家で、ウサギは才能に埋もれて努力しないから…。しかし、ウサギの人生はそこで終わってはいない。まだ始まったばかりなのだ、と著者は言う。

あれ以来、カメと再び競走していないじゃないかと。本書は、そのウサギに貼られた悲しいレッテルに立ち向かう。今度はウサギにコーチをつけて。

なるほど、この話は、会社における上司と部下との関係に適用できる。上司をコーチ、優秀な部下をウサギと位置付け、ウサギはどんな性質をもっているか、コーチはウサギをいかに理解していくか、に迫っていくことで、よりよいコーチングができるといのが本書の狙いだと考える。

例えば、ウサギの耳は長いが、話の全てを聞いているわけではないという。聞きたいことを、聞きたいようにしか聞かない。音に反応しているように見えるが、実は最初から聞きたい音があるという。興味の範囲でスクリーニング(選別)し、自分の都合で聞いているわけだ。何ともわがままな…。

ウサギは耳で聞いているのではなく。脳で聞いている。だから聞いていても理解できない。それは「リセプター(知識の蓄積)」がない証拠なのだという。それがわかった時点で、リセプターのある領域の話をするか、意図的に創っていくことが賢明なのだと主張する。

さらに「最近、どう?」という質問をされると、ウサギは「イエス」か「ノー」でしか答えられない。質問自体に創造性がないからだ。「仕事を楽しむために、具体的にどんなことをしている?」これだとウサギは喜ぶし答えは無限だ。自由に連想させることが重要なのだと言う。

せっかく良い才能をもっている部下を、トップダウンの命令形式で仕事をさせていたら、才能を眠らせたままにしてしまう。それは部下にとって、上司にとって、何より会社にとって不幸であることは間違いない。多様な価値観をもつ若手社員と上手に付き合っていくためにコーチングの知識は必須だ。

本書は、このようなコーチングの手法を「視点を変える53の方法」として段階を踏みながら網羅している。部下とうまく付き合えない人にはかなりオススメの一冊、面白い!

モチベーション・マネジメント

【著者】小笹芳央【発行】PHP研究所
【発行年月】2002年12月16日【本体価格】1,300円
【ページ数】167p【ISBN】4-569-62442-1

同じ仕事を部下に与えるにしても、「石を積み上げてほしい」というより、「要塞を作るために、石を積み上げてほしい」というほうが、部下のモチベーションが高まることは言うまでもない。
本文 53p より抜粋

社会全体の働く意欲が低下している…この不景気で失業率も高い時代になにをバカな!という感じだろうか。しかしながら、ビジネスの現場にいる管理職なら、すでに肌で感じ取っているだろう、部下の仕事に対するモチベーションが、押しなべて低下してきていることを。

最強の組織を創り出す、戦略的「やる気」の高め方-というサブタイトルの付いた本書は、文字通り、あなたの部下とチームが、今すぐに活性化するための実践的なノウハウが、たくさん詰まった一冊である。そう、もはやモチベーションは、戦略的に高めなくてはならないのだ!

まず「深刻化するモチベーションクライシス」と題して、社会環境の変化などに伴って生じた、企業と個人との関係について、わかりやすく解説している。なるほど、どうしてモチベーションが低下してしまったのか、この項を読むことで、そのアウトラインがつかめる。

次に「最強の組織はモチベーションマネージャーが創る」とし、組織内での人の繋がり、その重要性を説く。モチベーションを高める管理職になるためには「影響力」と「信頼性」を持つことが大事と、キーワードに「こわい」「すごい」「すてき」「ありがたい」をあげるなど、なかなかユニークだ。

さらに「モチベーション・マネジメントの実践」の項では、ゴールセッティング効果、ラダー効果、リンク効果など、実践的で、それこそ、即効果を発揮しそうなノウハウが、20種類提供される。役割の認識や、成功へ導くための視座視点が、ギッシリ詰まっているのである。

文字通り、管理職、もしくは管理職になろうとしている人たちには、必読の書であることは言うまでもない。しかし、それ以外の、例えば、社会人1年生がこの本を読んでも、間違いなく役に立つだろう。それは、将来、マネージャーになったときに?いやいや、きっと今すぐに役に立つ。

目標を明確にする技術、意思決定の重要性、マイルストーンの立て方など…もうお解かりだろう。上司が部下に「モチベーションアップ」させるために指導するノウハウは、すなわち、自分自身の「仕事の改善」に役立つことは言うまでもない。

巻末には筆者の会社である(株)リンクアンドモチベーションで、モチベーション・マネジメントの実験として取り組んでいる事例が紹介されている。これもなかなかユニークで、一読の価値があるだろう。あらゆるビジネスパーソンに、オススメの一冊である。

コミュニティ・オブ・プラクティス

【著者】エティエンヌ・ウェンガー/リチャード・マクダーモット/ウィリアム・M・スナイダー
【監修】野村恭彦【解説】野中郁次郎【訳者】櫻井祐子
【発行】翔泳社
【発行年月】2002年12月17日【本体価格】2,800円
【ページ数】398p【ISBN】4-7981-0343-8

コミュニティ・オブ・プラクティス(実践コミュニティ)とは、あるテーマに関する関心や問題、熱意などを共有し、その分野の知識や技能を、持続的な相互交流を通じて深めていく人々の集団のことである。
本書見返しより抜粋

嫌な言葉だが「粛々」と仕事をこなしていくために適切である「従来型」の組織では「新しい」なにかが作り出せない…そんな声をよく耳にする。「ナレッジ社会の新たな知識形態の実践」と題した本書は、従来型の組織を超えた「知識を核にした社会的枠組み」からの改革を、提案している。

コミュニティ・オブ・プラクティスとは何か。その定義を一読すると、要は今流行の「組織横断型プロジェクト」と、変わりないような気がする。そして、多くのビジネスパーソンは、その類のプロジェクトは、成功を収めているケースが少ないことを知っているはずだ。それとはどう違うのだろう。

成功しない組織横断型プロジェクトの多くは「その運営方法がわからない」ままに、「指揮命令系統を超えることなく」推進されることが多く、結局参加しているメンバーも、今までの業務に「1つ厄介ごとが増えた」程度にしか認識していないことに、問題がある場合が多い。

まず、本書は「実践コミュニティ」は「どこにでもある」と述べる。太古の昔、焚き火を囲い、狩りを効率よく行うために、鏃の形を工夫する話し合いがなされた(たぶんその通りだろう)それと同じであると。そこは、知識を体系化し、使えるものにするために、有益な場所になるのだと。

詳細を書くほどの紙数はないので割愛するが、企業はこの「知識を生み出す集団」を、積極的にそして体系的に「育成する」必要があると、本書は論じている。企業は自身への求心力の変化(帰属意識と言い換えても良いかもしれない)と、コミュニティを認知し、ビジネス成果につなげるビジョンを持つべきだというのだ。

さらに、実践コミュニティの持つ意味、構成する要素、そして、運営の方法と、問題点などを、具体的な例とともに、きわめて精緻に論じている。この一冊を読めば、組織横断型プロジェクトの「真の有効性」が理解できることは、間違いないだろう。

面白い一冊ではあるが、ボリュームが多く、読むのに骨が折れる。しかも、同じコトを繰り返し述べている部分が多く(=だからわかりやすいという解釈も出来るのだが…)スルスルっとは読めない。しかし、苦労して読み終えた後、あなたのワークスタイルは変わる・・・かもしれない。
オススメ!

ロストプロセス・ジェネレーション

【編著者】サントリー不易流行研究所
【発行】神戸新聞総合出版センター
【発行年月】2002年12月21日【本体価格】1,500円
【ページ数】269p【ISBN】4-343-00196-2

希望すれば努力しなくても、手に入ると思っている位の気軽さで、「司法試験を受けるつもり」という若者には驚かされた。彼らと話していると根拠のない自信を感じることが多い。まだ、何もやっていないけれどやれば当然できるはずという自信がどこからくるのかはなぞのままである。
本書239pより抜粋

この本は「今どきの若者がわからない」「子供を理解したい」と、不安を抱く大人たちに向けて、昭和50年代生まれの若者たちの「マインド」について、詳細な取材を行い、浮き彫りにしたものである。一見すると、このメールマガジンの読者にとっては、関係がないようにも思えるが…。

この世代が育った家庭環境から、本書は始まる。「ちょっといい家族」と名づけられたその環境は、お父さんの存在が希薄で、家族が友達みたいで、子供たちのコントロールが効かなくて、でも、それでもやっぱり「我が家はいい家族だと思いますよ」と、いうような場所のことである。

さらに、携帯電話などのコミュニケーションツールの発達によって生じた、人間関係や恋愛の変化、さらには、都合の良い場所である「家族」を背景にした「自分探し」の名を借りた「就業感」まで、幅広く論じている。具体的な事例が豊富に紹介され、読んでいて臨場感がある。

タイトルの「ロストプロセス・ジェネレーション」とは、生まれたときからすべてがそろっているという「豊かさ」と、高度に発達した「情報化」社会の中で、何かを得るための「プロセス」を、この世代は失ってしまっているのでは…と、本書は示している。言われてみれば、そうかもしれない。

さて、冒頭の「関係ないのでは…」という、投げかけに戻る。

昭和50年代生まれの若者たちは、実はもう既に社会に出ている。あなたの後輩にも(もしかしたらあなた自身がそうかもしれない)きっといることだろう。そんな彼らの「マインド」が「わからない」と思ったことはないだろうか…。

この「ロストプロセス・ジェネレーション」を理解し、コントロールしていくことは、企業内で管理職になるものにとって、必須事項になるだろう。なぜなら、それは「親業的」なものなハズだが、実際の親は、すでにその役割を担えなくなっているからだ。

この本を読めば、新しい時代の管理職が持つべき視点が、わかる。

あらゆる意味で、大変な時代に突入していることを、改めて整理するためにも、本書を一読することをお勧めする。手に入りにくいかもしれないが、大型書店やネット書店を丹念に探せば、あるだろう。

優秀なオタク社員の上手な使い方

【著者】ジョン・M・イワンセビッチ/トーマス・N・デューニング
【訳者】村井裕美【発行所】ダイヤモンド社
【発行年月】2002年11月28日【本体価格】1,700円
【ページ数】238p【ISBN】4-478-36055-3

プログラマー、SE、WEBデザイナーなどのIT技術者に限らず、現代のすべての技術者は、デジタル世代のハイテク労働者であり、既存の会社理論とは異なったカルチャーを持つ。これまでの「古典的」人事管理はもはや通用しない。
本書 見返し裏 より抜粋

形振りはかまっていないと一目でわかるスタイル、独特の「身内」用語を連発し周囲を排除してしまう、そんなちょっと「個性的」な人を、我々は「オタク」と呼ぶ。彼らは、強いモチベーションを保ちながら、興味のある分野に強い関心を寄せる。そんな彼らが仕事に就く…。

そう、そんな時代がやってきたのだ。パソコンが各家庭に普及し、学生の頃から慣れ親しんだ若者が、実社会に進出してきた。そんな「オタク的」な彼らのことを、本書では「アインシュタイン」と呼ぶ。かの有名な物理学者の名を借りて、彼らの特徴と、その接する方法について掘り下げていく。

彼らは「豊かな技術的知識と知的好奇心を持ち、クールに働き、自発的行為にこだわる」特徴を有すると、本書にはある。端から見れば静かに淡々と仕事をこなしているとしか思えないが、彼らの実力は測り知れないものだ。まさに、アインシュタインという名がふさわしい、素晴らしい人材なのだと。

そんな彼らを育て、会社の利益を上げるための、管理職に与えられた役割はズバリ「彼らを応援すること!」だという。彼らの知識に追いつき、技術を磨こうとしても、それは無駄な努力。上司としての権威が無くなってしまうのだ。彼らが上司に求めるものは、働きやすい環境を整えてくれること。

仕事をしていく上で、難解な課題を解くこと、それがアインシュタインのモチベーションである。ゲームと同じスタイルと推測される。管理者としては難題を彼らに解かせればよいだけの話。それが会社の利益につながるのだから。そのゲームをストレスなくクリアさせるには、どうすればよいのか?

本書では「アインシュタイン」の管理方法を、上司の立場から、心理学的、科学的観点からアプローチし、多くの実践例を上げて解説する。彼らのモチベーションを高める方法、転職させない方法、アインシュタインのチームを作る、維持する方法など、実にリアルに、詳しく伝授していく。

「なぜ部下に対してそこまでしなければいけないのか!」と、疑問に思ったりもするだろう。しかし、本書を読み終えればきっとわかる。人にはそれぞれ役割があり、経験豊富な智恵と力で、部下の力を引き出すことで、会社の成功を導き出すことは、とても大切なことなのだと。

CDケースを思わせるサイズと装丁。そして、大切なことは繰り返される平易な文章。しかし、スラスラと読めるわけではない。なぜなら、いちいちかみ締めながら、うなづきながら読んでしまうからだ。そして、アインシュタインは、決して珍しいものではないことに気づく。そう、目の前にもいる。

コーチングから生まれた熱いビジネスチームをつくる4つのタイプ

【著者】鈴木善幸【発行所】ディスカバー21
【発行年月】2002年09月10日
【本体価格】1,300円【ページ数】173p【ISBN】4-88759-214-0

Controller 人をも場をも支配しようとするコントローラータイプ
Analyzer  冷静沈着慎重派のアナライザータイプ
Promoter  注目こそがやる気の源プロモータータイプ
Supporter  合意と承認が何より大事サポータータイプ
本書腰帯より抜粋

最初に、筆者が上手に導入してくれる。人と付き合いづらいことがある、ある人とは上手くいったのに、同じ方法論で別の人と接するとダメだ…なぜなんだろうと。「価値観が違うからだ!」という決まり文句に行き着くけれども、じゃあ「価値観」がなんなのかは、わからなかったんだと。

本書で紹介するCSI(Communication Style Inventory)による4つのタイプを知ることによって、価値観の違いから生じる「ストレス」から解放されたのだと、筆者は書いている。人付き合いの難しさを解消してくれる、そのタイプとは、いったいなんなんだろう?

コントローラー、プロモーター、サポーター、アナライザーという4つのタイプ分けが紹介される。各タイプごとに「同じことを言っても、受け止め方はそれぞれ異なる」のだという。つまり、4つのタイプの特徴を知り、ものの言い方を変えていく、それがコミュニケーションのツボだったのだ。

例えば、上司がプロモーターで、部下がアナライザーの場合。プロモーターの特徴は、「自分のアイディアを大切にし、活気のあることを好み、エネルギッシュで楽しさこそ人生で、飽きっぽい」。アナライザーの特徴は、「計画的、客観的でミスを嫌い、感情をあまり表に出さない」という。

プロモーターの上司はよく「最近どう?」と突然聞く傾向がある。アナライザーの部下は正しく答えたいので、「何がですか?」と聞いてしまう。プロモーターにとって「どう?」は単なる挨拶でそこに意味はない。上司はもう少し質問の幅を狭くしてあげると、うまくコミュニケートできるという。

タイプを診断できる簡易テストも用意されていて、自身がどのタイプなのかを理解してから本を読みすすめると、面白さは倍増する(その分、自身の失敗や、気づいていなかったコミュニケーションミスがわかってしまって、一瞬オロオロしてしまうのだが…)。

とても面白い一冊である。それは、読み進めていくと、数多くの人の顔が思い浮かぶからだろう。「ああ、あの人に言ったあの一言は、彼には逆効果だったんだなぁ」「そういえば、彼女とはシックリコミュニケーションが取れないと思ったら、なるほど!」と、しみじみ実感することになるのだ。

本書は、約3時間の研修を実施するという想定で書かれてある。したがって短時間で読むことが出来、さらに、平易な文章が、その理解を十分に助けてくれている。少しでも、対人関係に悩んでいるとしたならば、まずはこの本を読んでみるとよい。目からウロコが落ちるのは、間違いないだろう。

静かなリーダーシップ

【著者】ジョセフ・L・バダラッコ【監修】高木晴夫【解説】渡邊有貴
【訳者】夏里尚子【出版社】翔泳社
【発刊年月】2002年09月06日
【本体価格】2,200円【ページ数】232p【ISBN】4-7981-0261-X

困難で重要な人間の問題のほとんどは、社内、社外を問わずトップのだれかによる速やかで決定的な方策によって解決するわけではない。重要なのは、脚光とはほど遠い人々が行う、慎重で思慮深く実践的な小さな努力である。すなわち、世界を動かして変革するのは、静かなリーダーなのだ。
本書 見返し より抜粋

日本の経済が悪化していく中で、世間は、熱い思いをもった坂本竜馬のようなリーダーが出てくることがカンフル剤となると信じて止まない。しかし、本書によると、それはどうも違うらしい。アンチ・ヒーロー型のリーダーシップが、今ひそかに注目されているというのだ。

本書では、「静かなリーダーシップ」とは、どういう性質なのか、また、どういう要素をもっていなければいけないのか、仕事で起こる問題に、どう対処すべきなのかを、著者が、4年間かけて研究した実例をあげて、詳しく説明している。

静かなリーダーとは、「忍耐強く、慎重で、段階を経て行動でき、犠牲を出さずに、自分の組織、周りの人々、自分自身にとって正しいと思われることを、目立たずに実践している」という。「ヒーロー型リーダー」が、我が身を顧みずに周囲を助けるというそれとは、実に対照的であるらしい。

例として、あるミッションを与えられた時、時間を費やすという行為は、自分のそれまでの経験のなさを露呈し、一見頼り無さそうにも見受けられれるが、そうではないとしている。混乱した今の世の中では、将来を予想することはとても難しく、即決は、それだけでリスクを背負うことになるという。

そこで「静かなリーダー」は感情的にはならず、何とか決断を遅らせ、周りの人間の知識や技術を取り入れることで、最善の策が見え始めるというのである。そう、費やすのではなく「稼ぐ」のである。まさに、即断即決がウリの、今までのリーダーとは、全く異なるイメージなのだ。

読み進めるうちに、不思議な感覚に襲われる。今まで素晴らしいとされていた「引っ張る」タイプのリーダーよりも、静かなリーダーの方が、良いのではと、思えてしまう。

混沌とした現在のビジネス社会だからこそ、日常生活やビジネスの意志決定を、慎重で、正確さを期し、みんなで幸せになれる環境や状況をつくり出してくれるだろう、静かなリーダーを、時代は求めているような気がする。

ネガティブな部下とどうつきあえばいいのか!

【著者】ゲーリー・S・トプチック【訳者】有賀裕子
【出版社】ダイヤモンド社【発刊年月】2002年02月28日
【本体価格】1,400円【ページ数】257p【ISBN】4-478-71048-1

<独裁者>の思うツボにはまってはいけない。こうした相手には、横暴な言動によっていかに業務を停滞させているか、あるいはまわりの者がどれほど気分を害しているかを諭し、正しいコミュニケーションの仕方を教える必要がある。こちらも強い態度に出ることだ。
本文 43p より 抜粋

仕事を一生懸命していてもバラ色の時代ではない今、前向きに頑張ろう!と思いつつも、どうしても「ネガティブ」な心持ちになってしまいがちだ。しかし、ネガティブはウィルスのように伝染するらしく、放置していると職場中に蔓延してしまう厄介なものらしい。

本書は、誰もがいつ襲われるかわからない恐怖のウィルス「ネガティブ」に対する様々な処方箋を用意している。ネガティブを治療することによって、明るく生産的な職場を作り出し、自分自身、同僚、そして顧客までもハッピーに、そして業績をアップする「好循環」を作り出そうというのだ。

まず最初に、個人やチームといった小さい単位でのマイナス思考に言及している。ネガティブ思考な人を14タイプに分類、それぞれを分析している。独裁者・完璧主義者・変化嫌い・つむじ曲がり・スピーカーなどと名づけられたそれぞれのタイプに、自分や周囲を当てはめると、かなり面白い。

次にネガティブ思考を克服するための簡単なヒントが30用意される。まだそれほど深刻ではないネガティブ思考に効果があるそうで、まずはネガティブの原因を見つけ出す、というところから、証拠写真を撮る、ムチ打ちの罰を与えるなどの興味深い(?)モノまで用意されている。

さらに本書は、会社全体などの「大きな組織単位」でのマイナス思考を撃退するための処方箋を用意する。組織全体がマイナス思考に陥る原因を「ある変化」「能力と裁量のアンバランス」「望ましくない組織のきまり」にあるとし、それらを改善するノウハウを提供している。

それぞれのノウハウが、ケーススタディにそって紹介されているので、非常に理解しやすい。読みすすめるうちに、自分自身に、また、同僚に、思い当たるケースがあり、思わず膝を打ってしまうことも。

アメリカでの例なので、日本の実際とは多少そぐわない場合もあるが、それは簡単にアレンジすることで対応できそうだ。とにかく「ネガティブ」が職場にもたらすマイナスを認識し、それに対処するためのノウハウ獲得に最適の一冊であることは間違いなさそうだ。

タイトルどおり「ネガティブな部下」を持つ上司は、職場にウィルスが蔓延しないうちに、すぐにでも手に取ることをお勧めする。また、自分自身がネガティブな思考をしがちなあなたも、一読すべきだろう。自分が感染源にならないためにも…。

なぜあなたのチームは力を出しきれないのか

【著者】パトリック・レンシオーニ【訳者】仁平和夫
【出版社】日経BP社
【発刊年月】2002年03月18日【本体価格】1,400円
【ページ数】202p【ISBN】4-8222-4268-4

現実をみると、ほとんどのリーダーは、組織をかしこくすることに時間とエ ネルギーの大半を費やし、組織をすこやかにすることにはあまり熱がこもっ ていない。ビジネス・スクールやビジネス誌が何を重視しているかを考えれ ば、無理もないことである。しかし、組織が健全であることの、しなやかで 強い特性を考えると、これは残念なことである。
本文 8pより 抜粋

自身がマネジメントを任されているチームは、最高のパフォーマンスを発揮している、と胸を張って言える管理職など、ほとんどいないだろう。なぜ自分のチームは力を出し切れていないのか、その疑問に答え、解決策を提示してくれるのが本書である。

同じ時期に、同業種の会社を設立した、自分とほぼ同等の能力を持つ(むしろ自分の方が勝っている)同級生が経営するライバル社は、すこぶる評判が良い。業績そのものに違いはないが、それ以外の部分は勝ち目がない。自分は相手の会社が気になるが、相手は自分の会社に関心すら示していない。

一方的にライバルと目されていた相手にも悩みはあった。忙しすぎたのだ。自らの時間を取ることが出来ず、会社を売却しようかとも考えたが、生きがいでもある会社、踏ん切りがつかなかった。そして、ほんとうに会社にためになることを1つだけやるとすれば、それは何か? それだけを考えた。

考えに考え抜いて黄色いリーガルペーパーに記したのはたった4つの指針。その指針に則って行動するようになり、会社は急速に素晴らしいものになっていく。そのイエロー・リストにはなにが書かれているのか。秘密にしていたわけではないが、本当に知る人はごく限られていた。謎めくリスト…。

そう、本書は読み物仕立てになっている。葛藤するライバル会社、よき組織を作った会社に現れる異分子、そしてその馴染まなかったものが取った次の行動、小説のようにワクワクする文章ではないけれど、これはこれでかなり面白い。先が気になりページを慌ただしくめくってしまう。

ネタバラしをすると、イエロー・リストに掲載されていたのは、次の4つの事柄だった。○経営チームの結束を強める。○組織の透明度を高める。○決まった事を周知徹底する。○人事で組織の透明度を支える。そう、リーダーが第一にするべき仕事とは、組織を健全にすること、それだけなのだ。

これはカンタンなようでいて、なかなか難しい。組織を健全化することは、組織のトップをおいて他には出来ないことである。が、小さな組織のトップ(=中間管理職)は、大きな組織の一員であり、すべてが自分で決められるわけではないからである。しかし、タメにならないということ、ではない。

組織を健全化するためのノウハウが、本書にはたくさん盛り込まれている。リーダーたるもの、可能な限りその命題に取り組んでみるべきだろう。不完全ながらも「強い」チームが出来上がった時、あなたはマネージャーとして次のステップを踏み出しているはずだから。管理職は必読です。

やればできるじゃないか、君。

【著者】大山弘子/瀬田かのこ【出版社】アスペクト
【発刊年月】2002年02月26日【本体価格】1,300円
【ページ数】197p【ISBN】4-7572-0916-9

──部下を笑わせるというのは、部下との人間関係をうまくやっていくうえ で、上司が身につけなければならないスキルだと思います。
──笑いがスキル、ですか?
──上司はタレントでなければならないんです。会社は楽しくなければダメ ですからね。景気悪いし、不安ばかりですから。
本文 194pより 抜粋

サブタイトルに「ダメ部下を大化けさせる64の秘訣」とある。また、腰帯には「ビジネスコーチングの基本から裏技まで徹底解説!」とある。なるほど内容的にはその通りではある。しかしこの本、そんな理屈は一切抜きにして、相当に面白い、お勧め二重丸の一冊なのだ。

ダメな部下について、中間管理職が専門家に相談する、というスタイルを取っている。また、さまざまな相談を、ほめる・さとす・ながす・てつだう・おもんぱかる、の5つの対処法に分けて、紹介している。それぞれにわりと細かく、その効果的な接し方を解説している。

また、回答を寄せる専門家は、心理学者やビジネス・コンサルタントなど5名。それぞれが、深層心理学的には、組織改革的には、人事戦略的にはと、さまざまな観点からアドバイスを行う。解決に向けての視点が1つではないことが実に有効であることが、本書を読めばわかる。

ダメ部下のダメっぷりもかなり笑える。クレームの電話が鳴らないように電話線そのものを抜いて居眠りする部下、お色気巨乳が自慢の部下、無断欠勤した理由を拉致監禁されていたと日焼けした顔でいう部下、メールでむかつく文章しか書けない部下…と、まさに、笑いの殿堂である。

それに対して、回答をする専門家の意見もかなりユニークだ。お色気巨乳部下の相談に対しては、自分はその上司がうらやましいから何もしない、とわけのわからないと言い、拉致監禁されていた部下には、自分もこの間アマゾンに行って…と同じスケールで嘘を言え、と推奨したりする。

当然まともな回答もある(というかむしろこちらの方が多いのだが)。部下が期待通りの動きをしないときの対処法が、実に明快に示されている。例えば、仕事について与えられた役割を明確にしてやること、本人の適性に配慮すること、自分の指導方針も疑ってみることなど、参考になることは多い。

正直に言おう。本書が本当に役に立つのかどうか、書評担当者の私にも太鼓判を押す自信は、ない。しかし「面白い」本であることは、間違いない。とんでもない部下を抱えて悩んでいる、という中間管理職には、必読の一冊だろう。世の中もっと凄いのがいる…と慰められるかもしれない(笑)。

誰でもわかる重職心得箇条

【著者】佐藤一斎【解説】中村安宏【出版社】平凡社
【発刊年月】2001年12月26日【本体価格】525円
【ページ数】61p【ISBN】4-582-61003-X

重職たるもの、勤向繁多と云う口上は恥ずべき事なり。仮令世話敷とも、世話敷と云わぬが能きなり。随分手のすき、心に有余あるに非れば、大事に心付かぬもの也。重職小事を自らし、諸役に任使する事能わざる故に、諸役自然ともたれる所ありて、重職事多になる勢あり(第八条)。
本書 44p より抜粋

著者・佐藤一斎は1772年生まれ。江戸後期の儒学研究者である。見返しの著者紹介によると、ゲーテなどと同時代の思想家であり、その思想は儒学をベースにしつつもモダンで実践的なものだったという。門下生に、渡辺崋山、佐久間象山、横井小楠がいるそうだ。

あるエピソードが本書をメジャーにした。わが国の迷える外務大臣が、吼える総理大臣より「読みなさい」と渡された(本書そのものではないと思われるが)とされており、永田町発の話題の書とされている。その内容とは、管理職に対してマネジメントの真髄を説く小冊子である。

本書に書かれている管理職の心得はたった17。見返しに「人を使う立場の人間の心得が、わずか十七条で書き尽くされている。これ以上のものは必要なし。」とされている。新書版に大きな活字で組んでたった10ページ。しかし読むとわかる、本書は実に素晴らしい。その一部をここで紹介しよう。

第二条・自分の好みでない部下こそ尊重して使う。第四条・前例や規則にとらわれてわいけない。第八条・忙しいといってはならない。第十条・目先のことにとらわれてはならない。第十三条・部下同士の調和に心を配れ。第十六条・公開すべき情報は公開せよ。読めば気づくことがある。今と同じだ!

冒頭で引用した第八条、管理職は忙しいと言ってはならない。忙しいと大事なことを見落としがちだ。忙しいのは部下にきちんと仕事を任せていない証拠で、仕事を任せてもらえない部下は一層仕事をしなくなり、管理職はますます忙しくなるよ、と戒めている。このような「当たり前だけれども(何故か)出来ていないことで、やるべきこと」が、本書には記されている。

今から二百年以上も前の学者の言葉が、今のビジネス社会に最も欠けているものだと、読めば読むほど気がつかされる。その言葉たちが色あせないのに驚かされるばかりか、二百年前も今も、管理職というものに求められるものは「同じ」なんだなぁと、妙な感心もしてしまうこと請け合いである。

本書、は原文とは別にわかりやすい「現代語訳」が掲載されている。サイズも手ごろ、ボリュームもちょうど良く、通勤の電車の中でも手軽に紐解ける一冊である。繰り返し何度も読んで、自分のものとされることを強くお勧めする。管理職のあなたにとっては、間違いなく座右の一冊になるだろう。

スモールビジネスマネジメント

【著者】デブラ・クーンツ・トラベルソ【訳者】阪本啓一
【出版社】翔泳社
【発刊年月】2001年03月15日【本体価格】1,600円【ページ数】421p
【ISBN】4-88135-867-7

次にいくステップとして、見栄えのする住所にオフィスの引越しをするか、メールボックス(訳注:私書箱。アメリカの大きな会社は持っている)を借りてみるとよい。そんなことをしては不誠実でうそつきになるのだろうか。いや、スマートなイメージ創りは、何より重要なのである。
本書 14p より抜粋

昨今、企業トップが社員に望む資質として「経営者的視点を持つこと」をあげるケースが増えてきた。しかし、少し考えてみればわかるが、それを身に付けることはとても難しい。そもそも、経営者的視点とは何なのか、漠然としすぎている。なにをどう身に付ければ良いのだろう。本日はそのヒントを少しだけ。

今回取上げる「スモールビジネスマネジメント」は、大企業なんかに負けないための超実践的ガイドブックと銘打たれた、スモール・ビジネス経営者のためのハウツー本である。賢明な読者諸氏はもうお分かりになっただろう。そう、小さな会社の経営者に必要なものを学ぶことで、経営者的視点について考えてみよう、というアプローチである。

インターネットが普及し、アイデア(とそれを実行する行動力)さえあればビックボーイ(=大企業)と互角に渡り合える時代にはなった。しかし、現実的には、小さい企業への世間の視線はまだまだ厳しく、顧客の信用を勝ち取るために、また、ビックなイメージを作り上げるために、スモール・ビジネスの経営者たちは、並々ならぬ苦労をしているようだ。

その苦労を解消するためのノウハウが、本書には詰まっている。例えば、社のイメージを向上させるためには「完璧な住所と社名」を選ぶことだとし、また、ゆるやかなアライアンスを組むことで「従業員を雇うことなく大きいというイメージを作る」としている。その努力は涙ぐましくもあり、また、かなり面白い読み物でもある。

さらに、電話の利用法やレターの活用術など、ルーティンワークを磨きこむことによって、会社としてのイメージ(=大企業なみの信用)を得るノウハウも提示している。小さな企業の経営者は、数字(=アカウント)以外に、企業そのものの実態を作り上げるために、小さな努力を積み重ねているのである。これは、経営者的視点以外の何物でもない。

ここまででお分かりかと思うが、これらのテクニックは、すべてのビジネスパーソンに応用できる。例えば、新規の得意先を開拓するために、そこからの信用を得るためのテクニックが、「スモールビジネスマネジメント」の中に詰まっているのだった。なーんだ!という感じだろうか? しかし、この視点が大切であることを、実は忘れてはいませんか? まずはご一読を。

強い組織をつくるための 小さなヒント

【著者】ドミニク・グロシュー【訳者】片桐克博
【出版社】KKベストセラーズ
【発刊年月】2001年04月10日【本体価格】1,100円【ページ数】173p
【ISBN】4-584-18601-4

85. もし、あなたがいつも夜遅くまで仕事をしているのなら、どうしてそんなに帰るのが遅くなるのか、理由を3つ考えましょう。86. そして、その問題の解決方法を考えて、すぐに帰りましょう。
本書 156のヒントより 抜粋

最近のビジネス書のトレンドとしてあげておきたいキーワードのひとつとして「チーム」があるだろう。組織をいかに上手く動かして、ビジネスとして成功に導くのか、そこに存在するメンバーとリーダーの役割を、コンパクトにまとめた本書を、今回は紹介したい。

あなたは、新しく編成されたプロジェクト・チームのリーダーで、チームを成功に導く義務をおっている。また、任された部下たちが思うようなパフォーマンスを見せないことに、苛立ちを感じています。そんなあなたに、必ずや有益なヒントを与えます。…本書の使い方というページには、そうある。そしてその通り、ハウツーではなく「きっかけ」が集められている。

冒頭にも抜粋したようなヒントが156用意されている。著者の国フランスでは、このような箴言集はよく出版されて読まれているらしい。なるほど、どれも短い文章ではあるが、そのささやかな言葉の中に、心に響くメッセージが用意されている。そのメッセージにはすべて「自らの組織がよりよい方向に活性化するために」どうすればよいかという視点が盛り込まれている。

まずにこやかに微笑みましょう、といった、ビジネス生活習慣的な要素も多数あるが、それらは、組織が強くなっていくために、リーダーやメンバーがしなくてはいけない「他人とかかわるための行動規範」のようなものになっている。それを個人主義の徹底したフランス人が書いている、ところも考えればなかなか面白いのだが…。

本書は、部下に自分の気持ちを伝えることを苦手としている若いリーダーに特にお勧めしておきたい。「部下が自分の思い通りに動いてくれなくて」ビジネスの現場で、リーダーから頻繁に耳にする泣き言である。しかし、部下に良く話を聞いてみると、上司の言っていることが理解できない、と嘆いているケースは多い。そう、あなたの言葉、ちゃんと伝わっていないことが、チームをスムーズに運営できない原因になっていることは多いのだ。

本書に用意された言葉は、不必要なことを削り、伝えたいことだけをエッセンス化したものである。しかも、直接的な物言いではなく、伝えた相手に「気づかせる余地」をも残している。まずはよく読んで、自分にリーダーとしてなにが不足していたか、確認するのも良いだろう。必読です。

部下を愛しますか?それとも失いますか?

【著者】ビバリー・カイエ&ジョーダン=エバンス
【訳者】大川修二【出版社】産業編集センター
【発刊年月】2001年02月20日【本体価格】1,500円【ページ数】359p
【ISBN】4-916199-25-1

推測は危険。「尋ねる」ことで部下の真意を理解しよう。

-あなたにとってスターというべき従業員を満足させ、会社にとどまってもらうにはどうすればよいか。その答えを推測するのは、やめるべきだ。(中略)いつ、どこで、どのような形で尋ねるかは大した問題ではない。とにかく尋ねること……それが肝心なのだ。
本書 27p より

このメールマガジンの読者の中で、部下をお持ちの方も多いだろう。あなたは部下にとって、よりよい上司であると胸を張って言うことができますか。自信のない上司であるあなたにお勧めしておきたいのが、今日ご紹介する-部下を愛しますか?それとも失いますか?-である。

本書は「有能な人材を他社に奪われないために管理職がしなくてはならないこと」という、きわめて明快な視点で書かれている。人材のスペシャリストである二人の女性が、二年間かけ、大小さまざまな企業へのインタビューを中心とした情報収集を行った結果、得られたアイデアをまとめ上げている。そこにあるのは「人材における管理職の役割」についてのすべてだ。

例えば、尋ねる-という章では「組織にとってかけがえのない人材を引き止めるためにはどうすればよいのか」という命題に、当然取るべき行動として「なぜ、この会社にとどまっているのか?」と部下に尋ねろとしている。部下の真意を推測することが最も恐ろしいことであり、理解を間違うと、すべてが勘違いに終わるからだ。

シンプルだけど危険極まりない「尋ねる」という行為に対して、本書では、質問のサンプルとバリエーション、想定される答え、その理由などが、事細かに明示されている。痒いところに手が届く内容である。

さて、上司であるあなたがするべきことは何か…。それは、人材に対して抱いた危機感を、本書によって解決することである。先に述べた、尋ねる…から始まり、キャリアに対する考え方、家族について、よき助言者になるためには、インセンティブ、部下の健康把握にいたるまで、部下に愛されるための処方箋は、ここに用意されている。

想像力を掻き立てるエピソード。筆者が担当したクライアントの事例。有機的に本書を読み解くために設けられた参照キーやリスト。すべてが読者の理解を十分に助けるありがたい構成になっている。目からウロコが落ちてしょうがない一冊。管理職は必読ですよ。

まずルールを破れ-すぐれたマネージャーはここが違う

【著者】マーカス・バッキンガム&カート・コフマン
【出版社】日本経済新聞社
【発刊年月】2000年10月20日【本体価格】1,600円【ページ数】397p
【ISBN】4-532-14867-7

「人を選ぶ、要求を設定する、動機づけをする、そして育てる」。これが「触媒的」役割のなかで核となる四つの行動だ。企業のマネージャーにこの役割をうまくこなす能力がなければ、そのシステムの完成度がどんなに高くても、またリーダーがどんなにすばらしくても、その企業は次第に崩壊へと向かうだろう。
本文 79p より

キャリアを積み上げていくと、何時かはマネージャーというポジションが目の前にやってくる。あなたをマネージャーに据えようとする会社は、その役割に必要なスキルを、研修などを中心として、様々な形で提供することだろう。しかしそれは、往々にして「組織の長(=単なる管理職)」にとって必要な知識を提供するに過ぎない場合がある。

本書では、あるセクションの長ではない、チームをまとめ上げて、最高の成果を目指す「マネージャー」になるための、明確な道しるべを用意してくれている。優れたマネージャーへの、いくつものアイデアは、ギャラップ社(アメリカの有名調査会社)に勤める著者たちが、100万人の従業員と、8万人のマネージャーへのインタビューがベースになっている。

その内容はわかっていることのようで、気が付いていないものが多い。仕事に取り組む際には、きちんとしたスケール(=判断材料や基準)を持つ必要があること。仕事に適した才能を選び出す必要があること。目標とする成果をきちんと指し示すこと。部下のモチベーションを維持する手段はインセンティブだけではないこと。尊敬の念を持つ職場の土壌づくりが必要なこと。どれもこれも、当たり前すぎるかもしれない。しかし、意外に見落としていることが多いことに気が付くだろう。

本書によると、経験や知識、やる気で部下を選んだり、部下が弱点を克服するように手助けしたり、正しい手順を定めた上で仕事をさせてはいけない、のだそうだ。腰帯にこうある。-どうすれば部下の才能を引き出せるか?-。そう、優れたマネージャーとは、部下の才能を自在に操ることが出来る人なのだ。カンタンなようで、これは結構難しい。

タイトルは何だか型破りであるけれども、内容は実にオーソドックスなものである。組織を活性化し、目的に向かって最短距離で走り抜けるためのノウハウが、ここには詰まっている。まだマネージャーでないあなたにも、自らが無駄のない動きをするために、一読を薦めたい。マネージャー的ポジションにいる方は、必読である。

なぜ日本企業では情報共有が進まないのか

【著者】田坂広志【出版社】東洋経済新報社
【発刊年月】1999年2月10日
【本体価格】1500円【ページ数】211P【ISBN】4-492-55340-1

これからの企業情報化の嵐のなかで生き残れないのは、「パソコンのできないマネージャー」ではなく、「豊かな知識や深い知恵を持たないマネージャー」であるということなのです。
同書 P 25から引用

「電子メール導入、フラット組織実現」 というお題目で、社内の情報化を推進し、「中間管理職不要論」が唱えられるようになって久しい。しかし、本当に、中間管理職は不要なのだろうか?

今回紹介する『なぜ日本企業では情報共有が進まないのか』では、この「中間管理職不要論」に対し、冒頭で引用したメッセージを投げかける。

IT化や、情報化が声高に叫ばれる昨今。情報化が実現するのは、より高次元なデータマネジメントであり、それは最終的には、ヒューマンマネジメントなのだ、という本書の言葉を私達は十分に考える必要がある。

では、そのような「ヒューマンナレッジ」を身につけるために私達はどうしたら良いのだろうか。筆者が説く7つの心得はそのための指針を与えてくれる。「情報機器の扱いではなく、情報の扱いに熟達する」「データ、ナレッジ、ノウハウを区別して扱う」「膨大なデータのなかから直感的に要点をつかみ取る」等は、「情報」に対する認識を根本から変革するものばかりだ。

「こころの生態系」 のマネジメントの価値を提案する本書。現在管理職についている人のみならず、経営者、そして情報化をクライアントに提案するエンジニアの方をはじめ全ての企業人の方に是非手にとっていただきたい。

チームの研究

【著者】竹内靖雄 【出版社】講談社 【発刊年月】 1999年 3月
【【本体価格】660円 【ページ数】p222

チームができる前に、まず個人がある。「はじめに個人ありき」で、一人の個人があるプロジェクトを遂行しようとする。しかし、自分一人ではそれが不可能、ないしは困難である場合には、自分とは異質の能力をもった個人を何人か見つけて分業と協力の関係を作ればうまくいくかもしれない。そこで個人が集まってチームが出来るのである。チームはあくまでも個人主義から出発し、個人主義を超えることを狙って作られる。
同書 P15から引用

私達が働く企業という場所は人の集まりだ。だから、人を上手に動かせる人が能力を発揮することが出来る。有名企業の社長によるマネジメント論などは数多くあるし、多くの人が実際に読んでいる。しかし、社長という立場での経験は誰にでも出来るものではない。

それに対し、チームの運営、マネジメントは多くの管理者やビジネスマンが経験し実践していることだ。管理者でなくとも、チームの一員としてプロジェクトを遂行していくことはほとんどのビジネスマンが実践している。チームがうまく機能するかどうかで、チームの構成人員のアウトプット量も作業効率も大きく変わるのだから、企業においてチームは非常に重要なものだ。

しかし、このチームという切り口で組織やプロジェクトを捕らえなおす試みは、あまりされてこなかったように思える。マネジメントの書を開けばチームマネジメントの方法論が解説されているのだが、「チームとはどういったものなのか」という部分は案外説明されていないようだ。それは、チームというものが個人に依存すると同時に個人を超えたものであり解説しづらいということに起因するのかもしれない。そんな中、今週取り上げる『チームの研究』という本書は、講談社現代新書から出ているためコンパクトな1冊ながらもチームに関して多くの示唆を与えてくれる好著だ。

「チームは個人からなる」「成功するチームの条件」「適切な目的がなければ成功もない」という「チームとは何か」という第1章。項羽、劉邦のチーム、ナポレオン、そして川上監督時代の巨人など、ユニークな切り口からチームを取り上げる第2章。そしてチームをいかに作り上げるかを解説した第3章(仲間がつくるチームや、特殊技能の持ち主を使うチームなどはユニーク)からなる本書はチームマネジメントに関わる人のみならず、チームメンバーとして働くすべての人に示唆を与えてくれる。

自分のチームメンバーとしての特性を知り、パフォーマンスをアップさせることも出来そうなこの1冊。是非手にとり、あなたの所属するチームを勝利に導くヒントを掴んでいただきたい。